説明

靴下

【課題】歩行時の着地点(踵部)、離地点(爪先部)、主要な荷重支持点(母趾球部から第5趾球部)の3つの足裏部分の機能に対応した衝撃吸収性と強度及び発汗に対する吸湿性と運動性並びに保温性を高めた靴下を提供すること。
【解決手段】全体が総パイル組織で編成された靴下1において、爪先部5と、踵部9と、母趾球部から第5趾球部までの足底前部7とは、部分的に厚地のパイル組織とされている。前記部分的に厚地のパイル組織は、靴下1の内面側で厚みを増やすように編成されている。前記部分的に厚地のパイル組織は、給糸本数を部分的に増やして編成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴下の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、爪先から踵部まで足底全体に亘って二重編みとして強度を向上させるようにした靴下が特許文献1に記載されている。
また、爪先から踵部まで足底全体に亘って地厚部として足部の保温性向上と補強を行わせるようにした靴下が特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開平7−150401号公報
【特許文献2】実用新案登録第3028470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1及び2の靴下は、足底全体に亘って各部を均等に二重編みとしたり、或いは、地厚部としたものであるため、必ずしも足裏の各部の機能にマッチしたものとは云えず、適切ではなかった。
例えば、足の骨格は、母趾球部(母趾の付け根部)、第5趾球部(小指の付け根部)、踵部の3つの部分を支点として、母趾球部から踵部を結ぶ内側の縦アーチ、第5趾球部から踵部を結ぶ外側縦アーチ、母趾球部から第5趾球部を結ぶ前側の横アーチ、土踏まず部の左右端を結ぶ後側の横アーチの4つのアーチで構成される半ドーム構造がスプリングの役目をし衝撃を吸収すると同時に荷重を分散させることで歩行をスムーズにし、体重を無理なく支えていると云われている。
【0004】
そして、歩行は、踵で着地し、土踏まずの外側へ体重移動し、続いて、土踏まずの外側から母趾球部へ体重移動し、爪先で地面を蹴り出すことを左右の足で交互に繰り返すことによって前進歩行がスムーズに行われている。
これらの足の骨格構造及び運動に対して、強く衝撃の係る部分や、屈伸が繰り返される部分に対して、前記特許文献1,2の靴下は、他の足裏部分と同じ編み組織や厚さとしているため、衝撃吸収性、強度、発汗に対する吸湿性等が適切でなく、運動性や履き心地が良好ではなかった。
【0005】
本発明は、歩行時の着地点(踵部)、離地点(爪先部)、主要な荷重支持点(母趾球部から第5趾球部)の3つの足裏部分の機能に対応した衝撃吸収性と強度及び発汗に対する吸湿性や運動性並びに保温性を高めた靴下を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明は、全体が総パイル組織で編成された靴下において、爪先部と、踵部と、母趾球部から第5趾球部までの足底前部とは、部分的に厚地のパイル組織とされていることを特徴としている。
この構成によれば、歩行時の着地点となる踵部、離地点となる爪先部、及び、主要な荷重支持点となる母趾球部から第5趾球部までの足底前部の3つの足裏部分を部分的に厚地のパイル組織としてあるため、これらの部分の衝撃吸収性と強度及び発汗に対する吸湿性を向上させることができる。そして、爪先部と足底前部との間及び足底前部と踵部の間には、これらの部分よりも薄地パイル組織が存在することによって、各足指の運動性並びに土踏まず部のアーチの運動性を円滑とし、歩行に伴う靴下のずれを少なくして履き心地を良好とし、保温性も高めた靴下を提供することができる。
【0007】
また、前記部分的に厚地のパイル組織は、靴下の内面側で厚みを増やすように編成されている。これによって、外観上からは厚みの差が目立たず体裁が向上する。
そして、前記部分的に厚地のパイル組織は、給糸本数を部分的に増やして編成されている。これによって、衝撃吸収性、強度、保温性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、歩行時の着地点(踵部)、離地点(爪先部)、主要な荷重支持点(母趾球部から第5趾球部)の3つの足裏部分の機能に対応した衝撃吸収性と強度及び運動性並びに保温性を高めた靴下を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る靴下の実施形態の構成を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る靴下の裏返し状態の概略側面図であって、本発明に係る靴下1は、口ゴム部2と、脚筒部3と、甲部4と、爪先部5と、リングトウ部6と、母趾球部から第5趾球部までの足底前部7と、土踏まず部8と、踵部9とからなっており、全体が総パイル組織(パイルが靴下1の裏面側にのみ形成され、表面側は平編み組織とされている)で編成されている。
上記本発明に係る靴下1は、靴下用パイル編機にパイル糸を常時供給し適宜にパイルを編成しボリューム感を出しクッション性、保温性に富んだものとされている。そして、爪先部5と、踵部9と、母趾球部から第5趾球部までの足底前部7とは、モーレパイル方式(部分パイル方式)によって、他の部分よりもパイル糸を増やして、例えば、ボス糸給糸用の糸道を使い部分的にパイル編みを行っている。これによって、パイル糸を増やして編成した部分のみが厚地となる。
【0010】
このように、本発明に係る靴下1は、爪先部5と、踵部9と、母趾球部から第5趾球部までの足底前部7とは、部分的に厚地のパイル組織とされている。
この部分的に厚地のパイル組織は、靴下の内面側で厚みを増やすように編成されている。また、この部分的に厚地のパイル組織は、給糸本数を部分的に増やして編成されている。
上記構成からなる本発明に係る靴下1は、総パイルで全体にクッション性がある総パイル靴下であり、さらに、爪先部5と、踵部9と、母趾球部から第5趾球部までの足底前部7とには、部分パイルを施し、より足底クッション性の向上による衝撃吸収が図られていると共に、給糸本数を増やし厚みを増すことによる保温性向上と、発汗に対する吸湿性向上でムレ難く、また、強度向上により丈夫で長持ちし、履き心地のよい靴下となっている。
【0011】
そして、厚地パイル組織の爪先部5と足底前部7との間には、薄地パイル組織のリングトウ部6があるため、この部分でくびれやすく、各足指の屈伸運動がし易くなり、また、厚地パイル組織の足底前部7と踵部9との間には、薄地パイル組織の土踏まず部8があるため、この部分でくびれやすくなり、土踏まずアーチ部の内から外への回外運動や外から内への回内運動に円滑に追従させることができ、歩行に伴う靴下のずれを少なくして履き心地を良好とできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る靴下の裏返し状態の概略側面図である。
【符号の説明】
【0013】
1 靴下
2 口ゴム部
3 脚筒部
4 甲部
5 爪先部
6 リングトウ部
7 足底前部
8 土踏まず部
9 踵部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体が総パイル組織で編成された靴下において、爪先部と、踵部と、母趾球部から第5趾球部までの足底前部とは、部分的に厚地のパイル組織とされていることを特徴とする靴下。
【請求項2】
前記部分的に厚地のパイル組織は、靴下の内面側で厚みを増やすように編成されていることを特徴とする請求項1に記載の靴下。
【請求項3】
前記部分的に厚地のパイル組織は、給糸本数を部分的に増やして編成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の靴下。

【図1】
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【公開番号】特開2009−221614(P2009−221614A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64029(P2008−64029)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】