説明

非常用品保管箱

【課題】手操作部が変形等するおそれが少なく、本体からの蓋部材の容易な取り外しを確保することができる非常用品保管箱を提供すること。
【解決手段】内部に非常用品が収納される本体11には、この非常用品を出し入れするための正面開口部S1と上面開口部S2が形成され、これらの開口部S1,S2を遮蔽する蓋部材12には、手操作部としての手操作部材53を備えたロック装置50が設けられ、この手操作部材53での手操作により、ロック装置50による本体11に対する蓋部材12のロックが解除されるとともに、本体11からの蓋部材12の上方への取り外しが可能になっており、手操作部材53は、ロック装置50が蓋部材12の上面部31に配置されることにより、この上面部31に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震や火災等の災害発生時に用いる非常用品を保管しておくための保管箱に係り、例えば、エレベータの昇降動するかごの内部空間に設置されるエレベータのための非常用品保管箱等として利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
今日、地震や火災等の災害が発生したときに用いられる非常用品を非常用品保管箱に収納して保管しておくことが行われており、この非常用品保管箱を設置するための場所の一つとして、エレベータの昇降動するかごの内部空間があり、このようなエレベータのための非常用品保管箱は、下記の特許文献1に示されている。
【0003】
特許文献1に示されている非常用品保管箱は、内部に非常用品が収納され、この非常用品を出し入れするための開口部が形成された本体と、この本体から取り外し可能であって、この取り外しにより、遮蔽していた上記開口部を露出させる蓋部材と、を有している。また、この非常用品保管箱では、上記開口部は本体の正面部に形成されており、このため、蓋部材は本体の正面部に配置され、そして、この蓋部材は、地震による揺れ等によりロックが解除されるロック装置により本体に配置されており、このロック装置のロックを解除して蓋部材を本体から取り外し可能とするために、蓋部材には、手操作部となっている操作用窓が設けられており、この操作用窓での手操作により、蓋部材は上記開口部が形成されている本体の正面部から前方へ取り外し可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3128832号公報(0021段落、図2、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の非常用品保管箱によると、非常用品を出し入れするための開口部が形成されている箇所は本体の正面部であり、この本体に対して取り外し可能となっていて、上記開口部を遮蔽する蓋部材も本体の正面部に配置されているとともに、この蓋部材に、蓋部材を本体から取り外すために手操作される手操作部が設けられているため、この手操作部は、非常用品保管箱を取り扱う人やその周囲に存在する人たち等によって蹴られるなどして外力を受けやすい箇所に設けられていることになる。このような外力を手操作部が受けた場合には、手操作部に変形等が生じ、この変形等により蓋部材を本体の正面から取り外すことは困難になる。
【0006】
本発明の目的は、手操作部が変形等するおそれが少なく、本体からの蓋部材の容易な取り外しを確保することができるようになる非常用品保管箱を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る非常用品保管箱は、内部に非常用品が収納され、この非常用品を出し入れするための開口部が形成された本体と、手操作部が設けられ、この手操作部による手操作で前記本体から取り外し可能になっているとともに、この取り外しにより、遮蔽していた前記開口部を露出させる蓋部材と、を有する非常用品保管箱において、前記手操作部は前記蓋部材の上面部に設けられ、この手操作部での手操作で上方へ引き上げられた前記蓋部材が前記本体から取り外されることを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、蓋部材を上方へ引き上げることによりこの蓋部材を本体から取り外すための手操作部は、蓋部材の上面部に設けられており、この上面部は、非常用品保管箱を取り扱う人やその周囲に存在する人たち等によって蹴られるなどして外力を受けやすい箇所とはなっていないため、手操作部が変形等するおそれが少なく、したがって、本体からの蓋部材の容易な取り外しを確保することができるようになる。
【0009】
本発明において、蓋部材で遮蔽される本体の部分となっている開口部を設ける位置及びその開口部の形態は、任意ある。その第1番目の例は、本体の正面に、開口部の少なくとも一部となっている正面開口部を形成することである。第2番目の例は、本体の上面に、開口部の少なくとも一部となっている上面開口部を形成することである。第3番目の例は、本体の正面と上面に、開口部を形成している正面開口部と上面開口部とを互いに連通した状態で形成することである。
【0010】
第1番目の例の場合には、蓋部材に本体の正面開口部を覆うための正面部を設けることにより、この正面部で正面開口部を遮蔽することができる。また、第2番目の例の場合には、蓋部材の上述した上面部により本体の上面開口部を遮蔽することができる。第3番目の例の場合には、蓋部材に本体の正面開口部を覆うための正面部を設けることにより、この正面部で正面開口部を遮蔽することができ、また、蓋部材の上述した上面部により上面開口部を遮蔽することができる。
【0011】
そして、第3番目の例の場合には、本体の開口部は、本体の正面開口部と上面開口部とが互いに連通した状態で形成されることにより、大きなものとなっているため、本体の内部に収納される非常用品の出し入れを、この大きな開口部により一層容易に行えることになる。
【0012】
また、本発明に係る非常用品保管箱の蓋部材には、この蓋部材を本体に対してロックするためのロック装置を設けてもよい。このようなロック装置が非常用品保管箱に設けられていると、通常時において蓋部材を本体に対してロックしておくことができるとともに、非常用品を本体の内部から取り出さなければならない災害発生時には、ロック装置によるロックを解除することにより、蓋部材を本体から取り外すことができる。
【0013】
このようなロック装置の構造及び形態等は、任意である。その一例は、このロック装置を蓋部材の前述した上面部に配置するとともに、また、このロック装置を、手操作により起倒される部材であって、倒れているときに蓋部材を本体に対してロックし、起立することにより蓋部材を本体に対するロックから解除するための手操作部材を有するものとし、この手操作部材を前述した手操作部とし、起立しているときの手操作部材の持ち上げにより、蓋部材を本体に対して上方へ引き上げ可能とすることである。
【0014】
これによると、蓋部材を本体から取り外すためにロック装置によるロックを解除すると、手操作部材は起立しているため、前述の手操作部となっているこの手操作部材を持ち上げることにより、蓋部材を本体に対してそのまま上方へ引き上げることができ、このため、手操作部での手操作により蓋部材を本体から取り外すための作業を容易に行える。
【0015】
また、本発明において、通常時にロック装置を操作することができないようにするために、蓋部材に、少なくともロック装置を覆うためのロック装置覆い部を有しているシール部材を配置することが好ましい。このようなシール部材を蓋部材に設けても、ロック装置覆い部を蓋部材から分離可能としておくことにより、災害発生時において、ロック装置覆い部を蓋部材から分離することにより、ロック装置によるロックを解除するための操作を行えることになる。
【0016】
このようなシール部材の形状及び形態等も、任意である。その一例は、このシール部材を、上述のロック装置覆い部と、このロック装置覆い部と連続していて、蓋部材におけるロック装置が配置されていない部分に固定された固定部と、を有するものとし、ロック装置覆い部と固定部との間に、ロック装置覆い部を固定部に対して折り曲げ可能とする折り曲げ部を設けることである。
【0017】
このシール部材による、シール部材を固定部により蓋部材に固定することができるとともに、災害発生時には、折り曲げ部によりロック装置覆い部を固定部に対して折り曲げることにより、ロック装置覆い部を蓋部材から分離することができて、それまでロック装置覆い部で隠されていたロック装置を外部に露出させることができ、これにより、ロック装置によるロックを解除するための操作を行えることになる。
【0018】
また、折り曲げ部が折り曲げられると、シール部材にはこの折り曲げの痕跡が残るため、非常用品保管箱を管理する管理者にとっては、シール部材を視認するだけでロック装置が操作された否かを、言い換えると、非常用品保管箱から非常用品が取り出されているか否かを簡単に認識することができ、このため、非常用品保管箱についての管理を容易に行える。
【0019】
なお、シール部材は上記の例に限定されるものではなく、例えば、シール部材全体を蓋部材から剥がすなどすることにより、この蓋部材からシール部材全体を分離できるようにしてもよい。
【0020】
さらに、本発明に係る非常用品保管箱の本体の外面には、この本体が設置される空間の壁に本体を固定するための固定手段を設けてもよい。これによると、本体を壁に固定することができるため、非常用品保管箱を所定位置に安定して設置することができる。
【0021】
このような固定手段の構造及び形態も、任意である、すなわち、上記壁が鋼板等の磁性材料で形成されている場合には、固定手段は磁石によるものでもよく、また、固定手段は、上記壁に本体を接着又は粘着するための接着剤又は粘着剤(両面粘着テープを含む)でもよく、さらに、固定手段は、上記壁に設けられた被係止部材に係止する係止部材等でもよい。
【0022】
また、本発明に係る非常用品保管箱の全体形状も、任意である。すなわち、本発明に係る非常用品保管箱の全体形状は、平面視で円形でもよく、平面視で三角状でもよく、平面視で四角形状でもよく、平面視で三角及び四角以外の多角形状でもよい。
【0023】
非常用品保管箱の全体形状を平面視で三角形状、それも直角三角形状にしておくと、非常用品保管箱が設定される空間の直角コーナー部にこの非常用品保管箱を有効に設置することができる。
【0024】
さらに、本発明に係る非常用品保管箱は、任意の空間に設置することができる。その一例は、エレベータの昇降動するかごの内部空間であり、また、非常用品を備蓄しておくための室内空間や作業部屋等の一般空間にも、本発明に係る非常用品保管箱を設置することができ、さらに、車両や船舶、航空機等の交通手段の内部空間等にも、本発明に係る非常用品保管箱を設置することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、手操作部が変形等するおそれが少なく、本体からの蓋部材の容易な取り外しを確保できるという効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る非常用品保管箱がエレベータの昇降動するかごの内部空間に設置されている状態を示す斜視図である。
【図2】図2は、非常用品保管箱の上面部である蓋部材の上面部にシール部材を配置する前を示す斜視図であって、このシール部材と、シール部材で隠されるロック装置との位置関係を示す図である。
【図3】図3は、シール部材の一部を折り曲げることによりロック装置を露出させたときを示す斜視図である。
【図4】図4は、非常用品保管箱を構成する本体と蓋部材の分解状態を示す前側斜視図である。
【図5】図5は、非常用品保管箱を構成する本体と蓋部材の分解状態を示す後側斜視図である。
【図6】図6は、蓋部材が本体にセットされたときのロック装置が配置されている部分を示している蓋部材の上面部の一部拡大平面図である。
【図7】図7は、図4のS7−S7線断面図である。
【図8】図8は、図1のS8−S8線断面図である。
【図9】図9は、図8のS9−S9線断面図である。
【図10】図10は、図6のS10−S10線断面図である。
【図11】図11は、ロック装置がロック解除の操作をされたときを示す図10と同様の図である。
【図12】図12は、シール部材を含めて示した図10と同様の図である。
【図13】図13は、一部が折り曲げられたシール部材を含めて示した図11と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る非常用品保管箱は、エレベータの昇降動するかごの内部空間に設置されるものなっているため、この非常用品保管箱は、エレベータのための非常用品保管箱となっている。
【0028】
図1は、本実施形態に係る非常用品保管箱10が、エレベータの昇降動するかご1の内部空間に、かご1の床4に置かれて設置されている状態を示している。図1のS8−S8線断面図である図8に示されているように、非常用品保管箱10が設置されるかご1の場所は、かご1の互いに隣接する2個の壁2,3がなす、頂角部分がラウンドとなっている直角コーナー部であるため、図1等で示されているように、非常用品保管箱10の全体形状は、平面視で頂角部分がラウンドとなっている直角二等辺三角形であって、この直角二等辺三角形が上下方向に連続している柱形状になっている。また、図4及図5に示されているように、非常用品保管箱10の構成部材となっている本体11と蓋部材12の全体形状も、平面視で頂角部分がラウンドとなっている直角二等辺三角形となっている。
【0029】
図1に示すとおり、非常用品保管箱10の上面部(この上面部は、後述の説明で明らかになるように、蓋部材12の上面部31である。以下同じ。)には、シール部材40が配置されている。このシール部材40は、図2で分かるように、非常用品保管箱10の上面部に設けられているロック装置50を隠すためのものとなっている。また、図3で分かるように、シール部材40は、ロック装置50を覆うためのロック装置覆い部41と、このロック装置覆い部41と連続していて、非常用品保管箱10の上面部におけるロック装置50が配置されていない部分に接着剤や粘着剤(両面粘着テープを含む)等の固定手段で固定された固定部42と、を有しており、また、ロック装置覆い部41と固定部42との間には、ロック装置覆い部41を固定部42に対して上側へ折り曲げ可能とする折り曲げ部43が設けられている。この折り曲げ部43は、本実施形態では、シール部材40の厚さの途中まで切り込まれたV字溝(図12を参照)となっている。
【0030】
本実施形態に係るシール部材40は、発泡性プラスチック板で形成されており、このため、折り曲げ部43で容易に折り曲げ可能となっているとともに、折り曲げ後には、上記V字溝が達していない折り曲げ部43の厚さ部分において、折り曲げの痕跡が残るようになっており、この痕跡はシール部材40の上面である表面からも容易に確認することができる。
【0031】
図4及び図5に示されているように、非常用品保管箱10の本体11は、底面部15と、前述したエレベータのかご1の壁2,3と対面する側面部16,17と、上面部18とを有する。底面部15は側面部16,17の底面全体を覆う大きさになっているが、上面部18は、側面部16,17の上面のうち、ラウンドとなっている前述の頂角部分の近辺部を覆う小さなものとなっている。
【0032】
また、図4に示されているように、底面部15の前側の端部は、側面部16,17の前端よりも前方へ突出しており、この突出端部に、上方へ立ち上がった被係止部15Aが形成されている。さらに、上面部18には、被嵌合部19が設けられており、一部が上面部18の前端から前方へ突出しているこの被嵌合部19は、本実施形態では、上面部18に載せられてビス等の止着具20で止着された板部材21によって形成されている。
【0033】
また、図5に示されているように、本体11の側面部16,17の外面には、言い換えると、本体11の側面部16,17の内外面のうち、エレベータのかご1の壁2,3と対面する面には、壁2,3に本体11を固定するための固定手段22が取り付けられている。この固定手段22は、本実施形態では、鋼板等の磁性材料で形成されている壁2,3に磁力で吸着する磁石23である。この磁石23は、固定手段22が配置されている部分の断面図となっている、図4のS7−S7線断面図である図7に示されているように、磁石23と本体11の側面部16,17とに挿通されたボルト24と、本体11の内側でボルト24に螺合されたナット25とにより本体11に取り付けており、また、磁石23と本体11との間には弾性部材26が介入され、この弾性部材26は、本実施形態ではスプリングワッシャ27となっている。
【0034】
また、図4に示されているように、本体11の底面部15の下面には、非常用品保管箱10をエレベータのかご1の床4に置いたときにこの床4に接地するゴムパッド等の接地部材14が取り付けられている。
【0035】
そして、本体11は、前述したように、底面部15と側面部16,17と上面部18とからなるため、本体11の正面には、大きく開口した正面開口部S1が形成されており、また、本体11の上面には、上面部18が設けられた部分を除き、上面開口部S2が形成されており、これらの正面開口部S1と上面開口部S2は互いに連通した状態になっている。これらの正面開口部S1と上面開口部S2により、本体11の内部に非常用品を出し入れするために本体11に設けられた開口部が形成されている。本体11の内部に収納、保管される非常用品は、例えば、飲料水入りの容器や非常食、懐中電灯、さらには、簡易便器や防寒用シート等である。
【0036】
非常用品保管箱10の蓋部材12は、図4及び図5に示されているように、正面部30と、この正面部30の上端から後方へ延出した上面部31とを有する。正面部30は、本体11の正面開口部S1の全体を覆う大きさを有し、また、上面部31は、本体11の上面部18と上面開口部S2との全体を覆う大きさを有している。
【0037】
図5に示されているように、蓋部材12の正面部30の内面には、この正面部30の左右両側の端部において、補強部材33が取り付けられており、上下方向へ延びる長さとなっているこれらの補強部材33により、平板状となっている正面部30の補強が行われ、正面部30が前後方向等へ変形することが防止されている。また、正面部30の内面の下部には、前述した本体11の底面部15の被係止部15Aに上側から係止する係止部材34が取り付けられている。正面部30に左右2個設けられているこれらの係止部材34は、本実施形態では、図8のS9−S9線断面図である図9に示されているように、正面部30に溶接等で結合されたベース部34Aと、このベース部34Aの下端から蓋部材12の内側へ屈曲した屈曲部34Bと、この屈曲部34Bの先端から下方へ延びる係止部34Cとを有する。
【0038】
このため、蓋部材12を本体11に対して上側から降ろしてセットしたときに、本体11の底面部15の被係止部15Aが、蓋部材12の正面部30と、係止部材34の係止部34Cとの間に侵入するようになっている。また、このときには、図8に示されているように、蓋部材12の正面部30の内面に設けられている左右の補強部材33が、本体11の側面部16,17と蓋部材12の正面部30との間のすき間を塞ぐようになっている。
【0039】
また、図4及び図5に示されているように、蓋部材12の上面部31には、本体11に設けられている前述の被嵌合部19と対応する位置において、この被嵌合部19の大きさ、形状と一致している嵌合孔35が形成されている。このため、蓋部材12を本体11に対して上側から降ろしてセットしたときには、嵌合孔35に被嵌合部19が嵌合されることになり、このときには、上述したように、本体11の底面部15の被係止部15Aが、蓋部材12の正面図30と、係止部材34の係止部34Cとの間に侵入し、これにより、蓋部材12の下端は本体11に係止されているため、蓋部材12は、本体11の上下部において、この本体11に水平方向に位置決め固定された状態になっている。そして、このときの蓋部材12は、本体11に対して引き上げることにより、上方へのみ取り外し可能となっている
また、蓋部材12が本体11に水平方向に位置決め固定された状態になっているときには、本体11の正面開口部S1は、蓋部材12の正面部30で覆われているとともに、本体11の上面開口部S2は、蓋部材12の上面部31で覆われており、したがって、本体11の内部に非常用品を出し入れするために形成されている本体11の上述した開口部は、蓋部材12によって遮蔽されている。
【0040】
蓋部材12の上面部31には、前述したロック装置50が配置されている。次に、このロック装置50について説明する。
【0041】
図6は、蓋部材12が本体11にセットされたときであって、ロック装置50が配置されている部分についての蓋部材12の上面部31の一部拡大平面図を示している。この上面部31には、嵌合孔35に近接してこの嵌合孔35よりも大きい孔36が形成され、この孔36に一部が突出して上面部31の下面に溶接等で結合された左右の支持部材37に、孔36に嵌合されたロック装置50のベースブラケット51がビス等の止着具38で止着されている。図10は、図6のS10−S10断面図であり、図11は、ロック装置が操作されたときを示す図10と同様の図である。これらの図10及び図11から分かるとおり、ベースブラケット51には、中心軸52を中心に手操作部材53が起倒自在に配置されており、図6で示されている長孔状開口部が内側に形成されたリング部53Aでの手操作で起倒されるこの手操作部材53には、図10に示されているベースブラケット51の下側の箱部54の内部に突出する作動部53Bが一体に形成されている。このため、手操作部材53は、リング部53Aと作動部53Bからなり、中心軸52が挿通した部分が屈曲部となっているL字形状となっている。
【0042】
箱部54の内部には、スライド部材55が水平方向にスライド自在に配置され、このスライド部材55の前端部は、箱部54の一方の壁部54Aに形成された孔56から突出する爪部55Aとなっている。また、スライド部材55と箱部54の他方の壁部54Bとの間には、弾性部材であるばね57が介設され、このばね57は軸部材58の外周に巻回されており、この軸部材58の先端はスライド部材55に結合され、後端は箱部の壁部54Bに形成された孔59にスライド自在に挿通されている。ばね57は、スライド部材55を常時前方へ弾性付勢する弾性部材となっているため、図10に示されているように、蓋部材12の上面部31に露出して配置されている手操作部材53のリング部53Aが倒れているときには、スライド部材55の爪部55Aは箱部54から大きく突出しており、このときの爪部55Aは、蓋部材12の上面部31に、前述した嵌合孔35と孔36との間において形成されている被掛け止め部60の下面に侵入している。
【0043】
このため、このときには、爪部55Aが被掛け止め部60に掛け止めされたロック状態になっていることにより、蓋部材12は、本体11に対する上方への引き上げに対してロック装置50でロックされており、このロックにより、蓋部材12を本体11に対して持ち上げることはできない。
【0044】
一方、図11に示されているように、手操作部材53をリング部53Aでの手操作で中心軸52を中心に起立させたときには、手操作部材53の作動部53Bの押圧作用により、スライド部材55はばね57に抗して後退する。これにより、爪部55Aは被掛け止め部60から離れるため、ロック装置50による蓋部材12の本体11に対するロックは解除されることになり、したがって、起立している手操作部材53のリング部53Aをそのまま持ち上げることにより、蓋部材12を上方へ引き上げてこの蓋部材12を本体11から取り外すことができる。
【0045】
このため、本実施形態では、手操作部材53が、蓋部材12に設けられていて、手操作によりこの蓋部材12を本体11から取り外すための手操作部となっている。
【0046】
そして、前述したように、蓋部材12を本体11に対して上側から降ろしてセットし、本体11の底面部15の被係止部15Aを蓋部材12の正面部30と係止部材34の係止部34Cとの間に侵入させ、本体11の被嵌合部19を蓋部材12の嵌合孔35に嵌合することにより、蓋部材12を本体11に対して水平方向に位置決め固定セットするときには、図11に示されているように、手操作部材53のリング部53Aを起立させておく。また、上記位置決め固定セットの後には、図10に示されているように、手操作部材53のリング部53Aを水平位置まで倒すと、スライド部材55はばね57で前方へスライドするため、爪部55Aが被掛け止め部60の下面に侵入することにより、蓋部材12を本体11に対してロック装置50でロックさせることができる。
【0047】
また、蓋部材12を本体11に対して上側から降ろしてセットする前には、本体11の内部に前述した非常用品を収納する作業が行われる。
【0048】
また、本体11に対して上側から下ろした蓋部材12をロック装置50でロックした後に、図1等で説明したシール部材40が蓋部材12の上面部31に配置される。この配置作業は、シール部材40の前述したロック装置覆い部41をロック装置50の配置位置に合わせ、シール部材40の固定部42を、本体11の上面部18に設けられていて、蓋部材12の嵌合孔35から露出している被嵌合部19の配置位置に合わせることにより行われ、固定部42だけを接着剤や粘着剤(両面粘着テープを含む)等の固定手段により、被嵌合部19と、この被嵌合部19の周囲の蓋部材12の上面部31とに固定する。このときの状態が図12に示されている。ロック装置50の上面及び被嵌合部19の上面は、蓋部材12の上面部31の表面と面一(つらいち)になっているため、上記固定手段でシール部材40を蓋部材12の上面部31に配置する作業を所定どおり行える。
【0049】
なお、図1に示されているように、シール部材40の表面には、非常用品保管箱10の内部に非常用品が収納されていることや、ロック装置覆い部41を固定部42に対して折り曲げ部43から上側へ折り曲げ可能になっていることが日本語及び外国語の文章で説明した説明事項61が表示されている。また、図3に示されているように、ロック装置覆い部41の裏面には、ロック装置50の手操作部材53を前述の中心軸52を中心に回動起立させ、そして、この手操作部材53をそのまま少し真上に持ち上げてから、手前へ引きながら持ち上げると、蓋部材12を本体11に対して引き上げることができて、蓋部材12を本体11から取り外すことができることを説明した説明事項62が文章や図によって表示されている。
【0050】
シール部材40の表面に表示する説明事項61は、上述のように文章だけによるものでもよく、あるいは、文章と図によるものでもよく、あるいは、図だけによるものでもよい。また、ロック装置覆い部41の裏面に表示する説明事項62は、上述のように文章と図によるものでもよく、あるいは、文章だけによるものでもよく、あるいは、図だけによるものでもよい。
【0051】
上述のようにシール部材40を蓋部材12の上面部31に配置した後に、非常用品保管箱10はエレベータのかご1の内部空間に運び込まれ、所定位置に設置される。この設置により、本体11の側面部16,17の外面に取り付けられている磁石23がかご1の壁2,3で吸着するため、磁石23による固定手段22により、非常用品保管箱10を上記所定位置に安定的にかつ取り外し困難に設置することができる。
【0052】
また、壁2,3や本体11の側面部16、17に多少の凹凸があっても、固定手段22と側面部16,17との間には、スプリングワッシャ27による弾性部材26が介設されているため、この弾性部材26の弾性変形に基づく上記凹凸の吸収作用により、非常用品保管箱10を壁2,3に有効に固定して上記所定位置に設置することができる。
【0053】
なお、弾性部材26の弾性変形に基づく上記凹凸の吸収作用により、非常用品保管箱10を固定手段22で壁2,3に固定して上記所定位置に設置する作業は、本体11の内部に非常用品を収納する前に行ってもよい。
【0054】
すなわち、このような作業順序でそれぞれの作業を行う場合には、内部に非常用品が収納されておらず、蓋部材12がセットされていないときの本体11をエレベータのかご1の内部空間に運び込んで、この本体11をかご1の床4に置き、この後に、図7で示されているナット25を工具で回転操作することにより、磁石23による固定手段22を本体11に対して移動させ、これにより、弾性部材26の弾性変形に基づき上記凹凸を吸収しながら、非常用品保管箱10を固定手段22で壁2,3に固定して上記所定位置に設置する。次いで、本体11の内部に非常用品を収納する作業や、蓋部材12を本体11に対して上側から下ろす作業、蓋部材12をロック装置50で本体11にロックする作業、さらには、シール部材40を蓋部材12の上面部31に配置し、このシール部材40でロック装置50を隠す作業が行われる。
【0055】
地震や火災等の災害が発生し、エレベータの昇降動していたかご1が停止するなど、このかご1に乗っていた人がかご1から脱出できない事態が生じたときには、この人は、シール部材40の表面に表示されている説明事項61にしたがい、シール部材40のロック装置覆い部41を固定部42に対して折り曲げ部43から上側へ折り曲げ、そして、ロック装置覆い部41の裏面に表示されている説明事項62にしたがい、ロック装置50の手操作部材53を中心軸52を中心に回動起立させ、そして、この手操作部材53をそのまま少し真上に持ち上げてから、手前へ引きながら持ち上げることになる。手操作部材53を中心軸52を中心に回動起立させたときの状態が、図13に示されている。
【0056】
上記説明事項62のとおりに、手操作部材53を中心軸52を中心に回動起立させ、そして、この手操作部材53をそのまま少し真上に持ち上げてから、手前へ引きながら持ち上げると、蓋部材12は本体11から上方へ引き上げられることになり、また、このときには、蓋部材12の正面部30と係止部材34の係止部34Cとは、本体11の底面部15の被係止部15Aから脱出しているとともに、蓋部材12の嵌合孔35は、本体11の被嵌合部19から抜け出ていることになり、このため、蓋部材12を本体11から取り外すことができる。
【0057】
なお、シール部材40の説明事項61,62を蛍光材料で表示することにより、災害発生後にエレベータのかご1が停電となって照明が消えても、発光する説明事項61,62により、上記人は説明事項61,62を明瞭に認識することができる。
【0058】
また、本実施形態では、説明事項61,62が表示されているシール部材40は、蓋部材12の上面部31に配置されており、この配置位置は、エレベータのかご1に乗っていた人にとっては、丁度見下ろす高さ位置となっているため、この人は、災害発生時に直ちにシール部材40に表示されている説明事項61に気づくことになる。
【0059】
また、上述したように蓋部材12が手操作部材53での手操作で上方へ引き上げられて蓋部材12を本体11から取り外すと、本体11に形成され、それまで蓋部材12で遮蔽されていた正面開口部S1と上面開口部S2とが露出するため、上記人は、これらの正面開口部S1と上面開口部S2から、本体11の内部に収納、保管されていた非常用品を取り出すことができる。
【0060】
以上説明した本実施形態によると、蓋部材12に配置されているロック装置50の手操作部材53は、蓋部材12を上方へ引き上げてこの蓋部材12を本体11から取り外すときに手操作される手操作部となっているとともに、この手操作部は、蓋部材12の正面部30ではなく、上面部31に設けられており、この上面部31は、非常用品保管箱10を取り扱う人やその周囲に存在する人たち等によって蹴られるなどして外力を受けやすい箇所とはなっていないため、手操作部が変形等するおそれが少なく、したがって、本体11からの蓋部材12の容易な取り外しを確保することができるようになる。
【0061】
また、通常時のロック装置50はシール部材40で覆われて隠されているため、通常時にロック装置50が操作されることを防止することができる。
【0062】
また、蓋部材12の上面部31に固定部42で固定されるシール部材40には、ロック装置50を覆うためのロック装置覆い部41が設けられ、このロック装置覆い部41は蓋部材12の上面部31から分離可能となっているため、災害発生時において、ロック装置覆い部41を蓋部材12の上面部31から分離することにより、それまでロック装置覆い部41で隠されていたロック装置50を外部に露出させることができ、このロック装置50を操作することにより、本体11に対する蓋部材12のロックを解除することができる。
【0063】
さらに、通常時に蓋部材12を本体11に対して上方へ持ち上げようとしても、ロック装置50によりこれを阻止できるとともに、災害発生時に、ロック装置50の手操作部材53についての引き上げ操作(起立操作)を行うと、この引き上げ操作により、ロック装置50による本体11に対する蓋部材12のロックを解除することと、蓋部材12を持ち上げてこの蓋部材12を本体11から上方へ取り外すこととを、一連の連続操作として行えることになり、このため、これら操作を手操作部材53によるワンタッチ操作として簡単かつ迅速に行える。
【0064】
また、本実施形態によると、蓋部材12を上方へ引き上げて本体11から取り外すと、それまで蓋部材12で遮蔽されていて、非常用品を取り出すために本体11に形成されていた開口部が露出するとともに、この開口部は、互いに連通している正面開口部S1と上面開口部S2とによって形成されており、したがって、この開口部の開口面積は大きくなっているため、本体11の内部からの非常用品の取り出しを容易に行える。
【0065】
また、正面開口部S1と上面開口部S2との大きな開口面積により、本体11の内部に非常用品を収納する作業も容易に行え、さらに本体11の内部に収納する非常用品の大きさを大きくすることもでき、その個数も多くすることができる。
【0066】
さらに、本実施形態によると、シール部材40は、ロック装置50を覆うためのロック装置覆い部41と、蓋部材12の上面部31に固定される固定部42と、ロック装置覆い部41と固定部42との間に設けられ、ロック装置覆い部41を固定部42に対して折り曲げ可能とする折り曲げ部43とを有するものになっており、折り曲げ部43が折り曲げられると、シール部材40にはこの折り曲げの痕跡が残ることになる。このため、非常用品保管箱10を管理する管理者にとっては、シール部材40を視認するだけでロック装置50が操作された否かを、言い換えると、非常用品保管箱10の内部から非常用品が取り出されているか否かを簡単に認識することができ、したがって、非常用品保管箱10についての管理を容易に行える。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、例えば、エレベータの昇降動するかごの内部空間において、地震や火災等の災害発生時に用いる非常用品を保管しておくために利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 エレベータのかご
2,3 壁
10 非常用品保管箱
11 本体
12 蓋部材
31 蓋部材の上面部
40 シール部材
41 ロック装置覆い部
42 固定部
43 折り曲げ部
50 ロック装置
53 手操作部になっていて、ロック装置に設けられている手操作部材
S1 正面開口部
S2 上面開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に非常用品が収納され、この非常用品を出し入れするための開口部が形成された本体と、手操作部が設けられ、この手操作部による手操作で前記本体から取り外し可能になっているとともに、この取り外しにより、遮蔽していた前記開口部を露出させる蓋部材と、を有する非常用品保管箱において、
前記手操作部は前記蓋部材の上面部に設けられ、この手操作部での手操作で上方へ引き上げられた前記蓋部材が前記本体から取り外されることを特徴とする非常用品保管箱。
【請求項2】
請求項1に記載の非常用品保管箱において、前記本体の正面には、前記開口部の少なくとも一部となっている正面開口部が形成され、前記蓋部材は、前記正面開口部を覆うための正面部を有していることを特徴とする非常用品保管箱。
【請求項3】
請求項1に記載の非常用品保管箱において、前記本体の上面には、前記開口部の少なくとも一部となっている上面開口部が形成され、前記蓋部材の前記上面部は、前記上面開口部を覆うための部分となっていることを特徴とする非常用品保管箱。
【請求項4】
請求項1に記載の非常用品保管箱において、前記本体の正面と上面には、前記開口部を形成している正面開口部と上面開口部とが互いに連通した状態で形成され、前記蓋部材は、前記正面開口部を覆うための正面部を有しているとともに、前記蓋部材の前記上面部は、前記上面開口部を覆うための部分となっていることを特徴とする非常用品保管箱。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の非常用品保管箱において、前記蓋部材には、この蓋部材を前記本体に対してロックするためのロック装置が設けられていることを特徴とする非常用品保管箱。
【請求項6】
請求項5に記載の非常用品保管箱において、前記ロック装置は前記蓋部材の前記上面部に配置されているとともに、このロック装置は、手操作により起倒される部材であって、倒れているときに前記蓋部材を前記本体に対してロックし、起立することにより前記蓋部材を前記本体に対するロックから解除するための手操作部材を有しており、この手操作部材が前記手操作部となっており、起立しているときの前記手操作部材の持ち上げにより、前記蓋部材を前記本体に対して上方へ引き上げ可能となっていることを特徴とする非常用品保管箱。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の非常用品保管箱において、前記蓋部材には、少なくとも前記ロック装置を覆うためのロック装置覆い部を有しているシール部材が配置され、前記ロック装置覆い部は前記蓋部材から分離可能となっていることを特徴とする非常用品保管箱。
【請求項8】
請求項7に記載の非常用品保管箱において、前記シール部材は、前記ロック装置覆い部と、このロック装置覆い部と連続していて、前記蓋部材における前記ロック装置が配置されていない部分に固定された固定部と、を有しており、前記ロック装置覆い部と前記固定部との間には、前記ロック装置覆い部を前記固定部に対して折り曲げ可能とする折り曲げ部が設けられていることを特徴とする非常用品保管箱。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の非常用品保管箱において、前記本体の外面には、この本体が設置される空間の壁に前記本体を固定するための固定手段が設けられていることを特徴とする非常用品保管箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−189178(P2010−189178A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37624(P2009−37624)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)
【Fターム(参考)】