説明

食害防止用植物保護柵

【課題】樹木などの草木を取り囲んで地面に容易かつ確実に固定することができ、また地面との境界部分も密に構成されて害獣の侵入防止性に優れ、可及的に簡単な設置作業で確実に食害を防止できる効果のある植物保護柵とすることである。
【解決手段】刈り取った葦を一定の長さに揃えたものなどからなる多数の柵用棒状物1に、これより長尺で略同径の丸棒状の鉄鋼などからなる杭用棒状物2を混在させて用い、これら2種類の棒状物の一端を揃えておき、この一端を下向きにして略等間隔で配置される杭用棒状物2の上部が多数の柵用棒状物1より上方に突出した状態とし、紐状物3で簾状に編成した食害防止用植物保護柵とする。柵用棒状物と一体に紐状物で編まれてスライド可能に止められている杭用棒状物の端部を地面に打ち込むだけで保護柵を設置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地上の植物を柵で囲んで動物の食害から保護する食害防止用植物保護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
杉、檜、果樹などの樹木を野生動物の多い山野に植林したり、野菜類その他の有用な草本植物を商業目的に育てる際などにおいて、鹿、猪、兎、鼠などの動物による食害を受ける場合がある。
食害は、特に幼木などの比較的若い時期の植物、または樹皮が鹿などの食性にあう樹木に多く見られる。
【0003】
このような屋外に生息する動物による育成植物の食害を防止するために、森林や畑の周囲に網や柵で防御フェンスを張り巡らし、植物の栽培用地に害獣が侵入しないようにする対策が一般に採られる。
【0004】
また、植物栽培用地の全体ではなく、個々の幼草木を保護するには、保護対象植物の周囲に杭を打ち込み、それに樹脂製のシートやネットなどを針金や紐などで取り付ける工法が知られている。
【0005】
また、樹木の周囲に杭を打ち込まない手法として、幹の外周面に対して、直接に生分解性の合成樹脂製ネットを巻き付けて固定する食害防止器具も知られている(特許文献1)。
【0006】
さらにまた、図3に示すように、合成繊維製の布4を高さ100〜180cm程度の筒状に形成し、これを地面Gに固定した支柱5に結び付けて幼木Aを保護する被覆用筒状物も知られている(特許文献2)。
【0007】
【特許文献1】特開2001−211764公報(請求項1、請求項3)
【特許文献2】特許第3548956号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記した従来技術では、幼木を保護するためのネットや筒状物を確実に樹木や地面に固定することや、害獣の食害行動に抗し得るように設置することが容易でなく、例えば樹木を囲む全周を均等に支持できなかったり、固定支持力が弱かったりし、またネットや布を用いたものでは地面との境界部分に害獣が侵入しやすく、簡単な設置作業で確実に食害を防止できるものがなかった。
【0009】
特に、従来の樹木被覆用筒状物は、地面に固定する支柱と筒状物との一体化が不十分であり、小型の害獣に侵入されやすい欠点があった。
【0010】
そこで、この発明の課題は上記した問題点を解決して、樹木などの草木を取り囲んで地面に容易かつ確実に固定することができ、また地面との境界部分も密に構成されて害獣の侵入防止性に優れ、可及的に簡単な設置作業で確実に食害を防止できる効果のある植物保護柵とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明においては、保護対象の植物を地上で囲める所要数の柵用棒状物を設け、この棒状物より長尺の杭用棒状物を前記複数の柵用棒状物と共に紐状物で簾状に編成してなる食害防止用植物保護柵としたのである。
【0012】
上記構成の食害防止用植物保護柵は、柵用棒状物と杭用棒状物が紐状物で簾状に編成されることで、柵と杭が当初から一体に構成されており、その使用前の保管や運搬に便利である。また、幼草木の周囲に筒状保護域を形成するために、簾状の食害防止用植物保護柵を適当な柵形状に配置するときに、柵用棒状物と一体に紐状物で編まれてスライド可能に止められている杭用棒状物の端部を地面に打ち込むだけで保護柵を設置することができる。
【0013】
柵用棒状物より長尺の杭用棒状物は、柵用棒状物から独立して長手方向にスライド可能な状態で編成されているので、杭用棒状物の上端を槌で叩く等して、その下部を固定できる深さまで地中に圧入すればよく、土木作業機械(ショベルカーなどの油圧駆動器機)を利用して地中に圧入してもよい。このように柵用棒状物を、地面に挿し込んでしっかりと固定すると、幼草木を囲む環状の保護柵も確実に固定設置できる。
【0014】
このような保護柵は、その両端に紐状物の端部を編成に未使用の部分として残しておくと、保護柵を延長する際の連結や、両端を繋いで環状した際の保形用留め具に利用できる。すなわち、紐状物を保護柵の両端から延長して括り紐となる長さに設け、前記保護柵を湾曲させて両端を接近させた際、対向する前記括り紐同士を結び合わせて環状化でき、また別途同様な保護柵を繋いで柵長の延長も可能である。
【0015】
このように設置して使用される食害防止用植物保護柵は、特に柵用棒状物および杭用棒状物を、自然環境において生分解性または酸化分解性のある棒状物で構成することにより、草木が生長して収穫または伐採される時期には、土壌などの一部になって自然と一体化し、環境に負荷をかけず、また回収作業や処理の手間の省略可能なものになる。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、以上説明したように、保護対象の植物を地上で囲める所要数の柵用棒状物を設け、この棒状物より長尺の杭用棒状物を前記複数の柵用棒状物と共に紐状物で簾状に編成したので、幼草木の周囲に簾状の食害防止用植物保護柵を配置する際に、杭用棒状物を地面に打ち込んで固定するだけで柵を設置することができるものであり、保護対象の樹木等の植物を取り囲んで地面に容易かつ確実に食害防止用の保護柵を固定でき、地面との境界部分も隙間無く構成されるから、食害動物の侵入を確実に防止でき、可及的に簡単な設置作業で確実に食害を防止できる食害防止用植物保護柵となる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明の実施形態を以下に添付図面に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、実施形態は、刈り取った葦を一定の長さに揃えたものなどからなる多数の柵用棒状物1に、これより長尺で略同径の丸棒状の鉄鋼などからなる杭用棒状物2を混在させて用いたものであり、これら2種類の棒状物の一端が揃えられて、この一端を下向きにして略等間隔で配置される杭用棒状物2の上部が多数の柵用棒状物1より上方に突出した状態となるように紐状物3で簾状に編成した食害防止用植物保護柵である。
【0018】
柵用棒状物1は、植物を食害する動物が通常の食事行動で接しても破壊されない強度を有する材料で形成する。柵用棒状物1の具体例としては、鹿などを食害対象動物とする場合には、葦や竹などの硬質の天然素材を採用することが好ましいが、小動物のみを食害対象動物とする場合には、合成樹脂やゴム状弾性のある材料を使用することもできる。
【0019】
特に、食害を防止する所要の年月に耐え、その後に自然界の微生物に利用され、または空気酸化、紫外線等による劣化などで分子レベルまで分解されるものであることが好ましい。
【0020】
耐久性および分解性を兼ね備えた柵用棒状物1用の素材としては、例えばイネ科の多年草であって水辺に自生する葦を刈り取ったものを採用することができる。その他の柵用棒状物1の素材としては、笹や適当な幅に割った竹、ヨシ(蘆)、ガマ(蒲)、ゴギョウ(御形)などの植物体の他、生分解性樹脂(ポリ乳酸系樹脂など)などの合成樹脂、または棒状に裁断された間伐材その他の木材もしくはパルプ加工品など木質系成形体またはこれらもしくは前記した棒状物の表面に合成樹脂(生分解性樹脂など)をコーティングした棒状物などを採用することもできる。
【0021】
このような柵用棒状物1には、食害を防止する害獣に対応する忌避成分を染み込ませて用いることも好ましいことである。
【0022】
一方、杭用棒状物2は、上記した柵用棒状物1を支持する機械的強度(剛性)が必要なものであり、しかも酸化して(すなわち錆びて)土壌成分と一体化する鉄などの腐食可能な金属材からなるものを採用することが好ましい。因みに鉄材の場合は、ニッケル成分量を調整することにより、耐腐食性の程度を調整することもできる。
【0023】
また、金属材をパイプ状にして前記した柵用棒状物1と同様の素材の強度を高めた複合素材を採用することもできる。さらにまた金属材と生分解性樹脂などの合成樹脂との複合素材を採用し、強度と分解性を調整することもできる。
【0024】
この発明において編成に用いる紐状物3は、保護対象の植物を地上で囲める所要数の柵用棒状物1と、その間に間隔を開けて配置される杭用棒状物2とを一体にして簾状に編成できるものであり、例えば綿糸、麻糸などの天然繊維、合成繊維製糸や細いロープ、帯状(テープ状)の布、金属製のワイヤー、ピアノ線、釣り糸などを用いることもできる。このような紐状物3も生分解性のあるものを採用することが好ましい。
【実施例】
【0025】
刈り取った多数(約50本)の葦を長さ1.2mに裁断し、長さ1.5mで直径8mmの円柱状の鉄棒を4本取り揃え、葦を麻ロープで編みながらその十数本の間隔で鉄棒1本を編みこみながら、葦と鉄棒の一端を揃えた状態で葦簾を編む要領にて図1、図2に示す形態の全幅60cmの食害防止用植物保護柵を作製した。
【0026】
その際、編み込みの麻ロープは、柵の幅方向に予長約10cmの長さだけ編成に使用しない括り紐3aとして残しておいた。
【0027】
上記のように作製した食害防止用植物保護柵を使用する際には、図2に示すように、葦と鉄棒の一端を揃えた側を下にして苗木Aを囲むように環状に地面に直立状に配置し、金槌で鉄棒の上端を矢印方向に叩いて鎖線に示すように土中に打ち込み、葦の上端と鉄棒の上端が同じ高さになる状態にして固定し、さらに対向する麻ロープの括り紐3aの部分同士を結び合わせて、保護柵の両端の隙間を無くすようにした。
【0028】
このように食害防止用植物保護柵を設置する場合、杭や柵を別々に現場に運ぶことなく簡便であり、また杭用棒状物を用いて地面に容易かつ確実に固定することができ、また地面との境界部分も隙間なく設置できるので、鹿や兎、鼠などの害獣の侵入防止性に優れた保護柵が設置できた。
【0029】
また、葦や鉄棒は、苗木の成長後は、微生物で分解され、または酸化して錆が発生しそれが進行して腐食して朽ち、徐々に土壌化が進行した。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態を展開して示す正面図
【図2】実施形態の使用状態を示す斜視図
【図3】従来例の使用状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0031】
1 柵用棒状物
2 杭用棒状物
3 紐状物
3a 括り紐
4 布
5 支柱
A 幼木
G 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護対象の植物を地上で囲める所要数の柵用棒状物を設け、この棒状物より長尺の杭用棒状物を前記複数の柵用棒状物と共に紐状物で簾状に編成してなる食害防止用植物保護柵。
【請求項2】
杭用棒状物が、柵用棒状物の長手方向に沿ってスライド可能に編成されている請求項1に記載の食害防止用植物保護柵。
【請求項3】
紐状物を保護柵の両端から延長して括り紐となる長さに設け、前記保護柵を湾曲させて両端を接近させた際、対向する前記括り紐同士を結び合わせて環状化が可能な請求項1または2に記載の食害防止用植物保護柵。
【請求項4】
柵用棒状物および杭用棒状物が、自然環境において生分解性または酸化分解性のある棒状物である請求項1または2に記載の食害防止用植物保護柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−314274(P2006−314274A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141196(P2005−141196)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(505176578)株式会社ピヌス (1)
【Fターム(参考)】