説明

非消化性アミロース粒子、その製造方法、ならびにそれを含有する飲食品、医薬品および医薬部外品

【課題】実質的にα−アミラーゼによる分解を受けないアミロース粒子を提供すること、およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】重量平均分子量が12,000〜55,000で、かつ分子量分散度が1.25以下のアミロースから実質的になるアミロース粒子であって、かつ、α−アミラーゼによる分解を実質的に受けない、アミロース粒子。重量平均分子量が12,000〜55,000で、かつ分子量分散度が1.25以下の酵素合成アミロースからなるアミロース粒子の製造方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非消化性アミロース粒子、その製造方法、ならびにそれを含有する飲食品、医薬品および医薬部外品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、澱粉は消化されやすい糖質と考えられているが、実際には消化酵素により分解されない成分を有している。この難消化性成分は、食物繊維としての機能を発揮していると考えられている。食物繊維機能の例としては、整腸作用、便通作用などの腸内環境改善効果、血糖値上昇抑制作用、コレステロール低下作用などが挙げられる。
【0003】
このような背景のもと、難消化性成分の含量を高めた難消化性澱粉の開発が進められている。その結果、湿熱処理澱粉(特許文献1(特開平7−252301号公報)、特許文献2(特開平10−195105号公報))、ハイアミロース澱粉(特許文献3(特開平11−255802号公報))、アミロスクラーゼにより合成されたアミロース(特許文献4(特表2002−520425号公報)、特許文献5(国際公開第00/02926号パンフレット)、特許文献6(特表2002−533107号公報)および特許文献7(国際公開第00/38537号パンフレット))などが開発されている。
【0004】
しかしながら、これまでに開発されたこれらの難消化性澱粉はいずれも難消化性成分が100%ではなく、消化性成分を含んでいる。混入している消化性成分は、体内で容易に分解吸収され、血糖値の上昇をもたらす。そのため、食物繊維としての機能を相殺してしまうだけでなく、特に重度の糖尿病患者向けの飲食品などの場合には、使用が困難であるという問題がある。各特許文献に記載される発明の欠点について以下に詳細に説明する。
【0005】
特許文献1(特開平7−252301号公報)に記載の発明は、アミロース含量が30重量%以上の澱粉を原料として減圧した後蒸気加圧処理することにより難消化性成分を高めようとしたものである。しかしながら、この方法により得られた難消化性澱粉含有デキストリンの難消化性成分の含量が60%程度であり、さらに、消化性成分である単糖および重合度(DP)2〜9のオリゴ糖を6.9%含有する。そのため、この難消化性澱粉を経口摂取すると、これらの消化性成分が体内で容易に分解吸収され、血糖値の上昇をもたらす。従って、この難消化性澱粉は、低カロリー飲食品としての効果が低い。また、この方法により得られた難消化性澱粉の平均分子量は2000である。特許文献1は、重量平均分子量が12,000〜55,000で、かつ分子量分散度が1.25以下のアミロースについて、何の示唆も開示もしていない。
【0006】
特許文献2(特開平10−195105号公報)に記載の発明は、酸処理した天然の澱粉を130℃〜140℃で湿熱処理することにより難消化性成分を高めようとしたものである。具体的には、アミロース含量の高い(70重量%以上)ハイアミロースコーンスターチを原料にし、湿熱処理を加えることで約66%の食物繊維含量が得られている。特許文献2は、重量平均分子量が12,000〜55,000で、かつ分子量分散度が1.25以下のアミロースについて、何の示唆も開示もしていない。
【0007】
特許文献3(特開平11−255802号公報)に記載の発明は、アミロース含量が30重量%以上の高アミロース澱粉を原料として、CGTaseを作用させ、澱粉粒を保持した状態で澱粉成分の易溶出部分をシクロデキストリンに変換することにより難消化性成分を高めようとしたものである。難消化性成分は最高77%得られている。しかし、本難消化性澱粉は、世界食品添加物専門会議で許容摂取量が制限(5mg/kg/日まで)されている食品添加物であるβ−CDを含有している。そのため、この難消化性澱粉を食物繊維として多量に摂取するのは望ましくない。特許文献3は、重量平均分子量が12,000〜55,000で、かつ分子量分散度が1.25以下の酵素合成アミロースについて、何の示唆も開示もしていない。
【0008】
特許文献4(特表2002−520425号公報)および特許文献5(国際公開第00/02926号パンフレット)には、水不溶性の線状α−1,4−D−グルカンから得られるレジスタントスターチ(RS)が開示されている。特許文献4および5の請求項は非常に広範囲であるが、具体的に開示されているのは、1種類のレジスタントスターチのみである。このレジスタントスターチは、スクロースにアミロスクラーゼという酵素を作用させる方法により製造された、数平均分子量(Mn)2326、重量平均分子量(Mw)3367、分子量分散度(Mw/Mn)約1.45の線状α−1,4−D−グルカンを出発原料とし、この線状α−1,4−D−グルカンの10%水分散液を加熱しゲル化させた後冷却する処理(戻し凝集処理)を行うことにより製造されている。この方法により得られる生成物においては、RS含有量が70〜87%まで上昇している。特許文献4および5はさらに、線状α−1,4−D−グルカンの濃度を30%に上昇させて同様の戻し凝集処理を行うことによる、RS含有量93〜94%の生成物の製造を記載している。
【0009】
このように特許文献4および5は、アミロスクラーゼで製造される比較的低分子量のα−1,4−D−グルカンを、戻し凝集という特殊な処理を行い、RS含有量を最大94%まで高めた生成物を開示している。しかしながら、ここではRS含有量が100%でないため、当然消化される成分が含まれている。従って、特許文献4および5はα−アミラーゼによる分解を実質的に受けないアミロース粒子を示唆も開示していない。特許文献4および5は、α−アミラーゼによる分解性がα−1,4−D−グルカンの分子量および分子量分散度に大きな影響を受けることを示唆も開示もしていない。特許文献4および5は、α−アミラーゼによる分解を実質的に受けないアミロース粒子が、戻し凝集という処理を経なくても製造可能であることについて示唆も開示もしていない。
【0010】
特許文献4および5は、その発明に使用可能なα−1,4−D−グルカンを、請求項では分子量が75〜10,000,000と非常に広く規定している。しかしながらこの記載は理解不可能である。下限の75は、グルコースの分子量(180)より小さく、α−1,4−D−グルカンの分子量としてそもそも適切でない。さらにグルコース(分子量180)およびマルトオリゴ糖(分子量360〜1800)は最も消化吸収に優れた糖質であり、これらが難消化性澱粉とは理解できない。さらに特許文献4および5の発明者らが、実施例で使用しているのは、アミロスクラーゼを利用して製造されるα−1,4−D−グルカンのみである。この方法についての説明は0032〜0034段落にあるが、この方法で製造されるα−1,4−D−グルカンの分子量は、実施例で開示のとおり、平均分子量で数千(数平均分子量2326、重量平均分子量3367)程度でしかない。さらにアミロスクラーゼを利用するα−1,4−D−グルカンの製造法では、原理的に分子量1万を超えるようなα−1,4−D−グルカンを合成することはできない。高分子量α−1,4−D−グルカンを作るためには、0034段落に記載されているアクセプター分子のモル数が、スクロースのモル数に対して低い条件で反応させる必要がある。しかし0034段落に記載されているとおり、アミロスクラーゼはスクロースを原料として自身の働きによってアクセプター分子を作り出すことが出来るため、そもそもアクセプター分子の濃度を低くコントロールすることはできない。また、この方法では分子量分散度を制御する手段もない。従って、特許文献4および5は、重量平均分子量が12,000以上のアミロースを実質的に記載していない。
【0011】
特許文献6(特表2002−533107号公報)および特許文献7(国際公開第00/38537号パンフレット)は、水不溶性の線状α−1,4−D−グルカンおよび/またはそれから得られるレジスタントスターチ、および少なくとも一つの食品添加物または飼料添加物を含む組成物、および該組成物を使用して得られる食品と薬品について開示している。特許文献6および7は、最も好適に利用される線状α−1,4−D−グルカンは、重量平均分子量(Mw)2000〜8000(0031段落)、分子量分散度(Mw/Mn)1.5〜15(0033段落)であると開示している。また、特許文献6および7は、重合度10から35の含有量が高い線状α−1,4−D−グルカンが好ましい(0032段落)と開示している。また、当該水不溶性の線状α−1,4−D−グルカン具体的な製造法として、スクロースにアミロスクラーゼという酵素を作用させる方法を開示している(0040〜0042段落)。さらにこの線状α−1,4−D−グルカンに特許文献4(特表2002−520425号公報)の方法を利用して製造されたレジスタントスターチが好適に利用できると開示している。また、水不溶性の線状α−1,4−D−グルカンおよび/またはそれから得られるレジスタントスターチは特に好ましくは平均直径が1μmから5μmの微粒子であることが好適であるとしている(0063段落)。
【0012】
特許文献6および7の請求項は非常に広範囲であるが、具体的に実施例で開示されているのは、数平均分子量(Mn)2326、重量平均分子量(Mw)3367、分子量分散度(Mw/Mn)約1.45の線状α−1,4−D−グルカンを利用した場合である。そしてこの線状α−1,4−D−グルカンを特許文献4(特表2002−520425号公報)に記載の方法(α−1,4−D−グルカンの水分散液を加熱しゲル化させた後冷却する、戻し凝集処理)に従い製造した生成物(RS含有量70〜87%)をさらに実施例で使用している。この生成物を含有するヨーグルトを人に摂取させる試験が行われた。特許文献6および7の表2の結果を以下の表1に抜粋する。
【0013】
【表1】

レジスタントスターチ含有ヨーグルト摂取群(RSビフィド後)は、レジスタントスターチなしヨーグルト摂取群(LC後)と比較し、糞便中のビフィド菌の相対的含有量が増加(10.3%→13.9%)していることが開示されている。
【0014】
他方、糞便量に関しては、RSビフィド後においてプラスマイナス35gという誤差を考慮すると、レジスタントスターチなしヨーグルトの摂取による糞便量の増加(137g−125g=12g)とレジスタントスターチ含有ヨーグルト摂取による糞便量の増加(148g−127g=21g)とは実質的に差がなく、このことは、レジスタントスターチの有無が糞便量に実質的に影響を与えないことを示している。この結果は、特許文献6および7のレジスタントスターチが大腸内で糞便量を増加させるほどの作用は発揮できていないことを示している。
【0015】
このように、特許文献6および7は、大腸のビフィド菌を活性化するが、大腸内での食物繊維の役割である便通改善剤として作用しないレジスタントスターチを開示している。特許文献6および7は、消化される成分を含まない、つまり実質的にα−アミラーゼによる分解を受けないアミロース粒子の摂取についてもその効果についても示唆も開示もしていない。
【0016】
逆に、上記特許文献6および7の表2から理解されるとおり、アミロースは大腸内で糞便量を増加させる食物繊維としての作用がないということが技術常識であった。
【0017】
特許文献8(国際公開第2002/097107号パンフレット)には、SP−GP法を利用したグルカンの製造法が記載されている。特許文献8には、不溶性アミロースには食物繊維と同様の働きが予測され、健康食品への利用も期待できることが記載されている。特許文献8は、種々の条件でグルカンを合成することを記載している。しかし、特許文献8は、グルカンの分子量が代表的には約8×10以上であり、好ましくは約1×10以上であると記載しているが、具体的な重量平均分子量については表15に712KDaまたは715KDaと記載するだけであり、重量平均分子量が12,000〜55,000という低分子量のグルカンの有する特徴については記載していない。このような高分子量のグルカンは水溶性であり、非常に濃度を高くするかまたはエタノールなどの有機溶媒を用いなければ沈澱を形成しない。特許文献8では、限外濾過を行って精製しているが、これは、グルカンが溶解していることを示す。特許文献8はまた、アミロースを冷却することによりアミロース粒子が形成されることを記載していない。
【0018】
特許文献9(特開2004−315481号公報)は、重量平均分子量約1万のアミロースおよび3万のアミロースを開示する。特許文献9は、種々の分子量のα−1,4グルカンを合成し、その中で重量平均分子量約1万または3万の低分子のα−1,4グルカンは沈殿を形成し、水不溶性であることを記載している。しかし、特許文献9は、12,000〜55,000という低分子量のグルカンの有する特性については記載していない。特許文献9では、106mMのスクロースを用いてアミロースを合成している。特許文献9の条件で合成されるアミロース濃度は約1.6重量%程度である。特許文献9には、「16時間保温し、反応終了後、生成したα−1,4−グルカンの収率(%)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を決定した」と記載されている。すなわち、特許文献9では、冷却を行っていないし、反応終了後、すぐに測定を行っている。アミロース粒子の大きさに影響を与えるのは、アミロース濃度、冷却温度、冷却時間、冷却時の攪拌の有無などである。特許文献9に記載されるアミロース濃度で、冷却を行わずに、短時間で形成されるアミロース粒子の平均粒子径は、非常に小さい。本願明細書の評価例5に記載するように、同じ分子量のアミロースから形成されるアミロース粒子であっても、平均粒子径が小さいと消化性が高い。このように、特許文献9に記載される沈澱は、消化性の高いものである。特許文献9はまた、アミロースを冷却することにより食物繊維として作用するアミロース粒子が形成されることを記載していない。
【0019】
特許文献10(国際公開第2005/010093号パンフレット)は、重量平均分子量約3万のα−1,4−グルカンを開示する。特許文献10は、生成したα−1,4−グルカンが低分子量である場合は生成物が反応液中で沈澱すること、および沈澱/可溶化の境界が一般に分子量約100kDa(すなわち、約10万Da)程度であることを記載している。しかし、特許文献10は、12,000〜55,000という低分子量のグルカンの有する特性については記載していない。特許文献10では、106mMのスクロースを用いてアミロースを合成している。特許文献10の条件で合成されるアミロース濃度は約1.6重量%程度である。特許文献10には、「16時間保温し、反応終了後、生成したα−1,4−グルカンの収率(%)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を決定した」と記載されている。すなわち、特許文献10では、冷却を行っていないし、反応終了後、すぐに測定を行っている。特許文献10に記載されるアミロース濃度で、冷却を行わずに、短時間で形成されるアミロース粒子の平均粒子径は、非常に小さい。そのため、特許文献10に記載される沈澱は、消化性の高いものである。特許文献10はまた、アミロースを冷却することにより食物繊維として作用するアミロース粒子が形成されることを記載していない。
【0020】
特許文献11(国際公開第2005/05018678号パンフレット)は、重量平均分子量約1万、3万のα−1,4−グルカンを開示する。特許文献11は、種々の分子量のα−1,4グルカンを合成し、その中で重量平均分子量約1万および3万の低分子のα−1,4グルカンは沈殿を形成し、水不溶性であることを記載している。特許文献11は、生成したα−1,4−グルカンが低分子量である場合は生成物が反応液中で沈澱すること、および分子量約200kDa(すなわち、約20万Da)未満では沈澱し、その結晶形が老化型および非晶質であることを記載している。しかし、特許文献11は、12,000〜55,000という低分子量のグルカンの有する特性については記載していない。特許文献11では、106mMのスクロースを用いてアミロースを合成している。特許文献11の条件で合成されるアミロース濃度は約1.6重量%程度である。特許文献11には、「16時間保温し、反応終了後、生成したα−1,4−グルカンの収率(%)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を決定した」と記載されている。すなわち、特許文献11では、冷却を行っていないし、反応終了後、すぐに測定を行っている。特許文献11に記載されるアミロース濃度で、冷却を行わずに、短時間で形成されるアミロース粒子の平均粒子径は、非常に小さい。そのため、特許文献11に記載される沈澱は、消化性の高いものである。特許文献11はまた、アミロースを冷却することにより食物繊維として作用するアミロース粒子が形成されることを記載していない。
【特許文献1】特開平7−252301号公報
【特許文献2】特開平10−195105号公報
【特許文献3】特開平11−255802号公報
【特許文献4】特表2002−520425号公報
【特許文献5】国際公開第00/02926号パンフレット
【特許文献6】特表2002−533107号公報
【特許文献7】国際公開第00/38537号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2002/097107号パンフレット
【特許文献9】特開2004−315481号公報
【特許文献10】国際公開第2005/010093号パンフレット
【特許文献11】国際公開第2005/05018678号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、実質的にα−アミラーゼによる分解を受けないアミロース粒子を提供すること、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アミロースの消化性には非常に大きな重合度依存性があることを見出し、さらに詳細に研究を行ったところ、重量平均分子量が12,000〜55,000で、かつ分子量分散度が1.25以下のアミロースから実質的になるアミロース粒子は、インビトロのα−アミラーゼ消化試験では、実質的に分解を受けず、かつ経口投与しても血糖上昇をもたらさない性質を有していることを見出し、本発明を完成させた。さらに本発明のアミロース粒子を経口摂取した場合、糞便量の顕著な上昇が見られ、食物繊維としての機能が強く発現していることを確認した。
【0023】
このように本発明は、α−アミラーゼによる分解を実質的に受けない特徴を有するアミロース粒子という新規飲食品原料、医薬品素材および医薬部外品素材を初めて提供するものであり、さらにはその機能を生かした飲食品および医薬品および医薬部外品の開発を可能とするものである。
【0024】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する:
(項目1)
重量平均分子量が12,000〜55,000で、かつ分子量分散度が1.25以下のアミロースからなるアミロース粒子であって、かつ、α−アミラーゼによる分解を実質的に受けない、アミロース粒子。
【0025】
(項目2)
前記アミロースの重量平均分子量が15,000〜45,000である、項目1に記載のアミロース粒子。
【0026】
(項目3)
前記アミロースの重量平均分子量が18,000〜40,000である、項目1に記載のアミロース粒子。
【0027】
(項目4)
平均粒子径が10マイクロメートル以上1000マイクロメートル以下である、項目1に記載のアミロース粒子。
【0028】
(項目5)
血糖値上昇抑制用の飲食品素材であって、項目1に記載のアミロース粒子を含む、飲食品素材。
【0029】
(項目6)
糞便量を増大させるための飲食品素材であって、項目1に記載のアミロース粒子を含む、飲食品素材。
【0030】
(項目7)
脂質の吸収を抑制させるための飲食品素材であって、項目1に記載のアミロース粒子を含む、飲食品素材。
【0031】
(項目8)
血糖値上昇抑制用の医薬品または医薬部外品の素材であって、項目1に記載のアミロース粒子を含む、医薬品または医薬部外品の素材。
【0032】
(項目9)
糞便量を増大させるための医薬品または医薬部外品の素材であって、項目1に記載のアミロース粒子を含む、医薬品または医薬部外品の素材。
【0033】
(項目10)
脂質の吸収を抑制させるための医薬品または医薬部外品の素材であって、項目1に記載のアミロース粒子を含む、医薬品または医薬部外品の素材。
【0034】
(項目11)
重量平均分子量が12,000〜55,000で、かつ分子量分散度が1.25以下の酵素合成アミロースから実質的になるアミロース粒子の製造方法であって、該方法は、
グルカンホスホリラーゼの酵素反応により、重量平均分子量が12,000〜55,000、かつ分子量分散度が1.25以下のアミロースを生成させる工程;
該アミロースを含む反応液を冷却してアミロース粒子を形成させる工程;
該アミロース粒子を回収する工程;
を包含する、方法。
【0035】
(項目12)
前記プライマーが、マルトオリゴ糖である、項目11に記載の方法。
【0036】
(項目13)
前記アミロース粒子が、α−アミラーゼによる分解を実質的に受けない、項目11に記載の方法。
【0037】
(項目14)
前記冷却が、前記アミロース粒子の平均粒子径が10マイクロメートル以上1000マイクロメートル以下となる冷却条件で行われる、項目11に記載の方法。
【0038】
(項目15)
前記アミロース粒子を水で洗浄する工程をさらに包含する、項目11に記載の方法。
【0039】
(項目16)
項目1に記載のアミロース粒子を含有する飲食品。
【0040】
(項目17)
項目1に記載のアミロース粒子を含有する医薬品または医薬部外品。
【発明の効果】
【0041】
本発明のアミロース粒子は、これまで公開されてきた難消化性澱粉およびアミロースとは、その成分が異なり、またその製造方法が異なっており、従来技術に対し新規性を有している。
【0042】
さらに本発明のアミロース粒子は、実質的に非消化性成分のみからなり、消化される成分を実質的に有していない。ここに従来技術からの進歩性が認められる。さらに今回のアミロース粒子は消化される成分を実質的に有していないため、経口摂取しても、血糖値を実質的に上昇させないという優位性を有している。さらに今回のアミロース粒子は消化される成分を実質的に有していないため、他の難消化性澱粉よりも優れた糞便増加機能を有しており、ここにも進歩性が認められる。
【0043】
特に実質的に非消化性成分のみからなり、消化される成分を実質的に有していないアミロース粒子を提供することの価値は以下にあると思われる。
【0044】
食物繊維は、ヒトの消化酵素で分解されず、整腸作用、便通作用など腸内環境改善効果、血糖値上昇抑制作用、コレステロール低下作用がある。特にセルロースはヒトの消化酵素でまったく分解されない。一方、従来公知の難消化性澱粉はわずかであるがヒトの消化酵素により分解され代謝される。そのため血中のグルコース濃度の上昇をもたらす。難消化性澱粉を便通改善など腸内環境改善効果を期待した飲食品に利用する場合、その効果を発揮するために難消化性澱粉の多量の添加が必要となり、代謝される糖質含量も増える。その結果、血中のグルコース濃度の上昇につながる。例えば、食物繊維を糖尿病患者向けの低カロリー飲食品に利用する場合、エネルギー摂取量および血中に取り込まれるグルコース量の影響は大きく、特に重度の糖尿病患者にとって食物繊維中の微量の消化成分は無視できない。本発明の消化される部分を有していないアミロース粒子の効果は飲食品産業にとって、医薬品産業にとって、また、医薬部外品産業にとって、非常に重要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0046】
(1.アミロース粒子)
本発明のアミロース粒子は、α−アミラーゼによる分解を実質的に受けない。本明細書中で用語「α−アミラーゼによる分解を実質的に受けない」とは、アミロース粒子10mgを水10mlに懸濁した試料にブタ膵臓α−アミラーゼ(3.25U)を37℃にて2時間作用させた場合のアミロース粒子の残存率が95%以上であることをいう。この場合のアミロース粒子の残存率は好ましくは約95.5%以上であり、より好ましくは約96%以上であり、さらに好ましくは約97%以上であり、一層好ましくは約98%以上であり、特に好ましくは約99%以上であり、最も好ましくは100%である。上限は特にないが、例えば、100%以下のものを使用可能である。本発明のアミロース粒子は、アミロース粒子10mgを水10mlに懸濁した試料にブタ膵臓α−アミラーゼ(3.25U)を37℃にて約2時間以上作用させた場合のアミロース粒子の残存率が95%以上であることが好ましい。本発明のアミロース粒子は、作用時間が好ましくは約3時間以上、より好ましくは約4時間以上、さらに好ましくは約5時間以上である場合に95%以上の残存率を示すことが好ましい。なお、本明細書中では、α−アミラーゼによる分解を実質的に受けないことを、「アミラーゼ抵抗性がある」または「アミラーゼ抵抗性がほぼ100%である」ともいう。
【0047】
本発明のアミロース粒子は、実質的にアミロースからなる。本明細書中では用語「実質的にアミロースからなる」とは、アミロースが約95重量%以上を占めることをいう。アミロース粒子中のアミロースの含有量は、好ましくは約95.5重量%以上であり、より好ましくは約96重量%以上であり、さらに好ましくは約97重量%以上であり、一層好ましくは約98重量%以上であり、特に好ましくは約99重量%以上であり、最も好ましくは約100%である。
【0048】
本明細書中で用語「アミロース」とは、α−1,4−グルコシド結合によって連結された2以上のD−グルコース単位から構成される直鎖状の糖をいう。
【0049】
本発明のアミロース粒子に含まれるアミロースの重量平均分子量は、約12,000以上であり、より好ましくは約13,000以上であり、さらに好ましくは約15,000以上であり、一層好ましくは約17,000以上であり、特に好ましくは約18,000以上であり、最も好ましくは約19,000以上である。本発明のアミロース粒子に含まれるアミロースの重量平均分子量は、約55,000以下であり、より好ましくは約54,000以下であり、さらに好ましくは約53,000以下であり、さらにより好ましくは約52,000以下であり、一層好ましくは約50,000以下であり、さらに一層好ましくは約45,000以下であり、特に好ましくは約40,000以下であり、最も好ましくは約37,000以下である。
【0050】
本発明のアミロース粒子に含まれるアミロースの分子量分散度は、1.25以下である。本明細書中では、分子量分散度とは、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)をいう。本明細書中では、分子量分散度を「分子量分布(Mw/Mn)」と記載する場合もある。分子量分散度は、好ましくは1.24以下であり、より好ましくは1.23以下であり、さらに好ましくは1.2以下であり、いっそう好ましくは1.15以下であり、特に好ましくは1.1以下である。
【0051】
アミロースのような高分子は、一般に均一な分子ではなく、種々の大きさの分子の混合物であるため、その分子量は数平均分子量(Mn)もしくは重量平均分子量(Mw)で評価する。Mnは、その系の全質量を、その系に含まれる分子の個数で割ったものである。すなわち数分率による平均である。一方、Mwは重量分率による平均である。完全に均一な物質であれば、Mw=Mnとなるが、高分子は一般に分子量分布を有するためMw>Mnとなる。したがって、Mw/Mnが1に近いほど、分子量の均一度が大きい(分子量分布が狭い)ということになる。一般的に高分子物質は、分子量により性質が異なるため、分子量分布の大きな高分子はさまざまな性質をもったものの混合物となる。このため、特定の機能を発揮させたいときには、分子量分布の狭いものが好適に利用される。
【0052】
Mnは、分子の個数を評価することにより、決定できる。すなわち、アミロースなどにおいては、還元性末端数を測定することにより決定できる。還元性末端数の測定は、例えばTakata,H.ら,Cyclization reaction catalyzed by branching enzyme.J.Bacteriol.,1996.178:p.1600−1606に記載されるModified Park−Johnson法により決定できる。また、Mnは、Takata,H.ら,J.Appl.Glycosci.,2003.50:p.15−20に記載される示差屈折計と多角度光散乱検出器とを併用したゲルろ過クロマトグラフィー(MALLS法)によっても、決定できる。Mwは、Takata,H.ら,J.Appl.Glycosci.,2003.50:p.15−20に記載されるMALLS法によって決定できる。
【0053】
本発明のアミロース粒子の平均粒子径は、好ましくは約10マイクロメートル以上であり、より好ましくは約20マイクロメートル以上であり、さらに好ましくは約30マイクロメートル以上であり、特に好ましくは約40マイクロメートル以上であり、最も好ましくは約50マイクロメートル以上である。本発明のアミロース粒子の平均粒子径は、好ましくは約1000マイクロメートル以下であり、より好ましくは約500マイクロメートル以下であり、さらに好ましくは約400マイクロメートル以下であり、さらにより好ましくは約300マイクロメートル以下であり、特に好ましくは約200マイクロメートル以下であり、最も好ましくは約100マイクロメートル以下である。本明細書中の「平均粒子径」とは、数平均粒子径であり、数平均粒子径は、島津レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−2200、(株)島津製作所製)によって測定され得る。
【0054】
(2.アミロース粒子の製造方法)
本発明のアミロース粒子は、グルカンホスホリラーゼの酵素反応により、重量平均分子量が12,000〜55,000で、かつ分子量分散度が1.25以下のアミロースを生成させる工程;該アミロースを含む反応液を冷却してアミロース粒子を形成させる工程;および該アミロース粒子を回収する工程により製造される。より具体的には、グルカンホスホリラーゼの酵素反応の方法としては、グルカンホスホリラーゼ(GP)とスクロースホスホリラーゼ(SP)とを併用してスクロースに作用させる方法(SP-GP法という)、グルカンホスホリラーゼ(GP)を単独でグルコース−1−リン酸に作用させる方法(GP法)、グルカンホスホリラーゼ(GP)とβ−1,4−グルカンホスホリラーゼ(CP)とを併用してβ−1,4−グルカンに作用させる方法(CP-GP法)の三種類の方法が可能である。このような、グルカンホスホリラーゼを利用して製造されるアミロースは、酵素合成アミロースとも呼ばれる。
【0055】
SP−GP法による本発明のアミロース粒子は、スクロース、無機リン酸もしくはグルコース−1−リン酸、プライマー、スクロースホスホリラーゼ、グルカンホスホリラーゼおよび水を含有する反応液をインキュベートして、重量平均分子量が12,000〜55,000で、かつ分子量分散度が1.25以下のアミロースを生成させる工程;該アミロースを含む反応液を冷却してアミロース粒子を形成させる工程;および該アミロース粒子を回収する工程を包含する。
【0056】
GP法による本発明のアミロース粒子は、グルコース−1−リン酸、プライマー、グルカンホスホリラーゼおよび水を含有する反応液をインキュベートして、重量平均分子量が12,000〜55,000で、かつ分子量分散度が1.25以下のアミロースを生成させる工程;該アミロースを含む反応液を冷却してアミロース粒子を形成させる工程;および該アミロース粒子を回収する工程により製造される。
【0057】
CP−GP法による本発明のアミロース粒子は、β−1,4−グルカン、無機リン酸もしくはグルコース−1−リン酸、プライマー、β−1,4−グルカンホスホリラーゼ、グルカンホスホリラーゼおよび水を含有する反応液をインキュベートして、重量平均分子量が12,000〜55,000で、かつ分子量分散度が1.25以下のアミロースを生成させる工程;該アミロースを含む反応液を冷却してアミロース粒子を形成させる工程;および該アミロース粒子を回収する工程により製造される。
【0058】
本発明の製造方法を用いた場合、戻り凝集などの複雑な工程を行う必要がない。
【0059】
(2.1 材料)
本発明の製造方法では、例えば、スクロース、プライマー、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸、β−1,4−グルカン、スクロースホスホリラーゼ、グルカンホスホリラーゼ、β−1,4−グルカンホスホリラーゼおよびそれを溶かしている溶媒である水を主な材料として用いる。これらの材料は通常、反応開始時に全て添加されるが、反応の途中でこれらのうちの任意の材料を追加して添加してもよい。
【0060】
(2.1.1 スクロース)
スクロースは、C122211で示される、分子量約342の二糖である。スクロースは、光合成能を有するあらゆる植物中に存在する。スクロースは、植物から単離されてもよいし、化学的に合成されてもよい。コストの面からみて、スクロースを植物から単離することが好ましい。スクロースを多量に含む植物の例としては、サトウキビ、サトウダイコンなどが挙げられる。サトウキビは、汁液中に約20%のスクロースを含む。サトウダイコンは、汁液中に約10〜15%のスクロースを含む。スクロースは、スクロースを含む植物の汁液から精製糖に至るいずれの精製段階のものとして提供されてもよい。
【0061】
本発明の方法で使用されるスクロースは、純粋なものであることが好ましい。しかし、本発明のスクロースの効果を阻害しない限り、任意の他の夾雑物を含んでいてもよい。
【0062】
溶液中に含まれるスクロースの濃度は、代表的には約5〜100%、好ましくは約8〜80%、より好ましくは約8〜50%である。なお、本明細書中でスクロースの濃度は、Weight/Volumeで、すなわち、
(スクロースの重量)×100/(溶液の容量)
で計算する。スクロースの重量が多すぎると、反応中に未反応のスクロースが析出する場合がある。スクロースの使用量が少なすぎると、高温での反応において収率が低下する場合がある。
【0063】
(2.1.2 無機リン酸もしくはグルコース−1−リン酸)
本明細書中において、無機リン酸とは、スクロースホスホリラーゼの反応においてリン酸基質を供与し得る物質をいう。ここでリン酸基質とは、グルコース−1−リン酸のリン酸部分(moiety)の原料となる物質をいう。スクロースホスホリラーゼによって触媒されるスクロース加リン酸分解において、無機リン酸はリン酸イオンの形態で基質として作用していると考えられる。当該分野ではこの基質を慣習的に無機リン酸というので、本明細書中でも、この基質を無機リン酸という。無機リン酸には、リン酸およびリン酸の無機塩が含まれる。通常、無機リン酸は、アルカリ金属イオンなどの陽イオンを含む水中で使用される。この場合、リン酸とリン酸塩とリン酸イオンとは平衡状態になるので、リン酸とリン酸塩とは区別をしにくい。従って、便宜上、リン酸とリン酸塩とを合わせて無機リン酸という。無機リン酸は、反応開始時の反応溶液中に1種類のみ含有されてもよく、複数種類含有されてもよい。
【0064】
無機リン酸は、例えば、ポリリン酸(例えば、ピロリン酸、三リン酸および四リン酸)のようなリン酸縮合体またはその塩を、物理的、化学的または酵素反応などによって分解したものを反応溶液に添加することによって提供され得る。
【0065】
本明細書において、グルコース−1−リン酸とは、グルコース−1−リン酸(C13P)およびその塩をいう。グルコース−1−リン酸は好ましくは、狭義のグルコース−1−リン酸(C13P)の任意の金属塩であり、より好ましくはグルコース−1−リン酸(C13P)の任意のアルカリ金属塩である。グルコース−1−リン酸の好ましい具体例としては、グルコース−1−リン酸二ナトリウム、グルコース−1−リン酸二カリウム、グルコース−1−リン酸(C13P)、などが挙げられる。本明細書において、括弧書きで化学式を書いていないグルコース−1−リン酸は、広義のグルコース−1−リン酸、すなわち狭義のグルコース−1−リン酸(C13P)およびその塩を示す。
【0066】
グルコース−1−リン酸は反応開始時の反応溶液中に、1種類のみ含有されてもよく、複数種類含有されていてもよい。
【0067】
反応溶液中に含まれる無機リン酸のモル濃度とグルコース−1−リン酸のモル濃度との合計は、代表的には約1mM〜約1000mM、好ましくは約10mM〜約500mM、より好ましくは約20mM〜約250mMである。無機リン酸およびグルコース−1−リン酸の量が多すぎると、アミロースの収率が低下する場合がある。使用量が少なすぎると、アミロースの合成に時間がかかる場合がある。
【0068】
反応溶液中の無機リン酸の含有量は、国際公開第02/097107号パンフレットの1.4に記載の方法によって定量され得る。反応溶液中のグルコース−1−リン酸の含有量は、国際公開第02/097107号パンフレットの1.3に記載の方法によって定量され得る。反応に関与しないリン含有物質を使わない場合、そのような場合は原子吸光法によって無機リン酸およびグルコース−1−リン酸の合計含有量を測定してもよい。
【0069】
(2.1.3 プライマー)
本発明の方法で用いられるプライマーは、本発明で使用されるアミロースの合成において出発物質として作用する分子をいう。プライマーは、α−1,4−グルコシド結合で糖単位が結合できる遊離部分を1個以上有すれば、他の部分は糖以外の部分によって形成されていてもよい。本発明の方法では、プライマーに対して糖単位がα−1,4−グルコシド結合で順次結合されて、アミロースが合成される。プライマーとしては、グルカンホスホリラーゼによって糖単位が付加され得る任意の糖が挙げられる。本発明で用いられるプライマーは、α−1,4−グルコシド結合のみを含むα−1,4−グルカンであることが好ましい。
【0070】
プライマーの例としては、低分子量アミロースが挙げられる。
【0071】
本明細書中でプライマーに用いられる、用語「低分子量アミロース」とは、重合度が50以下のアミロースをいう。本発明で用いられる低分子量アミロースの重合度は、好ましくは約2以上であり、より好ましくは約3以上であり、さらに好ましくは約4以上である。本発明で用いられる低分子量アミロースの重合度は、好ましくは約50以下であり、より好ましくは約40以下であり、さらに好ましくは約30以下であり、一層好ましくは約30以下であり、特に好ましくは約20以下であり、最も好ましくは約10以下である。低分子量アミロースのうち、重合度が2以上10以下のものは特に、マルトオリゴ糖ともいう。
【0072】
本明細書中では、用語「マルトオリゴ糖」とは、2〜10個のグルコースが脱水縮合して生じた物質であって、α−1,4結合によって連結された物質をいう。マルトオリゴ糖の重合度は、好ましくは約4以上であり、より好ましくは約5以上であり、さらに好ましくは約7以上である。マルトオリゴ糖の重合度は、好ましくは約10以下であり、より好ましくは約9以下であり、さらに好ましくは約8以下である。
【0073】
マルトオリゴ糖の例としては、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース、マルトオクタオース、マルトノナオース、マルトデカオースなどのマルトオリゴ糖が挙げられる。マルトオリゴ糖は、好ましくはマルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオースまたはマルトヘプタオースである。
【0074】
プライマーは1種類の化合物であっても、複数の化合物の混合物であってもよい。コストが低いため、マルトオリゴ糖の混合物をプライマーとして使用することが好ましい。
【0075】
合成されるアミロースの重合度は、使用されるプライマーの重合度、およびプライマーのモル濃度と基質のモル濃度との比率によって決定される。ここでいう基質とは、SP-GP法ではスクロース、GP法ではグルコース−1−リン酸、CP-GP法ではβ−1,4−グルカンのことである。使用されるプライマーの重合度が同じであれば、基質のモル濃度に対するプライマーのモル濃度が多くなるほど、得られるアミロースの重合度は小さくなる。
【0076】
好ましい実施形態では、本発明の方法においては、重合度2〜10のマルトオリゴ糖をプライマーとして使用する場合、基質のモル濃度を100としたときのプライマーのモル濃度は、好ましくは約0.45以上であり、より好ましくは約0.5以上であり、さらに好ましくは約0.55以上であり、さらにより好ましくは約0.6以上であり、特に好ましくは約0.65以上であり、最も好ましくは約0.7以上である。本発明の方法においては、重合度2〜10のマルトオリゴ糖をプライマーとして使用する場合、基質のモル濃度を100としたときのプライマーのモル濃度は、好ましくは約4.5以下であり、より好ましくは約4以下であり、さらに好ましくは約3.5以下であり、さらに好ましくは約3以下であり、さらにより好ましくは約2.5以下であり、特に好ましくは約2.2以下であり、最も好ましくは約2.0以下である。
【0077】
(2.1.4 β−1,4−グルカン)
本明細書中では「β−1,4−グルカン」とは、D−グルコースを構成単位とする糖であって、β−1,4−グルコシド結合によって連結された糖単位を少なくとも2糖単位以上有する糖をいう。β−1,4−グルカンは、直鎖状の分子であり得る。直鎖状β−グルカンとβ−1,4−グルカンとセルロースとは同義語である。直鎖状β−グルカンでは、β−1,4−グルコシド結合によってのみ糖単位の間が連結されている。1分子のβ−1,4−グルカンに含まれる糖単位の数を、このβ−1,4−グルカンの重合度という。β−1,4−グルカンの重合度は、好ましくは、約2〜約10であり、より好ましくは約2〜約8であり、より好ましくは約2〜約5である。重合度が約2〜約10のβ−1,4−グルカンを、セロオリゴ糖ともいう。重合度が2のβ−1,4−グルカンを特に、セロビオースという。重合度が3のβ−1,4−グルカンをセロトリオースという。重合度が4のβ−1,4−グルカンをセロテトラオースという。β−1,4−グルカンの重合度が低いほど溶解度が高く、取り扱いが容易であるので、重合度の低いβ−1,4−グルカンがより好ましい。β−1,4−グルカンは、あらゆる植物中に存在する。β−1,4−グルカンは、植物から単離されたまま未改変のものであってもよく、植物から単離したものを化学的または酵素的に処理することによって得られたものであってもよい。β−1,4−グルカンはまた、古紙、建材、古布などの廃棄物から再生されるセルロースまたはそれから調製されたものであってもよい。例えば、植物から単離した高分子量のセルロースに対してセルラーゼを作用させることによって、より低分子量のセロオリゴ糖が得られる。植物からセロオリゴ糖を大量に生産する方法は当該分野で公知である。このような文献の例としては、特開2001−95594号公報が挙げられる。β−1,4−グルカンは、β−1,4−グルカンを含む植物破砕液から精製β−1,4−グルカンに至るいずれの生成段階のものとして提供されてもよい。本発明の方法で使用されるβ−1,4−グルカンは、純粋なものであることが好ましい。しかし、本発明で用いる酵素の作用を阻害しない限り、任意の他の夾雑物を含んでいてもよい。
【0078】
溶液中に含まれるβ−1,4−グルカンの濃度は、代表的には約0.1%〜約40%であり、好ましくは約0.5%〜約30%であり、より好ましくは約1%〜約20%であり、特に好ましくは約2%〜約15%であり、最も好ましくは約3%〜約12%である。なお、本明細書中でβ−1,4−グルカンの濃度は、Weight/Volumeで、すなわち、
(β−1,4−グルカンの重量)×100/(溶液の容量)
で計算する。β−1,4−グルカンの重量が多すぎると、溶液中に未反応のβ−1,4−アミロースが析出する場合がある。β−1,4−グルカンの使用量が少なすぎると、高温での反応において、反応自体は起こるものの、収率が低下する場合がある。
【0079】
(2.1.5 スクロースホスホリラーゼ(EC.2.4.1.7))
本明細書中では、「スクロースホスホリラーゼ」とは、スクロースのα−グリコシル基をリン酸基に転移して加リン酸分解を行う任意の酵素をいう。スクロースホスホリラーゼによって触媒される反応は、次式により示される:
【0080】
【化1】

スクロースホスホリラーゼは、自然界では種々の生物に含まれる。スクロースホスホリラーゼを産生する生物の例としては、Streptococcus属に属する細菌(例えば、Streptococcus thermophilus、Streptococcus mutans、Streptococcus pneumoniae、およびStreptococcus mitis)、Leuconostoc mesenteroides、Pseudomonas sp.、Clostridium sp.、Pullularia pullulans、Acetobacter xylinum、Agrobacterium sp.、Synecococcus sp.、E.coli、Listeria monocytogenes、Bifidobacterium adolescentis、Aspergillus niger、Monilia sitophila、Sclerotinea escerotiorum、およびChlamydomonas sp.が挙げられるがこれらに限定されない。
【0081】
スクロースホスホリラーゼは、スクロースホスホリラーゼを産生する任意の生物由来であり得る。スクロースホスホリラーゼは、ある程度の耐熱性を有することが好ましい。スクロースホスホリラーゼは、単独で存在する場合の耐熱性が高ければ高いほど好ましい。例えば、スクロースホスホリラーゼを4%のスクロース存在下で55℃にて30分間加熱した場合に加熱前のスクロースホスホリラーゼの活性の50%以上の活性を保持するものであることが好ましい。スクロースホスホリラーゼは、好ましくはStreptococcus属の細菌由来であり、さらに好ましくはStreptococcus mutans、Streptococcus thermophilus、Streptococcus pneumoniaeまたはStreptococcus mitis由来である。
【0082】
本明細書中では、酵素がある生物に「由来する」とは、その生物から直接単離したことのみを意味するのではなく、その生物を何らかの形で利用することによりその酵素が得られることをいう。例えば、その生物から入手したその酵素をコードする遺伝子を大腸菌に導入して、その大腸菌から酵素を単離する場合も、その酵素はその生物に「由来する」という。
【0083】
本発明で用いられるスクロースホスホリラーゼは、上記のような自然界に存在する、スクロースホスホリラーゼを産生する生物から直接単離され得る。本発明で用いられるスクロースホスホリラーゼは、上記の生物から単離したスクロースホスホリラーゼをコードする遺伝子を用いて遺伝子組換えされた微生物(例えば、細菌、真菌など)から単離してもよい。
【0084】
このようなスクロースホスホリラーゼは、当該分野で公知の方法によって調製され得る。例えば、国際公開第02/097107号パンフレットに記載される方法によって調製され得る。
【0085】
スクロースホスホリラーゼは、未精製のものであっても精製されたものであってもよいが、好ましくはある程度精製されたものである。
【0086】
本発明の方法において反応開始時の溶液中に含まれるスクロースホスホリラーゼの量は、反応開始時の溶液中のスクロースに対して、好ましくは約0.05U/gスクロース以上であり、より好ましくは約0.1U/gスクロース以上であり、さらに好ましくは約0.5U/gスクロース以上であり、特に好ましくは約1U/gスクロース以上であり、最も好ましくは約10U/gスクロース以上である。本発明の方法において反応開始時の溶液中に含まれるスクロースホスホリラーゼの量は、反応開始時の溶液中のスクロースに対して、好ましくは約1000U/gスクロース以下であり、より好ましくは約500U/gスクロース以下であり、さらに好ましくは約300U/gスクロース以下であり、特に好ましくは約100U/gスクロース以下であり、最も好ましくは約50U/gスクロース以下である。スクロースホスホリラーゼの重量が多すぎると、反応中に変性した酵素が凝集しやすくなる場合がある。使用量が少なすぎると、アミロースの収率が低下する場合がある。
【0087】
スクロースホスホリラーゼは、固定化されていても固定化されていなくともよい。スクロースホスホリラーゼは、固定化されることが好ましい。固定化の方法としては、担体結合法(たとえば、共有結合法、イオン結合法、または物理的吸着法)、架橋法または包括法(格子型またはマイクロカプセル型)など、当業者に周知の方法が使用され得る。スクロースホスホリラーゼは、担体上に固定化されていることが好ましい。
【0088】
(2.1.6 グルカンホスホリラーゼ(EC.2.4.1.1))
グルカンホスホリラーゼとは、α−1,4−グルカンの加リン酸分解を触媒する酵素の総称であり、ホスホリラーゼ、スターチホスホリラーゼ、グリコーゲンホスホリラーゼ、マルトデキストリンホスホリラーゼなどと呼ばれる場合もある。グルカンホスホリラーゼは、加リン酸分解の逆反応であるα−1,4−グルカン合成反応をも触媒し得る。反応がどちらの方向に進むかは、基質の量に依存する。生体内では、無機リン酸の量が多いので、グルカンホスホリラーゼは加リン酸分解の方向に反応が進む。本発明の方法では、無機リン酸は、スクロースの加リン酸分解に使われ、反応溶液中に含まれる無機リン酸の量が少ないので、α−1,4−グルカンの合成の方向に反応が進む。
【0089】
グルカンホスホリラーゼは、デンプンまたはグリコーゲンを貯蔵し得る種々の植物、動物および微生物中に普遍的に存在すると考えられる。
【0090】
グルカンホスホリラーゼを産生する植物の例としては、藻類、ジャガイモ(馬鈴薯ともいう)、サツマイモ(甘藷ともいう)、ヤマイモ、サトイモ、キャッサバなどの芋類、キャベツ、ホウレンソウなどの野菜類、トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、アワなどの穀類、えんどう豆、大豆、小豆、うずら豆などの豆類などが挙げられる。
【0091】
グルカンホスホリラーゼを産生する動物の例としては、ヒト、ウサギ、ラット、ブタなどの哺乳類などが挙げられる。
【0092】
グルカンホスホリラーゼを産生する微生物の例としては、Thermus aquaticus、Bacillus stearothermophilus、Deinococcus radiodurans、Thermococcus litoralis、Streptomyces coelicolor、Pyrococcus horikoshi、Mycobacterium tuberculosis、Thermotoga maritima、Aquifex aeolicus、Methanococcus Jannaschii、Pseudomonas aeruginosa、Chlamydia pneumoniae、Chlorella vulgaris、Agrobacterium tumefaciens、Clostridium pasteurianum、Klebsiella pneumoniae、Synecococcus sp.、Synechocystis sp.、E.coli、Neurospora crassa、Saccharomyces cerevisiae、Chlamydomonas sp.Sulufolobus acidocaldariusなどが挙げられる。グルカンホスホリラーゼを産生する生物はこれらに限定されない。
【0093】
本発明で用いられるグルカンホスホリラーゼは、ジャガイモ、Thermus aquaticus、Bacillus stearothermophilusに由来することが好ましく、ジャガイモに由来することがより好ましい。本発明で用いられるグルカンホスホリラーゼは、反応至適温度が高いことが好ましい。反応至適温度が高いグルカンホスホリラーゼは、例えば、高度好熱細菌に由来し得る。
【0094】
本発明で用いられるグルカンホスホリラーゼは、上記のような自然界に存在する、グルカンホスホリラーゼを産生する動物、植物、および微生物から直接単離され得る。
【0095】
本発明で用いられるグルカンホスホリラーゼは、これらの動物、植物または微生物から単離したグルカンホスホリラーゼをコードする遺伝子を用いて遺伝子組換えされた微生物(例えば、細菌、真菌など)から単離してもよい。
【0096】
グルカンホスホリラーゼは、上記のスクロースホスホリラーゼと同様に、遺伝子組換えされた微生物から得られ得る。
【0097】
このようなグルカンホスホリラーゼは、当該分野で公知の方法によって調製され得る。例えば、国際公開第02/097107号パンフレットに記載される方法によって調製され得る。
【0098】
グルカンホスホリラーゼは、未精製のものであっても精製されたものであってもよいが、好ましくはある程度精製されたものである。
【0099】
本発明の方法において反応開始時の溶液中に含まれるグルカンホスホリラーゼの量は、反応開始時の溶液中のスクロースに対して、好ましくは約0.05U/gスクロース以上であり、より好ましくは約0.1U/gスクロース以上であり、さらに好ましくは約0.5U/gスクロース以上であり、特に好ましくは約1U/gスクロース以上であり、最も好ましくは約10U/gスクロース以上である。本発明の方法において反応開始時の溶液中に含まれるグルカンホスホリラーゼの量は、反応開始時の溶液中のスクロースに対して、好ましくは約1000U/gスクロース以下であり、より好ましくは約500U/gスクロース以下であり、さらに好ましくは約300U/gスクロース以下であり、特に好ましくは約100U/gスクロース以下であり、最も好ましくは約50U/gスクロース以下である。グルカンホスホリラーゼの使用量が多すぎると、反応中に変性した酵素が凝集しやすくなる場合がある。使用量が少なすぎると、アミロースの収率が低下する場合がある。
【0100】
グルカンホスホリラーゼは、固定化されていても固定化されていなくともよい。グルカンホスホリラーゼは、固定化されることが好ましい。固定化の方法としては、担体結合法(たとえば、共有結合法、イオン結合法、または物理的吸着法)、架橋法または包括法(格子型またはマイクロカプセル型)など、当業者に周知の方法が使用され得る。グルカンホスホリラーゼは、担体上に固定化されていることが好ましい。グルカンホスホリラーゼはまた、スクロースホスホリラーゼと同じ担体上に固定化されていてもよいし、別の担体上に固定化されていてもよい。同じ担体上に固定化されていることが好ましい。
【0101】
(2.1.7 β−1,4−グルカンホスホリラーゼ)
本明細書中では、「β−1,4−グルカンホスホリラーゼ」とは、β−1,4−グルカンの非還元末端側グルコース残基をリン酸基に転移して加リン酸分解を行う任意の酵素をいう。β−1,4−グルカンホスホリラーゼは、加リン酸分解の逆反応であるβ−1,4−グルカン合成反応をも触媒し得る。反応がどちらの方向に進むかは、基質の量に依存するが、この反応は、β−1,4−グルカン合成反応の方向に進みやすい傾向がある。β−1,4−グルカンホスホリラーゼによって触媒される反応は、次式により示される:
【0102】
【化2】

なお、この式において、出発時のβ−1,4−グルカンの重合度が2の場合、β−1,4−グルカンの代わりにグルコースが得られる。
【0103】
β−1,4−グルカンホスホリラーゼは好ましくは、セロビオースホスホリラーゼ(EC:2.4.1.20)またはセロデキストリンホスホリラーゼ(EC:2.4.1.49)である。
【0104】
セロビオースホスホリラーゼは、セロビオースの非還元末端側グルコース残基をリン酸基に転移して加リン酸分解を行う酵素をいう。セロビオースホスホリラーゼによって触媒される反応は、次式により示される:
【0105】
【化3】

セロデキストリンホスホリラーゼは、重合度3以上のセロオリゴ糖の非還元末端側グルコース残基をリン酸基に転移して加リン酸分解を行う酵素をいう。セロオリゴ糖は、セロデキストリンとも呼ばれる。セロデキストリンホスホリラーゼによって触媒される反応は、次式により示される:
【0106】
【化4】

本発明の方法においては、β−1,4−グルカンがセロビオースである場合、β−1,4−グルカンホスホリラーゼとしてセロビオースホスホリラーゼを用いることが好ましい。本発明の方法においては、β−1,4−グルカンがセロオリゴ糖である場合、β−1,4−グルカンホスホリラーゼとしてセロデキストリンホスホリラーゼを用いることが好ましい。本発明の方法においてはまた、β−1,4−グルカンがセロオリゴ糖である場合、β−1,4−グルカンホスホリラーゼとしてセロビオースホスホリラーゼおよびセロデキストリンホスホリラーゼを用いることが好ましい。この場合、セロデキストリンホスホリラーゼの作用によってセロオリゴ糖が分解されることによって生じたグルコース−1−リン酸がα−グルカン合成に使用され、かつ最終的に生じたセロビオースをセロビオースホスホリラーゼによって分解し得るので、セロオリゴ糖からα−グルカンの合成速度がより速くなる。
【0107】
β−1,4−グルカンホスホリラーゼ(好ましくはセロビオースホスホリラーゼまたはセロデキストリンホスホリラーゼ、最も好ましくはセロビオースホスホリラーゼ)は、β−1,4−グルカンホスホリラーゼ(好ましくはセロビオースホスホリラーゼまたはセロデキストリンホスホリラーゼ、最も好ましくはセロビオースホスホリラーゼ)を産生する任意の生物由来であり得る。β−1,4−グルカンホスホリラーゼは、ある程度の耐熱性を有することが好ましい。β−1,4−グルカンホスホリラーゼは、耐熱性が高ければ高いほど好ましい。例えば、β−1,4−グルカンホスホリラーゼを1.4mMの2−メルカプトエタノールを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.5)中で55℃にて20分間加熱した場合に加熱前のβ−1,4−グルカンホスホリラーゼの活性の50%以上の活性を保持するものであることが好ましく、60%以上の活性を保持するものであることがより好ましく、70%以上の活性を保持するものであることがさらに好ましく、80%以上の活性を保持するものであることが特に好ましく、85%以上の活性を保持するものであることが最も好ましい。β−1,4−グルカンホスホリラーゼは、好ましくはClostridium thermocellum、Clostridium sterocorarium、Cellvibrio gilvus、Thermotoga neapolitana、Thermotoga maritima、Ruminococcas flavofaciens、Fomes annos、Cellulomonas sp.、Erwinia sp.からなる群より選択される細菌由来である。
【0108】
β−1,4−グルカンホスホリラーゼがセロビオースホスホリラーゼである場合、セロビオースホスホリラーゼは、好ましくはClostridium thermocellum、Clostridium sterocorarium、Cellvibrio gilvus、Thermotoga neapolitana、Thermotoga
maritima、Ruminococcas flavofaciens、Fomes annos、Cellulomonas sp.、Erwinia sp.からなる群より選択される細菌由来であり、より好ましくはClostridium thermocellumまたはCellvibrio gilvus由来であり、最も好ましくはClostridium thermocellum由来である。
【0109】
β−1,4−グルカンホスホリラーゼがセロビオースホスホリラーゼである場合、セロビオースホスホリラーゼは、好ましくはClostridium thermocellum、Clostridium sterocorarium、Cellvibrio gilvus、Thermotoga neapolitana、Thermotoga
maritima、Ruminococcas flavofaciens、Fomes annos、Cellulomonas sp.、Erwinia sp.からなる群より選択される細菌由来であり、より好ましくはClostridium thermocellumまたはCellulomonas sp.由来であり、最も好ましくはClostridium thermocellum由来である。
【0110】
本発明で用いられるβ−1,4−グルカンホスホリラーゼは、上記のような自然界に存在する、β−1,4−グルカンホスホリラーゼを産生する生物から直接単離され得る。本発明で用いられるβ−1,4−グルカンホスホリラーゼは、上記の生物から単離したβ−1,4−グルカンホスホリラーゼをコードする遺伝子を用いて遺伝子組換えされた微生物(例えば、細菌、真菌など)から単離してもよい。
【0111】
(2.1.8 水)
水は、軟水、中間水および硬水のいずれであってもよい。硬水とは、硬度20°以上の水をいい、中間水とは、硬度10°以上20°未満の水をいい、軟水とは、硬度10°未満の水をいう。水は、好ましくは軟水または中間水であり、より好ましくは軟水である。
【0112】
(2.1.9 他の材料)
スクロース、プライマー、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸、β−1,4−グルカン、β−1,4−グルカンホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼおよびグルカンホスホリラーゼなどの材料を含む溶液中には、スクロースホスホリラーゼとスクロースとの間の相互作用、グルカンホスホリラーゼとプライマーとの間の相互作用およびβ−1,4−グルカンホスホリラーゼとβ−1,4−グルカンとの間の相互作用を妨害しない限り、任意の他の物質を含み得る。このような物質の例としては、緩衝剤、スクロースホスホリラーゼを産生する微生物(例えば、細菌、真菌など)の成分、グルカンホスホリラーゼを産生する微生物(例えば、細菌、真菌など)の成分、β−1,4−グルカンホスホリラーゼを産生する微生物(例えば、細菌、真菌など)の成分、塩類、培地成分などが挙げられる。
【0113】
(2.2.1 SP−GP法によるアミロースの合成)
本発明で用いられるアミロースは、当該分野で公知の任意のアミロース合成方法によって合成され得る。例えば、スクロースとプライマーにスクロースホスホリラーゼとグルカンホスホリラーゼとを同時に作用させる方法(SP−GP法ともいう)によって合成され得る。この実施形態では、本発明で用いられるアミロースは、スクロース、プライマー、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸、スクロースホスホリラーゼ、およびグルカンホスホリラーゼを含む反応溶液をインキュベートしてアミロースを生成させる工程により製造される。
【0114】
国際公開第02/097107号パンフレットの図1には、スクロースからのグルカン合成の概略が示されている。スクロースと無機リン酸からスクロースホスホリラーゼを用いて、グルコース−1−リン酸が生成される。生成されたグルコース−1−リン酸および反応溶液に加えたグルコース−1−リン酸は、直ちにグルカンホスホリラーゼにより適切なプライマーに転移され、α−1,4−グルカン鎖が伸長される。また、その際に生成される無機リン酸は、再度スクロースホスホリラーゼの反応にリサイクルされる仕組みになっている。
【0115】
まず、反応溶液を調製する。反応溶液は、例えば、適切な溶媒に、固体状のスクロース、プライマー、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸、スクロースホスホリラーゼ、およびグルカンホスホリラーゼを添加することにより調製され得る。あるいは、反応溶液は、スクロース、プライマー、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸、スクロースホスホリラーゼ、またはグルカンホスホリラーゼをそれぞれ含む溶液を混合することによって調製してもよい。あるいは、反応溶液は、スクロース、プライマー、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸、スクロースホスホリラーゼ、およびグルカンホスホリラーゼのうちのいくつかの成分を含む溶液に固体状の他の成分を混合することによって調製してもよい。この反応溶液には、酵素反応を阻害しない限り、必要に応じて、pHを調整する目的で任意の緩衝剤を加えてもよい。
【0116】
次いで、反応溶液を、当該分野で公知の方法によって必要に応じて加熱することにより、反応させる。反応温度は、本発明の効果が得られる限り、任意の温度であり得る。反応開始時の反応溶液中のスクロース濃度が約5〜約100%である場合には、反応温度は代表的には、約40℃〜約70℃の温度であり得る。この反応工程における溶液の温度は、所定の反応時間後に反応前のこの溶液に含まれるスクロースホスホリラーゼおよびグルカンホスホリラーゼの少なくとも一方、好ましくは両方の活性の約50%以上、より好ましくは約80%以上の活性が残る温度であることが好ましい。この温度は好ましくは約40℃〜約70℃であり、より好ましくは約45℃〜約70℃、さらにより好ましくは約45℃〜約65℃である。
【0117】
反応時間は、反応温度、反応により生産されるアミロースの分子量および酵素の残存活性を考慮して、任意の時間で設定され得る。反応時間は、代表的には約1時間〜約100時間、より好ましくは約1時間〜約72時間、さらにより好ましくは約2時間〜約36時間、最も好ましくは約2時間〜約24時間である。
【0118】
加熱は、どのような手段を用いて行ってもよいが、溶液全体に均質に熱が伝わるように、攪拌を行いながら加熱することが好ましい。溶液は、例えば、温水ジャケットと攪拌装置を備えた金属(例えば、ステンレス)製反応タンクの中に入れられて攪拌される。
【0119】
本発明の方法ではまた、反応がある程度進んだ段階で、スクロース、スクロースホスホリラーゼおよびグルカンホスホリラーゼの少なくとも1つを反応溶液に追加してもよい。
【0120】
このようにして、アミロースを含有する溶液が生産される。
【0121】
反応終了後、反応溶液は、必要に応じて例えば、100℃にて10分間加熱することによって反応溶液中の酵素を失活させ得る。あるいは、酵素を失活させる処理を行うことなく後の工程を行ってもよい。
【0122】
(2.2.2 GP法によるアミロースの合成)
本発明で用いられるアミロースは、グルカンホスホリラーゼを、プライマーとグルコース−1−リン酸とに作用させる方法(GP法ともいう)によって合成されてもよい。この実施形態では、本発明で用いられるアミロースは、グルカンホスホリラーゼと、プライマーと、グルコース−1−リン酸とを含む反応溶液をインキュベートして、アミロースを生成させる工程により製造される。
【0123】
まず、反応溶液を調製する。反応溶液は、例えば、適切な溶媒に、プライマー、グルコース−1−リン酸、およびグルカンホスホリラーゼを添加することにより調製され得る。あるいは、反応溶液は、プライマー、グルコース−1−リン酸またはグルカンホスホリラーゼをそれぞれ含む溶液を混合することによって調製してもよい。あるいは、反応溶液は、プライマー、グルコース−1−リン酸およびグルカンホスホリラーゼのうちのいくつかの成分を含む溶液に固体状の他の成分を混合することによって調製してもよい。この反応溶液には、酵素反応を阻害しない限り、必要に応じて、pHを調整する目的で任意の緩衝剤を加えてもよい。
【0124】
次いで、反応溶液を、当該分野で公知の方法によって必要に応じて加熱することにより、反応させる。反応温度は、本発明の効果が得られる限り、任意の温度であり得る。反応温度は代表的には、約30℃〜約80℃の温度であり得る。この反応工程における溶液の温度は、所定の反応時間後に反応前のこの溶液に含まれるグルカンホスホリラーゼの活性の約50%以上、より好ましくは約80%以上の活性が残る温度であることが好ましい。この温度は好ましくは約30℃〜約80℃であり、より好ましくは約35℃〜約70℃、さらにより好ましくは約37℃〜約65℃である。
【0125】
反応時間は、反応温度、反応により生産されるアミロースの分子量および酵素の残存活性を考慮して、任意の時間で設定され得る。反応時間は、代表的には約1時間〜約100時間、より好ましくは約1時間〜約72時間、さらにより好ましくは約2時間〜約36時間、最も好ましくは約2時間〜約24時間である。
【0126】
加熱は、どのような手段を用いて行ってもよいが、溶液全体に均質に熱が伝わるように、攪拌を行いながら加熱することが好ましい。溶液は、例えば、温水ジャケットと攪拌装置を備えた金属(例えば、ステンレス)製反応タンクの中に入れられて攪拌される。
【0127】
本発明の方法ではまた、反応がある程度進んだ段階で、プライマー、グルコース−1−リン酸およびグルカンホスホリラーゼを反応溶液に追加してもよい。
【0128】
このようにして、アミロースを含有する溶液が生産される。
【0129】
反応終了後、反応溶液は、必要に応じて例えば、100℃にて10分間加熱することによって反応溶液中の酵素を失活させ得る。あるいは、酵素を失活させる処理を行うことなく後の工程を行ってもよい。
【0130】
(2.2.3 CP−GP法によるアミロースの合成)
本発明で用いられるアミロースは、当該分野で公知の任意のアミロース合成方法によって合成され得る。例えば、β−1,4−グルカンと無機リン酸もしくはグルコース−1−リン酸、プライマーにβ−1,4−グルカンホスホリラーゼとグルカンホスホリラーゼとを同時に作用させる方法(CP−GP法ともいう)によって合成され得る。この実施形態では、本発明で用いられるアミロースは、β−1,4−グルカン、プライマー、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸、β−1,4−グルカンホスホリラーゼ、およびグルカンホスホリラーゼを含む反応溶液をインキュベートしてアミロースを生成させる工程により製造される。CP−GP法によるアミロースの合成の詳細は、国際公開第2005/056811号パンフレットに記載されている。国際公開第2005/056811号パンフレットの図2には、CP−GP法において生じる反応の概略が示されている。β−1,4−グルカン(重合度n)と無機リン酸から、β−1,4−グルカンホスホリラーゼを用いて、グルコース−1−リン酸およびβ−1,4−グルカン(重合度n−1)が生成される。生成されたグルコース−1−リン酸(および溶液に加えたグルコース−1−リン酸)は、直ちにα−1,4−グルカンホスホリラーゼにより、適切なプライマー(重合度m)にα−1,4−結合で転移され、α−グルカン鎖(重合度m+1)として伸長される。また、その際に生成される無機リン酸は、再度β−1,4−グルカンホスホリラーゼの反応にリサイクルされる仕組みになっている。
【0131】
本発明の製造方法においては例えば、まず、溶液を調製する。溶液は、例えば、適切な溶媒に、固体状のβ−1,4−グルカン、プライマー、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸、β−1,4−グルカンホスホリラーゼ、およびα−1,4−グルカンホスホリラーゼを添加することにより調製され得る。あるいは、溶液は、β−1,4−グルカン、プライマー、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸、β−1,4−グルカンホスホリラーゼ、またはα−1,4−グルカンホスホリラーゼをそれぞれ含む溶液を混合することによって調製してもよい。あるいは、溶液は、β−1,4−グルカン、プライマー、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸、β−1,4−グルカンホスホリラーゼ、およびα−1,4−グルカンホスホリラーゼのうちのいくつかの成分を含む溶液に固体状の他の成分を混合することによって調製してもよい。本発明の製造方法で用いられる溶液には、酵素反応を阻害しない限り、必要に応じて、pHを調整する目的で任意の緩衝剤を加えてもよい。この溶液のpHは、酵素反応を過度に阻害しない限り、任意のpHであり得る。pH値は、好ましくは約6〜約8であり、より好ましくは約6.5〜約7.5である。pHは、反応に用いる酵素の至適pHに合わせて適切に設定され得る。溶液の塩濃度もまた、酵素反応を過度に阻害しない限り、任意の塩濃度であり得る。塩濃度は、好ましくは1.0mM〜50mMであり、より好ましくは5mM〜30mMである。
【0132】
β−1,4−グルカンが、セロビオースであり、β−1,4−グルカンホスホリラーゼが、セロビオースホスホリラーゼである場合、この溶液には、α−グルカン(アミロース)の生成の際に生成するグルコースを溶液から除去するために、例えば、グルコースイソメラーゼまたはグルコースオキシダーゼ(およびムタロターゼ)をさらに添加してもよい。さらに、溶液中にカタラーゼまたはペルオキシダーゼを添加してもよい。あるいは、酵母のような、グルコースを資化することによってグルコースを溶液中から除去する微生物を添加してもよい。あるいは、グルコース特異的吸着樹脂を添加してもよい。酵素または微生物を添加する方法は、反応を連続して進行させながらグルコースを同時に除去し得るので好ましい。なお、本明細書中では、「除去する」とは、反応液中のグルコースの量を低減させることおよびグルコースを存在させなくすることを包含する。
【0133】
次いで、溶液を、当該分野で公知の方法によって必要に応じて加熱することにより、反応させる。溶液の温度は、本発明の効果が得られる限り、任意の温度であり、添加した酵素がその活性を示す温度である。例えば、耐熱性酵素を用い、反応温度をその耐熱酵素に最適な温度にすることによって、添加した耐熱性酵素以外の混入した酵素の活性を抑え得る。この反応工程における溶液の温度は、所定の反応時間後に反応前のこの溶液に含まれるβ−1,4−グルカンホスホリラーゼおよびグルカンホスホリラーゼの少なくとも一方、好ましくは両方の活性の約50%以上、より好ましくは約80%以上の活性が残る温度であることが好ましい。この温度は、好ましくは約30℃〜約70℃の温度であり、より好ましくは約35℃〜約60℃である。
【0134】
反応時間は、反応温度、反応により生産されるアミロースの分子量および酵素の残存活性を考慮して、任意の時間で設定され得る。反応時間は、代表的には約1時間〜約100時間、より好ましくは約1時間〜約72時間、さらにより好ましくは約2時間〜約36時間、最も好ましくは約2時間〜約24時間である。
【0135】
加熱は、どのような手段を用いて行ってもよいが、溶液全体に均質に熱が伝わるように、攪拌を行いながら加熱することが好ましい。溶液は、例えば、温水ジャケットと攪拌装置を備えた金属(例えば、ステンレス)製反応タンクの中に入れられて攪拌される。
【0136】
本発明の方法ではまた、反応がある程度進んだ段階で、β−1,4−グルカン、β−1,4−グルカンホスホリラーゼおよびα−1,4−グルカンホスホリラーゼのうちの少なくとも1つを反応溶液に追加してもよい。
【0137】
β−1,4−グルカンが、セロビオースであり、β−1,4−グルカンホスホリラーゼが、セロビオースホスホリラーゼである場合、上述したように、グルコースイソメラーゼなどの酵素を添加して、α−グルカンの生産と同時に副生するグルコースを除去する工程を、生産工程と同時に行うことが好ましい。他方、グルコースを除去する工程は、α−グルカン生産工程とタイミングをずらして行ってもよい。例えば、本発明の方法ではまた、反応がある程度進んだ段階で、反応によって生成されたグルコースを除去するために、溶液をクロマト分画、膜分画法などの物理的グルコース除去方法で処理し、その後再度、反応を進行させてもよい。物理的グルコース除去方法は、1回実施されても、2回以上実施されてもよい。2回以上実施する場合、例えば、反応を2時間進行させた後、グルコース除去を行い、次いで再度反応を2時間進行させた後、グルコース除去を行い、次いで再度反応を2時間行うこととし得る。
【0138】
このようにして、α−グルカンを含有する溶液が生産される。
【0139】
反応終了後、反応溶液は、必要に応じて例えば、100℃にて10分間加熱することによって反応溶液中の酵素を失活させ得る。あるいは、酵素を失活させる処理を行うことなく後の工程を行ってもよい。
【0140】
(2.3 アミロース含有溶液の冷却によるアミロース粒子の形成)
次いで、アミロースを含有する反応溶液が冷却されることにより、アミロース粒子が形成される。この際、アミロース粒子径に影響を与える要因は、アミロース濃度、冷却温度、冷却時間、冷却時の攪拌の有無などである。本発明では、平均粒子径が10マイクロメートル以上1000マイクロメートル以下であるアミロース粒子が形成される条件であれば、任意の条件でアミロース粒子の形成が行われ得る。アミロースの濃度が高いほど粒子形成速度が速く、得られる粒子の粒子径は大きくなる。アミロース粒子を形成させる際の溶液中のアミロース濃度は、好ましくは約2重量%以上であり、より好ましくは約2.4重量%以上であり、さらに好ましくは約2.7重量%以上である。アミロース粒子を形成させる際の溶液中のアミロース濃度は、好ましくは約30重量%以下であり、より好ましくは約25重量%以下であり、さらに好ましくは約20重量%以下である。冷却温度が低いほど粒子形成速度が速く、得られる粒子の粒子径は大きくなる。冷却温度は好ましくは約0℃以上であり、より好ましくは約4℃以上である。冷却温度は好ましくは約40℃以下であり、より好ましくは約30℃以下である。作業効率およびコストの面の観点からは、冷却温度はさらに好ましくは約10℃〜約25℃である。これは、このように高い温度であっても充分に大きなアミロース粒子が形成され得ることを示す。冷却は例えば、ジャケット付反応タンクのジャケットに冷却水を循環させることにより行われ得る。本明細書中では、「冷却温度」とは、アミロース含有溶液の温度をいう。冷却時間は任意に設定できる。本明細書中では、上記のような、ジャケットに冷却水を循環させて冷却を行う場合には、アミロース含有溶液の温度が冷却温度に到達してからの時間を冷却時間という。冷却時間は、経済性と作業性の観点から、好ましくは約0.5時間以上であり、より好ましくは約1時間以上である。冷却時間は、約2時間以上、約3時間以上、約4時間以上、約5時間以上、約6時間以上などであってもよい。冷却時間は、経済性と作業性の観点から、好ましくは約24時間以下であり、より好ましくは約20時間以下であり、さらに好ましくは約18時間以下である。冷却時間は、約16時間以下、約14時間以下、約12時間以下、約10時間以下、約8時間以下、約6時間以下、約4時間以下などであってもよい。冷却時の攪拌は必ずしも必須ではないが、攪拌を行うと、粒子径を均一にすることが出来るため好ましい。
【0141】
好ましい局面では、冷却を行う際のアミロース含有溶液中のアミロース濃度は約2.7重量%〜約20重量%であり、この場合の好ましい冷却温度は約4℃〜約25℃であり、冷却時間は約1時間〜約18時間である。
【0142】
なお、冷却を行う際のアミロース含有溶液としては、アミロース合成反応を行った反応溶液そのもの以外にも、反応溶液を濃縮した液体、部分的に精製を行った液体などを用いてもよい。
【0143】
(2.4 アミロース粒子の回収)
アミロース粒子は、任意の方法により回収され得る。アミロース粒子は、例えば、膜分画、濾過、遠心分離などの一般的な固液分離方法によって回収され得る。
【0144】
回収されたアミロース粒子は、水で洗浄されることが好ましい。水で洗浄することにより、アミロース粒子の表面に付着しているフルクトースなどの消化性の糖が除去される。
【0145】
回収されたアミロース粒子は、乾燥されることが好ましい。乾燥は、当該分野で公知の方法によって行われ得る。乾燥方法の例としては、例えば、気流乾燥、スプレードライ、凍結乾燥などが挙げられる。また、造粒機能をあわせ持つ乾燥装置も利用できる。乾燥することにより保存性が向上する。
【0146】
(3.血糖値上昇抑制用の飲食品素材)
本発明のアミロース粒子は、経口摂取しても血糖値を上昇させないので、血糖値の上昇を抑制するための飲食品素材として好適に使用され得る。本明細書中で用語「飲食品素材」とは、飲食品の原料として使用される可食性組成物をいう。すなわち、そのままでは食用にされず、他の飲食品素材と組み合わされて、調理されてから食用とされるものをいう。本発明の飲食品素材は、糖尿病、耐糖能異常、高血圧、高脂血症、肥満などに悩む被験体に有効である。本発明の飲食品素材はまた、ダイエット食品としても有効である。
【0147】
血糖値上昇抑制用の飲食品素材の実施形態において、本発明の飲食品素材は、アミロース粒子のみからなっていてもよく、他の物質を含んでもよい。本発明の飲食品素材中の本発明のアミロース粒子の含有量は、好ましくは約50重量%以上であり、より好ましくは約60重量%以上であり、さらに好ましくは約70重量%以上であり、一層好ましくは約80重量%以上であり、最も好ましくは約90重量%以上である。本発明の飲食品素材中の本発明のアミロース粒子の含有量に特に上限はなく、例えば、約99重量%以下、約98重量%以下、約97重量%以下、約96重量%以下、約95重量%以下などであり得る。
【0148】
本発明の飲食品素材に含まれる、アミロース粒子以外の物質の例としては、特に限定されないが、一般的な食品原料、食品添加物、水などが挙げられる。具体的には、食品原料は、例えば、単糖類、多糖類、糖アルコール、澱粉、加工澱粉、デキストリンなどの糖類、乳タンパク質、リポタンパク質、卵タンパク質、小麦タンパク質などのタンパク質、各種植物油および動物油、加工油脂などの脂質などが挙げられる。食品添加物は、例えば、ビタミン類、ミネラル類、レシチン、グリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤、ペクチン、ゼラチン、寒天、デキストリン、多糖類、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどの安定剤、呈味成分、着香料、着色料、酸化防止剤、pH調製剤などが挙げられる。上記食品原料、食品添加物、水などは、単独で用いることもでき、また二種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明の飲食品素材に含まれる、アミロース粒子以外の物質は、非消化性であることが好ましい。
【0149】
(4.糞便量を増大させるための飲食品素材)
本発明のアミロース粒子は、経口摂取することにより糞便量を増加させるので、糞便量を増大させるための飲食品素材として好適に使用され得る。本発明の飲食品素材は、胃腸障害、便秘、下痢などの便通異常、肥満、高脂血症などに悩む被験体に有効である。本発明の飲食品素材はまた、ダイエット食品としても有効である。
【0150】
糞便量を増大させるための飲食品素材の実施形態において、本発明の飲食品素材は、アミロース粒子のみからなっていてもよく、他の物質を含んでもよい。本発明の飲食品素材中の本発明のアミロース粒子の含有量は、好ましくは約50重量%以上であり、より好ましくは約60重量%以上であり、さらに好ましくは約70重量%以上であり、一層好ましくは約80重量%以上であり、最も好ましくは約90重量%以上である。本発明の飲食品素材中の本発明のアミロース粒子の含有量に特に上限はなく、例えば、約99重量%以下、約98重量%以下、約97重量%以下、約96重量%以下、約95重量%以下などであり得る。
【0151】
本発明の飲食品素材に含まれる、アミロース粒子以外の物質の例としては、特に限定されないが、一般的な食品原料、食品添加物、水などが挙げられる。具体的には、食品原料は、例えば、単糖類、多糖類、糖アルコール、澱粉、加工澱粉、デキストリンなどの糖類、乳タンパク質、リポタンパク質、卵タンパク質、小麦タンパク質などのタンパク質、各種植物油および動物油、加工油脂などの脂質などが挙げられる。食品添加物は、例えば、ビタミン類、ミネラル類、レシチン、グリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤、ペクチン、ゼラチン、寒天、デキストリン、多糖類、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどの安定剤、食物繊維、呈味成分、着香料、着色料、酸化防止剤、pH調製剤などが挙げられる。上記食品原料、食品添加物、水などは、単独で用いることもでき、また二種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明の飲食品素材に含まれる、アミロース粒子以外の物質は、非消化性であることが好ましい。
【0152】
(5.脂質の吸収を抑制させるための飲食品素材)
本発明のアミロース粒子は、経口摂取することにより脂質の吸収を抑制するので、脂質の吸収を抑制させるための飲食品素材として好適に使用され得る。
【0153】
本発明の飲食品素材は、肥満、高脂血症、高コレステロール血症、動脈硬化症、糖尿病脂肪肝、肝硬変などに悩む被験体に有効である。本発明の飲食品素材はまた、ダイエット食品としても有効である。
【0154】
脂質の吸収を抑制させるための飲食品素材の実施形態において、本発明の飲食品素材は、アミロース粒子のみからなっていてもよく、他の物質を含んでもよい。本発明の飲食品素材中の本発明のアミロース粒子の含有量は、好ましくは約50重量%以上であり、より好ましくは約60重量%以上であり、さらに好ましくは約70重量%以上であり、一層好ましくは約80重量%以上であり、最も好ましくは約90重量%以上である。本発明の飲食品素材中の本発明のアミロース粒子の含有量に特に上限はなく、例えば、約99重量%以下、約98重量%以下、約97重量%以下、約96重量%以下、約95重量%以下などであり得る。
【0155】
本発明の飲食品素材に含まれる、アミロース粒子以外の物質の例としては、特に限定されないが、一般的な食品原料、食品添加物、水などが挙げられる。具体的には、食品原料は、例えば、単糖類、多糖類、糖アルコール、澱粉、加工澱粉、デキストリンなどの糖類、乳タンパク質、リポタンパク質、卵タンパク質、小麦タンパク質などのタンパク質、各種植物油および動物油、加工油脂などの脂質などが挙げられる。食品添加物は、例えば、ビタミン類、ミネラル類、レシチン、グリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤、ペクチン、ゼラチン、寒天、デキストリン、多糖類、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどの安定剤、食物繊維、呈味成分、着香料、着色料、酸化防止剤、pH調製剤などが挙げられる。上記食品原料、食品添加物、水などは、単独で用いることもでき、また二種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明の飲食品素材に含まれる、アミロース粒子以外の物質は、非消化性であることが好ましい。
【0156】
(6.血糖値上昇抑制用の医薬品素材および医薬部外品素材)
本発明のアミロース粒子は、経口摂取しても血糖値を上昇させないので、血糖値の上昇を抑制するための医薬品素材および医薬部外品素材として好適に使用され得る。本明細書中で用語「医薬品素材」とは、医薬品の原料として使用される可食性組成物をいう。本明細書中で用語「医薬品部外品素材」とは、医薬部外品の原料として使用される可食性組成物をいう。本発明の医薬品素材および医薬部外品素材は、糖尿病、耐糖能異常、高血圧、高脂血症、肥満などに悩む被験体に有効である。
【0157】
血糖値上昇抑制用の医薬品素材の実施形態において、本発明の医薬品素材および医薬部外品素材は、アミロース粒子のみからなっていてもよく、他の物質を含んでもよい。本発明の医薬品素材および医薬部外品素材中の本発明のアミロース粒子の含有量は、好ましくは約50重量%以上であり、より好ましくは約60重量%以上であり、さらに好ましくは約70重量%以上であり、一層好ましくは約80重量%以上であり、最も好ましくは約90重量%以上である。本発明の医薬品素材および医薬部外品素材中の本発明のアミロース粒子の含有量に特に上限はなく、例えば、約99重量%以下、約98重量%以下、約97重量%以下、約96重量%以下、約95重量%以下などであり得る。
【0158】
本発明の医薬品素材および医薬部外品素材に含まれる、アミロース粒子以外の物質の例としては、特に限定されないが、医薬品および医薬部外品に使用することが認可させている医薬品原料および医薬部外品原料、水などが挙げられる。医薬品原料および医薬部外品原料、水などは単独で用いることもでき、また二種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明の医薬品素材および医薬部外品素材に含まれる、アミロース粒子以外の物質は、非消化性であることが好ましい。
【0159】
(7.糞便量を増大させるための医薬品素材および医薬部外品素材)
本発明のアミロース粒子は、経口摂取することにより糞便量を増加させるので、糞便量を増大させるための医薬品素材および医薬部外品素材として好適に使用され得る。本発明の医薬品素材および医薬部外品素材は、胃腸障害、便秘、下痢などの便通異常、肥満、高脂血症などに悩む被験体に有効である。
【0160】
糞便量を増大させるための医薬品素材および医薬部外品素材の実施形態において、本発明の医薬品素材および医薬部外品素材は、アミロース粒子のみからなっていてもよく、他の物質を含んでもよい。本発明の医薬品素材および医薬部外品素材中の本発明のアミロース粒子の含有量は、好ましくは約50重量%以上であり、より好ましくは約60重量%以上であり、さらに好ましくは約70重量%以上であり、一層好ましくは約80重量%以上であり、最も好ましくは約90重量%以上である。本発明の医薬品素材および医薬部外品素材中の本発明のアミロース粒子の含有量に特に上限はなく、例えば、約99重量%以下、約98重量%以下、約97重量%以下、約96重量%以下、約95重量%以下などであり得る。
【0161】
本発明の医薬品素材および医薬部外品素材に含まれる、アミロース粒子以外の物質の例としては、特に限定されないが、医薬品および医薬部外品に使用することが認可させている医薬品原料および医薬部外品原料、水などが挙げられる。医薬品原料および医薬部外品原料、水などは単独で用いることもでき、また二種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明の医薬品素材および医薬部外品素材に含まれる、アミロース粒子以外の物質は、非消化性であることが好ましい。
【0162】
(8.脂質の吸収を抑制させるための医薬品素材および医薬部外品素材)
本発明のアミロース粒子は、経口摂取することにより脂質の吸収を抑制するので、脂質の吸収を抑制させるための医薬品素材および医薬部外品素材として好適に使用され得る。
【0163】
本発明の医薬品素材および医薬部外品素材は、肥満、高血圧、高脂血症、高コレステロール血症、動脈硬化症、糖尿病脂肪肝、肝硬変などに悩む被験体に有効である。
【0164】
脂質の吸収を抑制させるための医薬品素材および医薬部外品素材の実施形態において、本発明の医薬品素材および医薬部外品素材は、アミロース粒子のみからなっていてもよく、他の物質を含んでもよい。本発明の医薬品素材および医薬部外品素材中の本発明のアミロース粒子の含有量は、好ましくは約50重量%以上であり、より好ましくは約60重量%以上であり、さらに好ましくは約70重量%以上であり、一層好ましくは約80重量%以上であり、最も好ましくは約90重量%以上である。本発明の医薬品素材および医薬部外品素材中の本発明のアミロース粒子の含有量に特に上限はなく、例えば、約99重量%以下、約98重量%以下、約97重量%以下、約96重量%以下、約95重量%以下などであり得る。
【0165】
本発明の医薬品素材および医薬部外品素材に含まれる、アミロース粒子以外の物質の例としては、特に限定されないが、医薬品および医薬部外品に使用することが認可させている医薬品原料および医薬部外品原料、水などが挙げられる。医薬品原料および医薬部外品原料、水などは単独で用いることもでき、また二種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明の医薬品素材および医薬部外品素材に含まれる、アミロース粒子以外の物質は、非消化性であることが好ましい。
【0166】
(9.飲食品)
本発明の飲食品は、本発明のアミロース粒子を含有する。
【0167】
本発明の飲食品は、任意の形態であり得る。本発明の飲食品は、例えば、固体状(例えば、粉末状、ブロック状など)、半固体状(例えば、スラリー状、ゲル状など)または液状であり得る。特定の場合には、本発明の飲食品は、粉末または液状であることが好ましい。
【0168】
本発明の飲食品は、食品または飲料である。食品の例としては、以下が挙げられる:米・麦・小麦粉製品(例えば、ごはん、もち、てんぷら粉、パン、麺、パスタ、ビーフン);いも及びでんぷん食品(例えば、くずきり、はるさめ);甘味料類(例えば、角砂糖、粉飴);菓子類(例えば、スナック菓子、クラッカー、ビスケット、クッキー、ケーキ、パイ、カステラ、ウエハース、ボーロ、チョコレート、チョコレート菓子、キャラメル、キャンディー、錠菓、清涼菓子、チューインガム、ゼリー、ゼリー菓子、プリン、ブランマンジェ、米菓子、豆菓子、甘納豆、ようかん、くずもち、しるこ、中華まん、シリアル、クッキーミックス、プリンミックス、ゼリーミックス);アイスクリーム類(例えば、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓);油脂類(例えば、植物油、バター、マーガリン、治療用油脂);種実類(例えば、ごま、ねりごま、松の実);大豆・大豆製品(例えば、大豆水煮、豆腐、みそ);魚介・練製品(例えば、水産練製品、かずのこ、くらげ);畜産加工品(例えば、ハム、ソーセージ、ベーコン、ミートローフ);卵類(例えば、ゆで卵、温泉卵、スモーク卵);乳製品(例えば、ヨーグルト、チーズ、クリーム、粉乳、練乳);野菜・きのこ類(例えば、漬物、やまいもパウダー);果実加工品・ペースト類(例えば、ドライフルーツ、ジャム、マーマレード、フルーツうらごし、マッシュ、フルーツソース、ペースト、あん);海藻類(例えば、のり、こんぶ、わかめ、もずく、海藻サラダ);調味料類(例えば、しょうゆ、食酢、ソース類、マヨネーズ類、ドレッシング類、ケチャップ類、ルウ、みりん、料理酒、だしの素、つゆ、たれ、ごはんの素、ミックス調味料、漬け物の素、味付塩こしょう);香辛料類(例えば、からし、こしょう、さんしょう、しょうが、とうがらし、にんにく、わさび、カレー粉、花、椒五香粉、ゆずみそ);半料理・調理済食品(例えば、かゆ、ごはんの素、ハンバーグ、ミートボール、チキンナゲット、カレー、シチュー、ピザ、グラタン、スパゲティ、焼そば、肉まん、中華惣菜、卵豆腐、茶碗蒸し、ファーストフード);冷凍食品(例えば、米飯類、グラタン、ピザ、めん類、いも製品、大豆製品、魚介料理、肉料理、卵料理、惣菜、菓子類、ミックスベジタブル);缶詰・びん詰類(例えば、種実類、豆類、魚介類、肉類、野菜類、果実類、きのこ類、ソース類、デザート、スープ類、植物たんぱく製品、治療用缶詰);即席食品(例えば、袋入りめん類、生タイプめん類、カップめん、ごはん類、カレー、シチュー、スープ、ソース、ごはんの素、植物たんぱく食品);煮豆・佃煮類(例えば、煮豆、しいたけのり、なめたけ);ふりかけ・そぼろ(例えば、かつおふりかけ、ゆかり、お茶漬け、そぼろ);ベビーフード(例えば、米・めん料理、魚料理、肉料理、卵料理、乳製品料理、野菜料理、スープ、フルーツ、ジュース、水分補給飲料、茶、デザート、菓子、ソース、ふりかけ);粉乳(例えば、一般調整粉乳、特殊調整粉乳、妊婦・授乳婦用粉乳);経腸栄養食品(例えば、経腸栄養剤、濃厚流動食、栄養補給・栄養補助食品、経腸栄養剤・濃厚流動食用フレーバー、デザート);その他の食品(例えば、栄養補助食品、ブレンダー食、とろみ食品、検査用食品、シリアル食品、スポーツ用食品、非常食、健康食品、高齢者用食品、ペットフード、動物用飼料)。
【0169】
なお、チューインガム、茶葉のように最終的に飲み込まない部分がある食品については、アミロース粒子の含有量は、飲み込まれない部分(例えば、チューインガムの場合はガムベース)の量を除外して計算される。
【0170】
飲料類の例としては、以下が挙げられる:乳、乳飲料、豆乳、豆乳飲料、ジュース、炭酸飲料、コーヒー、ココア、茶(例えば、紅茶、日本茶、ウーロン茶)、アルコール飲料、スポーツドリンク、野菜ジュース、栄養ドリンク、ミネラルウォーター、しるこ、ドリンクスープ。
【0171】
本発明の飲食品は、製造の任意の段階でアミロース粒子を添加すること以外は、その飲食品の通常の原料から通常の手順で、通常の組成で製造され得る。アミロース粒子は、例えば、直接まぶす、砂糖、食塩等の粉体に分散して噴霧する、水、だし等の液体に懸濁して浸漬または噴霧するなど、当該分野で公知の任意の方法によって食品に添加され得る。また、食品が、シュークリーム、アンパンなどのように複数の異なる組成を有する部分から構成される場合、アミロース粒子は複数の部分のうちのいずれか1つの部分に含まれてもよく、複数の部分のうちのいくつかの部分に含まれていてもよく、全ての部分に含まれていてもよい。
【0172】
添加方法としては、使用するアミロース粒子の全量を一度に飲食品中に投入してもよく、時間をかけて少量ずつ投入してもよい。アミロース粒子を添加するタイミングは、飲食品の加熱前、加熱中または加熱後のいずれであってもよい。添加の際もしくは添加の後には、必要に応じて飲食品の撹拌を行って、飲食品中の材料全体の表面に均一にアミロース粒子を接触させるようにすることが好ましい。
【0173】
特定の実施形態では、1つの実施形態では、本発明の飲食品は、低カロリー飲食品である。1つの実施形態では、本発明の飲食品は、ゼロカロリー飲食品である。本明細書中では、用語「ゼロカロリー飲食品」とは、100gあたりのエネルギー量が5kcal以下である飲食品をいう。本明細書中では、用語「低カロリー飲食品」とは、100gあたりのエネルギー量が、飲料の場合は20kcal以下、食品の場合は40kcal以下である飲食品をいう。すなわち、低カロリー飲食品は、ゼロカロリー飲食品を包含する。ゼロカロリー飲食品は、ノンカロリー飲食品ともいわれる。健康増進法によれば、栄養成分が少ないことを強調する表示の基準として、「低」、「軽」、「ひかえめ」、「低減」、「カット」などのエネルギー表示が可能である。また、「無」、「ゼロ」、「ノン」などのエネルギー表示は、100gあたりのエネルギーが5kcal以下とされている。ゼロカロリー飲食品または低カロリー食品のカロリー数は、当該分野で公知の方法に従って実際に測定されてもよく、あるいは、食品成分表および厚生労働省によるエネルギー換算計数に基づいて計算されてもよい。
【0174】
本発明の低カロリー飲食品の100gあたりのエネルギー量は、好ましくは約40kcal以下であり、より好ましくは約30kcal以下であり、さらに好ましくは約20kcal以下であり、特に好ましくは約10kcal以下であり、とりわけ好ましくは約5kcal以下であり、そして最も好ましくは約0kcalである。
【0175】
本発明のアミロース粒子は、経口摂取しても実質的に吸収されず、エネルギーを生じないので、100gあたりのエネルギー量は、約0kcalであると考えられる。すなわち、ゼロカロリーの食品素材として知られるエリスリトールと同程度のエネルギーである。
【0176】
本発明の飲食品に含まれるアミロース粒子の含有量は、好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.5重量%以上であり、さらに好ましくは約1重量%以上であり、特に好ましくは約5重量%以上であり、最も好ましくは約10重量%以上である。この実施形態では、飲食品に含まれるアミロース粒子の含有量は、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、さらに好ましくは約30重量%以下であり、特に好ましくは約20重量%以下であり、最も好ましくは約15重量%以下である。
【0177】
本発明の飲食品は、糖尿病、耐糖能異常;胃腸障害、便秘、下痢などの便通異常、;肥満、高血圧、高脂血症、高コレステロール血症、動脈硬化症、糖尿病脂肪肝、肝硬変などに悩む被験体に有効である。本発明の飲食品はまた、ダイエット食品としても有効である。
【0178】
(10.医薬品および医薬部外品)
本発明の医薬品および医薬部外品は、本発明のアミロース粒子を含有する。
【0179】
本発明の医薬品および医薬部外品は、任意の形態であり得る。本発明の医薬品および医薬部外品は、固体状であっても、半固体状であっても、液状であってもよいが、好ましくは固体状である。本発明の医薬品は、例えば、錠剤、丸剤、トローチ剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤などであり得る。本発明の医薬部外品は、例えば、錠剤、丸剤、トローチ剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤などであり得る。本発明の医薬品または医薬部外品は、例えば、ドリンク剤であり得る。
【0180】
本発明の医薬品および医薬部外品は、製造の任意の段階でアミロース粒子を添加すること以外は、その医薬品および医薬部外品の通常の原料から通常の手順で、通常の組成で製造され得る。本発明のアミロース粒子を医薬品または医薬部外品に添加するには特別な工程を必要とせず、医薬品および医薬部外品の製造工程の初期において原料と共に添加するか、製造工程中に添加するか、あるいは製造工程の終期に添加する。添加方式は混和、混練、溶解、浸漬、散布、噴霧、塗布等通常の方法を医薬品の種類および性状に応じて選択する。本発明の医薬品および医薬部外品は、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0181】
本発明の医薬品および医薬部外品に含まれるアミロース粒子の含有量は、好ましくは約0.1重量%以上であり、より好ましくは約0.5重量%以上であり、さらに好ましくは約1重量%以上であり、特に好ましくは約5重量%以上であり、最も好ましくは約10重量%以上である。この実施形態では、医薬品および医薬部外品に含まれるアミロース粒子の含有量は、好ましくは約100重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、さらに好ましくは約30重量%以下であり、特に好ましくは約20重量%以下であり、最も好ましくは約15重量%以下である。
【0182】
本発明の医薬品および医薬部外品は、糖尿病、耐糖能異常;胃腸障害、便秘、下痢などの便通異常、;肥満、高血圧、高脂血症、高コレステロール血症、動脈硬化症、糖尿病脂肪肝、肝硬変などに悩む被験体に有効である。
【実施例】
【0183】
(実施例1−3〜1−5、比較例1−1、1−2、1−6〜1−8:酵素合成アミロース粒子の製造)
30mMリン酸緩衝液(pH7.0)、175mMスクロース、および種々の濃度のマルトオリゴ糖混合物(株式会社林原商事製テトラップH(マルトテトラオース含有量70%以上の液体)を13320、9330、2130、1070、800、530、270または13mg/リットル)を含有する水溶液(1リットル)に、国際公開第WO02/097107号パンフレットに記載の方法に従って調製した馬鈴薯塊茎由来の精製グルカンホスホリラーゼおよび国際公開第WO02/097107号パンフレットに記載の方法に従って調製したStreptococcus mutans由来スクロースホスホリラーゼをそれぞれ1単位/mlになるように加えて反応溶液を得た。この反応溶液を37℃で16時間保温することによりアミロースを合成した。合成されたアミロースの濃度は比較例1−1、1−2、1−6、1−7、実施例1−3〜1−5では約2.8重量%であり、比較例1−8では約2.4重量%であった。この合成されたアミロースを含む反応溶液を4℃で一晩保持(静置)することにより、アミロース粒子を形成させた。この反応溶液は、約0.5時間で4℃まで液温が下がり、その温度で約18時間保持された。この冷却後の反応溶液をろ過により固液分離して、アミロース粒子の沈澱物(ケーキ)を得た。得られたアミロース粒子の沈澱物を回収した後、さらに水に懸濁し、その後、固液分離してケーキを回収した。水懸濁とケーキ回収とを数回繰り返し、反応により副生したフルクトース濃度が0.1%以下になったところで最終的にケーキを回収した。このケーキをスプレードライによって乾燥しアミロース粒子を得た。
【0184】
アミロース粒子の重量平均分子量(Mw)をMALLS法により決定した。アミロース粒子の分子量分散度(Mw/Mn)をMALLS法により決定した。アミロース粒子の平均粒子径(μm)をレーザー回折粒度分布測定装置(SALD−2200、(株)島津製作所製)にて粒度分布を測定することにより決定した。比較例1−1、1−2、実施例1−3〜1−5、比較例1−6、1−7のアミロース粒子は水に分散し、比較例1−8のアミロース粒子はエタノールに分散してその懸濁液を超音波で5分間分散させた。比較例1−8のアミロース粒子をエタノールに分散させたのは、水を溶媒とするとアミロース粒子が溶解してしまい、粒度分布を測定できないからであった。分散させたサンプルは、アミロース粒子を分散させた溶媒(水またはエタノール)を循環させた上記レーザー回折粒度分布測定装置のセル中に加え、粒度分布を測定した。各結果を下記の表2に示す。
【0185】
【表2】

得られたアミロース粒子の分子量分布を特許文献4〜7に記載されるアミロースの分子量分布と比較して図1に示す。図1において、破線は特許文献4〜7にに記載される10〜10のアミロース(重量平均分子量(Mw)3,367、Mw/Mn1.45)の分子量分布を示し、1は先行技術のアミロースの分子量に相当する比較例1−1の重量平均分子量5,000のアミロース粒子、2は比較例1−2の重量平均分子量7,000のアミロース粒子、3は実施例1−3の重量平均分子量19,000のアミロース粒子、4は実施例1−4の重量平均分子量22,000のアミロース粒子、5は実施例1−5の重量平均分子量37,000のアミロース粒子、6は比較例1−6の重量平均分子量65,000のアミロース粒子、7は比較例1−7の重量平均分子量102,000のアミロース粒子、8は比較例1−8の重量平均分子量1100,000のアミロース粒子の分子量分布を示す。
【0186】
(評価例1:アミロース粒子のインビトロ(in vitro)における消化性試験)
酵素合成アミロースは、分子量分布が狭く、分岐のない構造が特徴であり、分子量により固有の物性を示す。その分子の大きさおよび状態によって体内での消化性が異なり、消化されてエネルギーになるものもあれば、消化されずに食物繊維としての機能を持つものもあると考えられる。そのため、本評価例では、重量平均分子量の異なるいくつかの酵素合成アミロース粒子のα-アミラーゼによる消化性を調べた。
【0187】
比較例1−1で調製した重量平均分子量5,000(5k)の酵素合成アミロース(これは、特許文献4〜7にに記載されるα−アミラーゼ耐性デンプンの分子量に相当する)、比較例1−2、実施例1−3〜1−5、比較例1−6〜比較例1−8で調製した重量平均分子量7,000(7k)、19,000(19k)、22,000(22k)、37,000(37k)、65,000(65k)、102,000(102k)、または1100,000(1,100k)の酵素合成アミロース粒子10mgを室温の水10mlに添加して混合し、さらにブタ膵臓α−アミラーゼ(3.25U)を添加してサンプルとした。このサンプルを37℃で24時間インキュベートすることにより、α−アミラーゼをアミロース粒子に作用させた。重量平均分子量1100,000(1,100k)のアミロース粒子を用いた場合のサンプルは水溶液となった。重量平均分子量5,000(5k)、7,000(7k)、19,000(19k)、22,000(22k)、37,000(37k)、65,000(65k)および102,000(102k)のアミロース粒子を用いた場合のサンプルは懸濁液となった。インキュベート前(0時間)、インキュベートを始めてから0.5時間、1時間、1.5時間、2時間および24時間の時点でサンプリングした。このサンプルを遠心分離することによりα−アミラーゼに未分解のアミロース粒子を沈殿として除去し、α−アミラーゼにより分解され生じた可溶性成分を得た。フェノール硫酸法によりこのα−アミラーゼの分解を受けた可溶性成分の全糖量を測定することにより、各重量平均分子量の酵素合成アミロー粒子のα−アミラーゼ消化性を調べた。その結果を図2に示す。
【0188】
α−アミラーゼによる消化性は、添加したアミロース量を100%とした場合の各重量平均分子量のアミロースのα−アミラーゼによる分解率によって判断した。可溶性アミロース(1,100k)の水溶液は最も分解率が高く、90%以上分解された。先行技術であるα−アミラーゼ耐性デンプンの分子量に相当する重量平均分子量5,000(5k)のアミロース粒子は24時間α−アミラーゼを作用させると約40%の分解率を示した。重量平均分子量7,000(7k)のアミロース粒子では約20%、重量平均分子量65,000(65k)および102,000(102k)のアミロース粒子では30〜40%の分解率を示した。これに比べ、重量平均分子量19,000(19k)、22,000(22k)および37,000(37k)のアミロース粒子はα−アミラーゼを作用させて2時間程度はほぼ0%の分解率を示し、24時間反応後も2〜3%の分解率であった。これは、重量平均分子量19,000(19k)、22,000(22k)および37,000(37k)のアミロース粒子がほぼ100%のα−アミラーゼ抵抗性を有することを示す。
【0189】
これらの結果から、重量平均分子量19,000(19k)、22,000(22k)および37,000(37k)の酵素合成アミロース粒子は、従来から難消化性澱粉として知られているα−アミラーゼ耐性デンプンと異なり、アミラーゼ抵抗性がほぼ100%の非消化性澱粉であることがわかった。
【0190】
(評価例2:血糖値上昇抑制試験)
8週齢のラット(Wister系)に、先行技術であるα−アミラーゼ耐性デンプンの分子量に相当する重量平均分子量5,000(5k)のアミロース粒子を熱水で溶解した水溶液、実施例1−4の重量平均分子量22,000(22k)のアミロース粒子の懸濁液、比較例1−7の重量平均分子量102,000(102k)のアミロース粒子の懸濁液、グルコースの水溶液、または水を胃内ゾンデにて経口投与し、各時間経過後の血糖値の上昇パターンを比較した。投与量は体重1kgあたりアミロース粒子500mgとした。投与前および投与30、60、90、120分後にAventir Biotech,LCCのグルコースパイロットを用いて酵素電極法にて血糖値を測定した。各試験群の検体数は9〜13匹であった。
【0191】
結果を図3に示す。図3においては、投与前の血糖値と比較した血糖値の上昇値をプロットした。すなわち、各時点の血糖値の測定値から、投与前の血糖値の測定値を差し引いて得られる値をプロットした。グルコースを経口投与すると急激な血糖値の上昇が見られ、30分後に最大値を示し、その後低下した。先行技術であるα−アミラーゼ耐性デンプンの分子量に相当する重量平均分子量5,000(5k)のアミロース水溶液を経口投与した場合も、グルコースを経口投与した場合と同様の経過を示した。一方、重量平均分子量102,000(102k)のアミロース粒子の懸濁液を経口投与した場合、ネガティブコントロールである水摂取と比べ60分後に血糖値の上昇が見られたが、重量平均分子量22,000(22k)のアミロース粒子の懸濁液を経口投与した場合、ネガティブコントロールである水摂取と同様の経過を示し、血糖値上昇はほとんど見られなかった。
【0192】
一般に、経口投与された澱粉は膵液α−アミラーゼの作用で分解され、小腸まで運ばれ体内に吸収される。グルコースおよび先行技術であるα−アミラーゼ耐性デンプンの分子量に相当する重量平均分子量5,000(5k)のアミロース水溶液に比べて、重量平均分子量22,000(22k)のアミロース粒子は、膵液α−アミラーゼでほとんど分解されないため、小腸上皮細胞で吸収されず、血糖値は上昇しなかったと考えられる。一方、膵液α−アミラーゼで分解される重量平均分子量102,000(102k)のアミロース粒子は、血糖値が上昇した。
【0193】
以上の結果から、アミラーゼに完全な抵抗性を示す重量平均分子量22,000(22k)のアミロース粒子には血糖値上昇を抑制する機能が認められた。
【0194】
(評価例3:糞便排泄量への影響)
消化酵素の影響を受けない食物繊維は、小腸で吸収されずそのまま大腸に運ばれ、ビフィズス菌など腸内細菌の活性化に利用され排泄される。評価例1から22,000(22k)の酵素合成アミロース粒子は消化酵素の影響を受けないことがわかった。そこで酵素合成アミロース粒子の食物繊維としての腸内環境改善効果を調べるため、糞便の排泄量を可溶性澱粉と比較した。
【0195】
8週齢のラット(Wister系)に、先行技術であるα−アミラーゼ耐性デンプンの分子量に相当する重量平均分子量5,000(5k)もしくは22,000(22k)のアミロース粒子または可溶性澱粉(市販のコーンスターチ)を含む食餌を与えた。食餌中のアミロースまたはコーンスターチの量は10重量%であった。ラットには食餌を14日間自由に摂取させた。試験した食餌の原料の組成を以下の表4に示す。
【0196】
【表4】

食餌を与えてから12日目〜14日目までの2日間の乾燥糞便重量(g)を測定した。各試験群の検体数は6匹であった。結果を図4に示す。乾燥糞便重量(g)は、食餌を与えてから12日目〜14日目までの2日間の糞便を集め、乾燥による重量の減少がなくなるまで乾燥させた後、その重量を測定することにより決定された。
【0197】
重量平均分子量5,000(5k)のアミロース粒子を用いた場合、糞便量は、可溶性澱粉を用いた場合と同等であった。この結果、先行技術であるα−アミラーゼ耐性デンプンの分子量に相当する重量平均分子量5,000(5k)のアミロース粒子には、糞便排泄量を増やす効果がないことがわかった。
【0198】
他方、重量平均分子量22,000(22k)のアミロース粒子を用いた場合、可溶性澱粉または重量平均分子量5,000(5k)のアミロース粒子を用いた場合の約3倍の糞便量が排泄された。この結果から、重量平均分子量22,000(22k)のアミロース粒子は、糞便排泄量を増やす有意な効果があることがわかった。このことから、重量平均分子量22,000(22k)のアミロース粒子は便通作用など腸内環境改善の機能性を有することが示唆された。
【0199】
(評価例4:血漿中のトリグリセリド濃度低下試験)
食物繊維は、脂質の吸収抑制機能が期待されている。酵素合成アミロース粒子の脂質抑制機能を調べるため、食品脂質成分であるトリグリセリドの血中への取り込み量を測定した。
【0200】
3週齢のSD(Sprague−Dawley)ラットに、高脂肪食にセルロースを加えた飼料(高脂肪食)(HF)、または高脂肪食にセルロースの代わりに重量平均分子量22,000(22k)(H30k)のアミロース粒子を添加した飼料(22kアミロース添加食)を8週間与える長期飼育試験を行った。ラットには食餌を自由に摂取させた。使用した飼料の材料の組成を以下の表5に示す。各試験群の検体数は8匹であった。
【0201】
【表5】

8週間の飼育後にラットを解剖した。8週目解剖時の血漿トリグリセライド濃度を、トリグリセライドE−テストワコー(和光純薬製)を用いて定量した。図5に示したように、重量平均分子量22,000(22k)のアミロース粒子を加えた飼料を摂取させた群の血漿トリグリセライド濃度は、アミロースの代わりにセルロースを加えた高脂肪食飼料を摂取させた群の約1/2であった。この結果から、非消化性のアミロース粒子を摂取することによる食餌中の脂質の吸収抑制効果が示唆された。
【0202】
(評価例5:アミロース粒子の平均粒子径および形状の影響)
重量平均分子量22,000(22k)のアミロースを用いて、粒子径および形状が異なるアミロース粒子を調製し、アミロース粒子の消化性に及ぼす粒子径および形状の影響を調べた。
【0203】
評価例1で試験した8種類の酵素合成アミロースの中で最も消化性が低かった重量平均分子量22,000(22k)のアミロースについて、アミロース粒子の粒子径および形状の影響を調べた。
【0204】
実施例1−4で調製した重量平均分子量22,000(22k)のアミロース粒子0.5gを40mlの1N水酸化カリウムに完全に溶解した後、1N塩酸で中和し、1mlのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を1ml加え、水で100mlに希釈し、アミロースを再結晶させた。
【0205】
このアミロース粒子を回収および洗浄し、次いで乾燥することにより、アミロース粒子を得た。得られたアミロース粒子の平均粒子径は6.7μmであった。
【0206】
このアミロース粒子について、評価例1と同様の方法でインビトロの消化性を調べた。また、評価例2と同様の方法でインビボでの消化性を調べた。結果を図6および図7に示す。図7においては、投与前の血糖値と比較した血糖値の上昇値をプロットした。すなわち、各時点の血糖値の測定値から、投与前の血糖値の測定値を差し引いて得られる値をプロットした。
【0207】
その結果、再結晶により製造した粒子径の小さい重量平均分子量22,000(22k)のアミロース粒子は、膵液α−アミラーゼにより約10%分解された(図6)。また、再結晶により製造した粒子径の小さい重量平均分子量22,000(22k)のアミロース粒子は、血糖値の上昇が見られた(図7)。このように同じ分子量のアミロースであってもその粒子径の違いにより、アミラーゼの消化性が異なることが明らかとなった。
【0208】
(実施例2:アミロース粒子を加えたアイスクリーム)
実施例1−4のアミロース粒子を含むアイスクリームを試作した。表6の配合で全原料をよく混合し、アイスクリームミックスをホモジナイザーで均質化する。85℃30秒加熱殺菌後、急速冷却した後5℃で一晩エイジングする。そのあとフリージングを行い、カップに充填して−25℃で3日間保存した。本実施例のアミロース粒子を加えたアイスクリームにより、1日に必要とされる食物繊維摂取量のめやすの約60%を摂取できる。
【0209】
【表6】

(実施例3:アミロース粒子を加えたヨーグルト飲料)
実施例1−4のアミロース粒子を含むドリンクヨーグルトを試作した。表7の配合で全原料をよく混合し、85℃30秒加熱殺菌後、冷却しホモジナイザーで均質化した。本実施例のアミロース粒子を加えたヨーグルトドリンクにより、1日に必要とされる食物繊維摂取量のめやすの約60%を摂取できる。
【0210】
【表7】

(実施例4:アミロース粒子を加えたクッキー)
実施例1−4のアミロース粒子を含むクッキーを試作した。表8の配合で全原料を練りこみまとめたクッキー生地を4℃に1晩保存した後、平面にのばし型を抜き、180℃で15分間焼き上げた。本実施例のアミロース粒子を加えたクッキーにより、1日に必要とされる食物繊維摂取量のめやすの約60%を摂取できる。
【0211】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0212】
本発明のアミロース粒子、ならびにそれを含む食品素材、医薬品および医薬部外品素材、飲食品、および、医薬品および医薬部外品は、糖尿病、耐糖能異常;胃腸障害、便秘、下痢などの便通異常、;肥満、高血圧、高脂血症、高コレステロール血症、動脈硬化症、糖尿病脂肪肝、肝硬変などに悩む被験体に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】図1は、各種の酵素合成アミロースの分子量分布を示すグラフである。
【図2】図2は、各重量平均分子量のアミロース粒子のブタ膵臓アミラーゼによるインビトロでの消化性試験の結果を示すグラフである。
【図3】図3は、インビボ(in vivo)によるラットの血糖値の上昇値を示す折れ線グラフである。
【図4】図4は、乾燥糞便重量(g)を示す棒グラフである。
【図5】図5は、高脂肪食を与えた場合および本発明のアミロース粒子を添加した高脂肪食(22kアミロース添加食)を与えた場合の血漿トリグリセライド濃度(mg/dL)を示す棒グラフである。
【図6】図6は、同じ重量平均分子量のアミロースから製造された異なる平均粒子径のアミロース粒子のアミラーゼ分解率(%)を示す折れ線グラフである。
【図7】図7は、本発明のアミロース粒子(アミロース粒子(実施例1−4))、再結晶により製造した粒子径の小さいアミロース粒子(0.5%アミロース水酸化カリウム溶解)または水を投与した場合の血糖値の上昇を示す折れ線グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が12,000〜55,000で、かつ分子量分散度が1.25以下のアミロースから実質的になるアミロース粒子であって、かつ、α−アミラーゼによる分解を実質的に受けない、アミロース粒子。
【請求項2】
前記アミロースの重量平均分子量が15,000〜45,000である、請求項1に記載のアミロース粒子。
【請求項3】
前記アミロースの重量平均分子量が18,000〜40,000である、請求項1に記載のアミロース粒子。
【請求項4】
平均粒子径が10マイクロメートル以上1000マイクロメートル以下である、請求項1に記載のアミロース粒子。
【請求項5】
血糖値上昇抑制用の飲食品素材であって、請求項1に記載のアミロース粒子を含む、飲食品素材。
【請求項6】
糞便量を増大させるための飲食品素材であって、請求項1に記載のアミロース粒子を含む、飲食品素材。
【請求項7】
脂質の吸収を抑制させるための飲食品素材であって、請求項1に記載のアミロース粒子を含む、飲食品素材。
【請求項8】
血糖値上昇抑制用の医薬品または医薬部外品の素材であって、請求項1に記載のアミロース粒子を含む、医薬品または医薬部外品の素材。
【請求項9】
糞便量を増大させるための医薬品または医薬部外品の素材であって、請求項1に記載のアミロース粒子を含む、医薬品または医薬部外品の素材。
【請求項10】
脂質の吸収を抑制させるための医薬品または医薬部外品の素材であって、請求項1に記載のアミロース粒子を含む、医薬品または医薬部外品の素材。
【請求項11】
重量平均分子量が12,000〜55,000で、かつ分子量分散度が1.25以下の酵素合成アミロースから実質的になるアミロース粒子の製造方法であって、該方法は、
グルカンホスホリラーゼの酵素反応により、重量平均分子量が12,000〜55,000、かつ分子量分散度が1.25以下のアミロースを生成させる工程;
該アミロースを含む反応液を冷却してアミロース粒子を形成させる工程;
該アミロース粒子を回収する工程;
を包含する、方法。
【請求項12】
前記プライマーが、マルトオリゴ糖である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アミロース粒子が、α−アミラーゼによる分解を実質的に受けない、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記冷却が、前記アミロース粒子の平均粒子径が10マイクロメートル以上1000マイクロメートル以下となる冷却条件で行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記アミロース粒子を水で洗浄する工程をさらに包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載のアミロース粒子を含有する飲食品。
【請求項17】
請求項1に記載のアミロース粒子を含有する医薬品または医薬部外品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−280466(P2008−280466A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127433(P2007−127433)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度生物系特定産業技術研究支援センター「生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業」産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)」
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【出願人】(591173213)三和澱粉工業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】