説明

靴類用のソールユニット

靴類(11)のための水蒸気を透過し、かつ水を透過するソールユニット(15)であって、その厚みを通して延びる少なくとも1つの大面積の切欠き(27)を備えた、少なくとも1つのソール層(25)と、少なくとも2つの互いに重ねて配置された面形成物とを有し、前記面形成物が、少なくとも1つの切欠きを閉鎖し、かつ前記面形成物のうちの第1の面形成物が、テキスタイルの水蒸気透過性のバリア層(39)を有し、第2の面形成物が水蒸気透過性の装飾層(45)を有しており、前記装飾層が、第1の面形成物の下方において少なくとも、少なくとも1つの切欠き(27)の領域内に配置されており、かつ少なくとも1つの切欠き(27)内でソール層(25)の下側から見ることができる。繊維層(39)の材料によって阻まれるか、あるいは繊維層(39)を用いては多大な手間をかけないと達成できなかった、ソールユニット(15)の下側の外見のための、美的かつ視覚的形成可能性を、本発明に基づく装飾層(45)によって実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ずっと以前から、水密かつ水蒸気透過性のアッパーを有する靴類が存在するので、この種の靴類は、水密であるにかかわらず、アッパー領域内では汗の水分を放出することができる。ソール領域内でも汗の水分を逃がすことができるようにするために、その厚みを通して延びる透孔を備えたアウトソールとその上に水密かつ水蒸気透過性の、たとえば膜の形式の、ソール機能層とを有する靴へ移行している。例を示すのが、特許文献1であって、そのアウトソールは、水蒸気透過性をそれなりに制限しながら、微孔の形式の透孔を有している。
【0002】
人の足の著しい発汗傾向に関してより高い水蒸気透過性を得るために、微孔に比較して大きい透孔を有するアウトソールへ移行している。その例を示す特許文献2からは、この種の高い水蒸気透過性を達成するために、透孔をできるだけ大きくする教示が知られている。
【0003】
アウトソールの透孔が大きくなるほど、アウトソールの透孔の上にある水密の膜が、透孔を通り抜ける、たとえば小石のような異物によって傷ついて、それによってその水密性を失う危険が大きくなる。従って特許文献2においては、透孔を有するアウトソールとその上にある膜との間に、たとえば格子材料またはフェルト材料からなる保護層が配置され、その保護層が、アウトソールの透孔を通り抜ける異物が膜まで達することを防止する。
【0004】
透孔が水の侵入に対して膜によって閉鎖されており、膜の下方に、異物が膜まで侵入することを阻止する保護層が設けられている、アウトソールの大きい透孔を有する他の例が、特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6から知られている。これらすべての例において、通常は箔である、膜の一方の側に、細かいメッシュウェアの形式のテキスタイルの裏面が積層されている。膜とアウトソールの透孔との間に配置されたネット状の保護層は、異物が膜へ侵入しないためのある程度の保護を提供する。膜のための保護を改良するために、膜とネット状の保護層との間に、他の保護層が配置されており、それは、たとえばフェルト層である。従って、膜のための二重保護が形成され、その二重保護には、それぞれそれ自体技術的保護機能を有する、重ねて配置された2つの層が関与している。
【0005】
これらの層のための材料選択とその厚みと突抜け剛性は、それぞれ実際の実施形態の要請に適合される。これは、既知の解決と同様に本発明によって提示される解決にも当てはまる。
【0006】
極めて大きいソール透孔の他の例を、特許文献7が示しており、それによれば、アウトソールの大きい透孔が安定化ウェブおよび/または安定化格子によって安定化されている。これらが、透孔内へ嵌め込まれた水蒸気透過性のテキスタイル材料、たとえばフェルト状の材料を支持している。このように構成された靴ソール複合体が、アッパーと結合され、そのアッパーのアッパー底は、水密かつ水蒸気透過性のアッパー底機能層によって閉鎖されているので、靴全体は水密かつ水蒸気透過性である。
【0007】
テキスタイル材料に特に適しているのが、繊維層であって、その繊維層は、その溶融温度に関して異なる、少なくとも2つの繊維成分を有しており、その場合に第1の繊維成分の少なくとも一部は、第1の溶融温度とその下にある第1の軟化温度領域を有し、第2の繊維成分の少なくとも一部は、第2の溶融温度とその下にある第2の軟化温度領域を有しており、第1の溶融温度と第1の軟化温度領域は、第2の溶融温度と第2の軟化温度領域よりも高く、かつその場合に繊維層は、第2の繊維成分が、第2の軟化温度領域内にある接着剤軟化温度によって熱的に能動化されることにより、熱的に硬化された領域内の水蒸気透過性を維持しながら、熱的な方法で機械的に硬化される。その場合に、アウトソールの1つまたは場合によっては複数の透孔が、テキスタイル材料の個々の片によって閉鎖することができ、あるいはアウトソールの全透孔が、テキスタイル材料の1つの片によって閉鎖されている。
【0008】
この既知の靴類において、テキスタイル材料は2つの機能を有している。一方で、特に大きい開口部を有するアウトソール自体がソール構造の安定化に十分に寄与できないことに関して、ソール構造を安定化させるために用いられる。というのは、テキスタイル材料は、比較的高い固有安定性をもって形成されており、それが、ソール構造の安定性全体に役立つからである。他方で、たとえば特許文献7に記載の、できあがった靴類において、ソール構造の上に水密、水蒸気透過性の膜が配置されており、その膜がテキスタイル材料によって、膜を傷つけるおそれのある、たとえば小石のような異物による損傷に対して保護される。
【0009】
テキスタイル材料には、たとえばPES(ポリエステル)、ポリプロピレン、PA(ポリアミド)およびポリマーの混合物から選択された、ポリマーが適している。
【0010】
すでに述べた特許文献7に記載の実施形態において、テキスタイル材料は、熱的な方法で機械的に硬化され、付加的に熱表面処理によって表面硬化された、それぞれポリエステル繊維によって形成される2つの繊維成分を有するフリースの形式の繊維複合体からなる。その場合に、より高い溶融温度を有する第1の繊維成分が、繊維複合体のキャリア成分を形成し、より低い溶融温度を有する第2の繊維成分が、硬化成分を形成する。少なくとも180℃の繊維複合体全体の温度安定性を保証するために、かつ特に靴類は形成する際に、たとえばアウトソールを射出形成する場合に、比較的高い温度にさらされることがあることを考慮して、考察される実施形態においては、2つの繊維成分のために、180℃を越える溶融温度を有するポリエステル繊維が使用される。異なる溶融温度と従ってその下にある軟化温度とを有する、ポリエステルポリマーの種々のバリエーションがある。フェルト状の材料の考察される実施形態において、第1の成分のために約230℃の溶融温度を有するポリエステルポリマーが選択され、第2の繊維成分のためには、約200℃の溶融温度を有するポリエステルポリマーが選択される。第2の繊維成分は、コア−材料−繊維とすることができ、その場合にこの繊維のコアは、約230℃の軟化温度を有するポリエステルからなり、この繊維の外皮は、約200℃の接着剤軟化温度を有するポリエステルからなる。溶融温度の異なる2つの繊維成分を有するこの種の繊維コンポーネントは、「Bico」とも称される。たとえばフェルト状の材料とすることができる、この種のテキスタイル材料の詳細な記載は、すでに挙げた特許文献7に見られる。
【0011】
上述した2つの目的、すなわち安定性と膜保護に特に適した、熱的な方法で機械的に硬化されたテキスタイル材料は、硬化成分として用いられる、低い溶融温度を有する繊維成分が満足ゆくようには、あるいは不十分にしか着色できず、従って繊維複合体内に白く残り、それがテキスタイル材料全体に満足のゆかない外観を与える、という欠点を有している。これは、アウトソールの大きい透孔を通してテキスタイル材料が見えるので、マイナスに感じられる。従って、特に魅力的で変化に富んだカラー構成によって、ソール構造の下側にもモード的に好ましい外観を与えることによって、靴類全体とそれに伴ってそのソール下側も最新流行のように形成しようとする、高まる要請には、このテキスタイル材料によっては対応できない。
【0012】
ソール内の大きい開口部を、他の材料によって、たとえば少なくとも部分的にKEVLARのようなアラミド繊維からなる、フェルト状の材料によって閉鎖することも、知られている。しかし、アラミドからなる繊維は、着色できず、あるいは着色が極めて困難であるので、この場合においても、上述した問題が生じる。
【0013】
たとえば、すでに挙げた特許文献4から、大きいソール開口部を、たとえばナイロンからなるネットによって閉鎖することが、知られている。このネットの上方に膜が配置され、その膜は、ネットへ向かう側においてフェルト材料からなる保護層と結合することができる。ネットは、メッシュ形成物からなり、その場合に、特に然るべく形成された靴で歩行する際に、外的な接触によって、形成物からメッシュがほどけることがあり、それがソール開口部の内部に引っかかる。ほどけたメッシュおよび/またはひっかかった繊維は、視覚的に望ましくなく、場合によっては靴の安全性を低下させることがある。
【0014】
さらに、フェルト状の材料の代わりに、テキスタイル織物またはニットを使用することも考えられ、それは、使用される繊維に基づいて同様に着色できない問題を有し、かつここでも織物複合体から個々の繊維が分離されることがあり得る。
【0015】
上述した場合において、使用される繊維が着色できないこと、あるいは繊維形成物の比較的小さい損傷が、使用される材料とそれに伴ってそれを装備した靴の満足のゆかない外観をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0382904号明細書(EP 0382904 A2)
【特許文献2】欧州特許出願公開第0275644号明細書(EP 0275644 A2)
【特許文献3】国際公開第2004/028284号(WO 2004/028284 A1)
【特許文献4】国際公開第2006/010578号(WO 2006/010578 A1)
【特許文献5】国際公開第2007/147421号(WO 2007/147421 A1)
【特許文献6】国際公開第2008/003375号(WO 2008/003375 A1)
【特許文献7】国際公開第2007/101624号(WO 2007/101624 A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明によって、ソールユニットの水蒸気透過性あるいはそのバリア機能ないし保護機能をそれほど損なうことなしに、着色およびパターン形成と材料選択に関してソール構造の下側の満足できる、ほぼ任意のモード的形成を可能にする、靴類のためのソールユニットが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これは、請求項1に記載の本発明に基づくソールユニットによって達成され、そのソールユニットによって、請求項25に記載の本発明に基づく靴類を形成することができる。本発明の実施形態が、従属の特許請求項に記載されている。
【0019】
靴類のための本発明に基づくソールユニットは、水蒸気透過性かつ水透過性であって、その厚みを通して延びる少なくとも1つの大面積の切欠きを備えた少なくとも1つのソール層を有している。ソールユニットは、さらに、少なくとも2つの、重ねて配置された面形成物を有しており、その面形成物が少なくとも1つの切欠きを閉鎖し、かつその面形成物のうちの第1の面形成物が、テキスタイルの水蒸気透過性のバリア層を有し、第2の面形成物は水蒸気透過性の装飾層を有しており、その装飾層が第1の面形成物の下方において少なくとも、少なくとも1つの切欠きの領域内に配置されており、かつ少なくとも1つの切欠きの領域内で、ソール層の下側から見ることができる。
【0020】
本発明の実施形態において、バリア層は、繊維層によって形成されており、その繊維層は、その溶融温度に関して異なる、少なくとも2つの繊維成分を有しており、その場合に第1の繊維成分の少なくとも一部が、第1の溶融温度とその下にある第1の軟化温度領域を有しており、第2の繊維成分の少なくとも一部が、第2の溶融温度とその下にある第2の軟化温度領域を有しており、第1の溶融温度と第1の軟化温度領域は、第2の溶融温度と第2の軟化温度領域よりも高い。繊維層は、第2の軟化温度領域内にある接着剤軟化温度による第2の繊維成分の熱的な能動化によって、熱的なやり方で機械的に硬化された領域内の水蒸気透過性を維持しながら、熱的なやり方で機械的に硬化される。
特に上述した種類の、ソールユニットを有する靴類において、アウトソール下側からその大面積の、ここでは開口部とも称される切欠きを通して見える、ソールユニットの材料を、少なくとも部分的に本発明に基づく装飾層によって覆うための、種々の理由を与えることができる。
【0021】
上述した繊維層を有するソールユニットにおいて、本発明に基づいてこの種の装飾層を使用することは、硬化成分として用いられる、より低い溶融温度を有する繊維成分の着色が、この繊維成分を、この繊維成分の軟化温度の上にある温度へ加熱することを要求するので、この繊維成分は着色できない、という認識に基づいている。これは、より高い溶融温度を有する他の繊維成分によっては、別である。その溶融温度は、着色に必要な温度よりも高い。従って着色は、より高い溶融温度を有する繊維成分に関してのみ可能であるが、より低い溶融温度を有する繊維成分に関しては、不可能であるので、テキスタイル材料の繊維複合体内部の白い斑点は避けられず、それが美的に余り好ましくない外見をもたらす。
【0022】
この問題に、この種の繊維層を有するソールユニットにおいて、本発明によれば、テキスタイル材料の満足できない彩色を甘受し、このテキスタイル材料の前段に、魅力的な色または着色を有する材料からなる装飾層が接続されることによって、対処され、その場合にこの材料はたとえば格子状またはネット状であって、あるいは穿孔された面材料あるいは高い水蒸気透過性を有するテキスタイル材料からなり、従ってソールユニットの水蒸気透過性は、装飾層によってはまったく損なわれない。従って、本発明に基づく解決によって、実質的にまったく損なわれない水蒸気透過性において、繊維層の魅力の乏しい外見は、テキスタイル材料に関連して上述した、色または着色に関する制限を受けない装飾層の後方に隠すことができる。従って装飾層は、独立して、ほぼ任意にモードデザインに従って着色しかつ形成することができ、それは、上述した繊維層のテキスタイル材料については不可能である。装飾層のために、良好に着色され、かつ/またはパターンにされ、あるいは初めから魅力的な色および/またはパターンを有する材料を所望に使用することができる。
【0023】
従って、本発明の解決によって、技術的要請、すなわち保護機能と美的要請、すなわち視覚的に魅力のある外観は、これら2つの要請を唯一の層によって達成しようとするのではなく、それぞれその特殊な要請と機能に関して所望に形成されている、2つの異なる層に分割することによって、容易に実現可能であり、かつ経済的にもより魅力的にされる。一方で、技術的機能を有する層においては、もはや、少なくともある程度は魅力的な美的印象を実現するために、妥協する必要はない。他方で、美的機能を有する層は、他の層の技術的機能をもたらす必要がないので、この機能に応じてのみ、できる限り良好に形成することができる。
【0024】
技術的機能、たとえば安定化機能と美的機能を本発明に従って分離する他の経済的利点がある。技術的機能を有する層、たとえば安定化層は、標準カラーで製造することできるので、その層は、この種の技術的に作用する層を搭載すべき、すべての靴のために適用可能であって、それは極めてコスト的に有効である。美的機能を有する層、従って装飾層は、標準セットから選択することができ、それも同様に極めてコスト的に有効である。
【0025】
本発明に基づく装飾層を使用することは、熱硬化される繊維層の2つの成分のために、色または着色に関する上述した制限を受けない材料が提供可能であり、あるいは提供可能にしようとする場合についても、効果的であり得る。たとえば、繊維層の熱的方法で機械的に硬化されたテキスタイル材料は、装飾層に適した材料よりも高価である。特に、レジャーシューズの最新流行の市場セクターにおいては、たとえば異なる年代グループに異なるモード形態によって働きかけるために、同一または異なる靴モデルに、異なる色と異なるパターン形成を設ける、著しい傾向がある。この要請に、異なるように着色され、あるいはパターン化された繊維層で対応する場合には、それぞれの靴メーカーは、それに応じて着色され、かつ/またはパターン化された様々な繊維層を準備してストックしなければならない。これは、繊維層のメーカーと靴メーカーにとっての補給の視点においてだけでなく、色および/またはパターン種類ごとの個数が比較的わずかであるために、靴メーカーにとって高くなる購入価格に関しても、欠点となる。装飾層を使用する場合に、ソールユニットの下側の外見は、繊維層材料によってではなく、装飾層の外見によって定められることによって、靴メーカーは統一的な繊維層材料を購入し、ソールユニットの下側の外見の視覚的かつモード的な現れに関しては、装飾層に専念することができる。そのための材料を、靴メーカーあるいは、靴メーカーが自社の靴のためのソールを自ら形成しない場合に、ソールメーカーは、所望の量と色彩付与および構造と材料種類で購入し、あるいは自ら色彩付与とカラーパターンに関して形成することができ、その場合にメーカーは、多数の納入者から、望ましい装飾層のための材料を購入することができるので、価格構成に関しても、種々の材料の入手性に関しても、種々の材料メーカーに依頼することができる。従って、繊維層の材料が所望のイメージに応じて着色できるか否かに関係なく、色とパターンに関するソールユニットの下側の視覚的形態を、特に上に挙げた補給、多様性の理由と価格の視点から、付加的な装飾層によって設けることが、検討に値する。
【0026】
装飾層のための材料が、その形成後に、たとえば吹付け、スクリーン印刷などによって、着色される場合には、着色またはパターン付与が次のように、すなわち装飾層の材料のメッシュまたは他の種類の開口部あるいは孔が、所望の水蒸気透過性が得られる程度に開放しているように行われるように、注意すれば済む。この種の手段と方法による、このようなカラー構成は、既知の場合においてアウトソールの透孔を通して見えるテキスタイル層、とくに繊維層においては、不可能であった。一方で、フェルトのようなテキスタイル材料の表面には、特に細かく構造化された種類の、カラーパターンは、十分な解像度で形成されない。他方で、吹付けまたはスクリーン印刷によって塗料を塗布する場合に、この種の材料の表面が著しく詰まることを回避することは困難であるので、所望の水蒸気透過性は、もはや実現されない。さらに、この種の技術は、比較的高価である。テキスタイル材料の刻印は、統一的でない表面をもたらし、それも、ソール材料の吹付けの際に、テキスタイル材料内のソール材料の流れが計算できないので、欠点となる。
【0027】
本発明に基づく装飾層は、繊維層が2つの繊維成分を有し、第2の繊維成分のために使用される材料において、第2の繊維成分の軟化温度が第2の繊維成分の着色に必要な温度の下にある実施形態において、特に効果的である。というのは、この場合においては、白い斑点を有する、繊維層の美的にあまり魅力的でない外観形状は、本発明に基づく装飾層によって覆い隠されるので、それにもかかわらずソールユニットの下側は、視覚的に魅力あるように形成することができるからである。
【0028】
特に、本発明に基づく装飾層を備えたソールユニットを有する靴が、比較的若い購入者に向けられている場合に、装飾層によって得られる「メタルルック」が魅力的な場合もある。従って、本発明の実施形態において、装飾層は、金属の外観をもたらす材料からなる。そのために設けられている、本発明の第1の実施形態において、装飾層の材料は、金属、たとえば金属格子または金属ネットのみからなる。そのために設けられている、本発明の第2の実施形態においては、装飾層の材料は、金属化されたプラスチック格子からなり、あるいは、糸構造または糸ネットの構造にされた、金属化された繊維によって形成されている。
【0029】
純粋に金属の装飾層のための材料例は、鉄、アルミニウムおよび鋼である。金属化されたプラスチックからなる装飾層のための材料例は、スズ、銀、銅、ニッケルまたは他の合金からなる被覆を有する織物、編物およびニット、たとえばオーストリア、ニクラスドルフのPlatingtech Beschichtung GmbH, & Co. KG,社の登録商標POLYMETである。この材料は、裂け強く、耐摩耗性および耐腐食性である。金属化されないプラスチックからなる装飾層のための材料邸は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリマー、ポリアミド、たとえばイタリア、25030 Zocco d'Erbusco, Panatex社のポリアミド メッシュシルバーである。
【0030】
しかし、装飾層のための材料として、たとえばパーフォレーションのような加工によって水蒸気透過性にされた材料またはたとえばポリアミド、ポリウレタンなどからなる、穿孔された面材料あるいは、たとえばプラスチック、テキスタイル、皮革、金属、ガラス繊維またはその組合せからなる、もともと水蒸気透過性の面材料も、適している。
【0031】
それぞれ所望の色とパターン効果を達成するために、装飾層のための上述した材料例を、互いに、あるいは他の材料と組み合わせることもできる。
【0032】
本発明の実施形態において、装飾層は、基層と基層の表面を覆うコーティングを有し、その場合にコーティングは、着色された材料または少なくとも1つの顔料を有する材料から形成されている。このようにして、装飾層のための種々の材料要請が組み合わされ、たとえば所望の機械的特性と所望の水蒸気透過性を有する基層は、装飾層の所望の、あるいは要請される機械的特性および所望の水蒸気透過性に寄与する必要がないので、美的視点のみから着色してパターン化することができる、コーティングと組み合わされる。
【0033】
本発明の実施形態において、装飾層は、汚れをはじく材料によって形成されている。
【0034】
装飾層が、ネット状、格子状またはメッシュ形状の材料、たとえばテキスタイル材料によって形成される場合に、装飾層は、単繊条繊維または多繊条繊糸によって形成することができる。
【0035】
多繊条の糸は、複数の繊維から構成されており、その繊維の間に毛管領域が生じる。その中へ、特に汚れ、たとえば排水のような汚れた液体あるいは、たとえばオイルのような汚す液体のような、汚す物質が侵入することがあり、それは糸から除去されないので、糸とそれによって形成された装飾層は永続的かつ不可逆的に汚れて見え、あるいは少なくとも視覚的に損なわれることがある。
【0036】
本発明の実施形態において、これは、装飾層が、もともと毛管を持たない単繊条の繊維によって形成されることにより、防止される。この種類の特に好ましい実施形態において、単繊条の繊維のために、吸収しない繊維材料、たとえばプラスチック材料が使用される。
【0037】
装飾層が糸によって、従って多繊条の形成物によって形成される、本発明の実施形態においては、糸がシリコーンまたは実質的に無色のシリコーン状の材料によって、この装飾層のネットないし格子開口部が開放したままとなり、従って水蒸気透過性を維持するように被覆されることにより、汚染物質の沈積が防止される。糸のこのような被覆に基づいて、この種の汚す物質は、糸を形成する繊維の間に侵入することはできない。従って、除去できず、従ってそのままになる、装飾層の汚れは、防止される。他方で、実質的に無色のこのような材料によって被覆することにより、糸とそれに伴って装飾層の色は、見えるままである。
【0038】
他の実施形態において、多繊条の糸の毛管領域がプラスチックで少なくとも部分的に充填され、あるいは含浸されている。従って毛管領域内への汚れの侵入が阻止され、かつ装飾層の汚れが残ることが防止される。
【0039】
本発明の実施形態において、装飾層は、端縁領域のみにおいてバリア層と次のように、すなわち特に歩行運動の際にバリア層に対する装飾層の相対運動が可能であるように、結合されている。すなわち、装飾層がその下にあるソール層、特にアウトソールの大面積の切欠き上にある(そしてこの大面積の切欠きを通して見える)ところではどこでも、装飾層はバリア層と結合されておらず、それが、少なくともこの大面積の切欠きの領域内で、バリア層に対する装飾層の相対運動を可能にする。格子開口部ないしネット開口部内に固着した、特に乾燥した泥などのような、汚す物質は、この相対運動によって装飾層からゆるめ、あるいは剥がすことができるので、それらは落下することができ、きれいな装飾層が残る。汚れを剥がす、この相対運動は、たとえば汚れがこびりついて、歩行運動では十分に装飾層から剥がれない場合に、足からぬいだ靴のソール構造を手で曲げることによっても、もたらすことができる。
【0040】
本発明の実施形態において、装飾層は、周側の端縁領域のみにおいてバリア層と結合されている。バリア層に1つまたは複数の安定化ウェブが対応づけられている場合に、装飾層は、1つまたは複数の安定化ウェブの領域内でバリア層と結合することもでき、あるいは付加的にそうすることもできる。重要なことは、ソール層、たとえばアウトソールの少なくとも1つの切欠きが設けられているところでは、装飾層がバリア層と結合されないままとなり、それによってそこで、バリア層に対する装飾層の、汚れを剥がす相対運動が可能になることである。
【0041】
本発明の実施形態において、装飾層をきれいに保つための、上で開示した2つの措置が組合わされる。この実施形態においては、一方で、装飾層は端縁領域のみにおいてバリア層と結合されており、それによって上述した相対運動が可能になり、その相対運動が、装飾層の開口部内に固着した汚れをゆるめて剥がすことを促進する。他方で、この実施形態においては、装飾層は、単繊条の材料によって形成されるか、あるいはシリコーンまたはシリコーン状の材料によって被覆され、あるいは含浸された糸によって形成されているので、汚す物質は糸内へ侵入することはできず、糸はきれいな、最初の色の現れのままとなる。この実施形態において、汚れは、場合によってはネット状または格子状に形成された装飾槽の開口部内へ侵入することがあり、そこで上述した装飾層とバリア層の間の相対運動によって再び剥がれて落下することができるので、それによって装飾層はふたたびきれいになり、その最初の視覚的な外観を有する。
【0042】
装飾層の開口部から汚れをゆるめることは、上述した措置に加えて付加的に、たとえば熱表面処理によって平滑化され、表面が閉鎖している繊維材料からなるので、少なくとも装飾層へ向いた側が比較的滑らかであり、かつ閉鎖された表面を有するバリア層が使用される実施例において、特に効果的かつ徹底的である。この種のバリア層を使用する場合に、ごみは、実際には装飾層の開口部内のみに固着する。というのは、ごみは、バリア層の滑らかな、閉鎖された表面には付着しないからである。滑らかな表面を有するバリア層と、一方で端縁領域のみにおいてバリア層と結合され、他方ではシリコーンまたは同様の材料によって被覆または含浸された糸によって形成されている装飾層とが組合わされている実施形態において、装飾層が特に効果的かつ徹底的にきれいに保持され、従って装飾層とそれに伴って靴のソール構造の下側の、損なわれない視覚的外観が維持される。
【0043】
本発明のこの実施形態において、装飾層は皮革によって形成されており、その皮革は、汚す物質が皮革構造内へ侵入し、それに伴ってこの装飾層の視覚的外観を損なうことに対処するために、水、オイルおよび汚れをはじくように形成されている。この目的のための仕上げ加工材料として、たとえば、特にフルオロカーボン樹脂の形式の、フルオロカーボン、シリコーンを含む薬剤などが適している。この実施形態においても、装飾層として用いられる皮革は、上述した装飾層とバリア層の間の相対運動を可能にし、それに伴って装飾層からの乾燥した汚れの落下を促進するために、好ましくはその端縁領域のみにおいてバリア層と結合されている。
【0044】
本発明の実施形態において、装飾層は、10.000g/m2・24hから50.000g/m2・24hの領域内、特に20.000g/m2・24hから30.000g/m2・24hの領域内の水蒸気透過性を有している。本発明のこの実施形態において、装飾層は、26.000g/m2・24hの水蒸気透過性を有している。本発明の実施形態において、ここではバリア層または繊維層とも称される、安定化層(テキスタイル材料)は、3.000g/m2・24hから20.000g/m2・24hの領域内、特に8.000g/m2・24hから15.000g/m2・24hの領域内の水蒸気透過性を有している。この実施形態において、安定化層は、12.588g/m2・24hの水蒸気透過性を有している。装飾層と安定化層の水蒸気透過性についてのこの種の値によって、ソールユニット全体にとって望ましい水蒸気透過性が得られる。
【0045】
本発明の実施形態において、ソールユニット全体は、1.000g/m2・24hから20.000g/m2・24hの領域内、特に6.000g/m2・24hから12.000g/m2・24hの領域内の水蒸気透過性を有している。本発明の実施形態において、ソールユニット全体の水蒸気透過性は、9.337g/m2・24hである。
【0046】
本発明の実施形態において、装飾層が対応づけられる、ソールユニットのソール層は、射出可能な材料、特にプラスチック材料からなる。これを可能にするのは、本発明の他の実施形態であって、それにおいてはソール層が繊維層と装飾層に次のように、すなわち繊維層と装飾層がソール層材料を介してソール層と結合されるように、射出形成されている。この実施形態において、繊維層と装飾層は、ソール層材料によって互いに結合することができる。
【0047】
実施形態において、繊維層と装飾層は、ソール層材料によって貫通することができる。この実施形態は、安価で技術的に複雑でないために、特に効果的な、ソール層、繊維層および装飾層の結合を可能にする。
本発明の実施形態において、ソール層は、アウトソールを形成する。本発明の他の実施形態においては、ソール層は、ソールユニットの中間ソールを形成している。
【0048】
本発明の実施形態において、繊維層と装飾層は、挿入片を形成する。これが、たとえば同一のアウトソールないし中間ソールおよび/または他の同一のコンポーネントを有する、同じ種類のソール構造のために、それを、特にその装飾層に関して異なる、様々に構成された挿入片と結合することによって、比較的多数の本発明に基づくソールユニットを、合理的かつそれに伴って安価なやり方で補給的に好ましい視点のもとで提供可能にする、可能性をもたらす。
【0049】
さらに、本発明は、本発明に従って装飾層を有するソールユニットと、ソール側のアッパー端部領域内に水密かつ水蒸気透過性のアッパー底機能層を備えたアッパーとを有する靴を提供し、その場合にアッパー底機能層を有するソールユニットがアッパー端部領域に次のように、すなわちアッパー底機能層が少なくとも、少なくとも1つの切欠きの領域内で繊維層と結合されていないように、固定されている。これは、繊維層とアッパー底機能層との間に、水蒸気透過性を減少させる接着剤が存在しないので、特に高い水蒸気透過性をもたらす。
【0050】
本発明の実施形態において、靴類は、アッパー底機能層の他に、アッパー上材料の主要領域にわたって延びるアッパー機能層を有しており、それがアッパー底機能層と水密に結合されており、あるいはこのアッパー底機能層と、ソックス形状の挿入片(ブーティとも称される)になるように結合されている。
【0051】
この種の靴類において、一方で(履き口を除いて)回りが水密であり、それにもかかわらず水蒸気透過性であって、他方では、特に流行の靴において美的理由から、あるいは靴メーカーが特にそれを指向するソール下側の視覚的形態を望むために重要な、靴類のソール下側の外見に関して、ほぼ任意に形成される。
【0052】
定義とテスト方法
靴類:
履き口を備えた、閉鎖された上部分(アッパー構造体)と少なくとも1つのソールまたはソール複合体とを有する足被覆。
【0053】
アッパー上材料:
アッパーとそれに伴ってアッパー構造体の外側を形成し、たとえば皮革、テキスタイル、プラスチックまたは他の既知の材料およびその組合せからなり、あるいはそれによって構成されており、一般に水蒸気を透過する材料からなる、材料。アッパー上材料のソール側の下方の端部は、ソールまたはソールユニットの上端縁に隣接する領域ないしはアッパーとソールの間の境界領域の上方の領域を形成する。
【0054】
マウンティングソール(インソール):
マウンティングソールは、アッパー底の一部である。マウンティングソールに、ソール側の下方のアッパー端部領域が固定される。
【0055】
ソール:
靴は、少なくとも1つのアウトソールを有するが、互いに重なり合って配置されて、ソールユニットを形成する、複数種類のソール層を有することもできる。
【0056】
アウトソール:
アウトソールは、ソール領域の、地面/土台に接触し、ないしは地面/土台に対する主な接触を形成する部分である。アウトソールは、地面に接触する少なくとも1つの接地面を有している。
【0057】
中間ソール:
アウトソールが直接アッパー構造体に取り付けられない場合に、アウトソールとアッパー構造体との間に中間ソールを挿入することができる。中間ソールは、たとえばクッション、緩衝または充填材料として用いることができる。
【0058】
ブーティ:
ブーティと称するのは、アッパー構造体のソックス形状の内張りである。ブーティは、靴の内部を実質的に完全に覆う、アッパー構造体のソックス形状の内張りを形成する。
【0059】
機能層:
たとえば膜または然るべく処理され、あるいは装備された材料、たとえばプラズマ処理を有するテキスタイルの形式の、水密および/または水蒸気透過性の層。機能層は、アッパー底機能層の形式で、アッパー構造体のアッパー底の少なくとも1つの層を形成することができるが、付加的に、アッパーを少なくとも部分的に内張りするアッパー機能層として設けることもできる。アッパー機能層も、アッパー底機能層も、多層の、多くは2層、4層または4層のラミネートの一部であることができる。アッパー機能層もアッパー底機能層も、それぞれ機能層ブーティの一部とすることができる。機能層ブーティの代わりに、アッパー機能層と別体のアッパー底機能層が使用される場合には、これらはたとえば、アッパー構造体のソール側の下方領域内で、互いに対して水密に密閉される。アッパー底機能層とアッパー機能層は、異なる材料から、あるいは同一の材料から形成することができる。
水密の、水蒸気透過性の機能層に適した材料は、特に、米国特許第7425418号明細書(US-A-7425418)と米国特許第4493870号明細書(US-A-4493870)に記載されているような、ポリウレタン、ポリプロピレンおよび、ポリエーテルエステルを含むポリエステルとそのラミネートである。実施形態において、機能層は、たとえば米国特許第3953566号明細書(US-A-3953566)と米国特許第4187390号明細書(US-A-4187390)に記載されているような、微孔の、延伸されたポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)によって形成される。実施形態において、機能層は、親水性の含浸剤および/または親水性の層を有する、延伸されたポリテトラフルオロエチレンによって形成される。たとえば、米国特許第4194041号明細書(US-A-4194041)を参照されたい。微孔の機能層というのは、その平均的な実効孔大きさが、約0.2μmと約0.3μmの間にある機能層である。
【0060】
ラミネート:
ラミネートは、一般には相互の接着または溶接によって、互いに永続的に結合された、複数の層からなる複合体である。機能層ラミネートにおいては、水密および/または水蒸気透過性の機能層に少なくとも1つのテキスタイル層が設けられている。裏側とも称される、少なくとも1つのテキスタイル層は、主として、機能層をその加工の間保護するために用いられる。ここで言うのは、2層ラミネートである。3層ラミネートは、2つのテキスタイル層内へ埋め込まれた、水密、水蒸気透過性の機能層からなる。機能層と少なくとも1つのテキスタイル層との間の結合は、たとえば、連続的な水蒸気透過性の接着剤層あるいは非連続の接着剤層によって行われる。実施形態において、機能層と1つまたは2つのテキスタイル層との間に、接着剤を点状のパターンの形式で塗布することができる。それ自体水蒸気透過性でない接着剤からなる全面の層は、機能層の水蒸気透過性をブロックしてしまうので、接着剤の点状ないし非連続の塗布が行われる。
【0061】
バリア層:
バリア層は、特に特に小片または異物、たとえば小石の形状の物質が保護すべき材料層へ、特に機械的に敏感な機能層または機能層膜へ侵入することに対するバリアとして用いられる。
【0062】
装飾層:
装飾層は、美的理由から設けられる材料層であって、その機能に属するのは、装飾層なしでは見えてしまうが、装飾層によって覆われ、特にその技術的機能のために設けられる材料層の外見を、特にその材料層が満足できない、あるいは望ましくない美的外観を有している場合に、覆い隠すことである。
【0063】
多孔性;
本発明に基づく装飾層に関連して、ここで多孔性は、装飾層の材料がもともと、あるいは加工によって、水を通し、かつ水蒸気を通すことを意味している。
【0064】
突抜け強さ:
テキスタイルの面形成物の突抜け剛性は、Instron−Zug検査機械(モデル4465)の検査装置を使用して、EMPA(Eidgenoessischen Materialpruefungs- und Forschungsanstalt)によって使用される測定方法によって測定することができる。パンチリングを用いて、直径13cmの丸いテキスタイル片が打ち抜かれて、支持プレート上に固定され、その支持プレートには17の孔がある。固定された17の突起状のニードル(ニードルタイプ110/18)を有するピストンが、1000mm/分の速度で、テキスタイル片を通してニードルが支持プレートの孔内へ沈むまで下降される。テキスタイル片を貫く力が、測定チャンバ(力記録装置の)によって測定される。結果は、3つの試料の試料数から求められる。
【0065】
バリア層または安定化層のような材料層の突抜け剛性は、SATRA Technology Cetre, Wyndham Way, Kettering, Northamptonshire, NN16 8SD, United Kingdomのテスト方法「TM37 SATRA」を用いてテストされる。
参照文献:
欧州規格EN344−1、特に部分4.3.3(透過抵抗)
テスト説明:
鋭い尖端を有する硬化された鋼釘を、長靴底または靴底を通すのに必要な力が求められる。
テスト装置−パラメータ:
Instron Deutschland GmbH, Werner-von-Siemens-Strasse 2, 64319 Pfungstadtの引裂き試験装置。
金床として、4.5mmの直径と30°の尖端角度を有する、鋭い尖端を備えた鋼釘が用いられる。
推進速度は、10±3mm/分である。
テスト箇所:テストTM37SATRAは、ソールの突抜け剛性のテストのために、それ自体において、ソールにわたって分配され、かつ互いに好く20mmの間隔を有する4箇所(母趾球領域内側、母趾球領域外側、中足領域、かかと)で行われる。本発明に関連してバリア層の突抜け剛性が問題であるが、バリア層は鋭い部品による突抜きについて、それを有するソール層の、高い水蒸気透過性のために設けられた大面積の切欠きの領域内でのみ直接危険にさらされるので、かかと領域内にこの種の切欠きが設けられていない、本発明の実施形態については、テストTM37SATARを適用する場合に、かかと領域内のテスト箇所は、省かれる。
【0066】
突抜け剛性の定義:
本発明に関連して、突抜き強いというのは、テストされた材料、特に本発明に基づく靴安定化材料またはバリア材料が、突抜けテストTM37SATARにおいて、少なくとも40ニュートンの力に耐えることを意味している。
【0067】
厚み:
本発明に基づく靴安定化材料の厚みは、DIN ISO5084(10/1996)に従ってテストされる。
【0068】
水密:
場合によっては機能層/機能層ラミネート/膜に設けられた縫目を含めて、機能層/機能層ラミネート/膜が、少なくとも1x104Paの水侵入圧を保証する場合に、それは「水密」となる。好ましくは機能層ラミネートは、1x105Pa超の水侵入圧を保証する。その場合に水侵入圧は、テスト方法に従って測定され、そのテスト方法において蒸留水が20±2℃で機能層の100cm2の試料上へ上昇する圧力をもってもたらされる。水の圧力上昇は、分当たり60±3cmWsである。その場合に水侵入圧は、初めて水が試料の他方の側に現れた圧力に相当する。やり方の詳細は、1981年のISO−規格0811に定められている。
【0069】
靴が水密であるかは、たとえば米国特許第5329807号明細書(US-A-5329807)に記載された種類の遠心力配置によってテストすることができる。
【0070】
水蒸気透過性:
機能層/機能層ラミネートが、150m2xPaxW−1未満の水蒸気透過数Retを有する場合に、「水蒸気透過性」であると見なされる。水蒸気透過性は、ホーエンシュタイン−スキンモデルに従ってテストされる。このテスト方法は、DIN EN31092(02/94)ないしISO11092(1993)に記述される。
【0071】
本発明に基づくバリア層/繊維層/安定化層/装飾層の水蒸気透過値は、いわゆるベッヒャーメソッド(Becher-Methode)を用いてDIN EN ISO15496(09/2004)に従ってテストされる[A3]。
【0072】
ソールユニットの水蒸気透過性の尺度[A4]は、欧州特許第0396716号明細書(EP 0396716 B1)に記載された測定方法によって求められ、その測定方法は、靴全体の水蒸気透過性を測定するために考案されている。靴のソールユニットのみの水蒸気透過性を測定するために、同様に欧州特許第0396716号明細書(EP 0396716 B1)に記載の測定方法を使用することができ、欧州特許第0396716号明細書(EP 0396716 B1)に示された測定構造によって、互いに連続する2つの測定シナリオにおいて、すなわち一回は水蒸気透過性のソールユニットを有する靴が、他の回においてはその他においては同一の、水蒸気透過性でないソールユニットを有する靴が、測定される。2つの測定値の差から、水蒸気透過性の割合を求めることができ、それは、水蒸気透過性のソールユニットの水蒸気透過性に基づく。
【0073】
各測定シナリオにおいて、欧州特許第0396716号明細書(EP 0396716 B1)に記載の測定方法を使用しながら、すなわち以下のステップ順序で、行われる:
1.空調された室内(23℃、相対湿度50%)に少なくとも12時間放置することによる、靴のコンディショニング。
2.挿入ソール(足床)の除去。
3.靴に、靴内部空間に適合した水密、水蒸気透過性の内張材料を内張りし、その内張材料は、靴の履き口の領域において水密、水蒸気不透過性のシール栓(たとえばプレキシガラスからなり、かつ膨らませることのできるスリーブを有する)によって水密かつ水蒸気密に閉鎖することができる。
4.内張材料内に水を充填し、靴の履き口をシール栓で閉鎖する。
5.水で満たした靴を、予め定められた期間(3時間)の間放置することによって、プレコンディショニングし、その場合に水の温度は35℃に一定に維持される。周囲空間の気候は、23℃かつ相対湿度50%に、同様に一定に維持される。靴は、テストの間ベンチレータによって、平均で少なくとも2m/sから3m/sの風速で前から吹き付けられる(水蒸気透過に対して著しい抵抗をもたらすことになる、静止している靴の回りに残る静止している空気層を乱すため)。
6.シール栓でシールされ、水で満たされた靴を、プレコンディショニング後に新たに計量(m2(g)の重量が生じる)。
7.新たな放置およびステップe)におけるのと同じ条件のもとで3時間の本来のテスト。
8.シールされ、水で満たされた靴を、3時間のテスト相後に新たに計量(m3(g)の重量が生じる)。
9.3時間のテスト時間の間に靴を通って逃げた水蒸気量から、靴の水蒸気透過性を定める、関係M=(m2−m3)[g]/3[h]に従って(m2−m3)[g]
【0074】
一方で、水蒸気透過性のソールユニットを有する靴全体について(値A)、他方で、水蒸気を透過しないアッパー底構造を有する靴全体について(値B)水蒸気透過値が測定される、2つの測定シナリオが実施された後に、差A−Bのみから水蒸気透過性のソールユニットの水蒸気透過値を求めることができる。
【0075】
重要なことは、水蒸気透過性のソールユニットを有する靴の水蒸気透過性を測定する間、靴ないしそのソールが直接閉鎖された土台上にあることを、回避することである。これは、靴を持ち上げ、あるいは靴を格子構造上に置くことによって達成することができるので、ベンチレーション空気流がアウトソールの下側に沿っても、あるいは完全に下側に沿って、流れることができるように配慮される。
【0076】
測定ばらつきをより良好に評価することができるようにするために、各テスト構造において、所定の靴について繰返し測定を実施して、その平均値を考察すると有意義である。測定構造を用いて、各靴について少なくとも2回の測定を実施すべきである。すべての測定において、たとえば1g/hの実際の値を中心として±0.2g/hの測定結果の自然の変動が推定される。従ってこの例については、同一の靴について、0.8g/hと1.2g/hの測定値を得ることができる。この変動のための影響ファクターは、たとえばテストを実施する人または上方のアッパー端縁におけるシール品質に基づく可能性がある。同一の靴について複数の個別測定値を平均することによって、実際の値のより正確な像を獲得することができる。
【0077】
ソールユニットの水蒸気透過性のためのすべての値は、大きさ43(フランス寸法)のノーマルなひもの紳士用ハーフシューズに基づいており、その場合にこの大きさの表し方は規格化されておらず、異なるメーカーの靴は、異なる可能性がある。
【0078】
単に本発明を実現するための限定的でない例を示す実施例を用いて、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】アッパーと、本発明に基づいて形成されたソールユニットを備えた靴ソール複合体とを有する靴の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す靴の斜視図であって、その場合に靴ソール複合体は、まだ靴アッパーと結合されていない。
【図3】図1と2に示す靴ソール複合体を上面で示す斜視図である。
【図4】図1に示す靴を、図2に示す組立て段階において接着された靴ソール複合体を有する実施例において、図式的に示す断面図であって、その場合にアッパーは、完全には示されていない。
【図5】図4に示す図式的な断面表示であるが、アッパーに射出形成された靴ソール複合体を有する靴の実施形態について示しており、その場合いアッパーは、同様に完全には示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0080】
ここで、たとえば上、下、右、左などのような概念が使用される場合に、これは常に、それぞれの図における具体的な表示に関するものであって、絶対的に該当するものではない。
【0081】
図1と2は、アッパー13と本発明に基づくソールユニット15とを有する本発明に基づく靴11の実施例を下から示す斜視図である。図1において、靴11は、アッパー13とソールユニット15が互いに結合された状態で示されている。図2は、図1に示す靴を、ソールユニット15がアッパー13に固定される前の、組立て段階において示している。
【0082】
靴11は、前足領域17、中足領域19、かかと領域21および履き口23を有している。ソールユニット15は、支持体層25の形式のソール層を有しており、その支持体層は、できあがったソールユニット15の安定化に決定的に寄与し、かつ前足領域17と中足領域19内に大面積の切欠き27(図2)を有している。支持体層25は、その安定化作用のために、ここでは安定化層と称される。これに関連して、大面積というのは、個々の切欠きが1cm2から数cm2の領域内の、たとえば約2cm2から約30cm2の領域内の、この範囲内でたとえば10cm2から20cm2の領域内の面積を有することである。切欠き27は、できるだけ大きい水蒸気透過性を有するソールユニット15を提供できるようにするために、できるだけ大きく選択される。
【0083】
支持体層25の下方に、アウトソール29が配置されており、そのアウトソールは複数の個別アウトソール部分から、すなわちかかと領域内のアウトソール部分29a、足趾球領域内のアウトソール部分29bおよび足指領域内のアウトソール部分29cから、構成されている。これらのアウトソール部分が、支持体層25の下側に固定されている。足趾球領域内と足指領域内で、アウトソール部分29bと29cは、大面積の切欠き27を有しており、その切欠きは、支持体層25の切欠き27が全部または実質的にアウトソール材料をもたず、従って支持体層25の切欠き27によって得られるソールユニットの水蒸気透過性が損なわれないような寸法に定められている。
【0084】
図示の実施形態において、支持体層25の上方に緩衝ソール層31が配置されており、その緩衝層は踏みだし緩衝をもたらし、それによって靴の歩行快適性を向上させる。緩衝ソール層31は、かかと領域内の緩衝ソール部分4131aと前足領域内の緩衝ソール部分4131bを有している。緩衝ソール部分4131aと4131bも、大面積の切欠きを有しており、その切欠きは、支持体層25の切欠き27によって達成される水蒸気透過性を損なわない、あるいは実質的に損なわないために、支持体層25の切欠き27を完全に、あるいは少なくとも実質的に露出させる。
【0085】
本発明の実施形態において、ソールは、一体的に形成することもできる。すなわち、その場合に緩衝層とアウトソール層は唯一のソール層にまとめられ、その場合に踏みだし緩衝特性と走行特性に関して、2つの特性をできるだけ良好に考慮する材料選択がなされる。
【0086】
緩衝ソール層31だけでなく、アウトソール29の部分も、良好な歩行快適性を達成し、かつ良好な踏みだし特性を得るために、ある程度の軟性度を有する弾性的な材料からなる。この比較的柔らかい弾性的な材料に基づき、かつ大きい切欠きを有する個別部分からなるその構成に基づいて、アウトソール29はソールユニット15全体の安定性に十分には寄与しない。一体的なアウトソールを有する実施形態においても、柔らかい弾性的な材料と大きい切欠きに基づいて、ソールユニット全体の十分に満足できる安定性は達成されない。
【0087】
その材料が比較的柔らかいことと、それが個々の部分から構成されていることに基づいて、アウトソール29も緩衝ソール層31の部分も、ソールユニットのために望まれる安定性を提供しない。この理由から、安定化層として作用する支持体層25が設けられており、その支持体層は、踏みだし緩衝特性もアウトソール特性も考慮する必要がないので、比較的硬い材料から形成することができる。比較的硬い材料であるにもかかわらず、大面積の切欠き27によってある程度損なわれる可能性のある、安定化層25の安定化特性を改良するために、支持体層25の個々の切欠き27が、安定化ウェブ33によって橋渡しされている。それによって支持体層25は、ある程度の曲げおよび捻れ強度を獲得し、それがソールユニット15全体に所望の安定性を与える。
【0088】
図2に示すように、ソールユニット15がアッパー13と結合される前に、アッパー13の下方の端部が、アッパー底35によって閉鎖される。アッパー底35には、後に図4と5に関連してさらに説明するように、アッパー底機能層37が設けられている。このアッパー底機能層37は、たとえば、少なくとも水密であり、好ましくは水蒸気透過性でもある、膜を有している。
【0089】
図2は、ソールユニット15を下から斜視図で示しているが、図3においてソールユニット15は、上から斜視図で示されている。図3が示すように、支持体層25の、アウトソール29とは逆の上側において、その中央領域25bとその前足領域25c内に、繊維層39として形成されたバリア層の複数の片39a、39b、39cおよび39dが設けられている。これらの繊維層片39a、39bおよび39cによって、図3では見えない支持体25の切欠き27が、覆われている。図3には、ソールユニット15のかかと領域内と前足領域内で支持体層25の上側に配置された踏みだし緩衝層部分4131aと4131bも見られる。かかと領域内の踏みだし緩衝層部分4131aは、図示の実施形態において、実質的に全面的であって、前足領域内の踏みだし緩衝層部分4131bには、繊維層片39b、39cおよび39dが設けられているところに切欠きが設けられている。繊維層片39aから39dは、図3では見ることのできない、安定化ウェブ33の上方に配置されている。図3に示す実施形態において、支持体層25は、それぞれ付属の支持体層25の切欠き27を包囲し、かつそれぞれ付属の繊維層片のための縁取りとして用いられる、境界端縁43a、43bおよび43cを有している。
【0090】
アウトソール29のアウトソール部分、支持体層25および踏みだし緩衝層部分4131aと4131bは、ソールユニット15を形成する靴ソール複合体の下方で異なる機能を有しているので、それらは好ましくは異なる材料によって構成される。良好な耐摩耗性を有し、かつ踏みだし安全性を提供するアウトソール部分は、たとえばアウトソール材料として適した熱可塑性ポリウレタン(TPU)またはゴムからなる。靴のユーザーのために、歩行運動の際の衝突緩衝をもたらす、踏みだし緩衝層部分4131aと4131bは、それに応じて弾性的に撓む材料、たとえばエチレン−ビニル−アセテート(AVA)またはポリウレタン(PU)からなる。つながり合わないアウトソール部分29a、29b、29cのため、と同様につながり合わない踏み出し緩衝層部分4131a、4131bのためには支持体層として、ソールユニット15全体のためには安定化部材として用いられ、かつ適切な弾性的強度を有する安定化層25は、たとえば少なくとも1つのサーモプラストからなる。
【0091】
繊維層片39a、39bと39cと39dは、一方で、アッパー底35に設けられたアッパー底機能層37のための機械的な保護として用いられる。支持体層25の切欠き27を貫通してアッパー底機能層37へ達してそれを傷つけるおそれのある、たとえば小石のような小片は、アッパー底機能層37を保護するために、繊維層片によって遠ざけられる。本発明に基づく靴類の実施形態において、繊維層片39a、39bおよび39c、39cと39dは、付加的に安定化させる機能を有している。この目的のために、繊維層片39a、39bおよび39c、39cと39dは、溶融温度が異なり、それに応じて軟化温度が異なる少なくとも2つの繊維成分を有する、すでに説明した種類の、熱的な方法で機械的に硬化される繊維材料からなる。異なる溶融温度を有する2つの繊維成分の割合の比率を選択することにより、かつ2つの繊維成分の加熱とそれに伴う軟化の程度によって、繊維層の熱的な硬化と繊維層の水蒸気透過性を所望に調節することができる。繊維層39ないし繊維層片39a、39b、39cおよび39dは、その熱的な硬化に基づいて、ソールユニット15のための安定化部材として用いることができる。
【0092】
このようなものとしての繊維層39は、すでに特許文献7から知られている。従って、繊維層片39a、39bおよび39c、39cと39dからなる繊維層39に関して、かつ特に材料選択と材料組成に関しても、形成と熱的能動化に関しても、さらに詳しいことは、ここでは詳細に記載されず、特許文献7かた読み取ることができる。同じことが、アウトソール29、踏みだし緩衝層31および支持体層25に関する、たとえば構造、形状および使用される材料に関する詳細についても当てはまり、それらは同様に特許文献7から読み取ることができる。
【0093】
すでに述べたように、実際の実施形態において使用される繊維層材料は、より低い溶融温度を有する第2の繊維成分のために使用される材料が、着色のためにこの繊維成分の溶融温度を上回る温度を必要とするので、着色されない、という欠点を有している。従ってこの繊維材料においては、場合によって、より高い溶融温度を有する繊維成分は着色されるが、より低い溶融温度を有する第2の繊維成分は、白いままである。従って、すでに説明したように、繊維層のための視覚的および美的形成可能性には、極めて狭い限界が設定される。
【0094】
この問題に、本発明に基づく装飾層45によって対処され、その装飾層は、図1と2においては、切欠き27に見える格子として、以下で説明する図4と5においてはそれぞれ四角い点の列として示されている。図1と2に示すソールユニット15の実施形態において、複数の装飾層45が設けられており、それらはそれぞれ安定化層25の切欠き27の1つに対応づけられており、かつそれぞれ、図3に示す繊維層片39a、30b、39cおよび39dに従って、それぞれ付属の切欠き27の寸法を有している。このようにして、それぞれの切欠き27を通して見える、これらの繊維層片39a、39b、39cおよび39dの各々の下側は、付属の装飾層45によって覆い隠されて、従って見えなくされている。装飾層45のために、ほぼ任意の材料が、一方で着色されており、あるいは着色可能であって、他方で水蒸気透過性である限りにおいて、使用することができるので、装飾層45の所望の着色とパターン付与に限界は設定されない。
【0095】
図4と5には、本発明に基づく靴類の2つの実施形態が、図2に示す形成段階において、図4の場合にはアッパー13に接着されたソールユニット15を有する靴類に関して、図5の場合においては、アッパー13に射出形成されたソールユニット15を有する靴類に関して、断面で示されている。2つの図は、その図式的かつ寸法と縮尺に関して必ずしも実際的でない表示において、たとえば、靴11のアッパー13の前足領域を断面で示している。その場合にアッパー13についてはアッパー底35と左のアッパー部分のみが示されており、その場合に示されていない右のアッパー部分は、図示されているアッパー部分と鏡対称で一致している。
【0096】
図4と5に示す2つの実施形態において、アッパー13は、上材料層47、アッパー機能層49および裏地層51を有している。2つの実施形態において、ソール側の下方のアッパー端部55は、多層のアッパー底35によって閉鎖されており、そのアッパー底がアッパー底機能層37を有している。2つの実施形態において、アッパー機能層49とアッパー底機能層37は、互いに水密に結合されており、それにより、周囲が水密で、かつ水密であるだけでなく水蒸気透過性でもある機能層を使用する場合には、周囲が水蒸気透過性の靴が得られる。そして、2つの実施形態において、ソールユニット15は、図1から3に関連してすでに説明した2つのコンポーネント、すなわちアウトソール29と支持体層25を有している。両方の場合において、上述したソール層を通って延びる大面積の切欠き27は、繊維層39によって覆われており、その下に装飾層45が配置されている。
図4と5の2つの実施形態は、そのソールユニット15の層、そのアッパー底35の構造、アッパー13にソールユニット15を固定するやり方およびアッパー機能層49とアッパー底機能層37の間のシールのやり方に関して、異なっている。
【0097】
図4に示す実施形態において、ソールユニット15は、アウトソール29と支持体層25に加えて、踏みだし緩衝層31を有しており、アッパー底35は、しばしばインソールとも称される、マウンティングソール53を有しており、そのマウンティングソールがストローベル縫目57によってソール側の下方のアッパー端部55と結合されている。マウンティングソール53の下方に、アッパー底機能層ラミネート59、図示の実施形態においては、下方の機能層支持体層61と上方の機能層支持体層63の間に埋め込まれたアッパー底機能層37を有する、3層ラミネート、が設けられている。2つの機能層支持体層61と63は、たとえばそれぞれテキスタイル層からなる。上方のテキスタイル層63は、液状のシール材料65が浸入することができるように形成されており、そのシール材料は、アッパー機能層49とアッパー底機能層37との間に水密のシールを形成するために、アッパー機能層49のソール側の下方の端部の下側と、アッパー底機能層37の周端縁の上側との間に配置されている。図4に示すように、アッパー上材料47のソール側の下方の端部は、アッパー機能層49のソール側の下方の端部から持ち上がっており、ソール接着剤67によってアッパー底機能層ラミネート59の下側と接着されている。ソールユニット15は、前もって形成されて、少なくともソールユニット5の周端縁ゾーンの上側に塗布されているソール接着剤67によって、ソール側の下方のアッパー端部55に固定される。
【0098】
図5に示す、アッパー13に射出形成されたソールユニット15を有する実施形態において、ソールユニット15は、踏みだし緩衝層31を有していない。アッパー底35は、マウンティングソールラミネート69によって形成されており、それは、同様に3層ラミネートであって、その外側層、図示の実施形態においては上方の外側層63は、このマウンティングソールラミネート69が下方のアッパー端部55を閉鎖するためのマウンティングソールまたはインソールの機能を引き受けることができるように、安定した硬い材料からなる。この実施形態において、アッパー機能層49とアッパー裏地51は、ソール側の端部に、アッパー上材料47を越える張出しを有している。この張出しは、射出する際に液状のアウトソール材料を透過する、ネットバンド71によって覆われている。ネットバンド71は、一方の側においてアッパー上材料47のみと結合されているが、アッパー機能層49とは結合されておらず、他の側においてはストローベル縫目57を介してアッパー機能層49およびアッパー裏地51とも、マウンティングソールラミネート69とも結合されている。この実施形態のソールユニット15は、繊維層39と装飾層45を有する支持体層25の他には、アウトソール層29のみを有しており、その中へ、繊維層39と装飾層45を有する支持体層25が、アウトソール層29を射出形成する工程において、図5に示すように埋め込まれる。アッパー13にアウトソール層29を射出形成する場合に、液状のアウトソール材料が、一方で、ネットバンド71を通してアッパー機能層49のソール側の下方端部の張出しとストローベル縫目47へ浸入し、他方では、マウンティングソールラミネート69の周端縁領域の下側へ達して、そこでその下方のテキスタイル層を通り抜けて、そこでアッパー底機能層37へ達することができる。このようにして、アウトソール材料によって、アッパー機能層49とアッパー底機能層37の間の移行部がシールされる。
【0099】
図4と5に示す2つの実施形態において、支持体層25は、好ましくは射出工程によって形成される。その場合に装飾層45と繊維層39は、射出工程前に射出型内へ挿入することができる。射出工程の間に、支持体層25の材料が装飾層45の外周面領域を通って繊維層39の外周面領域内へ達するので、支持体層25、装飾層45および繊維層39が、射出工程によって互いに固定される。
【0100】
図4と5に示す実施形態の変形例において、繊維層39と装飾層45は、ソールユニット15と結合される前に、互いに1つの構成ユニットに合体される。この構成ユニットは、挿入片を形成することができ、その挿入片は、ソールユニット15の残りのコンポーネントとは別に形成されて、ソールユニット15を形成する際に挿入される。この挿入は、装飾層45と繊維層29からなる構成ユニットが有するソール層内で行われる。
【0101】
図に示す実施形態において、この挿入片は、支持体25内へ挿入される。装飾層45と繊維層39を有するソール層が支持体層によって形成されるのではなく、たとえばアウトソールまたは支持体層とは異なる種類の中間ソールによって形成される、図示されない他の実施形態においては、挿入片は、それに応じたソール層内へ挿入される。すなわち、挿入片は、別に形成されて、その後それぞれ特殊なソールユニット15の構造および/または所望の外見に応じて、適切なソール層内へ挿入される。視覚的に異なる装飾層45を有する挿入片をストックしておいて、それぞれそれがどの靴タイプ用に定められているかに従って、然るべく選択された挿入片をソールユニット15内へ挿入することができる。
【0102】
図5に示す実施形態において、支持体層25の切欠き27の内部に、安定化ウェブの少なくとも1つが、支持ウェブ73として形成されている。この目的のために、支持ウェブ73は、アウトソール層29の接地面75まで達し、従って靴で走行する場合にアウトソール層29と同様に地面77に支持されるように、形成されている。従って、図5に示す支持ウェブ73によって、走行する際も、ソールユニット15の特に良好な安定性が得られる。
【0103】
この種の支持ウェブは、図4に示す実施形態においては、少なくともそこに示す断面平面内では、支持体層25の透孔27内には設けられていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴類(11)のための水蒸気を透過し、かつ水を透過するソールユニット(15)であって、
その厚みを通して延びる少なくとも1つの大面積の切欠き(27)を備えた、少なくとも1つのソール層(25)と、
互いに重ねて配置された、それぞれ1片または複数片の、少なくとも2つの面形成物とを有し、
前記面形成物が、少なくとも1つの切欠き(27)を閉鎖し、かつ前記面形成物のうちの第1の面形成物が、テキスタイルの水蒸気透過性のバリア層(39)を有し、第2の面形成物が水蒸気透過性の装飾層(45)を有しており、前記装飾層が、第1の面形成物の下方において少なくとも、少なくとも1つの切欠き(27)の領域内に配置されており、かつ少なくとも1つの切欠き(27)内でソール層(25)の下側から見ることができる、ソールユニット。
【請求項2】
前記装飾層(45)が、着色された材料、あるいは少なくとも1つの顔料を有する材料、を有している、請求項1に記載のソールユニット(15)。
【請求項3】
前記装飾層(45)が、基層と基層の表面を覆うコーティングとを有しており、コーティングが、着色された材料、あるいは少なくとも1つの顔料を有する材料、を有している、請求項1または2に記載のソールユニット(15)。
【請求項4】
前記装飾層(45)が、端縁領域内でのみバリア層(39)と、特に歩行運動の際にバリア層(39)に対する装飾層(45)の相対移動が可能であるように、結合されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のソールユニット。
【請求項5】
前記装飾層(45)が、汚れをはじく材料によって形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載のソールユニット。
【請求項6】
前記装飾層(45)の材料が、格子状、ネット形状、多孔性または穿孔された面材料の材料グループから選択されている、請求項1から5のいずれか1項に記載のソールユニット。
【請求項7】
前記装飾層(45)の材料が、金属、プラスチック、テキスタイル、皮革またはその組合せの材料グループから選択されている、請求項1から6のいずれか1項に記載のソールユニット。
【請求項8】
前記装飾層(45)が、単繊条繊維によって形成されている、請求項7に記載のソールユニット。
【請求項9】
前記装飾層(45)が、糸によって形成されており、前記糸が、シリコーンあるいは実質的に無色のシリコーン状の材料によって、この装飾層のネット開口部ないし格子開口部が開放したままとなり、従って水蒸気透過性を有したままであるように、被覆されている、請求項7に記載のソールユニット。
【請求項10】
前記装飾層(45)が、糸によって形成されており、前記糸がシリコーンまたは実質的に無色のシリコーン状の材料によって次のように、すなわち他の場合には汚す物質が浸入することができる、糸内に発生する毛管領域が閉鎖されているように、含浸されている、請求項7に記載のソールユニット。
【請求項11】
前記装飾層(45)が、全て金属からなる、請求項7に記載のソールユニット。
【請求項12】
前記装飾層(45)が、金属化されたプラスチック格子によって形成されている、請求項1から11のいずれか1項に記載のソールユニット。
【請求項13】
大面積の切欠き(27)が、少なくとも1つの安定化ウェブによって、少なくとも部分的に横断されている、請求項1から12のいずれか1項に記載のソールユニット。
【請求項14】
前記装飾層(45)が、周側の端縁領域内で、かつ/または少なくとも1つの安定化ウェブによって形成される端縁領域内でのみ、バリア層(39)と結合されている、請求項13に記載のソールユニット。
【請求項15】
前記バリア層(39)が、大面積の切欠き(27)を通して侵入する異物が第1の面形成物の上方に位置する、ソールユニットのコンポーネントへ達することに対する保護として形成されている、請求項1から14のいずれか1項に記載のソールユニット。
【請求項16】
前記バリア層(39)が、たとえば釘のような突き刺さる異物に対する保護として、突刺し強く形成されている、請求項16に記載のソールユニット。
【請求項17】
前記バリア層(39)が、靴ソール複合体を安定化させる材料によって形成されている、請求項1から16のいずれか1項に記載のソールユニット。
【請求項18】
前記バリア層(39)が、その溶融温度に関して異なる、少なくとも2つの繊維成分を有しており、
第1の繊維成分の少なくとも一部が、第1の溶融温度とその下にある第1の軟化温度領域とを有し、第2の繊維成分の少なくとも一部が、第2の溶融温度とその下にある第2の軟化温度領域とを有しており、かつ第1の溶融温度と第1の軟化温度領域が、第2の溶融温度と第2の軟化温度領域よりも高く、かつ
バリア層(39)が、第2の軟化温度領域内にある接着剤軟化温度による第2の繊維成分の熱的な能動化によって、熱的なやり方で硬化された領域内の水蒸気透過性を維持しながら、熱的なやり方で機械的に硬化されている、請求項1から18のいずれか1項に記載のソールユニット。
【請求項19】
前記第2の繊維成分の第2の軟化温度領域が、第2の繊維成分の着色のために必要な温度の下にある、請求項18に記載のソールユニット。
【請求項20】
前記バリア層(39)が、3.000g/m2・24hから20.000g/m2・24hの領域内、特に8.000g/m2・24hから15.000g/m2・24hの領域内、かつ特に12.588g/m2・24hの水蒸気透過性を有している、請求項1から19のいずれか1項に記載のソールユニット。
【請求項21】
前記装飾層(45)が、10.000g/m2・24hから50.000g/m2・24hの領域内、特に20.000g/m2・24hから30.000g/m2・24hの領域内の、特に26.000g/m2・24hの水蒸気透過性を有している、請求項1から20のいずれか1項に記載のソールユニット。
【請求項22】
1.000g/m2・24hから20.000g/m2・24hの領域内、特に6.000g/m2・24hから12.000g/m2・24hの領域内、かつ特に9.337g/m2・24hの水蒸気透過性を有している、請求項1から21のいずれか1項に記載のソールユニット。
【請求項23】
前記ソール層(25)が、射出可能な材料からなる、請求項1から22のいずれか1項に記載のソールユニット(15)。
【請求項24】
前記ソール層(25)が、バリア層(39)と装飾層(45)に次のように、すなわちバリア層(39)と装飾層(45)がソール層材料を介してソール層(25)と結合されるように、射出形成されている、請求項23に記載のソールユニット(15)。
【請求項25】
前記バリア層(39)と装飾層(45)が、ソール層材料によって互いに結合されている、請求項23または24に記載のソールユニット(15)。
【請求項26】
前記バリア層(39)と装飾層(45)が、ソール底材料によって貫通されている、請求項23から25のいずれか1項に記載のソールユニット(15)。
【請求項27】
前記ソール層(25)が、ソールユニット(15)のアウトソール(29)を形成している、請求項1から26のいずれか1項に記載のソールユニット(15)。
【請求項28】
前記ソール層(25)が、ソールユニット(15)の中間ソールを形成している、請求項1から27のいずれか1項に記載のソールユニット(15)。
【請求項29】
前記バリア層(39)と装飾層(45)が、挿入片として使用可能な構成ユニットになるように結合されている、請求項1から28のいずれか1項に記載のソールユニット(15)
【請求項30】
請求項1から29のいずれか1項に記載のソールユニット(15)と、ソール側のアッパー底領域(55)内に水密かつ水蒸気透過性のアッパー底機能層(37)を備えたアッパー(13)とを有する靴類(11)であって、その場合にソールユニット(15)がアッパー底領域(55)に次のように、すなわちアッパー底機能層(37)が少なくとも、少なくとも1つの切欠き(27)の領域内でバリア層(39)と結合されていないように、固定されている、靴類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−524229(P2011−524229A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513954(P2011−513954)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004442
【国際公開番号】WO2009/153054
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(391018178)ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエーツ,ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (40)
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】