説明

靴下

【課題】足によりフィットする踵部分の構造を備えた靴下を実現する。
【解決手段】筒状に編み立てる脚部2に続けて、アキレス腱覆い部となる目数増減領域10を形成する。目数増減領域10に続けて短い筒編みによって踵上部筒編み領域11を、踵上部筒編み領域11に続けて目数増減領域12を設けて踵後方覆い部を形成し、踵後方覆い部に続けて短い筒編みによって踵下部筒編み領域13を形成する。さらに、踵下部筒編み領域13に続けて、踵前方ゆとり部となる目数増減領域14を形成し、この目数増減領域14に続けて足部3を形成する。これにより踵にフィットする形状とし、目数増減領域10によってアキレス腱を保護し、目数増減領域14によって靴下が前方へ移動しない履き心地の良い靴下を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筒状に編み立てる脚部に続けて脚部の後半部に編目減少領域及び編み目増加領域を配置することによって踵部分を形成する靴下の構造に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、従来の靴下1の一般的な構造は、筒状に編み立てる脚部2の下端後半部に目数減少領域6と、目数増加領域7を配置することによって膨らみ形状である踵部4を形成し、踵部4を形成した上で筒状の足部3を編み立て、先端に爪先部5を形成している。爪先部5には、足底部先端に形成する目数減少領域及び目数増加領域のゴアライン8と開口部を閉じる縫着線9が現れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4182025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の一般的な靴下の踵構造では、必ずしも踵部分の形状に一致する構造の靴下を得ることができなかった。特許文献1に記載された発明では、踵部分に短筒編み領域を配置することによって、踵部分に装飾的な編み込みを可能とするとともに、従来の靴下に比較して、足にフィットする履き心地の良い靴下を実現することができた。
【0005】
しかしながら、必ずしも十分に足の形にフィットするものでないとともに、例えば足部に締め付け領域が設けられる場合などでは、靴下が先方に位置ズレすることを有効に防止することができなかった。このような、従来技術の欠点に鑑み、より一層踵にフィットするとともに、着用中に位置ズレを生じにくい靴下の踵部分の構造を実現することを目的とするものである。また、特許文献1に開示された靴下の装飾機能をより発展させるとともに、より機能的な靴下を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、筒状に編み立てる脚部2に続けてアキレス腱覆い部となる目数増減領域10を形成し、アキレス腱覆い部である目数増減領域10に続けて短い筒編みによって踵上部筒編み領域11を形成する。踵上部筒編み領域11に続けて目数増減領域12を設けて踵後方覆い部を形成し、該踵後方覆い部に続けて短い筒編みによって踵下部筒編み領域13を形成する。この、踵下部筒編み領域13に続けて、踵前方ゆとり部となる目数増減領域14を形成し、この目数増減領域14に続けて足部3を形成するものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記請求項1記載の発明において、踵上部筒編み領域11と踵下部筒編み領域13の間に形成する踵後方覆い部となる目数増減領域12を、目数増加領域12aと目数減少領域12bを複数回繰り返して形成することである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、筒状に編み立てる脚部2に続けて、アキレス腱覆い部となる目数増減領域10を、目数増減領域10に続けて短い筒編みによって踵上部筒編み領域11を、踵後方覆い部である目数増減領域12に続けて踵下部筒編み領域13を、踵下部筒編み領域13に続けて、踵前方ゆとり部となる目数増減領域14を形成し、目数増減領域に続けて足部3を形成する。この構成とすることによって、従来の靴下や、短い筒編み領域を一つ設ける特許文献1に記載された従来の靴下に比較し、足の踵部分の形状に近い形状の踵部分を備えた靴下とし、より履き心地のよい靴下を実現することができる。
【0009】
さらに、脚部2に続く目数増減領域10をアキレス腱覆い部とし、例えばパイル編みとすることによってアキレス腱を保護し、前方の目数増減領域14を踵前方ゆとり部とすることによって、靴下が前方へ移動しようとする動きを弱める効果がある。
また、模様などを編み込む際に、複数の短い筒編み領域が存在するため、バリエーションにとんだ模様を実現することができる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、踵上部筒編み領域11と踵下部筒編み領域13の間に形成する踵後方覆い部となる目数増減領域12を、目数増加領域12aと目数減少領域12bを複数回繰り返して形成することによって、より踵の形状に合った形状を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施形態を示す正面図、
【図2】図2は、図1に示す実施形態の踵部分の展開図、
【図3】図3は、図1に示す実施形態の変形実施例を示す踵部分の展開図、
【図4】図4は、従来の靴下の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る靴下の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1に示す靴下1は、上端に履き口16を形成して筒状に編み立てる脚部2に続けて、後半部に目数増減領域10を形成し、この目数増減領域10に続けて踵上部筒編み領域11を編み立て、目数増減領域12によって踵の覆い部分を形成し、目数増減領域12に続けて踵下部筒編み領域13を形成している。そして、踵下部筒編み領域13に続けて目数増減領域14を設けることによって足部の方向性などを設定し、続けて筒状の足部を編み立てている。
【0013】
図1に示す実施形態の靴下を編み立てるには、履き口16から針釜を一定方向に回転させ、全ての編み針を編み立てに関与させることによって筒編み領域である脚部2を編み立てる。一定寸法の脚部2を編みたて、脚部2の下端に達した段階で、針釜の回転運動を往復回動運動に変更する。例えば針釜の回動角度を、略180度から90度程度の範囲で順次減少させ、その範囲の編み針が編み立てに関与する状態で目数増減領域10を編み立てる。図2から理解されるように、図示例の目数増減領域10は目数を減少させている。
【0014】
目数増減領域10に続けて、1センチメートル程度の間針釜を一定方向に回転させ、全ての編み針を編み立てに関与させることによって踵上部筒編み領域11を編み立てる。踵上部筒編み領域11の編み立てが完了した段階で、針釜の回転運動を往復回動運動に変更して目数増減領域12を編み立て、目数増減領域12に続けて踵下部筒編み領域13を編み立てる。目数増減領域12は、目数の増加と減少を複数回繰り返して踵形状に合った形状を実現する。
【0015】
目数増減領域12の目数変更は、図3(a)や図3(b)に示すように適宜変更可能である。すなわち、図3(a)に示す実施形態は、踵部分の目数増減領域12を一回の目数減少領域12aと一回の目数増加領域12bで形成しているが、図3(b)に示す実施形態では、目数増加領域12aと目数減少領域12bを三回繰り返して踵の目数増減領域12を形成している。
目数増減領域12に続けて編み立てた踵下部筒編み領域13に続けて、踵前方ゆとり部となる目数増減領域14を配置する。図示例の目数増減領域14は、目数を増加させている。
目数増減領域14に続けて針釜を一定方向に回転させ、全ての編み針を編み立てに関与させることによって足部3を編み立てる。
【0016】
筒状に編み立てる脚部2に続けて後半部に形成する目数増減領域10は、アキレス腱部分に相当する。したがって、この目数増減領域10をアキレス腱覆い部とする。アキレス腱覆い部は、例えば柔軟なパイル編みとしてアキレス腱を保護することができる構造とする。目数増減領域10をアキレス腱覆い部とするほか、踵の後方部分を覆う目数増減領域12や踵下部筒編み領域13に続く目数増減領域も、柔軟なパイル編みとし、より履き心地の良い靴下を実現することができ。また、スポーツなどの用途(要求される機能)によって、筒編み領域を脚部や足部の編み方と相違する編地、例えばメッシュ編みとすることもできる。
【0017】
目数増減領域においては、柄を編み込むことが困難であるが、筒編み領域においては柄を編み込むことが可能である。したがって、特許文献1に記載された発明によって、従来模様を編み込むことが困難であった踵部分に、具体的には短い筒編み領域に模様を編み込むことが可能となったものであるが、本発明では、短い筒編み領域が複数形成されることから、より複雑な柄19を編み込むことが可能となる。
【0018】
目数増減領域10、12、14などの編み方を、例えばパイル編みとすることによって、アキレス腱保護などの機能を向上させることができる。同じように、短い筒編み領域11、13、も用途に合った編み方をすることができる。例えば、周方向に伸縮性を持たせることによって、締め付け効果を発揮することができる。特に、踵上部筒編み領域11と踵下部筒編み領域13を伸縮性の糸を挿入することによって踵形状に合った形状である目数増減領域で抱持させることができる。
すなわち、踵上部筒編み領域11と踵下部筒編み領域13に締め付け機能を付加することによって、目数増減領域12で踵部分を覆った状態を維持し、踵部分の目数増減領域12が踵から移動するのを効果的に防止し、靴下全体が足によりフィットする状態を実現することができる。この効果は、動きの激しいスポーツ用ソックスなどにおいて有効である。
このように、踵部分で靴下をしっかりと安定させると、足部に締め付け部分を配置するもの(例えば土踏まずを締め付ける健康ソックス)であっても靴下のズレをなるべく防止することができる。
【0019】
目数増減領域10、12、14は、目数増加領域と目数減少領域の配置が特定される必要はなく、目数の増加もしくは減少によって、足にフィットする形状を実現すればよい。
また、図示実施形態の踵部分の目数増減領域は、中心位置において左右対称の状態で規則的に増減させるように図示している(図2、図3)が、目数増減領域を左右に移動させ、あるいは目数増減領域の形状そのものを左右非対称とすることによって、例えば右足用と左足用を区別し、より一層足の形に近い履き心地に優れた靴下を実現することが可能である。
【符号の説明】
【0020】
1…靴下、 2…脚部、 3・・・足部、 4・・・踵部、 5・・・爪先部、 6・・・目数減少領域、 7・・・目数増加領域、 8…ゴアライン、 9・・・縫着線、 10・・・目数増減領域、 11・・・踵上部筒編み領域、 12・・・目数増減領域、 13…踵下部筒編み領域、 14・・・目数増減領域、 16・・・履き口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に編み立てる脚部に続けてアキレス腱覆い部となる目数増減領域を形成し、アキレス腱覆い部である目数増減領域に続けて短い筒編みによって踵上部筒編み領域を形成し、該踵上部筒編み領域に続けて目数増減領域を設けて踵後方覆い部を形成し、該踵後方覆い部である目数増減領域に続けて短い筒編みによって踵下部筒編み領域を形成し、該踵下部筒編み領域に続けて、踵前方ゆとり部となる目数増減領域を形成し、該目数増減領域に続けて足部を形成したことを特徴とする靴下。
【請求項2】
踵上部筒編み領域と踵下部筒編み領域の間に形成する踵後方覆い部となる目数増減領域は、目数増加領域と目数減少領域を複数回繰り返して形成することを特徴とする請求項1記載の靴下。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−251290(P2012−251290A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−182634(P2012−182634)
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【分割の表示】特願2009−92875(P2009−92875)の分割
【原出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(500412529)株式会社ホリホック (3)
【Fターム(参考)】