説明

靴用中敷及び靴

【課題】 発熱部材の交換が不要であると共に、靴の屈曲量に関係なく足を温めることができる靴用中敷及び靴を提供する。
【解決手段】 靴4内に挿入して靴底5上に載置可能な中敷本体2と、この中敷本体2の上面2aに設けた少なくとも1つの凹部8に嵌入された発熱部材3と、を備えた靴用中敷1であって、発熱部材3は、摺動用凹部24の底面24aが斜面である板状体11と、板状体11に上下動自在に外嵌された上皿12と、摺動用凹部24にその底面24aの傾斜方向に沿って摺動自在に収容された摺動板13と、摺動板13の前端面13dと摺動用凹部24の壁面24cとの間に介在すると共に、圧縮荷重Fが負荷された場合に弾性圧縮変形する一方、圧縮荷重Fが除荷された場合に復元するゴム状弾性体(弾性体)14と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦熱により足を温めることができる靴用中敷及び靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の技術としては、
〔1〕表面の凹部に平坦で可撓性のある充填材が交換自在に充填され、前記充填材は平坦な袋を有していると共に、この袋の中に互いに移動すると発熱反応を起こす材料が収容された靴のソール構造(例えば、特許文献1参照。)、及び、
〔2〕遠赤外線の放射体よりなる上皮と、この上皮に積層される断熱材とを備え、少なくとも靴のつま先部に相当する部分では上皮と断熱材が非接着とされ、靴の変形に合わせて上皮が断熱材上を摺動して摩擦熱を発生させるように構成された靴用中敷(例えば、特許文献2参照。)、
等が知られている。
【特許文献1】特開平8−38210号公報(請求項1、請求項11、図1、図2、図8、段落〔0038〕、段落〔0060〕等)
【特許文献2】実用新案登録第3029690号公報(請求項1、請求項2、図4等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記〔1〕のような靴のソール構造においては、充填材として使い捨てカイロ(使い捨て懐炉)が使用されているので、充填材を必要に応じてその都度交換する手間がかかると共に、使い捨てでは不経済であるという問題点がある。
【0004】
上記〔2〕のような靴用中敷においては、靴底上に敷いた状態で歩行する際の靴の屈曲により上皮が断熱材上を摺動するように構成されているので、歩行の仕方が悪かったり足踏みしているだけであったりして靴の屈曲量が小さい場合には摩擦熱がほとんど発生しないという問題点がある。
【0005】
本発明は、以上のような事情や問題点に鑑みてなされたものであり、発熱部材の交換が不要であると共に、靴の屈曲量に関係なく足を温めることができる靴用中敷及び靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための第1の発明に係る靴用中敷は、靴内に挿入して靴底上に載置可能な中敷本体と、この中敷本体の上面に設けた少なくとも1つの凹部に嵌入された発熱部材と、を備えた靴用中敷であって、前記発熱部材は、上面に摺動用凹部を設けかつこの摺動用凹部の底面が斜面である板状体と、外筒部の上方の開口部を天板部で閉塞しかつ前記板状体に上下動自在に外嵌された上皿と、斜面である下面が前記摺動用凹部の底面に摺接しかつ上面が前記上皿の天板部に摺接するように前記摺動用凹部にその底面の傾斜方向に沿って摺動自在に収容された摺動板と、この摺動板の上面が前記板状体の上面より上方に位置しかつ前記摺動板の後端面が前記摺動用凹部の壁面に当接するように前記摺動板の前端面と前記摺動用凹部の壁面との間に介在すると共に、前記発熱部材に対してその厚さ方向に圧縮荷重が負荷された場合に前記摺動板が前記摺動用凹部の底面の傾斜方向に沿って前方側へ摺動することにより弾性圧縮変形する一方、前記圧縮荷重が除荷された場合に前記摺動板が前記摺動用凹部の底面の傾斜方向に沿って後方側へ摺動するように復元する弾性体と、を備えたものである。
【0007】
第2の発明に係る靴用中敷は、前記発熱部材を防水フィルムで被覆したものである。
【0008】
第3の発明に係る靴用中敷は、内筒部の下方の開口部を底板部で閉塞した下皿内に前記板状体を嵌入すると共に、前記下皿の内筒部を介して前記上皿を前記板状体に上下動自在に外嵌したものである。
【0009】
第4の発明に係る靴用中敷は、前記下皿の底板部上に断熱シートを介して前記板状体を設け、前記断熱シートにその厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を設けると共に、前記貫通孔にそれぞれ挿入されて突端が前記下皿の底板部にそれぞれ当接する複数の突出部を前記板状体の下面に設けたものである。
【0010】
第5の発明に係る靴用中敷は、前記板状体の下面側に断熱シートを設けたものである。
【0011】
第6の発明に係る靴用中敷は、前記発熱部材の上面側に吸水シートを設けたものである。
【0012】
第7の発明に係る靴用中敷は、前記発熱部材を前記中敷本体の凹部に着脱自在に嵌入すると共に、前記発熱部材の上面側及び下面側にそれぞれ吸水シートを設けたものである。
【0013】
また、第8の発明に係る靴は、靴底の上面に設けた少なくとも1つの凹部に発熱部材を嵌入した靴であって、前記発熱部材は、上面に摺動用凹部を設けかつこの摺動用凹部の底面が斜面である板状体と、外筒部の上方の開口部を天板部で閉塞しかつ前記板状体に上下動自在に外嵌された上皿と、斜面である下面が前記摺動用凹部の底面に摺接しかつ上面が前記上皿の天板部に摺接するように前記摺動用凹部にその底面の傾斜方向に沿って摺動自在に収容された摺動板と、この摺動板の上面が前記板状体の上面より上方に位置しかつ前記摺動板の後端面が前記摺動用凹部の壁面に当接するように前記摺動板の前端面と前記摺動用凹部の壁面との間に介在すると共に、前記発熱部材に対してその厚さ方向に圧縮荷重が負荷された場合に前記摺動板が前記摺動用凹部の底面の傾斜方向に沿って前方側へ摺動することにより弾性圧縮変形する一方、前記圧縮荷重が除荷された場合に前記摺動板が前記摺動用凹部の底面の傾斜方向に沿って後方側へ摺動するように復元する弾性体と、を備えたものである。
【0014】
第9の発明に係る靴は、前記発熱部材を防水フィルムで被覆したものである。
【0015】
第10の発明に係る靴は、内筒部の下方の開口部を底板部で閉塞した下皿内に前記板状体を嵌入すると共に、前記下皿の内筒部を介して前記上皿を前記板状体に上下動自在に外嵌したものである。
【0016】
第11の発明に係る靴は、前記下皿の底板部上に断熱シートを介して前記板状体を設け、前記断熱シートにその厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を設けると共に、前記貫通孔にそれぞれ挿入されて突端が前記下皿の底板部にそれぞれ当接する複数の突出部を前記板状体の下面に設けたものである。
【0017】
第12の発明に係る靴は、前記板状体の下面側に断熱シートを設けたものである。
【0018】
第13の発明に係る靴は、前記発熱部材の上面側に吸水シートを設けたものである。
【0019】
第14の発明に係る靴は、前記発熱部材を前記中敷本体の凹部に着脱自在に嵌入すると共に、前記発熱部材の上面側及び下面側にそれぞれ吸水シートを設けたものである。
【発明の効果】
【0020】
第1及び第8の発明によれば、発熱部材の交換が不要であると共に、靴の屈曲量に関係なく足を温めることができる。
【0021】
第2及び第9の発明によれば、発熱部材内に汗や雨水等の水分が浸入するのを防止できるので、発熱部材の発熱性能の低下を防止できると共に、発熱部材を清潔に保つことができる。
【0022】
第3及び第10の発明によれば、枠体や台板等の複数の部品で板状体を構成することもできる。
【0023】
第4及び第11の発明によれば、板状体の断熱シートに対する沈み込みを確実に防止できるので、摩擦熱をより効率良く発生させることができる。また、断熱シートの存在により板状体の下面側から熱が逃げるのを抑制することができる。
【0024】
第5及び第12の発明によれば、板状体の下面側から熱が逃げるのを抑制することができる。
【0025】
第6の発明によれば、足から分泌された汗を吸水シートが吸収するので、靴用中敷を挿入した靴内の防臭を図ることができる。
【0026】
第7の発明によれば、裏返した発熱部材を中敷本体の凹部に嵌入して使用できると共に、足から分泌された汗を吸水シートが吸収するので、靴用中敷を挿入した靴内の防臭を図ることができる。また、足を温める必要がない場合に発熱部材を中敷本体の凹部から取り外し、凹部の形状に合わせて形成された中敷材を発熱部材の代わりに凹部に嵌入することもできる。更に、発熱部材を裏返した状態でも靴の屈曲量に関係なく靴用中敷に接触している足が温められるが、板状体の下面側に設けた断熱シートの存在により足に伝導する熱量を低減化することができる。
【0027】
第13の発明によれば、足から分泌された汗を吸水シートが吸収するので、靴内の防臭を図ることができる。
【0028】
第14の発明によれば、裏返した発熱部材を靴底の凹部に嵌入して使用できると共に、足から分泌された汗を吸水シートが吸収するので、靴内の防臭を図ることができる。また、足を温める必要がない場合に発熱部材を靴底の凹部から取り外し、凹部の形状に合わせて形成された中敷材を発熱部材の代わりに凹部に嵌入することもできる。更に、発熱部材を裏返した状態でも靴の屈曲量に関係なく靴底に接触している足が温められるが、板状体の下面側に設けた断熱シートの存在により足に伝導する熱量を低減化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
第1実施形態に係る靴用中敷1は、図1〜図5に示すように、主な構成要素として、中敷本体2及び例えば3つ(少なくとも1つ)の発熱部材3を備えている。
【0030】
中敷本体2は、図1〜図3に示すように、靴4内に挿入して靴底5上に載置可能となるように平面視が足形の例えばシート状に形成されている。ここでいう靴とは、皮革、合成皮革、ゴム、布等を用いて足を覆うように作られた履物の総称をいい、後述の第2実施形態でも同様である。
【0031】
中敷本体2の材質は特に限定されるものではなく、ウレタンフォーム等の発泡体、積層体等、従来公知の適宜の中敷材を採用することができる。中敷本体2のサイズとしては、例えば、最大長さが数十mm〜300mm程度、最大幅が数十mm程度、厚さ(最大厚さ)が数mm程度とすることができる。なお、中敷本体2は、部位に応じて厚さを変えてもよいし、足又は靴底5の形状に合わせて湾曲していてもよい。
【0032】
靴用中敷1を図1のように右足用に構成した場合、左足用の靴用中敷1は右足用の靴用中敷1と左右対称に構成すればよい。あるいは、右足用と左足用の区別がない靴用中敷1としてもよい。
【0033】
発熱部材3は、図1〜図5に示すように、扁平状でかつ平面視が円状に形成されており、その全体が防水フィルム6で被覆されている。この発熱部材3の上面3aには、防水フィルム6を介して円状の吸水シート7が設けられている。
【0034】
発熱部材3のサイズとしては、例えば、直径(最大寸法)が数十mm程度、厚さが数mm程度とすることができる。
【0035】
防水フィルム6の材質としては、合成樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、エラストマー(ゴム、熱可塑性エラストマー)等が挙げられる。いずれにしても、防水フィルム6は、防水性を有すると共に、内部に封入した発熱部材3が支障なく変形できるように可撓性を有する材質、厚さであればよい。
【0036】
吸水シート7の材質としては、布(織物)、不織布、編物、合成樹脂発泡体、エラストマー発泡体等が挙げられる。いずれにしても、吸水シート7は、吸水性を有するものであればよく、更に吸水シート7を設けていない場合よりも水分が速く乾燥する速乾性を有していることが望ましい。このように、発熱部材3の上面3a側に吸水シート7を設けておけば、足から分泌された汗を吸水シート7が吸収するので、靴用中敷1を挿入した靴4内の防臭を図ることができるという利点がある。
【0037】
発熱部材3は、図1及び図2に示すように、中敷本体2の上面2aに設けた例えば3つ(少なくとも1つ)の凹部8に嵌入されている。凹部8は、図1に示すように、中敷本体2の上面2aにおける足の母趾球(ぼしきゅう。親指の付け根。)近辺が接触する部分、足の小趾球(しょうしきゅう。小指の付け根。)近辺が接触する部分、及び足のかかと(踵)近辺が接触する部分の3カ所に設けられている。
【0038】
ここで、図2において、防水フィルム6を介して接着剤で接着する等して発熱部材3の下面3b側だけを凹部8の底面8aに固定しておけば、発熱部材3が凹部8から脱落するのを防止できると共に、凹部8の壁面8cに固定されないことにより発熱部材3が支障なく変形可能であるという利点がある。
【0039】
なお、発熱部材3の数やセット位置は適宜変更可能であり、1つ以上の発熱部材3を中敷本体2の適宜の位置に設けることができる。発熱部材3の平面視形状は、多角形状であってもよいが、円状又は楕円状として尖った部分がないように構成しておけば、発熱部材3が凹部8から脱落した場合でもその発熱部材3を踏み付けることによる足裏の怪我を防止できるという利点がある。凹部8は、使用する発熱部材3の形状、数、及びセット位置に応じて設けておけばよい。吸水シート7は、使用する発熱部材3の平面視形状に応じた形状としておけばよい。
【0040】
発熱部材3は、図5〜図7に示すように、板状体11、上皿12、摺動板13、ゴム状弾性体(弾性体)14、下皿15、及び断熱シート16を備えている。
【0041】
板状体11は、図5に示すように、枠体21及び台板22を備えている。この板状体11の材質としては、金属、セラミック、プラスチック等が挙げられる。
【0042】
枠体21は、図5及び図7に示すように、円板状に形成されており、その厚さ方向に貫通する平面視が正方形状の貫通孔23を有している。台板22は、図5及び図6に示すように、正方形板状に形成されており、その上面22aが斜面とされている。
【0043】
板状体11の上面11aには、図5及び図7に示すように、台板22を枠体21の貫通孔23に挿入することにより摺動用凹部24が設けられている。斜面である台板22の上面22aは、斜面である摺動用凹部24の底面24aを構成している。枠体21の貫通孔23における摺動用凹部24に面する部分は、摺動用凹部24の壁面24cを構成している。
【0044】
このように、板状体11は、枠体21や台板22等のような複数の部品で構成することができる。ここで、板状体11を本実施形態のような枠体21と台板22とで構成しておけば、台板22を枠体21の貫通孔23に挿入するだけで摺動用凹部24が形成されるので、底面24aが斜面である摺動用凹部24を板状体11の上面11aに簡単に設けることができるという利点がある。
【0045】
なお、板状体11を枠体21や台板22等のような複数の部品で構成した場合、各部品の材質は全て同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。また、板状体11は、一体成形品であってもよい。この場合、平板状の板状体11の上面11aに機械加工等により摺動用凹部24を形成してもよいし、上面11aに摺動用凹部24を有する板状体11を一体成形により作製してもよい。
【0046】
上皿12は、外筒部31及び天板部32を備えている。円筒状の外筒部31の上方の開口部は、円板状の天板部32で閉塞されている。上皿12の材質としては、金属、セラミック、プラスチック等が挙げられる。
【0047】
摺動板13は、長方形板状に形成されており、その下面13bが斜面とされている。この摺動板13は、斜面である下面13bが摺動用凹部24の底面24aに摺接しかつ上面13aが上皿12の天板部32に摺接するように、摺動用凹部24にその底面24aの傾斜方向に沿って摺動自在に収容されている。摺動板13の材質としては、金属、セラミック、プラスチック等が挙げられる。
【0048】
ゴム状弾性体14は、角棒状に形成されており、摺動板13の上面13aが板状体11の上面11aより上方に位置しかつ摺動板13の後端面13dが摺動用凹部24の壁面24cに当接するように、摺動板13の前端面13eと摺動用凹部24の壁面24cとの間に長さ方向が摺動板13の左右方向(図5の紙面に対して垂直方向、図7の上下方向)に対して平行となる姿勢で介在している。このゴム状弾性体14は、図5及び図7等に示す例では摺動板13の前端面13d又は摺動用凹部24の壁面24cに接着剤による接着等によって固定されているが、これに限定されるものではなく、摺動板13や摺動用凹部24に固定されていなくてもよい。
【0049】
ゴム状弾性体14の材質としては、合成ゴム、天然ゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。弾性体としては、ゴム状弾性体14の他、バネ等が挙げられる。
【0050】
なお、弾性体の数は1つに限定されるものではなく、2つ以上の弾性体を設けてもよい。また、摺動用凹部24の平面視形状は、正方形状に限定されるものではなく、少なくとも摺動板13の左側及び右側に対向する1対の壁面24cを有するものであればよい。摺動板13は、摺動用凹部24の平面視形状に応じた平面視形状としておけばよい。
【0051】
下皿15は、内筒部41及び底板部42を備えている。円筒状の内筒部41の下方の開口部は、円板状の底板部42で閉塞されている。下皿15内には、板状体11が嵌入されている。上皿12は、下皿15の内筒部41を介して板状体11に上下動自在に外嵌されている。下皿15の材質としては、金属、セラミック、プラスチック等が挙げられる。
【0052】
このように、下皿15内に板状体11を嵌入するように構成しておけば、枠体21や台板22等の複数の部品で板状体11を構成することもできるという利点がある。なお、下皿15を使用しない場合は、上皿12を板状体11に上下動自在に外嵌しておけばよい。
【0053】
断熱シート16は、円状に形成されている。板状体11は、下皿15の底板部42上に断熱シート16を介して設けられている。断熱シート16の材質としては、ウレタンフォーム等の発泡体等が挙げられる。
【0054】
この断熱シート16には、その厚さ方向に貫通する例えば5つ(複数)の貫通孔51が設けられている。板状体11の下面11bの一部を構成する台板22の下面22bには、図5及び図6に示すように、断熱シート16の貫通孔51にそれぞれ挿入されて突端が下皿15の底板部42にそれぞれ当接する例えば5つ(複数)の円柱状の突出部52が設けられている。なお、突出部52の数は、4つ以下又は6つ以上であってもよい。断熱シート16の貫通孔51は、突出部52の断面形状、数、及び形成位置に応じて設けておけばよい。
【0055】
このように、板状体11の下面11bに複数の突出部52を設けておけば、板状体11の断熱シート16に対する沈み込みを確実に防止できるので、後述の摩擦熱をより効率良く発生させることができるという利点がある。
【0056】
次に、発熱部材3の発熱動作について説明する。
図3のように靴用中敷1を内部に挿入して靴底5上に載置した靴4を履いた状態で歩行する際に、図8及び図9に示すように、発熱部材3に対してその厚さ方向に圧縮荷重Fが負荷された場合、ゴム状弾性体14は、摺動板13が摺動用凹部24の底面24aの傾斜方向に沿って前方側の斜め下方へ摺動することにより弾性圧縮変形する。
【0057】
摺動板13は、図8に示すように、圧縮荷重Fの負荷により前方側へ水平移動しながら垂直下方へも下降するので、摺動用凹部24の底面24aの傾斜方向に沿って前方側の斜め下方へ摺動することになる。ここで、板状体11に対する摺動板13の水平相対変位をH、垂直相対変位をV、摺動用凹部24の底面24aの傾斜方向の相対変位をSとすれば、これらH、V、Sの関係は、
S=(H2+V21/2
で表される。
【0058】
なお、ゴム状弾性体14等の弾性体は、圧縮変形時に弾性限界を超えて塑性変形しないように構成しておけばよい。ここで、圧縮荷重Fの負荷時において、圧縮変形する弾性体が弾性限界に達する前に上皿12の天板部32が板状体11及び/又は下皿15の内筒部41に当接してそれ以上弾性体が圧縮変形しないように構成しておけば、弾性体の塑性変形を確実に防止できるという利点がある。
【0059】
一方、圧縮荷重Fが除荷された場合、ゴム状弾性体14は、図5及び図7に示すように、摺動板13が摺動用凹部24の底面24aの傾斜方向に沿って後方側の斜め上方へ摺動するように復元する。
【0060】
摩擦熱は、摺動板13が摺動用凹部24の底面24a及び上皿12の天板部32に対して摺動することにより発生する。圧縮荷重Fの繰り返しの負荷及び除荷により上記の一連の動作を繰り返すので、連続して発生する摩擦熱により発熱部材3の温度が上昇する。これにより靴用中敷1に接触している足が温められるが、圧縮荷重Fの負荷及び除荷は歩行時や足踏み時における靴4の屈曲量とは関係がないと共に、発熱部材3は使い捨てではない。このように、靴用中敷1には、発熱部材3の交換が不要であると共に、靴4の屈曲量に関係なく足を温めることができるという利点がある。
【0061】
また、発熱部材3を防水フィルム6で被覆しておけば、発熱部材3内に汗や雨水等の水分が浸入するのを防止できるので、発熱部材3の発熱性能の低下を防止できると共に、発熱部材3を清潔に保つことができるという利点がある。更に、板状体11の下面11b側に断熱シート16を設けておけば、板状体11の下面11b側から熱が逃げるのを抑制できるという利点がある。いずれにしても、長時間の接触による足の低温熱傷(いわゆる低温火傷)を防止するために、既述した各構成要素の材質の組み合わせについては、発熱部材3の上面3a側における足との接触部分の温度が39℃以上に上昇しない(39℃未満を保持する)ように構成しておくのが望ましい。
【0062】
なお、断熱シート16は、図10及び図11に示すように、発熱部材3の下面3b側に設けてもよい。この場合、図10のように発熱部材3及び断熱シート16を防水フィルム6で被覆してもよいし、図11のように発熱部材3を防水フィルム6で被覆し、この防水フィルム6を介して発熱部材3の下面3bに断熱シート16を設けてもよい。
【0063】
また、発熱部材3を中敷本体2の凹部8に着脱自在に嵌入すると共に、発熱部材3の上面3a側及び下面3b側にそれぞれ吸水シート7を設けておけば、図12のように裏返した発熱部材3を凹部8に嵌入して使用できると共に、発熱部材3の下面3b側(裏返した状態では上方側)の吸水シート7によっても汗を吸収して靴4内の防臭を図ることができるという利点がある。この場合、図13に示すように、足を温める必要がない場合に発熱部材3を凹部8から取り外し、凹部8の形状に合わせて形成された中敷材61を発熱部材3の代わりに凹部8に嵌入することもできる。
【0064】
図12に示すように、既述と同様にして、裏返した発熱部材3に対してその厚さ方向に圧縮荷重Fが負荷された場合、ゴム状弾性体14は、摺動板13が摺動用凹部24の底面24aの傾斜方向に沿って前方側へ摺動することにより弾性圧縮変形する。
【0065】
摺動板13は、圧縮荷重Fの負荷により前方側へ水平移動する。この際、板状体11は、垂直下方へ下降する。そのため、摺動板13は、板状体11に対する相対変位として見れば、図12のように摺動用凹部24の底面24aの傾斜方向に沿って前方側の斜め上方へ摺動する形となる。
【0066】
一方、圧縮荷重Fが除荷された場合、ゴム状弾性体14は、摺動板13が摺動用凹部24の底面24aの傾斜方向に沿って後方側へ摺動するように復元する。
【0067】
この場合も、摩擦熱は、裏返した状態の発熱部材3において、摺動板13が摺動用凹部24の底面24a及び上皿12の天板部32に対して摺動することにより発生する。圧縮荷重Fの繰り返しの負荷及び除荷により上記の一連の動作を繰り返すので、連続して発生する摩擦熱により発熱部材3の温度が上昇する。これにより、靴4の屈曲量に関係なく靴用中敷1に接触している足が温められるが、板状体11の下面11b側に設けた断熱シート16の存在により足に伝導する熱量を低減化できるという利点がある。なお、発熱部材3の下面3b側に設けた吸水シート7は、断熱性を有するものであってもよい。
【0068】
第2実施形態に係る靴74は、図14及び図15に示すように、主な構成要素として、第1実施形態と同様に構成された例えば3つ(少なくとも1つ)の発熱部材3を備えている。
【0069】
靴74としては、長靴、半長靴、胴付長靴、スニーカー、ブーツ、ハイヒール、パンプス、チャッカーブーツ、運動靴、バスケットシューズ、スケートブーツ、バレーシューズ、ダンスシューズ、安全靴、革靴、ローファーズ、上履き、前ゴムシューズ、木靴、ドライビングシューズ、ライディングブーツ、モトクロスブーツ、トレッキングシューズ、登山靴等が挙げられる。靴74を図15のように右足用に構成した場合、左足用の靴74は右足用の靴74と左右対称に構成すればよい。
【0070】
発熱部材3は、靴底75の上面75aに設けた例えば3つ(少なくとも1つ)の凹部78に嵌入されている。凹部78は、図15に示すように、靴底75の上面75aにおける足の母趾球近辺が接触する部分、足の小趾球近辺が接触する部分、及び足のかかと近辺が接触する部分の3カ所に設けられている。
【0071】
ここで、防水フィルム6を介して接着剤で接着する等して、発熱部材3の下面3b側だけを凹部78の底面78aに固定しておけば、発熱部材3が凹部78から脱落するのを防止できると共に、凹部78の壁面78cに固定されないことにより発熱部材3が支障なく変形可能であるという利点がある。また、第1実施形態に記載した他の各技術は、本実施形態に適用することもできる。
【0072】
なお、発熱部材3の数やセット位置は適宜変更可能であり、1つ以上の発熱部材3を靴底75の適宜の位置に設けることができる。凹部78は、使用する発熱部材3の形状、数、及びセット位置に応じて設けておけばよい。
【0073】
発熱部材3の発熱動作は第1実施形態と同様であり、圧縮荷重Fの繰り返しの負荷及び除荷により既述の一連の動作を繰り返すので、連続して発生する摩擦熱により発熱部材3の温度が上昇する。これにより靴底75に接触している足が温められるが、圧縮荷重Fの負荷及び除荷は歩行時や足踏み時における靴74の屈曲量とは関係がないと共に、発熱部材3は使い捨てではない。このように、靴74にも、発熱部材3の交換が不要であると共に、靴74の屈曲量に関係なく足を温めることができるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明に係る靴用中敷及び靴は、摩擦熱により足を温めることができる靴用中敷及び靴として有用であり、発熱部材の交換を不要とすると共に、靴の屈曲量に関係なく足を温めるのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1実施形態に係る靴用中敷の平面図である。
【図2】図1の中敷本体を端面で示すA−A線概略端面図である。
【図3】靴用中敷の使用状態の一例において、中敷本体及び靴を断面で示す概略縦断面図である。
【図4】防水フィルムで被覆しかつ上面側に吸水シートを設けた発熱部材の斜視図である。
【図5】図4の発熱部材の縦断面図である。
【図6】図5の台板の底面図である。
【図7】図5のB−B線断面図である。
【図8】図5の発熱部材の発熱動作を説明する縦断面図である。
【図9】図8のC−C線断面図である。
【図10】発熱部材の下面に断熱シートを設けた例を示す縦断面図である。
【図11】防水フィルムを介して発熱部材の下面に断熱シートを設けた例を示す縦断面図である。
【図12】図5の発熱部材を裏返した状態における発熱動作を説明する縦断面図である。
【図13】中敷本体の凹部に図4の発熱部材の代わりに中敷材を嵌入した状態を示す概略端面図である。
【図14】第2実施形態に係る靴における発熱部材以外の部分を断面で示す概略縦断面図である。
【図15】図14の靴の概略横断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 靴用中敷
2 中敷本体
2a 上面
3 発熱部材
3a 上面
3b 下面
4 靴
5 靴底
6 防水フィルム
7 吸水シート
8 凹部
11 板状体
11a 上面
11b 下面
12 上皿
13 摺動板
13a 上面
13b 下面
13d 前端面
13e 後端面
14 ゴム状弾性体(弾性体)
15 下皿
16 断熱シート
24 摺動用凹部
24a 底面
24c 壁面
31 外筒部
32 天板部
41 内筒部
42 底板部
51 貫通孔
52 突出部
74 靴
75 靴底
75a 上面
78 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴内に挿入して靴底上に載置可能な中敷本体と、
この中敷本体の上面に設けた少なくとも1つの凹部に嵌入された発熱部材と、
を備えた靴用中敷であって、
前記発熱部材は、
上面に摺動用凹部を設けかつこの摺動用凹部の底面が斜面である板状体と、
外筒部の上方の開口部を天板部で閉塞しかつ前記板状体に上下動自在に外嵌された上皿と、
斜面である下面が前記摺動用凹部の底面に摺接しかつ上面が前記上皿の天板部に摺接するように前記摺動用凹部にその底面の傾斜方向に沿って摺動自在に収容された摺動板と、
この摺動板の上面が前記板状体の上面より上方に位置しかつ前記摺動板の後端面が前記摺動用凹部の壁面に当接するように前記摺動板の前端面と前記摺動用凹部の壁面との間に介在すると共に、前記発熱部材に対してその厚さ方向に圧縮荷重が負荷された場合に前記摺動板が前記摺動用凹部の底面の傾斜方向に沿って前方側へ摺動することにより弾性圧縮変形する一方、前記圧縮荷重が除荷された場合に前記摺動板が前記摺動用凹部の底面の傾斜方向に沿って後方側へ摺動するように復元する弾性体と、
を備えたことを特徴とする靴用中敷。
【請求項2】
前記発熱部材を防水フィルムで被覆した請求項1記載の靴用中敷。
【請求項3】
内筒部の下方の開口部を底板部で閉塞した下皿内に前記板状体を嵌入すると共に、
前記下皿の内筒部を介して前記上皿を前記板状体に上下動自在に外嵌した請求項1又は2記載の靴用中敷。
【請求項4】
前記下皿の底板部上に断熱シートを介して前記板状体を設け、
前記断熱シートにその厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を設けると共に、
前記貫通孔にそれぞれ挿入されて突端が前記下皿の底板部にそれぞれ当接する複数の突出部を前記板状体の下面に設けた請求項3記載の靴用中敷。
【請求項5】
前記板状体の下面側に断熱シートを設けた請求項1から3のいずれか記載の靴用中敷。
【請求項6】
前記発熱部材の上面側に吸水シートを設けた請求項1から5のいずれか記載の靴用中敷。
【請求項7】
前記発熱部材を前記中敷本体の凹部に着脱自在に嵌入すると共に、
前記発熱部材の上面側及び下面側にそれぞれ吸水シートを設けた請求項4又は5記載の靴用中敷。
【請求項8】
靴底の上面に設けた少なくとも1つの凹部に発熱部材を嵌入した靴であって、
前記発熱部材は、
上面に摺動用凹部を設けかつこの摺動用凹部の底面が斜面である板状体と、
外筒部の上方の開口部を天板部で閉塞しかつ前記板状体に上下動自在に外嵌された上皿と、
斜面である下面が前記摺動用凹部の底面に摺接しかつ上面が前記上皿の天板部に摺接するように前記摺動用凹部にその底面の傾斜方向に沿って摺動自在に収容された摺動板と、
この摺動板の上面が前記板状体の上面より上方に位置しかつ前記摺動板の後端面が前記摺動用凹部の壁面に当接するように前記摺動板の前端面と前記摺動用凹部の壁面との間に介在すると共に、前記発熱部材に対してその厚さ方向に圧縮荷重が負荷された場合に前記摺動板が前記摺動用凹部の底面の傾斜方向に沿って前方側へ摺動することにより弾性圧縮変形する一方、前記圧縮荷重が除荷された場合に前記摺動板が前記摺動用凹部の底面の傾斜方向に沿って後方側へ摺動するように復元する弾性体と、
を備えたことを特徴とする靴。
【請求項9】
前記発熱部材を防水フィルムで被覆した請求項8記載の靴。
【請求項10】
内筒部の下方の開口部を底板部で閉塞した下皿内に前記板状体を嵌入すると共に、
前記下皿の内筒部を介して前記上皿を前記板状体に上下動自在に外嵌した請求項8又は9記載の靴。
【請求項11】
前記下皿の底板部上に断熱シートを介して前記板状体を設け、
前記断熱シートにその厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を設けると共に、
前記貫通孔にそれぞれ挿入されて突端が前記下皿の底板部にそれぞれ当接する複数の突出部を前記板状体の下面に設けた請求項10記載の靴。
【請求項12】
前記板状体の下面側に断熱シートを設けた請求項8から10のいずれか記載の靴。
【請求項13】
前記発熱部材の上面側に吸水シートを設けた請求項8から12のいずれか記載の靴。
【請求項14】
前記発熱部材を前記中敷本体の凹部に着脱自在に嵌入すると共に、
前記発熱部材の上面側及び下面側にそれぞれ吸水シートを設けた請求項11又は12記載の靴。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−247711(P2009−247711A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100892(P2008−100892)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【特許番号】特許第4223542号(P4223542)
【特許公報発行日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(508107674)
【Fターム(参考)】