説明

靴中敷き

【課題】柔軟性と反発力と復元性とを有するプラスチック素材を使用し、あらゆる方向に対して瞬間的に衝撃を吸収・緩和することができる靴中敷きを提供する。
【解決手段】靴中敷きの本体部10の材質は柔軟性と反発力と復元性とを有するプラスチック素材を使用し、本体部10の厚みを1.5mm〜3.0mmの範囲に設定し、本体部10をアーチコントロールができる形状に形成した。本体部10の踵部分の下側にプラスチック素材からなるU字形縁部を備えた踵部を本体部10と一体に形成し、踵部のU字形縁部の側面から本体部10の踵部分の下面に繋がる領域に連続する溝部22a、22bを周設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性と反発力と復元性とを有するプラスチック素材を使用し、あらゆる方向に対して衝撃を緩和することができる靴中敷きに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から靴中敷きは、通気性、抗菌、防臭、衝撃吸収、快適なフィット感、アーチサポート、フレックス、反発性などの機能を発揮するものであるが、その中でも通気性、抗菌、防臭、衝撃吸収などの機能が重視されている。
また、クッション性、フィット性、安定性に優れた靴中敷きについては、以下に示すような先行技術が提案されている。
【0003】
実開平7−39511号公報には、靴内部に装着するカップインソールであって、弾性素材からなるカップインソール本体の底面は靴内底面にフィットする形状であり、踵部上面は、平坦部と、内甲踏まず部から踵後部を経て外甲側部へ至る側壁部が連続的に形成された凹曲面状を呈しており、前記側壁部の上面にはバウンシングパテを用いた衝撃緩衝材(スポンジ)が設置され、布帛、不織布、皮革、のいずれか一によって被覆係止された構成からなるカップインソールが開示されている(特許文献1)。
【0004】
また、実開平6−26511号公報には、多数の透孔を備えたスポンジ板を基板上に固着し、該スポンジ板上にはウレタンフォーム板を固着し、該ウレタンフォーム板上には多数の小孔を備えた表面カバーを被覆させた履物のインソールが開示されている(特許文献2)。
【0005】
また、特開2005−205204号公報には、足底を靴の中底に完全にフィットさせ、歩行時に足底に負荷される衝撃を緩衝させ踵骨の回外位と回内位を防止することを目的とし、カップインソールを本体部材、本体部材支持部材、踵部対応部材から構成し、カップインソールを高密度低反発性ウレタンで成形し、踵部対応部材の踵に相当する箇所に高反発性ウレタン製部品を嵌合し、本体部材の底部から、内側アーチ保護部材と、外側アーチ保護部材と、第2踵部保護部材それぞれ連結して一体に立設し、第2ミッドフット部対応部を、本体部材支持部材の左右両側から幅方向中央に向かって、且つ、踵方向及び踏み付け部の両方から中央に向かって盛高構造にし、第2ミッドフット部対応部に、垂直方向に貫通孔を有し本体部材に穿設した挿入孔に挿入される少なくとも1個の突起を突設させるカップインソールが開示されている(特許文献3)。
【0006】
また、特開2005−204902号公報には、運動性と衝撃緩和性とに優れたインソールであって、ベースと、このベースとは材質の異なる指球部及び踵部を備えており、この指球部の材質と踵部の材質とが互いに異なるインソールが開示されている(特許文献4)。
【0007】
また、特開平10−295409号公報には、靴の中敷きの通気性を向上させて足の蒸れをなくすることを目的とし、一層以上を積層したクッション材と、その表面に結合されたダブルラッセルメッシュ層とよりなり、特にクッション材は、足裏の凹凸に添った形状を有するエチレン−ビニルアセテート共重合体の層と、その表面に結合された発泡性ラテックス層と、さらにその表面に結合された開放気泡性のウレタンフォーム層とよりなる中敷きが開示されている(特許文献5)。
【0008】
【特許文献1】実開平7−39511号公報
【特許文献2】実開平6−26511号公報
【特許文献3】特開2005−205204号公報
【特許文献4】特開2005−204902号公報
【特許文献5】特開平10−295409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の靴中敷きの材質には、クッション性に優れたスポンジ素材が多く使用されている。しかし、スポンジ素材はプラスチック素材と比べると柔軟性、反発力、復元性に劣るため、足の動きにマッチせず、運動を抑制する可能性があるという問題を有している。
ここで、靴中敷きの材質にプラスチック素材を使用するメリットは、足に密着し、靭帯や筋肉と協調的に動き、足の運動を抑制することなく働きかけるため、より自然な運動が行えることにある。しかし、プラスチック素材の厚みが厚過ぎると足の靭帯や筋肉を固定しすぎるため、運動を抑制してしまう。一方、プラスチック素材の厚みが薄過ぎると、プラスチックに強度が出ないため足をコントロールすることができなくなる。
【0010】
そこで、本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、柔軟性と反発力と復元性とを有するプラスチック素材を使用し、あらゆる方向に対して瞬間的に衝撃を吸収・緩和することができる靴中敷きを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、靴の内底部に装入されて使用される靴中敷きにおいて、前記靴中敷きの本体部の材質は柔軟性と反発力と復元性とを有するプラスチック素材を使用すると共に、前記本体部の厚みを1.5mm〜3.0mmの範囲に設定し、前記本体部をアーチコントロールができる形状に形成した構成を採用したのである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記靴中敷きの前記本体部の踵部分の下側に前記プラスチック素材からなるU字形縁部を備えた踵部を当該本体部と一体に形成し、前記踵部のU字形縁部の側面から前記本体部の踵部分の下面に繋がる領域に当該U字形縁部の一端から他端まで連続する溝部を周設したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記溝部に沿って衝撃吸収材を埋め込んだことを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の前記踵部の前記U字形縁部の底面に当該U字形縁部の一端から他端まで連続する凹部を周設し、前記凹部の深さを2.0mm〜3.0mmの範囲に設定し、前記凹部内に衝撃吸収材を装着したことを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の前記凹部のインサイド側とアウトサイド側に硬さの異なった衝撃吸収材を装着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、請求項1に記載の発明によれば、靴中敷きの本体部の材質は柔軟性と反発力と復元性とを有するプラスチック素材を使用し、本体部の厚みを1.5mm〜3.0mmの範囲に設定し、本体部をアーチコントロールができる形状に形成したことにより、靴中敷きが足に密着し、靭帯や筋肉と協調的に動き、足の運動を抑制することなく働きかけるため、より自然な運動が行える。
【0017】
また、請求項2に記載の発明によれば、踵部のU字形縁部の側面から本体部の踵部分の下面に繋がる領域に連続する溝部を周設したことにより、溝部があらゆる方向(縦、横、斜め)に対して瞬間的に衝撃を吸収・緩和することができる。更に、請求項3に記載の発明によれば、溝部に沿って衝撃吸収材を埋め込んだことにより、衝撃吸収性と安定性が向上する。
【0018】
また、請求項4に記載の発明によれば、踵部のU字形縁部の底面に連続する凹部を周設し、凹部の深さを2.0mm〜3.0mmの範囲に設定し、凹部内に衝撃吸収材を装着したことにより、安定感が高まり、歩行時に踵のぐらつきを抑えることで常に一定の歩行が可能になる。更に、請求項5に記載の発明によれば、凹部のインサイド側とアウトサイド側に硬さの異なった衝撃吸収材を装着したことにより、扁平足又はO脚、膝痛などに対して効果を奏する。
ここで、歩行バランスのコントロールについては、歩行前半(着地時)におけるコントロールと歩行後半(蹴りだし時)におけるコントロールの大きく2つに分けられる。本願出願人は歩行後半(蹴りだし時)におけるコントロールに寄与する「靴中敷き」を既に発明し特許を取得している(特許第3662014号、登録日平成17年4月1日)。一方、本発明にかかる靴中敷きは、歩行前半(着地時)におけるコントロールに寄与するものであり、足の大きな骨格に荷重がもっともかかりやすい着地時に影響を与えるため、歩行後半(蹴りだし時)よりも歩行バランスのコントロール効果が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態について、図面を参酌しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明にかかる靴中敷き(左足用)の一例を示す斜視図である。
【0021】
図1に示すように、本発明にかかる靴中敷きは、本体部10の踵部分にU字形縁部を備えた踵部20が本体部10と一体に形成されている。本体部10と踵部20の材質には、柔軟性と反発力と復元性とを有するプラスチック素材が使用される。
【0022】
図2は、図1に示す靴中敷きの底面図である。図3は、図2に示す靴中敷きのA−A拡大断面図である。図4は、図2に示す靴中敷きのB−B断面図である。図5は、図1に示す靴中敷きのアウトサイド側の側面図である。図6は、図1に示す靴中敷きのインサイド側の側面図である。
【0023】
図3乃至図6に示すように、本発明にかかる靴中敷きは、本体部10の厚みが1.5mm〜3.0mmの範囲に設定されている。本体部10の足裏にあたる表面がアーチコントロールできる形状(インサイド側の縁部11aからアウトサイド側の縁部11bにわたり足のアーチを支えて足に密着する形状)に形成されている。
踵部20のU字形縁部の側面21から本体部10の踵部分の下面に繋がる領域にU字形縁部の一端から他端まで連続する溝部22が周設されている。この溝部22によって、あらゆる方向(縦、横、斜め)に対して瞬間的に衝撃を吸収・緩和することができる。
また、溝部22には、衝撃吸収性と安定性を向上させるため衝撃吸収材(図示省略)を埋め込んでも良い。
踵部20のU字形縁部の底面には、U字形縁部の一端から他端まで連続する凹部23が周設されている。凹部23の深さが2.0mm〜3.0mmの範囲に設定されている。
上記凹部23内には、衝撃吸収材(図7に示す記号30・31、図8に示す記号32・33)が装着される。これにより、安定感が高まり、歩行時に踵のぐらつきを抑える。歩行時の足裏の重心位置を考えた場合、衝撃吸収材を図に示す位置に装着するのが最も効果を奏すると考えられる。
上記衝撃吸収材は、ポリウレタン、ゴム、ラバー、EVAスポンジなど衝撃吸収効果を奏するものであれば素材は限定されない。
また、図7及び図8に示すように、凹部23のインサイド側とアウトサイド側には、バランスを変化させるため硬さの異なった衝撃吸収材(ハード素材30とソフト素材31、ソフト素材32とハード素材33)を装着しても良い。
【0024】
(第一実施例)
本体部10の踵部分にU字形縁部を備えた踵部20が本体部10と一体に形成されている。本体部10と踵部20の材質には、柔軟性と反発力と復元性とを有するプラスチック素材が使用される。本体部10の厚みが1.5mm〜3.0mmの範囲に設定されている。本体部10の足裏にあたる表面がアーチコントロールできる形状に形成されている。
踵部20のU字形縁部の側面21から本体部10の踵部分の下面に繋がる領域にU字形縁部の一端から他端まで連続する溝部22が周設されている。この溝部22によって、あらゆる方向(縦、横、斜め)に対して瞬間的に衝撃を吸収・緩和することができる。
【0025】
(第二実施例)
第一実施例と同様に連続する溝部22が周設され、この溝部22に衝撃吸収材(図示省略)が埋め込まれている。この溝部22と衝撃吸収材によって、衝撃吸収性と安定性が向上する。
【0026】
(第三実施例)
第一実施例又は第二実施例において説明した靴中敷きの踵部20のU字形縁部の底面には、U字形縁部の一端から他端まで連続する凹部23が周設されている。凹部23の深さが2.0mm〜3.0mmの範囲に設定されている。この凹部23内には衝撃吸収材(図7に示す記号30・31)が装着される。
インサイド側の凹部23(図3に示す記号23a)にハード素材からなる衝撃吸収材(図7に示す記号30)を装着する。一方、アウトサイド側の凹部23(図3に示す記号23b)にソフト素材からなる衝撃吸収材(図7に示す記号31)を装着する。この場合、インサイド側のアーチサポートが強くなり膝が内側に内転することが抑えられるため、扁平足や膝痛などに対して効果を奏する。
ここで、ソフト素材とは、衝撃吸収性に非常に優れ、足の沈み込みを感じる素材を指す。また、ハード素材とは、足に負担をかけない程度に反発力があり、足を下から支える感じがある素材を指す。また、ソフト素材とハード素材の硬度に関しては、ソフト素材の硬度はASTM(American Society For Testing and Materials、米国材料試験協会の略称)規格に基づくASTMD2240のスケールで55〜75度であることが適している。一方、ハード素材の硬度は、同スケールで60〜80度であることが適している。したがって、ソフト素材とハード素材の硬度差は同スケールで少なくとも5度以上であることが好ましい。なお、上記スケールに使用した具体的な計測器は、米国のPacific Transducer Corp.製のDurometers/PTC(登録商標)400SERIES/Model411/Type00である。
【0027】
(第四実施例)
第一実施例又は第二実施例において説明した靴中敷きの踵部20のU字形縁部の底面には、U字形縁部の一端から他端まで連続する凹部23が周設されている。凹部23の深さが2.0mm〜3.0mmの範囲に設定されている。この凹部23内には衝撃吸収材(図8に示す記号32・33)が装着される。
アウトサイド側の凹部23(図3に示す記号23b)にハード素材からなる衝撃吸収材(図8に示す記号33)を装着する。一方、インサイド側の凹部23(図3に示す記号23a)にソフト素材からなる衝撃吸収材(図8に示す記号32)を装着する。この場合、アウトサイド側のアーチサポートが強くなり膝が外側に外転することが抑えられるため、O脚や膝痛などに対して効果を奏する。
また、ソフト素材とハード素材の硬度に関しては、第三実施例と同様にそれぞれの硬度範囲内のものを適宜選択できるが、ソフト素材とハード素材の硬度差は同スケールで少なくとも5度以上であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明にかかる靴中敷き(左足用)の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す靴中敷きの底面図である。
【図3】図2に示す靴中敷きのA−A拡大断面図である。
【図4】図2に示す靴中敷きのB−B断面図である。
【図5】図1に示す靴中敷きのアウトサイド側の側面図である。
【図6】図1に示す靴中敷きのインサイド側の側面図である。
【図7】図1に示す靴中敷きのインサイド側の凹部にハード素材、アウトサイド側の凹部にソフト素材を装着した状態を示す斜視図である。
【図8】図1に示す靴中敷きのインサイド側の凹部にソフト素材、アウトサイド側の凹部にハード素材を装着した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
10 本体部
11 縁部
20 踵部
21 側面
22 溝部
23 凹部
30、33 ハード素材
31、32 ソフト素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴の内底部に装入されて使用される靴中敷きにおいて、前記靴中敷きの本体部の材質は柔軟性と反発力と復元性とを有するプラスチック素材を使用すると共に、前記本体部の厚みを1.5mm〜3.0mmの範囲に設定し、前記本体部をアーチコントロールができる形状に形成したことを特徴とする靴中敷き。
【請求項2】
請求項1に記載の前記靴中敷きの前記本体部の踵部分の下側に前記プラスチック素材からなるU字形縁部を備えた踵部を当該本体部と一体に形成し、前記踵部のU字形縁部の側面から前記本体部の踵部分の下面に繋がる領域に当該U字形縁部の一端から他端まで連続する溝部を周設したことを特徴とする靴中敷き。
【請求項3】
請求項2に記載の前記溝部に沿って衝撃吸収材を埋め込んだことを特徴とする靴中敷き。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の前記踵部の前記U字形縁部の底面に当該U字形縁部の一端から他端まで連続する凹部を周設し、前記凹部の深さを2.0mm〜3.0mmの範囲に設定し、前記凹部内に衝撃吸収材を装着したことを特徴とする靴中敷き。
【請求項5】
請求項4に記載の前記凹部のインサイド側とアウトサイド側に硬さの異なった衝撃吸収材を装着したことを特徴とする靴中敷き。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−5942(P2008−5942A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177408(P2006−177408)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【特許番号】特許第3944536号(P3944536)
【特許公報発行日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(503456625)有限会社プレスコントロール (3)
【Fターム(参考)】