説明

餌用生ソーセージおよびその製造方法

【課題】弾力性および嗜好性に共に優れた餌用生ソーセージおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】100重量部のすり身状の生の魚肉と、0.1重量部以上10重量部以下の植物タンパクと、0.5重量部以上10重量部以下のトランスグルタミナーゼと、を含む餌用生ソーセージとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類あるいは海獣に与える餌用生ソーセージおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乱獲、気象異変、価格高騰等のため、鯖、鯵、ほっけ、鱈、鰯、秋刀魚、鮭等の生魚および冷凍魚等の入手が困難になっている。このため、魚類あるいは海獣用に多種多様な餌料が提案され、またそれらの一部が実際に用いられている。
【0003】
一般的な餌料は、魚粉、大豆油かす、デンプン粉、油脂、穀類等の餌料原料に水を加えて混練し、加圧加熱押出機により製造される。このようにして製造される餌料には、コストが低く、保管中の変質が少なく、給餌作業も簡単にできるという利点がある(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
また、近年、マグロ等に適した餌料が求められている。しかし、必要とされる大きさの固形餌料の製造は、従来の結合成型の方法では不可能であった。このような問題に鑑み、可食性ケーシングにより一種以上の固形餌料を包合することにより二次的に結合して、任意の大きさの餌料を製造する技術が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0005】
また、ゼラチン等の添加剤を添加したすり身状の生の魚肉あるいは魚類の処理屑をコラーゲンケーシングに充填した餌料を製造する技術も知られている(例えば、特許文献3を参照。)。
【特許文献1】特開平01−077522号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2004−097064号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2004−65167号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術により製造された餌料には、次のような問題がある。特許文献1および特許文献2に開示される餌料は、ある特定種の魚に給餌する場合には好適である。しかし、製造工程中に加熱工程が採られ、高温による加熱により、餌料に含有されるたんぱく質が変性するため、かかる餌料は、動物園あるいは水族館等で飼育されている哺乳類あるいは大型魚類、例えば、イルカ、オキゴンドウ、セイウチ、アシカ、ペンギン、シャチ、オットセイあるいはアザラシ等の嗜好性を著しく損なわせ、さらには、消化不良の原因となる可能性が高い。
【0007】
このため、哺乳類または大型魚類用の餌については、水産冷凍会社等を介して、各地水揚げ地等から魚類等を入手するという方法が採られている。しかし、哺乳類または大型魚類用の餌のサイズは、その哺乳類等に合った特定のサイズである。このため、魚類等の入手容易性の観点に立つと、必ずしも安定して入手できるものとはいい難い。特に、最近の魚類等の価格高騰の傾向に鑑みれば、その入手が困難であることは明らかである。
【0008】
かかる状況に鑑みて、種々の大きさの魚獲物をすり身状の魚肉に加工し、他の練り製品と同様に再び成型するのが一般的である。特許文献3に開示される餌料の場合には、動物園あるいは水族館等の魚食性動物に対して、手に持って与えることができ、水槽中に投げ込まれても充填されたものが容易に飛び出ない。しかし、ゼラチン等の添加剤を用いているため、余分な水を加えなければならず、魚肉の接着性を高めることが難しい。その結果、得られる製品の弾力性は極めて低い。
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、弾力性および嗜好性に共に優れた餌用生ソーセージおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、100重量部のすり身状の生の魚肉と、0.1重量部以上10重量部以下の植物タンパクと、0.5重量部以上10重量部以下のトランスグルタミナーゼとを含む餌用生ソーセージとしている。このような構成の餌用生ソーセージとすると、従来の餌料より良好な接着性を有する餌料となる。また、0.1重量部以上10重量部以下の植物タンパクを100重量部のすり身状の生の魚肉と均一に混合するため、接着の妨げとなる魚肉の油脂の乳化を促進すると共に、余分な水分を吸収できる。さらに、ケーシング内に充填して成形させることによって、優れた成形性も得られる。
【0011】
また、別の本発明は、先の発明における植物タンパクは、大豆タンパク、小麦グルテンまたはこれらの混合物である餌用生ソーセージとしている。このように、植物タンパクを加えることによって、ソフトでありながら弾力性に優れた餌用生ソーセージを製造できる。また、デンプン質を排除した素材が用いられるため、水族館等で飼育されている哺乳類や大型魚類等の肉食性動物にとって、消化しやすい餌料が得られる。
【0012】
また、別の本発明は、先の発明において、0.05重量部以上1重量部以下の塩化ナトリウムを、さらに含む餌用生ソーセージとしている。このように、塩化ナトリウムを添加することによって、すり身状の生の魚肉の混練物に粘りを持たせることができる。さらに、餌用生ソーセージの弾力性を向上させることができる。
【0013】
また、別の本発明は、生の魚肉を粉砕して、すり身状の生の魚肉を作製する工程と、100重量部のすり身状の生の魚肉に、0.1重量部以上10重量部以下の植物タンパクを加えて、攪拌する工程と、0.5重量部以上10重量部以下のトランスグルタミナーゼを加える工程と、すり身状の生の魚肉と植物タンパクとトランスグルタミナーゼの混練物を成形する工程と、成形後の混練物を放置して、酵素反応を行わせる工程とを含む餌用生ソーセージの製造方法としている。
【0014】
このような製法を採用することにより、低コストにて、優れた接着性および弾力性を有すると共に、生餌と比べて嗜好性等を遜色しない餌用生ソーセージを製造できる。また、すり身状の生の魚肉を作製する工程において、魚の頭、内臓等全てを粉砕するので、製品のコストが低くなるばかりではなく、今まで生じていた生ごみ等の廃棄物の低減による環境汚染の抑制、水産資源の有効利用を実現できる。また、0.1重量部以上10重量部以下の植物タンパクおよび0.5重量部以上10重量部以下のトランスグルタミナーゼをすり身状の生の魚肉に添加して、さらに、酵素反応させているので、弾力としなやかさを向上させることが可能になる。トランスグルタミナーゼとは、ペプチド鎖内にあるグルタミン残基のγ−カルボキシアミド基のアシル転移反応の触媒となる酵素である。このトランスグルタミナーゼは、アシル受容体としてタンパク質中のリジン残基のε−アミノ基が反応すると、タンパク質分子内及び分子間においてε−(γ−Glu)−Lys架橋結合(以下、G−L結合と略す。)が形成される。また、この酵素は、水がアシル受容体として機能するときは、グルタミン残基が脱アミド化されてグルタミン酸残基になる反応を進行させる酵素である。このように、トランスグルタミナーゼを添加混合すると、該トランスグルタミナーゼが混練物中のタンパク質のみに特異的に作用してその性質を改変しているので、混練物中のタンパク質以外の構成部分に影響を及ぼすことがなく、保水性が良く、かつ、十分な弾力性を有する餌用生ソーセージを製造することができる。
【0015】
また、別の本発明は、先の発明における植物タンパクは、大豆タンパク、小麦グルテンまたはこれらの混合物であることを備える餌用生ソーセージの製造方法としている。このように、トランスグルタミナーゼと非常に相性が良い植物タンパクを用いることによって、酵素反応を十分に行わせることができる。その結果、より優れた弾力性を有する餌用生ソーセージを製造することができる。
【0016】
また、別の本発明は、先の発明におけるトランスグルタミナーゼを加える工程の前に、すり身状の生の魚肉に、0.05重量部以上1重量部以下の塩化ナトリウムを加える工程を含む餌用生ソーセージの製造方法としている。このため、塩化ナトリウムが補助的な増粘剤として用いられることで、餌用生ソーセージの弾力性をより高めることができる。
【0017】
本発明に係る餌用生ソーセージに用いられるすり身状の生の魚肉の材料としては、例えば、鯖、鯵、ほっけ、鱈、鰯、秋刀魚、鮭等を用いることができる。ただし、上述の材料は一例に過ぎず、他の材料を採用しても良い。なお、当該材料は、一種類の魚でも、二種類以上の魚の混合物でも良い。また、これらの魚類の処理屑を使用しても良い。
【0018】
本発明に係る餌用生ソーセージに用いられる植物タンパクとしては、大豆タンパクあるいは小麦グルテン等を好適に例示できる。保水性の維持およびトランスグルタミナーゼ酵素との相性を考慮すれば、大豆由来タンパク、例えば、分離大豆タンパク、濃縮タンパクあるいは豆乳粉末等を好適に用いることができ、特に、分離大豆タンパクを用いるのがより好ましい。ただし、上述の植物性タンパクは一例に過ぎず、他の植物性タンパクを採用しても良い。また、二種類以上のタンパクを混合しても良い。
【0019】
本発明に係る餌用生ソーセージに用いられる添加剤の一つである酸化防止剤には、クエン酸ナトリウム以外にも、例えば、クエン酸エステル、L-アスコルビン酸、エリソルビン酸、カテキン、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、亜硫酸塩、エリソルビン酸ナトリウム等を用いることができる。これらの内、特に、好ましいのは、クエン酸ナトリウムである。これらの酸化防止剤は、単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0020】
本発明に係る餌用生ソーセージに用いられる添加剤の一つであるpH調整剤には、クエン酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、乳酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸類のカリウム塩若しくはナトリウム塩、ピロリン酸四カリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウムおよびポリリン酸とメタリン酸のカリウム塩若しはナトリウム塩等が挙げられる。特に、クエン酸ナトリウムを採用する方がより好ましい。なお、pH調整剤は、一種類のpH調整剤でも、二種類以上のpH調整剤の混合物でも良い。
【0021】
本発明に係る餌用生ソーセージに用いられるケーシングの材料としては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)の単体若しくは複合体、ポリアミド、ポリエステル、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成フィルムの他、羊腸、豚腸、牛腸等の天然ケーシング若しくはコラーゲンケーシング等を好適に用いることができる。特に、可食性を有するケーシングを用いるのがより好ましい。ただし、上述のケーシングは一例に過ぎず、他のケーシング材料を採用しても良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、弾力性および嗜好性に共に優れた餌用生ソーセージおよびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明に係る餌用生ソーセージおよびその製造方法の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に説明する好適な実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る餌用生ソーセージ1の形態を示す概略図である。図1において、長い側の方向は餌用生ソーセージ1の長さ方向を、短い側の方向は餌用生ソーセージ1の直径の方向を、それぞれ示す。
【0025】
図1に示すように、餌用生ソーセージ1は、円筒状のケーシングに、生餌料の混練物を充填した円形の断面形状を有する円柱状の成形物である。ケーシングの両端側は、各端側の外へ突出して生餌料を流出させないように密封されている。充填された混練物は、植物タンパクがすり身状の生の魚肉に混合され、均一に分散したものである。このため、接着性および安定性に優れた餌用生ソーセージ1となる。
【0026】
この実施の形態に係る餌用生ソーセージ1の寸法は、餌料を与える動物等の種類またはその大きさにより様々であるが、好ましくは、直径が20mm以上30mm以下の範囲であり、長さが約200mmである。また、餌用生ソーセージ1の重量に関しては、特に好ましくは、約150gである。ただし、上記寸法および重量は一例に過ぎず、上記以外の寸法および重量の餌用生ソーセージ1に成形することができる。
【0027】
次に、本発明の実施の形態に係る餌用生ソーセージ1の製造方法について説明する。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態に係る餌用生ソーセージ1の製造工程を示すフローチャートである。
【0029】
まず、餌用生ソーセージ1の主原料となる冷凍魚を解凍し、粉砕機を用いて粉砕して、すり身状の生の魚肉を作製する(ステップS101)。この実施の形態では、主原料となる冷凍魚は、鯖、鯵、ほっけ、鱈あるいは鮭等を好適に用いることができる。この実施の形態において、すり身状の生の魚肉を作製するための粉砕機としては、接着面積を大きくするため、プレート目合3mmの手動または電動のミートチョッパーを用いるのが好ましいが、これらに限定されるものではない。他のプレート目合のミートチョッパーを利用しても良い。また、ミートチョッパーと異なるタイプの粉砕用のミルあるいはミキサーを用いても良い。
【0030】
次に、すり身状の生の魚肉を計量した後、容器内に入れ、ミキサーにより攪拌しながら、酸化防止剤およびpH調整剤を入れる(ステップS102)。この実施の形態では、用いられる酵素の反応力を最大限に引き出すため、混練物のpHを中性近くに調整する。粉砕されたすり身状の生の魚肉のpHは約6であることから、酸化防止剤およびpH調整剤を兼ねたクエン酸ナトリウムを好適に用いることができる。なお、酸化防止剤およびpH調整剤として、それぞれ別の化合物を採用しても良い。
【0031】
次に、攪拌を継続しつつ、増粘剤を混合する(ステップS103)。増粘剤には塩化ナトリウムが好適である。増粘剤は、製品の弾力を高める機能を有する。塩化ナトリウムの添加量は、すり身状の生の魚肉に対して0.05重量%以上1重量%以下の範囲内とするのが好ましい。この理由は、塩化ナトリウムを過剰に入れると、後述のトランスグルタミナーゼという酵素の働きが阻まれる危険性があるからである。
【0032】
次に、攪拌を継続しつつ、植物タンパクを混合する(ステップS104)。植物タンパクとして、大豆タンパクを好適に用いることができる。大豆タンパクは、すり身状の生の魚肉中の水分を吸収し、さらに、魚肉の脂の乳化を促進する。このため、ソフトで、かつ弾力性に優れた餌用生ソーセージ1を製造できる。大豆タンパクの添加量は、すり身状の生の魚肉に対し0.1重量%以上10重量%以下とする。この理由は、大豆タンパクの添加量を10重量%より多くすると、混練物の水分が少な過ぎてボロボロになるからである。
【0033】
次に、攪拌しつつ、酵素であるトランスグルタミナーゼを混合する(ステップS105)。トランスグルタミナーゼには、カルシウム依存性のものとカルシウム非依存性のものがある。この実施の形態において、これらの内、いずれの種類のトランスグルタミナーゼでも好適に用いることができる。特に、機能性および経済性を考慮すると、カルシウム非依存性のものがより好ましい。トランスグルタミナーゼは、すり身状の生の魚肉に対し、0.5重量%以上10重量%以下、好ましくは、トランスグルタミナーゼを0.7重量%以上1.3重量%の範囲とするのが良い。トランスグルタミナーゼの添加量が0.5重量%未満では、架橋効果が十分発揮できない。攪拌方法は、公知の方法を用いることができ、特に限定されない。
【0034】
続いて、上述の混練物をミートチョッパーによりケーシングする(ステップS106)。使用されるケーシングは給餌対象となる海獣等により異なるが、直径が20〜30mm、長さが200mm程度の餌用生ソーセージを製造できるものが好ましい。
【0035】
次に、冷却して放置し、酵素反応を行わせる(ステップS107)。トランスグルタミナーゼは、増殖反応によりタンパク質の分子間および分子内に、G−L結合を形成する。この架橋反応により、魚肉の練り製品の弾力性が高まる。かかる増殖反応を十分に起こすには、一般に、酵素と基質との混合物を増殖反応の発生に適する温度、時間等の条件の下に保持する必要がある。この実施の形態において、酵素の反応条件として適した温度は、2〜4℃である。また、反応時間は、温度によっても異なるが、約4時間である。冷却手段としては、ケーシング後の素材の酸化反応を有効に防止できる手段であれば、どのような装置および方法を使用しても良い。特に、凍結状態を実現するまで冷却する場合、凍結効率に優れるトンネルフリーザーを用いるのが好適である。しかし、これに制限されるものではなく、本発明の範囲の製品が得られる範囲であれば、他の装置等を適宜採用できる。
【0036】
酵素反応を十分に行わせた後、ケーシング状のものを急速に冷凍して凍結状態で保存する(ステップS108)。急速に冷凍することによって、トランスグルタミナーゼの酵素機能が失活する。ステップS101からステップS108の各工程を経て、冷凍状態の餌用生ソーセージ1が得られる。このようにして得られた餌用生ソーセージ1は、弾力性を有し、また保存安定性、輸送安定性等に優れる。なお、製造物、用途等の条件に応じて、ステップS102、ステップS103あるいはステップS108の内、いずれか1つ以上の工程を省いても良い。
【0037】
以上、本発明に係る餌用生ソーセージおよびその製造方法の実施の形態について説明したが、本発明に係る餌用生ソーセージおよびその製造方法は、上述の実施の形態に限定されず、種々変形した形態にて実施可能である。
【0038】
例えば、酵素反応を経た段階のケーシング状ものに栄養剤あるいは抗菌剤を注射して添加しても良い。このような添加により、海獣あるいは魚類の成長および病気に応じてビタミン等の栄養剤および抗菌剤の配合割合を簡単に調整することができる。このようにすれば、本発明に係る餌用生ソーセージの利用範囲は、広くなる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明の実施例および比較例について説明する。ただし、本発明は、以下の各実施例に限定されるものではない。
【0040】
A.餌用生ソーセージの製造方法
表1に、各実施例および各比較例の製造条件および評価結果を示す。
【0041】
【表1】

【0042】
(実施例1)
鯖等の冷凍魚を解凍し、ミートチョッパーによりすり身状の生の魚肉を作製した。得られたすり身状の生の魚肉に対し、クエン酸ナトリウム0.5重量%、塩化ナトリウム0.3重量%、大豆タンパク10.0重量%、およびトランスグルタミナーゼ1.0重量%を添加した。容器内にて、均一な混練物になるまでミキサーで攪拌した。調製した混練物がミートチョッパーによりケーシングに充填され、直径20mm、長さ約200mmの大きさとした。これを冷蔵庫中で2〜4℃、4時間放置して酵素反応を十分に行わせた。酵素反応が終了した後、急速冷凍で完全に凍結させた。
【0043】
(実施例2)
大豆タンパクの代わりに、小麦グルテンを、すり身状の生の魚肉に対して10.0重量%加えた以外は、実施例1と同じ条件で製造を行った。
【0044】
(実施例3)
塩化ナトリウムの添加量を、すり身状の生の魚肉に対して0.5重量%とした以外は、実施例1と同じ条件で製造を行った。
【0045】
(実施例4)
大豆タンパクの添加量を、すり身状の生の魚肉に対して0.1重量%とした以外は、実施例1と同じ条件で製造を行った。
【0046】
(実施例5)
塩化ナトリウムおよびトランスグルタミナーゼの添加量を、すり身状の生の魚肉に対して、それぞれ、1.0重量%および0.5重量%とした以外は、実施例1と同じ条件で製造を行った。
【0047】
(実施例6)
大豆タンパク、塩化ナトリウムおよびトランスグルタミナーゼの添加量を、すり身状の生の魚肉に対して、それぞれ、0.1重量%、0.05重量%および10.0重量%とした以外は、実施例1と同じ条件で製造を行った。
【0048】
(比較例1)
大豆タンパクを添加しなかった以外は、実施例1と同じ条件で製造を行った。
【0049】
(比較例2)
大豆タンパクの添加量を、すり身状の生の魚肉に対して11.0重量%とした以外は、実施例1と同じ条件で製造を行った。
【0050】
(比較例3)
大豆タンパクの添加量を、すり身状の生の魚肉に対して0.05重量%とした以外は、実施例1と同じ条件で製造を行った。
【0051】
(比較例4)
トランスグルタミナーゼの添加量を、すり身状の生の魚肉に対して0.4重量%とした以外は、実施例1と同じ条件で製造を行った。
【0052】
B.餌用生ソーセージの評価結果
製造された餌用生ソーセージは、目視、感触によって評価した。なお、評価基準は下記の通りである。表1において、◎は「最良」を、○は「良好」を、△は「やや悪い」を、×は「悪い」を、それぞれ示す。
【0053】
表1から明らかなように、実施例1〜6のいずれの製造条件にて得られた餌用生ソーセージでも、「良好」以上の接着性、成形性および弾力性を有する餌用生ソーセージが得られた。
【0054】
一方、比較例1の場合、植物タンパクを加えなかったため、得られた製品の弾力性、接着性および成形性は極めて低かった。また、比較例2の場合、植物タンパクを加え過ぎたため、ボロボロの製品が得られた。また、比較例3の場合、植物タンパクの添加量が少なすぎたため、製品が水っぽく、弾力性、接着性および成形性が低いものとなった。さらに、比較例4の場合、トランスグルタミナーゼの添加量が少なかったため、十分な酵素反応が生じなかった。その結果、得られた製品の弾力性および接着性は極めて低かった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、餌用生ソーセージを製造あるいは使用する産業において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態に係る餌用生ソーセージの形態を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る餌用生ソーセージの製造工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1 餌用生ソーセージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100重量部のすり身状の生の魚肉と、0.1重量部以上10重量部以下の植物タンパクと、0.5重量部以上10重量部以下のトランスグルタミナーゼと、を含むことを特徴とする餌用生ソーセージ。
【請求項2】
前記植物タンパクは、大豆タンパク、小麦グルテンまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載の餌用生ソーセージ。
【請求項3】
0.05重量部以上1重量部以下の塩化ナトリウムを、さらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の餌用生ソーセージ。
【請求項4】
生の魚肉を粉砕して、すり身状の生の魚肉を作製する工程と、
100重量部の上記すり身状の生の魚肉に、0.1重量部以上10重量部以下の植物タンパクを加えて、攪拌する工程と、
0.5重量部以上10重量部以下のトランスグルタミナーゼを加える工程と、
上記すり身状の生の魚肉と上記植物タンパクと上記トランスグルタミナーゼの混練物を成形する工程と、
成形後の上記混練物を放置して、酵素反応を行わせる工程と、
を含むことを特徴とする餌用生ソーセージの製造方法。
【請求項5】
前記植物タンパクは、大豆タンパク、小麦グルテンまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項4に記載の餌用生ソーセージの製造方法。
【請求項6】
前記トランスグルタミナーゼを加える工程の前に、前記すり身状の生の魚肉に、0.05重量部以上1重量部以下の塩化ナトリウムを加えることを特徴とする請求項4または5に記載の餌用生ソーセージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−185135(P2007−185135A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5306(P2006−5306)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(506014527)
【Fターム(参考)】