説明

飲料物殺菌方法及び飲料物供給装置

【課題】
冷飲料を供給する飲料物供給装置、或は冷飲料供給部を具備する飲料物供給装置に於いて、殺菌を可能とし、又雑菌の発生を防止する。
【解決手段】
氷供給ライン59を具備する飲料物供給装置に於いて、前記氷供給ラインが製氷水供給ライン38、製氷室41、氷供給路47を具備し、前記製氷水供給ラインを経て製氷水が前記製氷室に送給され、該製氷室で製氷された氷を前記氷供給路を経て送給する様にし、前記製氷水が製氷に至る迄の過程で殺菌を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲料物殺菌方法及び飲料物供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料物供給装置としては、缶或はボトル詰の飲料水を供給する装置、或は温水、冷水、粉末コーヒー、粉末ジュース等の飲料原料を個別に貯蔵し、カップにこれら飲料原料を調製して供給するカップ式の飲料物供給装置があり、カップ式の飲料物供給装置としては、従来特許文献1、或は特許文献2に示されるものがある。
【0003】
特許文献1に示される従来のカップ式飲料物供給装置を図9により略述する。
【0004】
図中、1は温水タンク、2は該温水タンク1に接続された水道供給ライン、3はコーヒー豆貯蔵部、4はミル、5はコーヒーブリュア、6は砂糖、クリーム等のトッピング貯蔵部、7はミキシングボールであり、前記温水タンク1から前記ミキシングボール7に対して第1温水供給ライン8が設けられ、前記温水タンク1から前記コーヒーブリュア5に対して第2温水供給ライン9が設けられ、前記コーヒーブリュア5から前記ミキシングボール7に対してコーヒー液供給ライン11が設けられている。又、図中12はドリップ後のコーヒー滓を捨てる為のバケツ、13は調製後のコーヒーが注がれるカップである。
【0005】
飲料物の供給が要求されると、前記ミル4に適量のコーヒー豆が供給され、挽かれて前記コーヒーブリュア5に供給され、該コーヒーブリュア5に前記温水タンク1から前記第2温水供給ライン9を介して温水が供給されドリップされた濃縮コーヒー液が前記ミキシングボール7に供給される。該ミキシングボール7には前記温水タンク1から前記第1温水供給ライン8を介して温水が供給されると共に前記トッピング貯蔵部6からミルク、砂糖等が供給されて調製される。調製されたコーヒーは前記カップ13に注がれて供給される。
【0006】
特許文献2に示される従来のカップ式飲料物供給装置を図10により略述する。
【0007】
図10で示されるカップ式飲料物供給装置は、コーヒーの他にジュース、ココア、お茶の飲料が提供可能となっていると共に冷飲料が提供可能となっている。図10中、図9中で示したものと、同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0008】
図中、15は第2原料貯蔵部であり、粉末ジュース、ココア、お茶の葉等が貯蔵され、第2ミキシングボール16で調製した飲料をカップ13に注ぐ様になっている。
【0009】
又、冷飲料供給部はカップ式飲料物供給装置上部に冷水タンク17を備え、カップ式飲料物供給装置内部には水リザーバ18、製氷機19、冷水生成部21を具備し、前記冷水タンク17から供給される冷水を氷と共に前記カップ13に供給可能となっている。
【0010】
尚、前記冷水タンク17には給水タンク22に注水された水が給水ライン23を介して給水される様になっている。
【0011】
又、特許文献3には流下する飲料物を紫外線で殺菌する飲料物殺菌装置を具備したカップ式の飲料物供給装置が示されている。
【0012】
特許文献3に示されるカップ式飲料物供給装置を図11により略述する。
【0013】
図11中、図9中で示したものと、同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0014】
該飲料物供給装置では飲料水供給源として、水道の代りに貯溜タンク24を具備し、該貯溜タンク24から温水タンク1に至る経路途中に紫外線殺菌装置25が設けられ、前記温水タンク1を経てミキシングボール7へ供給される水を殺菌している。
【0015】
飲料物供給装置は長時間、無人で飲料の供給を行うところから、雑菌の発生を考慮しなければならない。特許文献1で示される飲料物供給装置では、温飲料を供給する飲料物供給装置であり、温飲料を供給する場合では加熱により雑菌の発生を防止することができる。
【0016】
一方、特許文献2の飲料物供給装置では冷飲料も供給しており、冷飲料の供給部での殺菌、雑菌の発生の防止を考慮する必要がある。又、特許文献3の飲料物供給装置では、殺菌装置を具備し、供給する水を殺菌しているが、冷水供給系を具備してなく、冷水供給系の殺菌については示されていない。
【0017】
上記従来例のいずれにも冷水を供給する部分に於ける、殺菌については考慮されてない。一般的に飲料物供給装置が冷水供給系を具備している場合、冷水供給系自体には殺菌装置は具備されてなく、長時間使用されない場合、使用されなかった場合等は、冷飲料の供給部の冷水を排出する等、飲料物供給装置の運転方法で対応していた。
【0018】
【特許文献1】特開平7−220164号公報
【0019】
【特許文献2】特開2001−283316号公報
【0020】
【特許文献3】特開2002−262837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は斯かる実情に鑑み、冷飲料を供給する飲料物供給装置、或は冷飲料供給部を具備する飲料物供給装置に於いて、殺菌を可能とし、又雑菌の発生を防止するものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、氷供給ラインを具備する飲料物供給装置に於いて、前記氷供給ラインが製氷水供給ライン、製氷室、氷供給路を具備し、前記製氷水供給ラインを経て製氷水が前記製氷室に送給され、該製氷室で製氷された氷を前記氷供給路を経て送給する様にし、前記製氷水が製氷に至る迄の過程で殺菌を行う飲料物殺菌方法に係るものである。
【0023】
又本発明は、前記製氷室に対して製氷水を循環させ、循環途中で殺菌を行う飲料物殺菌方法に係り、又前記製氷室に製氷水を給水する過程で殺菌を行う飲料物殺菌方法に係るものである。
【0024】
又本発明は、前記製氷室が製氷水を貯留する貯水タンクを具備し、該貯水タンクに貯留された水が所定レベル以下の時は前記貯水タンクに水を給水する過程で殺菌を行い、所定レベルを越える場合は、貯留された水を循環させ、循環途中で殺菌を行う飲料物殺菌方法に係るものである。
【0025】
又本発明は、紫外線により殺菌する飲料物殺菌方法に係り、又パルス光により殺菌する飲料物殺菌方法に係るものである。
【0026】
又本発明は、少なくとも製氷室、該製氷室に製氷水を供給する製氷水供給ライン、製氷された氷を所要位置に供給する氷供給路から構成される氷供給ラインを具備し、前記製氷水供給ライン、前記製氷室の少なくとも一つに殺菌装置が設けられた飲料物供給装置に係るものである。
【0027】
又本発明は、少なくとも製氷室、該製氷室に製氷水を供給する製氷水供給ライン、製氷された氷を所要位置に供給する氷供給路から構成される氷供給ラインと、前記製氷室内の製氷水を循環させる循環ラインとを具備し、前記製氷水供給ライン、前記製氷室、前記循環ラインの少なくとも一つに殺菌装置が設けられた飲料物供給装置に係るものである。
【0028】
又本発明は、前記製氷室は貯水タンクを具備し、前記循環ラインは前記貯水タンクに接続され、前記製氷水供給ラインは前記循環ラインを介して前記貯水タンクに接続された飲料物供給装置に係るものである。
【0029】
又本発明は、前記製氷水供給ラインが給水バルブを有し、前記循環ラインが循環バルブ、循環ポンプ、殺菌装置とを有し、前記貯水タンクが貯留する製氷水の水位を検出するレベルスイッチを有し、該レベルスイッチの検出結果を基に前記給水バルブ、循環バルブ、循環ポンプ、殺菌装置の運転を制御する制御部が設けられ、該制御部は前記レベルスイッチが検出する水位が所定レベル以下の場合に、前記製氷水供給ラインから供給される製氷水が前記殺菌装置を経て殺菌して前記貯水タンクに供給され、前記レベルスイッチが検出する水位が所定レベルを越える場合に前記貯水タンクに貯留された製氷水を前記循環ラインで循環させ前記殺菌装置で殺菌する様、前記給水バルブ、前記循環バルブ、殺菌装置、循環ポンプを運転制御する様構成した飲料物供給装置に係るものである。
【0030】
更に又本発明は、前記殺菌装置はフラッシュランプを具備し、殺菌は流通する製氷水にパルス光を照射して行う飲料物供給装置に係るものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、氷供給ラインを具備する飲料物供給装置に於いて、前記氷供給ラインが製氷水供給ライン、製氷室、氷供給路を具備し、前記製氷水供給ラインを経て製氷水が前記製氷室に送給され、該製氷室で製氷された氷を前記氷供給路を経て送給する様にし、前記製氷水が製氷に至る迄の過程で殺菌を行うので、又前記製氷室に対して製氷水を循環させ、循環途中で殺菌を行い、或は前記製氷室に製氷水を給水する過程で殺菌を行うので、氷を生成し、供給する過程での雑菌の発生を防止することができる。
【0032】
又本発明によれば、前記製氷室が製氷水を貯留する貯水タンクを具備し、該貯水タンクに貯留された水が所定レベル以下の時は前記貯水タンクに水を給水する過程で殺菌を行い、所定レベルを越える場合は、貯留された水を循環させ、循環途中で殺菌を行うので、製氷室が製氷水を貯留する構造を有する場合に供給過程で、或は貯留されている過程で殺菌が行われるので、製氷水が貯留されずに製氷に供される場合、貯留され製氷に供される場合のいずれの状態でも確実に殺菌が行われる。
【0033】
又本発明によれば、紫外線により殺菌し、或はパルス光により飲料物を殺菌するので、冷水状態での殺菌が可能となる。
【0034】
又本発明によれば、少なくとも製氷室、該製氷室に製氷水を供給する製氷水供給ライン、製氷された氷を所要位置に供給する氷供給路から構成される氷供給ラインを具備し、前記製氷水供給ライン、前記製氷室の少なくとも一つに殺菌装置が設けられたので、氷を生成し、供給する過程での雑菌の発生を防止することができる。
【0035】
又本発明によれば、少なくとも製氷室、該製氷室に製氷水を供給する製氷水供給ライン、製氷された氷を所要位置に供給する氷供給路から構成される氷供給ラインと、前記製氷室内の製氷水を循環させる循環ラインとを具備し、前記製氷水供給ライン、前記製氷室、前記循環ラインの少なくとも一つに殺菌装置が設けられたので、氷を生成し、供給する過程での雑菌の発生を防止することができる。
【0036】
又本発明によれば、前記製氷水供給ラインが給水バルブを有し、前記循環ラインが循環バルブ、循環ポンプ、殺菌装置とを有し、前記貯水タンクが貯留する製氷水の水位を検出するレベルスイッチを有し、該レベルスイッチの検出結果を基に前記給水バルブ、循環バルブ、循環ポンプ、殺菌装置の運転を制御する制御部が設けられ、該制御部は前記レベルスイッチが検出する水位が所定レベル以下の場合に、前記製氷水供給ラインから供給される製氷水が前記殺菌装置を経て殺菌して前記貯水タンクに供給され、前記レベルスイッチが検出する水位が所定レベルを越える場合に前記貯水タンクに貯留された製氷水を前記循環ラインで循環させ前記殺菌装置で殺菌する様、前記給水バルブ、前記循環バルブ、殺菌装置、循環ポンプを運転制御する様構成したので、製氷室が製氷水を貯留する構造を有する場合に供給過程で、或は貯留されている過程で殺菌が行われるので、製氷水が貯留されずに製氷に供される場合、貯留され製氷に供される場合のいずれの状態でも確実に殺菌が行われる。
【0037】
又本発明によれば、前記殺菌装置はフラッシュランプを具備し、殺菌は流通する製氷水にパルス光を照射して行うので、冷水状態での殺菌が可能となり、又パルス光による殺菌であるので、必要な時に、必要な量だけリアルタイムで運転でき、経済的である等の優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0039】
図1は本発明に係る飲料物供給装置、特にカップ式飲料物供給装置の構成の概略を示すものである。
【0040】
図中、26はリザーブタンク、27は湯タンク、28はコーヒードリップ部、29はカップ、30は製氷部、31は殺菌部、32は水道水供給部、61は制御部を示している。
【0041】
前記水道水供給部32は第1供給ライン33を介して前記リザーブタンク26に水道水を供給すると共に第2供給ライン34を介して前記カップ29に水道水を供給可能となっており、前記第1供給ライン33には図示しない電磁弁が設けられ、前記リザーブタンク26中の水位を所定レベルに保持する様に電磁弁が開閉され、前記第1供給ライン33への給水が制御されている。又、前記第2供給ライン34には図示しない電磁弁が設けられ、飲料物供給の要求があった場合に、前記カップ29へ適量の水道水を供給する様に電磁弁が制御される。
【0042】
前記リザーブタンク26にはコーヒー液供給ライン35が連通され、該コーヒー液供給ライン35には逆止弁36、送給ポンプ37、前記湯タンク27、前記コーヒードリップ部28が設けられており、前記湯タンク27はヒータを具備し、該ヒータにより貯留された水を所定温度に加熱保持している。前記コーヒードリップ部28は、コーヒー豆貯蔵部、ミル、コーヒーブリュアを具備し、前記湯タンク27からのお湯を注ぐことでコーヒー液を抽出し、ミキシングボールに供給可能となっている(図9参照)。尚、トッピング貯蔵部については図示を省略している。
【0043】
前記コーヒー液供給ライン35は前記逆止弁36の上流で製氷水供給ライン38として分岐され、該製氷水供給ライン38は給水バルブ39を具備し、前記殺菌部31を介して前記製氷部30に接続されている。該製氷部30には氷融解水戻しライン40が接続され、前記コーヒー液供給ライン35の前記湯タンク27の上流位置(例えば前記送給ポンプ37の上流側)に接続されている。前記氷融解水戻しライン40は製氷された氷が、前記製氷部30の製氷室41内で溶解し、水となったものを前記湯タンク27に導くものである。
【0044】
前記製氷部30について略述する。
【0045】
前記製氷室41の内部には、貯水タンク42が設けられ、該貯水タンク42の水位はレベルスイッチ(例えばフロートスイッチ)43によって検出される様になっている。又、前記製氷室41の内部に冷凍板44及び該冷凍板44に対向して配置された噴霧ノズル45が設けられ、該噴霧ノズル45は製氷部ポンプ46を介して前記貯水タンク42に接続されている。
【0046】
前記冷凍板44が冷却された状態で前記製氷部ポンプ46が駆動され、前記噴霧ノズル45より前記冷凍板44に向って前記貯水タンク42の水が噴霧されることで、氷が生成され、生成された氷は氷供給路47を介して前記カップ29に供給される様になっている。而して、該氷供給路47、前記製氷水供給ライン38、前記製氷室41は氷供給ライン59を構成する。
【0047】
又、前記殺菌部31は前記貯水タンク42に接続され、前記殺菌部31は循環ライン48と該循環ライン48に設けられた殺菌装置49、循環ポンプ50、循環バルブ51を具備しており、前記循環ライン48は前記製氷水供給ライン38と一部を共用している。
【0048】
前記殺菌装置49の一例について、図2により説明する。
【0049】
該殺菌装置49は紫外線を使用した殺菌装置であり、更に紫外線の発光源として紫外線ランプ、或は高光強度のパルス光を発するキセノンランプ(以下フラッシュランプと称する)が使用される。以下の実施例では紫外線の発生源としてフラッシュランプを用いた場合を示している。該フラッシュランプが発する波長特性を図3に示す。尚、紫外線の殺菌作用としては、略270nm近傍の波長が効果的であることが知られており、図3の波長特性から分る様に、前記フラッシュランプから発せられるパルス光には、殺菌に必要な略270nm近傍の波長の紫外線を充分に含んでいる。
【0050】
筒状の殺菌室53に棒状のフラッシュランプ54が同心に設けられ、該フラッシュランプ54は紫外線を吸収しない材質(例えば石英)からなる保護管52で液密に覆われている。前記殺菌室53の内面は好ましくは鏡面とされており、両端は液密に閉塞され、該殺菌室53の一端部には前記循環ライン48の一部である水入口55が連通され、該水入口55の他端部には前記循環ライン48の一部である水出口56が連通されている。前記水入口55は流量調整器57を介して前記貯水タンク42に接続されている。又、前記水出口56には給水口(図示せず)が接続され、該水出口56は前記循環ポンプ50を介して前記貯水タンク42に接続されている。
【0051】
前記フラッシュランプ54には該フラッシュランプ54の発光時期、発光強度、発光周波数、発光時間等を制御する電源制御装置58が接続されている。
【0052】
該電源制御装置58は、前記フラッシュランプ54が紫外線を含むフラッシュ光を所要の発光時間(発光パルス数)、所要の光強度、周波数で発する様該フラッシュランプ54を制御する。例えば、フラッシュランプを0.0025J、光パルスは20Hzで照射させる。前記流量調整器57は飲料水が前記水入口55から前記殺菌室53に流入し、前記水出口56から流出する時間が、例えば、10秒程度掛る様に(200パルス程度の照射が行われる様に)、流速を調整する。尚、フラッシュランプの光強度を増大させた場合は、光強度に対応させて流速を増大させる。
【0053】
而して、飲料水は前記水入口55から前記殺菌室53を通って前記水出口56から流出する過程で、前記フラッシュランプ54の照射を受け、照射光に含まれる紫外線により殺菌される。又、該フラッシュランプ54は流通する飲料水の中にあるので、該フラッシュランプ54から発せられる照射光が無駄なく全て飲料水に照射されることになるので、高効率で殺菌が行える。
【0054】
又、前記電源制御装置58は前記フラッシュランプ54をパルス発光させるので、必要な時に瞬時に発光が可能であり、又必要な照射量を必要な時間だけ飲料水に照射させることができ、フラッシュランプ54の消耗を抑制し、長期間の使用を可能とし、又省エネルギ効果がある。
【0055】
前記制御部61は、前記コーヒードリップ部28、前記送給ポンプ37、前記給水バルブ39、前記循環バルブ51、前記製氷部ポンプ46、前記循環ポンプ50、前記電源制御装置58等を総合して制御するものである。
【0056】
以下、作動について図4を参照して説明する。
【0057】
前記水道水供給部32から前記リザーブタンク26に水道水が供給され、所要の水位に保たれる。又、前記貯水タンク42の水位が低下し、前記レベルスイッチ43がONとなると、前記循環バルブ51が閉止され、前記給水バルブ39が開放され、前記循環ポンプ50が運転される。
【0058】
前記リザーブタンク26に貯留された水が、前記製氷水供給ライン38、循環ライン48を経て前記貯水タンク42に供給され、供給過程で前記殺菌装置49により紫外線が照射されることで殺菌される。
【0059】
又、前記貯水タンク42に貯留された水は、前記製氷部ポンプ46により前記噴霧ノズル45から前記冷凍板44に向って噴霧され、氷が所定量に維持される様に製氷される。
【0060】
前記貯水タンク42に貯留された水が所定レベル以上に維持されている状態では、前記レベルスイッチ43はOFFであり、この状態で所定時間が経過すると、前記給水バルブ39が閉止され、前記循環バルブ51が開放され、前記循環ポンプ50が運転され、前記フラッシュランプ54が運転される。該フラッシュランプ54はパルス光を発するので、ウォーミングアップ無しに直ちに発光が可能であり、休止状態からリアルタイムで運転状態へ移行することができる。
【0061】
前記フラッシュランプ54の運転により、前記貯水タンク42に貯留された水が前記循環ライン48を介して循環され、循環途中で前記殺菌装置49を通過し、紫外線が照射され殺菌される。循環は所要時間、例えば前記貯水タンク42内の水が一通り循環する時間(図示では20分)とする。
【0062】
所定時間が経過すると、前記給水バルブ39、前記循環バルブ51が閉止され、又前記循環ポンプ50、前記殺菌装置49の運転が停止される。
【0063】
而して、前記制御部61は、前記貯水タンク42の水位が低下し、前記レベルスイッチ43がONとなるか、所定時間が経過するか、いずれかの状態となる迄、前記給水バルブ39、前記循環バルブ51、前記殺菌部31の運転を停止する。
【0064】
而して、前記貯水タンク42へ供給される水が紫外線殺菌され、更に前記貯水タンク42に貯留された状態が所定時間を経過すると、前記貯水タンク42内の水が殺菌される。
【0065】
利用者からの要求があると、前記制御部61は前記コーヒードリップ部28を運転し、又前記送給ポンプ37を運転して、温水を前記コーヒードリップ部28に供給してコーヒー液を前記カップ29に抽出する。前記製氷部30から氷が前記カップ29に供給されると共に前記水道水供給部32から水道水が前記カップ29に適量供給され、該カップ29には冷飲料コーヒーとして調製され注がれる。
【0066】
尚、前記水道水供給部32からの水は、新鮮な水道水であり、水道水は殺菌されているので、飲料物供給装置に於いて水道水を殺菌する必要はない。
【0067】
図5は、前記フラッシュランプ54による紫外線の照射による殺菌効果を示すものである。
【0068】
<実験1>
1)供試菌の培養及び調整
供試菌株は、大腸菌(Escherichia coli)、Pseudomonas diminuta、Bacillus pumilus(芽胞)、及びAspergillus niger(胞子)である。大腸菌とPseudomonas diminutaはSCD培地等の培地で増殖させ、滅菌水で希釈し、調整し、菌数が1×105 /mlの菌液を得る。芽胞又は胞子の液は次の様に調整する。
a)Bacillus pumilusの芽胞液の調整は、寒天培地にて35℃で7日間培養の後、生理食塩水により培地上の胞子を回収し、ガラスビーズ処理、ナイロンメッシュ濾過して80℃で20分間熱処理し、原液菌数が約1.0×1010CFU/mlになる様、遠心集菌後、滅菌水により懸濁して4℃で保存し、更に、芽胞液を滅菌水で希釈し調整し、約1.0×104 CFU/mlの菌液を得る。
b)Aspergillus nigerの胞子の調整は、PDA寒天培地にて25℃で7日間培養の後、0.1%Tween80水溶液により培地上の胞子を回収し、約30分間激しく沸騰させてナイロンメッシュ濾過し、原液菌数が約1.0×107 CFU/mlになる様、遠心集菌後、滅菌水により懸濁し、更に、滅菌水で希釈し調整し、約1.0×104 CFU/mlの菌液を得る。
【0069】
2)照射方法及び照射条件
サンプル液調整は、オートクレーブしたシャーレ(原則として平均内径27mm)に菌液(原則として6ml)を無菌的に入れ、水深11mmとなる様調整し、前記フラッシュランプ54により直ちに照射する。ここでサンプル液は、該フラッシュランプ54より水面迄の距離を15mmにする様フラッシュランプ54の直下に配置し、フラッシュランプ54は、所定の周波数(2Hz〜33Hz)で照射、1秒〜8秒間照射する。
【0070】
3)菌数測定方法
照射後、サンプル液0.1mlを寒天平板に塗布し、所定温度で、24h〜48h培養し、コロニーカウントを行った。コロニー数がカウントに適さない程多くなりそうなサンプルでは、サンプル液を10倍希釈した後、上記の操作を行なった。以下、結果を図5に示す。
【0071】
その結果、大腸菌は、1mlの液に対し2回の閃光(パルス)を照射した場合(菌液量に対するフラッシュランプ54の入力エネルギ量は0.67J/ml)、その44%が、4回の閃光(1.33J/ml)ではその85%が、8回の閃光(2.67J/ml)ではその99.99%以上が殺菌された。他の細菌では、大腸菌より効果が弱いものの、照射を強力にすることにより99.8%以上の殺菌効果が認められた。カビ類であるAspergillus nigerの胞子は特に耐性が強かったが、入力エネルギを更に高めることにより、99%迄殺菌できた。Aspergillus nigerの胞子は液量を16.9ml迄増加しても容積当りの入力エネルギが確保されれば殺菌効果は低下しなかった。
【0072】
従って、衛生上の指標とされている大腸菌に注目すれば、その50%〜99.99%を殺菌する条件(菌液量に対するフラッシュランプ54の入力エネルギ量)は0.7J/ml〜2.7J/mlであった。又、薬剤等の抵抗性の強いBacillus属の細菌に対しても、11.0J/mlの照射で99.99%以上が殺菌できた。即ち0.7J/ml〜11.0J/mlの入力エネルギを与えることにより、水を適確に殺菌することができる。ここで、照射エネルギが0.7J/ml未満の場合には十分に殺菌することができず、11.0J/mlより大きい場合には、無駄なエネルギーが多いという問題がある。
【0073】
又、フラッシュランプは、照射一回当り0.01J/ml〜10J/mlの照射エネルギを発生させる様構成されると共に、フラッシュランプは、振動数1Hz〜100Hz、発光時間1.0μS〜1.0mS、出力範囲0.2W〜500Wにより構成されると、フラッシュランプの紫外光を含む閃光により水を適切に殺菌処理することができる。又、フラッシュランプを必要に応じて適切に使用し得るので、フラッシュランプの寿命を更に延ばすと共に電気消費量を確実に抑制し、ランニングコストを一層低減することができる。
【0074】
図6、図7は他の殺菌装置49を示している。
【0075】
該殺菌装置49では、フラッシュランプ54を殺菌室53の外部に設けたものである。
【0076】
断面が台形等の殺菌室53の上面は開放されているか、或は石英ガラスで密閉されている。該殺菌室53の上面に対向して前記フラッシュランプ54が配設され、該フラッシュランプ54の周囲は反射鏡63で覆われている。該反射鏡63の前記フラッシュランプ54に対向する部分は鏡面となっており、該フラッシュランプ54から発せられるパルス光を前記殺菌室53に向って反射する。尚、前記反射鏡63の鏡面について、反射鏡63の材質をステンレス鋼として鏡面仕上げとするか、或は適宜な材質とし内面にクロームメッキを施すか、或はアルミを蒸着するか等種々の方法が考えられる。
【0077】
図8は更に他の殺菌装置49を示しており、殺菌室53を矩形細長の容器としフラッシュランプ54を前記殺菌室53に対向させ配設し、前記フラッシュランプ54を山型形状の反射鏡63で覆い、更に該反射鏡63を前記殺菌室53と密閉な容器を構成するカバー64で覆ったものである。
【0078】
その他、紫外線による飲料物の殺菌装置としては、本出願人が先に出願した特開2003−331352号公報、特開2004−57845号公報に記載されたものがある。
【0079】
尚、上記実施の形態に於いて、フラッシュランプ54を紫外線ランプに置換することも可能であり、この場合、紫外線ランプは連続点灯となる。
【0080】
又、殺菌部31で殺菌する箇所は、加熱が行われない氷供給ライン59に設けられることが好ましく、前記貯水タンク42の前記循環ライン48以外の場所に設けてもよい。例えば、前記製氷室41の内部を照射する様に、フラッシュランプ54或は紫外線ランプを設けてもよく、更に製氷室41の内部で前記冷凍板44に向って噴霧される水に対して照射する様にしてもよい。
【0081】
又、前記製氷水供給ライン38は前記殺菌部31を介さず、独立して前記貯水タンク42に直接接続し、製氷水の殺菌は前記殺菌部31を独立して循環させることで行ってもよい。
【0082】
又、前記殺菌部31での殺菌は、間欠的に前記貯水タンク42の水を循環させ実施する様にしたが、水を連続して循環させ、殺菌は間欠的に或は連続して行う様にしてもよい。
【0083】
又、第2供給ライン34に殺菌装置、例えば前記殺菌装置49と同様な殺菌装置を設けて第2供給ライン34を流れる水を殺菌してもよい。この場合、第2供給ライン34が前記殺菌装置を迂回する様にし、同一の殺菌装置49或は同一のフラッシュランプ54によって殺菌する様にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態で使用される殺菌装置の一例を示す説明図である。
【図3】該殺菌装置で使用されるフラッシュランプが発するパルス光の波長特性を示す線図である。
【図4】本発明の実施の形態に於ける作動を示すフローチャートである。
【図5】前記フラッシュランプによる紫外線の照射による殺菌効果を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態で使用される殺菌装置の他の例を示す説明図である。
【図7】該殺菌装置の断面図である。
【図8】本発明の実施の形態で使用される殺菌装置の更に他の例を示す説明図である。
【図9】従来例を示す説明図である。
【図10】他の従来例を示す説明図である。
【図11】更に他の従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0085】
32 水道水供給部
38 製氷水供給ライン
39 給水バルブ
41 製氷室
42 貯水タンク
43 レベルスイッチ
47 氷供給路
48 循環ライン
49 殺菌装置
50 循環ポンプ
51 循環バルブ
54 フラッシュランプ
59 氷供給ライン
61 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
氷供給ラインを具備する飲料物供給装置に於いて、前記氷供給ラインが製氷水供給ライン、製氷室、氷供給路を具備し、前記製氷水供給ラインを経て製氷水が前記製氷室に送給され、該製氷室で製氷された氷を前記氷供給路を経て送給する様にし、前記製氷水が製氷に至る迄の過程で殺菌を行うことを特徴とする飲料物殺菌方法。
【請求項2】
前記製氷室に対して製氷水を循環させ、循環途中で殺菌を行う請求項1の飲料物殺菌方法。
【請求項3】
前記製氷室に製氷水を給水する過程で殺菌を行う請求項1の飲料物殺菌方法。
【請求項4】
前記製氷室が製氷水を貯留する貯水タンクを具備し、該貯水タンクに貯留された水が所定レベル以下の時は前記貯水タンクに水を給水する過程で殺菌を行い、所定レベルを越える場合は、貯留された水を循環させ、循環途中で殺菌を行う請求項1の飲料物殺菌方法。
【請求項5】
紫外線により殺菌する請求項1〜請求項4のいずれか1つの飲料物殺菌方法。
【請求項6】
パルス光により殺菌する請求項1〜請求項4のいずれか1つの飲料物殺菌方法。
【請求項7】
少なくとも製氷室、該製氷室に製氷水を供給する製氷水供給ライン、製氷された氷を所要位置に供給する氷供給路から構成される氷供給ラインを具備し、前記製氷水供給ライン、前記製氷室の少なくとも一つに殺菌装置が設けられたことを特徴とする飲料物供給装置。
【請求項8】
少なくとも製氷室、該製氷室に製氷水を供給する製氷水供給ライン、製氷された氷を所要位置に供給する氷供給路から構成される氷供給ラインと、前記製氷室内の製氷水を循環させる循環ラインとを具備し、前記製氷水供給ライン、前記製氷室、前記循環ラインの少なくとも一つに殺菌装置が設けられたことを特徴とする飲料物供給装置。
【請求項9】
前記製氷室は貯水タンクを具備し、前記循環ラインは前記貯水タンクに接続され、前記製氷水供給ラインは前記循環ラインを介して前記貯水タンクに接続された請求項8の飲料物供給装置。
【請求項10】
前記製氷水供給ラインが給水バルブを有し、前記循環ラインが循環バルブ、循環ポンプ、殺菌装置とを有し、前記貯水タンクが貯留する製氷水の水位を検出するレベルスイッチを有し、該レベルスイッチの検出結果を基に前記給水バルブ、循環バルブ、循環ポンプ、殺菌装置の運転を制御する制御部が設けられ、該制御部は前記レベルスイッチが検出する水位が所定レベル以下の場合に、前記製氷水供給ラインから供給される製氷水が前記殺菌装置を経て殺菌して前記貯水タンクに供給され、前記レベルスイッチが検出する水位が所定レベルを越える場合に前記貯水タンクに貯留された製氷水を前記循環ラインで循環させ前記殺菌装置で殺菌する様、前記給水バルブ、前記循環バルブ、殺菌装置、循環ポンプを運転制御する様構成した請求項9の飲料物供給装置。
【請求項11】
前記殺菌装置はフラッシュランプを具備し、殺菌は流通する製氷水にパルス光を照射して行う請求項7〜請求項10のいずれか1つの飲料物供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−23908(P2006−23908A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200409(P2004−200409)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(000113067)プリマハム株式会社 (72)
【Fターム(参考)】