説明

高速信号伝送用回路基板の配線構造

【目的】 高速信号伝送用回路基板の分岐部での高速信号の反射を抑制することを目的とする。
【構成】 VIA13,24同志を基板の表層でパッド18により接続し、このパッド18に電気的に電子部品4を接続し、中層でそれぞれのVIA12,13をライン15に接続し、VIA24,14をライン25で接続することにより伝送経路を形成した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各電子部品間で高周波の高速信号伝送を行うための高速信号伝送用回路基板の配線構造に関する。
【0002】
【従来の技術】図3は、高速信号伝送用回路基板の配線構造の一例を示す概略断面図である。該配線構造1は、基板2の上にLSIチップ3,4,5を搭載した構造にしてある。前記基板2は、4層の誘電体層6,7,8,9を下から順に重ねた構造にしてある。また、誘電体層6と誘電体層7との間に、電源/グランド・プレーン8を挟み、誘電体層9と誘電体層10との間に、電源/グランド・プレーン11を挟んだサンドイッチ構造にしてある。
【0003】さらに、VIA12,13,14を誘電体層8,9を貫通するようにして形成し、VIA12,13を誘電体層7,8の間に挟んだライン15で接続し、VIA13,14を誘電体層7,8の間に挟んだライン16で接続してある。なお、前記電源/グランド・プレーン11は、ライン15,16のインピーダンス不整合をなくすためのものであり、前記ライン15,16は、高速信号用のラインである。
【0004】誘電体層9の表層には、各VIA12,13,14が突き出ており、VIA12に接続したパッド17を表層に設け、VIA13に接続したパッド18を表層に設け、VIA14に接続したパッド19を表層に設けてある。この各パッド17,18,19によってワイヤ20,21,22を介してLSIチップ3,4,5をそれぞれ電気的に接続する。
【0005】次に、以上のように配線した配線構造1における高速信号の伝送の仕組みを説明する。例えば、高速信号がライン15からVIA13に伝送した場合には、このVIA13からパッド18およびライン16の二方向に分岐して高速信号が伝送し、パッド18に伝送した高速信号はワイヤ21を介してLSIチップ4に伝送する。また、ライン16に伝送した高速信号は、他のLSIチップに伝送する伝送経路を通る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、一般に、一つの配線で複数の部品を接続するように分岐した配線では、配線の特性インピーダンスが異なるため、高速信号を伝送する場合には、分岐した部分で高速信号の一部が反射して高速信号の伝送特性を劣化させる。このため、従来の高速信号用回路基板の配線構造では、分岐後における接続が複数あるので配線が長くなり、特性インピーダンスが大きくなるため、分岐部での反射が大きく発生し、高速信号の伝送特性が劣化する問題がある。
【0007】そこで、分岐後における伝送経路を短くすることにより分岐部の反射を抑制することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで本発明は、VIA同志を表層でパッドにより接続し、このパッドに電気的に電子部品を接続し、中層でそれぞれのVIAをラインに接続して伝送経路を形成したことを特徴とする。
【0009】
【作用】このような構成によると、伝送経路から分岐する配線の長さが、パッドから分岐して電子部品を電気的に接続する部分のみとしてその長さをできるだけ短く、かつ、パッドから分岐して電子部品を電気的に接続する部分の接続単位数をできるだけ減らすことにより、分岐後の特性インピーダンスをできるだけ小さいものとして高速信号の反射を抑制することができることになる。
【0010】
【実施例】以下に図面を参照して本発明の一実施例を説明する。なお、従来の場合と同様の構成は同一符号を付して説明する。図1は、概略断面図である。高速信号用回路基板の配線構造23は、基板2の上にLSIチップ3,4,5を搭載した構造にしてある。
【0011】前記基板2は、4層の誘電体層6,7,8,9を下から順に重ねた構造にしてある。また、誘電体層6と誘電体層7との間に、電源/グランド・プレーン8を挟み、誘電体層9と誘電体層10との間に、電源/グランド・プレーン11を挟んだサンドイッチ構造にしてある。さらに、VIA12,13,24,14を誘電体層8,9に貫通して形成し、VIA12,13を誘電体層7,8の間に挟んだライン15で接続し、VIA23,14を誘電体層7,8の間に挟んだライン25で接続してある。
【0012】なお、前記電源/グランド・プレーン11は、ライン15,16のインピーダンス不整合をなくすためのものであり、前記ライン15,16は、高速信号用のラインである。誘電体層9の表層には、各VIA12,13,24,14が出ており、VIA12に接続したパッド17を表層に設け、VIA13およびVIA23を電気的に結び付けるように接続したパッド18を表層に設け、VIA14に接続したパッド19を表層に設けてある。この各パッド17,18,19によってワイヤ20,21,22を介してLSIチップ3,4,5をそれぞれ電気的に接続することで伝送経路を形成した。
【0013】次に、以上のように配線した配線構造1における高速信号の伝送の仕組みを説明する。例えば、高速信号がライン15を通ってVIA13に伝送した場合には、このVIA13からパッド18に高速信号が伝送し、ワイヤ21およびVIA24の二方向に分岐する。ワイヤ21に伝送した高速信号はLSIチップ4に伝送する。また、VIA24に伝送した高速信号はライン25に伝送する伝送経路を通る。
【0014】上記のように伝送する高速信号は、パッド18から二方向に分岐して伝送するため、LSIチップ4側をみると、ワイヤ21のみの特性インピーダンスだけであり、その結果生ずる反射がその分だけで済むようになる。図4は、本発明の実施例および従来例の特性インピーダンスの周波数をそれぞれ算出してシミュレーションした周波数特性図である。
【0015】このシミュレーションにおいて、実施例の構成と従来例の構成は、図1および図3を用いて説明したようにし、LSIチップの位置を実施例と従来例と同じにし、パッド長を統一した。また、基板の比誘電率を4.9、誘電体厚を105μm/層、ライン幅を100μm(特性インピーダンス50Ω)、パッド幅を200μm(特性インピーダンス50Ω)、VIA径を200μmとして構成した高速信号伝送用回路基板を実施例および従来例用に用意した。
【0016】この周波数特性図から、従来例に見られる大きな”うねり”(反射は、うねりとして表れる)が、本実施例では小さな”うねり”となっているのが分かり、本実施例では、従来例に比べて反射を抑制できるようになる。このため、本実施例では、従来例と比べて分岐による反射が小さくなり、高速信号の伝送特性の劣化を防ぐことができるようになる。
【0017】なお、LSIチップ3,4,5をパッド17,18,19にそれぞれ電気的に接続する場合には、図2に示すように、TAB26,27,28により接続してもよく。その接続方法はどのようなものでもよいが、特性インピーダンスの小さいものが好ましい。なお、上記実施例では、基板上を1本の配線での伝送経路の場合を説明したが、伝送経路が並列になっている場合、すなわち、分岐するパッドに幾つものVIAを接続した電気的に並列接続の構造であって、1方向に伝送するものであってもよい。
【0018】また、上記実施例では、基板が4層の場合を例に説明したが何層のものであってもよい。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように本発明の高速信号伝送用回路基板の配線構造は、VIA同志を表層でパッドにより接続し、このパッドに電気的に電子部品を接続し、中層でそれぞれのVIAをラインに接続して伝送経路を形成した。このため、伝送経路から分岐する配線の長さが、パッドから分岐して電子部品を電気的に接続する部分のみとしてその長さをできるだけ短く、かつ、パッドから分岐して電子部品を電気的に接続する部分の接続単位数をできるだけ減らすことにより、分岐後の特性インピーダンスをできるだけ小さいものとして高速信号の反射を抑制することができるようになるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高速信号伝送用回路基板の配線構造の一実施例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の一実施例のLSIチップの接続を説明する概略断面図である。
【図3】従来の高速信号伝送用回路基板の配線構造の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の実施例および従来例の特性インピーダンスの周波数をそれぞれ算出してシミュレーションした周波数特性図である。
【符号の説明】
18 パッド
23 高速信号伝送用回路基板の配線構造
24 VIA
25 ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の誘電体層を重ねてなる基板と、この基板の表層から中層まで貫通して設けたVIAと、このVIAを中層で電気的に接続するラインと、前記VIAを表層で電気的に接続するパッドと、このパッドに電気的に接続した電子部品とを配設して伝送経路を形成した高速信号伝送用回路基板の配線構造において、VIA同志を表層でパッドにより接続し、このパッドに電気的に電子部品を接続し、中層でそれぞれのVIAをラインに接続して伝送経路を形成したことを特徴とする高速信号伝送用回路基板の配線構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平8−32190
【公開日】平成8年(1996)2月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−162159
【出願日】平成6年(1994)7月14日
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)