説明

面取り工具

【課題】バリ取り工具にあっては、手作業であるため、面取り及びバリ取りの作業に必要以上の時間を要する。
【解決手段】軸心方向に開口されたインナーソケット1と、該インナーソケット1内に設けられた面取りカッター2と、前記インナーソケット1の開放端側を囲繞すべく設けられた大径のアウターソケット3とを備える。面取りカッター2は、ボルトやピンテールの長さに応じてカッターの位置を調整できるようにインナーソケット1内に変位自在に設ける。アウターソケット3は、鉄粉等の切削屑を同ソケット3外に逃がすための開口部3a,3a…と、該開口部3a,3a…に切削屑を案内せしめるべく同ソケット3内に変位自在に配設されたガイド部材3bとを備えると共に、同ソケット3の外周には、鉄粉等の切削屑を捕集するためのカバー(捕集カバー)4を被装せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてボルト(被加工物)の面取り及び/又はバリ取り作業に使用される面取り工具に関し、更に詳しくは、ピンテール付きボルトの如く、ピンテールが破断された跡(破断面)に生じるバリ等を切削して円滑、かつ、簡単に表面を面取り(表面処理)することができるのみならず、切削屑を上手く捕集することができる有用な面取り工具の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、斯かる面取りやバリ取り用の工具としては、サンドペーパーやヤスリ等が使用されており、手作業で何度も丹念に仕上げをして、有害なバリを取り除いている。また、バリ取り工具としては、例えば、スプリング状に巻いたコイル状のヤスリを複数本組合せ、その一端をハンドルで固定してブラシ状にしたものが既に案出されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−331422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来のバリ取り工具にあっては、手作業であるため、面取り及びバリ取りの作業に必要以上の時間を要するものであり、中には、Rゲージを頻繁にあて、目視によって面取りの角を取りすぎないように細心の注意をはらわなければならないといった問題があり、もっと手軽で効率良く面取りやバリ取り加工ができる工具が要望されている。
【0004】
しかも、ピンテール付きボルトにあっては、ねじ部に螺合するナットの締付反力をピンテールで受け、同ピンテールがノッチ部(破断溝;ブレークネック)で破断するまで締め付けられるため、ピンテールの破断面には、R面がなく、また、バリ等が生じていることも相俟って、同破断部分に塗装を施しても、塗料が剥がれ易く、錆が発生してしまうといった問題がある。
【0005】
更に、面取り及びバリ取りの作業中に、切削屑が飛散してしまうといった問題があり、作業者にとっては健康上の問題にもなっていた。
【0006】
本発明はこのような従来の問題点及び要望に鑑みてなされたもので、ボルトやピンテール等の破断部分の面取り及びバリ取りを頗る簡単で、かつ、効率良く行うことができるのみならず、切削屑の飛散防止をも解決することができた有用な面取り工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の如き従来の問題点を解決し、所期の目的を達成するため本発明の要旨とする構成は、ボルト等の被加工物の遊端部分を面取り及び/又はバリ取りするために使用される面取り工具であって、軸心方向に開口されたインナーソケットと、該インナーソケット内に設けられた面取り及び/又はバリ取りカッターと、少なくとも前記インナーソケットの開放端側を囲繞すべく設けられた大径のアウターソケットとを備えてなる面取り工具において、前記アウターソケットは、鉄粉等の切削屑を同ソケット外に逃がすための開口部と、該開口部に切削屑を案内せしめるべく同ソケット内に変位自在に配設されたガイド部材とを備えてなる面取り工具に存する。
【0008】
また、前記ガイド部材は、外周端縁がアウターソケットの開口部内に延出された状態で同ソケットの長手方向へ変位する円盤状の蓋体からなり、中心にカッター挿通孔を形成しておくのが良い。
【0009】
更に、前記面取り及び/又はバリ取りカッターは、インナーソケット内に変位自在に設けられるのが良い。
【0010】
また、前記アウターソケットは、開放端の外周に張り出した鍔部と、該鍔部に遊端側が当接されて鉄粉等の切削屑を捕集せしめるカバーとを備えるのが良い。
【発明の効果】
【0011】
このように構成される本発明の面取り工具は、本工具の基端側(連結基部)を、電気ドリル等のスピンドルや手持ち式工具回転用電動機の工具取付部に取付けるだけで(図6参照)、その回転駆軸の作動によってインナーソケットが回転し、同ソケット内に挿着されたボルト遊端部等の被加工物が前記カッターで均一に切削できるため、ボルト遊端部(破断部)の面取り及びバリ取りを簡単、かつ、効率的に行うことができるのみならず、面取り及びバリ取り加工の際に生じる切削屑が、前記ガイド部材の上に受けられて開口部からアウターソケット外へと遠心力で運ばれるため(アウターソケットに被装される)蛇腹状の捕集カバー内に上手く捕集することができるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
軸心方向に開口されたインナーソケットと、該インナーソケット内に設けられた面取り及び/又はバリ取りカッターと、少なくとも前記インナーソケットの開放端側を囲繞すべく設けられた大径のアウターソケットと、前記アウターソケットの周面に形成された鉄粉等の切削屑を同ソケット外に逃がすための開口部と、該開口部に切削屑を案内せしめるべく同ソケット内に変位自在に配設されたガイド部材とを備え、該ガイド部材は、外周端縁がアウターソケットの開口部内に延出された状態で同ソケットの長手方向へ変位する円盤状の蓋体からなり、中心にカッター挿通孔を形成せしめるのが良い。
【0013】
次に、本発明に係る面取り工具の実施の一例を図面を参照しながら説明する。図中Aは、本発明に係る面取り工具本体であり、この面取り工具本体Aは、図1に示すように、軸心方向に開口されたインナーソケット1と、該インナーソケット1内に設けられた面取りカッター2と、前記インナーソケット1の開放端側を囲繞すべく設けられた大径のアウターソケット3とを備えている。
【0014】
インナーソケット1は、両端が開口された筒状を呈しており、図3に示すように、基端側に後述する面取りカッター2の連結部2cを挿着するための連結孔1aと、先端開口1b側にベアリング1cを介して大径のアウターソケット3に回転自在に連結されている。
【0015】
また、面取りカッター2は、ボルトやピンテールの長さに応じてカッターの位置を調整できるようにインナーソケット1内に変位自在に設けられている。換言すれば、面取りカッター2は、環状のカッター部2aと、該カッター部2aの基部2bに突設された連結部2cとを備えており、インナーソケット1内に貫通する螺旋(ポンチネジ)2dで前記基部2bが締結されている。
【0016】
従って、螺旋2dを緩めることで、面取りカッター2の全体が同インナーソケット1内を変位可能になるものであり、ボルト遊端部6の長さに応じて同カッター2の位置を調整できるのである。
【0017】
一方、アウターソケット3は、図3に示すように、鉄粉等の切削屑を同ソケット3外に逃がすための開口部3a,3a…と、該開口部3a,3a…に切削屑を案内せしめるべく同ソケット3内に変位自在に配設されたガイド部材3bとを備えている。
【0018】
また、前記ガイド部材3bは、外周端縁がアウターソケット3の開口部3a,3a…内に延出された状態で同ソケット3の長手方向へ変位する円盤状の蓋体からなり、中心にカッター挿通孔3dを形成されている。
【0019】
更に、アウターソケット3の外周には、鉄粉等の切削屑を捕集するためのカバー(捕集カバー)4が被装されるものであり、その捕集カバー4の先端側は、アウターソケット3の外周に突設された環状鍔部5に面一に整合されている。
【0020】
また、この捕集カバー4の基部側には、蛇腹の上部を固定する取付ケース6と、取付ソケット6aを介して組み付けられたバネ等の付勢部材7とを備えている。この付勢部材7は、係止爪6b、6b…を介して手持ち式工具回転用電動機Bの工具取付部B に取り付ける際に、押圧されるものであり、切削作業の際に生じる振動を吸収することができる。
【0021】
このように本発明の面取り工具では、本工具Aの連結部2cを、電気ドリル等のスピンドルや手持ち式工具回転用電動機Bの工具取付部B に取付けるだけで、その回転駆軸の作動によってインナーソケット1が回転し、同ソケット1内に挿着されたボルトCの遊端部C を面取りカッター2で均一に切削できるため、同ボルト遊端部C の面取り及びバリ取りを誰にでも簡単かつ効率的に行うことができる。
【0022】
しかも、前記アウターソケット3には、開口部3a,3a…が形成されると共に、その外周に捕集カバー4が装着されているため、その面取り及びバリ取り加工の際に生じてしまう鉄粉等の切削屑が、図3に示すように、ガイド部材3b上に受けられると共に、遠心力で開口部3から捕集カバー4内へと案内されて捕集カバー4内に捕集されるため、従来の如き四方八方に鉄粉等が飛散してしまうことを防止することができるものであり、また、捕集カバー4をアウターソケット3に被装することで、騒音防止をも図ることができるのである。
【0023】
因に、この捕集カバー4は、蛇腹状の筒体であるため、本工具Aを取り外しする時や、被加工物を挿着させる時であっても、邪魔になることなく伸縮できるため、頗る便利であると共に、バリ取り加工時に生じてしまう鉄粉等を、同蛇腹状の各谷部間に捕集し滞留させることが可能となる。
【0024】
尚、本発明の面取り工具は、本実施例に限定されることなく、本発明の目的の範囲内で自由に設計変更できるものであり、本発明はそれらの全てを包摂するものである。例えば、本実施例では、ボルト、ピンテールの面取り及びバリ取り用として説明しているが、これに限定されることなく、ボルト、ピンテール以外の被加工物にも応用できることは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る面取り工具の正面図である。
【図2】同面取り工具と捕集カバーとの組立分解斜視図である。
【図3】同面取り工具に捕集カバーを装着した状態を示す縦断面図である。
【図4】本実施例で使用する捕集カバーを示す斜視図である。
【図5】図5(a)は面取り工具に捕集カバーを装着した状態を示す平面図、図5(b)は同底面図である。
【図6】本発明に係る面取り工具の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 インナーソケット
1a 連結孔
1b 先端開口
2 面取りカッター
2a カッター部
2b 基部
2c 連結部
2d 螺旋
3 アウターソケット
3a 開口部
3b ガイド部材
3c 段差部
3d カッター挿通孔
4 捕集カバー
5 環状鍔部
6 取付ケース
6a 取付ソケット
6b 係止爪
7 付勢部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト等の被加工物の遊端部分を面取り及び/又はバリ取りするために使用される面取り工具であって、軸心方向に開口されたインナーソケットと、該インナーソケット内に設けられた面取り及び/又はバリ取りカッターと、少なくとも前記インナーソケットの開放端側を囲繞すべく設けられた大径のアウターソケットとを備えてなる面取り工具において、
前記アウターソケットは、鉄粉等の切削屑を同ソケット外に逃がすための開口部と、該開口部に切削屑を案内せしめるべく同ソケット内に変位自在に配設されたガイド部材とを備えたことを特徴とする面取り工具。
【請求項2】
前記ガイド部材は、外周端縁がアウターソケットの開口部内に延出された状態で同ソケットの長手方向へ変位する円盤状の蓋体からなり、中心にカッター挿通孔を形成してなることを特徴とする請求項1に記載の面取り工具。
【請求項3】
前記面取り及び/又はバリ取りカッターは、インナーソケット内に変位自在に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の面取り工具。
【請求項4】
前記アウターソケットは、開放端の外周に張り出した鍔部と、該鍔部に遊端側が当接されて鉄粉等の切削屑を捕集せしめるカバーを装着してなることを特徴とする請求項1に記載の面取り工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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