説明

飼料添加剤、飼料、その製造方法、斃死予防剤、及び飼育方法

【課題】畜産動物、甲殻類及び魚類が本来的に備えている免疫機能を、ごく微量で的確に活性化して感染症を予防し、薬物残留などの公衆衛生上の問題のない、安全な甲殻類及び魚類を育成するための飼料添加剤、この飼料添加剤を添加した飼料の製造方法及びプレミックスあるいは飼料を提供し、ペット等に対するアレルギー疾患、自己免疫疾患、生活習慣病、高齢に伴う機能異常、悪性新生物等に対する予防・治療法に有益な小麦発酵抽出物を配合した添加剤、プレミックス、サプリメント及び各種飼料を提供すること。
【解決手段】小麦発酵抽出物及びバチルス菌体を配合することを特徴とする免疫賦活、感染症予防効果を有する飼料及び添加剤の製造方法及び添加剤、プレミックス、及び飼料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜産又は水産飼料添加剤及び該飼料添加剤を添加した飼料に係わり、特に免疫賦活、感染症予防に著効を示す飼料添加剤、プレミックスと、この飼料添加剤を適宜の割合で添加した飼料の製造方法及び添加剤、プレミックス及び飼料に関する。プレミックスは、Prepared Mix(調製粉)の略で、小麦粉等の粉類(澱粉を含む)に糖類、油脂、脱脂粉乳、卵粉、膨張剤、食塩、香料などを必要に応じて適宜に配合したものである。
【背景技術】
【0002】
近年、畜産や水産産業が発展するに伴って、細菌病並びにウィルス病が多発し、甚大な経済的被害をもたらしている。豚のサルモネラ症、大腸菌症、オーエスキー病などや、鶏のインフルエンザ、ニューカッスル病、サルモネラ症、マレック病など、甲殻類や魚類の疾病については、クルマエビの急性ウィルス血症、ビブリオ病、ブリの類結節症、腸球菌症、アユの冷水病、シュードモナス病、マダイ、カンパチ、ブリなどのイリドウィルス感染症などの発生が多く、経済的被害が大きい。
【0003】
これらの病気のうち細菌性疾病については、治療薬として抗生物質や合成抗菌剤が用いられているが、抗菌性物質に対する耐性菌が出現し、充分な治療効果が得られていない。また、使用した薬剤の畜産動物、甲殻類、魚類への残留による公衆衛生上の問題が生じていることから、化学療法に依存しない予防対策が強く望まれている。一方、ペット、畜産動物、甲殻類及び魚類のウィルス病については、治療薬が開発されておらず、病気が依然として多発している状況にある。
【0004】
一方ペット(愛玩動物あるいはコンパニオンアニマルを含む)は高齢化社会の進展や生活様式が核家族化することにともない、その飼育数は世界的に増加の一途をたどっている。そしてこれら動物は野外で飼育されるよりは、家族の一員として飼育されることが多くなっている。この結果、動物の育成環境や食環境が人間のそれと極めて近いものとなる状況が現出している。このためペット等の疾病構造には大きな変化が起こっており、アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギーや自己免疫疾患、糖尿病をはじめとする生活習慣病、骨そしょう症をはじめとする高齢者特有の疾患、免疫低下や不全に基づく感染症、この他がんや白血病などの悪性新生物など、現在人で大きな問題になっている疾患群のすべてがペット等で発生するリスクがあるといって過言ではない。これらペット等における各種疾患群に対しては、主として人に対する医薬品等が代替品として投与される場合が多いが、人とペットでは動物種が異なることから、人用医薬品の有効性は限定的であるとともに、使用にも限界がある。これらの疾患に対して、ペット等の免疫機能を活性化することにより、予防や治療効果を期待することが考えられる。
【0005】
ペット、畜産動物、甲殻類及び魚類の免疫機能の増強と感染症の予防を目的として、ビィフィドバクテリウム・サーモフィラム由来のペプチドグリカン(特許文献1)、バチラス属などグラム陽性菌の細胞壁成分(特許文献2)、スエヒロタケ由来のβ−1,3−グルカン(特許文献3)などの多糖類を利用することは、既に知られている。しかしながら、十分に所望の免疫増強効果を奏し得、飼料又はサプリメントとして実用できる免疫増強物質の開発は未だなされていない現状にある。また、本文献には小麦発酵抽出物の添加方法についての具体的な記述は無い。
【0006】
既に述べた様に、ペット、畜産動物、甲殻類及び魚類には種々の感染症が多発し、その結果斃死に至るものもあり、甚大な経済的被害をもたらしている。この背景には、これらの畜産又は水産動物が限られた環境で過密に飼育されることによる免疫機能の低下が挙げられる。本発明で使用される食経験が長く、安全性が高いパントエア菌由来のリポ多糖をバイオ技術で大量生産した小麦発酵抽出物には、免疫賦活作用があり、また、ニワトリやブリ、コイ、マウスに経口投与することで感染防除効果を得ていることが特許文献4にある。さらに、βエンドルフィンの誘導作用があり、鎮痛効果があることから(非特許文献1)、ストレスに対する抵抗性効果が期待される。小麦発酵抽出物の有効成分の一つに低分子リポ多糖を含むが、低分子リポ多糖ではポリミキシンBで阻害されるマクロファージ活性化が小麦発酵抽出物では阻害されないことや、低分子リポ多糖ではヨウ素でんぷん反応が陰性であるが、小麦発酵抽出物では陽性であることなど、物質的に異なることが明らかであり、また、生物学的応答性が異なることも知られている。小麦発酵抽出物を飼料に添加し、畜産動物、水産動物に飼料として与えると感染防除効果が得られる事が示されている。そこで、小麦発酵抽出物の感染防除効果と作用機序が異なる既存の免疫賦活物質を混合した飼料を製造すれば、これまでにない高い感染防除効果を示す飼料、サプリメント等を作ることが可能であると考えられた。しかしながら、これまで、小麦発酵抽出物とは機能が異なる免疫賦活物質と混合し、配合した飼料の研究は行われておらず、これらを配合方法の研究もなお十分にはなされていない現状にある。
【0007】
小麦発酵抽出物は体重kgあたり、0.005−0.02mgと従来知られている免疫賦活物質よりも著しく少ない投与で、効果が得られる特徴がある。一方、経口投与で免疫賦活作用を示すには動物の体重kgあたり、0.1-10mg程度を投与する。
【0008】
最も多く使用され、市販されている、固形飼料を製造する場合には加熱成形が行われる。例えば、混合飼料の製造は、エクストルーダー機(粉砕、混合、混練、加熱、加圧、殺菌、冷却、脱水、押出し、成形が可能な機械)内にて蒸気を吹きかけ、高温高圧下で混練した後に押出して成形させるため、高温になる。小麦発酵抽出物の有効成分の一つであるリポ多糖は120度の高温で分解は無いとされていた。ところが、小麦発酵抽出物の免疫賦活作用は飼料と混合し、これを加熱するとリポ多糖含量が低下する事を我々は見出した。そのため、飼料に小麦発酵抽出物を添加ための検討が必要であるが、小麦発酵抽出物の畜産動物、甲殻類及び魚類の飼料製造法、プレミックス製造法などについてはまったく、検討されていなかった。
【特許文献1】特許第2547371号公報
【特許文献2】特開平3−173826号公報
【特許文献3】特公平6−65649号公報
【特許文献4】特許第4026722号公報
【非特許文献1】河内 千恵 外6名, "New FoodIndustry", 2006年, 第48巻, 9号, p19-27
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的はペット、畜産動物、甲殻類及び魚類が本来的に備えている免疫機能を、ごく微量で的確に活性化して感染症を予防し、薬物残留などの公衆衛生上の問題のない、安全な甲殻類及び魚類を育成するための飼料添加剤、この飼料添加剤を添加した飼料の製造方法及びプレミックスあるいは飼料を提供し、ペット等に対するアレルギー疾患、自己免疫疾患、生活習慣病、高齢に伴う機能異常、悪性新生物等に対する予防・治療法に有益な小麦発酵抽出物を配合した添加剤、プレミックス、サプリメント及び各種飼料を提供することにある。
【0010】
本発明における小麦発酵抽出物とバチルス菌体を添加する対象は、動物飼育用で動物体内に栄養や有用な薬品類を投与する目的で作られた全てのタイプをとることができ、代表的な例としては、家畜用飼料、家畜用プレミックス剤、家畜用ビタミン剤、家畜用医薬品、養魚用飼料、養魚用プレミックス剤、養魚用ビタミン剤、養魚用医薬品などがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は小麦粉をグラム陰性菌のパントエア菌で発酵することによって得た小麦発酵物を熱水抽出した素材である、小麦醗酵抽出物と、市販の免疫賦活物質であるバチルス菌体を混合することを特徴とする免疫賦活、感染症予防効果を有する畜産又は水産飼料添加剤、プレミック、及びこれを添加したことを特徴とするペット、畜産又は水産用飼料の製造方法に係る。
【0012】
また本発明は、上記小麦発酵抽出物及びバチルス菌体のペット、畜産動物、甲殻類及び魚類に許容される担体を含有する畜産又は水産用飼料添加剤製造法に係る。
【0013】
また本発明は、ペット、畜産又は水産用飼料添加剤を製造するための上記小麦発酵抽出物及びバチルス菌体の使用に係る。
【0014】
また本発明は、上記小麦発酵抽出物及びバチルス菌体を有効成分として含有することを特徴とするペット、畜産又は水産の斃死予防剤の製造法に係る。
【0015】
また本発明は、上記小麦発酵抽出物及びバチルス菌体に薬学的に許容される担体を含有するペット、畜産又は水産の斃死予防剤製造方法に係る。
【0016】
また本発明は、ペット、畜産又は水産の斃死予防剤を製造するための上記小麦発酵抽出物及びバチルス菌体の使用に係る。
【0017】
また本発明は、上記小麦発酵抽出物及びバチルス菌体の有効量をペット、畜産又は水産に給餌することを特徴とするペット、畜産又は水産の斃死予防方法に係る。
【0018】
また本発明は上記飼料をペット、畜産又は水産に与えることを特徴とする畜産又は水産の飼育方法に係る。
【0019】
本発明者らは、小麦発酵抽出物の感染防除作用を増強する種々の市販免疫賦活物質を選るために、小麦発酵抽出物と市販免疫賦活物質を配合し、飼料への添加剤、プレミックス、添加飼料、サプリメントの製造方法を検討し、これを用いて作製した飼料を、ペット、鶏、豚、甲殻類及び魚類に投与し、鶏、豚、甲殻類、魚類が本来的に備えている免疫機能が活性化され、ウィルスや細菌による感染症が防御され、斃死が予防され、しかも安全性が非常に高いことを指標として鋭意研究した結果、バチルス菌体との配合飼料が免疫賦活効果に優れ感染防除作用などを有するという新しい知見を得、この配合飼料の製法にかかる発明を完成した。
【0020】
本発明においては、小麦発酵抽出物を、そのまま、あるいは公知の担体、安定剤等を加えて、更に必要に応じてビタミン、アミノ酸類、ミネラル等の各種養分、抗酸化剤、抗生物質、抗菌剤及びその他の添加剤等を加えて、ペット、畜産又は水産用の飼料添加剤となしてもよく、その形状としては、粉体、顆粒、ペレット、懸濁液等の適宜の状態に調製すればよい。本発明の飼料添加剤を給餌する場合は、ペット、畜産又は水産に対し、単独で給餌しても良いし、飼料に混合して給餌しても良い。給餌時期は、疾患予防のために常時給餌しても、また飼養後半に添加してもよい。
【0021】
また、本発明の飼料は特に限定されるものではなく、液体、粉末飼料、固型飼料、モイストペレット飼料、ドライペレット飼料、EP(Extruder Pellet)飼料、生餌など、どのような飼料でもよい。
【0022】
本発明において小麦発酵抽出物の飼料添加剤又は飼料等への配合量は広い範囲から選択できるが、好ましくは飼料添加剤又は飼料に対して0.0001〜0.1重量%、特に好ましくは0.002〜0.005重量%であるが、これに限定されるものではない。小麦発酵抽出物の給餌量は適宜決定すれば良いが、例えばイヌ、豚、鶏、甲殻類及び魚類の体重1kgあたり1日量として0.1〜10mg、好ましくは0.5〜2mgを投与するのがよいが、これに限定されるものではない。
【0023】
本発明で用いるバチルス菌体としては、特に限定されないが、例えば、Bacillus mesentericus、Bacillus subtilis、Bacillus cereus、Bacillus licheniformis、Bacillus coagulans、Bacillus polyfermenticusが挙げられる。
【0024】
本発明においてバチルス菌体の飼料添加剤又は飼料等への配合量は広い範囲から選択できるが、好ましくは飼料添加剤又は飼料に対して0.001〜1重量%、特に好ましくは0.2〜0.5重量%であるが、これに限定されるものではない。小麦発酵抽出物の給餌量は適宜決定すれば良いが、例えばイヌ、豚、鶏、甲殻類及び魚類の体重1kgあたり1日量として1〜100mg、好ましくは5〜20mgを投与するのがよいが、これに限定されるものではない。なお、バチルス菌体は生菌が好ましいが死菌であっても良い。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、安全性が高く、安価に多方面の用途に対応することが可能な小麦発酵抽出物とバチルス菌体を含有した飼料、飼料添加剤、プレミックス、サプリメントを製造することができる。
【0026】
小麦発酵抽出物の安定性はこれまで知見がなく、加熱、分散を伴う飼料、飼料添加剤、プレミックス製造に適した混合、成形方法はこれまで検討が必要であることが着想されておらず、これまでの免疫賦活剤混合技術の知見から容易に推察される事実ではない。
【0027】
また、本製造方法によって作成した小麦発酵抽出物とバチルス菌体添加飼料は、感染防除効果を有することを実施例で示した。また、小麦発酵抽出物とバチルス菌体がそれぞれ単独よりも併用することが有効な効果を出すことを実施例で示した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に実施例を挙げて本発明について説明するが、これら実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
小麦発酵抽出物は、飼料との混合を容易にするために、ブドウ糖と混合して造粒・乾燥・整粒し、乳糖と混合したものを供試した。投与時には小麦発酵抽出物が規定量となるように測量し、室温にて適量の水に溶解した。バチルス菌体はBacillus cereusを使用した。溶解後、ただちにEP(エクストルーダペレット)飼料に添加し、均一に混ざるようによく混合して小麦発酵抽出物とバチルス菌体混合飼料とした。なお、EP飼料との混合は作り置きせず、投与日毎に作製した。
【実施例2】
【0030】
カワハギに対する小麦発酵抽出物とバチルス菌体混合飼料の疾病予防効果
試験方法:平均体重26gのカワハギを20,000尾ずつ本発明区と対照区に分養し、海面生簀にて約3ヶ月間飼育した。この期間の水温は28.5〜18.3℃であった。発明区には、実施例1で製造した小麦発酵抽出物とバチルス菌体入り混合飼料を、小麦発酵抽出物を1日あたり20〜40μg/魚体重1kgの量で、バチルス菌体を1日あたり0.01mg〜1mg/魚体重1kgの量で、投与間隔を4日投与4日休みとして投与した。なお、休みの期間は対照区と同じ小麦発酵抽出物とバチルス菌体を添加しない混合飼料を投与した。その後、試験期間中の死亡数を計測して生残率を求めた。
【0031】
試験結果:本発明区及び対照区における投与3ヶ月後の生残率及び主な死因を表1に示した。試験期間中の主な死因は、β溶血性連鎖球菌症であり、本発明区の生残率は対照区と比較して有意(p<0.05,0.01)に高かった。
【0032】
この結果から、カワハギに対する本発明の疾病予防効果を有することが明らかとなった。
【表1】

【実施例3】
【0033】
マダイに対する小麦発酵抽出物とバチルス菌体混合飼料の疾病予防効果
試験方法:平均体重42gのマダイを16,500尾ずつ本発明区と対照区に分養し、海面生簀にて約3ヶ月間飼育した。発明区には、実施例1で製造した小麦発酵抽出物とバチルス菌体入り混合飼料を、小麦発酵抽出物を1日あたり20μg/魚体重1kgの量で、バチルス菌体を1日あたり0.01mg〜1mg/魚体重1kgの量で、投与間隔を4日投与4日休みとして投与した。なお、休みの期間は対照区と同じ小麦発酵抽出物とバチルス菌体を添加しない混合飼料を投与した。その後、試験期間中の死亡数を計測して生残率を求めた。
【0034】
試験結果:本発明区及び対照区における投与3ヶ月後の生残率および主死因を表2に示した。試験期間中の主な死因は、イリドウィルス症であり、本発明区の生残率は対照区と比較して有意(p<0.05,0.01)に高かった。
【0035】
この結果から、マダイに対する本発明の疾病予防効果を有することが明らかとなった。
【表2】

【実施例4】
【0036】
ブリに対する小麦発酵抽出物とバチルス菌体の疾病予防効果
試験方法:ブリを約5,000尾ずつ3群(1〜3区)に分け、海面生簀にて2ヶ月間飼育した。本発明の1区は実施例1で製造した小麦発酵抽出物とバチルス菌体入り混合飼料を、小麦発酵抽出物を1日あたり20μg/魚体重1kgの量で、バチルス菌体を1日あたり0.01mg〜1mg/魚体重1kgの量で、毎日の連続投与区、2区は1区と同量で4日間投与3日間無投与の間欠投与区とした。なお、無投与の期間は対照区と同じ小麦発酵抽出物とバチルス菌体を添加しない混合飼料を投与した。その後、試験期間中の死亡数を計測して生残率を求めた。
【0037】
試験結果:本発明区及び対照区における投与2ヶ月後の生残率および主死因を表3に示した。試験期間中の主な死因は、レンサ球菌症であり、本発明区の生残率は対照区と比較して有意(p<0.05、0.01)に高く、間欠投与区で最も優れた成績が得られた。
【0038】
この結果から、ブリに対する本発明の疾病予防効果を有することが明らかとなった。
【表3】

【実施例5】
【0039】
小麦発酵抽出物添加飼料(ペレット)中の有効成分の一つである、低分子リポ多糖(IP-PA1)含量を指標として、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)により測定した。
試験方法
IP-PA1の水抽出法:飼料2.00gに水20gを加えて懸濁し、ボルテックスミキサーで撹拌後に、5分間の超音波処理を行い、これを遠心分離(2000g 、5分)し、上清を得た。IP-PA1の特異的測定:ELISA法を用いた。
【0040】
試験結果:加工前のIP-PA1添加飼料では、推定値(5μg/g)の約50%のIP-PA1(2.47μg/g)が回収できることがELISA法により確認された。ペレット加工後(加熱工程を含む)飼料では、推定IP-PA1量(5μg/g)の約10%のIP-PA1量がELISA法により測定された(表4)。以上のことから、ペレット飼料中への小麦発酵抽出物の添加は困難であることが確認された。
【表4】

【実施例6】
【0041】
小麦発酵抽出物とバチルス菌体の併用によるマクロファージ系細胞(RAW264.7細胞)を用いてNO産生能を測定した。小麦発酵抽出物 (Lot No.070423, 有効成分としてIP-PA1含量(1%))、バチルス菌体としてBacillus cereusを使用した。バチルス菌体は、重量濃度で取り扱った。小麦発酵抽出物はIP-PA1含量を基準に試験した。
【0042】
試験方法
マウスマクロファージ系の培養細胞であるRAW264.7細胞(1.6×105個/100μl/ウエル)を96穴平底プレートの播種し、6時間、37℃の5%炭酸ガス培養器で培養した。その後に各被検体の希釈液を各用量、穴当たり100μlずつ加えた。各被検体溶液は、細胞培養液中で終濃度が小麦発酵抽出物がIP-PA1量として0.1ng/mlから10ng/mlになるように、バチルス菌体が1μg/mlから100μg /mlになるように被検体を培養液(10%牛胎児血清、60μg/ml アンピシリンナトリウム、50μg/ml硫酸カナマイシンを含むRPMI 1640培地)にて系列希釈して調製した。試験の陰性対照には培養液を用いた。各検体を添加し、20時間培養した後、培養上清を一部(50μl)回収し、グリエス氏の方法(NOから生じる亜硝酸を酸性条件下でスルファニルアミドとのジアゾニウム塩化合物に変化させ、それとナフチルエチレンジアミンのアゾカップリングによって生成する赤色色素を検出する方法)により、一酸化窒素の代謝物である亜硝酸濃度を測定した。
【0043】
試験結果
バチルス菌体の用量が1μg/ml又は小麦発酵抽出物の用量が1ng/mlの時、それぞれ単独では、一酸化窒素の誘導が見られなかった。ところが、両者を併用したところ一酸化窒素が有意に誘導され、両者の併用により一酸化窒素が産生されることが見出された。一酸化窒素は自然免疫の中心的な細胞であるマクロファージの活性化を誘導する指標である。また、一酸化窒素はバクテリアやウイルスを直接傷害する実行分子である。
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、ペット、畜産動物、甲殻類及び魚類の免疫機能を、ごく微量で的確に活性化して感染症を予防し、また、ペット、畜産動物、甲殻類及び魚類の疾病を予防し、薬物残留などの公衆衛生上の問題のない、安全なペット、畜産動物、甲殻類及び魚類を育成するための飼料添加剤、プレミックス及び飼料を製造する技術を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦発酵抽出物及びバチルス菌体が配合されていることを特徴とする飼料添加剤。
【請求項2】
小麦発酵抽出物及びバチルス菌体が配合されていることを特徴とする飼料。
【請求項3】
小麦発酵抽出物及びバチルス菌体を配合することを特徴とする飼料添加剤の製造方法。
【請求項4】
小麦発酵抽出物及びバチルス菌体を配合することを特徴とする飼料の製造方法。
【請求項5】
小麦発酵抽出物及びバチルス菌体の有効量をペット、畜産又は水産に投与することを特徴とするペット、畜産又は水産の飼育方法。
【請求項6】
小麦発酵抽出物及びバチルス菌体を有効成分として含有することを特徴とするペット、畜産又は水産の斃死予防剤。
【請求項7】
畜産又は水産用であることを特徴とする請求項2記載の飼料。
【請求項8】
甲殻類又は魚類用であることを特徴とする請求項2記載の飼料。


【公開番号】特開2009−232793(P2009−232793A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85057(P2008−85057)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(390025210)
【出願人】(500315024)有限会社バイオメディカルリサーチグループ (12)
【出願人】(508098394)自然免疫応用技研株式会社 (4)
【出願人】(591024638)川崎製薬株式会社 (5)
【Fターム(参考)】