説明

非水電解液及び該電解液を用いた非水電解液二次電池

【課題】 サイクル特性及び低温特性に優れた非水電解液二次電池が得られる非水電解液を提供すること。
【解決手段】 電解質を有機溶媒に溶解した電解液において、イソチオシアナート化合物、好ましくは下記一般式(I)で表されるイソチオシアナート化合物を含有することを特徴とする非水電解液。
【化1】


(式中、環Aは、炭素原子数6〜18のアリール基を、Rは水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、mは1〜5の数を、nは1〜5の数をそれぞれ表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソチオシアナート化合物を含有する非水電解液及び該電解液を用いたことを特徴とする非水電解液二次電池を提供するものであり、イソチオシアナート化合物を電極材料に添加することでサイクル特性、温度特性に優れた非水電解液二次電池を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯用パソコン、ハンディビデオカメラなどの携帯電子機器の普及に伴い、高電圧、高エネルギー密度を有する非水電解液二次電池が電源として広く用いられるようになった。また、環境問題から電池自動車や電力を動力の一部に利用したハイブリッド車の実用化が行われている。
【0003】
しかし、非水電解液二次電池は、低温時あるいは充放電を繰り返すことで電気容量の低下や内部抵抗の上昇を示し、安定した電力供給源としての信頼性が不足していた。
【0004】
非水電解液二次電池の安定性や電気特性の向上のために、種々の添加剤が提案されている。例えば、有機溶媒系電解液にケイ酸テトラメチルを使用することが提案されている(特許文献1参照)が、サイクル特性は向上するものの、電気容量が低下するという欠点があった。また、電解液にイソシアナート化合物を添加することが提案されている(特許文献2参照)が、高温保存性は向上するものの、サイクル特性や低温特性は満足の行くものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平10−326611号公報
【特許文献2】特開2002−8719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、サイクル特性及び低温特性に優れた非水電解液二次電池が得られる非水電解液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、非水電解液二次電池を製造するに際して、電解液にイソチオシアナート化合物を添加することにより、サイクル特性及び温度特性に優れた非水電解液二次電池が得られることを見出し本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、電解質を有機溶媒に溶解した電解液において、イソチオシアナート化合物、好ましくは下記一般式(I)で表されるイソチオシアナート化合物、より好ましくは下記一般式(II)で表されるイソチオシアナート化合物を含有することを特徴とする非水電解液を提供するものである。
【0009】
【化3】

(式中、環Aは、炭素原子数6〜18のアリール基を、Rは水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、mは1〜5の数を、nは1〜5の数をそれぞれ表す。)
【0010】
【化4】

(式中、R1 、R2 及びR3 は各々独立に水素原子又はフッ素原子を表す。ただし、R1 、R2 及びR3 のいずれかひとつはフッ素原子である。)
【0011】
また、本発明は、上記の本発明の非水電解液を含む非水電解液二次電池を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の非水電解液によれば、サイクル特性及び低温特性に優れた非水電解液二次電池が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の非水電解液に用いられるイソチオシアナート化合物としては、特に制限されず、エチルイソチオシアナート、プロピルイソチオシアナート、ブチルイソチオシアナート、ペンチルイソチオシアナート、ヘキシルイソチオシアナート、ヘプチルイソチオシアナート、オクチルイソチオシアナート、ヘキサメチレン−1,6−ビス(イソチオシアナート)、1,1,1−トリフルオロエチル−2−イソチオシアナート、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロピル−3−イソチオシアナートなどの脂肪族イソチオシアナート及びそのハロゲン置換化合物;フェニルイソチオシアナート、2−メチルフェニルイソチオシアナート、3−メチルフェニルイソチオシアナート、4−メチルフェニルイソチオシアナート、2,3−ジメチルフェニルイソチオシアナート、2,4−ジメチルフェニルイソチオシアナート、3,4−ジメチルフェニルイソチオシアナート、3,5−ジメチルフェニルイソチオシアナート、2,3,4−トリメチルフェニルイソチオシアナート、2,4,6−トリメチルフェニルイソチオシアナート、2,3,4,5,6−ペンタメチルフェニルイソチオシアナート、4−t−ブチルフェニルイソチオシアナート、2−フルオロフェニルイソチオシアナート、3−フルオロフェニルイソチオシアナート、4−フルオロフェニルイソチオシアナート、2−クロロフェニルイソチオシアナート、4−クロロフェニルイソチオシアナート、2−クロロフェニルイソチオシアナート、4−ブロモフェニルイソチオシアナート、2,3−ジフルオロフェニルイソチオシアナート、2,4−ジフルオロフェニルイソチオシアナート、3,4−ジフルオロフェニルイソチオシアナート、3,5−ジフルオロフェニルイソチオシアナート、2,4,6−トリフルオロフェニルイソチオシアナート、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルイソチオシアナート、4−ニトロフェニルイソチオシアナート、1,2−フェニレンビス(イソチオシアナート)、1,4−フェニレンビス(イソチオシアナート)、2,6−ビス(イソチオシアナート)ナフタレンなどの芳香族イソチオシアナートが挙げられる。
【0014】
上記イソチオシアナート化合物のなかで、下記一般式(I)で表される芳香族イソチオシアナート化合物が、サイクル特性に優れるので好ましく、下記一般式(II)で表されるイソチオシアナート化合物が特に好ましい。
【0015】
【化5】

(式中、環Aは、炭素原子数6〜18のアリール基を、Rは水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、mは1〜5の数を、nは1〜5の数をそれぞれ表す。)
【0016】
一般式(I)で表される芳香族イソチオシアナート化合物において、環Aはフェニル基であることが好ましく、nは1又は2であることが好ましく、Rはフッ素原子であることが好ましい。
【0017】
【化6】

(式中、R1 、R2 及びR3 は各々独立に水素原子又はフッ素原子を表す。ただし、R1 、R2 及びR3 のいずれかひとつはフッ素原子である。)
【0018】
上記イソチオシアナート化合物の含有量は、本発明の非水電解液中、好ましくは0.05〜10体積%、より好ましくは0.1〜5体積%である。
【0019】
本発明の非水電解液に用いられる有機溶媒としては、高誘電率溶媒として、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル、テトラメチルスルホラン、ジメチルスルフォキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミドやこれらの誘導体などが用いられ、低粘度溶媒として、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどの環状エーテル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの鎖状エステル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタンやこれらの誘導体が用いられるが、特に限定されるものではない。
【0020】
本発明の非水電解液に用いられる電解質としては、従来公知の電解質が用いられ、例えば、LiPF6 、LiBF4 、LiAsF6 、LiCF3 SO3 、LiN(CF3 SO2)2 、LiC(CF3 SO2)3 、LiSbF6 、LiSiF5 、LiAlF4 、LiSCN、LiClO4 、LICl、LiF、LiBr、LiAlF4 などが挙げられる。
本発明の非水電解液の電解質濃度は、特に制限されるものではなく、好ましくは0.05〜10モル/リットル、より好ましくは0.1〜5モル/リットルである。
【0021】
本発明の非水電解液二次電池は、非水電解液として、上記の本発明の非水電解液を用いる以外は、従来の非水電解液二次電池と同様に構成される。
【0022】
本発明の非水電解液二次電池を構成する電極材料としては、正極及び負極があり、正極としては、正極活物質と結着剤と導電材とを溶媒でスラリー化したものを集電体に塗布し、乾燥してシート状にしたものが使用される。負極としては、通常、負極活物質と結着剤とを溶媒でスラリー化したものを集電体に塗布し、乾燥してシート状にしたものが使用される。
【0023】
正極活物質としては、リチウムと遷移金属の複合酸化物が好ましく、LiCoO2 、LiNiO2 、LiMnO4 、LiMnO2 、LiV23 などが使用可能である。
正極及び負極に用いられる結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、EPDM、SBR、NBR、フッ素ゴムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
負極活物質としては、リチウム及びリチウム合金であってもよいが、より安全性の高いリチウムイオンを吸蔵、放出できる炭素材料が好ましい。この炭素材料は、特に限定されないが、黒鉛及び石油系コークス、石炭系コークス、石油系ピッチの炭化物、石炭系ピッチの炭化物、フェノール樹脂・結晶セルロースなどの樹脂の炭化物など及びこれらを一部炭化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維などが挙げられる。
【0025】
正極の導電材としては、黒鉛の微粒子、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、ニードルコークスなどの無定形炭素の微粒子などが使用されるが、これらに限定されない。
スラリー化に用いられる溶媒としては、通常は結着剤を溶解する有機溶剤が使用される。例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどを挙げることができるが、これらに限定されない。また、水に分散剤、増粘剤などを加えてSBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。
【0026】
負極の集電体には、通常、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼などが使用され、正極の集電体には、通常、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼などが使用される。
【0027】
本発明の非水電解液二次電池は、正極と負極の間にセパレータが用いられる。斯かるセパレータとしては、特に限定されるものではなく、通常用いられる高分子の微多孔フィルムを使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシドなどのポリエーテル類、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロースなどの種々のセルロース類、ポリ(メタ)アクリル酸及びその種々のエステル類などを主体とする高分子化合物やその誘導体、これらの共重合体や混合物からなるフィルムなどが挙げられる。また、このようなフィルムを単独で用いてもよいし、これらのフィルムを重ね合わせた複層フィルムでもよい。さらにこれらのフィルムには種々の添加剤を用いてもよく、その種類や含有量は特に制限されない。これらの微多孔フィルムの中で、本発明のリチウム二次電池にはポリエチレンやポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホンが好ましく用いられる。
【0028】
これらのセパレータフィルムは、電解液がしみ込んでイオンが透過し易いように、微多孔化がなされている。この微多孔化の方法としては、高分子化合物と溶剤の溶液をミクロ相分離させながら製膜し、溶剤を抽出除去して多孔化する「相分離法」と、溶融した高分子化合物を高ドラフトで押し出し製膜した後に熱処理し、結晶を一方向に配列させさらに延伸によって結晶間に間隙を形成して多孔化をはかる「延伸法」などが挙げられ、用いられる高分子フィルムによって適宜選択される。
【0029】
本発明の非水電解液二次電池において、電極材料、非水電解液及びセパレータには、より安全性を向上する目的で、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードアミン化合物などを添加してもよい。
【0030】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3−第三ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4' −チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、4,4' −ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、テトラキス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕などが挙げられ、電極材料に添加する場合は、電極材料100質量部に対して、0.01〜10質量部、特に0.05〜5質量部用いるのが好ましい。
【0031】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4' −n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2' −メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2' −メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2' −エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイトなどが挙げられる。
【0032】
上記チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリルなどのジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
【0033】
上記ヒンダードアミン化合物としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノ−ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカンなどのヒンダードアミン化合物が挙げられる。
【0034】
上記構成からなる本発明の非水電解液二次電池は、その形状には特に制限を受けず、コイン型、円筒型、角型など、種々の形状とすることができる。図1は、本発明の非水電解液二次電池のコイン型電池の一例を、図2及び図3は円筒型電池の一例をそれぞれ示したものである。
【0035】
図1に示すコイン型の非水電解液二次電池10において、1はリチウムイオンを放出できる正極、1aは正極集電体、2は正極から放出されたリチウムイオンを吸蔵、放出できる炭素質材料よりなる負極、2aは負極集電体、3は本発明の非水電解液、4はステンレス製の正極ケース、5はステンレス製の負極ケース、6はポリプロピレン製のガスケット、7はポリエチレン製のセパレータである。
【0036】
また、図2及び図3に示す円筒型の非水電解液二次電池10' において、11は負極、12は負極集電体、13は正極、14は正極集電体、15は本発明の非水電解液、16はセパレータ、17は正極端子、18は負極端子、19は負極板、20は負極リード、21は正極板、22は正極リード、23はケース、24は絶縁板、25はガスケット、26は安全弁、27はPTC素子である。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明する。ただし、以下の実施例により本発明はなんら制限されるものではない。
【0038】
実施例1及び比較例1
<作成手順>
(正極の作製)
正極活物質としてLiCoO2 85質量部、導電剤としてアセチレンブラック10質量部、及び結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)5質量部を混合して、正極材料とした。この正極材料をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させてスラリー状とした。このスラリーをアルミニウム製の正極集電体の両面に塗布し、乾燥後、プレス成型して、正極板とした。その後、この正極板を所定の大きさにカットし、電流取り出し用のリードタブ溶接部となる部分の電極合剤を掻き取ることでシート状正極を作製した。
【0039】
(負極の作製)
負極活物質として炭素材料粉末92.5質量部、及び結着剤としてPVDF7.5質量部を混合して、負極材料とした。この負極材料をNMPに分散させてスラリー状とした。このスラリーを銅製の負極集電体の両面に塗布し、乾燥後、プレス成型して、負極板とした。その後、この負極板を所定の大きさにカットし、電流取り出し用のリードタブ溶接部となる部分の電極合剤を掻き取ることでシート状負極を作製した。
【0040】
(非水電解液の調製)
エチレンカーボネート30体積%、エチルメチルカーボネート40体積%及びジメチルカーボネート30体積%からなる混合溶媒に、LiPF6 を1モル/リットルの濃度で溶解し、試験化合物(表1記載)を加えて、非水電解液とした。
【0041】
(電池の組み立て)
得られたシート状正極及びシート状負極を、厚さ25μmのポリエチレン製の微多孔フィルムを介した状態で巻回させて、巻回型電極体を形成した。得られた巻回型電極体をケースの内部に挿入し、ケース内に保持した。このとき、シート状正極あるいはシート状負極のリードタブ溶接部に一端が溶接された集電リードを、ケースの正極端子あるいは負極端子にそれぞれ接合した。その後、非水電解液を巻回型電極体が保持されたケース内に注入し、ケースを密閉、封入して、Φ18mm、軸方向の長さ65mmの円筒型リチウム二次電池を作製した。
【0042】
上記リチウム二次電池について、下記試験方法に従って、サイクル特性試験及び低温特性評価試験を行った。サイクル特性試験においては、放電容量維持率(%)及び内部抵抗増加率(%)を、低温特性評価試験においては、放電容量率(%)及び内部抵抗比を求めた。サイクル特性試験及び低温特性評価試験の試験方法は、それぞれ以下の通りである。
【0043】
<サイクル特性試験方法>
リチウム二次電池を、雰囲気温度60℃の恒温槽内に入れ、充電電流2.2mA/cm2 で4.1Vまで定電流充電し、放電電流2.2mA/cm2 で3Vまで定電流放電を行うサイクルを500回繰り返して行った。その後、雰囲気温度を20℃に戻して、充電電流1.1mA/cm2 で4.1Vまで定電流定電圧充電し、放電電流0.33mA/cm2 で3.0Vまで定電流放電し、このときの放電容量と初期放電容量とから、下記式により放電容量維持率(%)を求めた。また、上記の500回のサイクルの前後に、20℃における内部抵抗を測定し、その測定結果から下記式により内部抵抗増加率(%)を求めた。尚、リチウム二次電池の初期放電容量及び内部抵抗は、下記測定方法により、それぞれ測定した。
放電容量維持率(%)= [(サイクル後の放電容量)/(初期放電容量)] ×100
内部抵抗増加率(%)= [(サイクル後の内部抵抗)/(サイクル前の内部抵抗)] ×100
【0044】
(初期放電容量測定方法)
まず、充電電流0.25mA/cm2 で4.1Vまで定電流定電圧充電し、放電電流0.33mA/cm2 で3.0Vまで定電流放電を行った。次に、充電電流1.1mA/cm2 で4.1Vまで定電流定電圧充電し、放電電流1.1mA/cm2 で3.0Vまで定電流放電する操作を4回行った。その後、充電電流1.1mA/cm2 で4.1Vまで定電流定電圧充電し、放電電流0.33mA/cm2 で3.0Vまで定電流放電し、このときの放電容量を電池初期容量とした。尚、測定は20℃の雰囲気で行った。
【0045】
(内部抵抗測定方法)
まず、充電電流1.1mA/cm2 で3.75Vまで定電流定電圧充電し、交流インピーダンス測定装置((株)東陽テクニカ製:周波数応答アナライザsolartron1260、ポテンショ/ガルバノスタットsolartron1287)を用いて、周波数100kHz〜0.02Hzまで走査し、縦軸に虚数部、横軸に実数部を示すコール−コールプロットを作成した。続いて、このコール−コールプロットにおいて、円弧部分を円でフィッティングして、この円の実数部分と交差する2点のうち、大きい方の値を抵抗値とし、電池の内部抵抗とした。
【0046】
<低温特性評価試験方法>
上記サイクル特性試験方法における初期放電容量測定方法と同様にして、20℃での放電容量を測定した。
また、測定温度を−30℃に変えた以外は、上記初期放電容量測定方法と同様にして、−30℃での放電容量を測定した。20℃での放電容量及び−30℃での放電容量から、下記式により放電容量率(%)を求めた。
また、上記サイクル特性試験方法における内部抵抗測定方法と同様にして、20℃及び−30℃それぞれにおいて、内部抵抗を測定し、その測定結果から下記式により内部抵抗比を求めた。
放電容量率(%)= [(−30℃での放電容量)/(20℃での放電容量)] ×100
内部抵抗比=(−30℃での内部抵抗)/(20℃での内部抵抗)
【0047】
【表1】

*1:4−フルオロフェニルイソチオシアナート
*2:2,4−ジフルオロフェニルイソチオシアナート
*3:2,4,6−トリフルオロフェニルイソチオシアナート
*4:4−メチルフェニルイソチオシアナート
*5:フェニルイソシアナート
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、本発明の非水電解液二次電池のコイン型電池の構造の一例を概略的に示す縦断面図である。
【図2】図2は、本発明の非水電解液二次電池の円筒型電池の基本構成を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の非水電解液二次電池の円筒型電池の内部構造を断面として示す斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1 正極
1a 正極集電体
2 負極
2a 負極集電体
3 非水電解液
4 正極ケース
5 負極ケース
6 ガスケット
7 セパレータ
10 コイン型の非水電解液二次電池
10' 円筒型の非水電解液二次電池
11 負極
12 負極集電体
13 正極
14 正極集電体
15 非水電解液
16 セパレータ
17 正極端子
18 負極端子
19 負極板
20 負極リード
21 正極板
22 正極リード
23 ケース
24 絶縁板
25 ガスケット
26 安全弁
27 PTC素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質を有機溶媒に溶解した電解液において、イソチオシアナート化合物を含有することを特徴とする非水電解液。
【請求項2】
イソチオシアナート化合物が、下記一般式(I)で表される化合物である請求項1記載の非水電解液。
【化1】

(式中、環Aは、炭素原子数6〜18のアリール基を、Rは水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、mは1〜5の数を、nは1〜5の数をそれぞれ表す。)
【請求項3】
一般式(I)において環Aがフェニル基である請求項2記載の非水電解液。
【請求項4】
一般式(I)においてnが1又は2である請求項2又は3記載の非水電解液。
【請求項5】
一般式(I)においてRがフッ素原子である請求項2〜4のいずれかに記載の非水電解液。
【請求項6】
イソチオシアナート化合物が、下記一般式(II)で表される化合物である請求項1記載の非水電解液。
【化2】

(式中、R1 、R2 及びR3 は各々独立に水素原子又はフッ素原子を表す。ただし、R1 、R2 及びR3 のいずれかひとつはフッ素原子である。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の非水電解液を含む非水電解液二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−12713(P2006−12713A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191195(P2004−191195)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000000387)旭電化工業株式会社 (987)
【Fターム(参考)】