説明

音声通信装置及び音声通信システム

【課題】 既存の電話機などがIPネットワークのような広帯域伝送路を利用した場合においても、音声品質的なメリットを得る。
【解決手段】 本発明の音声通信装置は、電話機と、この電話機の送話特性及び受話特性が制限している音声帯域より通信帯域が広い広帯域伝送路との間に介在する音声通信装置に関する。そして、電話機からの送話信号の周波数特性を補正する送信系周波数特性補正手段と、電話機への受話信号の周波数特性を補正する受信系周波数特性補正手段と、電話機の送話特性及び又は受話特性を測定し、測定結果に応じて、送信系周波数特性補正手段及び受信系周波数特性補正手段の補正周波数特性を可変設定させる補正周波数特性設定手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音声通信装置及び音声通信システムに関し、例えば、電話機に組み込まれる音声通信装置又は電話機を収容している音声通信装置や、その音声通信装置を要素とする音声通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット等のIPネットワークを利用した音声通信(VoIP)が盛んになってきた。このようなIPネットワークを利用した音声通信においても、4kHzに帯域制限された音声信号(いわゆる電話帯域の信号)を伝送することが行われていた。
【0003】
これは、有線伝送路(一般の公衆電話網)においては、4kHz以上の音声信号を入力してはいけない、という制限からきている。しかし、IPネットワークでは、このような制限はなく、広帯域(4kHz以上の帯域を有する信号)による音声通信が可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、IPネットワーク用の電話機(IP専用電話機)ではない既存の通常の電話機においては、送話器(マイクロフォン)が捕捉した広帯域の信号を、図2に示すように、4kHz以下に帯域制限する送話特性(例えば帯域フィルタによる)を有しており、また、伝送路からの受信信号を、図2に示すように、4kHz以下に帯域制限して受話器(スピーカ)から発音させる受話特性(例えば帯域フィルタによる)も有している。そのため、伝送路がIPネットワークのように4kHz以上の帯域信号を許容していても、伝送路が一般の公衆電話網の場合と同程度の音声通信品質しか達成することができない。
【0005】
従って、IPネットワークを利用して、広帯域信号での高品質通信を実現するためには、電話機自体も広帯域の送話特性及び受話特性を有する必要がある。
【0006】
しかしながら、世の中に出回っている既存の多くの電話機は、上述のように、4kHz以下に帯域制限する送話特性及び受話特性を有しており、広帯域信号を許容しているIPネットワークのような伝送路を介在させた音声品質的なメリットを享受することができない。
【0007】
そのため、既存の電話機などが広帯域信号を許容しているIPネットワークのような伝送路を利用した場合においても、音声品質的なメリットを得ることができる音声通信装置や音声通信システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明の音声通信装置は、(1)電話機と、この電話機の送話特性及び受話特性が制限している音声帯域より通信帯域が広い広帯域伝送路との間に介在する音声通信装置であって、(2)上記電話機からの送話信号の周波数特性を補正する送信系周波数特性補正手段と、(3)上記電話機への受話信号の周波数特性を補正する受信系周波数特性補正手段と、(4)上記電話機の送話特性及び又は受話特性を測定し、測定結果に応じて、上記送信系周波数特性補正手段及び上記受信系周波数特性補正手段の補正周波数特性を可変設定させる補正周波数特性設定手段とを有することを特徴とする。
【0009】
第2の本発明は、通話相手の2個の電話機が、上記各電話機の送話特性及び受話特性が制限している音声帯域より通信帯域が広い広帯域伝送路を介して接続する音声通信システムにおいて、上記各電話機が、第1の本発明の音声通信装置を介して上記広帯域伝送路に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、既存の電話機などが広帯域伝送路を利用した場合においても、音声品質的なメリットを得ることができる音声通信装置や音声通信システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態の音声通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】一般電話機の送話特性及び受話特性を示す説明図である。
【図3】第1の実施形態の音声通信装置の要部構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態の送信F特補正部の機能の説明図である。
【図5】第1の実施形態の受信F特補正部の機能の説明図である。
【図6】第1の実施形態の動作説明に供する入力音声信号の周波数特性例を示す説明図である。
【図7】第2の実施形態の送信F特補正部の構成を示すブロック図である。
【図8】図7の各補正フィルタの補正周波数特性を示す説明図である。
【図9】第3の実施形態の音声通信装置の要部構成を示すブロック図である。
【図10】第4の実施形態の音声通信装置の要部構成を示すブロック図である。
【図11】第5の実施形態の音声通信装置の要部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による音声通信装置及び音声通信システムの第1の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0013】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、この第1の実施形態の音声通信システム1の構成を示すブロック図である。
【0014】
図1において、第1の実施形態の音声通信システム1は、IPネットワーク2を介して、2個のエンドノード間の通信を実行するものである。
【0015】
各エンドノードは、第1の実施形態の音声通信装置10、20と、この音声通信装置10、20に収容されている電話機11、12とを有する。なお、電話機11、12は、一般の公衆電話網で帯域制限されている音声帯域の信号を送出するものであれば、ファクシミリ装置などであっても良い。
【0016】
第1の実施形態の場合、各電話機11、12はそれぞれ、4kHz以下に帯域制限する送話特性や受話特性を有する既存の電話機である。そのため、内部構成の図示は省略しており、各部の機能説明は省略する。
【0017】
各音声通信装置10、20は、IPネットワーク2による広帯域通信に対応できるように音声信号を処理するものであり、図3(A)に示す送信系の特徴構成と、図3(B)に示す受信系の特徴構成を備えている。
【0018】
各音声通信装置10、20における送信系の特徴構成は、送信F特補正部31及び音声−IPパケット変換部32を有する。
【0019】
送信F特補正部31は、例えば、アナログフィルタ又はデジタルフィルタで構成されており、対応する電話機11、12から出力されたIPネットワーク2へ向けた音声信号(ファクシミリ信号等の音声以外の信号を含むものとする)の周波数特性(F特)を、予め定められた音声帯域の全体に渡ってフラットにする補正を行うものである。例えば、電話機11、12から出力された、一般の公衆電話網を考慮して帯域制限されている図4(A)に示すような音声信号の周波数特性を、それで制限されている帯域の利得を増大させて、図4(B)に示すように制限分を元に戻すものである。なお、図4(C)は、送信F特補正部31による補正周波数特性を示している。図4では、音声帯域として0〜8000Hzをフラットにした例を示したが、これに限定されるものではない。また、完全なるフラットに限定されず、多少の歪みを持っていても良い。
【0020】
ここで、音声通信装置10、20に接続される電話機11、12の機種などが固定ではないので、送信F特補正部31として補正周波数特性を可変できるものを適用し、音声通信装置10、20の設置工事者等が操作子等を操作して補正周波数特性を調整できるようにしたものが好ましい(第2の実施形態参照)。
【0021】
音声−IPパケット変換部32は、送信F特補正部31から出力された周波数特性の補正後の音声信号から、IPネットワーク2に送出し得るIPパケットを組み立てるものである。
【0022】
また、各音声通信装置10、20における受信系の特徴構成は、IPパケット−音声変換部41及び受信F特補正部42を有する。
【0023】
IPパケット−音声変換部41は、IPネットワーク2側から到来したIPパケットを分解して音声信号を復元するものである。復元された音声信号の周波数特性は、送信F特補正部31による補正処理を経たものであるので、送信F特補正部31から出力された音声信号の周波数特性と同様なものである。
【0024】
受信F特補正部42は、例えば、アナログフィルタで構成されており、対応する電話機11、12が有する受話特性を考慮し、受話特性で減衰される帯域成分を予め持ち上げる補正を行うものである。例えば、電話機11、12の受話特性が、一般の公衆電話網が考慮されて図5(A)に示すような場合に、IPパケット−音声変換部41からの音声信号の周波数特性(上述した図4(B)参照)を、受話特性で減衰される帯域成分について予め持ち上げて図5(B)に示すような周波数特性を有する音声信号に補正するものである。なお、図5(C)は、受信F特補正部42による補正周波数特性を示している。図5では、0〜8000Hzの周波数範囲を補正する例を示したが、補正周波数範囲はこれに限定されるものではない。
【0025】
ここでも、音声通信装置10、20に接続される電話機11、12の機種などが固定ではないので、受信F特補正部42として補正周波数特性を可変できるものを適用し、音声通信装置10、20の設置工事者等が操作子等を操作して補正周波数特性を調整できるようにしたものが好ましい(第2の実施形態参照)。
【0026】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態の音声通信システム1の動作を説明する。以下では、電話機11が音声信号の送信側の電話機であり、電話機12が音声信号の受信側の電話機であるとして説明を行う。
【0027】
電話機11の利用者が発音した音声は、電話機11の送話器11Sで捕捉されて電気信号(音声信号)に変換され、その音声信号は、電話機本体11Bによって、一般の公衆電話網が考慮されて帯域制限される。以下では、送話器11Sからの音声信号の周波数特性が、図6に示すように、音声帯域全体を通してフラットであるとして説明する。ここで、音声帯域全体を通してフラットであるとは、例えば、8kHz以下で周波数特性が平坦であることを言う。
【0028】
この場合、電話機本体11Bによって帯域制限された後の音声信号は、上述した図4(A)に示すように、低域(300Hz以下)や高域(3400Hz以上)が減衰されたものである。
【0029】
このような帯域制限された音声信号が与えられた、音声通信装置10の送信F特補正部31は、自己が有する補正周波数特性(図4(C)参照)によって、入力された音声信号の周波数特性を補正し、図4(B)に示すように、音声帯域の全体に渡ってフラットになった周波数特性を有する音声信号を出力する。
【0030】
送信F特補正部31から出力された周波数特性の補正後の音声信号は、音声−IPパケット変換部32によって、IPパケットに変換されて、IPネットワーク2に送出される。
【0031】
IPネットワーク2側からIPパケットが入力された音声通信装置20のIPパケット−音声変換部41は、IPパケットを分解して音声信号を復元し、復元された音声信号が受信F特補正部42に与えられる。
【0032】
復元された音声信号は、図4(B)に示すのと同様な周波数特性を有するが、図5(C)に示す補正周波数特性を有する受信F特補正部42によって、受話特性で減衰される帯域成分について予め持ち上げて図5(B)に示すような周波数特性を有する音声信号に変換されて電話機12に与えられる。
【0033】
電話機本体12Bは、入力された音声信号における低域及び高域を、その受話特性で減衰させるが、受信F特補正部42によって減衰帯域が予め持ち上げられているため、減衰後の音声信号は、送信側の電話機11が捕捉した音声信号の周波数特性(図6参照)と同様となり、その音声信号が受話器12Rから発音出力される。
【0034】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、一般公衆網対応の電話機によって、広帯域の伝送路(IPネットワーク)を介した音声通信を行っても、音声通信装置が有する周波数特性の補正機能により、広帯域の音声信号での通信を行うことができ、音声品質を高めることができる。
【0035】
(B)第2の実施形態
次に、本発明による音声通信装置及び音声通信システムの第2の実施形態を図面を参照しながら簡単に説明する。
【0036】
第2の実施形態の音声通信装置のシステム上の介挿位置は、第1の実施形態に係る図1と同様である。
【0037】
第2の実施形態の場合、音声通信装置10、20における送信F特補正部31及び受信F特補正部42が、第1の実施形態と異なっている。
【0038】
図7は、第2の実施形態における送信F特補正部31の詳細構成を示すブロック図である。なお、受信F特補正部42の詳細構成も、送信F特補正部31の詳細構成と同様である。
【0039】
第2の実施形態の送信F特補正部31は、複数個(図7のものは3個)の補正フィルタ31−1、31−2及び31−3と、これら複数個の補正フィルタ31−1、31−2及び31−3の中から1個を選択する選択スイッチ31Sとを有する。
【0040】
各補正フィルタ31−1、31−2、31−3はそれぞれ、電話機11、12の送話特性に応じた補正周波数特性が図8(A)〜(C)に示すように異なるものである。
【0041】
選択スイッチ31Sは、外部からの選択信号に応じて、1個の補正フィルタ31−1、31−2又は31−3を有効とするものである。なお、選択スイッチ31Sは、補正フィルタ31−1、31−2、31−3の入力側に設けられていても良く、また、出力側に設けられていても良く、さらに、入力側及び出力側の双方に設けられていても良い。
【0042】
選択スイッチ31Sへの選択信号は、利用者や音声通信装置10、20の設置工事者等の操作に基づくものであっても良く、装置が自動的に生成するものであっても良く(第3〜第5の実施形態参照)、さらには、外部装置から取り込むものであっても良い。外部装置から取り込む場合としては、例えば、IPネットワーク2上のサーバに、電話機種類と補正周波数特性との対応関係の情報を記憶しておき、電話機のPBボタンなどを利用して電話機種類を入力してサーバから選択信号を得る場合を挙げることができる。
【0043】
例えば、利用者や音声通信装置10、20の設置工事者等は、電話機11、12に音声通信装置10、20を接続する際には、各補正フィルタを選択した通話実験等を行い、最適な補正フィルタを決定して、音声通信装置10、20に決定した最適な補正フィルタを設定させる。
【0044】
これ以降の通話時の動作は、上述した第1の実施形態の場合と同様であり、その説明は省略する。
【0045】
以上のように、第2の実施形態によっても、第1の実施形態と同様な効果を奏することができると共に、これに加え、音声通信装置に接続された電話機の種類に応じて補正周波数特性を選択できるので、一段と通話品質を高めることができるという効果をも奏する。
【0046】
(C)第3の実施形態
次に、本発明による音声通信装置及び音声通信システムの第3の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0047】
第3の実施形態の音声通信装置のシステム上の介挿位置は、第1の実施形態に係る図1と同様である。
【0048】
第3の実施形態の場合、音声通信装置の内部の特徴構成が第1の実施形態と異なっており、その特徴構成を図9に示している。なお、図9において、第1の実施形態に係る図3との同一、対応部分には同一符号を付して示している。
【0049】
第3の実施形態の音声通信装置10、20は、送信F特補正部31、音声−IPパケット変換部32、IPパケット−音声変換部41及び受信F特補正部42に加え、4個のスイッチ51A〜51Dと、周波数分析部52、ホワイトノイズ発生器53及び動作モード制御部54を有する。なお、この第3の実施形態の送信F特補正部31及び受信F特補正部42は、補正周波数特性を可変し得るものである。
【0050】
この第3の実施形態の場合、動作モードとして、通常モードと、補正周波数特性を設定するF特設定モードとがある。
【0051】
動作モード制御部54は、F特設定モードが指示されたときに(又は、例えば、電話機11、12と音声通信装置10、20との初期接続を自動検知したときに)、送信F特補正部31や受信F特補正部42の補正周波数特性を自動設定させるように各部を動作させるものである。
【0052】
4個のスイッチ51A〜51Dは、通常モードとF特設定モードとで信号経路を切り換えるためのものである。
【0053】
周波数分析部52は、例えば、FFT部で構成されており、F特設定モードで機能するものである。周波数分析部52は、接続されている電話機11又は12から与えられた信号の周波数特性を検出するために使用される。
【0054】
ホワイトノイズ発生器53は、音声帯域の全域で見た場合のホワイトノイズを発生するものであり、F特設定モードで機能するものである。
【0055】
次に、F特設定モードでの音声通信装置10、20の動作を説明する。なお、図9では、電話機を省略しているが、電話機についても図1での符号を用いて説明する。
【0056】
F特設定モードが指示されたときにはまず、動作モード制御部54は、スイッチ51A〜51Dをa端子に接続させた後、周波数分析部52を起動させる。
【0057】
このとき、当該音声通信装置10、20に接続されている電話機11、12の送話器11S、12Sが捕捉した背景雑音(この第3の実施形態ではホワイトノイズと仮定している)の信号に対し、電話機本体11B、12Bの送話特性が反映された信号が周波数分析部52に入力される。これにより、周波数分析部52は、電話機11、12の送話特性を検出し、その送話特性に応じた補正周波数特性を送信F特補正部31に設定させる。
【0058】
例えば、送信F特補正部31が第2の実施形態の構成のものである場合において、測定された送話特性が、低域(300Hz以下)や高域(3400Hz以上)での減衰量が小さいものであれば、図7における補正フィルタ31−3を選択させる。また、送信F特補正部31として、周波数別に特性を変えることができるデジタルフィールドが適用されている場合であれば、測定された送話特性の逆特性を実現するように送信F特補正部31のF特を設定させる。
【0059】
次に、動作モード制御部54は、スイッチ51A及び51Bをb端子、スイッチ51Cをa端子に接続させ、スイッチ51Dをc端子に接続させた後、周波数分析部52及びホワイトノイズ発生器53を起動させる。
【0060】
このとき、ホワイトノイズ発生器53はホワイトノイズを発生し、発生されたホワイトノイズは電話機本体11B、12Bでの受話特性の影響を受けた後、受話器11R、12Rから発音される。この発音出力は、送話器11S、12Sによって捕捉され、電話機本体11B、12Bの送話特性が反映された後、送信F特補正部31を介して周波数分析部52に入力される。
【0061】
送信F特補正部31の補正周波数特性は送話特性の帯域制限を回復するように設定されているので、このとき、周波数分析部52に入力された信号は、ホワイトノイズに対して電話機11、12の受話特性だけが反映されたものと見なすことができる。周波数分析部52は、電話機11、12の受話特性を検出し、その受話特性に応じた補正周波数特性を受信F特補正部42に設定させる。
【0062】
以上のような処理が終了すると、動作モード制御部54は、全てのスイッチ51A〜51Dをb端子に接続させて通常モードに移行させる。
【0063】
以上のように、第3の実施形態によっても、第1の実施形態と同様な効果を奏することができると共に、これに加え、音声通信装置に接続された電話機の送話特性及び受話特性を測定して補正周波数特性を設定できるので、1台1台の電話機に合わせた補正周波数特性を設定できて一段と通話品質を高めることができるという効果をも奏する。
【0064】
(D)第4の実施形態
次に、本発明による音声通信装置及び音声通信システムの第4の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0065】
図10は、第4の実施形態の音声通信装置の内部特徴構成を示すブロック図であり、第3の実施形態に係る図9との同一、対応部分には同一符号を付して示している。第4の実施形態の音声通信装置は、第3の実施形態におけるスイッチ51Dと、ホワイトノイズ発生器53とが省略されている。
【0066】
第4の実施形態の音声通信装置10、20は、電話機11、12が有する送話特性及び受話特性は類似しているという特質に基づいたものであり、F特設定モードでの動作が第3の実施形態と異なっている。
【0067】
F特設定モードが指示されたときにはまず、動作モード制御部54は、スイッチ51A〜51Cをa端子に接続させた後、周波数分析部52を起動させる。
【0068】
このとき、当該音声通信装置10、20に接続されている電話機11、12の送話器11S、12Sが捕捉した背景雑音(この第4の実施形態でもホワイトノイズと仮定している)の信号に対し、電話機本体11B、12Bの送話特性が反映された信号が周波数分析部52に入力される。これにより、周波数分析部52は、電話機11、12の送話特性を検出し、その送話特性に応じた送信系及び受信系の補正周波数特性を送信F特補正部31及び受信F特補正部42にそれぞれ設定させる。
【0069】
以上のような処理が終了すると、動作モード制御部54は、全てのスイッチ51A〜51Cをb端子に接続させて通常モードに移行させる。
【0070】
以上のように、第4の実施形態によれば、第3の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0071】
(E)第5の実施形態
次に、本発明による音声通信装置及び音声通信システムの第5の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0072】
図11は、第5の実施形態の音声通信装置の内部特徴構成を示すブロック図であり、第3の実施形態に係る図9との同一、対応部分には同一符号を付して示している。
【0073】
第5の実施形態の音声通信装置は、音声通信装置本体10A、20Aと、F特測定時用付属装置10B、20Bとでなる。
【0074】
F特測定時用付属装置10B、20Bは、F特設定モードでのみ機能するものであり、設置作業者などによって、F特設定モード時にだけ、音声通信装置本体10A、20Aに接続されるものであっても良く、常時、音声通信装置本体10A、20Aに接続され、かつ、音声通信装置本体10A、20Aに収容されており、設置作業者などによって、F特設定モード時にだけ、取り出されて利用されるものであっても良い。
【0075】
F特測定時用付属装置10B、20Bは、ホワイトノイズ発生器53、スピーカ55、マイクロフォン56及びスイッチ57Aを有する。一方、音声通信装置本体10A、20Aは、F特設定用の構成要素として、周波数分析部52、動作モード制御部54及びスイッチ57B〜57Eを有する。
【0076】
次に、F特設定モードでの第5の実施形態の音声通信装置10、20の動作を説明する。
【0077】
作業者は、F特設定モードを指示する前に、F特測定時用付属装置10B、20Bのスピーカ55及びマイクロフォン56をそれぞれ、送話器11S、12S及び受話器11R、12Rに近接対向させる。例えば、F特測定時用付属装置10B、20Bの外部形状をハンドセット13を載置できる形状としておき、ハンドセット13を載置すると、自動的に近接対向するようにしておくことが好ましい。
【0078】
F特設定モードが指示されたときにはまず、動作モード制御部54は、スイッチ57A〜57Eをそれぞれ、a端子、b端子、オフ(a端子にもb端子にも接続しない状態)、a端子、オフにさせた後、ホワイトノイズ発生器53及び周波数分析部52を起動させる。
【0079】
このとき、ホワイトノイズ発生器53はホワイトノイズを発生し、このホワイトノイズはスピーカ55から発音され、当該音声通信装置10、20に接続されている電話機11、12の送話器11S、12Sによって捕捉され、電話機本体11B、12Bの送話特性が反映された信号が周波数分析部52に入力される。
【0080】
これにより、周波数分析部52は、電話機11、12の送話特性を検出し、その送話特性に応じた補正周波数特性を送信F特補正部31に設定させる。
【0081】
次に、動作モード制御部54は、スイッチ57A〜51Eをそれぞれ、b端子、オフ(a端子にもb端子にも接続しない状態)、b端子、b端子、オンにさせた後、ホワイトノイズ発生器53及び周波数分析部52を起動させる。
【0082】
このとき、ホワイトノイズ発生器53はホワイトノイズを発生し、発生されたホワイトノイズは電話機本体11B、12Bでの受話特性の影響を受けた後、受話器11R、12Rから発音される。この発音出力は、マイクロフォン56によって捕捉され、周波数分析部52に入力される。
【0083】
このとき、周波数分析部52に入力された信号は、ホワイトノイズに対して電話機11、12の受話特性だけが反映されたものである。周波数分析部52は、電話機11、12の受話特性を検出し、その受話特性に応じた補正周波数特性を受信F特補正部42に設定させる。
【0084】
以上のような処理が終了すると、動作モード制御部54は、スイッチ57A〜51Eをそれぞれ、オフ(a端子にもb端子にも接続しない状態)、a端子、a端子、オフ(a端子にもb端子にも接続しない状態)、オフにさせ、通常モードに移行させる。
【0085】
以上のように、第5の実施形態によっても、第3の実施形態と同様な効果を奏することができると共に、これに加え、送話特性も受話特性も、発生したホワイトノイズを利用して測定し、その補正周波数特性を設定できるので、より一段と通話品質を高めることができるという効果をも奏する。
【0086】
(F)他の実施形態
上記各実施形態においては、音声通信装置が電話機の送話特性及び受話特性に応じた周波数特性の補正機能と、IPネットワークとの通信機能とを有する装置として説明したが、送話特性及び受話特性に応じた周波数特性の補正機能だけを有する装置として構築しても良く、また、他の機能を有する装置として構築しても良い。後者の場合の例としては、電話機を一般公衆電話網及びIPネットワークのいずれかに切り換えて接続させるゲートウェイ装置を挙げることができ、この場合、IPネットワークに接続させるときのみ、上記特徴構成が機能するようにしても良い。
【0087】
また、上記各実施形態においては、音声通信装置が電話機と別体のものを示したが、電話機に組み込まれたものであっても良い。この場合であっても、基本的な電話機構成は従来と同様であるので、その部分の設計変更を要することなく、広帯域通信による通話品質の向上を図ることができる。なお、特許請求の範囲における音声通信装置の用語は、この場合を含むものとする。
【0088】
さらに、上記各実施形態では、送信F特補正部が、補正後の周波数特性が音声帯域全域でフラットにする補正特性を有し、受信F特補正部が、補正後の信号が受話特性の影響を受けた後で音声帯域全域でフラットにする補正特性を有するものを示したが、送信F特補正部が、補正後の周波数特性が予め定めた周波数特性を有するような補正特性を有し、受信F特補正部が、受話特性の影響を受けた後での周波数特性が予め定めた周波数特性を有するような補正特性を有していても良く、これら補正特性同士が完全に対応関係にあるものであることも要しない。
【0089】
ここでの予め定めた周波数特性は、広帯域伝送路を介した通話品質を、送話特性や受話特性だけの影響を単に受けた場合より、向上させる特性であれば良い。
【符号の説明】
【0090】
1…音声通信システム、2…IPネットワーク、10、20…音声通信装置、10A、20A…音声通信装置本体、10B、20B…F特測定時用付属装置、11、12…電話機、31…送信F特補正部、31−1〜31−3…補正フィルタ、31S、51A〜51D、57A〜57E…スイッチ、42…受信F特補正部、52…周波数分析部(FFT)、53…ホワイトノイズ発生器、54…動作モード制御部、55…スピーカ、56…マイクロフォン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話機と、この電話機の送話特性及び受話特性が制限している音声帯域より通信帯域が広い広帯域伝送路との間に介在する音声通信装置であって、
上記電話機からの送話信号の周波数特性を補正する送信系周波数特性補正手段と、
上記電話機への受話信号の周波数特性を補正する受信系周波数特性補正手段と
上記電話機の送話特性及び又は受話特性を測定し、測定結果に応じて、上記送信系周波数特性補正手段及び上記受信系周波数特性補正手段の補正周波数特性を可変設定させる補正周波数特性設定手段と
を有することを特徴とする音声通信装置。
【請求項2】
上記補正周波数特性設定手段が、上記電話機の送話特性の測定結果を、上記電話機の受話特性の測定結果とみなして利用するものであることを特徴とする請求項1に記載の音声通信装置。
【請求項3】
上記補正周波数特性設定手段が、
ホワイトノイズを発生するホワイトノイズ発生部と、
当該ホワイトノイズ発生部が発生したホワイトノイズを発音出力させると共に発音出力されたホワイトノイズを送話器が捕捉した信号を処理して送話特性を測定する送話特性測定部と、
上記ホワイトノイズ発生部が発生したホワイトノイズを受話器から発音出力させると共に、発音出力されたホワイトノイズを捕捉し処理して受話特性を測定する受話特性測定部とを有し、
測定結果に応じて、上記送信系周波数特性補正手段及び上記受信系周波数特性補正手段の補正周波数特性を設定させる
ことを特徴とする請求項1に記載の音声通信装置。
【請求項4】
上記補正周波数特性設定手段は、
ホワイトノイズを発生するホワイトノイズ発生部と、上記ホワイトノイズ発生部が発生したホワイトノイズを発音出力するホワイトノイズ出力部と、上記電話機の受話器から発音出力された音声を捕捉した信号を、当該音声通信装置に供給する信号還流部とを備える外部の測定時用装置の上記ホワイトノイズ出力部から、発音出力されたホワイトノイズを送話器が捕捉した信号を処理して送話特性を測定する送話特性測定部と、
上記測定時用装置の上記ホワイトノイズ発生部からホワイトノイズの供給を受けて、そのホワイトノイズを上記電話機の受話器から発音出力させ、発音出力されたホワイトノイズを捕捉した上記測定時用装置の上記信号還流部から供給される信号を処理して受話特性を測定する受話特性測定部とを有し、
測定結果に応じて、上記送信系周波数特性補正手段及び上記受信系周波数特性補正手段の補正周波数特性を設定させる
ことを特徴とする請求項1に記載の音声通信装置。
【請求項5】
通話相手の2個の電話機が、上記各電話機の送話特性及び受話特性が制限している音声帯域より通信帯域が広い広帯域伝送路を介して接続する音声通信システムにおいて、
上記各電話機が、請求項1〜4のいずれかに記載の音声通信装置を介して上記広帯域伝送路に接続されることを特徴とする音声通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−246139(P2010−246139A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122632(P2010−122632)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【分割の表示】特願2003−71826(P2003−71826)の分割
【原出願日】平成15年3月17日(2003.3.17)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】