説明

高強度コンクリートの施工方法

【課題】高強度コンクリートの打設後にかかる手間を低減し、かつ、表面を平滑に仕上げることが可能な高強度コンクリートの施工方法を提供する。
【解決手段】高強度コンクリートを打設する打設ステップと、打設した前記高強度コンクリートの表面に泡沫を配置する泡沫配置ステップと、前記泡沫の上からコテ押さえするコテ押さえステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度コンクリートの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートを施工する際には、打設したコンクリートの表面が打設直後から乾燥することを防止して表面を平滑に仕上げるために、打設したコンクリート上に散水したり、合成樹脂エマルジョンや合成ゴムラテックス等の蒸発抑止膜を形成して養生することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、近年、RCマンション等の高層化の要求が高まり、従来、中低層マンションでの構造躯体材料として使用されている普通コンクリートでは強度不足となり、構造躯体への高強度コンクリートの適用の必要性が高まっている。
【特許文献1】特開昭63−134752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、養生時におけるコンクリートの乾燥を防止するために散水する場合には、養生期間中長時間に亘り散水を継続する必要があり、また、蒸発防止膜を形成する場合には、養生後に蒸発防止膜を撤去しなければならず、いずれも手間がかかり煩雑であるという課題があった。
【0005】
また、構造躯体への高強度コンクリートの適用においては、工期短縮のため柱・梁等と同時に床も高強度コンクリートを打設することが望まれるが、高強度コンクリートは高粘性のため床コテ押さえが困難という問題から、柱・梁等は高強度コンクリートとし、床は普通コンクリートとして分離打設し、工期短縮が図れないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、高強度コンクリートの打設後にかかる手間を低減し、かつ、表面を平滑に仕上げることが可能な高強度コンクリートの施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明の高強度コンクリートの施工方法は、高強度コンクリートを打設する打設ステップと、打設した前記高強度コンクリートの表面に泡沫を配置する泡沫配置ステップと、前記泡沫の上からコテ押さえするコテ押さえステップと、を有することを特徴とする高強度コンクリートの施工方法である。
【0008】
このような高強度コンクリートの施工方法によれば、打設した高強度コンクリートの表面に泡沫を配置するので、高強度コンクリートの表面が空気層で覆われる。高強度コンクリートの表面を覆う空気層は打設された高強度コンクリートと外気との間にて断熱層として機能するので、高強度コンクリートの過度の乾燥を防止し、ひび割れ等の発生を抑えて表面を平滑に仕上げることが可能である。また、一般的な液体の養生剤と異なり、泡沫は蒸発しにくいが、長時間放置することにより蒸発させることも可能である。このため、泡沫を高強度コンクリートの表面に長時間維持させるとともに、使用後に撤去する必要はないので煩雑な手間が削減され作業時間を短縮することが可能である。更に、泡沫は液体と異なり高強度コンクリートに混ざらないので形成された高強度コンクリートが泡沫により脆弱になる畏れはない。また、高強度コンクリートの表面に配置された泡沫の上からコテ押さえするので、打設された高強度コンクリートの表面を均す際にも高強度コンクリートは泡沫に覆われている。このため、高強度コンクリートの乾燥を防ぎつつ表面を均すことが可能である。そして、コテ押さえにより潰された泡沫はコテを滑り易くするのでコテ押さえの作業性を向上させることが可能である。ここで、高強度コンクリートとは、設計基準強度37N/mm以上のコンクリートを示している。このような高強度コンクリートであれば、普通コンクリートよりも早く所定の強度が発現するので、打設直後から高強度コンクリートの表面上の歩行・泡沫配置・コテ押さえ等作業が可能である。
【0009】
かかる高強度コンクリートの施工方法であって、前記コテ押さえステップでは、コテで前記泡沫をすり潰すことが望ましい。
このような高強度コンクリートの施工方法によれば、泡沫はすり込まれることなく、すり潰されるので、高強度コンクリート内に混入されない。このため、形成された高強度コンクリートが潰された泡沫により脆弱になることなく、良好な高強度コンクリートを施工することが可能である。
【0010】
かかる高強度コンクリートの施工方法であって、前記打設ステップの後に、前記表面を均す均しステップを有することが望ましい。
このような高強度コンクリートの施工方法によれば、前記表面を均した後に、泡沫を配置するので、高強度コンクリートの表面をより平滑に仕上げることが可能である。
【0011】
かかる高強度コンクリートの施工方法であって、前記コテ押さえステップの後、前記表面に所望の平滑さが得られていない場合には、前記泡沫配置ステップと、前記コテ押さえステップとを繰り返すことが望ましい。
このような高強度コンクリートの施工方法によれば、表面に所望の平滑さが得られていない場合には、さらに泡沫配置ステップと、コテ押さえステップとが繰り返されるので、表面を所望の平滑さに仕上げることが可能である。
【0012】
かかる高強度コンクリートの施工方法であって、前記コテ押さえステップの後、前記表面に所望の平滑さが得られた場合には、前記泡沫配置ステップを実行した後に養生することが望ましい。
このような高強度コンクリートの施工方法によれば、表面に所望の平滑さが得られた後も、高強度コンクリートの表面に泡沫を配置した状態で養生するので、高強度コンクリートが適切な温度および湿度条件に保たれて、より良好な性質を発揮させることが可能である。
【0013】
かかる高強度コンクリートの施工方法であって、前記泡沫は白色であることが望ましい。
【0014】
このような高強度コンクリートの施工方法によれば、高強度コンクリートの表面に配置される泡沫は白色なので、照射される日光を反射して高強度コンクリートの表面温度の上昇を抑え、より表面の乾燥を防止することが可能である。
【0015】
かかる高強度コンクリートの施工方法であって、前記泡沫は、発泡モルタルの原料となる起泡剤を用いて生成することが望ましい。
このような高強度コンクリートの施工方法によれば、泡沫の素となる起泡剤は発泡モルタルの原料なので、高強度コンクリートと接触しても高強度コンクリートに対し悪影響を及ぼさない。このため、高強度コンクリートの良好な性質を発揮させることが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高強度コンクリートの打設後にかかる手間を低減し、かつ、表面を平滑に仕上げることが可能な高強度コンクリートの施工方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態としての高強度コンクリートの施工方法について図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る高強度コンクリートの施工方法を示す図である。図2は、打設ステップを示す図である。図3は、高強度コンクリートの表面に泡沫が配置された状態を示す図である。図4は、コテ押さえステップを示す図である。図5(a)は、高強度コンクリートの表面に泡沫が配置された状態を示す側面図、図5(b)は、コテ押さえされている泡沫を説明するための図である。
【0019】
本高強度コンクリートの施工方法は、柱、梁、床スラブなど高強度コンクリートを打設する際に実施可能であるが、以下の説明では、型枠内に高強度コンクリートが打設されて形成される高強度コンクリートパネルの施工方法を例に挙げて説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の高強度コンクリートの施工方法は、まず、コンクリートパネルを形成するための型枠20を組み立て、組み立てた型枠20内に鉄筋22を配筋する(S101)。
【0021】
次に、高強度コンクリート10を打設した際に高強度コンクリート10の表面10aに形成する泡沫12を生成する(S102)。ここで用いる泡沫12は白色であり、例えば発泡モルタルの原料である起泡剤を用い、約100倍に稀釈した後にハンドミキサー等にて空気と攪拌することにより発泡させて生成する。このとき、生成された泡沫12は、高強度コンクリート10の表面10aに配置した後に2〜3時間程度残存するように生成することが望ましい。
【0022】
起泡剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩等の炭化水素系界面活性剤を主成分とし、気泡安定剤をして各種セルロース誘導体やポリビニルアルコール、脂肪族アルコール、水溶性高分子等を併用したもの、また、ケラチン加水分解蛋白質等の蛋白質界面活性剤を主成分として、さらに鉄塩や水溶性高分子等を併用したものなどが挙げられる。ここで、炭化水素系界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤が挙げられる。好適に使用できるのは、アニオン界面活性剤であり、RCOONa等:カルボン酸塩、ROSONa等:硫酸エステル塩、RSONa等:スルホン酸塩等、公知のものであり、具体的には高級脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、N−アシルアルキルタウリン塩、スルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンラウルリルエーテルリン酸等が挙げられる。また、蛋白質系界面活性剤としては、例えばケラチン加水分解物やコラーゲン加水分解物等が挙げられる。
【0023】
次に、図2に示すように、配筋が施された型枠20内に高強度コンクリート10を打設する(S103:打設ステップ)。そして、表面10aを均して天端レベルを決定する(S104:均しステップ)。
【0024】
その後、天端レベルを決定した高強度コンクリート10の表面10aに、図3に示すように、生成しておいた泡沫12を配置する(S105:泡沫配置ステップ)。このとき、泡沫12は生成された容器からシャベル等で掬って高強度コンクリート10の表面10aに供給し、へら等を用いて高強度コンクリート10の表面10aに塗布したり、生成された容器を傾けて高強度コンクリート10の表面10aに流出させたりして配置する。また、施工面積が広い床スラブ等を施工する際には、噴出装置等を用いて泡沫12を噴出させて高強度コンクリート10の表面10aに散布してもよい。そして、泡沫12が図5(a)に示すように配置されることにより、高強度コンクリート10の表面10a上に泡沫12による空気層が形成される。
【0025】
高強度コンクリート10の表面10aに供給された泡沫12は所定の厚みになるように厚みが調整される。ここで、配置する泡沫12の厚みは、高強度コンクリート10の表面10aから10mm程度を目安とするが、施工時の環境、例えば気温や湿度、日照の有無や、起泡剤の稀釈率等により異なるので、高強度コンクリート10の表面10aに配置した後に2〜3時間程度気泡が維持される程度の厚みに配置することが望ましい。
【0026】
打設した高強度コンクリート10の表面10aに泡沫12を配置し2〜3時間放置した後に、図4に示すように、配置した泡沫12の上からコテ押さえする(S106:コテ押さえステップ)。このとき、図5(b)に示すように、配置されている泡沫12の上からコテにより泡沫12をすり潰しながら高強度コンクリート10の表層を押さえる。
【0027】
作業者はコテ押さえした後に、コテ押さえした高強度コンクリート10の表面10aの状態を確認する(S107)。このとき、高強度コンクリート10の表面10aに要求されている平滑さが得られていない場合には、高強度コンクリート10の表面10aに泡沫12を配置し(S105:泡沫配置ステップ)、2〜3時間放置した後に、配置した泡沫12の上からコテ押さえする(S106:コテ押さえステップ)。その後も、コテ押さえした高強度コンクリート10の表面10aの状態を確認し(S107)、要求されている平滑さが得られていない場合には、泡沫配置ステップ(S105)とコテ押さえステップ(S106)とを繰り返す。ここで、要求されている平滑さとは、例えば、外部に露出して人の目にさらされるような部位では、一般的に高い平滑さが要求され、内部に隠れるような部位では、高い平滑さは要求されない。このように、施工部位によって要求される平滑さは異なるが、施工部位に応じた平滑さが得られるまで泡沫配置ステップ(S105)とコテ押さえステップ(S106)とが繰り返される。
【0028】
一方、コテ押さえした高強度コンクリート10の表面10aの状態を確認した際に(S107)、要求されている平滑さが得られている場合には、高強度コンクリート10の表面10aに泡沫12を配置して養生する(S108)。
【0029】
本実施形態の高強度コンクリート10の施工方法によれば、高強度コンクリート10の表面10aに起泡剤から生成した泡沫12を配置することにより、高強度コンクリート10の表面10aに白色の空気層が形成される。このとき、泡沫12が白色であるため日光等が反射されて温度の上昇が抑えられる。また、形成された空気層により高強度コンクリート10表面の10aの水分の蒸発が抑えられるため著しい乾燥が抑えられ、高強度コンクリート10特有のこわばり(偽凝結)およびプラスチックひび割れを防止し、表面10aを平滑に仕上げることが可能である。
【0030】
また、泡沫12を使用するので、泡沫12に含まれる空気により液体の養生剤より厚い層が形成されるため、液体の養生剤を使用する場合と比較して、養生剤として用いる起泡剤の使用量を低減することが可能である。また、高強度コンクリート10の表面10aに配置する泡沫12の量を変えることにより、空気層の厚さを容易に変えることが可能であり、表面10aに放置した状態で泡沫12が残存する時間を容易に調整することが可能である。
【0031】
また、本実施形態では、泡沫12として発泡モルタルの原料の起泡剤を使用したので、泡沫12を高強度コンクリート10の表面10aに配置した際に、泡沫12が高強度コンクリート10に接触しても高強度コンクリート10の性質が害される畏れはない。
【0032】
本実施形態の高強度コンクリート10の施工方法ように、泡沫12をすり潰しながらコテ押さえすると、潰された泡沫12aによりコテが滑りやすくなり、コテ押さえの作業性が向上する。また、泡沫12をすり潰してコテ押さえするが、潰された泡沫12aは、液体のように高強度コンクリート10にすり込まれないので、コンクリートが脆弱になることを防止することが可能である。
【0033】
また、高強度コンクリート10の表面10aに要求されている平滑さが得られている場合には、高強度コンクリート10の表面10aに泡沫12を配置して養生するので、養生するために仮足場を設置する必要はない。また、高強度コンクリート10を打設した直後から表面10aの乾燥を防止することが可能である点においては、養生シートを使用する場合と同様であるが、高強度コンクリート10の表面10aに泡沫12を配置して養生する場合には、さらに、養生後に養生シート等を撤去する必要がないため、さらに手間がかからない施工方法によって、良好な養生効果を得ることが可能である。
【0034】
上記実施形態においては、高強度コンクリート10の表面10aに要求されている平滑さが得られた後に、高強度コンクリート10の表面10aに泡沫12を配置して養生することとしたが、要求されている平滑さが得られた後に、必ずしも高強度コンクリートの表面10aに泡沫12を配置する必要はない。
【0035】
また、上記実施形態においては、泡沫12を発泡モルタルの原料である起泡剤から生成したが、泡沫12には必ずしも起泡剤を用いる必要はなく、泡立つものであり、かつ、高強度コンクリート10に悪影響を及ぼさない材料であれば構わない。また、泡沫12は必ずしも白色でなくともよい。
【0036】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態に係る高強度コンクリートの施工方法を示す図である。
【図2】打設ステップを示す図である。
【図3】高強度コンクリートの表面に泡沫が配置された状態を示す図である。
【図4】コテ押さえステップを示す図である。
【図5】図5(a)は、高強度コンクリートの表面に泡沫が配置された状態を示す側面図、図5(b)は、コテ押さえされている泡沫を説明するための図である。
【符号の説明】
【0038】
10 高強度コンクリート、10a 表面、12 泡沫、12a 潰された泡沫、
20 型枠、22 鉄筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高強度コンクリートを打設する打設ステップと、
打設した前記高強度コンクリートの表面に泡沫を配置する泡沫配置ステップと、
前記泡沫の上からコテ押さえするコテ押さえステップと、
を有することを特徴とする高強度コンクリートの施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の高強度コンクリートの施工方法であって、
前記コテ押さえステップでは、コテで前記泡沫をすり潰すことを特徴とする高強度コンクリートの施工方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の高強度コンクリートの施工方法であって、
前記打設ステップの後に、前記表面を均す均しステップを有することを特徴とする高強度コンクリートの施工方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の高強度コンクリートの施工方法であって、
前記コテ押さえステップの後、前記表面に所望の平滑さが得られていない場合には、前記泡沫配置ステップと、前記コテ押さえステップとを繰り返すことを特徴とする高強度コンクリートの施工方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の高強度コンクリートの施工方法であって、
前記コテ押さえステップの後、前記表面に所望の平滑さが得られた場合には、前記泡沫配置ステップを実行した後に養生することを特徴とする高強度コンクリートの施工方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の高強度コンクリートの施工方法であって、
前記泡沫は白色であることを特徴とする高強度コンクリートの施工方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の高強度コンクリートの施工方法であって、
前記泡沫は、発泡モルタルの原料となる起泡剤を用いて生成することを特徴とする高強度コンクリートの施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−95343(P2008−95343A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276793(P2006−276793)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】