食品搬送用ばんじゅう及びばんじゅう用仕切部材
【課題】搬送物の形状等に応じて高さをかさ上げすることが可能であり、且つ効率良く利用可能な食品搬送用ばんじゅうを提供することである。また、既存の食品搬送用ばんじゅうを効率良く用いることが可能なばんじゅう用仕切部材を提供することである。
【解決手段】食品搬送用ばんじゅう1は、底部2と周壁部3を有する。底部2は板体9であり、周壁部3から取り外すことができる。周壁部3は枠体5であり、枠体5の内側には所定の間隔を空けて張出部7が上下2段設けられている。下側の張出部7aは、枠体5の底面近傍に位置している。上側の張出部7bは、枠体5の略中央付近に位置している。板体9は張出部7a,7bに選択的に載置することができる。食品搬送用ばんじゅう1aの上に、枠体5のみの食品搬送用ばんじゅう1b,1cを積層すると高さXがかさ上げされて略3倍となり、高さ3Xを有する積層ばんじゅう10として機能する。
【解決手段】食品搬送用ばんじゅう1は、底部2と周壁部3を有する。底部2は板体9であり、周壁部3から取り外すことができる。周壁部3は枠体5であり、枠体5の内側には所定の間隔を空けて張出部7が上下2段設けられている。下側の張出部7aは、枠体5の底面近傍に位置している。上側の張出部7bは、枠体5の略中央付近に位置している。板体9は張出部7a,7bに選択的に載置することができる。食品搬送用ばんじゅう1aの上に、枠体5のみの食品搬送用ばんじゅう1b,1cを積層すると高さXがかさ上げされて略3倍となり、高さ3Xを有する積層ばんじゅう10として機能する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品搬送用ばんじゅう及びばんじゅう用仕切部材に関する。詳細には、縦に積み重ねることで効率良く利用可能な食品搬送用ばんじゅうに関する。また、既存の食品搬送用ばんじゅうを効率良く用いることが可能なばんじゅう用仕切部材に関する。
【背景技術】
【0002】
和菓子や洋菓子、おにぎり、調理パン等の加工食品を、製造工場から小売店等に運搬する際には、ばんじゅうや番重と呼ばれる食品搬送用の容器が用いられている。食品搬送用ばんじゅうは、積み重ねて使用可能なように、底面の面積や形状が規格化されていることが多い。
一方、食品搬送用ばんじゅうの高さについては、異なったものが多数ある。例えば、パン類の搬送に適した食品搬送用ばんじゅうにおいては、背の低い菓子パンに適したものや、中背のサンドウィッチに適したもの、背の高い食パンに適したもの等、高さの異なるパンに応じた食品搬送用ばんじゅうが、複数用意されている。
【0003】
加工食品の製造工場においては、販売実績等に基づいて、様々な種類の食品搬送用ばんじゅうを揃えておく必要があるが、どの種類を、どの程度用意しておくかを見極めることは難しい。例えば、全ての顧客からの注文が偶然背の低いパンに集中することや、背の高い食パンに集中することを想定して、膨大な数の食品搬送用ばんじゅうを用意した場合、実際の運用では、偏った注文が入ることは稀であり、長期間にわたって使わない食品搬送用ばんじゅうが出てくる恐れがある。また、膨大な数の食品搬送用ばんじゅうは、場所を取るため、保管場所の確保が困難となる。
【0004】
そのため、あらゆる種類のパンが収納可能な背の高い食品搬送用ばんじゅうのみを用意しておくことも考えられるが、背の低いパンを運ぶ際には背の高い食品搬送用ばんじゅう内に無駄な空間が生じてしまう。その結果、搭載できるパンの数量に制限が生じ、搬送効率が低下してしまう。この問題を解決可能な運搬用容器が、特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1に記載された運搬用容器は、底板と呼ばれる背の低い容器を有している。底板は、所定の高さの周壁を備えており、周壁の上に、筒状枠板と呼ばれる枠だけの部材を複数積むことができる。運搬する対象物の大きさや形状に応じて、底板に載せる筒状枠板の数量を変えることで、運搬用容器の全体の高さを調整可能である。つまり、特許文献1に記載された運搬用容器を用いることで、高さが異なる複数種類の食品搬送用ばんじゅうを、大量に用意する必要がなくなると共に、搬送効率の低下も防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6−22240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に開示された運搬用容器では、底板が有する周壁の上端部や、筒状枠板の上下端部、天板が有する周壁の下端部が、それぞれ凸凹とした複雑な形状を有している。凸凹とした複雑な形状の部位は、各部材同士を連結するための連結部を成すものである。複雑な形状の連結部は、それぞれの部材の四方にわたって設けられている。つまり、特許文献1に開示された運搬用容器は、天板を用いない場合には、凸凹とした複雑な形状の壁で囲まれた入れ物となる。
【0008】
一般的に、食品搬送用ばんじゅうを複数段積層する場合には、最上段の食品搬送用ばんじゅうにだけ天面の蓋を装着することが多いが、特許文献1に開示された運搬用容器では、天板を装着しないと別の運搬用容器を積層することができないため、使い勝手が悪い。
また、特許文献1に開示された運搬用容器では、筒状枠板は底板に組み合わされて用いられる補助部材であり、単独では使用できないため、例えば、注文が背の低いパンに集中した際に利用できず、効率が悪い。
【0009】
上記した現状に鑑み、本発明は、搬送物の形状等に応じて高さをかさ上げすることが可能であり、且つ効率良く利用可能な食品搬送用ばんじゅうの提供を目的とする。また、既存の食品搬送用ばんじゅうを効率良く用いることが可能なばんじゅう用仕切部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、底部と周壁部を有し、前記底部と周壁部によって囲まれた空間に食品を載置して食品を運搬するものであり、且つ縦に積み重ねることが可能である食品搬送用ばんじゅうにおいて、底部を取り外すことができることを特徴とする食品搬送用ばんじゅうである。
【0011】
本発明で採用する食品搬送用ばんじゅうは、底部と周壁部を有し、底部を取り外すことができる。底部を取り外した食品搬送用ばんじゅうは、周壁部のみとなり、略枠部材として利用できるため、底部を有する食品搬送用ばんじゅうと組み合わせることで、高さをかさ上げすることが可能である。また、「縦に積み重ねることが可能」とは、単体の食品搬送用ばんじゅう同士を積層できることを指している。つまり、本発明の食品搬送用ばんじゅうは、単体で用いることも、底部を外して組み合わせて用いることも可能であるため、自由度が高く、効率が良い。
【0012】
請求項2に記載の発明は、周壁部は一体に成形された枠体であり、枠構造を維持するだけの剛性を備え、枠体の内側に張出部が設けられ、枠体から独立した板体があり、前記板体が前記張出部に載置されて食品搬送用ばんじゅうの底部を形成することを特徴とする請求項1に記載の食品搬送用ばんじゅうである。
【0013】
本発明で採用する食品搬送用ばんじゅうでは、周壁部を一体に成形された枠体とし、枠構造を維持するだけの剛性を備えている。その結果、堅牢性や耐久性を備えた食品搬送用ばんじゅうとなり、壊れ難い。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記張出部は高さ方向に複数段設けられ、前記板体を異なる高さの張出部に選択的に載置することができることを特徴とする請求項2に記載の食品搬送用ばんじゅうである。
【0015】
本発明で採用する食品搬送用ばんじゅうは、枠体内において底部の位置を容易に変更できるため、使い方の自由度がさらに増す。
【0016】
請求項4に記載の発明は、枠体は平面視が略長方形であり、前記張出部は対向する一組又は二組の辺を構成する周壁部に設けられ、特定の辺の下側の張出部の上面側の基底部と、対向する辺の上側の張出部の先端との間の距離が、前記板体の幅よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の食品搬送用ばんじゅうである。
【0017】
例えば、対向する上側と下側の張出部同士の距離よりも板体が大きい場合、上側と下側の張出部に板体の両端部が接触してしまい、板体の位置の変更が困難となってしまう。その際には、板体自身を撓ませる等して変形させることで張出部をかわす必要があり、手間が掛かる。そのため、本発明で採用する食品搬送用ばんじゅうでは、特定の辺の下側の張出部の上面側の基底部と、対向する辺の上側の張出部の先端との間の距離を、前記板体の幅よりも大きくすることで、底部を成す板体の位置を容易に変更できる構造としている。
【0018】
請求項5に記載の発明は、支持部材を有し、支持部材は前記周壁部の積み重ね方向上側に取り付け可能であり、取り付けた状態において、前記底部と周壁部によって囲まれた空間に前記板体を載置可能な張出部を形成することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の食品搬送用ばんじゅうである。
【0019】
本発明で採用する食品搬送用ばんじゅうでは、周壁部の積み重ね方向上側に取り付け可能な支持部材を有している。そして、支持部材を周壁部に取り付けることで、周壁部の内側に張出部を形成することができる。言い換えれば、張出部を取り外し可能な支持部材を有している。例えば、長さが異なる支持部材に変更することで、高さ方向における張出部の位置を変更することが可能である。
【0020】
請求項6に記載の発明は、底部と周壁部を有し前記底部と周壁部によって囲まれた空間に食品を載置して運搬する食品搬送用ばんじゅうに用いられるもので、支持部材と板体を有し、支持部材は前記周壁部の積み重ね方向上側に取り付け可能であり、取り付けた状態において、前記空間に前記板体を載置可能な張出部を形成することを特徴とするばんじゅう用仕切部材である。
【0021】
本発明で採用するばんじゅう用仕切部材は、前述の張出部を取り外し可能な支持部材と、板体とを、既存の食品搬送用ばんじゅうに使用できるように応用したものである。その結果、既存の食品搬送用ばんじゅう内を上下方向に仕切ることで、前述の食品搬送用ばんじゅうと同様の効果を得ることができる。特にかさが高い食品搬送用ばんじゅうに効果的に用いることができ、食品が載置できる有効面積を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の食品搬送用ばんじゅうによれば、搬送物の形状等に応じて高さをかさ上げすることができ、さらに使い方の自由度が高いため、効率良く利用できる。
また、本発明のばんじゅう用仕切部材を既存の食品搬送用ばんじゅうに用いることで、本発明の食品搬送用ばんじゅうと同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る食品搬送用ばんじゅうを示す斜視図である。
【図2】食品搬送用ばんじゅうの分解斜視図である。
【図3】食品搬送用ばんじゅうを複数積み上げた状態を示す斜視図である。
【図4】図1の食品搬送用ばんじゅうのA−A断面を示す断面斜視図であり、底部を成す板体が通常位置である下段の張出部に載置された状態である。
【図5】図4の食品搬送用ばんじゅうにおいて、底部を成す板体を上段の張出部に載置した状態を示す断面斜視図である。
【図6】底部を通常位置に載置した食品搬送用ばんじゅうを複数積み上げた状態を示す断面斜視図である。
【図7】底部を通常位置に載置した食品搬送用ばんじゅうに、底部を取り外した食品搬送用ばんじゅうを積み上げた状態を示す断面斜視図である。
【図8】食品搬送用ばんじゅうに搬送物を納めた状態を示す断面図であり、(a)は食品搬送用ばんじゅうを2段重ねた状態、(b)は食品搬送用ばんじゅうを3段重ねた状態である。
【図9】食品搬送用ばんじゅうにおいて、底部を成す板体の幅と、特定の辺の下側の張出部の上面側の基底部と対向する辺の上側の張出部の先端との間の距離を示す正面図である。
【図10】(a)〜(c)は、食品搬送用ばんじゅうにおいて、底部を成す板体を下側の張出部に載置する手順を示す正面図である。
【図11】(a)は食品搬送用ばんじゅうの変形例を示す斜視図であり、(b)は(a)が有する支持部材の変形例を示す断面図である。
【図12】(a),(b)は、食品搬送用ばんじゅうに用いられる板体の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下は、本発明の食品搬送用ばんじゅうの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明は、実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって、本発明が制限して理解されるべきではない。
【0025】
図1に示すように、食品搬送用ばんじゅう1は、略長方形の容器である。食品搬送用ばんじゅう1は、底部2と周壁部3を有し、底部2と周壁部3によって囲まれた空間4に食品を載置して食品を運搬するものである。食品搬送用ばんじゅう1は、合成樹脂で成形することが好ましい。
【0026】
底部2は、食品搬送用ばんじゅう1の底面を成すものである。図2に示すように、底部2は、略長方形の板体9であり、周壁部3から取り外すことが可能である。底部2は、後述する張出部7に載置されて用いられる。なお、板体9の略中央には、丸孔15が設けられている。丸孔15に指を引っ掛けて持ち上げることで、容易に底部2を食品搬送用ばんじゅう1から取り外すことが可能である。
【0027】
周壁部3は、一体に成形された枠体5であり、枠構造を維持するだけの剛性を備えている。枠体5は、平面視が略長方形であり、4つの辺5a〜5dで囲まれている。
枠体5の天面には、平面状のフランジ部6が設けられている。フランジ部6は、食品搬送用ばんじゅう1の持ち手等となるものであり、枠体5の4つの辺5a〜5dの全周にわたって設けられている。なお、フランジ部6は、枠体5よりも一回り程度大きいことが好ましい。
【0028】
枠体5の内側には、張出部7が設けられている。張出部7は枠体5の一部であり、枠体5と一体化されている。張出部7は、枠体5の長手方向に沿って、直線状に延びている。図2に示すように、張出部7は、枠体5の内側において、所定の間隔を空けて上下2段設けられている。下側に設けられた張出部7aは、枠体5の底面近傍に位置している。一方、上側に設けられた張出部7bは、枠体5の高さ方向の略中央付近に位置している。張出部7a,7bは、枠体5の辺5aと辺5cにそれぞれ設けられている。つまり、張出部7a,7bは、枠体5の対向する一組の辺5a,5cにのみ設けられている。なお、張出部7a,7bは、枠体5に一体成形されることが好ましい。
【0029】
枠体5の底面側の側面には、嵌入防止部材8が設けられている。嵌入防止部材8は、L字状であり、枠体5の4つの角部にそれぞれ設けられている。嵌入防止部材8は、枠体5の底面より少しだけ上方向に位置しており、底面から嵌入防止部材8までの高さは、5cm以内程度であることが好ましい。
【0030】
食品搬送用ばんじゅう1は、図3に示すように、食品搬送用ばんじゅう1同士を積み上げて用いられるものである。図3では、積層例として、食品搬送用ばんじゅう1aの上に食品搬送用ばんじゅう1bが載置され、さらに、食品搬送用ばんじゅう1bの上に食品搬送用ばんじゅう1cが載置されている。この時、上側の食品搬送用ばんじゅう1の嵌入防止部材8は、下側の食品搬送用ばんじゅう1のフランジ部6に当接している。その結果、上側の食品搬送用ばんじゅう1の枠体5の一部が、下側の食品搬送用ばんじゅう1のフランジ部6の内側に嵌り込んで係止している。そのため、積層された食品搬送用ばんじゅう1同士は、水平方向に負荷が加わった場合にでも揺れ難く、崩れにくい。
【0031】
つぎに、食品搬送用ばんじゅう1の機能について説明する。
図4に示すように、食品搬送用ばんじゅう1において、底部2を成す板体9は、通常位置として、枠体5の底面近傍に位置している一対の張出部7a,7aに載置されている。この状態では、食品搬送用ばんじゅう1は、高さXを有する食品搬送用の容器として機能する。
底部2が通常位置にある食品搬送用ばんじゅう1を、3段積層すると、図6に示すような状態となる。
【0032】
一方、図5に示すように、底部2を成す板体9は、枠体5の高さ方向の略中央付近に位置している一対の張出部7b,7bに載置することができる。この状態では、食品搬送用ばんじゅう1は、高さYを有する食品搬送用の容器として機能する。なお、高さYは、高さXの略半分の高さである。
つまり、底部2を成す板体9は、異なる高さの張出部7a,7bのどちらかに、選択的に載置することができる。
【0033】
さらに、食品搬送用ばんじゅう1は、底部2を成す板体9を取り外し、周壁部3を有する枠体5単体として機能する。図7は、底部2が通常位置にある食品搬送用ばんじゅう1aの上に、枠体5のみの食品搬送用ばんじゅう1b,1cを積層した状態である。この状態においては、食品搬送用ばんじゅう1a〜1cは、高さXが略3倍となった高さ3Xを有する積層ばんじゅう10として機能する。
【0034】
図8(a)は、積層ばんじゅうの具体的な使用例を示す断面図である。
図8(a)に示すように、積層ばんじゅう60では、食品搬送用ばんじゅう1aの上に、食品搬送用ばんじゅう1bが積層されている。下側に位置する食品搬送用ばんじゅう1aにおいて、一対の張出部7a,7aと、一対の張出部7b,7bにそれぞれ底部2を成す板体9a、9bが載置されている。この状態において、板体9a,9b間の距離は、高さYと同等となる。一方、板体9bから、食品搬送用ばんじゅう1bのフランジ部6までの距離は、高さXと高さYを足したものとなる。
【0035】
積層ばんじゅう60において、板体9a,9b間には、背の低いパン30が収納されている。一方、板体9bの上には、背の高いパン40が載せられている。つまり、積層ばんじゅう60は、上下段に、背の高いパン40と背の低いパン30を積層して収容している。
【0036】
図8(b)は、図8(a)で示した積層ばんじゅう60とは別の積層ばんじゅう70を示す断面図である。
図8(b)に示すように、積層ばんじゅう70では、食品搬送用ばんじゅう1a〜1cが順番に積層されている。一番下に位置している食品搬送用ばんじゅう1aにおいて、一対の張出部7a,7aに、板体9aが載置されている。一方、真ん中に位置している食品搬送用ばんじゅう1bにおいては、一対の張出部7b,7bに、板体9bが載置されている。なお、一番上に位置している食品搬送用ばんじゅう1cは、板体9を有していない。
この状態において、板体9a,9b間の距離は、高さXと高さYを足したものとなる。また、食品搬送用ばんじゅう1cのフランジ部6から板体9bまでの距離も、同じく高さXと高さYを足したものとなる。
【0037】
積層ばんじゅう70において、板体9a,9b間と、板体9bの上に、それぞれ背の高いパン40が載せられている。つまり、積層ばんじゅう70は、上下段に、背の高いパン40を積層して収容している。
【0038】
以上の通り、本発明の実施形態に係る食品搬送用ばんじゅう1では、搬送物である背の低いパン30や背の高いパン40等の食品の形状等に応じて、食品搬送用ばんじゅう1a〜1cを組み合わせることで、高さがかさ上げされた積層ばんじゅう60,70を形成することができる。
【0039】
つぎに、食品搬送用ばんじゅう1における枠体5の張出部7,7間の距離と、板体9の幅との関係について説明する。
図9に示すように、枠体5の辺5aの下段側の張出部7aと、辺5cの上段側の張出部7bとの間の距離Lは、板体9の幅Wよりも大きい。より具体的には、枠体5の対向する辺5a,5cにおいて、辺5aが有する下側の張出部7aの上面側の基底部7cと、対向する辺5cの上側の張出部7bの先端7dとの間の距離Lは、板体9の幅Wよりも大きく、L>Wの関係としている。このような構成により、板体9の設置を円滑化している。なお、幅Wは、詳細には板体9の端部9c,9d間の長さである。
以下、板体9の設置方法について、図10(a)〜(c)を用いて説明する。
【0040】
図10(a)は、枠体5と板体9とが別々に位置した状態を示している。
図10(b)では、板体9が枠体5内に斜めに傾いて入っている。詳細には、板体9の端部9cが、枠体5の辺5aが有する下側の張出部7aの上面側の基底部7cに当接した状態である。この状態において、端部9cを基底部7cに当接させたまま、板体9を下向きに回動させ、板体9の端部9dを、枠体5の辺5cが有する下側の張出部7aに載置する。その結果、図10(c)に示すように、枠体5が有する一対の張出部7a,7aに、板体9が載置された状態に至る。
【0041】
このように、枠体5の張出部7a,7b間の距離Lと板体9の幅WとをL>Wの関係を満たすようにすることで、図10(b)から図10(c)へと板体9が姿勢を変化させる際に、板体9の端部9dが、辺5cの上側の張出部7bの先端7dに当接してしまうことを防止できる。そのため、板体9をスムーズに取り付けることができる。
【0042】
上記実施形態では、枠体5の内側に設けた張出部7は、対向する枠体5の一組の辺5a,5cにそれぞれ上下の張出部7a,7bを設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、枠体5の一組の辺5a,5cと、別の一組の辺5b,5dの合わせた二組の辺に、張出部7a,7bを設けても構わない。
【0043】
上記実施形態では、枠体5の内側に設けた張出部7は、枠体5の一部とし、張出部7a,7bは、枠体5に一体成形されることが好ましいとする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図11(a)に示すように、取外し可能な張出部7bを備えたばんじゅう用仕切部材56を採用した食品搬送用ばんじゅう50であっても構わない。ばんじゅう用仕切部材56は、コ字状の支持部材55を有し、支持部材55の先端に張出部7bが設けられている。
【0044】
このばんじゅう用仕切部材56は、支持部材55を枠体5のフランジ部6に引っ掛けて使用するものであり、容易に取り外すことができる。
また、張出部7bには、上記実施形態と同様の板体9を載置することができる。
そして、ばんじゅう用仕切部材56は、既存の食品搬送用ばんじゅうに取り付けることで、既存の食品搬送用ばんじゅうを上下方向に仕切ることができる。その結果、前述の食品搬送用ばんじゅう1,50と同様の効果を、既存の食品搬送用ばんじゅうを用いても得ることができる。
【0045】
なお、支持部材55は、枠体5の辺5aの長手方向において、辺5aの長さと同等とすることや短くすること等、任意の長さにして構わない。また、支持部材55は、食品搬送用ばんじゅうの周壁部の高さに応じて、鉛直方向の長さが異なるものを複数用意することが好ましい。或いは、例えば、図11(b)に示すように、支持部材55の鉛直方向の長さが調整できるように、伸縮式としても構わない。つまり、食品搬送用ばんじゅう内において、上下方向における張出部7bの位置を調整可能である。
【0046】
上記実施形態では、食品搬送用ばんじゅう1の底部2である板体9において、板体9の略中央に丸孔15を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図12(a)に示すように、板体9の各辺9e〜9hに、略半円の凹部16を設けても構わない。なお、凹部16は、各辺9e〜9hの全てに設けなくても構わない。凹部16の数量は、任意に設定可能である。
【0047】
上記実施形態では、食品搬送用ばんじゅう1の底部2を板体9とする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図12(b)に示すように、網状のメッシュ部材80を底部2として用いても構わない。上下2段積層された食品搬送用ばんじゅう1において、上段の食品搬送用ばんじゅう1の底部2をメッシュ部材80とした場合、上下の食品搬送用ばんじゅう1同士の通気性を確保することができる。例えば、上段の食品搬送用ばんじゅう1にドライアイスや保冷材等を置くことで、下段の食品搬送用ばんじゅう1に効率良く冷気を送ることができると共に、下段の食品搬送用ばんじゅう1に搭載された食品を、非接触で冷やすことができる。その結果、例えば、ケーキ等の生菓子と保冷材等とが接触することがないため、生菓子の形状が崩れることを防止できる。
【符号の説明】
【0048】
1,50 食品搬送用ばんじゅう
2 底部
3 周壁部
4 空間
5 枠体
5a〜5d 辺
7,7a,7b 張出部
7c 基底部
7d 先端
9,9a,9b 板体
30 背の低いパン(食品)
40 背の高いパン(食品)
55 支持部材
56 ばんじゅう用仕切部材
L 距離
W 幅
【技術分野】
【0001】
本発明は食品搬送用ばんじゅう及びばんじゅう用仕切部材に関する。詳細には、縦に積み重ねることで効率良く利用可能な食品搬送用ばんじゅうに関する。また、既存の食品搬送用ばんじゅうを効率良く用いることが可能なばんじゅう用仕切部材に関する。
【背景技術】
【0002】
和菓子や洋菓子、おにぎり、調理パン等の加工食品を、製造工場から小売店等に運搬する際には、ばんじゅうや番重と呼ばれる食品搬送用の容器が用いられている。食品搬送用ばんじゅうは、積み重ねて使用可能なように、底面の面積や形状が規格化されていることが多い。
一方、食品搬送用ばんじゅうの高さについては、異なったものが多数ある。例えば、パン類の搬送に適した食品搬送用ばんじゅうにおいては、背の低い菓子パンに適したものや、中背のサンドウィッチに適したもの、背の高い食パンに適したもの等、高さの異なるパンに応じた食品搬送用ばんじゅうが、複数用意されている。
【0003】
加工食品の製造工場においては、販売実績等に基づいて、様々な種類の食品搬送用ばんじゅうを揃えておく必要があるが、どの種類を、どの程度用意しておくかを見極めることは難しい。例えば、全ての顧客からの注文が偶然背の低いパンに集中することや、背の高い食パンに集中することを想定して、膨大な数の食品搬送用ばんじゅうを用意した場合、実際の運用では、偏った注文が入ることは稀であり、長期間にわたって使わない食品搬送用ばんじゅうが出てくる恐れがある。また、膨大な数の食品搬送用ばんじゅうは、場所を取るため、保管場所の確保が困難となる。
【0004】
そのため、あらゆる種類のパンが収納可能な背の高い食品搬送用ばんじゅうのみを用意しておくことも考えられるが、背の低いパンを運ぶ際には背の高い食品搬送用ばんじゅう内に無駄な空間が生じてしまう。その結果、搭載できるパンの数量に制限が生じ、搬送効率が低下してしまう。この問題を解決可能な運搬用容器が、特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1に記載された運搬用容器は、底板と呼ばれる背の低い容器を有している。底板は、所定の高さの周壁を備えており、周壁の上に、筒状枠板と呼ばれる枠だけの部材を複数積むことができる。運搬する対象物の大きさや形状に応じて、底板に載せる筒状枠板の数量を変えることで、運搬用容器の全体の高さを調整可能である。つまり、特許文献1に記載された運搬用容器を用いることで、高さが異なる複数種類の食品搬送用ばんじゅうを、大量に用意する必要がなくなると共に、搬送効率の低下も防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6−22240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に開示された運搬用容器では、底板が有する周壁の上端部や、筒状枠板の上下端部、天板が有する周壁の下端部が、それぞれ凸凹とした複雑な形状を有している。凸凹とした複雑な形状の部位は、各部材同士を連結するための連結部を成すものである。複雑な形状の連結部は、それぞれの部材の四方にわたって設けられている。つまり、特許文献1に開示された運搬用容器は、天板を用いない場合には、凸凹とした複雑な形状の壁で囲まれた入れ物となる。
【0008】
一般的に、食品搬送用ばんじゅうを複数段積層する場合には、最上段の食品搬送用ばんじゅうにだけ天面の蓋を装着することが多いが、特許文献1に開示された運搬用容器では、天板を装着しないと別の運搬用容器を積層することができないため、使い勝手が悪い。
また、特許文献1に開示された運搬用容器では、筒状枠板は底板に組み合わされて用いられる補助部材であり、単独では使用できないため、例えば、注文が背の低いパンに集中した際に利用できず、効率が悪い。
【0009】
上記した現状に鑑み、本発明は、搬送物の形状等に応じて高さをかさ上げすることが可能であり、且つ効率良く利用可能な食品搬送用ばんじゅうの提供を目的とする。また、既存の食品搬送用ばんじゅうを効率良く用いることが可能なばんじゅう用仕切部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、底部と周壁部を有し、前記底部と周壁部によって囲まれた空間に食品を載置して食品を運搬するものであり、且つ縦に積み重ねることが可能である食品搬送用ばんじゅうにおいて、底部を取り外すことができることを特徴とする食品搬送用ばんじゅうである。
【0011】
本発明で採用する食品搬送用ばんじゅうは、底部と周壁部を有し、底部を取り外すことができる。底部を取り外した食品搬送用ばんじゅうは、周壁部のみとなり、略枠部材として利用できるため、底部を有する食品搬送用ばんじゅうと組み合わせることで、高さをかさ上げすることが可能である。また、「縦に積み重ねることが可能」とは、単体の食品搬送用ばんじゅう同士を積層できることを指している。つまり、本発明の食品搬送用ばんじゅうは、単体で用いることも、底部を外して組み合わせて用いることも可能であるため、自由度が高く、効率が良い。
【0012】
請求項2に記載の発明は、周壁部は一体に成形された枠体であり、枠構造を維持するだけの剛性を備え、枠体の内側に張出部が設けられ、枠体から独立した板体があり、前記板体が前記張出部に載置されて食品搬送用ばんじゅうの底部を形成することを特徴とする請求項1に記載の食品搬送用ばんじゅうである。
【0013】
本発明で採用する食品搬送用ばんじゅうでは、周壁部を一体に成形された枠体とし、枠構造を維持するだけの剛性を備えている。その結果、堅牢性や耐久性を備えた食品搬送用ばんじゅうとなり、壊れ難い。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記張出部は高さ方向に複数段設けられ、前記板体を異なる高さの張出部に選択的に載置することができることを特徴とする請求項2に記載の食品搬送用ばんじゅうである。
【0015】
本発明で採用する食品搬送用ばんじゅうは、枠体内において底部の位置を容易に変更できるため、使い方の自由度がさらに増す。
【0016】
請求項4に記載の発明は、枠体は平面視が略長方形であり、前記張出部は対向する一組又は二組の辺を構成する周壁部に設けられ、特定の辺の下側の張出部の上面側の基底部と、対向する辺の上側の張出部の先端との間の距離が、前記板体の幅よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の食品搬送用ばんじゅうである。
【0017】
例えば、対向する上側と下側の張出部同士の距離よりも板体が大きい場合、上側と下側の張出部に板体の両端部が接触してしまい、板体の位置の変更が困難となってしまう。その際には、板体自身を撓ませる等して変形させることで張出部をかわす必要があり、手間が掛かる。そのため、本発明で採用する食品搬送用ばんじゅうでは、特定の辺の下側の張出部の上面側の基底部と、対向する辺の上側の張出部の先端との間の距離を、前記板体の幅よりも大きくすることで、底部を成す板体の位置を容易に変更できる構造としている。
【0018】
請求項5に記載の発明は、支持部材を有し、支持部材は前記周壁部の積み重ね方向上側に取り付け可能であり、取り付けた状態において、前記底部と周壁部によって囲まれた空間に前記板体を載置可能な張出部を形成することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の食品搬送用ばんじゅうである。
【0019】
本発明で採用する食品搬送用ばんじゅうでは、周壁部の積み重ね方向上側に取り付け可能な支持部材を有している。そして、支持部材を周壁部に取り付けることで、周壁部の内側に張出部を形成することができる。言い換えれば、張出部を取り外し可能な支持部材を有している。例えば、長さが異なる支持部材に変更することで、高さ方向における張出部の位置を変更することが可能である。
【0020】
請求項6に記載の発明は、底部と周壁部を有し前記底部と周壁部によって囲まれた空間に食品を載置して運搬する食品搬送用ばんじゅうに用いられるもので、支持部材と板体を有し、支持部材は前記周壁部の積み重ね方向上側に取り付け可能であり、取り付けた状態において、前記空間に前記板体を載置可能な張出部を形成することを特徴とするばんじゅう用仕切部材である。
【0021】
本発明で採用するばんじゅう用仕切部材は、前述の張出部を取り外し可能な支持部材と、板体とを、既存の食品搬送用ばんじゅうに使用できるように応用したものである。その結果、既存の食品搬送用ばんじゅう内を上下方向に仕切ることで、前述の食品搬送用ばんじゅうと同様の効果を得ることができる。特にかさが高い食品搬送用ばんじゅうに効果的に用いることができ、食品が載置できる有効面積を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の食品搬送用ばんじゅうによれば、搬送物の形状等に応じて高さをかさ上げすることができ、さらに使い方の自由度が高いため、効率良く利用できる。
また、本発明のばんじゅう用仕切部材を既存の食品搬送用ばんじゅうに用いることで、本発明の食品搬送用ばんじゅうと同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る食品搬送用ばんじゅうを示す斜視図である。
【図2】食品搬送用ばんじゅうの分解斜視図である。
【図3】食品搬送用ばんじゅうを複数積み上げた状態を示す斜視図である。
【図4】図1の食品搬送用ばんじゅうのA−A断面を示す断面斜視図であり、底部を成す板体が通常位置である下段の張出部に載置された状態である。
【図5】図4の食品搬送用ばんじゅうにおいて、底部を成す板体を上段の張出部に載置した状態を示す断面斜視図である。
【図6】底部を通常位置に載置した食品搬送用ばんじゅうを複数積み上げた状態を示す断面斜視図である。
【図7】底部を通常位置に載置した食品搬送用ばんじゅうに、底部を取り外した食品搬送用ばんじゅうを積み上げた状態を示す断面斜視図である。
【図8】食品搬送用ばんじゅうに搬送物を納めた状態を示す断面図であり、(a)は食品搬送用ばんじゅうを2段重ねた状態、(b)は食品搬送用ばんじゅうを3段重ねた状態である。
【図9】食品搬送用ばんじゅうにおいて、底部を成す板体の幅と、特定の辺の下側の張出部の上面側の基底部と対向する辺の上側の張出部の先端との間の距離を示す正面図である。
【図10】(a)〜(c)は、食品搬送用ばんじゅうにおいて、底部を成す板体を下側の張出部に載置する手順を示す正面図である。
【図11】(a)は食品搬送用ばんじゅうの変形例を示す斜視図であり、(b)は(a)が有する支持部材の変形例を示す断面図である。
【図12】(a),(b)は、食品搬送用ばんじゅうに用いられる板体の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下は、本発明の食品搬送用ばんじゅうの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明は、実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって、本発明が制限して理解されるべきではない。
【0025】
図1に示すように、食品搬送用ばんじゅう1は、略長方形の容器である。食品搬送用ばんじゅう1は、底部2と周壁部3を有し、底部2と周壁部3によって囲まれた空間4に食品を載置して食品を運搬するものである。食品搬送用ばんじゅう1は、合成樹脂で成形することが好ましい。
【0026】
底部2は、食品搬送用ばんじゅう1の底面を成すものである。図2に示すように、底部2は、略長方形の板体9であり、周壁部3から取り外すことが可能である。底部2は、後述する張出部7に載置されて用いられる。なお、板体9の略中央には、丸孔15が設けられている。丸孔15に指を引っ掛けて持ち上げることで、容易に底部2を食品搬送用ばんじゅう1から取り外すことが可能である。
【0027】
周壁部3は、一体に成形された枠体5であり、枠構造を維持するだけの剛性を備えている。枠体5は、平面視が略長方形であり、4つの辺5a〜5dで囲まれている。
枠体5の天面には、平面状のフランジ部6が設けられている。フランジ部6は、食品搬送用ばんじゅう1の持ち手等となるものであり、枠体5の4つの辺5a〜5dの全周にわたって設けられている。なお、フランジ部6は、枠体5よりも一回り程度大きいことが好ましい。
【0028】
枠体5の内側には、張出部7が設けられている。張出部7は枠体5の一部であり、枠体5と一体化されている。張出部7は、枠体5の長手方向に沿って、直線状に延びている。図2に示すように、張出部7は、枠体5の内側において、所定の間隔を空けて上下2段設けられている。下側に設けられた張出部7aは、枠体5の底面近傍に位置している。一方、上側に設けられた張出部7bは、枠体5の高さ方向の略中央付近に位置している。張出部7a,7bは、枠体5の辺5aと辺5cにそれぞれ設けられている。つまり、張出部7a,7bは、枠体5の対向する一組の辺5a,5cにのみ設けられている。なお、張出部7a,7bは、枠体5に一体成形されることが好ましい。
【0029】
枠体5の底面側の側面には、嵌入防止部材8が設けられている。嵌入防止部材8は、L字状であり、枠体5の4つの角部にそれぞれ設けられている。嵌入防止部材8は、枠体5の底面より少しだけ上方向に位置しており、底面から嵌入防止部材8までの高さは、5cm以内程度であることが好ましい。
【0030】
食品搬送用ばんじゅう1は、図3に示すように、食品搬送用ばんじゅう1同士を積み上げて用いられるものである。図3では、積層例として、食品搬送用ばんじゅう1aの上に食品搬送用ばんじゅう1bが載置され、さらに、食品搬送用ばんじゅう1bの上に食品搬送用ばんじゅう1cが載置されている。この時、上側の食品搬送用ばんじゅう1の嵌入防止部材8は、下側の食品搬送用ばんじゅう1のフランジ部6に当接している。その結果、上側の食品搬送用ばんじゅう1の枠体5の一部が、下側の食品搬送用ばんじゅう1のフランジ部6の内側に嵌り込んで係止している。そのため、積層された食品搬送用ばんじゅう1同士は、水平方向に負荷が加わった場合にでも揺れ難く、崩れにくい。
【0031】
つぎに、食品搬送用ばんじゅう1の機能について説明する。
図4に示すように、食品搬送用ばんじゅう1において、底部2を成す板体9は、通常位置として、枠体5の底面近傍に位置している一対の張出部7a,7aに載置されている。この状態では、食品搬送用ばんじゅう1は、高さXを有する食品搬送用の容器として機能する。
底部2が通常位置にある食品搬送用ばんじゅう1を、3段積層すると、図6に示すような状態となる。
【0032】
一方、図5に示すように、底部2を成す板体9は、枠体5の高さ方向の略中央付近に位置している一対の張出部7b,7bに載置することができる。この状態では、食品搬送用ばんじゅう1は、高さYを有する食品搬送用の容器として機能する。なお、高さYは、高さXの略半分の高さである。
つまり、底部2を成す板体9は、異なる高さの張出部7a,7bのどちらかに、選択的に載置することができる。
【0033】
さらに、食品搬送用ばんじゅう1は、底部2を成す板体9を取り外し、周壁部3を有する枠体5単体として機能する。図7は、底部2が通常位置にある食品搬送用ばんじゅう1aの上に、枠体5のみの食品搬送用ばんじゅう1b,1cを積層した状態である。この状態においては、食品搬送用ばんじゅう1a〜1cは、高さXが略3倍となった高さ3Xを有する積層ばんじゅう10として機能する。
【0034】
図8(a)は、積層ばんじゅうの具体的な使用例を示す断面図である。
図8(a)に示すように、積層ばんじゅう60では、食品搬送用ばんじゅう1aの上に、食品搬送用ばんじゅう1bが積層されている。下側に位置する食品搬送用ばんじゅう1aにおいて、一対の張出部7a,7aと、一対の張出部7b,7bにそれぞれ底部2を成す板体9a、9bが載置されている。この状態において、板体9a,9b間の距離は、高さYと同等となる。一方、板体9bから、食品搬送用ばんじゅう1bのフランジ部6までの距離は、高さXと高さYを足したものとなる。
【0035】
積層ばんじゅう60において、板体9a,9b間には、背の低いパン30が収納されている。一方、板体9bの上には、背の高いパン40が載せられている。つまり、積層ばんじゅう60は、上下段に、背の高いパン40と背の低いパン30を積層して収容している。
【0036】
図8(b)は、図8(a)で示した積層ばんじゅう60とは別の積層ばんじゅう70を示す断面図である。
図8(b)に示すように、積層ばんじゅう70では、食品搬送用ばんじゅう1a〜1cが順番に積層されている。一番下に位置している食品搬送用ばんじゅう1aにおいて、一対の張出部7a,7aに、板体9aが載置されている。一方、真ん中に位置している食品搬送用ばんじゅう1bにおいては、一対の張出部7b,7bに、板体9bが載置されている。なお、一番上に位置している食品搬送用ばんじゅう1cは、板体9を有していない。
この状態において、板体9a,9b間の距離は、高さXと高さYを足したものとなる。また、食品搬送用ばんじゅう1cのフランジ部6から板体9bまでの距離も、同じく高さXと高さYを足したものとなる。
【0037】
積層ばんじゅう70において、板体9a,9b間と、板体9bの上に、それぞれ背の高いパン40が載せられている。つまり、積層ばんじゅう70は、上下段に、背の高いパン40を積層して収容している。
【0038】
以上の通り、本発明の実施形態に係る食品搬送用ばんじゅう1では、搬送物である背の低いパン30や背の高いパン40等の食品の形状等に応じて、食品搬送用ばんじゅう1a〜1cを組み合わせることで、高さがかさ上げされた積層ばんじゅう60,70を形成することができる。
【0039】
つぎに、食品搬送用ばんじゅう1における枠体5の張出部7,7間の距離と、板体9の幅との関係について説明する。
図9に示すように、枠体5の辺5aの下段側の張出部7aと、辺5cの上段側の張出部7bとの間の距離Lは、板体9の幅Wよりも大きい。より具体的には、枠体5の対向する辺5a,5cにおいて、辺5aが有する下側の張出部7aの上面側の基底部7cと、対向する辺5cの上側の張出部7bの先端7dとの間の距離Lは、板体9の幅Wよりも大きく、L>Wの関係としている。このような構成により、板体9の設置を円滑化している。なお、幅Wは、詳細には板体9の端部9c,9d間の長さである。
以下、板体9の設置方法について、図10(a)〜(c)を用いて説明する。
【0040】
図10(a)は、枠体5と板体9とが別々に位置した状態を示している。
図10(b)では、板体9が枠体5内に斜めに傾いて入っている。詳細には、板体9の端部9cが、枠体5の辺5aが有する下側の張出部7aの上面側の基底部7cに当接した状態である。この状態において、端部9cを基底部7cに当接させたまま、板体9を下向きに回動させ、板体9の端部9dを、枠体5の辺5cが有する下側の張出部7aに載置する。その結果、図10(c)に示すように、枠体5が有する一対の張出部7a,7aに、板体9が載置された状態に至る。
【0041】
このように、枠体5の張出部7a,7b間の距離Lと板体9の幅WとをL>Wの関係を満たすようにすることで、図10(b)から図10(c)へと板体9が姿勢を変化させる際に、板体9の端部9dが、辺5cの上側の張出部7bの先端7dに当接してしまうことを防止できる。そのため、板体9をスムーズに取り付けることができる。
【0042】
上記実施形態では、枠体5の内側に設けた張出部7は、対向する枠体5の一組の辺5a,5cにそれぞれ上下の張出部7a,7bを設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、枠体5の一組の辺5a,5cと、別の一組の辺5b,5dの合わせた二組の辺に、張出部7a,7bを設けても構わない。
【0043】
上記実施形態では、枠体5の内側に設けた張出部7は、枠体5の一部とし、張出部7a,7bは、枠体5に一体成形されることが好ましいとする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図11(a)に示すように、取外し可能な張出部7bを備えたばんじゅう用仕切部材56を採用した食品搬送用ばんじゅう50であっても構わない。ばんじゅう用仕切部材56は、コ字状の支持部材55を有し、支持部材55の先端に張出部7bが設けられている。
【0044】
このばんじゅう用仕切部材56は、支持部材55を枠体5のフランジ部6に引っ掛けて使用するものであり、容易に取り外すことができる。
また、張出部7bには、上記実施形態と同様の板体9を載置することができる。
そして、ばんじゅう用仕切部材56は、既存の食品搬送用ばんじゅうに取り付けることで、既存の食品搬送用ばんじゅうを上下方向に仕切ることができる。その結果、前述の食品搬送用ばんじゅう1,50と同様の効果を、既存の食品搬送用ばんじゅうを用いても得ることができる。
【0045】
なお、支持部材55は、枠体5の辺5aの長手方向において、辺5aの長さと同等とすることや短くすること等、任意の長さにして構わない。また、支持部材55は、食品搬送用ばんじゅうの周壁部の高さに応じて、鉛直方向の長さが異なるものを複数用意することが好ましい。或いは、例えば、図11(b)に示すように、支持部材55の鉛直方向の長さが調整できるように、伸縮式としても構わない。つまり、食品搬送用ばんじゅう内において、上下方向における張出部7bの位置を調整可能である。
【0046】
上記実施形態では、食品搬送用ばんじゅう1の底部2である板体9において、板体9の略中央に丸孔15を設けた例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図12(a)に示すように、板体9の各辺9e〜9hに、略半円の凹部16を設けても構わない。なお、凹部16は、各辺9e〜9hの全てに設けなくても構わない。凹部16の数量は、任意に設定可能である。
【0047】
上記実施形態では、食品搬送用ばんじゅう1の底部2を板体9とする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図12(b)に示すように、網状のメッシュ部材80を底部2として用いても構わない。上下2段積層された食品搬送用ばんじゅう1において、上段の食品搬送用ばんじゅう1の底部2をメッシュ部材80とした場合、上下の食品搬送用ばんじゅう1同士の通気性を確保することができる。例えば、上段の食品搬送用ばんじゅう1にドライアイスや保冷材等を置くことで、下段の食品搬送用ばんじゅう1に効率良く冷気を送ることができると共に、下段の食品搬送用ばんじゅう1に搭載された食品を、非接触で冷やすことができる。その結果、例えば、ケーキ等の生菓子と保冷材等とが接触することがないため、生菓子の形状が崩れることを防止できる。
【符号の説明】
【0048】
1,50 食品搬送用ばんじゅう
2 底部
3 周壁部
4 空間
5 枠体
5a〜5d 辺
7,7a,7b 張出部
7c 基底部
7d 先端
9,9a,9b 板体
30 背の低いパン(食品)
40 背の高いパン(食品)
55 支持部材
56 ばんじゅう用仕切部材
L 距離
W 幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と周壁部を有し、前記底部と周壁部によって囲まれた空間に食品を載置して食品を運搬するものであり、且つ縦に積み重ねることが可能である食品搬送用ばんじゅうにおいて、底部を取り外すことができることを特徴とする食品搬送用ばんじゅう。
【請求項2】
周壁部は一体に成形された枠体であり、枠構造を維持するだけの剛性を備え、枠体の内側に張出部が設けられ、枠体から独立した板体があり、前記板体が前記張出部に載置されて食品搬送用ばんじゅうの底部を形成することを特徴とする請求項1に記載の食品搬送用ばんじゅう。
【請求項3】
前記張出部は高さ方向に複数段設けられ、前記板体を異なる高さの張出部に選択的に載置することができることを特徴とする請求項2に記載の食品搬送用ばんじゅう。
【請求項4】
枠体は平面視が略長方形であり、前記張出部は対向する一組又は二組の辺を構成する周壁部に設けられ、特定の辺の下側の張出部の上面側の基底部と、対向する辺の上側の張出部の先端との間の距離が、前記板体の幅よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の食品搬送用ばんじゅう。
【請求項5】
支持部材を有し、支持部材は前記周壁部の積み重ね方向上側に取り付け可能であり、取り付けた状態において、前記底部と周壁部によって囲まれた空間に前記板体を載置可能な張出部を形成することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の食品搬送用ばんじゅう。
【請求項6】
底部と周壁部を有し前記底部と周壁部によって囲まれた空間に食品を載置して運搬する食品搬送用ばんじゅうに用いられるもので、
支持部材と板体を有し、支持部材は前記周壁部の積み重ね方向上側に取り付け可能であり、取り付けた状態において、前記空間に前記板体を載置可能な張出部を形成することを特徴とするばんじゅう用仕切部材。
【請求項1】
底部と周壁部を有し、前記底部と周壁部によって囲まれた空間に食品を載置して食品を運搬するものであり、且つ縦に積み重ねることが可能である食品搬送用ばんじゅうにおいて、底部を取り外すことができることを特徴とする食品搬送用ばんじゅう。
【請求項2】
周壁部は一体に成形された枠体であり、枠構造を維持するだけの剛性を備え、枠体の内側に張出部が設けられ、枠体から独立した板体があり、前記板体が前記張出部に載置されて食品搬送用ばんじゅうの底部を形成することを特徴とする請求項1に記載の食品搬送用ばんじゅう。
【請求項3】
前記張出部は高さ方向に複数段設けられ、前記板体を異なる高さの張出部に選択的に載置することができることを特徴とする請求項2に記載の食品搬送用ばんじゅう。
【請求項4】
枠体は平面視が略長方形であり、前記張出部は対向する一組又は二組の辺を構成する周壁部に設けられ、特定の辺の下側の張出部の上面側の基底部と、対向する辺の上側の張出部の先端との間の距離が、前記板体の幅よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の食品搬送用ばんじゅう。
【請求項5】
支持部材を有し、支持部材は前記周壁部の積み重ね方向上側に取り付け可能であり、取り付けた状態において、前記底部と周壁部によって囲まれた空間に前記板体を載置可能な張出部を形成することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の食品搬送用ばんじゅう。
【請求項6】
底部と周壁部を有し前記底部と周壁部によって囲まれた空間に食品を載置して運搬する食品搬送用ばんじゅうに用いられるもので、
支持部材と板体を有し、支持部材は前記周壁部の積み重ね方向上側に取り付け可能であり、取り付けた状態において、前記空間に前記板体を載置可能な張出部を形成することを特徴とするばんじゅう用仕切部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−95473(P2013−95473A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239578(P2011−239578)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(511264847)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(511264847)
【Fターム(参考)】
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