説明

養魚用固形飼料

【課題】 優れた吸水性、保形性を有し、水中への沈降率の高い養魚用固形飼料の提供。
【解決手段】 魚粉と水膨潤性及び/又は水不溶性のカルボキシメチルセルロースとを含有することを特徴とする養魚用固形飼料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養魚用固形飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
ブリ、カンパチ、マダイ、トラフグ、ヒラメ等の水産養魚用飼料として、生餌を使用しないエクスパンデットペレット飼料等の固形飼料が用いられている。
エクスパンデットペレット飼料は、保存性や給餌性に優れ、また環境負荷の軽減等多くの利点を有するが、魚の摂餌性向上のため吸水性を高めようとすると、飼料が浮上して生簀の外に流出する等の問題があった。また、吸水後の保形性が悪いと飼料が崩れ易く、給餌の際の作業性が悪いばかりでなく、水中での散逸により飼料ロスが発生する等の問題があった。さらに、飼料の流出防止のため沈降性を高めると所望の吸水性が得られず、また保形性も低下する等の問題があった。
【0003】
そこで、斯かる問題を解決するため、飼料の造粒条件を改良したり、小麦粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等の粘結剤;グルテン、グアーガム、デキストリン、アルギン酸等の補助粘結剤;あるいは種々のカルボキシメチルセルロース塩等のバインダーを用いて飼料を製造する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、これまで使用されてきた粘結剤や補助粘結剤、バインダーでは、吸水性、保形性、沈降性の全てを満足する飼料が得られていないのが実状であった。
【特許文献1】特開2002−300852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の如き従来の問題と実状に鑑みてなされたものであり、優れた吸水性、保形性を有し、水中への沈降率の高い養魚用固形飼料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、当該課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、飼料に水膨潤性及び/又は水不溶性のカルボキシメチルセルロースを配合すれば、吸水性及び保形性に優れ、しかも水中への沈降率の高い固形飼料が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち本発明は、魚粉と水膨潤性及び/又は水不溶性のカルボキシメチルセルロースとを含有することを特徴とする養魚用固形飼料により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の養魚用固形飼料は、吸水性に優れるため魚の摂餌性を向上させることができる。また、保形性が高く、吸水後に飼料が崩れることなく、固結しにくく弾力があるため給餌の際の作業性に優れる。さらにまた、水中での飼料の散逸が少なく、沈降率が高いので生簀からの流出を防止でき、飼料効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いられるカルボキシメチルセルロースは、水膨潤性及び/又は水不溶性の性質を有し、無水グルコース残基あたりのカルボキシメチル置換度が0.05〜0.50、1%水溶液粘度が2〜300mPa・sであることが必須である。特に、カルボキシメチル置換度が0.2〜0.3であり、且つ1%水溶液粘度が50〜150mPa・s以下の範囲であるカルボキシメチルセルロースが好ましい。なお、1%水溶液粘度とは、B型回転粘度計(ローターNo.1,回転数30rpm)により25℃にて無水物換算1%水溶液を測定した値である。
また、カルボキシメチルセルロースは、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましく、特にナトリウム塩が好ましい。
飼料中、カルボキシメチルセルロースの含有量としては0.2〜4.0質量%が好ましく、特に0.6〜1.5質量%が好ましい。
【0009】
本発明に用いられる水膨潤性及び/又は水不溶性のカルボキシメチルセルロースは、例えばセルロースを発底原料とし軽度にカルボキシメチル化反応を行うことで製造することができる。
セルロース原料としては、晒又は未晒木材パルプ、精製リンター、酢酸菌等の微生物によって生産されるセルロース等の天然セルロースや、セルロースを銅アンモニア溶液、モルホリン誘導体等何らかの溶媒に溶解し、改めて紡糸された再生セルロース、および上記セルロース系素材を酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル処理等によって解重合処理した微細セルロースまたは機械的に処理した微細セルロースが例示される。
カルボキシメチル化は、例えば、低級アルコールと水の混合溶媒下、セルロース原料を水酸化ナトリウムなどのアルカリでマーセル化し、次いでカルボキシメチル化剤であるモノクロル酢酸またはモノクロル酢酸ナトリウムでエーテル化反応を行う等の公知の方法で行うことができる。
カルボキシメチルセルロースは必要に応じて、洗浄工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程を経たものを用いてもよい。
【0010】
本発明に用いられる魚粉は、白色系魚粉及び/又は褐色系魚粉が挙げられるが、特に白色系魚粉を用いるのが好ましい。白色系魚粉は、魚粉中20〜90質量%、特に50〜100質量%用いるのが好ましい。白色系魚粉を用いることで、固形飼料の沈降性、保形性、吸水性が一層向上する。
本発明に用いられる白色系魚粉は、白身魚を原料とした魚粉である。白身魚としては、特に制限されないが、例えば助宗タラ、カレイ等が挙げられる。また、褐色系魚粉は、赤身魚を原料とした魚粉であり、赤身魚としては、例えばイワシ、アジ、サバ等が挙げられる。
飼料中、魚粉の含有量としては50〜80質量%が好ましく、特に60〜70質量%が好ましい。
【0011】
また、本発明の飼料は、さらに大豆蛋白を配合することによって飼料の吸水性、保形性及び沈降率を高め、特に保形性を顕著に高めることができる。大豆蛋白としては、特に制限されないが、例えば大豆や脱脂大豆から得られる濃縮大豆蛋白、分離大豆蛋白等が挙げられる。
飼料中、大豆蛋白の含有率としては2〜8質量%が好ましく、特に3〜5質量%が好ましい。
【0012】
本発明の養魚用固形飼料に用いる他の飼料原料としては、フィッシュソリュブル、肉粉、肉骨粉、血粉、オキアミミール、イカミール等の動物性蛋白原料;油粕、大豆粉、小麦粉、各種澱粉等の穀粉類;酵母類、海藻粉末、ビタミン類、ミネラル、アミノ酸等が挙げられる。また、これらの飼料原料に魚油、大豆油、綿実油、牛脂、豚脂等の油脂を添加してもよい。
【0013】
本発明の養魚用固形飼料を製造するには、特に限定されないが、例えば飼料原料をエクストルーダー内で混練、加熱後、造粒してペレット状の飼料を得ることができる。
【0014】
本発明の養魚用固形飼料を給与する養殖魚の種類は特に制限されず、ブリ、カンパチ、マダイ、ヒラメ、トラフグ、ウナギ、アユ、コイなどの魚種に好適である。
【実施例】
【0015】
次に本発明をさらに具体的に説明するために実施例を掲げるが、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0016】
実施例1
褐色系魚粉32.5質量部、白色系魚粉32.5質量部、馬鈴薯澱粉4質量部、小麦粉20質量部、豆乳粕3質量部、及び水不溶性カルボキシメチルセルロースナトリウム(エーテル化度:0.20〜0.30m/c6、1%水溶液粘度:100mPa・s以下、商品名「サンローズSLD F1」:日本製紙ケミカル(株)製、以下同じ)2質量部を二軸型押出成型機(アルファライザー「α100E−20型」:(株)スエヒロEPM製)に供給し、バレルから油脂6質量部と、油脂を含む飼料粉末全量に対し29.4%に相当する水を別々に添加しながら造粒した。得られた固形飼料を100℃の乾燥機で10分間乾燥した後、乾燥機から取り出して風冷し、製品径6.41mm、水分7.5%及び製品比重464g/Lの膨化した飼料を得た。
【0017】
実施例2
褐色系魚粉30.0質量部、白色系魚粉30.0質量部、馬鈴薯澱粉5質量部、小麦粉17.6質量部、濃縮大豆蛋白5質量部、豆乳粕2.5質量部、水不溶性カルボキシメチルセルロースナトリウム1質量部、及びプレミックス2.9質量部をミキサーに供給し、魚油6質量部と、魚油を含む飼料粉末全量に対し11.0%に相当する水及び8%に相当する蒸気を加えて混合した後、一軸型押出成型機(「マタドール」:マタドール社製)に供給し、造粒した。得られた固形飼料を100℃の乾燥機で16分間乾燥し、次いで80℃で16分間乾燥した後、乾燥機から取り出して風冷し、製品径6.42mm、製品長5.32mm、水分5.7%及び製品比重556g/Lの膨化した飼料を得た。
なお、上記で用いたプレミックスの組成は、ビタミン類、ミネラル類、天然色素等である。以下同じ。
【0018】
実施例3
褐色系魚粉32質量部、白色系魚粉30質量部、馬鈴薯澱粉5質量部、小麦粉17.3質量部、濃縮大豆蛋白4質量部、豆乳粕2質量部、水不溶性カルボキシメチルセルロースナトリウム0.8質量部、及びプレミックス2.9質量部をミキサーに供給し、魚油6質量部と、魚油を含む飼料粉末全量に対し10.5%に相当する水及び8%に相当する蒸気を加えて混合した後、実施例3と同一の一軸型押出成型機に供給し、造粒した。得られた固形飼料を100℃の乾燥機で16分間乾燥し、次いで80℃で16分間乾燥した後、乾燥機から取り出して風冷し、製品径5.24mm、製品長4.47mm、水分3.4%及び製品比重561g/Lの膨化した飼料を得た。
【0019】
実施例4
褐色系魚粉32質量部、白色系魚粉30質量部、馬鈴薯澱粉5質量部、小麦粉17.3質量部、濃縮大豆蛋白4質量部、豆乳粕2質量部、水不溶性カルボキシメチルセルロースナトリウム0.8質量部、及びプレミックス2.9質量部をミキサーに供給し、魚油6質量部と、魚油を含む飼料粉末全量に対し11.5%に相当する水及び8%に相当する蒸気を加えて混合した後、実施例3と同一の一軸型押出成型機に供給し、造粒した。得られた固形飼料を85℃の乾燥機で16分間乾燥し、次いで70℃で16分間乾燥した後、乾燥機から取り出して風冷し、製品径4.21mm、製品長3.60mm、水分4.1%及び製品比重552g/Lの膨化した飼料を得た。
【0020】
実施例5〜13並びに比較例1
表1に記載の飼料原料を用い、それぞれ油脂及び水を添加した以外は実施例1と同様にして養魚用固形飼料を得た。得られた固形飼料の製品径、水分及び製品比重は表1のとおりである。
【0021】
【表1】

【0022】
試験例1
実施例及び比較例で調製した養魚用固形飼料の物性を、下記の試験方法により測定した。結果を表2に示す。
【0023】
<沈降性試験>
4%食塩水の入った1Lのビーカーに固形飼料を約100粒ずつ投入し、投入後30秒後の沈降した固形飼料の割合を、下記式から算出した。
沈降率(%)=(沈降した養魚用固形飼料の粒数)/(養魚用固形飼料の粒数)×100
【0024】
<吸水性試験>
約200gの固形飼料を網籠に入れて攪拌後、過剰の水中に30秒間浸漬した。引き上げた後水切りを行い、下記式より吸水率を算出した。
吸水率(%)=(浸漬後の養魚用固形飼料の質量)/(養魚用固形飼料の質量)×100
【0025】
<吸水速度試験>
固形飼料2kgに同重量の水を加え、飼料に完全に吸収されるまでの時間を測定した。
【0026】
<保形性試験>
吸水速度試験で得た固形飼料を30分間放置した後、下記の評価基準に従って、目視及び手触りにより観察した。
【0027】
(評価基準)
○:手で握っても崩れず、粒子どうしが固結しない
△:手で握ると表面がやや崩れる
×:手で握ると溶け崩れ、団子状になる
【0028】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚粉と水膨潤性及び/又は水不溶性のカルボキシメチルセルロースとを含有することを特徴とする養魚用固形飼料。
【請求項2】
魚粉が、白色系魚粉及び/又は褐色系魚粉であることを特徴とする請求項1記載の養魚用固形飼料。
【請求項3】
水膨潤性及び/又は水不溶性のカルボキシメチルセルロースが、無水グルコース残基あたりのカルボキシメチル置換度が0.05〜0.50、1%水溶液粘度が2〜300mPa・sのカルボキシメチルセルロースであることを特徴とする請求項1又は2記載の養魚用固形飼料。
【請求項4】
水膨潤性及び/又は水不溶性のカルボキシメチルセルロースの含有量が0.2〜4.0質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の養魚用固形飼料。
【請求項5】
さらに、大豆蛋白を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の養魚用固形飼料。
【請求項6】
カルボキシメチルセルロースがカルボキシメチルセルロースナトリウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の養魚用固形飼料。


【公開番号】特開2007−37424(P2007−37424A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223114(P2005−223114)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(399106505)日清丸紅飼料株式会社 (25)
【出願人】(502368059)日本製紙ケミカル株式会社 (86)
【Fターム(参考)】