説明

非連結コラーゲン合成および分解測定法

本発明は、患者試料中のコラーゲン合成および分解マーカーを定量化することによって、骨関節炎およびリウマチ様関節炎のごとき軟骨変性病の進行を検出および決定するための方法に関する。軟骨変性病が進行しているか、回復しているかまたは安定維持しているかどうかを、患者試料中のコラーゲン合成および分解のマーカーを定量化し、次いで、得られた値と参照値とを比較することによって決定し得る。軟骨変性に罹った関節はコラーゲン合成および分解マーカーを発現し、この値の変化は軟骨変性病の進行の変化を示す。本発明の方法および装置は、ある種の軟骨変性病薬物治療の治療効果の正確な決定を可能とし、それゆえ、ほ乳類における薬効研究にも有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2002年11月8日に出願され、出典明示してその明細書全体が本明細書に含まれるとみなされる米国仮出願番号第60/424,941号を基礎とする優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、概略、医療診断の分野に関し、より詳細には、骨関節炎(OA)における軟骨変性状態、リウマチ様関節炎(RA)の状態、および他の関節炎病の状態を含む軟骨変性状態を決定するための測定法に関する。
【0003】
最もありふれた軟骨変性関節症であるOAおよびRAの特徴は、関節破壊をもたらす
軟骨喪失である。膝OAは、OAの最もありふれた形態であり、著しい死亡率に関連する[Felson, D.T., Epidemiology of Osteoarthritis. In: Brandt K.F., et al., eds., OSTEOARTHRITIS. Oxford University Press, pp. 13-22 (1998)]。
【0004】
軟骨破壊の進行を評価するための最も確立された方法は、単純X線を用いた関節腔幅(JSW)の測定および膝の関節鏡検査による軟骨疾患の評価である。しかしながら、これらの2つの技術にはある限界がある。OAの放射線学的証拠があるとき、しばしば、すでに関節は著しく損傷している。JSWの変化はX線測定の確度誤差と比較してかなり小さいので、関節損傷の進行または治療によるその減少を正確に評価するには、通常、少なくとも1年、好ましくは2年必要である[Ravaud, P., et al., Variability in knee radiographing: implication for definition of radiological progression in medial knee osteoarthritis, Ann. Rheum. Dis. 57:624-629 (1998)]。磁気共鳴撮像は単純X線よりも感度が高いが、その再現性はまだ完全に実証されておらず、現在ではOA患者をモニターするように最適化されている。
【0005】
関節鏡は軟骨表面の直接的かつ拡大視野を与え、それゆえ、関節鏡が軟骨損傷の評価のためのゴールドスタンダードであると人々に思わせた[Fife, R.S., et al., Relationships between arthroscopic evidence of cartilage damage and radiographic evidence of joint space narrowing in early osteoarthritis of the knee, Arthritis Rheum. 34:377-382 (1991); Ayral, X., et al., Chondroscopy: a new method for scoring chondropathy, Semin. Arthritis Rheum. 22:289-297 (1993)]。軟骨疾患の関節鏡採点システムが確立され、実証されている[Aryal, X., Semin. Arthritis Rheum. 22, 上掲; Ayral, X., et al., Arthroscopic evaluation of chondropathy in osteoarthritis of the knee, J. Rheumatol. 23:698-706 (1996)]。しかしながら、これは侵襲的技法であって、全ての患者に日常的に適用できず、訓練された調査員を必要とする。明らかに、崩壊性OAの高い危険性のある患者を認定し、薬効をモニターするために、反復でき、単純X線と比較して向上した感度を有する非侵襲的方法が必要である。
【0006】
分子マーカーは、組織生合成またはターンオーバーの過程で体液中に放出される組織基質の分子もしくはその断片であり、それらは免疫測定法によって測定し得る。骨、軟骨および滑膜の分子マーカーが説明され、OA患者におけるそれらの変化が、主に横断研究で調査されている[Garnero, P., et al., Molecular basis and clinical use of biochemical markers of bone, cartilage and synovium in joint diseases, Arthritis Rheum. 43:953-961 (2000)]。しかしながら、コラーゲンの合成または分解に対する分子マーカーの検出を用いてOAその他の形態の軟骨変性の進行についての情報提供はされていない。
【0007】
軟骨喪失は修復過程の低下と分解現象の増大の組合せに起因し[Dean, D.D., et al., Evidence for metalloproteinase and metallopoteinase inhibitor imbalance in human osteoarthritic cartilage, J. Clin. Invest. 84:678-685 (1989); Poole, A.R., Cartilage in health and disease. In: Koopman W.J., ed., ARTHRITIS AND ALLIED CONDITIONS: A TEXTBOOK OF RHEUMATOLOGY, Baltimore: Williams & Wilkins, 13 ed., pp. 255-308 (1997)]、それによって、軟骨修復能が制限される[Campbell, C.J., The healing of cartilage defects, Clin. Orthop. 64:45-63 (1969); Kim. H.K., et al., The potential for regeneration of articular cartilage in defects created by chondral shaving and subchondral abrasion: an experimental investigation in rabbits, J. Bone Joint Surgery Am. 73:1304-1315 (1991)]と信じられているため、また、II型コラーゲンは軟骨基質の最も豊富なタンパク質であるため、II型コラーゲンの合成および分解の評価がOAその他の軟骨変性病の調査に対する魅力的なアプローチである。
【0008】
OA患者および対照由来の軟骨組織に対して行われるイン・ビトロ研究は変化した合成の証拠を提供する[Nelson, F., et al., Evidence of altered synthesis of type II collagen in patients with osteoarthritis, J. Clin. Invest. 102:2115-2125 (1998)]。ある種の免疫測定法がOAにおいてII型コラーゲンの分解の増加を示した[Hollander A.P., et al., Increased damage of type II collagen in osteoarthritic articular cartilage detected by a new immunoassay, J. Clin. Invest. 93:1722-1732 (1994); Billinghurst R.C., et al., Enhanced cleavage of type II collagen by collagenase in osteoarthritic articular cartilage, J. Clin. Invest. 99:1534-1545 (1997); Hollander, A.P., et al., Damage to type II collagen in aging and osteoarthritis starts at the articular surface, originates around chondrocytes and extends into the cartilage with progressive degeneration, J. Clin. Invest. 96:2859-2869 (1995)]。しかしながら、コラーゲンの合成および分解の両方を示す分子マーカーは未だに利用可能ではない。したがって、イン・ビトロおよび/またはイン・ビボでのOAその他の軟骨変性病の進行レベルの正確かつ精密な評価は未だ重大な問題である。
【0009】
II型コラーゲンは、各末端にN−(PIINP)およびC−(PIICP)プロペプチドを含むプロコラーゲン分子として合成される。II型プロコラーゲンは選択的RNAスプライシングの結果として二形態で生成される[Ryan, M.S., et al., Differential expression of a cysteine-rich domain in the amino-terminal propeptide of type II (cartilage) procollagen by alternative splicing of messenger RNA, J. Biol. Chem. 265:10336-10339 (1990); Nah, H.D., et al., Type II collagen mRNA containing an alternatively spliced exon predominates in the chick limb prior to chondrogenesis, J. Biol. Chem. 266:23446-23452 (1991)]。PIINP中のエクソン2によってコード化される69個のアミノ酸システインリッチ球状ドメインを、ある形態(IIA)は含み、別の形態(IIB)は含まない。IIB型プロコラーゲンは、十分に分化した軟骨細胞中、高レベルで発現され、正常成体軟骨のフレームワークを形成する。一方、IIA型プロコラーゲンは、軟骨形成前凝集四肢間葉、硬節および初期軟骨において一時的に発現され[Sandell. L.J., et al., Alternatively spliced type II procollagen mRNAs define distinct populations of cells during vertebral development: differential expression of the amino-propeptide, J. Cell. Biol. 114:1307-1319 (1991); Sandell, L.J., et al., Alternative splice form of type II procollagen mRNA (IIA) is predominant in skeletal precursors and non-cartilaginous tissues during early mouse development, Dev. Dyn. 199:129-140 (1994); Lui, V.C., et al., Tissue-specific and differential expression of alternatively spliced alpha 1(II) collagen mRNAs in early embryos, Dev. Dyn. 203:198-211 (1995); Oganesian, A., et al., Type IIA procollagen amino propeptide is localized in human embryonic tissues, J. Histochem. Cytochem. 45:1469-1480 (1997)]、軟骨肥大の発症での発生において後で再発現され得る[Nah, H.D., et al., Type IIA procollagen: Expression in developing chicken limb cartilage and human osteoarthritic articular cartilage, Dev. Dyn. 220:307-322 (2001)]。さらに、近年、IIA型プロコラーゲンは、罹患したヒト骨関節炎軟骨の成体関節軟骨細胞によって再発現されることが示された[Nah, Dev. Dyn,. 220, 上掲; Aigner, T., et al., Re-expression of type IIA procollagen by adult articular chondrocytes in osteoarthritic cartilage, Arthritis Rheum. 42;1433-1450 (1999)]。II型コラーゲン分子の分泌中および軟骨基質への取込み前、NおよびCプロペプチドは特異的酵素によって除去され、ある部分、滑膜液中に放出され、血液中に排出される。かくして、これらのプロペプチドの血清レベルはII型コラーゲン合成速度の適当なインデックスであると確信される。II型コラーゲン合成を調査するために開発された最初の測定法はPIICPに対するものであった。Nelsonら[J. Clin. Invest. 102, 上掲]は、健康およびOA軟骨においてPIICPはII型コラーゲン合成速度の有効なインデックスであり、血清PIICPレベルがOA患者で減少していることを示した。ELISAはI型コラーゲンN−プロペプチドとあまり交差反応性を示さないIIA型プロコラーゲンのN−プロペプチド(PIIANP)を特異的に測定するために開発され、膝OAおよびRAの患者において、年齢が適合する健康対照と比較してPIIANPの血清レベルが減少しており、関節疾患におけるII型コラーゲン合成の欠損が示唆される[Rousseau, J-C., et al., Abstract, Serum levels of type IIA procollagen amino terminal propeptide (PIIANP) are decreased in patients with knee osteoarthritis and rheumatoid arthritis, Arthritis Rheum. 43 (supp.):S351 (2000)]。
【0010】
II型コラーゲン分解を評価するため、II型コラーゲンの三重らせん領域の変性によって生じる新生エピトープ[Hollander, J. Clin. Invest. 93, 上掲; Downs, J.T., et al., Analysis of collagenase-cleavage of type II collagen using a neoepitope ELISA, J. Immunol. Methods 247:25-34 (2001)]またはテロペプチドの架橋フラグメント[Moskowitz, R.W., et al., Abstract, Type II C-telopeptide 2B4 epitope is a marker for cartilage degradation in familial osteoarthritis, Arthritis Rheum. 41 (supp.):S352 (1998); Christgau, S., et al., Collagen type IIC-telopeptide fragments as an index of cartilage degradation, Bone 29:209-215 (2001)]のいずれかを認識する抗体を用いる免疫測定法が近年開発された。尿中のII型コラーゲンのC末端架橋テロペプチド(CTX−II)を認識する測定法[Christgau, 上掲]を用いて、横断研究の対象は膝OA患者の尿中CTX−IIのレベルが上昇したことを示した[Garnero P., et al., Cross sectional evaluation of biochemical markers of bone, cartilage, and synovial tissue metabolism in patients with knee osteoarthritis: relations with disease activity and joint damage, Ann. Rheum. Dis. 60:619-626 (2001)]。
【0011】
現在、OAを検出するいくつかの方法が当該分野で知られている。例えば、Sandellに対する米国特許第5,780,240号は、出典明示してその全体が本明細書の一部とみなされ、OA患者における軟骨合成を検出する測定法を記載する。それらの測定法は非胚性個体由来の試料中のIIA型mRNAおよび/またはIIA型プロコラーゲン/プロペプチドを検出する方法を提供するのに有用である。しかしながら、それらの方法は患者がOAを有しているかどうかの決定を可能にするけれども、それらは患者におけるOAの進行を決定する方法も、その疾患の進行速度をいかに決定するかも、OA進行の増加および減少の見込みをいかに決定するかも、OAの進行に対する薬効をいかに決定するかも提供しない。同様に、Sandellに対する米国特許第5,541,066号は、出典明示してその全体が本明細書の一部とみなされ、骨関節炎に関連する軟骨合成を決定する測定法を記載するが、OA患者における疾患の進行を評価することに関する技術の限界を克服することはできていない。
【0012】
骨関節炎をモニターする複数(14種)の分子マーカーの横断研究が記載されている。炎症、骨、軟骨および滑膜代謝のマーカーがクラスター内に隔離され、基準時の骨関節炎を識別するのに用いられた[Otterness et al., An Analysis of 14 molecular markers for monitoring osteoarthritis: segregation of the markers into clusters and distinguishing osteoarthritis at baseline, Osteoarthritis and Cartilage 8:180-185 (2000)]。非連結分析とは反対に主成分分析を用いて、前記研究は、軟骨合成を反映する分子マーカー(血清アグレガンエピトープ846およびPIICP)および軟骨異化の分子マーカー(血清軟骨オリゴメリック基質タンパク質(COMP)およびケラタン硫酸)を二つの別個かつ独立した因子に隔離し、腫瘍壊疽因子受容体II型(炎症のマーカー)とともに前記2つの群の組合せが膝OA患者と健康対照との間の最善の判別を与えることを報告した。しかしながら、独立クラスターからの3つのマーカー(腫瘍壊疽因子受容体II、軟骨オリゴメリック基質タンパク質およびエピトープ846)だけが、かろうじて対照から骨関節炎患者を判別した。この研究の結論は、対象における骨関節炎の状態を正確かつ精密に決定するためにはより良いマーカーが必要であるということである。
【0013】
I型骨粗しょう症を決定するための骨形成および骨吸収の分子マーカーの使用が記載されている[Eastell R., et al., Evaluation of bone turnover in type I osteoporosis using biochemical markers specific for both bone formation and bone resorption, Osteoporos Int. 3:255-260 (1993)]。しかしながら、骨の合成および分解マーカーはコラーゲンの合成および分解マーカーと関連せず、そのようなコラーゲンマーカーが骨関節炎、リウマチ様関節炎その他の軟骨変性病を予測するように用い得るかどうかについては予期できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、コラーゲン代謝および関節炎疾患状態の進行についての情報を提供し得る軟骨マーカーの必要がある。そのようなマーカーはOAやRAのごとき軟骨変性疾患の進行を予測するのに有用であろう。さらに、そのようなマーカーは、骨関節炎およびリウマチ様関節炎薬物治療を含むある種の軟骨変性薬物治療に治療効果の正確な決定を可能にし、それゆえ、ほ乳類における薬効研究に有用であろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の簡単な説明
本発明は、ある部分、減少した血清PIIANPレベルが、高軟骨分解マーカーと関連するとき、シグナル関節(the signal joint)における高速の軟骨喪失およびII型コラーゲン合成の変化に関連するという驚くべき発見に基礎をおく。膝OA患者において血清PIIANPと尿中CTX−IIとの間に相関がなく、II型コラーゲン分子の合成速度は軟骨基質内部の残留分子の分解速度から独立であり、これらの二つの活動の非連結(uncoupling)に有利である。さらに、本発明は、ある部分、非連結インデックスでの軟骨合成のマーカー(PIIANP)と異化のマーカー(CTX−II)との組合せが、これら2つのうちのいずれか1つを単独で用いたときと比較して、膝OA患者と対照とを判別する能力を向上させたという驚くべき発見に基礎をおく。
【0016】
したがって、代表的な具体例において、対象における軟骨破壊を検出または予測する方法であって、対象においてII型コラーゲン分解からII型コラーゲン合成の非連結を検出することを含む方法を提供する。
【0017】
もうひとつの具体例において、対象における骨関節炎または軟骨破壊の進行を決定する方法であって、それは対象においてII型コラーゲン分解からII型コラーゲン合成の非連結を定量することを含む方法を提供する。
【0018】
もうひとつの具体例において、対象における骨関節炎を検出または予測する方法であって、(a)第1および第2の体液試料を供給し、ここに、第1の試料は骨関節炎の状態を決定すべき対象から採取し、第2の試料は同一対象から後で採取し;(b)第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体および第4の標識抗体、ここに、第1の抗体はヒトコラーゲン合成マーカーに特異的結合でき、第2の抗体はヒトコラーゲン分解マーカーに特異的結合でき、第3の標識抗体はヒトコラーゲン合成マーカーに結合でき、第4の標識抗体はヒトコラーゲン分解マーカーに結合でき、および当該標識を検出できる検出試薬を供給し;(c)第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体、第4の標識抗体および検出試薬を第1の体液試料に接触させ;(d)第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体、第4の標識抗体および検出試薬を第2の体液試料に接触させ;次いで、(e)第1の試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定して参照値を得、第2の試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定するステップを含み、ここに、参照値と比較して、第2の試料中、増加した濃度のヒトコラーゲン分解マーカーと連結した減少した濃度のコラーゲン合成マーカーは、試験対象が進行性骨関節炎の危険にあったか、または危険にある高い確率を有していると表示する方法を提供する。
【0019】
もうひとつの具体例において、対象における骨関節炎を検出または予測する方法であって、(a)体液試料を供給し、ここに、試料は骨関節炎の状態を決定すべき対象から採取し;(b)第1の抗体、第2の抗体、および第3の標識抗体、ここに、第1の抗体はヒトコラーゲン合成マーカーに特異的結合でき、第2の抗体はヒトコラーゲン分解マーカーに特異的結合でき、第3の標識抗体はヒトコラーゲン合成マーカーおよびヒトコラーゲン分解マーカーの両方に結合でき、および当該標識を検出できる検出試薬を供給し;(c)第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体および検出試薬を体液試料に接触させ;(d)第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体および検出試薬を体液試料に接触させ;次いで、(e)試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定するステップを含み、ここに、所定の参照値の上1標準偏差よりも高い濃度のヒトコラーゲン分解マーカーと非連結の所定の参照値の下1標準偏差よりも低い減少濃度のヒトコラーゲン合成マーカーは、試験対象が進行性骨関節炎の危険にあったか、または危険にある高い確率を有していると表示する方法を提供する。
【0020】
もうひとつの具体例において、第1の抗体および第2の抗体の組合せと接触する固相支持体であって、ここに、第1の抗体はヒトコラーゲン合成マーカーに特異的結合でき、第2の抗体はヒトコラーゲン分解マーカーに特異的結合できる固相支持体を提供する。
【0021】
もうひとつの具体例において、骨関節炎の進行を検出するキットであって、以下の(a)第1および第2の体液試料を供給し、ここに、第1の試料は骨関節炎の状態を決定すべき対象から採取し、第2の試料は同一の対象から後で採取し;次いで、(b)第1の試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定して参照値を得、第2の試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定することを含み、ここに、参照値と比較して、第2の試料中、増大した濃度のヒトコラーゲン分解マーカーと連結する減少した濃度のコラーゲン合成マーカーは、試験対象が進行性骨関節炎の危険にあったか、または危険にある高い確率を有していると表示する方法が記載されたインストラクションを含むキットを提供する。
【0022】
かくして、上記の原理に基づき、本発明は、対象における骨関節炎の進行を定量化する方法であって、(a)対象の生体試料中の合成マーカーおよび分解マーカーの両方を検出し;(b)合成マーカーおよび分解マーカーの量を比較し;次いで、(c)合成マーカーと分解マーカーの相対量を所定の標準と相関付けて、骨関節炎の進行を定量化するステップを含む方法を提供する。
【0023】
さらに、患者における骨関節炎の状態を決定する方法であって、(a)コラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーのために前記患者から採取した試料を測定し;次いで、(b)ステップ(a)で得た値と前記患者から以前採取した試料の測定法に準じて得た以前の値とを比較することを含み、それらの間のいかなる差異も患者における骨関節炎の状態の変化を示すものである方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
発明の詳細な説明
略語および定義
特記なければ、以下に定義する用語は次の意味を有する:
治療処置:ここで用いるとき、「治療処置」なる用語は、対象による治療上有効量の医薬の受領をいう。
治療上有効量:ここで用いるとき、「治療上有効量」なる用語は、特定の対象の疾患または病気の性質および重篤度の観点から、その対象に投与するとき、所望の治療効果を有するであろう量、例えば、その疾患または病気を治療し、少なくとも部分的に進行を抑え、または予防する量をいう。
【0025】
軟骨変性におけるPIIANPおよびCTX−IIの役割
軟骨変性は多くの疾患で発生する。2つの最も重要な軟骨変性病はOAおよびRAである。OAの特徴は、関節軟骨の喪失である。この喪失は、不定期間にわたる軟骨合成と軟骨分解との間の不均衡に起因する。本出願人は、膝OAの患者は血清PIIANAおよび尿中CTX−IIについての測定によって検出し得るII型コラーゲンの合成および分解の非連結によって特徴付けられる。これら2つのマーカーの組合せは、関節損傷の急速進行の危険にある膝OA患者を認定すること、この病気の進行の変化を検出すること、治療薬を用いる間のOA阻害を検出すること、その他の使用に有用である。それゆえ、本発明の方法および製造業者の論文は、骨関節炎やリウマチ様関節炎のごとき関節炎または関節炎前病状における軟骨変性を診断しモニターする助けとして有用であり、また、関節炎薬その他の療法のごとき関節変性療法の効果を定量するのにも有用である。
【0026】
本発明は、膝内側OA患者の75人患者研究(51人の女性、24人の男性;平均年齢:63±8歳、平均疾患期間:4.3±1.5年間)によって支持される。基準時に、II型コラーゲン合成および分解のマーカーとしてIIA型プロコラーゲン(PIIANP)の血清レベルおよびII型コラーゲンのC末端架橋テロペプチド(CTX−II)の尿内排出を測定した。X線での関節腔幅(JSW)および関節鏡(ビジュアル・アナログ・スケール(Visual Analogue Scale; VAS) スコア、100mm)による軟骨疾患を基準時に全ての患者について、および1年後に52人の患者について測定した。関節破壊の進行はX線でのJSW±0.5mmの減少によって、および基準時値と1年後評価値との間にVASスコア>+8.0単位の軟骨疾患の増加によって規定した。
【0027】
基準時に、膝OA患者は、58人の健康で年齢および性別が適合する対照と比較して、減少した血清PIIANP(20対29ng/ml、p<0.001)および増加した尿中CTX−II(618対367ng/mmol Cr、p<0.001)を有していた。OA患者と対照との間の最も高い判別は、非連結インデックス(ZスコアCTX−IIマイナスZスコアPIIANP)におけるPIIANPおよびCTX−IIと平均Zスコア+2.9(p<0.0001)とを組み合わせることによって得た。非連結インデックスの増加した基準時値レベルはJSW(r=−0.46、p=0.0016)またはVASスコア(r=0.36、p=0.014)のいずれかにおける変化によって評価された関節損傷のより大きな進行と関連づけられる。低PIIANP(≦対照の平均−1標準偏差(SD))および高CTX−II(≧対照の平均+1SD)の両方を示す患者は、他の者よりも8倍も急速に進行し(進行をX線および関節鏡で評価したとき、それぞれ、p=0.012および<0.0001)、X線および関節鏡につき、それぞれ、2.9(0.80−11.1)および9.3(2.9−39)の進行の相対危険を有していた。
【0028】
PIIANPおよびCTX−IIによって評価されたII型コラーゲンの合成および分解の速度が膝OA患者において研究され、これら2つの新規分子マーカーの組合せ使用が、1年後の関節のX線および関節鏡の両方による関節損傷の進行を予測し得るかどうかについて調査された。この研究において、II型コラーゲン代謝に対する前記2つの新規開発された分子マーカーは膝OA患者がII型コラーゲンの合成および代謝の非連結によって特徴付けられることの証明を提供する。非連結インデックスにおけるII型コラーゲンの合成および異化のマーカーの組合せが関節損傷の進行を高度に予測でき、このインデックスが軟骨破壊の高い危険にある患者を認定するのに有用であろうことを示唆する。本発明の方法および装置も、特定のOA薬物治療の治療効果の正確な決定を可能とし、そのため、ほ乳類における医薬効果研究にも有用である。本発明の方法および装置は、限定されないが、ヒト、ラット、マウス、ウサギ、ヤギおよびヒツジを含む広い種類のほ乳類対象に用い得ることが当業者に理解されるであろう。ウマ、ウシ、イヌおよびネコのごとき他の家畜およびペットも本発明の対象に意図される。
【0029】
軟骨分解は様々な疾患の結果として発症し、OAおよびRAは目的の第1疾患である。当業者は、本発明の方法および装置を用いて、軟骨変性をもたらす全ての関節病の進行を予測し、検出するのに用いることができることを理解するであろう。以下の研究はOA進行に着目するが、RAその他の関節病のごとき他の軟骨変性病の進行を本発明の範囲から除外する意図はない。
【0030】
PIIANPは対照と比較して減少すること分かり[Rousseau, 上掲]、II型コラーゲン合成の欠陥および軟骨修復の欠陥を示唆する。しかしながら、膝OA患者においてのみ測定された減少したPIIANPレベルはこの病気の進行を予測できない。対称的に、本発明は、減少した血清PIIAPNレベルは、分解マーカーと非連結のとき、シグナル関節における最速の軟骨喪失とII型コラーゲン合成の変化と相関付けられる。膝OA患者において血清PIIANPと尿中CTX−IIとの間には相関がなく、II型コラーゲン分子合成速度は、軟骨基質内部の残留分子の分解速度と独立していることを示唆し、これら2つの活動の非連結に有利である。さらに、非連結インデックスにおける軟骨合成のマーカー(PIIANP)と異化のマーカー(CTX−II)との組合せが、これらの2つのマーカーのうち一つの単独使用と比較して、膝OA患者と対照との間の判別の向上を可能とする。
【0031】
OA診断とは異なり、これらの分子マーカーを用いて関節破壊の危険にある患者を認定することができ、患者は関節疾患保護療法の利益を得る。実際に、疼痛および肉体機能のスコアのごとき臨床インデックスは関節構造の破壊との関連が乏しく、以下の実施例1で確認されているように、痛み、ルケーンの機能インデックス(Lesquesne's functional index)、膝滲出および進行の間に関連がなかった。基準時に、増加したCTX−IIレベルと低下した関節腔幅との間に、弱くて顕著ではない関連性が見られ、それは膝OA患者における以前の横断研究[Garnero, Ann, Rheum. Dis. 60, 上掲]と一致し、一方、PIIANPは予測可能ではなかった。これらのデータは、分子マーカーは、関節損傷の現在の程度を個別にはあまり予測できないことを示唆する。
【0032】
しかしながら、分子マーカーは軟骨代謝におけるダイナミックな変化を反映するので、その後の数年間にわたる軟骨喪失速度をより一層予測できるであろう。関節損傷の進行を予測する分子マーカーの値を調査する縦断研究はあまりない。血清C反応性タンパク質[Spector, T.D., et al., Low-levels increases in serum C-reactive protein are present in early osteoarthritis of the knee and predict progressive disease, Arthritis Rheum. 40:723-727 (1997)]、COMP[Sharif, M., et al., Relationship between serum cartilage oligomeric matrix protein levels and disease progression in osteoarthritis of the knee joint, Brit. J. Rheumatol. 34:306-310 (1995); Conrozier, T., et al., Serum concentrations of cartilage oligomeric matrix protein and bone sialoprotein in hip osteoarthritis: A one year prospective study, Ann. Rheum. Dis. 9:527-532 (1998)]およびヒアルロン酸[Sharif, M., et al., Serum hyaluronic acid level as a predictor of disease progression in osteoarthritis of the knee, Arthritis Rheum. 38:760-767 (1995)]の予測可能値は、そのうちのいくつかについて研究されているが全てについては研究されていないことが明らかとなった[Georges, C., et al., Serum biologic markers as predictors of disease progression in osteoarthritis of the knee, Arthritis Rheum. 40:590-591 (1997)]。しかしながら、これらの以前の研究で調査された分子マーカーは関節組織に特異的なものではなく[Garnero, Arthritis Rheum. 43, 上掲]、それらのいずれも、軟骨基質の主たる豊富タンパク質であるII型コラーゲンの代謝を評価しなかった。
【0033】
この実施例は、低めの基準時レベルのPIIANPおよび高めのレベルのCTX−IIが、X線か関節鏡かのいずれかにより1年間にわたって評価された関節損傷の進行速度の上昇と関連することを示し、それは、軟骨基質の修復プロセスの減少および分解の増加が関節崩壊速度の加速をもたらすという考えと一致する。しかしながら、別々に用いるとき、これら2つのマーカーの基準時レベルと進行との間の関連は、全ての分析にわたってたいしたものではなく一致しない。対称的に、PIIANPおよびCTX−IIをII型コラーゲンの合成および分解の非連結インデックスにおいて組み合わせると、X線または関節鏡のいずれかにより評価された関節破壊の進行との高く有意な相関が認められた。このインデックスは、21%までの進行速度個体間変動を説明し、このインデックスの各単位増加は進行の危険の60ないし70%の増加と関連付けられた。さらに、当該母集団の約29%を占める、低レベルのPIIANPおよび高CTX−IIの両方を示す患者は、3ないし9倍も上昇した進行の危険を有し、この新規インデックスは、実際に、関節損傷の進行に対する重要な新たな危険因子であろうことを示唆している。
【0034】
したがって、これら2つの新規開発された特定の分子マーカーの使用は、膝OA患者が抑制されたII型コラーゲン合成および増大したII型コラーゲン分解によって特徴付けられるかどうかを決定し得る。非連結インデックスにおいてこれら2つの分子マーカーを組み合わせることによって、関節損傷の今後の高い危険を持つ患者の認定が可能になる。
【0035】
試験される試料中のPIIANPおよびCTX−IIの存在は当該分野で知られているいずれの手段によっても検出され得る。例えば、IIA型プロコラーゲンおよび/またはプロペプチドは、免疫学的技術を用いて体液試料中または免疫組織化学的技術を用いて組織試料中で同定し得る。あるいは、それらのペプチドを単離し配列決定し得る。本発明によれば、好ましい形態において、生体試料は、試験される成人由来の液体(例えば、血清、滑膜液または尿)であり、同定試薬は、PIIANPおよびCTX−IIタンパク質と反応する(ポリクローナルまたはモノクローナル)抗体である。測定用の軟骨の試料はその関節の関節鏡によって、または外科手術によって採取し得る。
【0036】
本発明に用いることができる分解マーカーの例は、COMP、ケラチン硫酸、リンクタンパク質、アグリカン、アグリカンフラグメント、II型コラーゲンおよびVI型コラーゲンその他のマーカーである。個別に用いるとき、これらのマーカーOAの診断に用いられていたが、その疾患の進行には用いる意図はなかった。しかしながら、これらのマーカーの測定をCTX−IIのごとき軟骨分解マーカーの測定とともに非連結方法によって分析し得、時間経過によるOAの進行を予測することができる。
【0037】
免疫測定法
本発明の抗体は、ヒト関節における特定の抗原を検出するプローブとして用い得る。これらの抗原の発現または発現の欠如は、標準組織病態学評価後には明らかではないが臨床学的に利用可能な情報を提供し得る。それで、個々の関節病、特にOAの発現型と、関節病の様々な局面および特定のタイプの療法に対する応答性と相関付けることが可能となり、かくして、重要な予後の分類を確立する。
【0038】
抗体を用いる標準方法を用いてコラーゲン合成および分解のマーカーを検出し定量し得、それらは限定されないが、放射免疫測定法(RIA)、受容体測定法、酵素免疫測定法(EIA)、細胞化学バイオアッセイ、リガンドアッセイ、免疫放射定量測定法、蛍光免疫測定法および酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を含む。検出の容易さおよびその定量特性のため、特に好ましいものは、サンドイッチまたは二重抗体測定法であり、その多数の変形が存在し、それら全てが本発明に含まれることが意図される。これらの方法はよく知られており、抗原抗体間の相互作用および抗体による抗原の検出を最適化するために相当な経験が必要とされることが当業者に理解されるであろう。これらのおよびその他の免疫測定法技術は、[PRINCIPLES AND PRACTICE OF IMMUNOASSAY, 2ND EDITION, Price and Newman, eds., MacMillan (1997)]および[ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, Harlow and Lane, eds., Cold Spring Harbor Laboratory, Ch. 9 (1998)]に見られ、それら各々は、出典明示してその全体が本明細書に含まれるとみなされる。
【0039】
本明細書に記載された抗体の使用を用いて特定の抗原、好ましくはコラーゲン合成および分解の存在についてヒト体液をスクリーンし得る。それによって、患者からの血清抜き取りのイン・ビトロ免疫血清学評価は軟骨変性進行の非侵襲性定量法を可能とする。例えば、血液血清または尿のごときヒト体液を患者から採取し、当該分野で知られている標準RIAまたはELISAにおける抗マーカー抗体を用いて、試料体液中の放出抗原または細胞上の膜結合のいずれかで、特定のエピトープにつき測定し得る。そのような方法に用いる抗体は、好ましくは、モノクローナル抗体である。
【0040】
検出の容易およびその定量特性のため、特に好ましいものは、多数の変形が存在するサンドイッチまたは二重抗体測定法であり、それらの全てが本発明に含まれることが意図される。例えば、典型的な順方向サンドイッチ測定法において、非標識抗体を固相基板、例えば、マイクロタイタープレートウェル上に固定化し、試験すべき試料を結合分子と接触させる。抗原抗体二元コンプレックスを形成させるのに十分な時間インキュベーションした後、検出可能な信号を含むことが可能なレポーター分子を標識した第2の抗体を添加する。異なる部位にて抗原と結合し、抗原−抗体−標識抗体の三元コンプレックスを形成させるのに十分な時間、インキュベーションを継続する。いかなる未反応物質をも洗い流し、既知量の抗原を含有する対照試料との比較によって定量することができる信号の観察により、抗原の存在を決定する。順方向サンドイッチ測定法の変形は、試料および抗体の両方を結合抗体に同時に添加する同時測定法または、まず、標識抗体と試験すべき試料とを結合させ、インキュベートし、次いで、非標識表面結合抗体に添加する逆方向サンドイッチ測定法を含む。これらの技術は当業者によく知られており、小さな変形の可能性も容易に明らかであろう。本明細書で用いるとき、「サンドイッチ測定法」なる用語は、基本的なツーサイト技術に対する全ての変形を含むことを意図する。
【0041】
本発明のサンドイッチ測定技術の一つの制限的要因は、両方の抗体がコラーゲン合成および分解マーカーに対して異なる結合特異性を有することを要求する。かくして、多数の可能性のある組合せが可能である。より特定の例として、典型的順方向サンドイッチ測定法において、第1の抗体は共有結合的か受動的かのいずれかで固相支持体に結合される。通常、固相表面はガラスまたはポリマーであり、最も普通に用いられるポリマーはセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルまたはポロプロピレンである。固相支持体は、チューブ、ビーズ、ディスクまたはマイクロプレートの形態、または免疫測定を行うのに適当ないずれの他の表面であってよい。結合プロセスは当該分野でよく知られている。
【0042】
結合後、固相抗体コンプレックスを試験試料の調製で洗浄する。次いで、試験すべきコラーゲン合成および分解マーカーを含有する体液の分割量を固相コンプレックスに添加し、存在するいかなるコラーゲン合成および分解マーカーがコラーゲン合成および分解マーカーに特異的な抗体に結合するのに十分な時間25℃にてインキュベートする。次いで、第2の抗体を固相コンプレックスに添加し、第2の抗体が第1の抗体−抗原固相コンプレックスに結合するのに十分なさらなる時間25℃にてインキュベートする。第2の抗体をレポーター分子に結合し、その可視信号を用いて、第2の抗体が試料中いずれかの抗原に結合したことを示す。本発明で用いるとき、「レポーター分子」なる用語は、その化学的特性により、抗原結合抗体の検出を可能とする分析学上検出可能な信号を与える分子を意味する。検出は、試料中の抗原量を決定できるように少なくとも相対的に定量可能でなければならない。信号は絶対値で計算することができるか、または既知の正規レベルの抗原を含有する標準試料(または一式の標準試料)との比較で計算することができる。
【0043】
このタイプの測定法に用いられるごくありふれたレポーター分子は、酵素または蛍光発色団のいずれかである。EIAの場合、しばしば、グルタルアルデヒドまたはペルオキシダーゼによって酵素を第2の抗体にコンジュゲートする。当業者に明らかなように、広汎な様々なコンジュゲーション技術が存在する。普通に用いられる酵素は西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼなどを含む。特定の酵素と共に用いるべき基質は、対応する酵素による加水分解で、検出可能な色調変化を発生するように選択される。例えば、p−ニトロフェニルリン酸はアルカリホスファターゼコンジュゲートと共の使用に適し;ペルオキシダーゼコンジュゲートには、普通1,2−フェニレンジアミンまたはトルイジンが用いられる。上記の発色性基質ではなく、蛍光生成物を生じる蛍光性基質を用いることもできる。全ての場合、酵素標識抗体を第1の抗体−合成マーカーまたは抗体−分解マーカーのコンプレックスに添加してそのコンプレックスに結合させ、次いで、過剰試薬を洗い流す。次いで、適当な基質を含有する溶液を抗体−抗原−標識抗体の三元コンプレックスに添加する。その基質は第2の抗体に連結した酵素と反応し、定性的な可視信号を与え、それをさらに、通常は分光分析により定量化して、血清試料中に存在する抗原量の評価を与えることができる。
【0044】
あるいは、フルオレッセインまたはローダミンのごとき蛍光性化合物をその結合特性を変更することなく化学的に抗体に結合させることができる。特定波長の光照射により活性化したとき、蛍光発色団標識抗体は、分子に励起状態を誘起する光エネルギーを吸収し、長波長側の光を発光する。発光は、光顕微鏡で目視検出可能な特徴的な色で発せられる。EIAでは、蛍光標識抗体は第1の抗体−合成マーカーまたは抗体−分解マーカーのコンプレックスに結合するようにされる。未結合試薬を洗い流した後、残りの三元コンプレックスを適当な波長に光に暴露し、観察された蛍光は当該抗原の存在を示す。免疫蛍光およびEIA技術は両方とも当該分野で非常に十分に確立され、本発明の方法に特に好ましい。しかしながら、ラジオアイソトープ、化学ルミネッセントまたはバイオルミネッセント分子のごとき他のレポーター分子も用いることができる。当業者には、必要な使用に適するようにいかにその手順を変形させるかは容易に分かるであろう。
【0045】
さらに別の代替的な具体例において、コラーゲン合成または分解マーカーを含有する試験すべきヒト試料を、シングルサイト免疫測定法に用いることができ、そこでは、それらは共有的または非共有的のいずれかで固相基板に付着される。非標識の抗合成マーカーまたは抗分解マーカー抗体を固相基板に結合した試料と接触するようにする。抗体−抗原二元コンプレックスの形成に十分な適当時間、インキュベーションした後、検出可能信号を生じることが可能なレポーター分子で標識した第2の抗体を添加し、抗原−抗体−標識抗体の三元コンプレックスの形成に十分な時間、インキュベーションを続ける。シングルサイト免疫測定法について、第2の抗体は、対象とする合成マーカーまたは分解マーカーに特異的な抗体に結合することができる通常の抗体、例えば、免疫グロブリンに対する異種抗体、特にレポーター分子に連結した抗(IgMおよびIgG)であってよい。
【0046】
競合ELISAにおいて、患者血清および抗原特異コンジュゲートを捕捉抗原と共インキュベートする。発色量は、存在する抗原特異患者免疫グロブリンの量に反比例する。これらおよび他の免疫測定法は本開示の範囲にある。
【0047】
組織学的技術
コラーゲン合成および分解のマーカーに対する抗体を用いて、組織学的および細胞学的標本のコラーゲン合成および分解マーカーを検出し得、特に、染色パターンおよび強度に基づき軟骨変性の進行を定量し得る。例えば、染色パターンは、免疫染色技術および軟骨細胞その他の関節細胞または小程度の不均一性を有する組織に対するモノクローナル抗体を用いることによって観察し得る。この方法を用いてモルホロジー的に、非骨関節炎細胞と比較して、通常、骨関節炎細胞が染色程度の増加を示すことが分かる。好ましくは、非特異的染色は、非コラーゲンその他の軟骨成分には存在せず、関節標本の軟骨変性には影響されない。
【0048】
免疫蛍光組織学的技術を用いてモノクローナル抗体とヒト標本も調べ得る。典型的なプロトコルにおいて、凍結非固定生検試料または組織学的塗布標本の低温断片を含有するスライドを空気乾燥し、ホルマリンで固定し、室温にて加湿チャンバー内でモノクローナル抗体調製物とともにインキュベートする。次いで、スライドをそのモノクローナル抗体に対する抗体の調製物、用いるモノクローナル抗体がマウス脾臓リンパ細胞とマウスミエローマ細胞系統との融合物由来であれば、通常あるタイプの抗マウス免疫グロブリンと重ねる。この抗マウス免疫グロブリンを特定波長で蛍光発光する化合物、例えば、ローダミンまたはイソチオシアン酸フルオレッセインと結びつける。次いで、試料内の染色パターンおよび強度を蛍光顕微鏡で測定し、所望により写真記録する。本発明の範囲で用いることができる組織学的方法の議論については、[Aigner et al., 上掲]を参照せよ。
【0049】
モノクローナル抗体
本発明に用い得るモノクローナル抗体は、当該分野でよく知られている方法を用いたハイブリドーマによって作製し得る。当該分野で知られている種々のさらなる手順をコラーゲン合成および分解のマーカーのエピトープに対する抗体の作製に用いることができる。そのような抗体は、限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、FabフラグメントおよびFab発現ライブラリーを含む。抗体作製について、種々の宿主動物には、特定のコラーゲン合成もしくは分解マーカー、または合成したコラーゲン合成もしくは分解マーカーを注射して免疫化することができ、限定されないが、ウサギ、マウス、ラット、ヤギ、ウマ、ブタ等の動物が含まれる。種々のアジュバントを用いて、宿主種に依存して、免疫反応を向上させることができ、限定されないが、(完全または不完全)フロイント、水酸化アルミニウムのごときミネラルゲル、リソレシチンのごとき表面活性剤、プルロン酸ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性エマルジョン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン、ジニトロフェノールならびに、BCG(bacille Calmette-Guerin)およびコリネバクテリウム・パルバム(corynebacterium parvum)のごとき潜在的に有用なヒトアジュバントが含まれる。
【0050】
コラーゲン合成および分解マーカーのペプチドに対するモノクローナル抗体は培養連続継代性細胞系統による抗体を作製するいずれの技術を用いても調製することができる。これらは、限定されないが、最初にKohlerおよびMilstein[Nature, 256:495-497 (1975)]に記載されたハイブリドーマ技術を含む。コラーゲン合成および分解マーカーに特異なモノクローナル抗体は最近の技術[PCT/US90/02545]を用いて無胚動物中に生成することができる。ヒト抗体を用いることができ、それらはヒトハイブリドーマを用いるか[Cote, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 80:2026-2030 (1983)]、またはヒトB細胞をイン・ビトロでEBVウイルスで形質転換することによって[Cote, et al., In: MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, pp. 77-96 (1985)]、得られる。さらに、適当な抗原特異性のヒト抗体分子を適当な生物学的活性のヒト抗体分子由来の遺伝子とともにスプライシングすることによってキメラ抗体を作製するために開発された技術を用いることができる[Morrison, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 8(1):6851-6855 (1984); Neuberger, et al., Nature, 312:604-608 (1984); Takeda, et al., Nature, 314:452-454 (1985)]。
【0051】
アンカー抗体として有利に用いることができ、対象とする基質に特異なモノクローナルまたはポリクローナル抗体は基質の特有のエピトープに対して調製して、他の基質との交差反応を最小限化しなければならない。同様に、検出抗体はコラーゲン合成または分解マーカーとのみ反応すべきである。そのような特有エピトープに対して高い結合アフィニティーを有するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いることができ、基質も受容体であれば、リガンド結合に悪影響を及ぼさないものであることが好ましい。例えば、基質が信号伝達に関与する受容体であるとき、リガンド認識および結合に関与するであろう特有エピトープを持つ細胞外ドメインを免疫原として有利に用いることができる。アミノ酸配列が既知である非受容体基質については、タンパク質の非保存種々の領域を免疫原として用いることができる。
【0052】
固相系
本発明の測定法に用いる固相は免疫測定法に普通に用いられるいずれの表面であってもよい。例えば、固相は粒状であってよく;それは、ビーズ、例えば、ガラス製またはポリスチレン製ビーズの表面であるか;または種々の容器、例えば、遠心管、カラム、マイクロタイタープレート、ウェル、フィルター、膜および配管等の容器のうちのいずれかの固体壁面であってよい。本発明は、外科道具その他の器具であって、その器具が患者内部にあるとき、研究すべき体液に直接接触するものの表面に付着させることができる固相支持体も含む。上記の器具と直接接触する体液は、コラーゲン合成または分解マーカーを含有する関節、血流その他の組織中にあるであろう。
【0053】
粒子を固相として用いる場合、それらは、好ましくは約0.4ないし200ミクロン、より普通には約0.8ないし4.0ミクロンの範囲のサイズのものである。常磁性粒子(PMP)のごとき磁気または磁性粒子(magnetic or magnetizable particles)が好ましい粒状固相であり、マイクロタイタープレートウェルが好ましい固体壁面である。本発明の方法のステップが自動免疫測定システムで行う場合、磁気または磁性粒子は特に好ましいであろう。
【0054】
本発明の好ましい検出/定量系はルミネッセントであってよく、必要であれば、ルミネッセント検出/定量系を信号増幅系と一緒に用い得る。代表的なルミネッセント標識、好ましくは、ケミルミネッセント標識は、下記のもので、信号増幅系である。
【0055】
信号検出/定量系
本発明の測定法により形成されたコンプレックスは、免疫測定法に用いられるいずれの公知検出/定量系によっても、検出または検出および定量し得る。適宜、トレーサーとして用いる本発明の抗体は、可視または可視化できる信号を発するいずれかのやり方で直接的または間接的に標識することができる。
【0056】
検出可能なマーカー物質は、H、125I、および131Iのごとき放射核;イソチオシアン酸フルオレッセインその他の蛍光発色団、フィコビリタンパク質、フィコエリトリン、希土類キレート、テキサスレッド、ダンシルおよびローダミンのごとき蛍光発色物質;比色試薬(発色原);金コロイドのごとき電子不透過材料;バイオルミネッセント物質;ケミルミネッセント物質;ダイ;西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、α−、β−ガラクトシダーゼその他の酵素;補酵素;酵素基質;酵素補因子;酵素インヒビター;酵素サブユニット;金属イオン;フリーラジカル;または、形成された免疫コンプレックスの存在もしくは量を検出もしくは測定する手段を提供するいずれかのその他の免疫学的に活性もしくは不活性な物質を含む。代表的な酵素基質の組合せは、西洋ワサビペルオキシダーゼとテトラメチルベンジジン(TMB)、およびアルカリホスファダーゼとパラニトロフェニルリン酸(pNPP)である。
【0057】
本発明による好ましい検出または検出定量系は、ルミネッセント信号、バイオルミネッセント(BL)またはケミルミネッセント(CL)を生じる。BLまたはCLにおいて、強度または全光放射を測定し、分析物の濃度と関連づける。光は照度計(検出器として光増幅管)または電荷結合素子を用いて定量的に、または写真もしくはX線フィルムによって定性的に測定し得る。そのような測定法を用いる主な利点は、その簡便さおよび分析感度にあり、非常に少量の分析物の検出および/または定量を可能にする。
【0058】
代表的なルミネッセント標識は、アクリジニウムエステル、アクリジニウムスルホニルカルボキサミド、ルミノール、ウンベリフェロン、イソルミノール誘導体、イクオリンならびに、ホタル、海洋細菌、バルグラ(Vargulla)およびウミシイタケ(Renilla)由来のルシフェラーゼのごとき発光タンパク質である。ルミノールを所望により、好ましくは、4−ヨードフェノールまたは4−ヒドロキシシンナミン酸よりなる群から選択される促進分子と共に用い得る。アクリジニウムエステルは、本発明による好ましいタイプのCL標識のうちの一つである。信号を塩基性条件下で酸化剤による処理によって発生させる。
【0059】
また、好ましいルミネッセント検出系は、基質への酵素反応によって信号が生じるものである。BLおよびCL検出スキームをアルカリホスファターゼ(AP)、グルコースオキシダーゼ、グルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)およびキサンチンオキシダーゼ標識等の測定用に開発されている。APおよびHRPは、BLおよびCL反応の有効範囲で定量し得る2つの好ましい酵素標識である。例えば、APは1,2−ジオキセタンアリールリン酸アダマンチル基質(例えば、AMPPDまたはCSPD;[Kricka, L.J., "Chemiluminescence and Bioluminescence, Analysis by, " at p.167, Molecular Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference, ed. R.A. Meyers, VCH Publishers; N.Y., N.Y.; 1995];好ましくは4−メトキシ−4−(3−ホスフェートフェニル)スピロ[1,2−ジオキセタン−3,2’−アダマンタン]の二ナトリウム塩のごとき基質と、促進分子、好ましくは1−(トリオクチルホスホニウムメチル)−4−(トリブチルホスホニウムメチル)ベンゼン二塩化物とともにまたはそれ無しで用いることができる。HRPは、好ましくは、3−メトキシ−10−メチルアクリダン−9−カルボン酸2’,3’,6’−トリフルオロフェニルのごとき基質を用いることができる。
【0060】
BLおよびCL反応も酵素のみならず他の基質、補因子、インヒビター、金属イオン等の分析にも適用し得る。例えば、ルミノール、ホタルルシフェラーゼ、および海洋細菌ルシフェラーゼ反応は、それぞれ、ペルオキシダーゼ、ATPおよびNADPHの生成または消費のインジケーター反応である。それらは、オキシダーゼ、キナーゼ、およびデヒドロゲナーゼを必要とする他の反応と結合し得、結合反応のいずれの成分(酵素、基質、補因子)のいずれの測定にも用い得る。
【0061】
検出可能マーカーを本発明の測定法に用いる抗体に直接的または間接的に連結することができる。代表的な検出可能標識の直接連結は、UGPとコンプレックス形成したビオチン化抗体を用い、次いで、HRP次いでTMBにコンジュゲートしたストレプトアビジンを添加することのごとき、抗体およびマーカーの結合ペアの使用またはよく知られた信号増幅シグナルの使用である。
【0062】
本発明の測定法の抗体を検出可能マーカーに連結するために用い得る代表的な結合ペアは、ビオチン/アビジン、ストレプトアビジンまたは抗ビオチン;アビジン/抗フルオレッセイン;チロキシン/チロキシン結合グロブリン;抗原/抗体;抗体/抗抗体;炭水化物/レクチン;ハプテン/抗ハプテン抗体;ダイおよび疎水性分子/疎水性タンパク質結合部位;酵素インヒビター、補酵素または補因子/酵素;ポリ核酸/ホモログポリ核酸配列;フルオレッセイン/抗フルオレッセイン;ジニトロフェノール/抗ジニトロフェノール;ビタミンB12/内因子;コルチゾン、コルチゾル/コルチゾル結合タンパク質;および特異受容体タンパク質に対するリガンド/膜関連特異受容体タンパク質である。本発明による好ましい結合ペアはビオチン/アビジンまたはストレプトアビジン、より好ましくはビオチン/ストレプトアビジンである。標識を直接的または間接的に抗体に連結させる様々な手段が当該分野で知られている。例えば、標識を共有結合的または非共有結合的のいずれかで結合させることができる。代表的な抗体コンジュゲーション方法は、[Avarmeas, et al., Scan, J. Immunol., 8(Suppl.7):7 (1978); Bayer, et al., Meth. Enzymol., 62:308 (1979); Chandler, et al., J. Immunol. Meth., 53:187 (1982); Ekeke and Abuknesha, J. Steroid Biochem., 11:1579 (1979); Engvall and Perlmann, J. Immunol., 109:129 (1972); Geoghegan, et al., Immunol. comm., 7:1 (1978); and Wilson and Nakane, Immunofulorescence and Related Techniques, p.215 (Elsevier/North Holland Biomedical Press; Amsterdam (1978)]に記載されている。
【0063】
標識の特性に依存して、その標識を検出するか、または検出および定量するために様々な技術を用い得る。蛍光発色物質につき、多数の蛍光測定器が入手可能である。ケミルミネッセンス物質につき、照度計またはフィルムが入手可能である。酵素で、蛍光性、ケミルミネッセント、または有色生成物を蛍光測定的、照度測定的、分光分析的または可視的に定量または測定し得る。
【0064】
自動免疫測定システム
本発明の方法は、容易に自動免疫化学分析装置に適合し得る。本発明の方法の自動化を容易にし、ターンアラウンドタイムを削減するために、抗UGP抗体を磁性粒子に連結することができる。
【0065】
好ましい自動/免疫測定システムはCiba Corning ACS:180TM 自動ケミルミネッセンスシステム(CCD; Medfield, Mass. (USA))である。Ciba Corning ACS:180TM 免疫測定システムは[Dudley, B.S., J. Clin. Immunoassay. 14(2):77 (Summer 1991)]に記載されている。
【0066】
このシステムは、ケミルミネッセント標識をトレーサーとして、常磁性粒子を固相試薬として用いる。ACS:180システムは、競合結合およびサンドイッチ型測定法の両方を含み、それらのステップの各々を自動化する。ACS:180はミクロンサイズの常磁性粒子を用いて、利用可能な表面積を最大化し、遠心することなく未結合トレーサーから結合トレーサーの急速磁気分離の手段を提供する。試薬は同時にまたは連続的に添加し得る。酵素タグのごとき他のタグをアクリジニウムエステルのごときケミルミネッセンス標識の代わりに使用し得る。
【0067】
尿の測定法
本発明の測定法は、各々出典明示してその全体が本明細書の一部とみなされる米国特許第6,352,862および5,602,040号に準じて「ディップスティック(dip stick)」形式または同様の装置にも適合し得る。
【0068】
全血の測定法
本発明の測定法は、出典明示してその全体が本明細書の一部とみなされる米国再発行
特許第RE035306号に準じて「ディップスティック(dip stick)」形式または同様の装置にも適合し得る。
【0069】
キット
さらに、本発明は、軟骨変性の進行のごとき軟骨変性状態を検出するキットを提供し、それは、本発明の方法の実施に利用可能である。
このキットは、コラーゲン合成および分解マーカーに特異的な抗体を含み、それによって、軟骨変性その他の軟骨変性病の検出を免疫学的測定法において抗体を用いて実行し得る。二抗体サンドイッチELISAを免疫学的測定法として用いる場合、キットはコラーゲン合成および分解マーカーに特異的な第1および第2の抗体を含むことができる。第2の抗体は、好ましくは、コラーゲン合成および分解マーカーと第1の抗体とのコンジュゲートに結合可能である。この目的のため、例えば、第1の抗体によって認識されるものとは異なるエピトープを認識する抗体を第2の抗体として用いることができる。第1および第2の抗体がモノクローナル抗体であることが好ましい。
【0070】
本発明のキットは、さらに、抗体の検出、抗体の固定化等に適した物質および/または装置を含むことができる。抗体を固定化するために、キットは、さらに、担体(例えば、マイクロタイタープレート)、固定化用溶液(例えば、炭酸塩バッファー)およびブロッキング溶液(ゼラチン含有PBS)を含むことができる。抗体の検出について、抗体が予め標識されていることが好ましい。この場合、キットは、さらに、その標識を検出するための検出試薬を含むことができる。例えば、ビオチンを標識化物質として用いる場合、検出試薬は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とのストレプトアビジンのコンジュゲートならびにHRPの作用により発色することが可能な発色溶液を含むことができる。
【0071】
一つの具体例において、キットは、少なくとも、(a)第1および第2の体液試料を供給し、ここに、第1の試料は骨関節炎の状態を決定すべき対象から採取し、第2の試料は同一の対象から後で採取し、次いで、(b)第1の試料におけるヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカー量および濃度を検出して参照値を得、第2の試料におけるヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量および濃度を検出し、ここに、参照値と比較して、第2の試料中のヒトコラーゲン分解マーカーの濃度が増加するとともにコラーゲン合成マーカーの濃度が減少することは、試験対象が進行性骨関節炎の危険にあったか、または危険にある高い確率を有していると表示する。
と記載したインストラクションを含む。
【0072】
本発明のこれらのおよび他の特徴、局面ならびに利点は以下の記載、実施例および添付する特許請求の範囲を参照してより理解されるであろう。
【実施例】
【0073】
OA症状を示す対象の評価を説明する以下の実例は例示のために示すものであり、限定するものではない。
【0074】
膝骨関節炎患者および健康対照
初期膝OAに対する米国リウマチ学会の分類基準[Altman. R., et al., Development of criteria for the classification and reporting of osteoarthritis. Classification of osteoarthritis of the knee. Diagnostic and Therapeutic Criteria Committee of the American Rheumatism Association, Arthritis Rheum. 29:1039-49 (1986)]に合致する75人の患者(51人の女性、24人の男性;平均年齢:63.0±8.0歳)を調査した。これらの患者は、ジアセルヘイン(diacerhein)とテニダップ(tenidap)との効能を比較し、それぞれ、61人および665人の患者を含む2つのより大きな、確立化、マルチセンター、二重盲検の一部であった[Ayral, X., et al., Abstract, Progression of knee osteoarthritis assessed by arthroscopy: a multicenter, randomized, double blind comparison of tenidap sodium versus piroxicam, Ann. Rheum. Dis. 59 (supp.):S54 (2000)]。他の参入分類基準は:1)内側大腿脛骨コンパートメントの臨床的関与(痛み)、2)ここ2か月の少なくとも30日間のシグナルニー(signal knee)のいかなる持続期間の痛みによって、および関節内グルココルチコイド注射、肉体運動、鎮痛剤、および関節洗浄の適正化の以前の失敗によって証明される不適切な痛みの制御によって定義されるアクティブな疾患、3)膝を完全に伸展したときの荷重X線写真での内側大腿脛骨コンパートメントの最も狭い部位のX線学的関節腔幅が2mm以上であることによって定められる進行性疾患がないこと、4)関節鏡検診の間に作製されたビデオの中央リーダーによって認証されたエントリーに内側コンパートメント(大腿骨関節顆または脛骨プラトー)の軟骨疾患があること、認証については、内側コンパートメントのひとつの関節面の少なくとも10%が表層細動(superficial fibrillation)を罹患していたかまたは悪化し、両面の90%以上が軟骨不存在を示し、その患者は選ぶに値しない、5)関節鏡検診で、(例えば、半月板、軟骨または靱帯に)外科手術を要する関節損傷がないことまたは研究期間中に外科手術がでないこと、6)関節鏡検診の3月前に関節内注射をしていないこと、および7)関節鏡に対する禁忌(抗血栓療法、膝の皮膚損傷、リドケインに対するアレルギー)がないことであった。
【0075】
全ての女性は閉経後であり、全ての患者はエストロゲン置換を含む骨代謝を妨害し得る治療がされていなかった。75人の患者のうち52人がX線および関節鏡によって評価される関節破壊の進行について、1年後に評価された。
【0076】
健康対照は、38人の閉経後女性(50から80歳の平均年齢:63.2±8.1歳)および53から79歳の20人の男性(平均年齢:62±8.2歳)を含む。閉経状態は少なくとも12月間月経がないことによって定義する。健康な女性および男性は、女性(OFELY研究)および男性(MINOS研究)における骨喪失の決定因子に対する予後研究に関与する2つの大きな母集団に基づくコホート[Garnero, E., et al., Increased bone turnover in late postmenopausal women is a major determinant of osteoporosis, J. Bone Miner. Res. 11:337-349 (1996); Szulc. P., et al., Cross-sectional assessment of age-related bone loss in men: The MINOS Study, Bone 26:123-129 (2000)]から無作為に選出した。OFELY研究のコホートは、フランスローヌ地区の健康保険会社(Mutuelle Generale de I'Education Nationale)の選出による会員から無作為に選出された31−89歳の1039人の健康な女性志願者を含む。MINOS研究のコホートは、健康な女性と同一地域にある町モンソーレミンヌの健康保険会社(Societe de Secours Miniere de Bourgogne)の選出による会員から無作為に選出された50−85歳の842人の健康な男性志願者を含む。全ての健康な女性および男性は、経験のあるリウマチ専門医による臨床的触診および「今まで、医者から骨関節炎と診断されたことがありますか。」という問診による評価からは、OA症状の知見が得られなかった。さらに、胸腰椎のX線フィルムを全ての対象から得た。脊椎フィルムは、椎間板および骨棘形成の程度を立証する標準アトラスで、レイン(Lane)らの方法[Reliability of new indices of radiographic osteoarthritis of the hand and hip and lumbar spine degeneration, J. Rheumatol. 20:1911-1918 (1993)]を用い、0は正常、1は軽度狭窄および/または軽度骨棘、2は中度−重度(2−3)狭窄および/または中度−重度(2−3)骨棘との等級で等級付けした。等級2(中度−重度)の対象は対照群から除外した。全対象は健康であり、骨または関節代謝に影響するいかなる疾患もなく閉経後女性におけるホルモン置換療法を含む治療もされていない。
1年間にわたるこの予見的縦断研究は、その地域の倫理委員会に承認され、インフォームドコンセントが全患者から得られた。
【0077】
臨床的変動因子
基準時に、全ての患者の痛みを100mmのビジュアル・アナログ・スケール(visual analogue scale;VAS)を用いて評価し、機能不全をルケーンの機能インデックス[Lequesne, M., et al., Indexes of severity for osteoarthritis of the hip and knee. Validation-value in comparison with other assessment tests, Scand. J. Rheumatol. 85 (supp. 65):85-89 (2000)]によって評価し、膝滲出の疾患持続時間およびその有無を収集した。さらに、付随する骨関節炎に冒された関節の存在は関節インデックスを用いて評価し、すでに報告されているように[Goldberg, R.L., et al., Elevated plasma levels of hyaluronate in patients with osteoarthritis and rheumatoid arthritis, Arthritis Rheum. 34:799-806 (1991)]、その数値は症状を示す関節の各々の総軟骨表面積(cmとして)の合計である。
【0078】
放射線学的変動因子
放射線学的評価は、膝を完全に伸展したときの両側前後荷重膝X線写真からなる。3人の技師の同一のスタッフによって、1)患者の配置:患者は、膝を完全に伸展して立ち、両足に均等に荷重をかけ、膝の後ろをカセットに接触させ、脛骨棘が大腿切痕の中心になるように足を回転させる、2)X線撮影手順:両膝に同時にX線を照射し、X線ビームをシグナル膝の内側コンパートメントの中心に向け、蛍光測定の助けを借りて、ビームを1.10mのフィルム距離で管を用いて内側脛骨プラトーと平行にする標準化技術を用いて単一のX線撮影ユニットでX線写真を撮像した。12月後の第2のX線について同一の手順に準じた。
【0079】
内側大腿脛骨コンパートメントのOAの重篤度は関節腔幅、すなわち、内側大腿顆と内側脛骨プラトーとの間で最も狭い部位の骨間距離[Ravaud, 上掲]をミリメータ単位で測定することによって評価した。一人の調査員が、参加時および1年後の各患者の対となるX線写真を患者の素性もX線写真の年代も知らずに盲検手順を用いて分析した。
【0080】
膝の関節鏡測定
膝の関節鏡測定は、局所麻酔下、止血帯による止血をせずに、30゜前傾レンズを有する2.7mmストルツ関節鏡(Storz, Paris, France)で行った。関節鏡検査は、1リットルの通常生理食塩水からなる関節洗浄と組み合わせた。関節鏡検査は、症状を示すコンパートメント、すなわち、内側大腿脛骨に焦点を合わせた。各関節鏡測定はVHSビデオテープ(ソニー、東京、日本)に記録した。関節鏡測定は、3人に訓練された関節鏡技師によって行われ、計画され、システム化され、標準化された同一の方法で記録した。全てのビデオテープを分析した。関節鏡測定は、すでに報告されているように[Ayral, Semin. Arthritis Rheum. 22, 上掲]、0は軟骨疾患がないことを示し100が最も重篤な軟骨疾患を示す100mmVASによる調査員の総合評価を用いて、軟骨疾患につき点数を付けた。内側コンパートメント:内側大腿顆および内側脛骨プラトーの各関節表面に対して一つのVASを用いた。VASスコアはコンパートメントの2つの対応する関節表面からのVASスコアを平均して得た。参加時および1年後の各患者の対になる関節鏡ビデオテープは、調査員が、患者の素性もビデオテープの年代も知らずに盲検手順を用いて分析した。
【0081】
生化学的測定
午前10:00前、分離ゲルを含有する平板チューブに絶食血液試料を収集した。それらを20分間放置し、2500rpmにて10分間遠心した。次いで、血清を混合し、別々のアリコートに分けた。血液採取と−70℃凍結との間の間隔は2時間以内とした。絶食午前中間尿試料もプラスチック製容器に収集した。全収集物を混合した後、尿のアリコートをプラスチック製チューブに移し、酸性化せずに−70℃で凍結した。
【0082】
痛みおよび機能を評価した日に全OA患者から、血清および尿の両方の試料を得、X線写真を撮像し、関節鏡を実行した。試料は関節鏡検査前に得た。同じ手順に従い、対照から試料を得た。評価するまで、全ての生体試料を−70℃で凍結して保存した。
【0083】
II型コラーゲン合成の分子マーカー
II型コラーゲンの合成は、最近開発されたELISA[Rousseau, 上掲]を用いて血清PIIANPを測定することによって評価した。このELISAは、組換えヒトGST−エクソン2融合タンパク質[Oganesian, 上掲]および標準として組換えヒトGST−エクソン2に対して作製されたウサギポリクローナル抗血清に基礎をおく。PIIANPに対する抗体の特異性は、(トロンビンでの切断前後で)組換えエクソン2タンパク質に対して、およびヒト胎児肋骨の培養培地から単離されたIIA型プロコラーゲンに対するウェスタンブロットによって以前実証されている[Oganesian, 上掲]。簡潔には、マイクロタイタープレートを100μl(10ng/ml)のGST−エクソン2タンパク質で4℃にて一晩覆い、次いで、リン酸バッファー生理食塩水、1%ウシ血清アルブミン(Sigma, St. Louis, MO)で室温にて2時間飽和させる。洗浄後、100μlの標準または血清試料を適当な希釈率(1/1650)の100μlの抗GST−エクソン2抗血清とともに室温にて4時間インキュベートする。洗浄後、100μlのペルオキシダーゼコンジュゲート抗ウサギ抗体(Sigma, St. Louis, MO)を各ウェルに添加し、室温にて1時間インキュベートする。洗浄後、100μlのH/テトラメチルベンジジン基質インジケーター溶液(Sigma, St. Louis, MO)を各ウェルに添加する。室温での30分間のインキュベーション後、100μlの停止溶液(2M HSO)を各ウェルに分注する。450nmの吸光度をELISAプレートリーダーで測定し、未知試料の濃度を既知濃度のヒト組み換えエクソン−2タンパク質の標準物質の測定から標準曲線を作成することによって定量する。測定内および測定間のCVは11%未満である[Rousseau, 上掲]。
【0084】
II型コラーゲン分解の分子マーカー
II型コラーゲン分解は、II型コラーゲンCテロペプチドの直鎖6アミノ酸エピトープに対して作製されたモノクローナル抗体に基礎をおくELISAを用いて、尿中II型コラーゲンのC末端架橋テロペプチド(U−CTX−II)を測定することによって[Christgau, 上掲]評価した。測定内および測定間のCVは、それぞれ、8%および10%未満である[Christgau, 上掲]。
【0085】
統計解析
全データは、特に記載がなければ、平均±SDで表す。対照および膝OA患者の血清PIIANPおよび尿中CTX−IIデータの分布はシャピロ・ウィルク検定によって評価した。血清PIIANPレベルは対照および膝OA患者の両方において正規分布していた(対照および膝OA患者において、それぞれ、p=0.89および0.19)。尿中CTX−IIレベルは、対照において正規分布していたが(p=0.65)、膝OA患者においては正規分布していなかった(p<0.0001)。結果として、尿中CTX−IIレベルは、解析前に対数変換してデータの正規化を図った(対照および膝OA患者において、それぞれ、p=0.51および0.24)。分子マーカーが膝OA患者と対照とを差別化する性能を比較するため、データはZスコア、すなわち、対数変換データを用いた年齢適合健康対照の平均からのSDの数値で表す。骨粗しょう症における骨ターンオーバーの生化学的マーカーについてのイーステルら(Eastell, and colleagues)によって示唆されるように[Eastell, R., et al., Evaluation of bone turnover in type I osteoporosis using biochemical markers specific for both bone formation and bone resorption, Osteoporos Int. 3:255-260 (1993)]、II型コラーゲン合成および分解の非連結インデックス(ZスコアCTX−IIマイナスZスコアPIIANP)を測定した。そのような骨粗しょう症における骨ターンオーバーの生化学的マーカーは骨関節炎その他の軟骨変性病におけるコラーゲン合成および分解に関する本発明の生化学的マーカーと関連しない。
【0086】
関節破壊の放射線学的進行は、基準時から12月後までに関節腔幅(JSN)が0.5mm以上増加することと定義する。この線引きは、2週間にわたるX線写真測定の観測者内再現性に基礎をおき[Ravaud, 上掲]、ブランド(Bland)およびアルトマン(Altman)によって提案された方法[Bland, J.M. et al., Statistical methods for assessing agreement between two methods of clinical measurement, Lancet i:307-310 (1986)]に準じて計算する。軟骨疾患の関節鏡的進行は基準時から12月後までにVASスコアが0.8単位を超えて増加することと定義する。この線引きは、すでに報告されているように[Ayral J. Rheumatol. 23, 上掲]、軟骨疾患の関節鏡定量化の観測者内再現性に基礎をおく。血清PIIANP、尿中CTX−IIおよび非連結インデックスにおけるプログレッサー(progressor)と非プログレッサー(nonprogressor)との間の差異は対応のないスチューデントt検定によって評価した。PIIANPのZスコア、CTX−IIのZスコア、非連結インデックスと、放射線学的または関節鏡的進行との間の相関を線形回帰分析によって評価した。患者は、また、健康対照の平均−1SD(血清PIIANP)および平均+1SD(尿中CTX−II)の線引きを用いて、血清PIIANPおよび尿中CTX−IIの基準時レベルに応じて分けられた。CTX−IIについて、本発明者等は、血清PIIANPによって確認されたものと同様に危険のある患者の比率を確認するために、危険性のある患者を対照の平均+2SDを超える値の人々とも定義した。分子マーカーの基準時レベルによる関節破壊の放射線学的および関節鏡的進行の危険は、ロジスティック回帰分析によって得られた相対危険によって推定した。
【0087】
全ての統計解析はSAS(SAS institute Inc., Cary, NC) (SAS STAT User's Guide, Version 6, 4th Ed, Vols. 1 and 2)を用いて行った。
【0088】
結果
膝OA患者および健康対照におけるII型コラーゲンの合成および分解
表1に示されるように、膝OA患者と対照とは、性別、年齢および身長に関して差異はない。予測される膝OA患者は、対照よりも、体重が重く、高いボディマスインデックス(BMI)を有していた。しかしながら、母集団全体において、血清PIIANPおよび尿中CTX−IIと、体重(血清PIIANPおよび尿中CTX−IIにつき、それぞれ、p=0.69および0.21)またはBMI(p=0.62および0.77)のいずれとも有意な相関はなかった。膝OA患者は、年齢適合対照と比較して、低下した血清PIIANPレベル(膝OA患者および対照において、それぞれ、20.2±5.8対28.5±5.1ng/ml、p<0.0001)および増加した尿中CTX−II(618±389対367±88ng/mmolCr、p<0.001)を有していた。
【0089】
図1は75人の膝骨関節炎患者におけるII型コラーゲン代謝の分子マーカーの個別値のグラフ表示である。各値はZスコア、すなわち、58人の健康な年齢適合対照の平均からの標準偏差の値で表す。実線および付随する数値は平均Zスコアを表す。アスタリスク(*)は、1群のt検定によって評価された値0と比較した平均Zスコアの統計的有意(p<0.0001)を表す。PIIANPはIIA型プロコラーゲンのN−プロペプチドをいい、CTX−IIはII型コラーゲンのC末端架橋テロペプチドをいう。非連結インデックスは、尿中CTX−IIのZスコアマイナス血清PIIAPのZスコアとして計算した。
【0090】
Zスコアで表したとき、膝OA患者を健康対照から判別するのに、尿中CTX−IIは血清PIIANPよりも感度が高かった(p<0.001)(図1)。血清PIIANPと尿中CTX−IIとの間には有意な相関は見られず(r=−0.068、p=0.60)、平均Zスコアが+2.9(p<0.001対CTX−IIおよびPIIANPのZスコア)のII型コラーゲン合成および分解非連結インデックス(尿中CTX−IIのZスコアマイナス血清PIIAPのZスコア)においてCTX−IIおよびPIIANPを組み合わせたとき、OA患者と対照との間の最高の判別が得られた(図1)。
【0091】
基準時にて、尿中CTX−IIと関節腔幅との間(r=−0.16、p=0.17)および非連結インデックスとルケーンの機能インデックスとの間(r=0.25、p=0.05)に、弱い関連が認められた。PIIANPまたはCTX−IIのZスコアと痛み、機能または関節損傷との間の他の関連はいずれも有意ではなかった。
【0092】
血清PIIANPおよび尿中CTX−IIの基準時レベルによる関節破壊の予測
図2は、基準時でのII型コラーゲン合成および分解の分子マーカーの低および高レベルの患者における1年間の関節損傷の進行の分析を表す2本棒グラフである。低レベルの血清IIA型プロコラーゲンN−プロペプチド(PIIANP)は健康対照の平均−1SDを下回るものであった。高レベルの尿中II型コラーゲンC末端架橋テロペプチド(CTX−II)は健康対照の平均+1SDを上回るものであった。非連結インデックスは尿中CTX−IIのZスコアマイナス血清PIIANPのZスコアとして計算した。P値は2群の基準時レベルの分子マーカー間の差異をいう。
【0093】
膝OA患者は、対照の平均−1SDを線引きとして用いて低または高基準時血清PIIANPに、および対照の平均+1SDを線引きとして用いて低または高基準時尿中CTX−IIに分類した。これらの線引きを用いて、46%および60%の患者をそれぞれ低血清PIIANPおよび高尿中CTX−IIを持つ患者として認定した。図2に示されるように、低基準時血清PIIANPの患者は、他の患者と比較して、X線または関節鏡のいずれかによる評価で、より高度な1年間の関節破壊の進行を示した。その逆に、高基準時レベルの尿中CTX−IIの患者は、低レベルの尿中CTX−II患者よりも速い関節破壊の進行を有していたが、それら2群の差異は関節鏡によって評価された軟骨疾患スコアについてのみ有意であった(図2右パネル)。明らかに、低基準時血清PIIANPおよび高尿中CTX−IIの両方を持つ患者は、母集団の29%であり、他の患者と比較して、8倍速い速度の1年間の関節破壊進行を有した(X線および関節鏡につき、それぞれ、p=0.012およびp<0.0001)(図2)。
【0094】
膝OA患者はJAWまたはVAS軟骨疾患スコアにおける1年間の変化に基づき、プログレッサーまたは非プログレッサーとして特徴付けられた。基準時での年齢、ボディマスインデクス、疾患期間、痛み(VAS)、ルケーン機能インデックス、膝滲出患者の比率、関節インデックス、X線写真JSWおよび関節鏡骨疾患VASにおいて、プログレッサーと非プログレッサーとの間に有意差はなかった(データ示さず)。X線または関節鏡のいずれかによって関節破壊の著しい進行を示すと評価された患者は、進行しなかった患者よりも低い基準時レベルの血清PIIANPおよび増大した尿中CTX−IIを有していたが、差異は尿中CTX−IIについてのみ有意であった(表2)。基準時でのII型コラーゲン合成および分解の非連結インデックスは、繰り返しになるが、各マーカー単独よりもプログレッサーおよび非プログレッサーを判別するのにより感度が高く、研究中に進行した患者におけるこのインデックスの高めの基準時値の90ないし98%(p:0.006−0.0024)であった(表2)。
【0095】
図3は、基準時レベルのII型コラーゲン合成および分解分子マーカーと、膝OA患者における膝関節腔幅の1年間変化との間の相関を実証する3つの散布図である。基準時レベルの(a)血清IIA型プロコラーゲンN−プロペプチド(PIIANP)および(b)尿中II型プロコラーゲンC末端架橋テロペプチド(CTX−II)をZスコア、すなわち、健康対照の平均値からの標準偏差の数値として表す。非連結インデックス(c)は尿中CTX−IIのZスコアマイナス血清PIIANPのZスコアとして計算した。回帰直線、相関係数(R)および有意水準(p)は線形回帰分析から得られた。
【0096】
分子マーカー(Zスコア)の基準時レベルおよび12月間にわたる軟骨疾患のX線JSWおよびVAS関節鏡スコアの変化の両方を連続変数とみなした場合、基準時での低レベルのPIIANPおよび高レベルの尿中CTX−IIは関節破壊のより高い進行と関連付けられた(表3および図3)。しかしながら、関連性は尿中CTX−IIとVAS軟骨疾患スコアの変化の間でのみ有意であった。非連結インデックス(ZスコアCTXIIマイナスZスコアPIIANPは、単独の血清PIIANPまたは尿中CTX−IIいずれよりも1年間の関節破壊のより良い予測因子であり、JSW(p=0.0016)および軟骨疾患のVASスコア(p=0.014)の両方の変化と高度に有意に相関する(表3および図3)。
【0097】
基準時Zスコアの分子マーカーを連続変数とみなして解析した場合、増大した血清PIIANPおよび尿中CTX−IIはそれぞれ進行の危険の減少および増大と関連付けられたが、相対危険は進行を関節鏡によって評価したときにCTX−IIについてのみ有意であった(p=0.042)(表4)。興味深いことに、血清PIIANPおよび尿中CTX−IIのZスコアを非連結インデックスで組み合わせた場合、インデックスの各単位増大は、X線および関節鏡進行につき、それぞれ、相対危険が1.7(p=0.008)および1.6(p=0.013)で進行の増大した危険と有意に関連付けられた(表4)。それで、血清PIIANPおよび尿中CTX−IIに対する進行のレベルに対する危険は、それぞれ、健康対照の参照範囲の上限を下回るおよび上回ると推定した。
【0098】
図4は、関節損傷の進行の最高の危険にある膝骨関節炎患者を認定するII型コラーゲン合成および分析の分子マーカーの組合せを分析する2本棒グラフを示す。低レベルの血清IIA型プロコラーゲンNプロペプチド(PIIANP)は健康対照の平均−1SD(Zスコア−1)を下回るものであった。高レベルの尿中IIコラーゲンC末端架橋テロペプチド(CTX−II)は健康対照の平均+1SD(Zスコア+1)または平均+2SD(Zスコア+2)を超えるものであった。非連結インデックスは尿中CTX−IIのZスコアマイナス血清PIIANPのZスコアとして計算した。各バー上方の数値は相対危険(95%信頼区間)を示す。
【0099】
基準時レベルの血清PIIANP±健康対照の平均−SDの患者は、(X線および関節鏡に対して、それぞれ)2.9および2.8の進行の相対危険を有していたが、相対危険は有意にまでは至らなかった(図4)。尿中CTX−IIレベル>対照の平均+1SDの患者は、それぞれ、X線および関節鏡で進行を評価したとき、1.4(0.4−5.0)および4.3(1.1−17.9)の進行の相対危険を有していた。高尿中CTX−IIはレベル>平均+2SDであると定義し、それは危険のある患者の比率が血清PIIANPと同様であることを認定し(43%)、進行の相対危険は、X線および関節鏡につき、それぞれ、2.7および3.3であった。減少した血清PIIANPおよび増加した尿中CTX−IIの両方を持つ患者は、低血清PIIANPまたは高尿中CTX−IIのいずれかを持つ患者よりも高い進行の危険を有していた(図4)。
【0100】
図5は、血清IIA型プロコラーゲンN−プロペプチド(PIIANP)および尿中II型コラーゲンC末端架橋テロペプチド(CTX−II)の基準時レベルによる軟骨疾患のビジュアル・アナログ・スケール(VAS)スコアの1年間変化の個別値を示す。低および高レベルの血清PIIANPの患者を分離するのに用いる線引きは、健康対照の平均−1SDであった。水平の実線は様々な群の患者におけるVASスコアの1年間変化の中央値を表す。水平の点線は有意な進行であると定義するのに用いた1年間のVASスコアの変化における増加(8単位)を表す(統計解析を参照せよ)。上部の数字は、1年間のVASスコアの増加>8単位の関節破壊の有意な進行を示した患者のパーセンテージを表す。
【0101】
低PIIANP(尿中CTX−IIレベルを考慮せず)または高CTX−II(血清PIIANPレベルを考慮せず)を有する患者のうち、各々46および42%の患者がプログレッサーであると認定された。進行につき唯一の危険因子を有する患者、すなわち、低PIIANPであるが低CTX−IIである、または高CTX−IIであるが高PIIANPである患者のなかでは、プログレッサーの比率は小さかった(それぞれ、0および19%)。プログレッサーの比率は低PIIANPおよび高CTX−IIの両方を持つ患者のなかで最も高かった(67%)。
【0102】
この実施例において、II型コラーゲン代謝の2つの新規に開発された分子マーカーを用いて、膝OA患者をII型コラーゲン合成および分解の非連結につき特性評価した。より重要なことに、非連結インデックスでのII型コラーゲンの合成および異化のマーカーの組合せが関節損傷の進行を高度に予測し、このインデックスは骨関節炎およびリウマチ様関節炎患者を含む軟骨変性の高い危険にある患者を認定するのに有用であることが示された。
【0103】
この実施例に記載された結果は、血清PIIANPが対照と比較して減少していることを確認し[Rousseau, 上掲]、II型コラーゲン合成の欠陥およびかくして軟骨修復の欠陥を示唆する。軟骨破壊、より具体的にはII型コラーゲン分解の速度は、OAにおいて増加し、このマーカーを用いた2つの最近行われた小実験およびOA軟骨において増加したII型コラーゲン損傷を示す組織学実験と一致したことも確認された。膝OA患者において、血清PIIANPと尿中CTX−IIとの間に相関は見られず、II型コラーゲン分子の合成速度は、これら2つの活動の非連結の観点から、軟骨基質内の内在分子の分解速度から独立していることが示唆された。したがって、非連結インデックスでの軟骨合成のマーカー(血清PIIANP)と異化のマーカー(尿中CTX−II)との組合せは、これら2つのマーカーを単独で使用したときと比較して、膝OA患者と対照との間の正確かつ精密な判別を可能とする。
【0104】
本発明の分子マーカーの主たる使用の一つは、関節破壊の急速進行の危険にある患者を認定することにあり、患者らはOAの診断よりもむしろ軟骨保護療法の利益を得るであろう。実際に、この研究で、痛み、ルケーン機能インデックス、膝滲出と進行との間に関連がないことが確認されたように、痛みおよび肉体機能スコアのごとき臨床インデックスは関節構造の破壊とあまり関連しない。基準時にて、膝OA患者の以前の横断研究[Garnero, Ann. Rheum. Dis. 60, 上掲]と一致して、増加した尿中CTX−IIレベルと低関節腔幅との間の弱くかつ有意ではない関連が見られ、一方、血清PIIANPは予測的なものではなかった。これらのデータは、単独の分子マーカーのレベルは関節損傷の現在の程度をあまり予測できないことを示唆する。
【0105】
関節損傷の進行を予測する分子マーカーの値を調査した縦断研究はあまりない。血清C反応性タンパク質の予測値[Spector, T.D., et al., Low-levels increases in serum C-reactive protein are present in early osteoarthritis of the knee and predict progressive disease, Arthritis Rheum. 40:723-727 (1997)]、COMP[Sharif, M., et al., Relationship between serum cartilage oligomeric matrix protein levels and disease progression in osteoarthritis of the knee joint, Brit. J. Rheumatol. 34:306-310 (1995); Conrozier, T., et al., Serum concentrations of cartilage oligomeric matrix protein and bone sialoprotein in hip osteoarthritis: A one year prospective study, Ann. Rheum. Dis. 9:527-532 (1998)]およびヒアルロン酸[Sharif, M., et al., Serum hyaluronic acid level as a predictor of disease progression in osteoarthritis of the knee, Arthritis Rheum. 38:760-767 (1995)]がある程度認められるが、全ての研究ではない[Georges, C., et al., Serum biologic markers as predictors of disease progression in osteoarthritis of the knee, Arthritis Rheum. 40:590-591 (1997)]。しかしながら、これらの以前の研究において調査された分子マーカーは関節組織に特異的ではなく[Garnero, Arthritis Rheum. 43, 上掲]、それらのいずれも、軟骨基質の主たる豊富なタンパク質であるII型コラーゲンを評価していなかった。
【0106】
縦断評価において、より低い基準時レベルの血清PIIANPおよびより高い尿中レベルのCTX−IIが、X線または関節鏡のいずれかによって評価された1年間の関節損傷の進行速度の増大と関連することが分かり、軟骨基質の修復プロセスの低下および分解の増大が関節分解の速度を促進するであろうという考えと一致する。しかしながら、別々に用いた場合、これら2つのマーカーの基準時レベルと進行との間の関連はあまりなく、全解析で一致しなかった。対照的に、血清PIIANPおよび尿中CTX−IIをII型コラーゲン合成および分解の非連結インデックスで組み合わせた場合、X線または関節鏡のいずれかによって評価された関節破壊の進行と高度に有意な相関が認められた。このインデックスは、進行速度の個体間変動の21%までを占め、このインデックスの各他単位増加は進行の危険における60ないし70%増加に関連した。さらに、低レベルの血清PIIANPおよび高尿中CTX−IIの両方を持つ患者は母集団の約29%を占め、3ないし9倍増大した進行の危険を有し、このインデックスが実際に関節損傷の進行に対する重要な新危険因子であろうことを示唆する。
【0107】
本発明の利益は、代表的な具体例において、対象における軟骨破壊を検出または予測する方法を提供することを含み、この方法は、対象におけるII型コラーゲン分解からのII型コラーゲン合成の非連結を検出することを含む。対象におけるII型コラーゲン分解からのII型コラーゲン合成の非連結を検出することは、例えば、(a)対象の生体試料中の合成マーカーおよび分解マーカーの両方を検出し;(b)合成マーカーおよび分解マーカーの量を比較し;次いで、(c)合成マーカーおよび分解マーカーの相対量を所定の標準と相関付けて、対象における軟骨破壊を検出することを含む。一つの具体例において、ステップ(b)は少なくとも2回実行する。別の具体例において、ステップ(a)は単一ステップである。
【0108】
好ましくは、この合成マーカーはPIIANPであり、分解マーカーはCTX−II、II型コラーゲン、VI型コラーゲン、COMP、ケラチン硫酸、リンクタンパク質、アグリカン、およびアグリカンフラグメントよりなる群から選択される。この検出ステップ(a)は、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、リガンド測定法、免疫放射定量測定法、蛍光免疫測定法および酵素結合免疫吸着測定法よりなる群から選択される測定法によっても実行することができる。測定法が酵素結合免疫吸着測定法である場合、競合ELISAまたはサンドイッチELISAのうちの1であることが好ましい。
【0109】
生体試料は、好ましくは、血液、血清、尿、痰、間質液、関節デブリ、軟骨断片および滑膜細胞よりなる群から選択される。好ましくは、生体試料は軟骨、より好ましくは膝軟骨である。もうひとつの具体例は、動物である対象に対して上記方法を実行することを含む。好ましくは、動物はヒトである。本発明のもうひとつの具体例において、対象は、上記方法が実行されている間、軟骨変性病の治療的処置を受ける。軟骨変性病はリウマチ様関節炎または骨関節炎であってよいが、非連結分析によって調査することができる合成および分解マーカーを有する他の軟骨変性病であってもよい。
【0110】
もうひとつの具体例において、対象における骨関節炎または軟骨破壊の進行を決定するための方法であって、対象におけるII型コラーゲン分解からのII型コラーゲン合成の非連結を定量することを含む。この定量は、例えば、(a)対象の生体試料中の合成マーカーの量を測定し;(b)対象の生体試料中の分解マーカーの量を測定し;(c)合成マーカーの量および分解マーカーの量を用いて非連結インデックスの値を計算し;次いで、(d)非連結インデックスの値と所定の標準とを比較して、対象における骨関節炎または軟骨変性の状態を定量することを含む。ステップ(a)および(b)は、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、リガンド測定法、免疫放射定量測定法、蛍光免疫測定法、および酵素結合免疫吸着測定法よりなる群から選択される測定法によって実行し得る。適当な酵素結合免疫吸着測定法は競合ELISAおよびサンドイッチELISAを含む。試料は、例えば、血液、血清、尿、痰、間質液、関節デブリ、軟骨断片および滑膜細胞である。代表的な具体例において、骨関節炎軟骨合成マーカーはPIIANPであって、本発明において、骨関節炎軟骨分解マーカーはCTX−II、II型コラーゲン、VI型コラーゲン、COMP、ケラチン硫酸、リンクタンパク質、アグリカンおよびアグリカンフラグメントよりなる群から選択される。
【0111】
もうひとつの具体例において、対象における骨関節炎を検出または予測する方法であって、(a)第1および第2の体液試料を供給し、ここに、第1の試料は骨関節炎の状態を決定すべき対象から採取し、第2の試料は同一対象から後で採取し;(b)第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体および第4の標識抗体、ここに、第1の抗体はヒトコラーゲン合成マーカーに特異的結合でき、第2の抗体はヒトコラーゲン分解マーカーに特異的結合でき、第3の標識抗体はヒトコラーゲン合成マーカーに結合でき、第4の標識抗体はヒトコラーゲン分解マーカーに結合でき、および当該標識を検出できる検出試薬を供給し;(c)第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体、第4の標識抗体および検出試薬を第1の体液試料に接触させ;(d)第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体、第4の標識抗体および検出試薬を第2の体液試料に接触させ;次いで、(e)第1の試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定して参照値を得、第2の試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定するステップを含み、ここに、参照値と比較して、第2の試料中、増加した濃度のヒトコラーゲン分解マーカーと連結した減少した濃度のコラーゲン合成マーカーは、試験対象が進行性骨関節炎の危険にあったか、または危険にある高い確率を有していると表示する方法を提供する。
【0112】
対象由来の第1および第2の体液試料の両方におけるヒトコラーゲン分解マーカーおよび合成マーカーの濃度は免疫学的測定法によって決定することができる。好ましくは、免疫学的測定法は、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、リガンド測定法、免疫放射定量測定法、蛍光免疫測定法、および酵素結合免疫吸着測定法よりなる群から選択される。より好ましくは、酵素結合免疫吸着測定法を用い、それは、競合ELISAまたはサンドイッチELISAである。ステップ(a)の体液試料は、好ましくは、血液、血清、尿、痰、間質液、関節デブリ、軟膏断片および滑膜細胞よりなる群から選択される。
【0113】
もうひとつの具体例において、試験対象が進行性骨関節炎を有するかまたは有する危険にあるかの高い確率を有していると表示されるのは、第2の試料中のコラーゲン分解マーカーの量は第1の試料中のコラーゲン分解マーカー濃度の平均値プラス1標準偏差で定義される参照値よりも多いときである。この具体例の第2の局面において、試験対象が進行性骨関節炎の有するかまたは有する危険にあるかの高い確率を有していると表示されるのは、第2の試料中のコラーゲン合成マーカーの量は第1の試料中のコラーゲン合成マーカー濃度の平均プラス1標準偏差で定義される参照値よりも少ないときである。好ましくは、両方の表示を組み合わせて、試験対象が進行性軟骨変性を有するかまたは有する危険にあるかの高い確率を有するかどうかを表示し、これによって、(a)試験対象が進行性軟骨変性を有しているかまたは有する危険にあるかの高い確率を有していると表示されるのは、第2の試料中のコラーゲン分解マーカーの量が第1の試料中のコラーゲン分解マーカー濃度の平均プラス1標準偏差で定義される参照値よりも多いときであり;(b)試験対象が進行性軟骨変性を有するかまたは有する危険にあるかの高い確率を有していると表示されるのは、第2の試料中のコラーゲン合成マーカーの量は第1の試料中のコラーゲン合成マーカー濃度の平均プラス1標準偏差よりも少ないときである。
【0114】
上記方法の第1の抗体および第2の抗体は固相表面上に固定化することができる。好ましくは、マイクロタイタープレートまたはディップスティックである。上記方法のもうひとつの具体例において、固相表面はヒト関節またはヒト血流に接触する器具である。固相支持体の代表的具体例において、骨関節炎軟骨合成マーカーはPIIANPであり、骨関節炎軟骨分解マーカーはCTX−II、II型コラーゲン、VI型コラーゲン、COMP、ケラチン硫酸、リンクタンパク質、アグリカンおよびアグリカンフラグメントよりなる群から選択される。
【0115】
この方法において、第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体、第4の標識抗体および検出試薬を第1の体液試料に接触させることを同時に実行することができる。あるいは、第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体、第4の標識抗体および検出試薬を第1の体液試料に接触させることを連続的に実行することができる。もうひとつの局面において、第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体、第4の標識抗体および検出試薬を第2の体液試料に接触させることを同時に実行することができる。あるいは、第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体、第4の標識抗体および検出試薬を第2の体液試料に接触させることを連続的に実行することができる。
【0116】
この発明のもうひとつの具体例において、第3および第4の標識抗体の標識はビオチンを含むことができ、第3および第4の抗体は、さらにストレプトアビジンにコンジュゲートした組成物を供給し、接触した第1の抗体または第2の抗体、第3の標識抗体、および第4の標識抗体にその組成物を添加する方法によって検出することができ、ここに、その組成物は直接検出可能であるか、またはその組成物は第2の直接検出可能な組成物を生成
する。好ましくは、検出可能な組成物は酵素であり、酵素は好ましくはペルオキシダーゼであり、より好ましくは西洋ワサビペルオキシダーゼである。もうひとつの局面において、上記酵素は検出可能な有色組成物を生成する。
【0117】
上記方法のもうひとつの具体例において、第1の抗体または第2の抗体はモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である。好ましくは、第1の抗体はモノクローナル抗体であって、第2の抗体はポリクローナルである。もうひとつの局面において、軟骨合成マーカーはPIIANPであり、軟骨分解マーカーはCTX−II、II型コラーゲン、VI型コラーゲン、COMP、ケラチン硫酸、リンクタンパク質、アグリカンおよびアグリカンフラグメントよりなる群から選択される。さらに、上記方法のステップ(a)ないし(e)を自動化することができる。
【0118】
上記方法の患者は、その方法が実行されているときと同時に、当該軟骨変性病の治療的処置を受けることができる。上記方法によって検出される状態は、その軟骨変性病の進行、減少または安定であろう。軟骨変性病はリウマチ様関節炎、骨関節炎その他の合成および分解生体マーカーの非連結によって検出可能な軟骨変性病であろう。
【0119】
なおもうひとつの具体例において、対象において軟骨変性を検出または予測する方法は、(a)体液試料を供給し、ここに、その試料は軟骨変性の状態を決定する対象から採取し;(b)第1の抗体、第2の抗体および第3の標識抗体、ここに、第1の抗体はヒトコラーゲン合成マーカーに特異的結合でき、第2の抗体はヒトコラーゲン分解マーカーに特異的結合でき、第3の標識抗体はヒトコラーゲン合成マーカーおよびヒトコラーゲン分解マーカーの両方に結合でき、および当該標識を検出できる検出試薬を供給し;(c)第1の抗体、第2の抗体、および第3の標識抗体、および検出試薬を前記体液試料に接触させ;(d)第1の抗体、第2の抗体、および第3の標識抗体、および検出試薬を前記体液試料に接触させ;次いで、(e)試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定するステップを含むことができ、ここに、所定の参照値よりも1標準偏差分高いヒトコラーゲン分解マーカーの濃度から所定の参照値よりも1標準偏差分低いコラーゲン合成マーカーの減少した濃度を差し引いたものが、試験対象が進行性軟骨変性を有していたか、その危険にあるかの高い確率を有すると表示するステップを含む。
【0120】
上記方法の軟骨変性病は、リウマチ様関節炎、骨関節炎その他のその病気に関連する生体マーカーの非連結によって検出可能な軟骨変性病であろう。
【0121】
もうひとつの具体例において、第1の抗体および第2の抗体と接触する固相支持体であって、ここに、第1の抗体はヒトコラーゲン合成マーカーに特異的結合でき、第2の抗体はヒトコラーゲン分解マーカーに特異的結合できることを特徴とする固相支持体を提供する。上記方法の第1の抗体および第2の抗体はマイクロタイタープレートまたはディップスティックのごとき固相表面上に固定化することができる。もうひとつの具体例において、固相表面はヒト関節またはヒト血流と接触している。骨関節炎軟骨合成マーカーは、例えば、PIIANPであり、骨関節炎軟骨分解マーカーは、例えば、CTX−II、II型コラーゲン、VI型コラーゲン、COMP、ケラチン硫酸、リンクタンパク質、アグリカンおよびアグリカンフラグメントよりなる群から選択される。
【0122】
もうひとつの具体例において、骨関節炎の進行を検出するキットであって、以下の(a)第1および第2の体液試料を供給し、ここに、第1の試料は骨関節炎の状態を決定する対象から採取し、第2の試料は同一の対象から後で採取し;次いで、(b)第1の試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定して、参照値を得、第2の試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定することを含み、ここに、参照値と比較して、第2の試料中のヒトコラーゲン分解マーカーの濃度が増加するとともにコラーゲン合成マーカーの濃度が減少することは、試験対象が進行性骨関節炎の危険にあったか、または危険にある高い確率を有していると表示する方法を記載したインストラクションを含むキットを提供する。
【0123】
このキットの一つの具体例において、キットは第1の抗体、第2の抗体および第3の標識抗体、ここに、第1の抗体はヒトコラーゲン合成マーカーに特異的結合でき、第2の抗体はヒトコラーゲン分解マーカーに特異的結合でき、第3の抗体はヒトコラーゲン合成マーカーおよびヒトコラーゲン分解マーカーの両方に結合でき、および当該標識を検出できる検出試薬を含む。その方法が記載されたインストラクションは、さらに、以下の(a)第1の抗体、第2の抗体、および第3の標識抗体、ここに、第1の抗体はヒトコラーゲン合成マーカーに特異的結合でき、第2の抗体はヒトコラーゲン分解マーカーに特異的結合でき、第3の抗体はヒトコラーゲン合成マーカーおよびヒトコラーゲン分解マーカーの両方に結合でき、および当該標識を検出できる検出試薬を供給し;(b)第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体および検出試薬を第2の体液試料に接触させ;次いで、(c)第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体および検出試薬を第2の体液試料と接触させて、第1の試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定して参照値を得、第2の試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定することを含む。
【0124】
このキットのもうひとつの具体例において、キットは、第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体、および第4の標識抗体、ここに、第1の抗体はヒトコラーゲン合成マーカーに特異的結合でき、第2の抗体はヒトコラーゲン分解マーカーに特異的結合でき、第3の標識抗体はヒトコラーゲン合成マーカーに結合でき、第4の標識抗体はヒトコラーゲン分解マーカーに結合でき、および当該標識を検出できる検出試薬を含む。第1の試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定して参照値を得ることについて、および第2の試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定することについてのインストラクションは、以下の:(a)第1および第2の体液試料を供給し、ここに、第1の試料は骨関節炎の状態を決定すべき対象から採取し、第2の試料は同一対象から後で採取し;(b)第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体および第4の標識抗体、ここに、第1の抗体はヒトコラーゲン合成マーカーに特異的結合でき、第2の抗体はヒトコラーゲン分解マーカーに特異的結合でき、第3の標識抗体はヒトコラーゲン合成マーカーに結合でき、第4の標識抗体はヒトコラーゲン分解マーカーに結合でき、および当該標識を検出できる検出試薬を供給し;(c)第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体、第4の標識抗体および検出試薬を第1の体液試料に接触させ;(d)第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体、第4の標識抗体および検出試薬を第2の体液試料に接触させ;次いで、(e)第1の試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定して参照値を得、第2の試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定するステップを含み、ここに、参照値と比較して、第2の試料中、増加した濃度のヒトコラーゲン分解マーカーと連結した減少した濃度のコラーゲン合成マーカーは、試験対象が進行性骨関節炎の危険にあったか、または危険にある高い確率を有していると表示するステップを含む。
【0125】
かくして、本発明は、概略、患者試料中のコラーゲン合成および分解マーカーを定量化することによって、骨関節炎およびリウマチ様関節炎のごとき軟骨変性病の進行を検出および決定するための方法、キットおよび製造業者の記事に関する。本発明を用いれば、軟骨変性病が進行しているか、回復しているかまたは安定維持しているかどうかを、患者試料中のコラーゲン合成および分解のマーカーを定量化し、次いで、得られた値と参照値とを比較することによって決定し得る。軟骨変性に罹った関節はコラーゲン合成および分解マーカーを発現し、この値の変化は軟骨変性病の進行の変化を示す。本発明の方法および装置は、ある種の軟骨変性病薬物治療の治療効果の正確な決定を可能とし、それゆえ、ほ乳類における薬効研究にも有用である。
【0126】
【表1】

【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

【0129】
【表4】

【0130】
他の具体例
ここに記載され特許請求される本発明は、ここに開示された特定の具体例によってその範囲が限定されるものではなく、これらの具体例は本発明のいくつかの局面の例示であることを意図する。いずれの同等の具体例も本発明の範囲内にあることを意図する。実際に、ここに示され記載されたものに加えて、本発明の様々な変形が前記の記載によって当業者に明らかになるであろう。そのような変形も不随する特許請求の範囲内にあることを意図する。
【0131】
引用文献
上で引用された全ての文献は、あたかも個々の刊行物、特許または特許出願の各々が、具体的かつ個別にその全ての目的につきその全体が出典明示されて本明細書に含まれると記載されているかのように、その全ての目的につきその全体が出典明示されて本明細書に含まれるものとみなされる。本明細書における文献の引用は、それらが本発明の先行技術であるとの自認と解されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】膝骨関節炎の患者75人中のII型コラーゲン代謝の分子マーカーの個別値を表すグラフ図。
【図2】基準時での低および高レベルのII型コラーゲン合成および分解の分子マーカーを有する患者における1年間の関節損傷進行を表すグラフ図。
【図3】基準時レベルのII型コラーゲン合成および分解の分子マーカーと膝OA患者における膝関節腔幅の1年間変化との間の相関を表すグラフ図。
【図4】関節損傷進行の最高の危険にある膝骨関節炎患者を認定するための非連結インデックスにおけるII型合成および分解の分子マーカーの測定の組合せを表すグラフ図。
【図5】血清IIA型プロコラーゲンN−プロペプチド(PIIANP)および尿中II型コラーゲンC末端架橋テロペプチド(CTX−II)の基準時レベルに対する軟骨疾患のビジュアル・アナログ・スケール(VAS)スコアにおける1年間変化の個別値を表すグラフ図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における軟骨破壊を検出または予測する方法であって、前記対象におけるII型コラーゲン分解からII型コラーゲン合成の非連結を検出する方法。
【請求項2】
対象におけるII型コラーゲン分解からII型コラーゲン合成の非連結を検出することが、
(a)対象の生体試料中の合成マーカーおよび分解マーカーの両方を検出し;
(b)合成マーカーおよび分解マーカーの量を比較し;次いで、
(c)合成マーカーおよび分解マーカーの相対量を所定の標準と相関付けて、対象における軟骨破壊を検出することを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
ステップ(b)が少なくとも2回行われる請求項2記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)が単一ステップである請求項2記載の方法。
【請求項5】
骨関節炎軟骨合成マーカーがPIIANPである請求項2記載の方法。
【請求項6】
骨関節炎分解マーカーが、CTX−II、II型コラーゲン、VI型コラーゲン、COMP、ケラチン硫酸、リンクタンパク質、アグリカン、およびアグリカンフラグメントよりなる群から選択される請求項2記載の方法。
【請求項7】
ステップ(a)の検出が、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、リガンドアッセイ、免疫放射定量測定法、蛍光免疫測定法および酵素結合免疫吸着測定法よりなる群から選択される測定法によって行われる請求項2記載の方法。
【請求項8】
酵素結合免疫吸着測定法が、競合ELISAおよびサンドイッチELISAよりなる群から選択される請求項2記載の方法。
【請求項9】
生体試料が、血液、血清、尿、痰、間質液、関節デブリ、軟骨断片および滑膜細胞よりなる群から選択される請求項2記載の方法。
【請求項10】
対象がほ乳類である請求項2記載の方法。
【請求項11】
ほ乳類がヒトである請求項10記載の方法。
【請求項12】
生体試料が軟骨である請求項2記載の方法。
【請求項13】
軟骨が膝軟骨である請求項12記載の方法。
【請求項14】
対象における骨関節炎または軟骨破壊の進行を決定する方法であって、前記対象におけるII型コラーゲン分解からII型コラーゲン合成の非連結を定量化することを含む方法。
【請求項15】
対象におけるII型コラーゲン分解からII型コラーゲン合成の非連結を定量化することが、
(a)対象の生体試料中の合成マーカーの量を測定し;
(b)対象の生体試料中の分解マーカーの量を測定し;
(c)合成マーカーの量および分解マーカーの量を用いて非連結インデックスの値を計算し;次いで、
(d)非連結インデックスの値と所定の標準とを比較して、対象における骨関節炎または軟骨変性の状態を定量することを含む請求項14記載の方法。
【請求項16】
ステップ(a)およびステップ(b)が、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、リガンドアッセイ、免疫放射定量測定法、蛍光免疫測定法および酵素結合免疫吸着測定法よりなる群から選択される測定法によって行われる請求項15記載の方法。
【請求項17】
酵素結合免疫吸着測定法が、競合ELISAおよびサンドイッチELISAよりなる群から選択される請求項16記載の方法。
【請求項18】
試料が、血液、血清、尿、痰、間質液、関節デブリ、軟骨断片および滑膜細胞よりなる群から選択される請求項15記載の方法。
【請求項19】
骨関節炎軟骨合成マーカーがPIIANPである請求項15記載の方法。
【請求項20】
骨関節炎分解マーカーが、CTX−II、II型コラーゲン、VI型コラーゲン、COMP、ケラチン硫酸、リンクタンパク質、アグリカン、およびアグリカンフラグメントよりなる群から選択される請求項15記載の方法。
【請求項21】
対象における骨関節炎を検出または予測する方法であって、
(a)第1および第2の体液試料を供給し、ここに、第1の試料は骨関節炎の状態を決定すべき対象から採取し、第2の試料は同一対象から後で採取し;
(b)第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体および第4の標識抗体、ここに、第1の抗体はヒトコラーゲン合成マーカーに特異的結合でき、第2の抗体はヒトコラーゲン分解マーカーに特異的結合でき、第3の標識抗体はヒトコラーゲン合成マーカーに結合でき、第4の標識抗体はヒトコラーゲン分解マーカーに結合でき、および当該標識を検出できる検出試薬を供給し;
(c)第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体、第4の標識抗体および検出試薬を第1の体液試料に接触させ;
(d)第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体、第4の標識抗体および検出試薬を第2の体液試料に接触させ;次いで、
(e)第1の試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定して参照値を得、第2の試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定するステップを含み、ここに、参照値と比較して、第2の試料中、増加した濃度のヒトコラーゲン分解マーカーと連結した減少した濃度のコラーゲン合成マーカーは、試験対象が進行性骨関節炎の危険にあったか、または危険にある高い確率を有していると表示する方法。
【請求項22】
対象由来の第1および第2の体液試料の両方におけるヒトコラーゲン分解マーカーおよび合成マーカーの濃度が免疫学的測定法によって決定される請求項21記載の方法。
【請求項23】
免疫学的測定法が、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、リガンド測定法、免疫放射定量測定法、蛍光免疫測定法、および酵素結合免疫吸着測定法よりなる群から選択される請求項22記載の方法。
【請求項24】
酵素結合免疫吸着測定法が、競合ELISAおよびサンドイッチELISAよりなる群から選択される請求項23記載の方法。
【請求項25】
ステップ(a)の体液試料が、血液、血清、尿、痰、間質液、関節デブリ、軟骨断片および滑膜細胞よりなる群から選択される請求項21記載の方法。
【請求項26】
第1の抗体および第2の抗体が固相表面上に固定化されている請求項21記載の方法。
【請求項27】
ステップ(b)において、第3および第4の標識抗体の標識はビオチンを含み、第3および第4の抗体は、さらにストレプトアビジンにコンジュゲートした組成物を供給し、ステップ(d)の接触した第1の抗体または第2の抗体、第3の標識抗体、および第4の標識抗体にその組成物を添加する方法によって検出され、ここに、その組成物は直接検出可能であるか、またはその組成物は第2の直接検出可能な組成物を生成する請求項21記載の方法。
【請求項28】
検出可能な組成物が酵素である請求項27記載の方法。
【請求項29】
酵素が西洋ワサビペルオキシダーゼである請求項28記載の方法。
【請求項30】
酵素が検出可能な有色組成物を生成する請求項28記載の方法。
【請求項31】
第1の抗体または第2の抗体がモノクローナル抗体である請求項21記載の方法。
【請求項32】
第1の抗体または第2の抗体がポリクローナル抗体である請求項21記載の方法。
【請求項33】
第1の抗体がモノクローナル抗体であって、第2の抗体がポリクローナル抗体である請求項21記載の方法。
【請求項34】
骨関節炎軟骨合成マーカーがPIIANPである請求項21記載の方法。
【請求項35】
軟骨分解マーカーが、CTX−II、II型コラーゲン、VI型コラーゲン、COMP、ケラチン硫酸、リンクタンパク質、アグリカンおよびアグリカンフラグメントよりなる群から選択される請求項21記載の方法。
【請求項36】
対象における骨関節炎を検出または予測する方法であって、
(a)体液試料を供給し、ここに、試料は骨関節炎の状態を決定すべき対象から採取し;
(b)第1の抗体、第2の抗体、および第3の標識抗体、ここに、第1の抗体はヒトコラーゲン合成マーカーに特異的結合でき、第2の抗体はヒトコラーゲン分解マーカーに特異的結合でき、第3の標識抗体はヒトコラーゲン合成マーカーおよびヒトコラーゲン分解マーカーの両方に結合でき、および当該標識を検出できる検出試薬を供給し;
(c)第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体および検出試薬を体液試料に接触させ;
(d)第1の抗体、第2の抗体、第3の標識抗体および検出試薬を体液試料に接触させ;次いで、
(e)試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定するステップを含み、ここに、所定の参照値の上1標準偏差よりも高い濃度のヒトコラーゲン分解マーカーと非連結の所定の参照値の下1標準偏差よりも低い減少濃度のヒトコラーゲン合成マーカーは、試験対象が進行性骨関節炎の危険にあったか、または危険にある高い確率を有していると表示する方法。
【請求項37】
対象由来の体液試料におけるヒトコラーゲン分解マーカーおよび合成マーカーの濃度が免疫学的測定法によって決定される請求項21記載の方法。
【請求項38】
免疫学的測定法が、放射免疫測定法、酵素免疫測定法、リガンド測定法、免疫放射定量測定法、蛍光免疫測定法、および酵素結合免疫吸着測定法よりなる群から選択される請求項37記載の方法。
【請求項39】
酵素結合免疫吸着測定法が、競合ELISAおよびサンドイッチELISAよりなる群から選択される請求項38記載の方法。
【請求項40】
ステップ(a)の体液試料が、血液、血清、尿、痰、間質液、関節デブリ、軟骨断片および滑膜細胞よりなる群から選択される請求項21記載の方法。
【請求項41】
骨関節炎軟骨合成マーカーがPIIANPである請求項36記載の方法。
【請求項42】
軟骨分解マーカーが、CTX−II、II型コラーゲン、VI型コラーゲン、COMP、ケラチン硫酸、リンクタンパク質、アグリカンおよびアグリカンフラグメントよりなる群から選択される請求項36記載の方法。
【請求項43】
第1の抗体および第2の抗体の組合せと接触する固相支持体であって、ここに、第1の抗体はヒトコラーゲン合成マーカーに特異的結合でき、第2の抗体はヒトコラーゲン分解マーカーに特異的結合できる固相支持体。
【請求項44】
骨関節炎軟骨合成マーカーがPIIANPである請求項43記載の固相支持体。
【請求項45】
骨関節炎分解マーカーが、CTX−II、II型コラーゲン、VI型コラーゲン、COMP、ケラチン硫酸、リンクタンパク質、アグリカン、およびアグリカンフラグメントよりなる群から選択される請求項43記載の固相支持体。
【請求項46】
骨関節炎の進行を検出するキットであって、以下の:
(a)第1および第2の体液試料を供給し、ここに、第1の試料は骨関節炎の状態を決定すべき対象から採取し、第2の試料は同一の対象から後で採取し;次いで、
(b)第1の試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定して参照値を得、第2の試料中のヒトのコラーゲン合成マーカーおよびコラーゲン分解マーカーの量を検出し、その濃度を決定することを含み、ここに、参照値と比較して、第2の試料中、増大した濃度のヒトコラーゲン分解マーカーと連結する減少した濃度のコラーゲン合成マーカーは、試験対象が進行性骨関節炎の危険にあったか、または危険にある高い確率を有していると表示する方法が記載されたインストラクションを含むキット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−510005(P2006−510005A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552120(P2004−552120)
【出願日】平成15年11月10日(2003.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2003/036047
【国際公開番号】WO2004/043237
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(300005677)バーンズ − ジューウィッシュ・ホスピタル (2)
【氏名又は名称原語表記】Barnes−Jewish Hospital