説明

静電容量式センサ

【課題】耐荷重性をより一層向上させることのできる静電容量式センサを得る。
【解決手段】静電容量式センサ1は、絶縁基板2、3と、この絶縁基板2,3に接合されたシリコン基板と、を備えている。このシリコン基板には、絶縁基板2,3に接合されるフレーム部40と、一面に可動電極5a,6aが形成された錘部5,6と、当該錘部5,6を回動自在に支持する1対のビーム部7a,7b、8a,8bと、が形成されている。そして、1対のビーム部7a,7b、8a,8bのうちいずれか一方のビーム部7b,8bが他方のビーム部7a,8aよりも太さが太く長さが長くなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、可動部の両端を一対のビーム部を介してフレームに接続することで、当該可動部をビーム部のねじり中心軸回りに揺動できるようにした構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、平板状の可動部を挟んで対向する一対のビーム部を、ねじり中心軸を含み可動部に平行な面(対称面)に対して対称となるようにそれぞれ配置することで、一対のビーム部の断面形状を異なる形状としたものが開示されている。このように、一対のビーム部の断面形状を異なる形状とすることで、ねじり中心軸に垂直な方向に撓みにくい構造とすることができる。
【0004】
そして、このような構造は、静電容量式センサに適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−321198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の構造では、ねじり中心軸に垂直な方向に荷重が入力された場合、一対のビーム部はねじり中心軸に垂直な方向の力をそのまま受けて、同方向に同一量変位する。このように、上記従来の技術では、一対のビーム部がねじり中心軸に垂直な方向の力をそのまま受ける構造をしているため、ねじり中心軸に垂直な方向に過大な荷重が入力された際には、一対のビーム部が破断してしまうおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、耐荷重性をより一層向上させることのできる静電容量式センサを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にあっては、絶縁基板と、この絶縁基板に接合されたシリコン基板と、を備える静電容量式センサにおいて、前記シリコン基板には、前記絶縁基板に接合されるフレーム部と、一面に可動電極が設けられた錘部と、当該錘部とフレーム部とを連結し、錘部を軸回りに回動自在に支持する1対のビーム部と、が形成されており、前記一対のビーム部は前記軸回りの回転トルクが略同一となるように形成されるとともに、前記一対のビーム部のうちいずれか一方のビーム部が、他方のビーム部よりも太さが太く長さが長くなるように形成されていることを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一対のビーム部は前記軸回りの回転トルクが略同一となるように形成されている。したがって、通常は、錘部の変位に基づき静電容量を精度よく測ることができる。さらに、一対のビーム部のうちいずれか一方のビーム部を、他方のビーム部よりも太さが太く長さが長くなるように形成している。したがって、軸に垂直な方向から荷重が入力された際に、それぞれのビーム部の軸に垂直な方向への変位量を異ならせることができ、当該荷重の一部を軸方向に分解することができる。その結果、軸に垂直な方向の荷重を軽減することができ、静電容量式センサの耐荷重性をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる加速度センサを示す分解斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかるシリコン基板を示す平面図である。
【図3】図3は、図2のA−A断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態にかかるシリコン基板を示す裏面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態にかかる錘部へのX方向荷重入力時に錘部にかかる力を模式的に示す平面図である。
【図6】図6は、回転トルクが一定の場合におけるビーム部の長さと太さとの関係をシミュレーションした際に用いたビーム部の形状を示す斜視図である。
【図7】図7は、回転トルクが一定の場合におけるビーム部の長さと太さとの関係を示す表である。
【図8】図8は、回転トルクが一定の場合におけるビーム部の長さと太さとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。以下では、静電容量式センサとして、加速度センサを例示する。また、錘部の可動電極が形成される側をシリコン基板の表面側と定義する。そして、シリコン基板の短手方向をX方向、シリコン基板の長手方向をY方向、シリコン基板の厚さ方向をZ方向として説明する。
【0012】
本実施形態にかかる加速度センサ(静電容量式センサ)1は、図1に示すように、半導体素子ディバイスを形成したシリコン基板4と、このシリコン基板4の表面4aおよび裏面4bにそれぞれ接合されたガラス製の第1の絶縁性基板(絶縁基板)2および第2の絶縁性基板(絶縁基板)3と、を備えている。本実施形態では、このシリコン基板4と第1の絶縁性基板2および第2の絶縁性基板3とを陽極接合によって接合している。
【0013】
そして、第1の絶縁性基板2の下面には、錘部5,6の設置領域に対応した固定電極21a,21bおよび22a,22bがそれぞれ設けられている。
【0014】
また、第2の絶縁性基板3の表面には、錘部5,6の設置領域に対応した領域に付着防止膜31,32がそれぞれ形成されている。付着防止膜31,32は、例えば、固定電極21a,21bおよび22a,22bと同じ材料で形成することができる。
【0015】
シリコン基板4は、2つの枠部40a,40bがY方向(シリコン基板4の長手方向)に並設されたフレーム部40と、枠部40a,40bの内周面に対して隙間43を空けた状態で枠部40a,40b内に配置された錘部5,6と、フレーム部40に対して錘部5,6をそれぞれ回動自在に支持する1対のビーム部7a,7bおよび8a,8bと、錘部5,6の表面(一面)に形成される可動電極5a,6aと、を備えている。
【0016】
本実施形態では、このシリコン基板4として、Siからなるシリコン活性層111とSiからなる支持基板113との間にSiOからなる埋込絶縁層112が介在する矩形状のSOI基板を用いている。なお、シリコン基板4の長手方向辺は約2〜4mmで、厚さは約0.4〜0.6mmであり、シリコン活性層111の厚さは約10〜20μm、埋込絶縁層112の厚さは、約0.5μmである。
【0017】
フレーム部40は、本実施形態では、Z方向(シリコン基板4の厚さ方向)から見て略矩形状の外側フレーム部41と、X方向(シリコン基板4の短手方向)に延在し、外側フレーム部41のY方向(シリコン基板4の長手方向)略中央部を連結する中央フレーム部42と、を備えている。
【0018】
錘部5,6は、図3および図4に示すように、一面(裏面)に開口する凹部55,65と、凹部55,65を除く充実部53,63とが一体に形成されている。すなわち、錘部5,6に一面(裏面)に開口する凹部55,65を形成することで、錘部5,6に、肉厚の充実部53,63と肉薄の薄肉部54,64とを形成している。
【0019】
充実部53,63は、図4に示すように、裏面側からみた状態で、矩形状に形成されており、それぞれの充実部53,63には、対角線状の溝部56,66が可動電極5a,6aに対して垂直に形成されている。
【0020】
また、凹部55,65は4辺に側壁を持つ矩形に形成されており、内部には、補強壁57,67が可動電極5a,6aに対して垂直に設けられている。
【0021】
本実施形態では、凹部55は、後述する回動軸A1よりもX方向一方側(図1の奥側)に形成されるとともに、凹部65は、後述する回動軸A2よりもX方向他方側(図1の手前側)に形成されている。
【0022】
ビーム部7a,7bおよび8a,8bは、SOI基板(シリコン基板4)のシリコン活性層111に形成されており、SOI基板の埋込絶縁層112をエッチングストップとして深堀エッチングし、更に埋込絶縁層112を選択的にエッチング除去することで形成される。
【0023】
ビーム部7a,7bは、錘部5の表面(可動電極5a)の対向する2辺上にそれぞれ位置し、ビーム部7a,7bがねじれることにより、可動電極5aは、ビーム部7a,7bを互いに結ぶ直線を回転軸(軸)A1として揺動する。同様に、ビーム部8a,8bは、錘部6の表面(可動電極6a)の対向する2辺上にそれぞれ位置し、可動電極6aは、ビーム部8a,8bを互いに結ぶ直線を回転軸(軸)A2として揺動する。
【0024】
また、ビーム部7a,7bおよび8a,8bは、錘部5,6の表面の2辺の、それぞれ中点に位置している。
【0025】
また、本実施形態では、錘部5と錘部6、ビーム部7aとビーム部8a、およびビーム部7bとビーム部8bがそれぞれシリコン基板4の一点(ビーム部7bとビーム部8bとを結ぶ線分の中点)に対して点対称となるように配置されている。
【0026】
ここで、本実施形態では、ビーム部(一対のビーム部7a,7bのうち一方のビーム部)7bをビーム部(他方のビーム部)7aよりも太さが太く、長さが長くなるように形成している。そして、ビーム部(一対のビーム部8a,8bのうち一方のビーム部)8bをビーム部(他方のビーム部)8aよりも太さが太く、長さが長くなるように形成している。なお、各ビーム部7a,7bおよび8a,8bの厚さは略同一となっており、シリコン活性層111の厚さと略同一である。また、本実施形態では、ビーム部7aとビーム部8aおよびビーム部7bとビーム部8bとが同一の形状(太さと長さが同じ)となるように形成されている。
【0027】
さらに、本実施形態では、ビーム部7a,7bは、ビーム部7a,7bの回転軸(軸)A1回りの回転トルクが略同一となるように形成されている。また、ビーム部8a,8bは、ビーム部8a,8bの回転軸(軸)A2回りの回転トルクが略同一となるように形成されている。
【0028】
具体的には、ビーム部7a,7bの太さと長さを適宜設定することで、ビーム部(一対のビーム部)7a,7bの回転軸A1回りの回転トルクが略同一となるようにしている。また、ビーム部8a,8bの太さと長さを適宜設定することで、ビーム部(一対のビーム部)8a,8bの回転軸A2回りの回転トルクが略同一となるようにしている。
【0029】
このように、本実施形態では、各ビーム部7a,7bおよび8a,8bの軸回りの回転トルクは、それぞれのビーム部の太さおよび長さに基づいて設定される。
【0030】
ここで、図6に示す形状のビーム部を用いて、回転トルク(感度)が一定の場合におけるビーム部の長さと太さとの関係についてシミュレーションした結果について説明する。
【0031】
今回のシミュレーションでは、図6に示すように、厚さが11μmで、Y方向両端の側部の形状が曲率半径R=50μmのビーム部の太さおよび長さを種々変化させて、回転トルク(感度)を計算し、回転トルク(感度)が一定の場合におけるビーム部の長さと太さとの関係を求めた。
【0032】
その結果、同一の回転トルク(この場合、0.070μm)を得るためには、ビーム部の太さおよび長さを図7の表に示す値とすればよいことが判った。
【0033】
なお、図8のグラフは、図7の表に基づいて得られたグラフであって、回転トルクが一定の場合におけるビーム部の長さと太さとの関係を示すグラフである。
【0034】
この図8のグラフ上の値となるように、ビーム部の太さおよび長さを設定すれば、それぞれのビーム部の回転トルク(感度)を略同一とすることができる。
【0035】
また、シリコン基板4と第1の絶縁性基板2および第2の絶縁性基板3との接合面には比較的浅いギャップG1,G2がそれぞれ形成されており、シリコン基板4各部の絶縁性や錘部(可動電極5a,6a)5,6の動作性の確保が図られている。
【0036】
なお、シリコン基板4の裏面側のギャップG2は、アルカリ性湿式異方性エッチング液(例えば、KOH(水酸化カリウム水溶液)、TMAH(テトラメチル水酸化アンモニウム水溶液)等)を用いたシリコン異方性エッチングによりシリコン基板4の一部を除去することで形成することができる。このとき、上述した凹部55,65も同時に形成するのが好適である。
【0037】
また、隙間43および隙間44は、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)などにより垂直エッチング加工をすることで形成している。反応性イオンエッチングとしては、例えば、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を備えたエッチング装置によるICP加工を利用することができる。
【0038】
また、錘部5,6の表面の4隅には、錘部5,6が第1の絶縁性基板2の固定電極21a,21b,22a,22bに直接衝突するのを防止するための突起部51,61が突設されている。
【0039】
同様に、錘部5,6の裏面の4隅には、錘部5,6が第2の絶縁性基板3の付着防止膜31,32に直接衝突するのを防止するための突起部52,62が突設されている。
【0040】
また、本実施形態では、外側フレーム部41は、X方向一端側(図2の下側)が幅広に形成されており、この外側フレーム部41のX方向一端側には、錘部5,6が配置される隙間43,43とそれぞれ連続するように隙間44,44が形成されている。そして、隙間44を空けた状態で電極台9がそれぞれ2つずつ配置されている。
【0041】
この電極台9の表面には、金属膜からなる検出電極10a,10b,11a,11bがそれぞれ設けられている。
【0042】
電極台9は、それぞれフレーム部40および錘部5,6から離間して配置されており、第1の絶縁性基板2および第2の絶縁性基板3により上下面を固定されている。また、外側フレーム部41の表面のY方向中央部には、加速度センサ1の外部に配線される共通電極12が設けられており、フレーム部40は共通電極12により共通電位をとっている。
【0043】
第1の絶縁性基板2の下面には、上述したように、錘部5,6の設置領域に対応した固定電極21a,21bおよび22a,22bがそれぞれ設けられている。これら各固定電極21a,21bおよび22a,22bは、略同一形状で面積が略同一となるように形成されている。
【0044】
固定電極21a,21bは、ビーム部7a,7bを互いに結ぶ直線(回動軸A1)を境界線として、互いに離間して配置されている。同様に、固定電極22a,22bは、ビーム部8a,8bを互いに結ぶ直線(回動軸A2)を境界線として、互いに離間して配置されている。本実施形態では、各固定電極21a,21bおよび22a,22bは、アルミニウム(Al)をスパッタ法やCVD法等により第1の絶縁性基板2に蒸着することで形成している。
【0045】
固定電極21a,21bは、検出電極10a,10bにそれぞれ電気的に接続されており、固定電極22a,22bは、検出電極11a,11bにそれぞれ電気的に接続されている。
【0046】
具体的には、固定電極21a,21bおよび22a,22bには、それぞれが接続される検出電極10a,10bおよび11a,11bが形成された固定電極台9に向けて引出線(固定電極側金属接触部)25がそれぞれ設けられている。
【0047】
また、各固定電極台9には、引出線(固定電極側金属接触部)25が接触するアルミニウム製の導電層(半導体基板側金属接触部)13が形成されている。本実施液体では、各固定電極台9のX方向他端側(図2の上側:錘部側)に段差9aが設けられており、当該段差9aの下面、すなわち、検出電極10a,10bおよび11a,11bが形成される面よりも低い位置に導電層(半導体基板側金属接触部)13を形成している(図3参照)。
【0048】
そして、この引出線(固定電極側金属接触部)25および導電層(半導体基板側金属接触部)13は、シリコン基板4と第1の絶縁性基板2とを陽極接合する際に、互いに踏みつぶされて接触する。
【0049】
こうして、固定電極21a,21bおよび22a,22bが、検出電極10a,10bおよび11a,11bに電気的に接続される。
【0050】
なお、検出電極10a,10bおよび11a,11bは、互いに離間し、それぞれフレーム部40、錘部5,6から離間しているので、各検出電極が互いに絶縁され、各検出電極の寄生容量や、各検出電極間のクロストークを低減し、高精度な容量検出を行うことができる。
【0051】
また、第1の絶縁性基板2の電極台9と対応する部位には、サンドブラスト加工等によってスルーホール23がそれぞれ形成されており、第1の絶縁性基板2の共通電極12に対応する部位には、サンドブラスト加工等によってスルーホール24がそれぞれ形成されている。そして、検出電極10a,10b,11a,11bは、それぞれスルーホール23を介して外部に露出、配線され、共通電極12は、それぞれスルーホール24を介して、外部に露出、配線される。こうして、固定電極21a,21b,22a,22bや可動電極5a、6aの電位を外部に取り出せるようにしている。
【0052】
次に、本実施形態の検出動作について説明する。
【0053】
まず、一方の錘部5にX方向の加速度が印加された場合を考える。X方向に加速度が印加されると、錘部5が回動軸A1の回りに回動して可動電極5aと固定電極21a並びに固定電極21bとの間の距離が変化する。その結果、可動電極5aと各固定電極21a,21bとの間の静電容量C1,C2も変化する。ここで、X方向の加速度が印加されていないときの可動電極5aと各固定電極21a,21bとの間の静電容量をC0とし、加速度の印加によって生じる静電容量の変化分をΔCとすれば、X方向の加速度が印加されたときの静電容量C1,C2は、
C1=C0−ΔC …(1)
C2=C0+ΔC …(2)
と表すことができる。
【0054】
同様に、他方の錘部6にX方向の加速度が印加された場合、可動電極6aと各固定電極22a,22bとの間の静電容量C3,C4は、
C3=C0−ΔC …(3)
C4=C0+ΔC …(4)
と表すことができる。
【0055】
そして、一方の錘部5および固定電極21a,21bから得られる静電容量C1,C2の差分値CA(=C1−C2)と、他方の錘部6および固定電極22a,22bから得られる静電容量C3,C4の差分値CB(=C3−C4)との和(±4ΔC)を算出すれば、この差分値CA,CBの和に基づいてX方向に印加された加速度の向きと大きさを演算することができる。
【0056】
次に、一方の錘部5にZ方向の加速度が印加された場合を考える。Z方向に加速度が印加されると、錘部5が回動軸A1の回りに回動して可動電極5aと固定電極21a並びに固定電極21bとの間の距離が変化する。その結果、可動電極5aと各固定電極21a,21bとの間の静電容量C1,C2も変化する。ここで、Z方向の加速度が印加されていないときの可動電極5aと各固定電極21a,21bとの間の静電容量をC0とし、加速度の印加によって生じる静電容量の変化分をΔCとすれば、Z方向の加速度が印加されたときの静電容量C1,C2は、
C1=C0+ΔC …(5)
C2=C0−ΔC …(6)
と表すことができる。
【0057】
同様に、他方の錘部6にZ方向の加速度が印加された場合、可動電極6aと各固定電極22a,22bとの間の静電容量C3,C4は、
C3=C0−ΔC …(7)
C4=C0+ΔC …(8)
と表すことができる。
【0058】
そして、一方の錘部5および固定電極21a,21bから得られる静電容量C1,C2の差分値CA(=C1−C2)と、他方の錘部6および固定電極22a,22bから得られる静電容量C3,C4の差分値CB(=C3−C4)との差(±4ΔC)を算出すれば、この差分値CA,CBの差に基づいてZ方向に印加された加速度の向きと大きさを演算することができる。
【0059】
このとき、錘部5,6の重心位置から回動軸A1,A2に下ろした垂線と錘部5,6の表面とが成す角度を略45度に設定すれば、これら2方向の検出感度を等価にすることができる。
【0060】
なお、差分値CA,CBの和と差とに基づいてX方向およびZ方向の加速度の向きと大きさを求める演算処理については従来周知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0061】
以上説明したように、本実施形態では、一対のビーム部7a,7b(8a,8b)が、回転軸A1(A2)回りの回転トルクが略同一となるように形成されている。したがって、通常は、錘部5(6)の変位に基づき静電容量を精度よく測ることができる。
【0062】
ところで、1対のビーム部の形状が同一の場合、X方向から過大な荷重が入力された際には、錘部および一対のビーム部は、下記のような挙動を示す。
【0063】
まず、X方向から過大な荷重が入力されると、錘部にはX方向へ変位する力がそのまま働く。そして、この錘部は一対のビーム部によりフレーム部に連結されているため、X方向へ錘部を変位させようとする力によって錘部が回動する。
【0064】
そして、回動した錘部が対向配置された固定電極にぶつかることで、錘部と固定電極との接触部分に摩擦力が働き、錘部の動きが制限される。
【0065】
このように、錘部の動きが制限された状態で、X方向へ錘部を変位させようとする力が働くと、かかる力が一対のビーム部に伝達されて一対のビーム部が破断してしまう。
【0066】
しかしながら、本実施形態では、1対のビーム部7a,7b(8a,8b)のうちいずれか一方のビーム部7b(8b)を他方のビーム部7a(8a)よりも太さが太く長さが長くなるように形成することで、X方向(回転軸A1(A2)に垂直な方向)一方側(図5の下側)から荷重が入力された際の、ビーム部7a(8a)とビーム部7b(8b)のX方向への変位量を互いに異ならせている。
【0067】
その結果、錘部5(6)には、図5の左斜め上方向に変位させる力が働く。そして、図5の左斜め上方向に変位させる力は、X方向に働く力とY方向に働く力とに分解される。すなわち、それぞれのビーム部7a,7b(8a,8b)の太さおよび長さを異ならせることで、変位しやすい方向であるX方向から荷重が入力された際には、かかる荷重の一部を変形しにくいY方向に働く力とすることができ、その分、X方向で受ける荷重を軽減することができ、加速度センサ(静電容量式センサ)1の耐荷重性をより一層向上させることができる。
【0068】
また、ビーム部7a(8a)とビーム部7b(8b)の太さおよび長さを異ならせることで、錘部の配置自由度を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、1対のビーム部7a,7b(8a,8b)のそれぞれの回転軸A1(A2)回りの回転トルクが、各ビーム部7a,7b(8a,8b)の太さおよび長さに基づいて設定するようにしている。そのため、各ビーム部7a,7b(8a,8b)の回転軸A1(A2)回りの回転トルクを容易に設定することができる。
【0070】
また、本実施形態では、ビーム部のそれぞれの厚さを略同一とし、太さおよび長さを異ならせるようにしているため、ビーム部を容易に形成することができるという利点もある。
【0071】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0072】
例えば、上記実施形態では、X方向とZ方向の2方向の加速度を検出する加速度センサを例示したが、錘部の1つをXY平面内で90度回転させて配置し、Y方向を加えた3方向の加速度を検出する加速度センサとしてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、静電容量式センサとして加速度センサを例示したが、これに限ることなく、その他の静電容量式センサであっても本発明を適用することができる。
【0074】
また、錘部や固定電極その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)も適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 加速度センサ(静電容量式センサ)
2 第1の絶縁性基板(絶縁基板)
4 シリコン基板
5,6 錘部
5a、6a 可動電極
7a,8a 他方のビーム部
7b,8b 一方のビーム部
40 フレーム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、この絶縁基板に接合されたシリコン基板と、を備える静電容量式センサにおいて、
前記シリコン基板には、前記絶縁基板に接合されるフレーム部と、一面に可動電極が設けられた錘部と、当該錘部とフレーム部とを連結し、錘部を軸回りに回動自在に支持する1対のビーム部と、が形成されており、
前記一対のビーム部は前記軸回りの回転トルクが略同一となるように形成されるとともに、前記一対のビーム部のうちいずれか一方のビーム部が、他方のビーム部よりも太さが太く長さが長くなるように形成されていることを特徴とする静電容量式センサ。
【請求項2】
前記一対のビーム部のそれぞれの前記軸回りの回転トルクが、各ビーム部の太さおよび長さに基づいて設定されていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量式センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−47530(P2012−47530A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188348(P2010−188348)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】