説明

駆動装置付アクチュエータ

【課題】高圧小容量電磁ポンプ、低圧大容量電磁ポンプを駆動源にする油圧タンクと、油圧タンク一体のアクチュエータとを一体にした駆動装置付アクチュエータを提供する。
【解決手段】駆動装置付アクチュエータ10は、本体ブロック11と、本体ブロック11に取り付けられた油圧タンク12と、油圧タンク12に本体ブロック11に取り付けられたピストンロッド13と、油圧タンク12及びピストンロッド13の上部に位置して本体ブロック11に取り付けられた積層弁14と、を備える。油圧タンク12は、本体ブロック11の一端に一側を取り付けたシリンダチューブ16と、シリンダチューブ16の他側に液密に嵌着されたシリンダカバー17と、シリンダチューブ16には本体ブロック11に一端に取り付けられた低圧大容量電磁ポンプ20が内蔵されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ駆動用の油圧シリンダへ作動油を供給する油圧発生装置に関するもので、さらに詳細には油圧発生装置とアクチュエータとを一体にして被加工物をクランプする駆動装置付アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の駆動装置付アクチュエータである油圧発生装置は、図7に示すように油圧回路60が圧力源62のポンプ(図示しない)により圧力流体が方向切換弁63の切換動作でシリンダ64によりワーク65をクランプしている。そして、積層弁66は電磁ポンプ61と、シリンダ64の動作方向を切り換える方向切換弁63と及びシリンダ64の圧力を保持するパイロットチェック弁67を積層している(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2008−157027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では電磁ポンプは油圧発生装置の補助的な機能を有する要素であり、シリンダを作動させるための油圧機器、例えば油圧ポンプ、油圧タンク等は機能上、仕様上から大きさが確保されるため、比較的大きな油圧発生装置が必要であった。
さらに、油圧ポンプを駆動する電動機の電気制御盤が必要となる。
また、油圧ポンプ、シリンダ、該シリンダを制御する積層弁を配管により接続するので、配管継手からの油漏れの保守管理が必要である。さらにまた、電気制御盤から油圧発生装置までの動力系配線も必要となり、動力系配線が長いとエネルギー損失の要因の一つになる。
【0005】
本発明は係る点に鑑みなされたもので、高圧小容量電磁ポンプ及び低圧大容量電磁ポンプを駆動源にする油圧ポンプと、該油圧ポンプと油圧アクチュエータとを一体にした駆動装置付アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため請求項1記載の発明は、
高圧小容量電磁ポンプ、パイロットチェック弁、シャットオフ弁及び方向切換弁を積層した積層弁と、
前記積層弁を取り付けた本体ブロック部材と、
前記本体ブロック部材に取り付けられたタンク部材と、
前記本体ブロック部材のシリンダ部に摺動自在に挿嵌されたピストンロッド部材と、
前記タンク部材に内蔵され前記本体ブロック部材に取り付けられた低圧大容量電磁ポンプと、
を備え、
前記積層弁、前記タンク部材及び前記ピストンロッド部材は油路で連通していることを特徴とする。
本発明によれば、タンク部材及びピストンロッド部材が本体ブロック部材と同一方向に配置され、積層弁が本体ブロック部材に設けられるので各部部材の一体化を図ることができ、装置全体がコンパクトになり配管も不要となる。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記タンク部材と前記ピストンロッド部材が対向して略同一線上に設けられ、前記積層弁が前記タンク部材及び前記ピストンロッド部材の軸心方向に対して同軸または任意の角度で交差して前記本体ブロック部材の上部に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、前記積層弁が、前記シリンダ部材及び前記ピストンロッド部材の軸心方向に対して同軸または任意の角度で交差して前記本体ブロック部材の上部に設けられているので、他の部材との連結が任意に調整できる。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記ピストンロッド部材が前記タンク部材の軸線に対して円周方向に任意の位置に設けられているので、前記ピストンロッド部材の移動方向は自由に調整できるのでよい。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記低圧大容量電磁ポンプが前記油圧タンク部材より取り出して前記本体ブロック部材に設置すると、前記タンク部材は最低シリンダの呼吸量を補う容量があればよく、該タンク部材の容量を小さくすることができタンク部材の形状、取付姿勢を任意に選択できる。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記低圧大容量電磁ポンプにより前記ピストンロッド部材を高速移動させて被加工物に当接し、前記高圧小容量電磁ポンプにより前記被加工物を把持するのでクランプ動作が迅速にでき、低圧で当接してから圧力を上げるので衝撃がなくクランプができるので、好適である。
【0011】
請求項6記載の発明は、高圧小容量電磁ポンプ、パイロットチェック弁、シャットオフ弁及び方向切換弁を積層した積層弁と、
前記積層弁を取り付けた本体ブロック部材と、
前記本体ブロック部材のシリンダ部に摺動自在に挿嵌されたピストンロッド部材と、
前記本体ブロック部材に接続した低圧で出力の小さい駆動源と、
を備え、
前記駆動源により前記ピストンロッド部材に増圧を作用させること特徴とする。
本発明によれは、低圧で小出力の駆動源によりピストンロッド部材に増圧を作用させることができるので、コンパクトな駆動装置付アクチュエータを提供できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の装置全体を配管を用いず連結することにより装置全体をコンパクトにすることができ、装置が簡素化され保守点検が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る駆動装置付アクチュエータの概略構造を示す縦断面図である。
【図2】第一の実施の形態に係る駆動装置付アクチュエータの油圧回路図である。
【図3】本発明の第二の実施の形態に係る駆動装置付アクチュエータの概略構造を示す縦断面図である。
【図4】第二の実施の形態に係る駆動装置付アクチュエータの油圧回路図である。
【図5】本発明の第一の実施の形態に係る駆動装置付アクチュエータのサイクル線図である。
【図6】本発明の第三の実施の形態に係る駆動装置付アクチュエータの概略構造を示す縦断面図である。
【図7】従来の駆動装置付アクチュエータである油圧発生装置の油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の駆動装置付アクチュエータにつき好適の実施の形態を挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の第一の実施の形態に係る駆動装置付アクチュエータ10の概略構造断面図を示す。
駆動装置付アクチュエータ10は、本体ブロック(本体ブロック部材)11と、本体ブロック11に取り付けられた油圧タンク(油圧タンク部材)12と、油圧タンク12に対向して本体ブロック11に取り付けられたピストンロッド(ピストンロッド部材)13と、油圧タンク12及びピストンロッド13の上部に位置して本体ブロック11に取り付けられた積層弁14と、を備える。
【0015】
油圧タンク12は、本体ブロック11の一端(図1で左側)にシール部材15により一側(図1で右側)を液密に取り付けたシリンダチューブ16と、シリンダチューブ16の他側(図1で左側)にシール部材15により液密に嵌着されたシリンダカバー17と、シリンダカバー17の上部に取り付けられたエアブリーザ19と、該シリンダカバー17の側面に設けられたコネクタ18と、を備える。シリンダチューブ16には本体ブロック11に一端に取り付けられた低圧大容量電磁ポンプ20が内蔵されている。
【0016】
ピストンロッド13は、本体ブロック11の開口穴(シリンダ部)21に摺動自在に嵌挿されたピストン22と、該ピストン22に一体的になったロッド23とから構成される。ピストン22は開口穴21に対してシール部材24により液密にシールされている。開口穴21の一側にはロットカバー25がシール部材15により液密にシールされていると共に、ピストン22を摺動自在に支持している。なお、ピストン22はロッドカバー25に装着されたブロック26及び該ブロック26に装着されたガイド部材27により摺動自在に支持されている。
ピストンロッド13は油圧タンク12に対して同軸状に設けられているが、油圧タンク12の軸心に対して円周方向に任意の位置に設けることができるので前記ピストンロッド部材の取付方向を自由に調整できる。
【0017】
積層弁14は油圧タンク12及びピストンロッド13に対して略直交して本体ブロック11の上部に設けられているが、油圧タンク12及びピストンロッド13の軸心方向に対して交差して本体ブロック11に取り付けてもよい。
積層弁14は、高圧小容量電磁ポンプ29が本体ブロック11の上面に取り付けられており、高圧小容量電磁ポンプ29から順にシャットオフ弁30、パイロットチェック弁31、ピストンロッド13の前進(図1で矢印X方向)及び後退(図1で矢印Y方向)に切り換える方向切換弁32が積層されており、これらのバルブは該バルブに形成された油路(図示しない)により連通している。
【0018】
本体ブロック11には、油圧タンク12、ピストンロッド13及び積層弁14に圧油を供給する油路が形成されている。油路33は油圧タンク12と積層弁14を連通しており、油圧タンク12と方向切換弁32のタンクポートとが接続するようになっている。
油路34は積層弁14とピストンロッド13のヘッド室36とを連通する。油路35は低圧大容量電磁ポンプ20と方向切換弁32の圧力ポートとを連通する。油路37は電磁弁32の出口(Bポート)とピストンロッド13のロッド室38とを連通する。
【0019】
本発明の第一の実施の形態に係る駆動装置付アクチュエータ10は基本的には以上のように構成されており、次に動作について図5のサイクル線図により説明する。図5のサイクル線図においてP1,P2は低圧大容量電磁ポンプ20、高圧小容量電磁ポンプ29を示し、SOL1,SOL2は方向切換弁32、シャットオフ弁30を示す。
図1において、ピストンロッド13は矢印Y方向に移動して後退限の位置にある。
よって、低圧大容量容量電磁ポンプ20、高圧小容量電磁ポンプ29、方向切換弁32及びシャットオフ弁30はいずれもOFFの状態になっている。
【0020】
前記の状態で低圧大容量容量電磁ポンプ20、高圧小容量電磁ポンプ29、方向切換弁32及びシャットオフ弁30がいずれもONの状態になると、圧油(作動油)は低圧大容量電磁ポンプ20により吐出されて油路35より方向切換弁32、パイロットチェック弁31を経て油路34よりピストンロッド13のヘッド室36に入る。また、高圧小容量電磁ポンプ29も油路34よりピストンロッド13のヘッド室36に圧油(作動油)を送る。
一方、ピストンロッド13のロッド室38の圧油は油路37よりシャットオフ弁30を経て油路34よりピストンロッド13のヘッド室36に入る差動回路を構成する。よって、ピストンロッド13は高速で前進(図1で矢印X方向)を開始して図示しないクランプ装置が被加工物に低圧で当接する。
【0021】
この状態で低圧大容量電磁ポンプ20、シャットオフ弁30をいずれもOFFにすると、油路37と油路34が遮断され油路37は方向切換弁32を経て油路33より油圧タンクに戻る。高圧小容量電磁ポンプ29により吐出された圧油(作動油)は、ヘッド室36とパイロットチェック弁31の油路34を昇圧して、ピストンロッド13は高圧でクランプ装置が被加工物をクランプする。
被加工物のアンクランプは、低圧大容量容量電磁ポンプ20の昇圧力ではパイロットチェック弁31を開くことが出来ないためシャットオフ弁30を一瞬ONにしてヘッド室36とパイロットチェック弁31間の圧油を方向切換弁32経て油路33より油圧タンクに戻して圧抜きをする。その後、低圧大容量容量電磁ポンプ20をON、方向切換弁32をOFFにすると、ピストンロッド13は矢印Y方向に移動して後退限の位置に移動する。
【0022】
図3は本発明の第二の実施の形態に係る駆動装置付アクチュエータ40の概略構造を示す縦断面図である。
図3において駆動装置付アクチュエータ40は低圧大容量電磁ポンプ41を油圧タンク12から取り出して本体ブロック11に設けた以外は第一の実施の形態に係る駆動装置付アクチュエータ10に同じ構成であり、図3中、図1の構成構成要素と同一構成要素については同一符号を付して詳細な説明を省略する。以下、同様とする。
この駆動装置付アクチュエータ40は油圧タンク12の容量はシリンダの呼吸量を補う容量があればよいので、油圧タンク12の容量を小さくできる。低圧大容量電磁ポンプ20が油圧タンク12より取り出してタンク外である本体ブロック11に設けたので保守管理が容易である。
【0023】
図6は本発明の第三の実施の形態に係る駆動装置付アクチュエータ70の概略構造を示す。この駆動装置付アクチュエータ70の特徴は、図1に示す低圧大容量電磁ポンプ20の代わりに小さなパワーソウスを有する駆動源、例えば低圧大容量電磁ポンプ71を用いてピストンロッド13を作動させることが特徴である。
この駆動装置付アクチュエータ70は外部の低出力油圧電動装置で駆動するが高圧小容量電磁ポンプを用いて増圧させるものである。
【符号の説明】
【0024】
10、40、70 駆動装置付アクチュエータ
11 本体ブロック 12 油圧タンク
13 ピストンロッド 14 積層弁
15、24 シール部材 16 シリンダチューブ
17 シリンダカバー 20、71 低圧大容量電磁ポンプ
21 開口穴 22 ピストン
26 ブロック 27 ガイド部材
29 高圧小容量電磁ポンプ 30 シャットオフ弁
31 パイロットチェック弁 36 ヘッド室
38 ロッド室




【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧小容量電磁ポンプ、パイロットチェック弁、シャットオフ弁及び方向切換弁を積層した積層弁と、
前記積層弁を取り付けた本体ブロック部材と、
前記本体ブロック部材に取り付けられたタンク部材と、
前記本体ブロック部材のシリンダ部に摺動自在に挿嵌されたピストンロッド部材と、
前記タンク部材に内蔵され前記本体ブロック部材に取り付けられた低圧大容量電磁ポンプと、
を備え、
前記積層弁、前記タンク部材及び前記ピストンロッド部材は油路で連通していることを特徴とする駆動装置付アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載の駆動装置付アクチュエータにおいて、
前記タンク部材と前記ピストンロッド部材が対向して略同一線上に設けられ、前記積層弁が前記タンク部材及び前記ピストンロッド部材の軸心方向に対して同軸または任意の角度で交差して前記本体ブロック部材の上部に設けられていることを特徴とする駆動装置付アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1記載の駆動装置付アクチュエータにおいて、
前記ピストンロッド部材が前記タンク部材の軸線に対して円周方向に任意に位置に設けられていることを特徴とする駆動装置付アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の駆動装置付アクチュエータにおいて、
前記低圧大容量電磁ポンプが前記タンク部材より取り出して前記本体ブロック部材に設置したことを特徴とする駆動装置付アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の駆動装置付アクチュエータにおいて、
前記低圧大容量電磁ポンプにより前記ピストンロッド部材を高速移動させて被加工物に当接し、前記高圧小容量電磁ポンプにより前記被加工物を把持するようにしたことを特徴とする駆動装置付アクチュエータ。
【請求項6】
高圧小容量電磁ポンプ、パイロットチェック弁、シャットオフ弁及び方向切換弁を積層した積層弁と、
前記積層弁を取り付けた本体ブロック部材と、
前記本体ブロック部材のシリンダ部に摺動自在に挿嵌されたピストンロッド部材と、
前記本体ブロック部材に接続した低圧で出力の小さい駆動源と、
を備え、
前記駆動源により前記ピストンロッド部材に増圧を作用させること特徴とする駆動装置付アクチュエータ。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−43174(P2011−43174A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189821(P2009−189821)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】