説明

靴下及び靴下の製造方法

【課題】爪先部の内、親指側が厚いか、または小指側が親指側と同程度の厚みを有するか、等の爪先の形態に関係なく、様々な形態の足に対して爪先に圧迫感を与えることのない靴下を形成する。
【解決手段】爪先部2の親指側2aと小指側2bのそれぞれにおいて、足裏側4から甲部側5へかけて編み目数が減少する減少区間とそれに連続して編み目数が増加する増加区間からなる減増区間の組を複数形成し、前記減少区間の端縁とそれに連続する前記増加区間の端縁を互いに連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は靴下編機により筒編して得られる靴下、及び靴下の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図12に示すような一般的な靴下1は足の入口部から爪先部2に向かって筒編した後、その筒編部3の甲部側5に形成されている開口部の端部を逢着することによって製造される。図12では開口部端部の逢着部を6で示している。図12に示す靴下1は工業的には靴下編機、例えば図14に示す、複数本の編針50が周囲に配設された針釜60を一定の向きに回転させて編み立てる回転動作と、この針釜60を正逆方向に交互に回動させて編み立てる回動動作とを併せ持つ丸編機を用いて製編される。
【0003】
編針50は図14−(a)に示すようにその先端部に設けられた鉤部52において一端部で開閉するベラ54の他端部が、鉤部52の首部に設けられた釘56に回動自在に軸着されることにより形成される。針釜60の本体である筒状部材62の外周面には図14−(b)、(c)に示すように複数本の縦溝64が形成され、この各縦溝64に図14−(a)に示す編針50が上下動可能に挿入される。この針釜60を一定の向きに回転させるとき、所定箇所で編針50が順次持ち上げられることにより編み立て動作が行われる。
【0004】
図14に示す編針50と針釜60とを具備する丸編機によって製編される従来の靴下の爪先部2は図13に示す要領によって製編されるが、初めに針釜50を一定の向きに回転させて所定長さの筒編部3を編み立てた後、針釜60を回動させて靴下1の爪先部2を編み立てることが行われる。
【0005】
この爪先部2を編み立てる際には、靴下1の足裏側4を示す図13−(c)のAB位置まで編み立てた後、針釜60を正逆方向に回動させつつ編み立てに関与する編針50の針数(以下、編み立てに関与する針数と称することがある)を順次減少させてCD位置まで編み立てる。CD位置まで編み立てた後、靴下の甲部側5を示す図13−(a)のAB位置まで、針釜60を正逆方向に回動させつつ編み立てに関与する針数を順次増加させて編み立てることによって爪先部2が形成される。
【0006】
更に図13−(a)に示すAB位置まで編み立てた後、針釜60の編み立てに関与する針数を所定本数に保持しつつ、筒編部3の甲部側5に形成された開口部まで製編することにより逢着部6が形成される。ここで、爪先部2の足裏側4と甲部側5との端縁には、各側を形成するループの一部が互いに絡み合わされてなる連結線AC、BDが形成される。この連結線AC、BDは針釜60が正方向又は逆方向に回動した際の回動端でもある。
【0007】
図13に示す靴下1の場合、丸編機の針釜60を正逆方向に回動させつつ編み立てに関与する針数を順次増減させて爪先部2を編み立てる際の針数の増減数は実質的に同一であるため、丸編機の編み立て方向は靴下1の中心線方向で一定している。従って得られた靴下1の爪先部2は図13−(a)、(c)に示すように左右対称形であり、且つ爪先部2の先端側から見た図である(b)に示すように略同一厚さに形成されるため、靴下1には左右の別がない。
【0008】
しかしながら、一般的な足は親指が他の指よりも太く、且つ足の最先端位置が靴下1の中心線に関して親指側に位置する非対称形であることが多いため、図13に示す靴下1では親指によって靴下地が引っ張られて親指側に圧迫感が生じ、特に親指に力が加えられるスポーツ等の際には競技中に親指に痛みを感ずることもある。更に親指によって靴下地が引っ張られることで、小指側の靴下地も引っ張られるため、小指側にも圧迫感が感じられることもある。
【0009】
このような、対称形の靴下が有する問題点に着目し、出願人は先に非対称形の足に適合した形態の靴下を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−021703号公報(請求項1、段落0007、0013〜0024、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の靴下は爪先部における最先端位置が親指側に偏って位置する非対称形であって、爪先部の厚みを増加する厚み増加用編立部分が爪先部の親指側に偏って編み込まれていることを特徴とする。但し、厚み増加用編立部分が親指側に偏っていることから、靴下に適合する足が、爪先部の中で親指側が厚い形態に特定されるため、例えば小指側が親指側と同程度近くの厚みを有する足への対応が利かない可能性がある。
【0012】
本発明は上記背景より、親指側が厚い形態の他、小指側が親指側と同程度近くの厚みを有する形態等、様々な形態の足に対して圧迫感を与えることのない靴下及びその製造方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は爪先部の親指側と小指側のそれぞれにおいて、足裏側から甲部側へかけて編み目数が減少する減少区間とそれに連続して編み目数が増加する増加区間からなる減増区間の組が複数あり、前記減少区間の端縁とそれに連続する前記増加区間の端縁が互いに連結されていることを構成要件とする。編み目数の減少区間の端縁とそれに連続する増加区間の端縁が互いに連結されることで、増加区間の端縁とそれに連続する減少区間の端縁は互いには連結されない。図1−(a)以下、展開図上、下が足裏側、上が甲部側である。
【0014】
爪先部を製編する際には通常、先端部を閉じた形にする上で、前記のように編針50の針数が次第に減少させられるが、請求項1では針数が単に減少させられるのではなく、爪先部の親指側と小指側に、足裏側から甲部側へかけて編み目数の減少区間とそれに連続する増加区間からなる減増区間の組が複数あることで、親指側と小指側のそれぞれにおいて編み目数の減少と増加が繰り返される。
【0015】
展開図上は図1−(a)に示すように爪先部の親指側と小指側の端縁がジグザグ状になり、爪先部の製編が完了したとき、すなわち編み目数の減少区間の端縁とそれに連続する増加区間の端縁が連結されたときに、互いに連結されない増加区間の端縁とそれに連続する減少区間の端縁が形成するV字、またはU字等の形がそのまま残ることになる。結果として(b)、(c)に示すように親指側と小指側のそれぞれに実質的にV字状、またはU字状等の連結線が形成される。図1−(b)、(c)はそれぞれ親指側、小指側の側面を示す。
【0016】
編み目数の増加区間の端縁とそれに連続する減少区間の端縁が互いに連結されないことで、爪先部の製編が完了した時点で、爪先部に厚さ方向の空間が確保される。このように実質的にV字状、またはU字状等をなす端縁の連結線は爪先部に爪先を入れたときに爪先に圧迫感を与えることのないゆとりを与え、爪先部の親指側においては親指側の厚みを増す機能を持ち、小指側においては小指側の厚みを増す機能を持つ。
【0017】
実質的にV字状、またはU字状等をなす端縁の連結線が親指側と小指側のそれぞれに表れることで、爪先部におけるゆとりは親指側と小指側のいずれにも確保され、ゆとりの大きさと位置はV字、またはU字等の数や大きさ等、すなわち減少区間と増加区間の数と大きさ等により自由に設定される。
【0018】
従って親指側が厚いか、または小指側が親指側と同程度近くの厚みを有するか、等の爪先の形態に関係なく、様々な形態の足に対して爪先に圧迫感を与えることのない靴下を形成することが可能となる。具体的には親指側におけるV字、またはU字等の数や大きさを増すことで爪先の親指側が厚い足に対応することが可能であり、小指側においても同様にV字、またはU字等の数や大きさを増すことで小指側が親指側と同程度近くの厚みを有する足へも対応可能となる。
【0019】
本発明は、少なくとも親指側に、前記増加区間とそれに連続する前記減少区間からなる増減区間の組が複数あることを構成要件とする。増減区間の組は小指側に複数ある場合もある。
【0020】
増減区間の組とは、図1−(a)、図3−(a)に示すように前記のV字やU字等のように互いに連結されずに残る端縁の組を指し、増加区間の端縁とそれに連続する減少区間の端縁とで1組になる。請求項2では少なくとも親指側に増減区間の組が複数あることから、図3−(a)に示すように減少区間と増加区間は共に3個以上ある。
【0021】
本発明では少なくとも親指側に増減区間の組が複数あることで、前記した爪先部におけるゆとりの空間の大きさや形を自由に形成し、また爪先の甲部側から足裏側へかけて広い範囲でゆとりを確保することが可能である。特にジグザグの数が親指側に複数あることで、爪先の親指側が厚い足に容易に対応することが可能であり、小指側にもジグザグの数が複数あれば、小指側が親指側と同程度の厚みを有する足へも容易に対応可能となる。
【0022】
本発明は、親指側の前記増減区間の組の数が、小指側の前記増減区間の組の数より多いことを構成要件とする。
【0023】
この場合、図3に示すように親指側の増減区間の組の数が小指側の増減区間の組の数より多いことで、親指側に形成されるV字、またはU字等の数が小指側の数より相対的に多くなり、親指側のゆとりが大きくなるため、特に親指側が厚い足に対する圧迫感を容易に緩和、もしくは解消することが可能になる。図3は親指側に複数の増減区間がある場合の他、親指側の増減区間の組の数が小指側の増減区間の組の数より多い場合も示している。
【0024】
本発明は、親指側の複数の前記増減区間の内、いずれかの増減区間における編み目の増加数、もしくは減少数が、他の増減区間における編み目の増加数、もしくは減少数より少ないことを構成要件とする。
【0025】
いずれかの増減区間における編み目の増加数、もしくは減少数が、他の増減区間における編み目の増加数、もしくは減少数より少ないとは、いずれかの増減区間における編み目の増加数が他の増減区間における編み目の増加数より少ない、またはいずれかの増減区間における編み目の減少数が他の増減区間における編み目の減少数より少ない、あるいはいずれかの増減区間における編み目の増加数と減少数が共に、他の増減区間における編み目の増加数と減少数より少ないことを言う。
【0026】
図6−(a)に示すように親指側のいずれかの増減区間における編み目の増加数、もしくは減少数が、他の増減区間における編み目の増加数、もしくは減少数より少ないことで、減少区間の端縁とそれに連続する増加区間の端縁が互いに連結されるときに、増加数、もしくは減少数の少ない増減区間を挟んだ減少区間の端縁と増加区間の端縁が連結されることになる。この結果、(b)に示すように増加数、もしくは減少数の多い他の増減区間の端縁が前記のようにV字、またはU字等を形成するときに、そのV字、またはU字等の先端位置に増加数、もしくは減少数の少ない増減区間の端縁がV字、またはU字等の形となって表れることになる。
【0027】
親指側に形成されるV字、またはU字等の先端位置に更なるV字、またはU字等が形成されることで、請求項2、もしくは請求項3の場合より親指側のゆとりが更に大きくなり、親指側における圧迫感を緩和する効果が増大する。
【0028】
請求項1に記載の発明は爪先部の親指側と小指側のそれぞれの側面において、足裏側から甲部側へかけて編み目数が減少する減少区間とそれに連続して編み目数が増加する増加区間からなる減増区間が一つあり、少なくとも親指側に、前記増加区間とそれに連続する前記減少区間からなる増減区間の組が複数あり、その親指側の複数の前記増減区間の内、いずれかの増減区間における編み目の増加数、もしくは減少数が、他の増減区間における編み目の増加数、もしくは減少数より少なく、前記減少区間の端縁とそれに連続する前記増加区間の端縁が互いに連結されていることを構成要件とする。
【0029】
請求項1に記載の発明では図8−(a)に示すように小指側において足裏側から甲部側へかけて編み目数の減少区間とそれに連続する増加区間の組(減増区間)が複数に限られず、単数の場合が含まれ、増減区間がないこともある。請求項5に記載の発明は小指側において減増区間が単数の場合を含むことを除き、請求項4に記載の発明と共通する。よって本発明が有する、親指側のゆとりが増大することの前記利点を引き継ぎ、爪先の形状が親指側に偏った非対称形の足に対する圧迫感を容易に解消することが可能になる。
【0030】
請求項2に記載の発明は請求項1に記載の発明において、親指側において、前記減少区間の端縁の、前記足裏側から甲部側へかけての進行方向に対する傾斜角度が、前記増加区間の端縁の、前記進行方向に対する傾斜角度より小さいことを構成要件とする。図10−(a)に示すように減少区間の端縁の進行方向に対する傾斜角度αは鋭角を指し、増加区間の進行方向に対する傾斜角度βは90°以下の角度を指す。
【0031】
この場合、進行方向に対する減少区間の端縁の傾斜角度αが、増加区間の端縁の傾斜角度βより小さいことで、各区間の長さが等しい場合において減少区間の端縁の傾斜角度と増加区間の端縁の傾斜角度が等しい場合より、減少区間の端縁の中心、または減少区間と増加区間の端縁の中心を結ぶ線と進行方向とのなす角度(鋭角)が小さくなる。すなわち減少区間の端縁の中心等を結ぶ線が親指側と小指側を結ぶ線の中心線より親指側へ偏ることになる。この結果、減少区間の端縁の傾斜角度と増加区間の端縁の傾斜角度が等しい場合より、親指側に多くの糸が編み込まれるため、爪先部における親指側の空間を厚くすることができ、親指に対する圧迫感を緩和する効果が得られる。
【0032】
請求項1、もしくは請求項2に記載の靴下は請求項3に記載のように、親指側と小指側において、足裏側から甲部側へかけて編み目数を減少させる操作と増加させる操作を繰り返して爪先部を製編し、前記編み目数を減少させた減少区間の端縁とそれに連続して編み目数を増加させた増加区間の端縁を連結することにより製造される。
【0033】
編み目数の増加区間の端縁とそれに連続する減少区間の端縁を連結することで、上記請求項1、もしくは請求項2に記載の発明の利益を引き継ぐため、親指側が厚いか、または小指側が親指側と同程度近くの厚みを有するか等の爪先の形態に関係なく、様々な形態の足に対して爪先に圧迫感を与えることのない靴下を製造することが可能である。
【発明の効果】
【0034】
親指側と小指側において足裏側から甲部側へかけて編み目数の減少区間とそれに連続する増加区間からなる減増区間の組を複数有するか、または親指側の複数の増減区間の内、いずれかの増減区間の編み目の増加数、もしくは減少数が、他の増減区間の編み目の増加数、もしくは減少数より少ないため、爪先部の製編が完了した時点で、爪先部に厚さ方向の空間を確保することができる。従って爪先部に爪先を入れたときに爪先に圧迫感を与えることのないゆとりを与えることができる。
【0035】
ゆとりは親指側と小指側のいずれにも確保することができ、その大きさと位置は自由に設定することができるため、親指側が厚いか、または小指側が親指側と同程度近くの厚みを有するか等の爪先の形態に関係なく、様々な形態の足に対して爪先に圧迫感を与えることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(a)は親指側と小指側に1個の増減区間がある場合の編み立ての要領を示した展開図、(b)は爪先部の製編が終了したときの親指側の様子を示した側面図、(c)は小指側の様子を示した側面図である。
【図2】(a)は爪先部の製編が終了したときの足裏側を示した背面図、(b)は爪先側を示した正面図、(c)は甲部側を示した平面図である。
【図3】(a)は親指側に2個の増減区間があり、小指側に1個の増減区間がある場合の編み立ての要領を示した展開図、(b)は爪先部の製編が終了したときの親指側の様子を示した側面図、(c)は小指側の様子を示した側面図である。
【図4】(a)は親指側に2個の増減区間があり、小指側に1個の増減区間がある場合の他の編み立ての要領を示した展開図、(b)は爪先部の製編が終了したときの親指側の様子を示した側面図、(c)は小指側の様子を示した側面図である。
【図5】(a)は親指側と小指側に1個の増減区間がある場合の他の編み立ての要領を示した展開図、(b)は爪先部の製編が終了したときの親指側の様子を示した側面図、(c)は小指側の様子を示した側面図である。
【図6】(a)は親指側に3個の増減区間があり、各増減区間における編み目の減少数と増加数を変化させて編み立てを行ったときの様子を示した展開図、(b)は爪先部の製編が終了したときの親指側の様子を示した側面図、(c)は小指側の様子を示した側面図である。
【図7】(a)は親指側に7個の増減区間があり、各増減区間における編み目の減少数と増加数を変化させて編み立てを行ったときの他の様子を示した展開図、(b)は爪先部の製編が終了したときの親指側の様子を示した側面図、(c)は小指側の様子を示した側面図である。
【図8】(a)は小指側に増減区間がなく、親指側に3個の増減区間があり、各増減区間における編み目の減少数と増加数を変化させて編み立てを行ったときの様子を示した展開図、(b)は爪先部の製編が終了したときの親指側の様子を示した側面図、(c)は小指側の様子を示した側面図である。
【図9】(a)は小指側に増減区間がなく、親指側に7個の増減区間があり、各増減区間における編み目の減少数と増加数を変化させて編み立てを行ったときの様子を示した展開図、(b)は爪先部の製編が終了したときの親指側の様子を示した側面図、(c)は小指側の様子を示した側面図である。
【図10】(a)は親指側の減少区間の端縁の、進行方向に対する傾斜角度を、増加区間の端縁の、進行方向に対する傾斜角度より小さくし、親指側において編み目数の減少と増加を多数回繰り返して編み立てを行ったときの様子を示した展開図、(b)は爪先部の製編が終了したときの親指側の様子を示した側面図、(c)は小指側の様子を示した側面図である。
【図11】(a)は親指側の減少区間の端縁の、進行方向に対する傾斜角度を、増加区間の端縁の、進行方向に対する傾斜角度より小さくし、親指側において編み目数の減少と増加を多数回繰り返して編み立てを行ったときの他の様子を示した展開図、(b)は爪先部の製編が終了したときの親指側の様子を示した側面図、(c)は小指側の様子を示した側面図である。
【図12】靴下の外形を示した斜視図である。
【図13】(a)は従来の靴下の爪先部を示した甲部側の平面図、(b)は(a)の爪先側の正面図、(c)は足裏側の背面図である。
【図14】(a)は靴下編機である丸編機に装着される編針を示した立面図、(b)は針釜を示した斜視図、(c)は(b)の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0038】
図1−(a)は爪先部2の親指側2aと小指側2bのそれぞれにおいて、足裏側4から甲部側5へかけて編み目数が減少する減少区間とそれに連続して編み目数が増加する増加区間からなる減増区間の組が複数あり、(b)、(c)に示すように減少区間の端縁とそれに連続する増加区間の端縁が互いに連結されている靴下1の基本的な形態の展開図を示す。(a)において下が足裏側4を、上が甲部側5を示す。(b)は爪先部2を足裏側4から甲部側5へ製編し、甲部側5での逢着まで終了したときの爪先部2における親指側2aの側面を、(c)は小指側2bの側面を示す。爪先部2は足裏側4から甲部側5へ向けて編み目数の減少区間と増加区間が交互に繰り返され、甲部側5において図12に示す筒編部3の、爪先側の先端と逢着されることにより製編され、図1−(b)、(c)に示すように逢着部6が形成される。
【0039】
図1−(a)は爪先部2の製編が足裏側4から甲部側5へ移行する間に、親指側2aにおいて編み目数の減少区間と増加区間がそれぞれ2つあり、小指側2bにおいても編み目数の減少区間と増加区間がそれぞれ2つある場合の展開図を示している。減少区間と増加区間は交互に繰り返されるため、図1では親指側2aと小指側2bのそれぞれに2個の減増区間があり、2個の減増区間が繰り返されることによって1個の増減区間を有することになる。図1−(a)中、親指側2aにおけるH−J−H、H−L−H、及び小指側2bにおけるI−K−I、I−M−Iが減増区間であり、親指側2aにおけるJ−H−L、及び小指側2bにおけるK−I−Mが増減区間である。
【0040】
親指側2aにおける編み目数の減少区間の端縁HJ、HLとそれぞれに連続する増加区間の端縁JH、LHが互いに連結されたときには、増加区間の端縁JHとそれに連続する減少区間の端縁HL(増減区間J−H−L)は互いには連結されず、親指側2aでは増加区間の端縁JHとそれに連続する減少区間の端縁HLが対になって実質的にV字状、またはU字状等をなして表れる。図1の場合、V字状、またはU字状等をなす端縁の組、すなわち増減区間は親指側2aと小指側2bのいずれも1組である。
【0041】
同様に小指側2bにおける編み目数の減少区間の端縁IK、IMとそれぞれに連続する増加区間の端縁KI、MIが互いに連結されたときには、増加区間の端縁KIとそれに連続する減少区間の端縁IM(増減区間K−I−M)は互いには連結されず、小指側2bでは増加区間の端縁KIとそれに連続する減少区間の端縁IMが対になって実質的にV字状、またはU字状等をなして表れる。
【0042】
図1に示す爪先部2を編み立てる際には、靴下1の足裏側4を示す図2−(a)のH−I位置まで編み立てた後、(b)に示すように編み目数を順次減少させてJ−K位置まで編み立てることが行われる。この場合、針釜60が正方向に回動した際の編み目の減少数と、逆方向に回動した際の編み目の減少数が実質的に同数である場合と同数でない場合がある。
【0043】
図1−(a)、図2−(a)、(b)に示すH−I線の位置までは、針釜60を一定方向に回転させて所定長さの、図12に示す筒編部3を編み立てた後、針釜60を正逆方向に交互に回動させ、編み立てに関与する編針50の針数(編み目数)を増減させることによって爪先部2の編み立てが行われる。ここでの針数の増減は正逆方向に回動する針釜60の回動方向を変更する際に行われる。
【0044】
J−K位置まで編み立てた後は、図1−(a)に示すようにJ位置側に針釜60が回動する際に編み目を順次増加させてH位置まで編み立てると同時に、K位置側に針釜60が回動する際に編み目数を順次増加させてI位置側まで編み立て、次いでH位置側に針釜60が回動する際に編み目数を減少させてL位置まで編み立てると同時に、I位置側に針釜60が回動する際に編み目数を減少させてM位置側まで編み立てることが行われる。この間のH位置とI位置を結ぶ線H−Iは図2−(b)に示すように足裏側4から甲部側5への折り返し線となる。
【0045】
図1−(a)ではこの折り返し線H−Iに関して足裏側4と甲部側5が線対称となるように、親指側2aと小指側2bにおける編み目の増減数を等しくしているが、必ずしもその必要はなく、折り返し線H−Iに関して足裏側4と甲部側5が非対称となる場合もある。図3−(a)〜図7−(a)においても同様である。
【0046】
図1の場合には更に、L−M位置まで編み立てた後、L位置側とM位置側で編み目数を順次増加させてH−I位置まで編み立てることによって図2−(c)に示すように爪先部2の製編が完了する。ここで針釜60が正方向に回動した際の編み目の増加数と、逆方向に回動した際の編み目の増加数は実質的に同数である場合と同数でない場合がある。
【0047】
爪先部2は足裏側4から甲部側5へ移行することにより製編されるが、逢着部6が形成されるまでの過程で言えば、針は親指側2aと小指側2bを往復しながら、H−I間→J−K間→H−I間→L−M間→H−I間を移動する。この間、親指側2aのH→Jの過程で編み目数が減少し、J→Hの過程で編み目数が増加する。続くH→Lの過程では編み目数が減少し、L→Hの過程では編み目数が増加する。
【0048】
同様に小指側2bのI→Kの過程で編み目数が減少し、K→Iの過程で編み目数が増加し、続くI→Mの過程で編み目数が減少し、M→Iの過程で編み目数が増加する。図1−(a)では足裏側4のH−I位置から甲部側5のH−I位置までの間において、親指側2aと小指側2bでの編み目の減少数と増加数が等しく、また足裏側4から甲部側5への移行の向きに進行する点を破線で結んだJ−K、L−Mが互いに平行になっているが、必ずしもそのような規則性を持たせる必要はない。図3−(a)〜図7−(a)においても同様である。
【0049】
図3−(a)は少なくとも親指側2aに、増加区間とそれに連続する減少区間からなる増減区間の組が複数ある場合の展開図を示す。図3−(a)はまた、親指2a側の増減区間の組の数が、小指側2bの増減区間の組の数より多い場合の展開図も示す。具体的には爪先部2の製編が足裏側4から甲部側5へ移行する間に、親指側2aにおける減少区間と増加区間が3つずつあって増減区間の組が二組あり、小指側2bにおける減少区間と増加区間が2つずつあって増減区間の組が一組ある場合の展開図を示している。
【0050】
図3の場合も、(b)、(c)に示すように親指側2aと小指側2bのそれぞれにおいて編み目数の増加区間の端縁とそれに連続する減少区間の端縁が実質的にV字状等をなすことになる。親指側2aでは増減区間の組が二組あることで、2個のV字が横方向に連なった形で表れる。
【0051】
図3に示す爪先部2を編み立てる際にも、靴下の足裏側4を示す図2−(a)のH−I位置まで編み立てた後、編み立てに関与する編針の針数(編み目数)を順次減少させて親指側2aにおいてはJ位置まで、小指側2bにおいてはJ位置に対応したK’位置まで編み立てることが行われる。図3では針釜60が正方向に回動した際の編み目の減少数と、逆方向に回動した際の編み目の減少数が同数でないが、同数である場合もある。
【0052】
J−K’位置まで編み立てた後、J位置側に針釜60が回動する際に編み目数を順次増加させてH位置まで編み立てると同時に、K’位置側に針釜60が回動する際に引き続き、編み目数を減少させてK位置まで編み立て、K位置から編み目数を増加させてK’位置まで編み立てる。K位置は展開図上、製編の進行方向に対してJ−K’位置とH−K’位置の中間点に当たる。
【0053】
続いてH位置側に針釜60が回動する際に編み目数を減少させてL位置まで編み立てると同時に、K’位置側に針釜60が回動する際に引き続き、編み目数を増加させてI位置側まで編み立てる。ここでL位置とI位置を結ぶ線L−Iは足裏側4から甲部側5への折り返し線となり、L−I以降は甲部側5へ移行する。その後は足裏側4と対称に親指側2aにおいては編み目数の増加区間(L→H)→減少区間(H→N)→増加区間(N→H)を経て、小指側2bにおいては編み目数の減少区間(I→M’)→減少区間(M’→M)→増加区間(M→M’)→増加区間(M’→I)を経てH−I位置までの編み立てが行わ
れる。
【0054】
この場合も、爪先部2は足裏側4から甲部側5へ移行することにより製編されるが、逢着部6が形成されるまでの過程で言えば、針は親指側と小指側を往復しながら、H−I間→J−K’間→H−K’間→L−I間→H−M’間→N−M’間→H−I間を移動する。この間、親指側2aのH→J、H→L、H→Nの過程では編み目数が減少し、J→H、L→H、N→Hの過程では編み目数が増加する。同様に小指側2bのI→K’→K、I→M’→Mの過程では編み目数が減少し、K→K’→I、M→M’→Iの過程では編み目数が増加する。
【0055】
親指側2aにおける減少区間H→J、H→L、H→Nとそれぞれに連続する増加区間J→H、L→H、N→Hは互いに絡み合わされて連結される連結線を形成する。増加区間J→H、L→Hとそれぞれに連続する減少区間H→L、H→N(増減区間J−H−L、L−H−N)はそれぞれ対になり、図3−(b)に示すように親指側2aのV字等を形成する。同様に小指側2bにおける減少区間I→K、I→Mとそれぞれに連続する増加区間K→I、M→Iは互いに絡み合わされて連結される連結線を形成し、増加区間K→Iとそれに連続する減少区間I→M(増減区間K−I−M)が対になり、図3−(b)に示すように親指側2aのV字等を形成する。
【0056】
図4−(a)は図3と同様に親指側2aに増加区間とそれに連続する減少区間からなる増減区間の組が二組あり、小指側2bに一組の増減区間がある場合の展開図を示す。図4−(a)はまた、親指側2aでの増加区間において、足裏側4から甲部側5へ移行することなく、編み目数のみを増加させて編み立てを行う場合の展開図を示す。
【0057】
この場合も、図4−(b)に示すように親指側2aにおいては編み目数の増加区間の端縁とそれに連続する減少区間の端縁(増減区間O−P−Q、Q−P−R)が実質的にV字状等をなし、(c)に示すように小指側2bにおいても編み目数の増加区間の端縁とそれに連続する減少区間の端縁(増減区間K−I−M)が実質的にV字状等をなす。親指側2aでは2つの増減区間が連続することで、V字状等をなす端縁の組は2組あり、2個のV字が横方向に連なった形で表れることになる。
【0058】
図4の場合は足裏側4のH−I位置まで編み立てた後、小指側2bにおいては編み立てに関与する編針の針数(編み目数)を順次減少させてK位置まで編み立てる一方、親指側2aにおいては編み立てに関与する編針の針数(編み目数)を順次減少させてO位置まで編み立て後に、甲部側5へ移行することなく針数を増加させてP位置まで編み立てることが行われる。
【0059】
P−K位置まで編み立てた後、K位置側に針釜が回動する際に編み目数を増加させてI位置まで編み立てると同時に、P位置側に針釜が回動する際に編み目数を減少させてQ位置までの編み立てが行われる。ここでQ位置とI位置を結ぶ線Q−Iは足裏側4から甲部側5への折り返し線となり、Q−I以降は甲部側5へ移行するため、その後は足裏側4と対称に親指側2aにおいては編み目数の増加区間(Q→P)→減少区間(P→R)→増加区間(R→H)を経て、小指側2bにおいては編み目数の減少区間(I→M)→増加区間(M→I)を経てH−I位置までの編み立てが行われる。この場合も、爪先部2は針が親指側2aと小指側2bを往復しながら、足裏側4から甲部側5へ移行することにより製編される。
【0060】
図5−(a)は図4−(a)と同様に親指側2aに増加区間とそれに連続する減少区間からなる増減区間の組が一組あり、小指側2bに一組の増減区間がある場合の展開図を示すが、図4−(a)中のP−Q−Pの区間において編み目数の増減をしない編み方をした場合に相当する。図5−(a)はまた、親指側2aと小指側2bにそれぞれ1個の増減区間を有する形であるため、図1の変形例にも相当する。親指側2aにおける編み目数の増加区間S−Tでは針が足裏側4から甲部側5へ移行することなく、編み目数のみ増加し、増加区間S−T後の区間T−H−Uでは編み目数が増減することなく、針が甲部側5へ移行する。
【0061】
図5の場合、(b)に示すように親指側2aにおける編み目数の増加区間の端縁STと、増減のない区間の端縁THUを挟んで連続する減少区間の端縁UVが実質的にU字状等をなし、(c)に示すように小指側2bにおける編み目数の増加区間の端縁KIとそれに連続する減少区間の端縁IMが実質的にV字状等をなすことになる。親指側2aでU字状等をなす端縁の組は1組である。
【0062】
この場合は足裏側4のH−I位置まで編み立てた後、小指側2bにおいては編み立てに関与する編針の針数(編み目数)を順次減少させてK位置まで編み立てる一方、親指側2aにおいては編み立てに関与する編針の針数(編み目数)を順次減少させてS位置まで編み立て後、甲部側5へ移行することなく針数を増加させてT位置まで編み立てることが行われる。
【0063】
T−K位置まで編み立てた後、小指側2bのK位置側に針釜が回動する際に編み目数を増加させてI位置まで編み立てると同時に、親指側2aのT位置側に針釜が回動する際に編み目数を増減させることなくH位置までの編み立てが行われる。ここでH位置とI位置を結ぶ線H−Iは足裏側4から甲部側5への折り返し線となり、H−I以降は甲部側5へ移行する。その後は足裏側4と対称に親指側2aにおいては編み目数を増減させることなくU位置までの編み立てをした後、編み目数の減少区間(U→V)→増加区間(V→H)を経て、小指側2bにおいては編み目数の減少区間(I→M)→増加区間(M→I)を経てH−I位置までの編み立てが行われる。この場合も、爪先部2は針が親指側2aと小指側2bを往復しながら、足裏側4から甲部側5へ移行することにより製編される。
【0064】
親指側2aの減少区間の端縁HS、UVとそれぞれに連続する増加区間の端縁ST、VHは互いに絡み合わされて連結される連結線を形成し、増加区間の端縁STと、編み目数の変化のないTHUを経た減少区間の端縁UVが図5−(b)に示すように親指側2aのU字を形成する。同様に小指側2bの減少区間の端縁IK、IMとそれぞれに連続する増加区間の端縁KI、MIは互いに絡み合わされて連結される連結線を形成し、増加区間の端縁KIとそれに連続する減少区間の端縁IMが対になり、図5−(c)に示すように小指側2bのV字を形成する。
【0065】
図6−(a)、図7−(a)は図1、図3、図4の各(b)に示す、親指側2aに形成されるV字の先端に更にV字を形成するように編み目数の減少区間と増加区間が複数個ある場合の展開図を示す。図6−(b)、図7−(b)はそれぞれ親指側2aの側面を、図6−(c)、図7−(c)はそれぞれ小指側2bの側面を示す。図6、図7の場合も親指側2aでV字状等をなす端縁の組は多数組(3組)ある。
【0066】
これらの場合、例えば図6−(a)においてV字等を形成する親指側2aの編み目数が増加する端縁イウとそれに連続して編み目数が減少する端縁ウエの編み目の増加・減少数と、続いて編み目数が増加する端縁エオとそれに連続して編み目数が減少する端縁オカの編み目の増加・減少数を相違させることにより(b)に示すようにV字の先端に更にV字が形成されることになる。図6−(a)ではエ→オ→カの編み目の増加・減少数をイ→ウ→エとカ→キ→クの編み目の増加・減少数の2倍にしているが、それぞれの増加数と減少数は任意に設定される。
【0067】
図6−(a)の場合、減少区間の端縁アイとそれに連続する増加区間の端縁イウが連結されると同時に、減少区間の端縁ウエとそれに連続する増加区間の端縁エオが連結され、端縁アイのア寄りの一部と端縁エオのオ寄りの一部が互いに連結される。
【0068】
図7−(a)は図6における、先端にV字を有する親指側2aのV字が縦方向に連なった形になるように親指側2aの増減区間の数を増加させた場合を示している。具体的には図6では親指側2aに増減区間が3個あるのに対し、図7では増減区間を7個形成している。V字の先端に更にV字を形成する関係から、図6−(a)におけるオ−I線、図7−(a)におけるケ−I線は足裏側4から甲部側5への折り返し線となるため、増減区間は奇数個になる。
【0069】
図6、図7では小指側2bにV字が表れるようにしている関係で、小指側2bに1個の増減区間を形成し、減増区間が2個あるのに対し、図8−(a)は図6における小指側2bの減少区間と増加区間がそれぞれ1個で、増減区間がなく、減増区間が1個ある場合の展開図を示す。同様に図9−(a)は図7における小指側2bの減少区間と増加区間がそれぞれ1個で、増減区間がなく、減増区間が1個ある場合の展開図を示す。図8、図9の各(b)、(c)はそれぞれ親指側2aと小指側2bの側面を示す。
【0070】
図10−(a)、図11−(a)は親指側2aの減少区間の端縁(アイ等)の、足裏側4から甲部側5へかけての進行方向に対する傾斜角度(減少区間の端縁と進行方向とのなす角度α)が、増加区間の端縁(イウ等)の、進行方向に対する傾斜角度(増加区間の端縁と進行方向とのなす角度β)より小さい場合の展開図を示す。図面では増加区間の端縁と進行方向とのなす角度βを90°にし、増加区間で足裏側4から甲部側5へ移行させていないが、この角度βは90°以下で、前記角度αより大きければよい。
【0071】
図10−(a)、図11−(a)では親指側2aの端縁が足裏側4から折り返し線へかけて、全体的に親指側2aと小指側2bとの間の中間寄りへ傾斜しているが、この傾斜は減少区間の端縁の、進行方向に直交する方向への投影長さを、増加区間の端縁の、進行方向に直交する方向への投影長さより大きくすることにより得られる。図10−(a)、図11−(a)はまた、爪先部2の製編が足裏側4から甲部側5へ移行する間に、親指側2aにおける減少区間と増加区間が多数あり、小指側2bにおける減増区間が二つあり、増減区間が一つある場合を示している。
【0072】
図10、図11のように編み目数の減少区間において足裏側4から甲部側5へ移行し、増加区間において足裏側4から甲部側5へ移行しない編み方をする場合には、親指側2aの減少区間の端縁の中心、または減少区間と増加区間の端縁の中心を結ぶ線と進行方向とのなす角度が、増加区間がない場合や、増加区間において足裏側4から甲部側5へ移行する場合より小さくなる。従ってそれだけ爪先部2の形状が親指側2aに偏った形になり、親指側2aに多くの糸が編み込まれる結果、爪先部2における親指側2aの空間を厚くすることができるため、親指に対する圧迫感を緩和することが可能な利点がある。
【0073】
図10の場合、展開図上での親指側2aにおける増加区間と減少区間(ア→チ)と、製編が完了した状態での親指側2aの側面との関係は図10−(a)、(b)に示す通りであり、図11の場合の展開図上での親指側2aにおける増加区間と減少区間(ア→ヌ)と製編が完了した状態での親指側2aの側面との関係は図11−(a)、(b)に示す通りである。
【0074】
図10−(a)、図11−(a)の場合、親指側2aの増加区間の端縁とそれに連続する減少区間の端縁は製編が完了した状態では、各(b)に示すように親指側2aにおいて1本の幹から多数の枝が伸びたような形になって表れる。図10−(a)の場合のケ位置とW位置を結ぶ線ケ−Wは足裏側4から甲部側5への折り返し線となり、図11−(a)の場合のシ位置とW位置を結ぶ線シ−Wは足裏側4から甲部側5への折り返し線となる。図10、図11の場合、親指側2aでV字状等をなす増減区間の端縁の組は多数ある。
【0075】
足裏側4から甲部側5への折り返し線ケ−W、シ−W上に増減区間の中心ケが位置するか(図10)、減増区間の中心シが位置するか(図11)によって親指側2aに図10−(b)に示すように1個のV字が表れるか、図11−(b)に示すように2個のV字が表れるかが決まる。図10、図11では小指側に2個の減増区間を形成し、1個の増減区間を形成しているが、図8、図9と同様に減増区間を1個形成し、増減区間を形成しない場合もある。
【0076】
図10、図11はまた、小指側2bの減少区間(I→K)における編み目の減少数より、親指側2aの減少区間(ア→イ等)の編み目の減少数が少ない場合を示している。この場合、全体的に親指側2aの端縁の進行方向に対する傾斜角度が小指側2bの端縁の進行方向に対する傾斜角度より小さくなるため、段落0070〜0071で述べた投影長さの関係と同様の効果が得られる。
【0077】
すなわち足裏側4から、または甲部側5から爪先部2の先端側へかけて、製編の進行方向に対する親指側2aの端縁の中心を結ぶ線の勾配が、小指側2bの端縁の中心を結ぶ線の勾配より緩くなり、爪先部2の展開図は製編の進行方向を向く中心線に関して親指側2aへ偏った形状となる。この結果として爪先部2の形状が親指側2aに偏った非対称形の足に対して圧迫感を与えることを回避することが可能となる。
【符号の説明】
【0078】
1……靴下
2……爪先部
2a…親指側
2b…小指側
3……筒編部
4……足裏側
5……甲部側
6……逢着部
50…編針
60…針釜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪先部の親指側と小指側のそれぞれの側面において、足裏側から甲部側へかけて編み目数が減少する減少区間とそれに連続して編み目数が増加する増加区間からなる減増区間が一つあり、少なくとも親指側に、前記増加区間とそれに連続する前記減少区間からなる増減区間の組が複数あり、その親指側の複数の前記増減区間の内、いずれかの増減区間における編み目の増加数、もしくは減少数が、他の増減区間における編み目の増加数、もしくは減少数より少なく、前記減少区間の端縁とそれに連続する前記増加区間の端縁が互いに連結されていることを特徴とする靴下。
【請求項2】
親指側において、前記減少区間の端縁の、前記足裏側から甲部側へかけての進行方向に対する傾斜角度が、前記増加区間の端縁の、前記進行方向に対する傾斜角度より小さいことを特徴とする請求項1に記載の靴下。
【請求項3】
請求項1、もしくは請求項2に記載の靴下を製造する方法であって、親指側と小指側において、足裏側から甲部側へかけて編み目数を減少させる操作と増加させる操作を繰り返して爪先部を製編し、前記編み目数を減少させた減少区間の端縁とそれに連続して編み目数を増加させた増加区間の端縁を連結することを特徴とする靴下の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−127269(P2011−127269A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34938(P2011−34938)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【分割の表示】特願2006−272835(P2006−272835)の分割
【原出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(597062524)武田レッグウェアー株式会社 (3)
【Fターム(参考)】