説明

骨成長を調節するための方法、組成物および製造物

骨成長および再構築を調節すること、骨疾患を防止すること、および骨細胞のカンナビノイド受容体媒介作用により骨成長または修復を誘導することに適した新規な方法および薬学的組成物が開示される。さらに、骨成長調節剤を同定する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨の成長および再構築を調節する方法、骨疾患を処置または防止する方法、骨の成長および最大骨量または修復を誘導する方法、骨成長を調節するための薬学的組成物、骨成長調節剤の製造物、ならびに骨成長調節剤を同定する方法に関する。詳細には、本発明では、骨細胞におけるカンナビノイド受容体の発現または活性を調整し、それにより骨成長を調節することが用いられる。
【背景技術】
【0002】
天然に存在するカンナビノイドは、植物由来および内因性の2つのカテゴリーに分けることができる。植物由来のカンナビノイドは、広く知られているΔ−テトラヒドロカンナビノール(THC)(これは大麻における向精神性成分である)によって例示される劇的な精神行動的作用を誘発することが知られている。植物由来のカンナビノイドはまた、複雑な心臓血管作用を有することが知られており、その顕著な構成要素の1つが低血圧症である[Vollmer他、J.Pharm.Pharmacol.、26:186〜198(1974)]。内因性のカンナビノイド(エンドカンナビノイド)は、受容体結合部位を植物由来のカンナビノイドと共有し、その神経行動的作用の多くを模倣する脂質様分子の一群である[Mechoulam他、Adv.Exp.Bio.Med.、402:95〜101(1996)]。2つのエンドカンナビノイドが少し詳しく特徴づけられている:アラキドニルエタノールアミド(アナンダミド)[Devane他、Science、258:1946〜1949(1992);Felder他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:7656〜7660(1993)]および2−アラキドノイルグリセロール(2−AG)[Mechoulam他、Biochem.Pharmacol.、50:83〜90(1995)]。
【0003】
さらなる天然カンナビノイドまたは合成カンナビノイドが下記に記載されている:米国特許第4371720号、同第5013387号、同第5081122号、同第5292736号、同第5461034号、同第5618955号、同第6166066号および同第6531636号;国際特許出願公開WO01/9773、同WO97/29079、同WO99/02499、同WO98/41519および同WO94/12466;欧州特許第EP0570920号および同第EP0444451号;フランス国特許第FR2735774号;イスラエル国特許第IL01/00551号および同第IL99/00187号;GaoniおよびMechoulam、J.Amer.Chem.Soc.、93、217(1971);Mechoulam他、Science、169、611(1970);Edery他、Ann.N.Y.Acad.Sci.、191、40(1971);Mechoulam他、J.Amer.Chem.Soc.、94、7930(1972);R.Mechoulam(編)、“大麻:化学、代謝、薬理学および臨床作用”、Academic Press、1973、New−York;Houry他、J.Med.Chem.、17、287(1974);Houry他、J.Med.Chem.、18、951(1975);Mechoulam他、Chem.Reviews、76、75(1976);Mechoulam他、J.Med.Chem.、23、1068(1980);Srebnik他、J.Chem.Soc.,Perkin Trans.I.、2881(1984);Mechoulam他、Tetrahedron:Asymmetry、1、315(1990);Devane他、Science、258、1946(1992);Burstein他、J.Med.Chem.、35、3135(1992);Hanus他、J.Med.Chem.、36、3032(1993);Mechoulam他、Biochem.Pharmacol.、50、83(1995);Sheskin他、J.Med.Chem.、40、659(1997);Rhee他、J.Med.Chem.、40、3228(1997);Hanus他、PNAS、98、3662(2001)。
【0004】
エンドカンナビノイドは、特異的な受容体に結合し、それにより神経伝達物質およびホルモン調節因子を活性化することによってその作用を発揮する[Piomelli他、Trends Pharmacol.Sci.、21:218〜224(2000);Petwee,R.G.、Curr.Med.Chem.、6:635〜664(1999);Devane他、J.Med.Chem.、35:2065〜2069]。
【0005】
今日まで、2つのタイプの高親和性のカンナビノイド受容体が分子クローニングによって同定されている:(i)CB1受容体(これは、ほとんどが脳に存在するが[Devane他、Mol.Pharmacol.、34:605〜613(1988);Matsuda他、Nature、346:561〜564(1990)]、一部の末梢組織にもまた存在する[Shire他、J.Biol.Chem.、270:3726〜3731(1995);Ishac他、Br.J.Pharmacol.、118:2023〜2028(1996)])、および(ii)CB2受容体(これは脾臓内のマクロファージに存在する[Munro他、Nature、365:61〜65(1993)])。他のタイプまたはサブタイプのカンナビノイド受容体が最近報告されており、これらは、CB1様受容体、CB2様受容体および非CB1非CB2受容体と呼ばれている[Hanus他、J.Pharmacol.Exper.Therapeutics、54:161〜202(2002)]。
【0006】
内因性カンナビノイドの生理学的役割およびエンドカンナビノイドシグナル伝達の経路は、さかんに行われている研究の対象であり、神経系、心臓血管系、免疫系および生殖系において様々なプロセスに影響を及ぼすことが報告されている[Mechoulam他、Eur.J.Pharmacol.、359:1〜18(1998);AxelrodおよびFelder、Neurochem.Res.、23:575〜581(1998);Wagner他、J.Mol.Med.、76:824〜836(1999);Klein他、Immunol.Today、19:373〜381(1998)]。
【0007】
その結果として、様々なカンナビノイドおよびカンナビノイド受容体リガンドが、様々な医学的障害を処置するための有用な治療剤として使用または記載されている。
【0008】
例えば、THCが、ガン患者またはAIDS患者による過度な体重減少を防止するために広範囲に使用されている[Mechoulam他、E.Prog.Med.Chem.、35:199〜243(1998)]。
【0009】
米国特許第5939429号には、出血性ショックを含む心臓血管状態を処置するために、また、過度な血管収縮に関連する他の状態、例えば、高血圧、末梢血管疾患、肝硬変、およびある種の形態の狭心症などにおいて、CB1受容体ならびに他のカンナビノイド受容体のアゴニストを使用することが開示される。さらに、この特許では、マクロファージのエンドトキシン活性化により引き起こされる低血圧を処置するためにCB1および他のカンナビノイド受容体のアンタゴニストを使用することが教示される。
【0010】
米国特許第6166066号には、臓器移植患者における組織拒絶を防止するために、また、自己免疫関連疾患を処置するために、CB2受容体に対して選択的であるカンナビノイドを免疫抑制剤として使用することが開示される。
【0011】
米国特許出願第09/779109号には、呼吸器または非呼吸器での白血球活性化に関連する疾患を処置するためにカンナビノイド受容体調節因子を使用することが開示される。例示的な非呼吸器カンナビノイド受容体媒介の疾患には、移植拒絶、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、狼瘡、移植片対宿主病、T細胞媒介の過敏性疾患、乾癬、橋本甲状腺炎、ギラン・バレー症候群、ガン、接触性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、および虚血性傷害または再潅流傷害が含まれる。
【0012】
米国特許出願第10/032163号には、内因性カンナビノイド受容体に特異的に結合し、その結果、グルタミン酸誘導による神経毒性から細胞を保護するようにするカンナビノイドアゴニストの活性を増大させる方法が開示される。
【0013】
なおも、様々なカンナビノイドまたはカンナビノイド受容体リガンドが治療剤としての使用について提案されているが、骨に関係した疾患を処置または防止するためにカンナビノイドを適用することは、先行技術分野では、これまで一度も記載または示唆されていない。
【0014】
本発明を実施に移しているとき、本発明の発明者らは、驚くべきことに、骨の成長および再構築を調節することにおけるエンドカンナビノイドの主要な役割を発見した。この発見は、例えば、カンナビノイドまたはカンナビノイド受容体リガンドを、骨の疾患および傷害を処置するための治療剤として、そして同様に、骨形成を促進させるための治療剤として使用することが潜在的に有益であることを示している。
【0015】
骨は、骨芽細胞(これにより、新しい骨が作られる)および破骨細胞(これにより、骨が破壊される)によって媒介される複雑なプロセスでの絶え間ない分解および再合成を受けている。このプロセスは骨再構築と呼ばれている。これらの細胞の活性は非常に多数のサイトカインおよび増殖因子によって調整されており、それらの多くが、現在、同定およびクローン化されている。
【0016】
極めて多数の状態が、骨形成を促進し、かつ/または骨再吸収を阻害することが必要であることによって特徴づけられる。おそらくは、骨折の場合が最も明らかであり、この場合には、骨の成長を刺激すること、および、骨の修復を急がせ、完全にすることが望まれる。骨形成を高める作用因子はまた、骨内インプラントおよび顔面再建法において有用であり、また、補綴用および治療用の骨インプラントの成長しつつある分野では非常に重要である。他の骨欠損状態には、骨の分節性欠陥、歯周病、転移性骨疾患、溶骨性骨疾患、および、結合組織の修復が有益である状態(例えば、軟骨の欠陥または傷害の治癒または再生など)が含まれる。骨粗鬆症(老人性骨粗鬆症、および閉経後のホルモン状態に関連する骨粗鬆症を含む)の慢性的状態もまた非常に重要である。骨成長が必要であることによって特徴づけられる他の状態には、原発性および二次的な上皮小体機能亢進症、びまん性骨粗鬆症、糖尿病に関係した骨粗鬆症、およびグルココルチコイドに関係した骨粗鬆症が含まれる。
【0017】
他方で、骨形成を阻害するか、または骨再吸収を促進することが必要であることによって特徴づけられる様々な状態が存在する。これらには、特定の病期段階のパジェット病、芽細胞の転移性骨ガン、ホジキンリンパ腫、退行性硬化症および骨髄炎が含まれる。骨成長の阻害および骨再吸収において効果的であることが知られている薬剤には、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、1,25(OH)ビタミンD3、グルココルチコイド、オメプラゾール、血清タンパク質フェチュイン、ノギン、コルジンおよびDANタンパク質、ならびに高濃度のTGF−βがある。しかしながら、上記薬剤のすべて(特に、グルココルチコイドおよび他のホルモン)は、広範囲の様々な組織に対してその影響を発揮することが知られており、そのため、骨疾患における薬理学的応用のためには適していない。
【0018】
骨に関係した疾患を処置するための様々な治療剤および治療法が特許刊行物において開示されている。
【0019】
米国特許第5461034号には、骨髄移植に備えて骨形成および骨髄を高めるために、再生中の骨髄から同定された骨形成性の成長ポリペプチドが開示される。米国特許第5280040号には、骨粗鬆症の処置において有用であるとして記載される抗エストロゲン性経口避妊化合物の3,4−ジアリールクロマン化合物が開示される。米国特許第6352973号には、骨成長を高めるために、血清から最初に単離されたTGF−βスーパーファミリーのサイトカインの骨形態形成ポリペプチドを含有する組換えタンパク質が開示される。米国特許第6462019号には、プロテアソーム活性を有しないマウスが、大理石骨病として知られている過度な骨形成の状態を発症するという観測結果に基づいて、破骨細胞の活性を阻害し、かつ骨成長を刺激するための、プロテアソーム活性およびプロテアソーム産生の阻害剤が開示される。
【0020】
国際特許出願公開第92/15615号には、血清カルシウムレベルの上昇を引き起こす骨障害を処置するために血清カルシウムレベルを低下させるように作用する、ブタ膵臓から得られたタンパク質が開示される。
【0021】
国際特許出願公開第92/14481号には、アクチビンおよび骨形態形成タンパク質を含有する、骨成長を誘導するための組成物が開示される。
【0022】
欧州特許出願第504938号には、骨疾患の処置においてシステインプロテアーゼを阻害するジペプチドまたはトリペプチドの使用が開示される。
【0023】
欧州特許出願第499242号には、骨芽細胞の増殖がそのような組成物により引き起こされるので、骨量の減少を伴う骨疾患において有用であると考えられる骨細胞増殖因子組成物の使用が開示される。
【0024】
欧州特許出願第451867号には、カルシウムまたはリン酸に関連する代謝異常(骨粗鬆症など)を処置するための副甲状腺ホルモンペプチドアンタゴニストが開示される。
【0025】
それにもかかわらず、現在、骨欠陥を管理することに対する薬学的方法はどれも満足すべきものではない。骨折は、依然として、ギブス包帯、ブレース、固定具および他の狭義の機械的手段をもっぱら使用して処置されている。さらに、閉経後の骨粗鬆症に関連するさらなる骨悪化は、一部の個体には欠点を有し得るエストロゲン系薬剤またはビスホスホナート系薬剤で処置されている。
【0026】
骨形態形成タンパク質(BMP)はインビトロおよびインビボでの骨形成の強力な刺激因子であるが、骨の治癒を高めるための治療剤としてのその使用には欠点がある。骨形態形成タンパク質に対する受容体が多くの組織で同定されており、また、BMP自身が、特異的な時間的かつ空間的な様式で、非常に様々な組織で発現している。このことは、BMPが、骨に加えて、多くの組織に対して様々な作用を有し得ることを示唆しており、これにより、全身投与されたときの治療剤としてのその有用性が潜在的に制限される。そのうえ、BMPはペプチドであるので、注射によって投与されなければならない。これらの欠点は、BMPを治療剤として開発することに対して厳しい制限を課している。
【0027】
フッ化物は、骨形成を高める目的のためにもまた提案される一方で、例えば、Burgener他(J Bone Min Res(1995)、10:164〜171)により記載されるように、骨芽細胞上の増殖因子受容体のチロシンリン酸化に関係づけられ得る作用様式を有しているが、フッ化物の投与には、骨の石灰化に対する有害な影響のためであるとおそらくは考えられる骨もろさの増大が伴う。
【0028】
副甲状腺ホルモンは、現在、骨形成を代謝的に高めるための優れた薬剤であると見なされているが、注射により投与されるだけであるので、固有的な問題を有している。
【0029】
このように、様々な方法(例えば、上記に記載された方法など)が試みられているが、これらの状態を処置するために使用され得る薬剤のレパートリーに加えることが依然として求められている。
【0030】
従って、これらの状態を処置するために使用され得る、正常なシグナル伝達経路を介して作用する新規な効果的な骨成長調節剤が必要であることが広く認められており、また、そのような骨成長調節剤を得ることは非常に好都合である。従って、本発明は、カンナビノイド受容体を調整することに基づいて骨成長を調節し、また、骨欠陥を処置または防止するための新規な方法、薬学的組成物および製造物を提供する。
【発明の開示】
【0031】
本発明の1つの局面によれば、骨成長および/または骨再構築を調節する方法で、少なくとも1つのカンナビノイド受容体の発現または活性を調整し、それにより骨成長および/または骨再構築を調節することを含む方法が提供される。
【0032】
本発明の別の局面によれば、必要性のある対象において骨疾患を処置または防止する方法で、対象の少なくとも1つのカンナビノイド受容体の発現または活性を調整し、それにより対象において骨疾患を処置または防止することを含む方法が提供される。
【0033】
本発明のさらに別の局面によれば、必要性のある対象において骨成長および/または骨修復を誘導する方法で、(a)骨細胞を単離すること、(b)骨細胞の少なくとも1つのカンナビノイド受容体の発現または活性を調整すること、および(c)工程(b)から得られた骨細胞を対象に投与し、それにより対象において骨成長または骨修復を誘導することを含む方法が提供される。
【0034】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、対象は脊椎動物である。
【0035】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、脊椎動物はヒトである。
【0036】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体の活性化またはリガンド結合を妨げる分子はSR−141761Aである。
【0037】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおさらにさらなる特徴によれば、対象は、骨粗鬆症、骨折または骨不全症、原発性または二次的な上皮小体機能亢進症、変形性関節炎、歯周病または歯周欠陥、溶骨性骨疾患、形成手術後、整形外科的埋め込み後、および歯科埋め込み後からなる群から選択される状態または疾患に罹患している。
【0038】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、この方法は、骨形成を促進し、かつ/または骨再吸収を阻害することができる少なくとも1つの化合物を対象に投与することをさらに含む。
【0039】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、少なくとも1つの化合物は、骨形態形成タンパク質、抗再吸収剤、骨形成性因子、軟骨由来形態形成タンパク質、副甲状腺ホルモン、IGF1、FGF、ノギン、骨形成性成長ペプチド、成長ホルモン、エストロゲン系薬剤、ビスホスホナート系薬剤、スタチンおよび分化因子からなる群から選択される。
【0040】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおさらにさらなる特徴によれば、対象は、パジェット病、骨芽細胞性骨疾患、芽細胞性転移性骨ガン、転移性骨疾患、ホジキンリンパ腫、退行性硬化症および骨髄炎からなる群から選択される状態または疾患に罹患している。
【0041】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらになおさらなる特徴によれば、この方法は、骨形成を阻害し、かつ/または骨再吸収を促進することができる少なくとも1つの化合物を対象に投与することをさらに含む。
【0042】
本発明のさらに別の局面によれば、骨成長および/または骨再構築を調節するための薬学的組成物であって、骨細胞の少なくとも1つのカンナビノイド受容体の発現または活性を調整することができる薬剤と、骨成長および/または骨再構築を調節することができる化合物と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的組成物が提供される。
【0043】
本発明のさらに別の局面によれば、充填用物質と、骨疾患または骨欠陥の処置のために同定されている薬学的組成物の治療効果的な量とを含む製造物が提供され、この場合、薬学的組成物は、少なくとも1つのカンナビノイド受容体の活性または発現を調整することができる薬剤と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む。
【0044】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、少なくとも1つの化合物は、骨形態形成タンパク質、抗再吸収剤、骨形成性因子、軟骨由来形態形成タンパク質、副甲状腺ホルモン、IGF1、FGF、ノギン、骨形成性成長ペプチド、成長ホルモン、エストロゲン系薬剤、ビスホスホナート系薬剤、スタチンおよび分化因子からなる群から選択される。
【0045】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、薬学的組成物は、骨形成を阻害するか、または骨再吸収を促進することができる少なくとも1つの化合物を含む。
【0046】
本発明のさらなる局面によれば、骨成長調節剤を同定する方法で、多数の分子をスクリーニングし、それにより、少なくとも1つのカンナビノイド受容体の発現または活性を調整することができる、骨成長調節剤である分子を明らかにすることを含む方法が提供される。
【0047】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、この方法は、骨形成速度を変化させる分子の能力を測定すること、および/または骨石灰化周囲を変化させることをさらに含む。
【0048】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、スクリーニングは、骨細胞を多数の分子にさらし、骨細胞における少なくとも1つのカンナビノイド受容体の発現を測定することによって行われる。
【0049】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、少なくとも1つのカンナビノイド受容体は骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体である。
【0050】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、カンナビノイド受容体の発現はRT−PCRによって測定される。
【0051】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、骨細胞前駆体は、骨形成性細胞、間質細胞または骨再吸収細胞前駆体である。
【0052】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおさらにさらなる特徴によれば、調整することはアップレギュレーションすることであり、この場合、発現または活性をアップレギュレーションすることは、薬剤によって、または、(a)少なくとも1つのカンナビノイド受容体の機能的部分を少なくとも発現させるために設計および構築された外因性ポリヌクレオチド配列、(b)少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードする内因性DNAまたはmRNAの発現を増大させる化合物、および(c)少なくとも1つのカンナビノイド受容体を活性化する分子、からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を対象に投与することによって行われる。
【0053】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、少なくとも1つのカンナビノイド受容体を活性化する分子はカンナビノイドである。
【0054】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおさらにさらなる特徴によれば、カンナビノイドは2AGである。
【0055】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらにさらなる特徴によれば、調整することはダウンレギュレーションすることであり、この場合、発現または活性をダウンレギュレーションすることは、薬剤によって、または、(a)少なくとも1つのカンナビノイド受容体と結合する分子、(b)少なくとも1つのカンナビノイド受容体を切断する酵素、(c)少なくとも1つのカンナビノイド受容体のmRNA転写物の分解を誘導することができるsiRNA分子、(d)少なくとも1つのカンナビノイド受容体のmRNA転写物またはDNAを特異的に切断するDNAザイム、(e)少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物と特異的にハイブリダイゼーションすることができるアンチセンスポリヌクレオチド、(f)少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物を特異的に切断するリボザイム、(g)少なくとも1つのカンナビノイド受容体の結合部分を少なくとも有する非機能的アナログ、および(h)少なくとも1つのカンナビノイド受容体の活性化またはリガンド結合を妨げる分子、からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を対象に投与することによって行われる。
【0056】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるなおさらにさらなる特徴によれば、発現または活性を調整することは、少なくとも1つのカンナビノイド受容体の第1のカンナビノイド受容体をアップレギュレーションし、かつ、少なくとも1つのカンナビノイド受容体の第2のカンナビノイド受容体をダウンレギュレーションすることによって行われる。
【0057】
下記に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、少なくとも1つのカンナビノイド受容体は、CB1受容体、CB1様受容体、CB2受容体、CB2様受容体および非CB1非CB2受容体からなる群から選択される。
【0058】
本発明は、骨成長および骨再構築を調節する方法、骨疾患を処置または防止する方法、骨細胞においてカンナビノイド受容体の発現または活性を調整することにより骨の成長および最大骨量または修復を誘導する方法を提供することによって、現在知られている形態の欠点に対処することに成功している。具体的には、骨芽細胞(骨形成)および破骨細胞(骨再吸収)の両方の活性に対して作用するカンナビノイド受容体媒介の作用により、様々な骨疾患における新しい防止方法ならびに治療的介入がもたらされる。骨成長および/または骨再構築を調節するための薬学的組成物、カンナビノイド受容体媒介の作用に基づく骨成長調節剤の製造物、およびそのような骨成長調節剤を同定する方法もまた提供される。
【0059】
別途に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等な方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料は、下記に記載される。矛盾する場合には、本特許明細書(定義を含む)が優先する。さらに、材料、方法および例は例示にすぎず、限定することを意図しない。
【0060】
図面の簡単な記述
本発明を、本明細書中で、例示のみを目的として添付の図面を参照して記載する。ここでは詳細な図面を参照して、示した個々の事項は本発明の好ましい実施形態の例示および例示的考察のみを目的とし、最も有用と考えられるものを示すことおよび本発明の原理および概念的局面の説明が容易に理解されるために示すことを強調する。これに関して、本発明の基本的理解に必要とされる以上により詳細に本発明の構造細部を示すことを意図せず、図面と共に示した説明により、どのようにして本発明のいくつかの形態を実際に実施することができるのかが当業者に明らかとなる。
図1はオスCB1−/−[CB1カンナビノイド受容体ノックアウト(欠損)マウス]および野生型コントロール(WT)の大腿骨の定性的な微小コンピューター断層撮影法(μCT)を例示する。図1Aおよび図1Bは、CB1−/−の遠位側の大腿骨骨端中節における小柱骨体積密度の顕著な減少を示す三次元μCT画像(図1A)、ならびに、CB1−/−マウスにおける小柱結合性が低下していること(図1B)を示す。画像は、メジアン小柱骨体積密度値を有する代表的な大腿骨から得られた。
図2はオスCB1−/−[CB1カンナビノイド受容体ノックアウト(欠損)マウス]および野生型コントロール(WT)の大腿骨の微小コンピューター断層撮影法(μCT)の比較形態計測分析を例示する。図2A(上段左)は、CB1−/−マウスにおける皮質厚さの増大が著しいこと(p=0.012)を示し、図2B(上段右)は、CB1−/−マウスにおける髄質空間体積の減少が著しいこと(p=0.003)を示し、図2C(下段左)は、CB1−/−マウスにおける小柱骨体積の減少が著しいこと(p=0.018)を示し、図2D(下段中央)は、CB1−/−マウスにおける小柱数減少の減少が著しいこと(p=0.0003)を示し、図2E(下段右)は、CB1−/−マウスにおける小柱結合性の低下が著しいこと(p=0.0002)を示す。誤差バーは±標準偏差を示す。
図3はメス野生型コントロール(WT)との比較で、メスCB1受容体ノックアウト(欠損)マウス(CB1−/−)の大腿骨の微小コンピューター断層撮影(μCT)形態計測分析を例示する。誤差バーは±標準偏差を示し、星印は統計学的に有意であることを示す。図3A(上段左)は、CB1−/−マウスにおける小柱骨体積の低下が著しいことを示し、図3B(上段右)は、CB1−/−マウスにおける小柱結合性の減少が著しくないことを示し、図3C(下段左)は、CB1−/−マウスにおける小柱数の減少が著しいことを示し、一方、図3D(下段右)は、CB1−/−マウスにおける小柱間隔の増大が著しいことを示す。
図4はオスFAAH−/−[脂肪酸アミドヒドロラーゼ(FAAH)ノックアウト(欠損)マウス]および野生型コントロール(WT)の大腿骨のμCT形態計測分析を例示する。誤差バーは±標準偏差を示す。図4A(上段左)は、FAAH−/−マウスにおける皮質厚さの減少が著しいこと(p=0.049)を示し、図4B(上段右)は、FAAH−/−マウスにおける小柱骨体積の減少が著しくないことを示し、一方、図4C(下段左)は、FAAH−/−マウスにおける髄質空間体積の増大が著しいことを示す。図4Dには、骨皮質厚さ(Ct.Th.)と髄質空間体積(MV/TV)との線形回帰分析が示され、これは有意な逆の相関を示している(r=−0.985、p=0.005)。
図5は分化途中の骨芽細胞前駆体細胞における、CB2カンナビノイド受容体、脂肪酸アミドヒドロラーゼ(FAAH)、副甲状腺ホルモン受容体(PTHRc1)および組織非特異的アルカリホスファターゼ(ALP)のRT−PCR発現分析を例示する。ST2骨髄由来間質前駆体細胞のRT−PCR分析(左パネル)では、CB2遺伝子の発現が骨形成性培地において5日目もの早くからであることが明らかにされ、その一方で、MC3T3E1頭蓋冠由来骨芽細胞のRT−PCR分析(右パネル)で、CB2受容体の発現の出現がはるかに後であること(10日および20日)が示されることには留意すること。
図6は分化途中の破骨細胞におけるカンナビノイド受容体CB2および脂肪酸アミドヒドロラーゼ(FAAH)の発現を例示する。図6A(左パネル)は、M−CSFおよびRANKL(破骨細胞分化因子)を含有する破骨細胞分化培地で培養された大腿骨単球の顕微鏡写真である。図6B(右パネル)は、酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼに関して染色された分化途中の破骨細胞の顕微鏡写真である。分化した破骨細胞が赤色〜桃赤色で染色されている。図6C(下段)は、培養された単球および分化した破骨細胞の両方におけるCB2およびFAAHの陽性の発現を例示するRT−PCR分析である。
図7はエンドカンナビノイドの2−アラキドノイルグリセロール(2AG)で処置されたマウスまたは非処置マウスの定性的分析および組織形態計測分析を例示する。図7A(上段左)には、骨形成速度に対する2AGの著しい正の用量応答作用が示される(p=0.04)。図7B(上段右)には、骨形成部位へのカルセイン染色の取り込みを明らかにする、2AG処置マウス(2AG)および非処置マウス(ビヒクル)の代表的な蛍光組織学的画像が示される。2AG処置マウス(右パネル)では、石灰化前線の密度がより大きくなっていることを示す、蛍光性カルセインの増大した染色密度には留意すること。2AG処置マウスの骨組織(右側の画像)は、非処置マウスの類似する骨組織(左側の画像)よりも実質的に高密度化しているようである。図7C(下段左)は、石灰化中の周囲部に対する2AGの類似した著しい正の用量応答作用を示している(p=0.019)。しかしながら、無機付加速度に対する2AGの作用は有意でないことが明らかであった(図7D、下段右)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
本発明は、骨成長および骨再構築を調節するために、骨疾患を防止するために、また、骨成長または骨修復を誘導するために好適な方法および薬学的組成物に関する。本発明はまた、骨成長調節剤を同定する方法にも関する。本発明の原理または操作は、図面および付随する説明を参照してより良く理解することができる。
【0062】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、または実施例により例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または、様々な方法で実施することができ、または、様々な方法で行われる。また、本明細書中で用いられる表現法および用語法は説明のためであり、従って、限定であるとして見なされるべきでないことも理解しなければならない。
【0063】
カンナビノイド受容体はGタンパク質共役受容体スーパーファミリーに属する。カンナビノイド受容体は、主としてニューロンCB1受容体と、主として末梢CB2受容体とに分類される。CB1受容体の作用は主として中枢神経系に関連しているが、CB2受容体は、免疫調節および炎症に関係づけられる末梢作用を有すると考えられている。CB1受容体およびCB2受容体に加えて、最近の薬理学的証拠により、さらなるタイプのカンナビノイド受容体が存在し得ることが示される[例えば、Breivogel他、Mol Pharmacol.、60:155〜163(2001);Calignano A.、Eur J Pharmacol、419:191〜198(2001);Jarai他、Proc Natl Acad Sci USA、96、14136〜14141(1999);Di Marzo他、J.Neurochem.、75:2434〜2444(2000)]。
【0064】
CB1受容体のアップレギュレーションは伝達物質の放出を阻害し、その一方で、CB2受容体のアップレギュレーションは単球/マクロファージの活性ならびに炎症性サイトカインの放出を阻害する[Howlett他、Pharmacol.Rev.、54:161〜202(2002)]。その結果として、カンナビノイド受容体のリガンドが、これらの受容体のこの記載された機能に関係する様々な疾患または障害を処置するための治療剤として記載されている。
【0065】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、驚くべきことに、そして予想外にも、カンナビノイド受容体が骨細胞において発現し、骨形成、骨再構築および骨成長の調整に関係していることを発見した(下記の実施例の節の実施例1〜4を参照のこと)。
【0066】
本明細書中で使用される用語「骨成長」は、骨組織の量および一体性の維持または明白な増大を生じさせるすべてのプロセスを含むとして定義される。詳細には、骨成長には、骨再構築、骨形成、石灰化などが含まれる。
【0067】
骨組織におけるカンナビノイド受容体の発現、骨成長および骨再構築に対するカンナビノイド受容体の調節作用、ならびに、骨疾患を処置するためにカンナビノイド受容体の発現または活性を操作することの潜在的な利益は、これまで先行技術分野では記載または示唆されていない。
【0068】
従って、本発明の1つの局面によれば、骨成長および骨再構築を調節する方法が提供される。この局面による方法は、1つまたは複数のカンナビノイド受容体の発現または活性を調整することによって行われる。
【0069】
本発明のカンナビノイド受容体は、好ましくは骨細胞または骨細胞前駆体の受容体である。本明細書中で使用される表現「骨細胞」は、骨格組織細胞、例えば、骨、軟骨、腱、靱帯、骨髄間質および結合組織細胞などを示し、これには、骨再吸収細胞、例えば、骨髄単球由来破骨細胞、マクロファージおよびスカベンジャー細胞などが含まれる。本明細書中で使用される用語「骨細胞前駆体」は、骨細胞分化経路に拘束され得るか、または部分的に拘束され得る細胞(これには、幹細胞および骨再吸収細胞前駆体が含まれる)を示し、しかし、一般には、成熟し、かつ完全に分化した細胞としてのマーカーまたは機能を発現しない。
【0070】
好ましくは、骨細胞前駆体は、間質細胞もしくは骨形成性細胞、または骨再吸収細胞前駆体である。本明細書中で使用される用語「間質細胞」は、多数回分裂することができる多能性前駆体細胞で、その子孫が、軟骨、骨、腱、靱帯、骨髄間質および結合組織を含む骨格組織を生じさせる多能性前駆体細胞を示す[A.Caplan、J.Orthop.Res.、9:641〜50(1991)を参照のこと]。用語「間質細胞」はまた間葉性細胞を含むことが特筆される。本明細書中で使用される用語「骨形成性細胞」は、骨組織を生じさせる骨芽細胞または前駆体骨芽細胞を示す。
【0071】
本発明のカンナビノイド受容体は、例えば、CB1受容体、CB2受容体、CB1様受容体、CB2様受容体または任意の他のタイプのカンナビノイド受容体であり得る[Howlett他、Pharmacol.Rev.、54:161〜202(2002)]。
【0072】
本明細書中で使用される表現「発現または活性を調整する」は、受容体の発現または活性のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションのいずれか、あるいは、選択された場合には、1つのカンナビノイド受容体の発現または活性のアップレギュレーションおよび別のカンナビノイド受容体の発現または活性のダウンレギュレーションを示す。
【0073】
本明細書中下記においてさらに記載されるように、カンナビノイド受容体の発現または活性のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションは、様々な骨疾患または骨障害を処置するために利用することができる。そのような調整は、当業者に広く知られている様々な薬剤および方法を使用して達成され得る。下記の節には、そのような薬剤の例が、カンナビノイド受容体の活性をアップレギュレーションするために使用され得る薬剤の説明から始まっていくつか示される。
【0074】
カンナビノイド受容体の活性をアップレギュレーションすることができる薬剤の一例がカンナビノイド分子である。用語「カンナビノイド」は、カンナビノイド受容体の任意の天然アゴニストもしくは合成アゴニスト、またはそのアナログもしくは誘導体を示す。現在知られているカンナビノイドには、例えば、Δ−テトラヒドロカンナビノール(Δ−THC)、Δ−THC、Δ−THC−ジメチルヘプチル、11−ヒドロキシ−Δ−THC−ジメチルヘプチル(HU−210)、5’−F−Δ−THC、11−OH−カンナビノール、Δ−THC−11−オイック−ジメチルヘプチル酸、1−デオキシ−11−OH−Δ−THC−ジメチルヘプチル(JWH−051)、11−ヒドロキシ−THC類、デスアセチル−L−ナントラドール、11−OH−カンナビノール−ジメチルヘプチル、カンナビノール−ジメチルヘプチル−11−酸、HU−308、HU243、L−759633、L−759656、L−768242、JWH−133、JWH−139、JWH−051、JWH−015、CP55940、CP47497、CP55244、R−(+)−WIN55212、ACEA、ACPA、O−1812、アラキドニルエタノールアミド(アナンダミド)、2−アラキドノイルグリセロール(2AG)、2−アラキドノイルグリセリルエーテル、およびメタナンダミド、ならびに、それらのアナログまたは誘導体が含まれる。さらなるカンナビノイドが、上記の背景の節で引用された参考文献に記載されている。
【0075】
受容体の活性をアップレギュレーションする別の方法は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)クラスの抗うつ剤におけるように内因性(または外因性)リガンドの代謝を阻害することによって、または、cAMP依存受容体の活性をメチルキサンチンホスホジエステラーゼ阻害剤によりアップレギュレーションすることによって行われる。例えば、FAAHの阻害は、(下記の実施例の節において記載されるように)、カンナビノイド受容体の活性を効果的に増大させることができる。
【0076】
カンナビノイド受容体の発現をアップレギュレーションすることができる薬剤は、受容体の機能的部分を少なくとも発現させるために設計および構築された外因性のポリヌクレオチド配列であり得る。それによれば、そのような外因性ポリヌクレオチド配列は、骨成長および/または骨再構築を調節することができる、カンナビノイド受容体分子をコードするDNA配列またはRNA配列であり得る。
【0077】
様々なカンナビノイド受容体(CB1およびCB2)が、ヒト、ラットおよびマウスの供給源からクローン化されている[Chakrabarti他、DNA Sequence、5:385〜388(1995);Gerard他、Nucleic Acids Res、18:7142(1990);Griffin他、J Pharmacol Exp Ther、292:886〜894(2000);Shire他、Biochim Biophys Acta、1307:132〜136(1996);Munro他、Nature、365:61〜65(1993)]。従って、CB1およびCB2の両方に対するコード配列情報を、http://www4.ncbi.nlm.nih.gov/を介して利用可能なGenBankデータベースを含むいくつかのデータベースから入手することができる。
【0078】
外因性カンナビノイド受容体を哺乳動物細胞において発現させるために、カンナビノイド受容体をコードするポリヌクレオチド配列(例えば、CB1受容体cDNA:GenBankアクセション番号NM007726;CB2受容体cDNA:GenBankアクセション番号NM001841)が、好ましくは、哺乳動物細胞での発現のために好適な核酸構築物に連結される。そのような核酸構築物は、構成的または誘導可能な様式で細胞内でのポリヌクレオチド配列の転写を行わせるためのプロモーター配列を含む。好適なプロモーターは、例えば、骨特異的な遺伝子発現を行わせることができるヒトオステオカルシン遺伝子プロモーター(例えば、米国特許第5948951号を参照のこと)、またはヒトコラーゲン1(MMP−1)プロモーター(GenBankアクセション番号AF023338)であり得る。本発明の核酸構築物はさらに、さらなるポリヌクレオチド配列、例えば、選択マーカーまたはレポーターポリペプチドをコードする配列、細菌における複製起点をコードする配列、単一mRNAからの数個のタンパク質の翻訳を可能にする配列(IRES)、哺乳動物発現ベクター(例えば、pcDNA3、pcDNA3.1(+/−)、pZeoSV2(+/−)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1(これらはInvitrogenから入手可能である)、pCI(これはPromegaから入手できる)、pBK−RSVおよびpBK−CMV(これらはStratageneから入手可能である)、pTRES(これはClontechから入手可能である)、ならびにそれらの誘導体など)には一般に含まれる、プロモーター−キメラポリペプチドコード領域および/または配列のゲノム組み込みのための配列などを含むことができる。
【0079】
カンナビノイド受容体をアップレギュレーションすることができる薬剤はまた、カンナビノイド受容体をコードする内因性DNAまたはmRNAの転写および/または翻訳を増大させることができる任意の化合物であり得る。
【0080】
本明細書中上記で述べられたように、本発明のこの局面による方法はまた、少なくとも1つのカンナビノイド受容体の発現または活性のダウンレギュレーションをもたらす。
【0081】
カンナビノイド受容体をダウンレギュレーションすることができる薬剤の一例が、カンナビノイド受容体と特異的に結合することができる抗体または抗体フラグメントである。好ましくは、抗体は、カンナビノイド受容体の少なくとも1つのエピトープと特異的に結合する。好ましくは、このようなエピトープは細胞外の部分に存在するか、または、最も好ましくは、カンナビノイド受容体のリガンド結合部分に存在する。カンナビノイド受容体の活性をダウンレギュレーションする際に使用される好適な抗カンナビノイド受容体抗体の例には、Katona他(J.Neurosci、1999、19:4544〜58)によって記載される、CB1に対する特異的な抗体がある。
【0082】
本明細書中で使用される用語「エピトープ」は、抗体のパラトープが結合する抗原における任意の抗原性決定基を意味する。
【0083】
エピトープ決定基は、通常、分子の化学的に活性な表面基(例えば、アミノ酸および炭水化物側鎖など)からなり、通常、特異的な三次元の構造的特徴、ならびに特異的な電荷特徴を有する。
【0084】
本発明において使用される用語「抗体」は、完全な分子ならびにその機能的なフラグメント、例えば、マクロファージに結合することができるFab、F(ab’)2およびFvなどを包含する。これらの機能的な抗体フラグメントは下記のように定義される:(1)Fabは、抗体分子の一価の抗原結合性フラグメントを含有するフラグメントであり、完全な分子を酵素パパインで消化して、無傷の軽鎖と、一方の重鎖の一部とを生じさせることによって作製することができる;(2)Fab’は、完全な抗体をペプシンで処理し、その後、還元して、無傷の軽鎖と、重鎖の一部とを生じさせることによって得ることができる抗体分子のフラグメントである;2つのFabフラグメントが1つの抗体分子あたり得られる;(3)(Fab’)2は、その後の還元を行うことなく、完全な分子を酵素ペプシンで処理することによって得ることができる抗体のフラグメントである;F(ab’)2は、2つのジスルフィド結合によって一緒にされた2つのFab’フラグメントのダイマーである;(4)Fvは、2つの鎖として発現された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作されたフラグメントとして定義される;そして(5)単鎖抗体(「SCA」)は、遺伝子的に融合された単一鎖分子として好適なポリペプチドリンカーによって連結されて、軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された分子である。
【0085】
ポリクローナルおよびモノクローナル抗体およびそのフラグメントを製造する方法がこの技術においてはよく知られている(例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory、New York、1988)を参照のこと:これは参照により本明細書中に組み込まれる)。特に、いくつかのカンナビノイドCBおよびCB特異的な受容体の抗体は開発に成功しており、Egertova他、J Comp Neurol、422:159−171、(2000);Tsou他、Neuroscience、83:393−411)、(1998);Daaka他、J Pharmacol Exp Ther、276:776−783、(1996);Sinha他、J Neuroimmunol、82:13−21、(1998);Waksman他、J Pharmacol Exp Ther、288:1357−1366;Galiegue他、Eur J Biochem、232:54−61、(1995);およびCarayon他、Blood、92:3605−3615、(1998)に記載されている。
【0086】
本発明による抗体フラグメントは、抗体のタンパク質加水分解によって、またはフラグメントをコードするDNAを大腸菌または哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物または他のタンパク質発現システム)において発現させることによって調製することができる。抗体フラグメントは、従来の方法による完全な抗体のペプシン消化またはパパイン消化によって得ることができる。例えば、抗体フラグメントを、抗体をペプシンで酵素切断して、F(ab’)2として示される5Sフラグメントを得ることによって製造することができる。このフラグメントは、3.5SのFab’一価フラグメントを製造するために、チオール還元剤、および場合により、ジスルフィド連結の切断から生じるスルフヒドリル基に対する保護基を使用してさらに切断することができる。あるいは、ペプシンを使用する酵素切断により、2つの一価Fab’フラグメントおよびFcフラグメントが直接的に得られる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4036945号および同第4331647号、ならびにそれらに含まれる参考文献に記載されている(それらの特許は本明細書によりその全体が参照により組み込まれる)。また、Porter,R.R.、[Biochem.J.、73:119〜126、(1959)]も参照のこと。抗体を切断する他の方法、例えば、一価の軽鎖−重鎖フラグメントを形成させるための重鎖の分離、フラグメントのさらなる切断、または他の酵素的、化学的もしくは遺伝学的な技術などもまた、フラグメントが、無傷の抗体によって認識される抗原に結合する限り、使用することができる。
【0087】
FvフラグメントはVH鎖およびVL鎖の会合を含む。この会合は、Inbar他、[Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA、69:2659〜62、(1972)]に記載されているように非共有結合性であり得る。あるいは、可変鎖を、分子間ジスルフィド結合によって連結することができ、または、グルタルアルデヒドなどの化学剤によって架橋することができる。好ましくは、Fvフラグメントは、ペプチドリンカーによってつながれたVH鎖およびVL鎖を含む。これらの単鎖抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによりつながれたVHドメインおよびVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。この構造遺伝子は発現ベクターに導入され、続いて、発現ベクターは大腸菌などの宿主細胞に導入される。組換え宿主細胞により、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを有する単一ポリペプチド鎖が合成される。sFvを製造するための様々な方法が、例えば、WhitlowおよびFilpula、Methods、2:97〜105、(1991);Bird他、Science、242:423〜426、(1988);Pack他、Bio/Technology、11:1271〜77、(1993);Ladner他、米国特許第4946778号(これは本明細書によりその全体が参照により組み込まれる)によって記載されている。
【0088】
抗体フラグメントの別の形態が、1つだけの相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識ユニット」)は、目的とする抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。そのような遺伝子は、例えば、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するためにポリメラーゼ連鎖反応を使用することによって調製される。例えば、LarrickおよびFry、[Methods、2:106〜10、(1991)]を参照のこと。
【0089】
非ヒト(例えば、ネズミ)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)Sub.2または抗体の他の抗原結合性の部分配列など)のキメラ分子である。ヒト化抗体には、レシピエントの相補性決定領域(CDR)に由来する残基が、所望する特異性、親和性および能力を有する、マウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRに由来する残基によって置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれる。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体においても、あるいは取り込まれたCDR配列またはフレームワーク配列においても、そのいずれにも見出されない残基を含むことができる。一般に、ヒト化抗体は、実質的にはすべての可変ドメインまたは1つ以上の(典型的には2つ)可変ドメインを含み、この場合、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部を、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域の一部を少なくとも含む[Jones他、Nature、321:522〜525(1986);Riechmann他、Nature、332:323〜329(1988);Presta、Curr.Op.Struct.Biol.、2:593〜596(1992)]。
【0090】
非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法がこの技術においては広く知られている。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、輸入残基と呼ばれており、この輸入残基は、典型的には、輸入可変ドメインに由来する。ヒト化は、齧歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに使用することによって、Winterおよび共同研究者の方法に従って本質的には行うことができる[Jones他、Nature、321:522〜525(1986);Riechmann他、Nature、332:323〜327(1988);Verhoeyen他、Science、239:1534〜1536(1988)]。従って、そのようなヒト化抗体は、実質的に完全でないヒト可変ドメインが非ヒト種由来の対応する配列によって置換されているキメラ抗体である(米国特許第4816567号)。実際、ヒト化抗体は典型的にはヒト抗体であり、この場合、一部のCDR残基およびおそらくは一部のFR残基が、齧歯類抗体における類似部位に由来する残基によって置換される。
【0091】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレーライブラリー[HoogenboomおよびWinter、J.Mol.Biol.、227:381(1991);Marks他、J.Mol.Biol.、222:581(1991)]を含む、この分野で知られている様々な技術を使用して製造することができる。Cole他およびBoerner他の技術もまた、ヒトモノクローナル抗体を調製するために利用することができる[Cole他、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、77頁(1985);Boerner他、J.Immunol.、147(1):86〜95(1991)]。同様に、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されている遺伝子組換え動物(例えば、マウス)に導入することによって作製することができる。抗原投与したとき、ヒト抗体の産生が認められ、この場合、その産生は、遺伝子再配置、組み立ておよび抗体レパートリーを含むすべての点に関してヒトにおいて見られる産生と非常に似ている。この方法は、例えば、米国特許第5545807号、同第5545806号、同第5569825号、同第5625126号、同第5633425号、同第5661016号、および下記の科学的刊行物:Marks他、Bio/Technology、10、779〜783(1992);Lonberg他、Nature、368:856〜859(1994);Morrison、Nature、368:812〜13(1994);Fishwild他、Nature Biotechnology、14:845〜51(1996);Neuberger、Nature Biotechnology、14:826(1996);LonbergおよびHuszar、Intern.Rev.Immunol.、13:65〜93(1995)に記載されている。
【0092】
カンナビノイド受容体をダウンレギュレーションすることはまた、カンナビノイド受容体を切断する酵素によって行うことができる。
【0093】
カンナビノイド受容体をダウンレギュレーションすることができる別の薬剤は、小さい干渉性RNA(siRNA)分子である。RNA干渉は二段階プロセスである。最初の段階は開始段階と名付けられており、インプットdsRNAが、おそらくは、(直接的に導入されたか、または導入遺伝子もしくはウイルスを介して導入された)dsRNAをATPに依存する様式でプロセシング(切断)するダイサー(これはRNaseIIIファミリーのdsRNA特異的リボヌクレアーゼの1つである)の作用によって、21〜23ヌクレオチド(nt)の小さい干渉性RNA(siRNA)に消化される。連続した切断事象により、RNAは、それぞれが2ヌクレオチドの3’突出を有する19bp〜21bpの二重鎖(siRNA)に分解される[HutvagnerおよびZamore、Curr.Opin.Genetics and Development、12:225〜232(2002);Bernstein、Nature、409:363〜366(2001)]。
【0094】
エフェクター段階において、siRNA二重鎖はヌクレアーゼ複合体に結合して、RNA誘導によるサイレンシング複合体(RISC)を形成する。siRNA二重鎖のATP依存的な巻き戻しが、RISCを活性化させるためには必要である。活性なRISCは、その後、塩基対形成相互作用によって相同的な転写物を標的化し、mRNAをsiRNAの3’末端から12ヌクレオチドのフラグメントに切断する[HutvagnerおよびZamore、Curr.Opin.Genetics and Development、12:225〜232(2002);Hammond他(2001)、Nat.Rev.Gen.、2:110〜119(2001);Sharp、Genes.Dev.、15:485〜90(2001)]。この切断機構は未だ解明されていないが、研究では、それぞれのRISCが、1個だけのsiRNAと、RNaseとを含有することが示されている[HutvagnerおよびZamore、Curr.Opin.Genetics and Development、12:225〜232(2002)]。
【0095】
RNAiの効力が顕著であるため、RNAi経路内での増幅段階が示唆されている。増幅は、インプットdsRNAをコピーし、これにより、より多くのsiRNAを生じさせることによって、または、形成されたsiRNAを複製することによって生じ得る。あるいは、またはさらに、増幅はRISCの多数回の回転事象によって行われ得る[Hammond他、Nat.Rev.Gen.、2:110〜119(2001);Sharp、Genes.Dev.、15:485〜90(2001);HutvagnerおよびZamore、Curr.Opin.Genetics and Development、12:225〜232(2002)]。RNAiに関するさらなる情報について、下記の総説を参照のこと:Tuschl、ChemBiochem.、2:239〜245(2001);Cullen、Nat.Immunol.、3:597〜599(2002);Brantl、Biochem.Biophys.Acta.、1575:15〜25(2002)]。
【0096】
本発明とともに使用される好適なRNAi分子の合成は下記のように行うことができる。最初に、カンナビノイド受容体のmRNA配列が、AAジヌクレオチド配列について、AUG開始コドンから下流に走査される。それぞれのAAおよびその3’隣接19ヌクレオチドの存在が、潜在的なsiRNA標的部位として記録される。好ましくは、siRNA標的部位はオープンリーディングフレームから選択される。これは、非翻訳領域(UTR)には、調節タンパク質結合部位がより多く存在するからである。UTR結合タンパク質および/または翻訳開始複合体はsiRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合を妨害することができる[Tuschl、ChemBiochem.、2:239〜245]。だが、5’UTRに向けられたsiRNAが細胞GAPDHのmRNAの約90%の減少を媒介し、タンパク質レベルを完全になくしたGAPDHについて明らかにされたように(www.ambion.com/techlib/tn/91/912.html)、非翻訳領域に向けられたsiRNAもまた効果的であり得ることが理解される。
【0097】
次に、潜在的な標的部位が、任意の配列アラインメントソフトウエア(例えば、NCBIサーバー(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)から入手可能なBLASTソフトウエアなど)を使用して適切なゲノムデータベース(例えば、ヒト、マウス、ラットなど)と比較される。他のコード配列に対して著しい相同性を示す推定される標的部位が選び出される。
【0098】
適格であると認められた標的配列が、siRNA合成のためのテンプレートとして選択される。好ましい配列は、低いG/C含有を含む配列である。これらは、55%を超えるG/C含有量を有する配列と比較した場合、遺伝子サイレンシングを媒介することにおいてより効果的であることが判明しているからである。数個の標的配列が、好ましくは、評価のために、標的遺伝子の長さに沿って選択される。選択されたsiRNAのより良い評価のためには、負のコントロールが好ましくは一緒に使用される。負のコントロールsiRNAは、好ましくは、siRNAと同じヌクレオチド組成を含むが、ゲノムに対する著しい相同性を有しない。従って、任意の他の遺伝子に対して何らかの著しい相同性を示さないならば、siRNAのスクランブルヌクレオチド配列が好ましくは使用される。
【0099】
カンナビノイド受容体をダウンレギュレーションすることができる別の薬剤は、カンナビノイド受容体のmRNA転写物またはDNA配列を特異的に切断することができるDNAザイム分子である。DNAザイムは、一本鎖標的配列および二本鎖標的配列の両方を切断することができる一本鎖ポリヌクレオチドである(Breaker,R.R.およびJoyce,G.、Chemistry and Biology、1995、2:655;Santoro,S.W.&Joyce,G.F.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1997、943:4262)。DNAザイムに対する一般的なモデル(“10−23”モデル)が提案されている。“10−23”DNAザイムは、7個〜9個のデオキシリボヌクレオチドからそれぞれがなる2つの基質認識ドメインが両側に隣接する15デオキシリボヌクレオチドの触媒作用ドメインを有する。このタイプのDNAザイムはその基質RNAをプリン:ピリミジン接合部において効果的に切断することができる(Santoro,S.W.&Joyce,G.F.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、199;DNAザイムの総説については、Khachigian,LM[Curr Opin Mol Ther、4:119〜21(2002)]を参照のこと)。
【0100】
一本鎖および二本鎖の標的切断部位を認識する操作された合成DNAザイムの構築および増幅の様々な例が、米国特許第6326174号(Joyce他)に開示される。ヒトウロキナーゼ受容体に向けられた類似する設計のDNAザイムが、最近、ウロキナーゼ受容体の発現を阻害することが観測され、結腸ガン細胞の転移をインビボで阻害することに成功している(Itoh他、20002、アブストラクト409、Ann Meeting Am Soc Gen Ther、www.asgt.org)。別の適用では、bcr−ablガン遺伝子に対して相補的なDNAザイムが白血病細胞における癌遺伝子の発現を阻害すること、そして、CMLおよびALLの場合での自家骨髄移植における再発率を低下させることに成功していた。
【0101】
カンナビノイド受容体のダウンレギュレーションはまた、カンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物と特異的にハイブリダイゼーションすることができるアンチセンスポリヌクレオチドを使用することによっても行うことができる。
【0102】
カンナビノイド受容体を効率的にダウンレギュレーションするために使用され得るアンチセンス分子の設計は、アンチセンス法にとって重要な2つの局面を考慮しながら行わなければならない。第1の局面は、オリゴヌクレオチドを適切な細胞の細胞質の中に送達することであり、一方、第2の局面は、その翻訳を阻害する方法で細胞内において、指定されたmRNAと特異的に結合するオリゴヌクレオチドの設計である。
【0103】
先行技術では、オリゴヌクレオチドを広範囲の様々な細胞タイプに効率的に送達するために使用され得る多数の送達方法が教示されている[例えば、Luft、J Mol Med、76:75〜6(1998);Kronenwett他、Blood、91:852〜62(1998);Rajur他、Bioconjug Chem、8:935〜40(1997);Lavigne他、Biochem Biophys Res Commun、237:566〜71(1997);Aoki他(1997)、Biochem Biophys Res Commun、231:540〜5(1997)を参照のこと]。特に注目されるのは、骨表面でのDNAの顕微注入を使用する骨膜形質転換のための、Erikksonによって記載される方法(米国特許第6525030号)である。
【0104】
さらに、標的mRNAおよびオリゴヌクレオチドの両方における構造的変化のエネルギー論を説明する熱力学的サイクルに基づいて、その標的mRNAに対して最も大きい予測された結合親和性を有するそのような配列を同定するためのアルゴリズムもまた利用することができる[例えば、Walton他、Biotechnol Bioeng、65:1〜9(1999)を参照のこと]。
【0105】
そのようなアルゴリズムは、アンチセンス法を細胞において実施するために使用することに成功している。例えば、Walton他によって開発されたアルゴリズムにより、科学者は、ウサギβ−グロビン(RBG)転写物およびマウス腫瘍壊死因子−α(TNFα)転写物に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計することに成功することができた。同じ研究グループは、より近年には、3つのモデル標的mRNA(ヒト乳酸デヒドロゲナーゼAおよびBならびにラットgp130)に対する合理的に選択されたオリゴヌクレオチドの細胞培養物におけるアンチセンス活性が、速度論的PCR技術によって評価されたとき、ホスホジエステルオリゴヌクレオチド化学およびホスホロチオアートオリゴヌクレオチド化学を用いた2つの細胞タイプにおける3つの異なる標的に対する試験を含めて、ほとんどすべての場合において効果的であることが判明したことを報告している。
【0106】
さらに、インビトロシステムを使用して特異的なオリゴヌクレオチドを設計し、その効率を予測するための方法もまたいくつか発表されていた(Matveeva他、Nature Biotechnology、16:1374〜1375(1998))。
【0107】
いくつかの臨床試験では、アンチセンスオリゴヌクレオチドの安全性、実現可能性および活性が明らかにされている。例えば、ガンを処置するために好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドが成功裏に使用され[Holmund他、Curr Opin Mol Ther、1:372〜85(1999)]、その一方で、c−myb遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドによる血液学的悪性腫瘍の処置、すなわち、p53およびBcl−2が臨床試験に入っており、患者によって許容されることが示されていた[Gerwitz、Curr Opin Mol Ther、1:297〜306(1999)]。
【0108】
より近年には、ヒトヘパラナーゼ遺伝子発現のアンチセンス媒介による抑制が、マウスモデルにおいてヒトガン細胞の胸膜転移を阻害することが報告されている[Uno他、Cancer Res、61:7855〜60(2001)]。
【0109】
従って、現在の一致した意見は、上記で記載されたように、アンチセンス技術の分野における最近の発達は、高精度なアンチセンス設計アルゴリズムの作製および広範囲の様々なオリゴヌクレオチド送達システムをもたらしており、このような最近の発達により、当業者は、過度な試行錯誤実験に頼る必要なく、知られている配列の発現をダウンレギュレーションするために好適なアンチセンス法を設計することができ、また実施することができるということである。
【0110】
カンナビノイド受容体をダウンレギュレーションすることができる別の薬剤は、カンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物を特異的に切断することができるリボザイム分子である。様々なリボザイムが、目的とするタンパク質をコードするmRNAを切断することによる遺伝子発現の配列特異的な阻害のためにますます使用されつつある[Welch他、Curr Opin Biotechnol.、9:486〜96(1998)]。任意の特異的な標的RNAを切断するためのリボザイムを設計することができることにより、リボザイムは基礎研究および治療的応用の両方で有益なツールになっている。治療領域において、様々なリボザイムが、感染性疾患におけるウイルスRNA、ガンにおける優勢なガン遺伝子、および遺伝病における特異的な体細胞変異を標的とするために利用されている[Welch他、Clin Diagn Virol.、10:163〜71(1998)]。非常に注目すべきことに、HIV患者に対するいくつかのリボザイム遺伝子治療プロトコルが既に第I相試験に入っている。より近年には、リボザイムが、トランスジェニック動物研究、遺伝子標的の妥当性確認、および経路解明のために使用されている。いくつかのリボザイムが臨床試験の様々な段階にある。ANGIOZYMEは、ヒト臨床試験で研究されることになった最初の化学合成されたリボザイムであった。ANGIOZYMEは、血管形成経路における重要な成分であるVEGF−r(血管内皮細胞増殖因子受容体)の形成を特異的に阻害する。Ribozyme Pharmaceuticals,Inc.は、他の企業と同様に、動物モデルにおいて抗血管形成治療の重要性を明らかにしている。HEPTAZYME(C型肝炎ウイルス(HCV)RNAを選択的に破壊するために設計されたリボザイム)は、細胞培養アッセイにおいてC型肝炎ウイルスRNAを減少させることにおいて効果的であることが見出された(Ribozyme Pharmaceuticals,Incorporated−WEBホームページ)。
【0111】
カンナビノイド受容体をダウンレギュレーションすることができる別の薬剤として、カンナビノイド受容体の結合性部分の非機能的アナログを挙げることができる。例には、(例えば、N末端部分を有しない)短縮化されたCB1配列またはCB2配列が含まれる。
【0112】
カンナビノイド受容体をダウンレギュレーションすることができるさらに別の薬剤は、カンナビノイド受容体の活性化またはカンナビノイド受容体におけるリガンド結合を妨げることができる分子である。このような分子は、カンナビノイドアンタゴニストまたはインバースアゴニストであり、例えば、SR141716A、SR144528、AM251、AM281、SR144528、LY320135、AM630、WIN56098、WIN54461、O−1184およびO−1238などであり得る(Howlett他、Pharmacol.Rev.、54:161〜202(2002)を参照のこと)。
【0113】
カンナビノイド受容体の活性はまた、カンナビノイド受容体の天然リガンド、例えば、アナンダミン、2AG、または骨細胞においてカンナビノイド受容体と結合することができる任意の他のエンドカンナビノイドなどを特異的に標的化することによってダウンレギュレーションすることができる。
【0114】
本明細書中上記で述べられているように、カンナビノイド受容体の発現または活性の調整は、1つまたは複数のカンナビノイド受容体のアップレギュレーション、あるいは、1つまたは複数のカンナビノイド受容体のダウンレギュレーション、あるいは、1つの受容体のアップレギュレーションおよび別の受容体のダウンレギュレーションであり得る。後者の事例は、先行技術分野では、カンナビノイド受容体の活性に関連づけられる適用のどれにおいても未だ記載されていないが、下記の実施例の節の実施例4の結果は、そのような事例が、別の未だ知られていないカンナビノイド受容体のアゴニストとしてもまた作用し得るCB1カンナビノイド受容体アンタゴニストSR−141761Aを用いて存在することを示唆している。
【0115】
カンナビノイド受容体の発現または活性の調整は、培養された骨細胞をアップレギュレーション薬剤またはダウンレギュレーション薬剤にさらすことによってエクスビボで行うことができ、あるいは、そのような薬剤を対象に投与することによってインビボで行うことができる。
【0116】
従って、本発明の別の局面によれば、必要性のある対象において骨成長または骨修復を誘導する方法が提供される。
【0117】
本明細書中で使用される用語「対象」は、ヒト、ならびに、他の動物種(例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、齧歯類など)を示す。
【0118】
本明細書中で使用される表現「処置または防止する」は、発症するか、もしくは発症することが予想される骨欠陥症状の発症を遅らせること、および/または、そのような症状の重篤度の軽減を示す。これらにはさらに、存在する骨欠陥症状または軟骨欠陥症状を改善すること、さらなる症状を防止すること、症状の根本的な代謝的原因を改善もしくは防止すること、骨再吸収を防止もしくは反転させること、および/または、骨成長を促すことが含まれる。従って、この表現は、有益な結果が、軟骨、骨または骨格の欠陥を有する脊椎動物対象に、あるいはそのような欠陥を発症する可能性を有する脊椎動物対象にもたらされていることを意味する。この表現はさらに、発症するか、もしくは発症することが予想される骨過剰成長症状の発症を遅らせること、および/または、そのような症状の重篤度の軽減を示す。
【0119】
本発明の方法は、2つの選択可能な方法を使用して行うことができる。第1の方法では、骨細胞が対象または同種ドナーまたは同系ドナーから単離され、これらの骨細胞の1つまたは複数のカンナビノイド受容体の発現または活性が、上記で記載されたように、ダウンレギュレーションまたは好ましくはアップレギュレーションのいずれかに、(または両方に)供される。発現または活性のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションのいずれかが行われると、改変されたカンナビノイド受容体活性を示す細胞が(好ましくは、局所投与によって)対象に投与される。
【0120】
第2の方法では、薬剤が、(本明細書中下記においてさらに記載される)いくつかの選択可能な投与様式のいずれかによって対象に直接投与される。
【0121】
上記に記載された方法は、骨に関係づけられる疾患または障害を処置するために利用することができる。例えば、カンナビノイド受容体の発現または活性をアップレギュレーションすることができる薬剤を、骨欠陥に関係づけられる任意の疾患または状態を処置または防止するために、例えば、閉鎖骨折、解放骨折および癒着不能骨折における骨欠陥および骨不全を防止するために;危険性のある若年者において骨量を高めるために;閉鎖骨折および解放骨折を減少させることにおいて最大骨量を高めることによる若年者における予防的処置のために;形成外科において骨治癒を促進させるために;セメント結合していない整形外科後インプラントおよび歯科インプラントの中への骨成長を刺激するために;閉経前の女性において最大骨量を上昇させるために;成長不全を処置するために;原発性または二次的な上皮小体機能亢進症を処置するために;ガンなどの溶骨性骨疾患を処置するために;歯周病および歯周欠陥の処置ならびに他の歯修復プロセスのために;乱れた骨生成のときの骨形成を増大させるために;そして、他の骨格障害、例えば、老人性骨粗鬆症、閉経後骨粗鬆症、グルココルチコイド誘導骨粗鬆症またはびまん性骨粗鬆症および関節炎、変形性関節症、または、一方では骨形成を刺激することから、他方では骨再吸収を阻害することから利益を受ける任意の状態などを処置するために使用することができる。本発明の薬剤はまた、骨の先天的または外傷誘導または手術による切除の修復において(例えば、ガン処置のために)、また、美容外科において有用であり得る。さらに、本発明の化合物は、軟骨の欠陥または障害を制限または処置するために使用することができ、従って、創傷治癒または組織修復において有用であり得る。
【0122】
カンナビノイド受容体をダウンレギュレーションすることができる薬剤、例えば、本明細書中上記に記載された薬剤などは、骨の過剰成長に関係づけられる任意の疾患または状態、例えば、特定の病期段階のパジェット病、骨芽細胞性骨疾患、転移性骨疾患(例えば、乳ガンおよび前立腺ガンなど)、芽細胞性転移性骨ガン、ホジキンリンパ腫、退行性硬化症および骨髄炎などを処置または防止するために使用することができる。
【0123】
本発明の薬剤は、それ自体が治療において、または薬学的組成物の一部(有効成分)として存在し得る。
【0124】
本明細書中で使用される「薬学的組成物」は、本明細書中に記載される1つまたは複数の有効成分と、他の化学的成分(例えば、生理学的に好適なキャリアおよび賦形剤など)との調製物を示す。薬学的組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0125】
本明細書中下記において、交換可能に使用され得る表現「生理学的に受容可能なキャリア」および表現「薬学的に受容可能なキャリア」は、生物に対する著しい刺激を引き起こさず、かつ、投与された化合物の生物学的な活性および性質を妨げないキャリアまたは希釈剤を示す。アジュバントがこれらの表現に含まれる。
【0126】
本明細書において、用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために薬学的組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の例には、限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0127】
1つまたは複数のカンナビノイド受容体アップレギュレーション薬剤を含む薬学的組成物はまた、骨形成を促進する化合物および/または骨再吸収を阻害する1つまたは複数の化合物、例えば、骨形態形成因子、骨形態形成タンパク質、副甲状腺ホルモン、ノギン、骨形成性成長ペプチド、抗再吸収剤、骨形成性因子、軟骨由来形態形成タンパク質、成長ホルモン、サイトカイン(例えば、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)、形質転換増殖因子など)、エストロゲン系化合物、ビスホスホナート系化合物、スタチン、カルシトニン、ジヒドロキシビタミンDを含むことができ、カルシウム調製物がこの目的のためには好ましい。
【0128】
あるいは、1つまたは複数のカンナビノイド受容体ダウンレギュレーション薬剤を含む薬学的組成物はまた、骨形成を阻害する化合物および/または骨再吸収を促進する1つまたは複数の化合物を含むことができる。
【0129】
さらに、アップレギュレーション薬剤またはダウンレギュレーション薬剤は、標的化分子を使用して、骨または他の特異的な活性部位に対して標的化することができる。
【0130】
薬物を配合し、投与するための様々な技術が、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版;これは参考として本明細書中に組み込まれる)に見出され得る。
【0131】
好適な投与経路には、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜(特に経鼻)送達、腸管送達または非経口送達(筋肉内注射、皮下注射および髄膜内注射、ならびにクモ膜下注射、直接的な心室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射または眼内注射を含む)が含まれ得る。
【0132】
あるいは、薬学的組成物は、全身的な様式ではなく、局所的な様式で、例えば、薬学的組成物を患者の骨組織領域の中に直接注射することによって投与することができる。
【0133】
本発明の薬学的組成物は、この分野で十分に知られている様々なプロセスによって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来のプロセスによって製造することができる。
【0134】
従って、本発明に従って使用される薬学的組成物は、薬学的に使用され得る調製物への有効成分の加工を容易にする、賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に受容可能なキャリアを使用して、従来の様式で配合することができる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0135】
注射の場合、薬学的組成物の有効成分は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合し得る緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液または生理学的な塩緩衝液など)において配合することができる。本発明の薬学的組成物のために好適である1つ投与経路が、米国特許第6525030号(Erikkson)に記載されるように、骨膜下注射である。経粘膜投与の場合、透過させられるバリアに対して適切な浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0136】
経口投与の場合、薬学的組成物は、活性な化合物を、この分野で広く知られている薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせることによって容易に配合することができる。そのようなキャリアは、薬学的組成物を、患者により経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤、懸濁物などとして配合することを可能にする。経口使用される薬理学的組成物は、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、そして錠剤または糖衣錠コアを得るために、所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤には、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に受容可能なポリマーがある。所望する場合には、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。本明細書中で使用される用語「経口投与」は、薬学的化合物を任意の口腔表面(舌、歯ぐき、口蓋または他の口内表面を含む)に投与することを包含する。経口投与のさらなる方法には、口腔表面の組織と適合し得るミスト、スプレー物または懸濁物で薬学的組成物を与えることが含まれる。
【0137】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料を、活性な化合物の量を明らかにするために、または活性な化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えることができる。
【0138】
経口使用され得る薬学的組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(ラクトースなど)、結合剤(デンプンなど)、滑剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤と混合された有効成分を含有し得る。軟カプセルでは、有効成分を好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。さらに、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべてが、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
【0139】
口内投与の場合、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0140】
鼻腔吸入による投与の場合、本発明に従って使用される有効成分は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位が、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定され得る。ディスペンサーにおいて使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジで、化合物および好適な粉末基剤(ラクトースまたはデンプンなど)の粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジを配合することができる。
【0141】
本明細書中に記載される薬学的組成物は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために配合することができる。注射用配合物は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプルまたは多回用量容器における単位投薬形態で提供され得る。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物または溶液剤またはエマルションにすることができ、そして、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの配合剤を含有することができる。
【0142】
非経口投与される薬学的組成物には、水溶性形態での活性な調製物の水溶液が含まれる。さらに、有効成分の懸濁物を適切な油性または水系の注射用懸濁物として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油(ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために有効成分の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有することができる。
【0143】
あるいは、有効成分は、使用前に好適なビヒクル(例えば、滅菌された、パイロジェンを含まない水溶液)を用いて構成される粉末形態にすることができる。
【0144】
本発明の薬学的組成物はまた、例えば、カカオバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤を使用して、坐薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合することができる。
【0145】
本発明に関連して使用される好適な薬学的組成物には、有効成分が、意図された目的を達成するために好適な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療効果的な量は、処置されている対象の障害の症状を防止、軽減もしくは改善するために効果的であるか、または、処置されている対象の生存を延ばすために効果的である、有効成分(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)の量を意味する。
【0146】
治療効果的な量の決定は、特に、本明細書中に提供されている詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0147】
本発明の方法において使用される任意の調製物について、治療効果的な量または用量はインビトロアッセイおよび細胞培養アッセイから最初に推定することができる。例えば、用量を、所望される濃度または力価を達成するために、動物モデルにおいて、例えば、ネズミNeuモデル[Muller他、Cell、54、105〜115(1988)]において定めることができる。本発明の方法とともに使用される好適な他のそのような例示的なモデルシステムには、分化途中の破骨細胞(本明細書中下記の実施例3を参照のこと)、および分化途中の培養された骨形成性細胞(本明細書中下記の実施例2を参照のこと)がある。そのような情報は、ヒトおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。
【0148】
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、標準的な薬学的手法によって、インビトロで、細胞培養または実験動物において明らかにすることができる。これらのインビトロアッセイおよび細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおいて使用される投薬量範囲を定める際に使用することができる。投薬量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師により選ぶことができる(例えば、Fingl他、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、第1章、1頁を参照のこと)。
【0149】
投薬量および投薬間隔は、例えば、芽細胞転移の場合には腫瘍の進行を遅らせるために十分である有効成分のレベル(最小有効濃度、MEC)に個々に調節することができる。MECは、それぞれの組成物について変化し、しかし、インビトロでのデータから推定することができる。MECを達成するために必要な投薬量は個々の特性および投与経路に依存する。様々な検出アッセイを、血漿中濃度を測定するために使用することができる。
【0150】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は単回であり得るか、または多数回の投与であり得る。この場合、処置の経過は、数日から、数週間まで、または疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
【0151】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている対象、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存する。
【0152】
本発明の組成物は、所望する場合には、有効成分を含有する1つ以上の単位投薬形態物を含有し得る、FDA承認キットなどのパックまたはディスペンサーデバイスで提供され得る。パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔を含むことがあり、例えば、ブリスターパックなどである。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が添付され得る。パックまたはディスペンサーデバイスにはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局により定められた形式で容器に付けられた通知が伴い得る。この場合、そのような通知は、組成物の形態またはヒトもしくは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物に対する米国食品医薬品局により承認されたラベル書きであり得るか、または承認された製品添付文書であり得る。適合し得る薬学的キャリアで配合された本発明の調製物を含む組成物はまた、上記においてさらに詳しく記載されているかのように、適応される状態を処置するために調製され、適切な容器に入れられ、かつ表示され得る。
【0153】
本明細書中上記で記載された方法の実施、ならびに/または、本明細書中上記に記載されるような薬学的組成物および製造物の製造を容易にするために、本発明はさらに、骨成長および骨再構築の新規な調節剤を同定する方法を提供する。
【0154】
薬物候補物を同定する方法では、骨細胞の1つのまたは複数のカンナビノイド受容体の発現または活性を調整することができる分子について多数の分子をスクリーニングすることが含まれる。スクリーニングは、培養された骨細胞前駆体(例えば、ネズミの骨髄由来骨形成細胞(ST2細胞株)または頭蓋冠由来骨芽細胞性細胞(MC3T3E1細胞株)など)を試験分子にさらし、その後、カンナビノイド受容体の発現に対する逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)分析を、標準的なRT−PCR法を使用して、例えば、下記の実施例の節の実施例2に記載される方法などを使用して行うことによってインビトロで行うことができる。選択された分子は、選択された試験分子を実験動物に投与し、その後、試験動物における骨成長に対するその作用を明らかにすることによって、骨成長調節活性についてインビボでさらに評価することができる。例えば、試験分子は1:1:18のエタノール:エムルホル(emulfor):生理的食塩水(v/v/v)ビヒクルに溶解され、下記の実施例の節の実施例4に記載されるなどのプロトコルを使用して、C3H(Harlan)マウスに腹腔内注射され得る。試験分子の効力が、処置マウスにおける骨成長速度および/または骨石灰化周を、類似する非処置マウスにおける骨成長パラメーターと比較することによって決定され得る。骨成長パラメーターの著しい刺激または阻害を誘導する分子が、骨成長調節剤としてさらに評価される候補になる。
【0155】
このように、本発明は、骨疾患を処置または防止する際に使用される新規な方法、組成物および製造物を提供する。本発明は、新しい骨成長を調節する天然の特異的な機構に基づいているので、骨欠陥ならびに骨過剰成長に関係づけられる広範囲の疾患を安全かつ効果的に処置または防止するために適用することができる。
【0156】
(実施例)
本発明のさらなる目的、利点、および新規の特徴は、制限を意図しない以下の実施例の実験によって当業者に自明である。さらに、上記の本発明および以下の特許請求の範囲に記載の各々の種々の実施形態および態様は、以下の実施例の実験により支持される。
【0157】
ここでは、上記説明と共に以下の実施例を参照して、非限定的様式で本発明を例示する。
【実施例1】
【0158】
骨細胞におけるCB1カンナビノイド受容体発現の影響:CB1の発現は骨成長および骨再構築を調整する
材料および方法
動物:C57BL/6Jマウス[Zimmer,A.他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96:5780〜5785(1999)]が野生型コントロール(WT)として使用され、CB1受容体ノックアウトマウス(CB1−/−)(Ledent他、Science、283:401〜404(1999)]または脂肪酸アミドヒドロラーゼノックアウトマウス(FAAH−/−)(Cravatt他、PNAS USA、2001、198:9371〜76(2001))と比較された。
【0159】
微小コンピューター断層撮影法:10週齢マウスから得られた大腿骨が、Alexander他[J.Bone Min.Res.、16:1665〜1673(2001)]により記載される手法を使用して、定性的および定量的な微小コンピューター断層撮影法(μCT)に供され、分析された。WTマウスはこの週齢でその最大小柱骨量に達するので、大腿骨が10週齢マウスからサンプリングされた。示された代表的なμCT画像が、メジアン骨体積密度値またはメジアン皮質厚さ値を有するマウスから得られ、従って、代表例であった。示されたデータは、8匹のマウスの繰り返しから得られた平均±標準誤差(SE)である。
【0160】
結果
オスのCB1ノックアウト(欠損)(CB1−/−)マウスおよび野生型(WT)マウスにおける二次的な海綿質骨の比較三次元μCT画像が図1Aおよび図1Bに示される。これらの画像は、CB1−/−マウスにおける小柱網目構造密度の実質的な低下および骨髄空間の実質的な増大を示している。
【0161】
オスCB1−/−マウスのμCT形態計測分析が、WTと比較されて、図2A〜図2Eにまとめられている。これらの図は、図1Aおよび図1Bに示された結果を裏付けている。すなわち、CB1−/−マウスでは、それらと週齢が一致する野生型(WT)コントロールと比較したとき、著しく大きくなった皮質厚さ[図2A;p=0.012(t検定)]、著しく低下した髄質空間体積[図2B;p=0.003(t検定)]、著しく低下した小柱骨体積密度[図2C;BV/TV=11.5±1.7%対18.8±2.1%(平均±SE)、p=0.018(t検定)]、著しく低下した小柱数[図2D;Tb.N.=1.9±0.2m−1対3.0±0.1m−1(平均±SE)、p=0.0003(t検定)]、および著しく低下した小柱結合性[図2E;下段右グラフ;Conn.D=21.6±3.6m−3対48.5±3.9m−3(平均±SE)、p=0.0002(t検定)]が明らかにされた。
【0162】
メスCB1−/−のμCT形態計測分析が、WTと比較されて、図3A〜図3Dに例示されている。これらの分析により、メスCB1−/−において観測された骨幹端変化が、オスCB1−/−で認められた骨幹端変化と類似していたこと、すなわち、低下した小柱骨体積(図3A)、低下した小柱結合性(図3B)、低下した小柱数(図3C)、および増大した小柱間隔(図3D)を有することが示される。
【0163】
エンドカンナビノイド分解が損なわれているオスの脂肪酸アミドヒドロラーゼノックアウト(欠損)マウス(FAAH−/−)のμCT形態計測分析が、WTと比較されて、図4A〜図4Dに例示される。これらの図は、FAAH−/−マウスが、著しく低下した皮質厚さ[図4A、上段左グラフ、p=0.049(t検定)]および著しく大きくなった髄質空間体積[図4B、左下段グラフ;p=0.049(t検定)]を生じさせたことを示している。FAAH酵素はエンドカンナビノイドを分解することが知られている[Cravatt他、PNAS USA、198:9371〜76(2001)]ので、これらの作用は、予想されていたように、CB1−/−マウスで観測されたこととは逆のことであった(上記の図4Bおよび図4Cを参照のこと)。
【0164】
これらの結果は、CB1ノックアウト(欠損)マウスが、野生型コントロールと比較されたとき、骨の耐荷力に対する重大な結末が考えられる、小柱の構造的一体性の実質的な破壊を有することを明瞭に示している。CB1−/−マウスの体重および神経学的徴候スコアはそのWT同腹子の体重および神経学的徴候スコアとは異なっていないので、CB1ノックアウト(欠損)マウスのこの骨減少表現型は、損なわれた食物摂取または身体活動に対して二次的でないと考えられる。
【0165】
従って、これらの結果は、CB1受容体の発現により、マウスにおける骨成長および骨再構築が調整されること、そして、CB1の発現または活性を調整することができるカンナビノイドはそれにより骨成長および骨再構築を調節することができることを明瞭に明らかにしている。
【実施例2】
【0166】
分化途中にある培養された骨形成性細胞におけるカンナビノイド受容体の発現
材料および方法
細胞培養:カンナビノイド受容体(Cnr)のCB1およびCB2、エンドカンナビノイド分解酵素の脂肪酸アミドヒドロラーゼ(FAAH)、骨芽細胞分化マーカーのアルカリホスファターゼ(ALP)、ならびに骨芽細胞分化マーカーの副甲状腺ホルモン受容体I(PHT−Rc1)の発現が、ネズミ骨髄由来骨形成細胞(ST2細胞株)および頭蓋冠由来骨芽細胞性細胞(MC3T3E1細胞株)において分析された。これらの細胞の骨芽細胞分化が、アスコルビン酸、デキサメタゾンおよびβ−グリセロリン酸を含有する「骨形成性培地」で細胞を成長させることによって誘導された[Frank他、J.Cell.Biochem.、85:737〜746(2002)]。
【0167】
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR):RNAが、インキュベーションの5日後、10日後、20日後および30日後に培養細胞から抽出され、RT−PCRによって分析された。CB1受容体の発現を分析するために使用されたプライマーならびにRT−PCRの方法論および条件は、本質的にはNoe他[Adv.Exp.Med.Biol.、437:223〜9(1998)]およびNoe他[Adv.Exp.Med.Biol.、493:215〜21(2001)]によって記載される通りであった。CB2受容体の発現を分析するために使用されたプライマーならびにRT−PCRの方法論および条件は、本質的にはLee他[Eur.J.Pharmacol.、423:235〜41(2001)]によって記載される通りであった。骨芽細胞マーカーの組織特異的なアルカリホスファターゼ受容体(ALP)の発現を分析するために使用されたプライマーならびにRT−PCRの方法論および条件は、本質的にはOhkubo他[Br J Pharmacol.、131:1667〜1672(2000)]によって記載される通りであった。副甲状腺ホルモン受容体I(PTH−Rc1;12)の発現を分析するために使用されたプライマーならびにRT−PCRの方法論および条件は、下記のように、本質的にはKato他[J.Bone Min.Res.、16:1622〜1633(2001)]によって記載される通りであった:CB1、センス:5’−TGGTGTATGATGTCTTTGGG−3’(配列番号1)、アンチセンス:5’−ATGCTGGCTGTGTTATTGGC−3’(配列番号2);CB2、センス:5’−AACGGTGGCTTGGAGTTCAAC−3’(配列番号3)、アンチセンス:5’−TAGGTAGCGGTCAACAGCG−GTTAG(配列番号4);FAAH、センス:5’−GCCTGAAAGCTCTACTGTGTGAGC−3’(配列番号5)、アンチセンス:5’−GAAGGTCCAGACTTGGTTGTGGCT−3’(配列番号6);ALP(アクセション番号J02980)、センス:5’−GACA−CAAGCATTCCCACTAT−3’(967±986)(配列番号7);アンチセンス:5’−ATCAG−CAGTAACCACAGTCA−3’(1316±1297)(配列番号8);副甲状腺ホルモン(PTH−Rc1)、センス:5’−CAAGAAGTGGATCATCCAGGT−3’(配列番号9);アンチセンス:5’−GCTGCTACTCCCACTTCGTGCTTT−3’(配列番号10)。
【0168】
結果
骨形成性培地を用いた培養での5日後、ST2間質前駆体細胞およびMC3T3頭蓋冠由来前骨芽細胞はともに、CB1カンナビノイド受容体またはCB2カンナビノイド受容体の最小限の発現または非発現を示した。この後には、CB2のmRNA発現の相当高い定常的なレベルへの時間的な増大が 日目まで続いた(図5)。他方で、CB1のmRNAの発現は、最も分化した細胞でさえも明らかではなかった(データは示されず)。CB2の発現パターンは、骨芽細胞分化と一致する、FAAH、ALPおよびPTH−Rc1の時間的発現パターンと類似していた(図5)。
【0169】
従って、示されるように分化途中の前駆体骨芽細胞におけるカンナビノイド受容体CB2およびFAAHの明白な発現により、発達中の骨芽細胞は骨生成の初期においてエンドカンナビノイドのシグナル伝達に対して感受性になっていること、そして、CB2受容体の発現およびエンドカンナビノイド受容体の活性のこのアップレギュレーションは骨芽細胞分化および骨形成の誘導にとって極めて重要であり得ることが示される。
【実施例3】
【0170】
分化途中の破骨細胞におけるカンナビノイド受容体CB2およびFAAHの発現
材料および方法
マウス大腿骨単球が、Zou他(FASEB J、2002、16:274〜82)により記載されるように、Ficollグラジエントで分離され、破骨細胞分化因子のM−CFSおよびRANKLを含有する培地での5日間の培養で成長させられた。培養が終了したとき、培養物を、上記で記載されたようにRT−PCRによってCB2およびFAAHの発現について分析し、また、分化した破骨細胞の直接的な観察のために破骨細胞マーカーの酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼに関して染色した。
【0171】
結果
図6A〜図6Cに例示されるように、CB2およびFAAHはともに、分化途中の破骨細胞およびその単球前駆体で発現している。単球/マクロファージ細胞(これらは破骨細胞前駆体である)におけるCB2発現はその細胞活性を阻害することが知られている(Parolaro他、Life Sci、1999、65:637〜44)ので、これらの結果から、破骨細胞におけるCB2発現は単球由来の破骨細胞の分化および細胞活性を同様に阻害し得ることが示唆される。従って、エンドカンナビノイドおよび他のカンナビノイド受容体リガンドは、骨芽細胞および破骨細胞の両方の細胞における受容体を活性化することができ、場合により、一方では、破骨細胞の骨再吸収活性を抑制することができ、また、他方では、骨芽細胞の骨成長活性および骨再構築活性を促進することができる。骨形成の刺激ならびに骨再吸収の阻害を効果的に行うことができるそのようなリガンドは、骨障害を処置するための理想的な治療剤を構成すると考えられる。
【実施例4】
【0172】
インビボでの骨形成活性に対するカンナビノイドの作用
材料および方法:
エンドカンナビノイドの2−アラキドノイルグリセロール(2AG)、およびCB1カンナビノイド受容体アンタゴニストのN−(ピペリジン−1−イル)−5−(4−クロロフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−メチル−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド塩酸塩[SR−141761A;Panikashvili他、Nature、413:527〜531(2001)]を1:1:18のエタノール:エムルホル:生理的食塩水(v/v/v)ビヒクルに溶解した。各薬剤の種々の投薬量が、毎日、11週齢のC3H(Harlan)マウスに腹腔内注射された。2AGが、9日間、1日あたり体重1kgについて0mg(ビヒクルコントロール)、0.5mg、5mgおよび20mgで投与され、SR−141761Aが、9日間、1日あたり体重1kgについて1mgおよび10mgで投与された。
【0173】
インビボでの骨形成活性を評価するために、マウスには、15mg/Kg体重のカルセインが、屠殺の4日前および1日前(最後の2AG注射と同じ日)に腹腔内に与えられた。大腿骨が屠殺後直ちに分離され、脱灰することなく、組織学的処理に供された。動的な骨の組織形態計測パラメーターが、Parfitt他[J.Bone Miner.Res.、2:595〜610(1987)]により記載される手法を使用して、染色されていない長軸方向の正中矢状切片での遠位側骨幹中端(二次的な海綿質骨)において分析された。得られたデータは、処置間の差の有意さを明らかにするために、Mann−Whitney U検定によって統計学的に分析された。
【0174】
結果
エンドカンナビノイド2AGがマウスに対して9日間にわたって5mg/Kg/日までで投与された場合、骨形成速度(BFR;、全体的な骨芽細胞活性を表すもの)の用量依存的な刺激がもたらされ、その後、プラトー状態になった(図7A)。5mg/Kg/日および20mg/Kg/日での2AGで処置されたマウスは、ビヒクルコントロールよりも実質的(44%まで)かつ有意(p=0.04)に大きいBFRを示した。2AG投与の骨形成作用もまた、そのビヒクル処置コントロールと比較された場合、2AG(5mg/Kg/日)で処置されたマウスから得られた骨の蛍光組織化学画像の比較から明らかである(図7C)。これは、処置されたマウスの骨組織における蛍光標識されたカルセインの可視的に増大した取り込みにより示される。同様に、2AGが5mg/Kg/日までで投与された場合、石灰化中の周囲部(MP;骨芽細胞数を表すもの)の用量依存的な増大がもたらされ、その後、プラトー状態になった(図7B)。5mg/Kg/日および20mg/Kg/日での2AGの処置もまた、コントロールよりも実質的かつ有意に大きいMPをもたらした(p=0.019)。従って、効果的な投薬量の2AGのマウスに対する投与により、骨付加活性および骨形成活性がインビボで実質的に刺激された。
【0175】
CB1カンナビノイド受容体アンタゴニストSR−141761Aがマウスに対して9日間にわたって10mg/Kg/日までで投与された場合にもまた、ビヒクルコントロールよりも大きい(しかし、統計学的には差がない)BFR(骨芽細胞活性)、および、ビヒクルコントロールよりも大きく、かつ統計学的に差のあるMP(骨芽細胞数)がもたらされた(データは示されず)。
【0176】
これらの結果は、カンナビノイドリガンドの2AGおよびSR−141761Aのマウスへの投与により、骨芽細胞数および骨形成速度が実質的に増大し、それにより、骨付加および構造的一体性が処置マウスにおいて効果的に増大したことを明瞭に明らかにしている。
【0177】
従って、総合的に見た場合、本明細書中上記に記載される結果は、カンナビノイド受容体の発現が骨成長および骨再構築に著しい影響を及ぼすことを明白に示している。さらに、カンナビノイド受容体の発現を調整することができる薬剤を投与することにより、骨形成がインビトロおよびインビボの両方で効果的に調節され得ることが明らかにされる。
【0178】
本発明のいくつかの特徴は、明確化のために、別個の実施形態に関連して記載されているが、これらはまた、1つの実施形態において組合せで提供されている場合があることが理解される。逆に、本発明の様々な特徴が、簡潔化のために、1つの実施形態に関連して記載されているが、これらはまた、別個に、または任意の好適な部分的組合せで提供されている場合がある。
【0179】
本発明を特定の実施形態と共に記載しているが、多数の変更形態、修正形態、および変形形態が当業者に明らかであることが明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および範囲に含まれるこのような全ての変更形態、修正形態、および変形形態が含まれることが意図される。全ての刊行物、特許、および特許出願は、その全体が、それぞれの刊行物、特許、および特許出願があたかも特別または個別に本明細書中で参考として援用されるように示されるような範囲に本明細書中で参考として援用される。さらに、本出願における任意の引例の引用または識別により、このような引例が先行技術として本発明で利用可能であることを承認すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】オスCB1−/−[CB1カンナビノイド受容体ノックアウト(欠損)マウス]および野生型コントロール(WT)の大腿骨の定性的な微小コンピューター断層撮影法(μCT)を例示する。図1Aおよび図1Bは、CB1−/−の遠位側の大腿骨骨端中節における小柱骨体積密度の顕著な減少を示す三次元μCT画像(図1A)、ならびに、CB1−/−マウスにおける小柱結合性が低下していること(図1B)を示す。
【図2】オスCB1−/−[CB1カンナビノイド受容体ノックアウト(欠損)マウス]および野生型コントロール(WT)の大腿骨の微小コンピューター断層撮影法(μCT)の比較形態計測分析を例示する。図2A(上段左)は、CB1−/−マウスにおける皮質厚さの増大が著しいこと(p=0.012)を示し、図2B(上段右)は、CB1−/−マウスにおける髄質空間体積の減少が著しいこと(p=0.003)を示し、図2C(下段左)は、CB1−/−マウスにおける小柱骨体積の減少が著しいこと(p=0.018)を示し、図2D(下段中央)は、CB1−/−マウスにおける小柱数減少の減少が著しいこと(p=0.0003)を示し、図2E(下段右)は、CB1−/−マウスにおける小柱結合性の低下が著しいこと(p=0.0002)を示す。誤差バーは±標準偏差を示す。
【図3】メス野生型コントロール(WT)との比較で、メスCB1受容体ノックアウト(欠損)マウス(CB1−/−)の大腿骨の微小コンピューター断層撮影(μCT)形態計測分析を例示する。誤差バーは±標準偏差を示し、星印は統計学的に有意であることを示す。図3A(上段左)は、CB1−/−マウスにおける小柱骨体積の低下が著しいことを示し、図3B(上段右)は、CB1−/−マウスにおける小柱結合性の減少が著しくないことを示し、図3C(下段左)は、CB1−/−マウスにおける小柱数の減少が著しいことを示し、一方、図3D(下段右)は、CB1−/−マウスにおける小柱間隔の増大が著しいことを示す。
【図4】オスFAAH−/−[脂肪酸アミドヒドロラーゼ(FAAH)ノックアウト(欠損)マウス]および野生型コントロール(WT)の大腿骨のμCT形態計測分析を例示する。誤差バーは±標準偏差を示す。図4A(上段左)は、FAAH−/−マウスにおける皮質厚さの減少が著しいこと(p=0.049)を示し、図4B(上段右)は、FAAH−/−マウスにおける小柱骨体積の減少が著しくないことを示し、一方、図4C(下段左)は、FAAH−/−マウスにおける髄質空間体積の増大が著しいことを示す。図4Dには、骨皮質厚さ(Ct.Th.)と髄質空間体積(MV/TV)との線形回帰分析が示され、これは有意な逆の相関を示している(r=−0.985、p=0.005)。
【図5】分化途中の骨芽細胞前駆体細胞における、CB2カンナビノイド受容体、脂肪酸アミドヒドロラーゼ(FAAH)、副甲状腺ホルモン受容体(PTHRc1)および組織非特異的アルカリホスファターゼ(ALP)のRT−PCR発現分析を例示する。
【図6】分化途中の破骨細胞におけるカンナビノイド受容体CB2および脂肪酸アミドヒドロラーゼ(FAAH)の発現を例示する。図6A(左パネル)は、M−CSFおよびRANKL(破骨細胞分化因子)を含有する破骨細胞分化培地で培養された大腿骨単球の顕微鏡写真である。図6B(右パネル)は、酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼに関して染色された分化途中の破骨細胞の顕微鏡写真である。分化した破骨細胞が赤色〜桃赤色で染色されている。図6C(下段)は、培養された単球および分化した破骨細胞の両方におけるCB2およびFAAHの陽性の発現を例示するRT−PCR分析である。
【図7】エンドカンナビノイドの2−アラキドノイルグリセロール(2AG)で処置されたマウスまたは非処置マウスの定性的分析および組織形態計測分析を例示する。図7A(上段左)には、骨形成速度に対する2AGの著しい正の用量応答作用が示される(p=0.04)。図7B(上段右)には、骨形成部位へのカルセイン染色の取り込みを明らかにする、2AG処置マウス(2AG)および非処置マウス(ビヒクル)の代表的な蛍光組織学的画像が示される。2AG処置マウス(右パネル)では、石灰化前線の密度がより大きくなっていることを示す、蛍光性カルセインの増大した染色密度には留意すること。2AG処置マウスの骨組織(右側の画像)は、非処置マウスの類似する骨組織(左側の画像)よりも実質的に高密度化しているようである。図7C(下段左)は、石灰化中の周囲部に対する2AGの類似した著しい正の用量応答作用を示している(p=0.019)。しかしながら、無機付加速度に対する2AGの作用は有意でないことが明らかであった(図7D、下段右)。
【配列表フリーテキスト】
【0181】
配列番号1〜10は一本鎖DNAオリゴヌクレオチドの配列である。
【配列表】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨成長および/または骨再構築を調節する方法であって、少なくとも1つのカンナビノイド受容体の発現または活性を調整し、それにより骨成長および/または骨再構築を調節することを含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体が骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記骨細胞前駆体が骨形成性細胞である請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記骨細胞前駆体が間質細胞である請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記骨細胞前駆体が骨再吸収細胞前駆体である請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記調整することがアップレギュレーションすることである請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記発現または活性を前記アップレギュレーションすることは、
(a)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の機能的部分を少なくとも発現させるために設計および構築された外因性ポリヌクレオチド配列、
(b)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードする内因性DNAまたはmRNAの発現を増大させる化合物、および
(c)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を活性化する分子、
からなる群から選択される薬剤によって行われる請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を活性化する前記分子がカンナビノイドである請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記カンナビノイドが2AGである請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記調整することがダウンレギュレーションすることである請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記発現または活性を前記ダウンレギュレーションすることは、
(a)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体と結合する分子、
(b)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を切断する酵素、
(c)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体のmRNA転写物の分解を誘導することができるsiRNA分子、
(d)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体のmRNA転写物またはDNAを特異的に切断するDNAザイム、
(e)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物と特異的にハイブリダイゼーションすることができるアンチセンスポリヌクレオチド、
(f)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物を特異的に切断するリボザイム、
(g)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の結合部分を少なくとも有する非機能的アナログ、および
(h)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の活性化またはリガンド結合を妨げる分子、
からなる群から選択される薬剤によって行われる請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記発現または活性を前記調整することが、前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の第1のカンナビノイド受容体をアップレギュレーションし、かつ、前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の第2のカンナビノイド受容体をダウンレギュレーションすることによって行われる請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体は、CB1受容体、CB1様受容体、CB2受容体、CB2様受容体および非CB1非CB2受容体からなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項14】
必要性のある対象において骨疾患を処置または防止する方法であって、対象の少なくとも1つのカンナビノイド受容体の発現または活性を調整し、それにより前記対象において骨疾患を処置または防止することを含む方法。
【請求項15】
対象が脊椎動物である請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記脊椎動物がヒトである請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体が骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体である請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記骨細胞前駆体が骨形成性細胞である請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記骨細胞前駆体が間質細胞である請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記骨細胞前駆体が骨再吸収細胞前駆体である請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記調整することがアップレギュレーションすることである請求項17記載の方法。
【請求項22】
前記発現または活性を前記アップレギュレーションすることは、
(a)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体の機能的部分を少なくとも発現させるために設計および構築された外因性ポリヌクレオチド配列、
(b)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体をコードする内因性DNAまたはmRNAの発現を増大させる化合物、および
(c)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体を活性化する分子、
からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を対象に投与することによって行われる請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体を活性化する前記分子がカンナビノイドである請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記カンナビノイドが2AGである請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記調整することがダウンレギュレーションすることである請求項17記載の方法。
【請求項26】
前記発現または活性を前記ダウンレギュレーションすることは、
(a)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体と結合する分子、
(b)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体を切断する酵素、
(c)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体のmRNA転写物の分解を誘導することができるsiRNA分子、
(d)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体のmRNA転写物またはDNAを特異的に切断するDNAザイム、
(e)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物と特異的にハイブリダイゼーションすることができるアンチセンスポリヌクレオチド、
(f)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物を特異的に切断するリボザイム、
(g)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体の結合部分を少なくとも有する非機能的アナログ、および
(h)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体の活性化またはリガンド結合を妨げる分子、
からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を対象に投与することによって行われる請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体の活性化またはリガンド結合を妨げる前記分子がSR−141761Aである請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記発現を前記調整することが、前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体の第1のカンナビノイド受容体をアップレギュレーションし、かつ、前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体の第2のカンナビノイド受容体をダウンレギュレーションすることによって行われる請求項17記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体は、CB1受容体、CB1様受容体、CB2受容体、CB2様受容体および非CB1非CB2受容体からなる群から選択される請求項14記載の方法。
【請求項30】
対象が、骨粗鬆症、骨折または骨不全症、原発性または二次的な上皮小体機能亢進症、変形性関節炎、歯周病または歯周欠陥、溶骨性骨疾患、形成手術後、整形外科的埋め込み後、および歯科埋め込み後からなる群から選択される状態または疾患に罹患している請求項14記載の方法。
【請求項31】
骨形成を促進し、かつ/または骨再吸収を阻害することができる少なくとも1つの化合物を対象に投与することをさらに含む請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つの化合物は、骨形態形成タンパク質、抗再吸収剤、骨形成性因子、軟骨由来形態形成タンパク質、副甲状腺ホルモン、IGF1、FGF、ノギン、骨形成性成長ペプチド、成長ホルモン、エストロゲン系薬剤、ビスホスホナート系薬剤、スタチンおよび分化因子からなる群から選択される請求項31記載の方法。
【請求項33】
対象が、パジェット病、骨芽細胞性骨疾患、芽細胞性転移性骨ガン、転移性骨疾患、ホジキンリンパ腫、退行性硬化症および骨髄炎からなる群から選択される状態または疾患に罹患している請求項14記載の方法。
【請求項34】
骨形成を阻害し、かつ/または骨再吸収を促進することができる少なくとも1つの化合物を前記対象に投与することをさらに含む請求項33記載の方法。
【請求項35】
必要性のある対象において骨成長および/または骨修復を誘導する方法であって、
(a)骨細胞を単離すること、
(b)前記骨細胞の少なくとも1つのカンナビノイド受容体の発現または活性を調整すること、および
(c)工程(b)から得られた前記骨細胞を対象に投与し、それにより前記対象において骨成長および/または骨修復を誘導すること、
を含む方法。
【請求項36】
前記骨細胞が骨細胞前駆体である請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記骨細胞前駆体が骨形成性細胞である請求項35記載の方法。
【請求項38】
前記骨細胞前駆体が間質細胞である請求項35記載の方法。
【請求項39】
前記骨細胞前駆体が骨再吸収細胞前駆体である請求項35記載の方法。
【請求項40】
前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体は、CB1受容体、CB1様受容体、CB2受容体、CB2様受容体および非CB1非CB2受容体からなる群から選択される請求項35記載の方法。
【請求項41】
前記調整することがアップレギュレーションすることである請求項35記載の方法。
【請求項42】
前記発現または活性を前記アップレギュレーションすることは、
(a)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の機能的部分を少なくとも発現させるために設計および構築された外因性ポリヌクレオチド配列、
(b)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードする内因性DNAまたはmRNAの発現を増大させる化合物、および
(c)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を活性化する分子、
からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤に前記骨細胞をさらすことによって行われる請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を活性化する前記分子がカンナビノイドである請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記カンナビノイドが2AGである請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記調整することがダウンレギュレーションすることである請求項35記載の方法。
【請求項46】
前記発現または活性を前記ダウンレギュレーションすることは、
(a)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体と結合する分子、
(b)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を切断する酵素、
(c)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体のmRNA転写物の分解を誘導することができるsiRNA分子、
(d)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体のmRNA転写物またはDNAを特異的に切断するDNAザイム、
(e)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物と特異的にハイブリダイゼーションすることができるアンチセンスポリヌクレオチド、
(f)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物を特異的に切断するリボザイム、
(g)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の結合部分を少なくとも有する非機能的アナログ、および
(h)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の活性化またはリガンド結合を妨げる分子、
からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤に前記骨細胞をさらすことによって行われる請求項45記載の方法。
【請求項47】
骨形成を促進し、かつ/または骨再吸収を阻害することができる少なくとも1つの化合物を前記対象に投与する工程をさらに含む請求項35記載の方法。
【請求項48】
前記少なくとも1つの化合物は、骨形態形成タンパク質、抗再吸収剤、骨形成性因子、軟骨由来形態形成タンパク質、副甲状腺ホルモン、IGF1、FGF、ノギン、骨形成性成長ペプチド、成長ホルモン、エストロゲン系薬剤、ビスホスホナート系薬剤、スタチンおよび分化因子からなる群から選択される請求項47記載の方法。
【請求項49】
骨形成を阻害し、かつ/または骨再吸収を促進することができる少なくとも1つの化合物を前記対象に投与する工程をさらに含む請求項35記載の方法。
【請求項50】
骨成長および/または骨再構築を調節するための薬学的組成物であって、骨細胞の少なくとも1つのカンナビノイド受容体の発現または活性を調整することができる薬剤と、骨成長および/または骨再構築を調節することができる化合物と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的組成物。
【請求項51】
前記カンナビノイド受容体は、CB1受容体、CB1様受容体、CB2受容体、CB2様受容体および非CB1非CB2受容体からなる群から選択される請求項50記載の薬学的組成物。
【請求項52】
前記薬剤は、
(a)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の機能的部分を少なくとも発現させるために設計および構築された外因性ポリヌクレオチド配列、
(b)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードする内因性DNAまたはmRNAの発現を増大させる化合物、および
(c)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を活性化する分子、
からなる群から選択される請求項50記載の薬学的組成物。
【請求項53】
前記薬剤がカンナビノイドである請求項52記載の薬学的組成物。
【請求項54】
前記カンナビノイドが2AGである請求項52記載の薬学的組成物。
【請求項55】
前記薬剤は、
(a)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体と結合する分子、
(b)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を切断する酵素、
(c)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体のmRNA転写物の分解を誘導することができるsiRNA分子、
(d)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体のmRNA転写物またはDNAを特異的に切断するDNAザイム、
(e)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物と特異的にハイブリダイゼーションすることができるアンチセンスポリヌクレオチド、
(f)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物を特異的に切断するリボザイム、
(g)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の結合部分を少なくとも有する非機能的アナログ、および
(h)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の活性化またはリガンド結合を妨げる分子、
からなる群から選択される請求項50記載の薬学的組成物。
【請求項56】
前記化合物は、骨形態形成タンパク質、抗再吸収剤、骨形成性因子、軟骨由来形態形成タンパク質、副甲状腺ホルモン、IGF1、FGF、ノギン、骨形成性成長ペプチド、成長ホルモン、エストロゲン系薬剤、ビスホスホナート系薬剤、スタチンおよび分化因子からなる群から選択される請求項50記載の薬学的組成物。
【請求項57】
充填用物質と、骨疾患または骨欠陥の処置のために同定されている薬学的組成物の治療効果的な量とを含む製造物であって、前記薬学的組成物が、少なくとも1つのカンナビノイド受容体の活性または発現を調整することができる薬剤と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む製造物。
【請求項58】
前記カンナビノイド受容体は、CB1受容体、CB1様受容体、CB2受容体、CB2様受容体および非CB1非CB2受容体からなる群から選択される請求項57記載の製造物。
【請求項59】
前記薬剤は、
(a)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の機能的部分を少なくとも発現させるために設計および構築された外因性ポリヌクレオチド配列、
(b)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードする内因性DNAまたはmRNAの発現を増大させる化合物、および
(c)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を活性化する分子、
からなる群から選択される請求項57記載の製造物。
【請求項60】
前記薬剤がカンナビノイドである請求項57記載の製造物。
【請求項61】
前記カンナビノイドが2AGである請求項60記載の方法。
【請求項62】
前記薬剤は、
(a)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体と結合する分子、
(b)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を切断する酵素、
(c)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体のmRNA転写物の分解を誘導することができるsiRNA分子、
(d)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体のmRNA転写物またはDNAを特異的に切断するDNAザイム、
(e)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物と特異的にハイブリダイゼーションすることができるアンチセンスポリヌクレオチド、
(f)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物を特異的に切断するリボザイム、
(g)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の結合部分を少なくとも有する非機能的アナログ、および
(h)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の活性化またはリガンド結合を妨げる分子、
からなる群から選択される請求項57記載の製造物。
【請求項63】
骨形成を促進するか、または骨再吸収を阻害することができる少なくとも1つの化合物をさらに含む請求項57記載の製造物。
【請求項64】
前記少なくとも1つの化合物は、骨形態形成タンパク質、抗再吸収剤、骨形成性因子、軟骨由来形態形成タンパク質、副甲状腺ホルモン、IGF1、FGF、ノギン、骨形成性成長ペプチド、成長ホルモン、エストロゲン系薬剤、ビスホスホナート系薬剤、スタチンおよび分化因子からなる群から選択される請求項63記載の製造物。
【請求項65】
骨形成を阻害するか、または骨再吸収を促進することができる少なくとも1つの化合物をさらに含む請求項57記載の製造物。
【請求項66】
骨成長調節剤を同定する方法であって、多数の分子をスクリーニングし、それにより、少なくとも1つのカンナビノイド受容体の発現または活性を調整することができる、骨成長調節剤である分子を明らかにすることを含む方法。
【請求項67】
骨形成速度を変化させる前記分子の能力を測定すること、および/または骨石灰化周囲を変化させることをさらに含む請求項66記載の方法。
【請求項68】
前記スクリーニングが、前記骨細胞を前記多数の分子にさらし、前記骨細胞における前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の前記発現を測定することによって行われる請求項66記載の方法。
【請求項69】
前記カンナビノイド受容体は、CB1受容体、CB1様受容体、CB2受容体、CB2様受容体および非CB1非CB2受容体からなる群から選択される請求項66記載の方法。
【請求項70】
前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体が骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体である請求項66記載の方法。
【請求項71】
前記骨細胞前駆体が骨形成性細胞である請求項70記載の方法。
【請求項72】
前記骨細胞前駆体が間質細胞である請求項70記載の方法。
【請求項73】
前記骨細胞前駆体が骨再吸収細胞前駆体である請求項70記載の方法。
【請求項74】
前記カンナビノイド受容体の前記発現がRT−PCRによって測定される請求項66記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨成長および/または骨再構築を調節する方法であって、少なくとも1つのカンナビノイド受容体の発現または活性を調整し、それにより骨成長および/または骨再構築を調節することを含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体が骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記骨細胞前駆体が骨形成性細胞である請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記骨細胞前駆体が間質細胞である請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記骨細胞前駆体が骨再吸収細胞前駆体である請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記調整することがアップレギュレーションすることである請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記発現または活性を前記アップレギュレーションすることは、
(a)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の機能的部分を少なくとも発現させるために設計および構築された外因性ポリヌクレオチド配列、
(b)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードする内因性DNAまたはmRNAの発現を増大させる化合物、および
(c)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を活性化する分子、
からなる群から選択される薬剤によって行われる請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を活性化する前記分子がカンナビノイドである請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記カンナビノイドは、Δ−THC、Δ−THC、Δ−THC−ジメチルヘプチル、HU−210、5’−F−Δ−THC、11−OH−カンナビノール、Δ−THC−11−オイック−ジメチルヘプチル酸、JWH−051、11−ヒドロキシ−THC類、デスアセチル−L−ナントラドール、11−OH−カンナビノール−ジメチルヘプチル、カンナビノール−ジメチルヘプチル−11−酸、HU−308、HU243、L−759633、L−759656、L−768242、JWH−133、JWH−139、JWH−051、JWH−015、CP55940、CP47497、CP55244、R−(+)−WIN55212、ACEA、ACPA、O−1812、アナンダミド、2AG、2−アラキドノイルグリセリルエーテル、およびメタナンダミドからなる群から選択される請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記カンナビノイドがHU−308である請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記カンナビノイドが2AGである請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記調整することがダウンレギュレーションすることである請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記発現または活性を前記ダウンレギュレーションすることは、
(a)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体と結合する分子、
(b)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を切断する酵素、
(c)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体のmRNA転写物の分解を誘導することができるsiRNA分子、
(d)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体のmRNA転写物またはDNAを特異的に切断するDNAザイム、
(e)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物と特異的にハイブリダイゼーションすることができるアンチセンスポリヌクレオチド、
(f)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物を特異的に切断するリボザイム、
(g)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の結合部分を少なくとも有する非機能的アナログ、および
(h)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の活性化またはリガンド結合を妨げる分子、
からなる群から選択される薬剤によって行われる請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記発現または活性を前記調整することが、前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の第1のカンナビノイド受容体をアップレギュレーションし、かつ、前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の第2のカンナビノイド受容体をダウンレギュレーションすることによって行われる請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体は、CB1受容体、CB1様受容体、CB2受容体、CB2様受容体および非CB1非CB2受容体からなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項16】
必要性のある対象において骨疾患を処置または防止する方法であって、対象の少なくとも1つのカンナビノイド受容体の発現または活性を調整し、それにより前記対象において骨疾患を処置または防止することを含む方法。
【請求項17】
対象が脊椎動物である請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記脊椎動物がヒトである請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体が骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体である請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記骨細胞前駆体が骨形成性細胞である請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記骨細胞前駆体が間質細胞である請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記骨細胞前駆体が骨再吸収細胞前駆体である請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記調整することがアップレギュレーションすることである請求項19記載の方法。
【請求項24】
前記発現または活性を前記アップレギュレーションすることは、
(a)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体の機能的部分を少なくとも発現させるために設計および構築された外因性ポリヌクレオチド配列、
(b)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体をコードする内因性DNAまたはmRNAの発現を増大させる化合物、および
(c)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体を活性化する分子、
からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を対象に投与することによって行われる請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体を活性化する前記分子がカンナビノイドである請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記カンナビノイドが2AGである請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記カンナビノイドがHU−308である請求項24記載の方法。
【請求項28】
前記調整することがダウンレギュレーションすることである請求項19記載の方法。
【請求項29】
前記発現または活性を前記ダウンレギュレーションすることは、
(a)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体と結合する分子、
(b)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体を切断する酵素、
(c)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体のmRNA転写物の分解を誘導することができるsiRNA分子、
(d)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体のmRNA転写物またはDNAを特異的に切断するDNAザイム、
(e)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物と特異的にハイブリダイゼーションすることができるアンチセンスポリヌクレオチド、
(f)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物を特異的に切断するリボザイム、
(g)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体の結合部分を少なくとも有する非機能的アナログ、および
(h)前記対象の前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体の活性化またはリガンド結合を妨げる分子、
からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤を対象に投与することによって行われる請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体の活性化またはリガンド結合を妨げる前記分子がSR−141761Aである請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記発現を前記調整することが、前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体の第1のカンナビノイド受容体をアップレギュレーションし、かつ、前記骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体の第2のカンナビノイド受容体をダウンレギュレーションすることによって行われる請求項19記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体は、CB1受容体、CB1様受容体、CB2受容体、CB2様受容体および非CB1非CB2受容体からなる群から選択される請求項16記載の方法。
【請求項33】
対象が、骨粗鬆症、骨折または骨不全症、原発性または二次的な上皮小体機能亢進症、変形性関節炎、歯周病または歯周欠陥、溶骨性骨疾患、形成手術後、整形外科的埋め込み後、および歯科埋め込み後からなる群から選択される状態または疾患に罹患している請求項16記載の方法。
【請求項34】
骨形成を促進し、かつ/または骨再吸収を阻害することができる少なくとも1つの化合物を対象に投与することをさらに含む請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つの化合物は、骨形態形成タンパク質、抗再吸収剤、骨形成性因子、軟骨由来形態形成タンパク質、副甲状腺ホルモン、IGF1、FGF、ノギン、骨形成性成長ペプチド、成長ホルモン、エストロゲン系薬剤、ビスホスホナート系薬剤、スタチンおよび分化因子からなる群から選択される請求項34記載の方法。
【請求項36】
対象が、パジェット病、骨芽細胞性骨疾患、芽細胞性転移性骨ガン、転移性骨疾患、ホジキンリンパ腫、退行性硬化症および骨髄炎からなる群から選択される状態または疾患に罹患している請求項16記載の方法。
【請求項37】
骨形成を阻害し、かつ/または骨再吸収を促進することができる少なくとも1つの化合物を前記対象に投与することをさらに含む請求項36記載の方法。
【請求項38】
必要性のある対象において骨成長および/または骨修復を誘導する方法であって、
(a)骨細胞を単離すること、
(b)前記骨細胞の少なくとも1つのカンナビノイド受容体の発現または活性を調整すること、および
(c)工程(b)から得られた前記骨細胞を対象に投与し、それにより前記対象において骨成長および/または骨修復を誘導すること、
を含む方法。
【請求項39】
前記骨細胞が骨細胞前駆体である請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記骨細胞前駆体が骨形成性細胞である請求項38記載の方法。
【請求項41】
前記骨細胞前駆体が間質細胞である請求項38記載の方法。
【請求項42】
前記骨細胞前駆体が骨再吸収細胞前駆体である請求項38記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体は、CB1受容体、CB1様受容体、CB2受容体、CB2様受容体および非CB1非CB2受容体からなる群から選択される請求項38記載の方法。
【請求項44】
前記調整することがアップレギュレーションすることである請求項38記載の方法。
【請求項45】
前記発現または活性を前記アップレギュレーションすることは、
(a)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の機能的部分を少なくとも発現させるために設計および構築された外因性ポリヌクレオチド配列、
(b)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードする内因性DNAまたはmRNAの発現を増大させる化合物、および
(c)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を活性化する分子、
からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤に前記骨細胞をさらすことによって行われる請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を活性化する前記分子がカンナビノイドである請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記カンナビノイドが2AGである請求項43記載の方法。
【請求項48】
前記カンナビノイドがHU−308である請求項46記載の方法。
【請求項49】
前記調整することがダウンレギュレーションすることである請求項38記載の方法。
【請求項50】
前記発現または活性を前記ダウンレギュレーションすることは、
(a)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体と結合する分子、
(b)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を切断する酵素、
(c)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体のmRNA転写物の分解を誘導することができるsiRNA分子、
(d)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体のmRNA転写物またはDNAを特異的に切断するDNAザイム、
(e)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物と特異的にハイブリダイゼーションすることができるアンチセンスポリヌクレオチド、
(f)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物を特異的に切断するリボザイム、
(g)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の結合部分を少なくとも有する非機能的アナログ、および
(h)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の活性化またはリガンド結合を妨げる分子、
からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤に前記骨細胞をさらすことによって行われる請求項49記載の方法。
【請求項51】
骨形成を促進し、かつ/または骨再吸収を阻害することができる少なくとも1つの化合物を前記対象に投与する工程をさらに含む請求項38記載の方法。
【請求項52】
前記少なくとも1つの化合物は、骨形態形成タンパク質、抗再吸収剤、骨形成性因子、軟骨由来形態形成タンパク質、副甲状腺ホルモン、IGF1、FGF、ノギン、骨形成性成長ペプチド、成長ホルモン、エストロゲン系薬剤、ビスホスホナート系薬剤、スタチンおよび分化因子からなる群から選択される請求項51記載の方法。
【請求項53】
骨形成を阻害し、かつ/または骨再吸収を促進することができる少なくとも1つの化合物を前記対象に投与する工程をさらに含む請求項38記載の方法。
【請求項54】
骨成長および/または骨再構築を調節するための薬学的組成物であって、骨細胞の少なくとも1つのカンナビノイド受容体の発現または活性を調整することができる薬剤と、骨成長および/または骨再構築を調節することができる化合物と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的組成物。
【請求項55】
前記カンナビノイド受容体は、CB1受容体、CB1様受容体、CB2受容体、CB2様受容体および非CB1非CB2受容体からなる群から選択される請求項54記載の薬学的組成物。
【請求項56】
前記薬剤は、
(a)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の機能的部分を少なくとも発現させるために設計および構築された外因性ポリヌクレオチド配列、
(b)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードする内因性DNAまたはmRNAの発現を増大させる化合物、および
(c)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を活性化する分子、
からなる群から選択される請求項54記載の薬学的組成物。
【請求項57】
前記薬剤がカンナビノイドである請求項56記載の薬学的組成物。
【請求項58】
前記カンナビノイドが2AGである請求項56記載の薬学的組成物。
【請求項59】
前記カンナビノイドがHU−308である請求項56記載の薬学的組成物。
【請求項60】
前記薬剤は、
(a)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体と結合する分子、
(b)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を切断する酵素、
(c)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体のmRNA転写物の分解を誘導することができるsiRNA分子、
(d)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体のmRNA転写物またはDNAを特異的に切断するDNAザイム、
(e)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物と特異的にハイブリダイゼーションすることができるアンチセンスポリヌクレオチド、
(f)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物を特異的に切断するリボザイム、
(g)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の結合部分を少なくとも有する非機能的アナログ、および
(h)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の活性化またはリガンド結合を妨げる分子、
からなる群から選択される請求項54記載の薬学的組成物。
【請求項61】
前記化合物は、骨形態形成タンパク質、抗再吸収剤、骨形成性因子、軟骨由来形態形成タンパク質、副甲状腺ホルモン、IGF1、FGF、ノギン、骨形成性成長ペプチド、成長ホルモン、エストロゲン系薬剤、ビスホスホナート系薬剤、スタチンおよび分化因子からなる群から選択される請求項54記載の薬学的組成物。
【請求項62】
充填用物質と、骨疾患または骨欠陥の処置のために同定されている薬学的組成物の治療効果的な量とを含む製造物であって、前記薬学的組成物が、少なくとも1つのカンナビノイド受容体の活性または発現を調整することができる薬剤と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む製造物。
【請求項63】
前記カンナビノイド受容体は、CB1受容体、CB1様受容体、CB2受容体、CB2様受容体および非CB1非CB2受容体からなる群から選択される請求項62記載の製造物。
【請求項64】
前記薬剤は、
(a)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の機能的部分を少なくとも発現させるために設計および構築された外因性ポリヌクレオチド配列、
(b)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードする内因性DNAまたはmRNAの発現を増大させる化合物、および
(c)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を活性化する分子、
からなる群から選択される請求項62記載の製造物。
【請求項65】
前記薬剤がカンナビノイドである請求項62記載の製造物。
【請求項66】
前記カンナビノイドが2AGである請求項65記載の製造物。
【請求項67】
前記カンナビノイドがHU−308である請求項65記載の製造物。
【請求項68】
前記薬剤は、
(a)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体と結合する分子、
(b)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体を切断する酵素、
(c)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体のmRNA転写物の分解を誘導することができるsiRNA分子、
(d)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体のmRNA転写物またはDNAを特異的に切断するDNAザイム、
(e)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物と特異的にハイブリダイゼーションすることができるアンチセンスポリヌクレオチド、
(f)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体をコードするmRNA転写物を特異的に切断するリボザイム、
(g)前記骨細胞の前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の結合部分を少なくとも有する非機能的アナログ、および
(h)前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の活性化またはリガンド結合を妨げる分子、
からなる群から選択される請求項62記載の製造物。
【請求項69】
骨形成を促進するか、または骨再吸収を阻害することができる少なくとも1つの化合物をさらに含む請求項62記載の製造物。
【請求項70】
前記少なくとも1つの化合物は、骨形態形成タンパク質、抗再吸収剤、骨形成性因子、軟骨由来形態形成タンパク質、副甲状腺ホルモン、IGF1、FGF、ノギン、骨形成性成長ペプチド、成長ホルモン、エストロゲン系薬剤、ビスホスホナート系薬剤、スタチンおよび分化因子からなる群から選択される請求項69記載の製造物。
【請求項71】
骨形成を阻害するか、または骨再吸収を促進することができる少なくとも1つの化合物をさらに含む請求項62記載の製造物。
【請求項72】
骨成長調節剤を同定する方法であって、多数の分子をスクリーニングし、それにより、少なくとも1つのカンナビノイド受容体の発現または活性を調整することができる、骨成長調節剤である分子を明らかにすることを含む方法。
【請求項73】
骨形成速度を変化させる前記分子の能力を測定すること、および/または骨石灰化周囲を変化させることをさらに含む請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記スクリーニングが、前記骨細胞を前記多数の分子にさらし、前記骨細胞における前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体の前記発現を測定することによって行われる請求項72記載の方法。
【請求項75】
前記カンナビノイド受容体は、CB1受容体、CB1様受容体、CB2受容体、CB2様受容体および非CB1非CB2受容体からなる群から選択される請求項72記載の方法。
【請求項76】
前記少なくとも1つのカンナビノイド受容体が骨細胞または骨細胞前駆体のカンナビノイド受容体である請求項72記載の方法。
【請求項77】
前記骨細胞前駆体が骨形成性細胞である請求項76記載の方法。
【請求項78】
前記骨細胞前駆体が間質細胞である請求項76記載の方法。
【請求項79】
前記骨細胞前駆体が骨再吸収細胞前駆体である請求項76記載の方法。
【請求項80】
前記カンナビノイド受容体の前記発現がRT−PCRによって測定される請求項72記載の方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2006−517194(P2006−517194A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−572061(P2004−572061)
【出願日】平成15年6月8日(2003.6.8)
【国際出願番号】PCT/IL2003/000480
【国際公開番号】WO2004/103410
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(301027100)イッサム リサーチ ディベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティ オブ エルサレム (3)
【出願人】(504449077)
【Fターム(参考)】