説明

魚釣用リールの構成部材及びその成形方法

【課題】型抜き方向に対して略直交する方向に延びる延在部を有する形状を簡単で且つ型割数が少ない金型構造によって高精度に成形することができる安価な魚釣用リールの構成部材及びその成形方法の提供を目的としている。
【解決手段】本発明の一実施形態では、本体側部品であるフレーム19に対して相手側部品であるドラグノブ40を抜け止めするための抜止係止部19cを、フレーム19の基部19a側から挿通する金型(抜止係止部成形金型部M1a)によって成形するようにしている。すなわち、コアM1とキャビティM2とから成る基本金型部品のみを使用してフレーム19(型抜き方向Aに対して略直交する方向に突出部(延在部としての抜止係止部40)が延出する形状)を一体成形できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型によって成形される魚釣用リールの構成部材に関し、特に、成形品を金型から抜き取るための型抜き方向に対して略直交する方向に延在する延在部を有する魚釣用リールの構成部材及びその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、魚釣用リールを構成する各種部品(以下、リール構成部材と称する)の少なくとも一部は、金型内に成形材料を流し込むことにより所定の形状に成形される。このような場合、前記リール構成部材の形状が複雑であればあるほど、金型形状も複雑となり、金型分割数(型割数)も多くなる。すなわち、例えば、成形品を金型から抜き取るための型抜き方向に対して略直交する方向に突出部が延出するような形状を前記リール構成部材が有している場合には、通常、型抜き方向で相対的に離間される基本金型部品であるコアおよびキャビティ以外に、型抜き方向に対して直交する方向にスライドされる更なる金型部品(以下、スライド金型と称する)が前記突出部を成形するために必要になる。
【0003】
これについて更に具体的に説明すると、例えば魚釣用リールとしてのクローズドフェースリールには、図11の(a)に示されるように、ドラグノブの抜け止めを行なうための弾性変形可能な略傘型の抜止係止部100が設けられている場合がある(例えば、特許文献1参照)。この抜止係止部100は、他の形状部分である軸部102および基部104とともに1つのリール構成部材120を形成するとともに、軸部102からこれと略直交する方向に突出しており、一般的には軸部102および基部104とともに金型Mにより一体成形される。また、抜止係止部100は、軸方向に延びるスリ割りSをその中心部に有しており、このスリ割りSの存在により径方向に弾性変形して軸部102に対するドラグノブの装着を許容できるようになっている。なお、抜止係止部100によって抜け止めされるドラグノブは、それが回転操作されることにより、スプールに対して押圧力(摩擦抵抗力)を付与し、スプールの回転に対して制動力を与えるものである。
【0004】
このような抜止係止部100と軸部102と基部104とを金型Mにより一体成形してリール構成部材120を形成する際には、図11の(b)に示されるように、固定側のコアM1と可動側のキャビティM2とから成る基本金型部品以外に、一対のスライド金型(コマ)M3,M4が必要になる。具体的に、これらの金型M1〜M4を用いてリール構成部材120を成形する場合には、まず、コアM1上の所定の位置にスライド金型M3,M4を配置するとともに、スライド金型M3,M4の上にキャビティM2を配置することにより、これらの金型の内側にリール構成部材120の形状を成す空洞部Cを形成する。この場合、キャビティM2に対するスライド金型M3,M4の内側端部の位置関係を規定することにより、軸部102と抜止係止部100との間に段部124を形作る。そして、所定のゲートGを通じて空洞部C内に成形材料mを流し込むことにより、基部104と軸部102と抜止係止部100とが成形される。その後、成形材料が硬化した時点で、成形品を金型Mから抜き取るための型抜き方向A(軸部102の延在方向)でキャビティM2をコアM1から相対的に離間させるとともに、スライド金型M3,M4を型抜き方向Aと直交する方向Bにスライドさせ、コアM1側に設けられた押し出しピンPを用いてリール構成部材120の成形品をコアM1から押し出すことにより、金型Mからリール構成部材120を抜き取ることができる。
【特許文献1】米国特許第4,629,141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、型抜き方向に対して略直交する方向に突出部が延出するような形状をリール構成部材が有している場合には、これを金型で一体成形する際、基本金型部品であるコアおよびキャビティ以外に、スライド金型が必要となる。そのため、金型構造が複雑になるとともに、型割数も増えるため、製造コストが高くなるばかりでなく、所定の寸法および形状を高精度に得ることも難しくなる。
【0006】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、型抜き方向に対して略直交する方向に延びる延在部を有する形状を簡単で且つ型割数が少ない金型構造によって高精度に成形することができる安価な魚釣用リールの構成部材及びその成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、金型によって成形される魚釣用リールの構成部材であって、前記構成部材の成形品を金型から抜き取るための型抜き方向へ向けて延びる軸部と、この軸部の一端側に一体で設けられた基部と、前記軸部の他端側に設けられ且つ前記軸部に対して略直交する方向に延びる延在部とを有し、前記基部には、前記延在部を成形するための金型部品が前記型抜き方向で挿通される挿通部が形成されていることを特徴とする。なお、このような構成において、前記延在部は、前記軸部からこれと略直交する方向に突出する突出部であっても良い。また、前記延在部は、前記軸部に装着される装着部品を係止して前記軸部からの前記装着部品の抜けを防止する抜止係止部として形成されていても良い。
【0008】
また、他の態様においては、相手側部品を抜け止めするために本体側部品に形成される抜止係止部が、本体側部品の基部から挿通する金型によって成形される。更に具体的な態様では、相手側部品が装着される支持部を有する本体側部品で構成される魚釣用リールの構成部材において、前記支持部の先端側に形成される径方向外方に突出する抜止係止部が、前記支持部の基部側から先端側に向けて挿通する金型によって成形される。
【0009】
また、本発明は、魚釣用リールの構成部材を金型によって成形する成形方法も提供する。この成形方法において、前記構成部材は、当該構成部材の成形品を金型から抜き取るための型抜き方向へ向けて延びる軸部と、この軸部の一端側に一体で設けられた基部と、前記軸部の他端側に設けられ且つ前記軸部に対して略直交する方向に延びる延在部とを有している。具体的に、この成形方法は、第1の金型部品と第2の金型部品とを重ね合わせることにより、これらの間に前記構成部材の形状を成す空洞部を形成するとともに、前記延在部を成形するために前記第1または第2の金型部品に設けられた延在部成形金型部を前記空洞部内に突出させるように位置させる第1のステップと、所定のゲートを通じて前記空洞部内に成形材料を流し込むことにより、前記基部と前記軸部と前記延在部とを成形するとともに、前記延在部成形金型部が前記型抜き方向で挿通される挿通部を前記基部に形成する第2のステップと、成形材料が硬化した時点で、前記第1の金型部品と前記第2の金型部品とを前記型抜き方向で相対的に離間させることにより、前記挿通部を通じて前記延在部成形金型部を成形品から前記型抜き方向で引き抜いて、成形品を金型から抜き取る第3のステップとを含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の魚釣用リールの構成部材及びその成形方法によれば、型抜き方向に対して略直交する方向に延びる延在部を有する形状を、簡単で且つ型割数が少ない金型構造によって、高精度に且つ安価に成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0012】
図1〜図5は本発明の第1の実施形態を示している。図1は、本実施形態に係るリール構成部材を備える魚釣用リールとしてのスピンキャストリールの概略構成を断面で示している。図示のように、このスピンキャストリールは、リヤカバー1と、フロントカバー13と、フロントカバー13とリヤカバー1とを接続するフレーム(本体側部品)19とによってリール筐体を構成している。フレーム19は、釣竿に取り付けられる竿取付部21を有しているとともに、リヤカバー1に対して固着されており、フロントカバー13とリヤカバー1とによって取り囲まれる内部空間25を前後に仕切っている。
【0013】
内部空間25内に位置するフレーム19の中心に設けられたネジ穴29にはスプール軸筒2が螺着されており、このスプール軸筒2の軸心には回転軸3が回転自在に且つ前後に摺動自在に嵌合されている。また、スプール軸筒2の外周にはスプール4が回動可能に嵌着されてサークリップ5で抜け止めされている。
【0014】
スプール軸筒2の先端外周には偏心カム2aが形成されている。回転軸3の前端3aにはビス6により回転筒体7が固定されている。回転軸3の長手方向の略中央部にはピニオン8が回転軸3に対して摺動のみ可能に嵌合されている。なお、ピニオン8は、回転軸3の後部外周に巻回装着されたリリースバネ9により、フロントカバー13が位置する前方側に向けて常時付勢されている。
【0015】
ピニオン8は、ハンドル10の回動操作によって回転される駆動ギア11に噛み合わされている。リヤカバー1の背面には、プッシュボタン12が、回転軸3の基端と当接できるように、内部空間25内に向けて回動自在に支軸29により軸支されている。また、フレーム19の前端側の円筒部外周にはフロントカバー13が螺着されており、フロントカバー13の前端には糸導口リング14が固定されている。
【0016】
回転筒体7の前壁には回転軸3と直交する方向に延びる長孔7aが穿設されており、この長孔7aにはピックアップ部材15の頭部15aが摺動自在に嵌合されている。ピックアップ部材15の上側には摺動方向に沿って透孔15bが穿設されており、この透孔15bにはピン16の一端が嵌合されている。ピン16の他端は、回転筒体7の周壁に穿設された透孔7bに嵌合されている。
【0017】
ピン16の長手方向中間部には鍔部16aが形成され、この鍔部16aがピックアップ部材15に対して押圧付勢されるようにコイルバネ17がピン16の外周に嵌合されている。また、ピックアップ部材15の下側は、スプール軸筒2の先端の偏心カム2aと係合できるように形成されて配設されている。
【0018】
なお、以上のような構成のスピンキャストリールからスプール4に巻回された釣糸18を繰り出す場合には、プッシュボタン12をリリースバネ9に抗して押圧して回転軸3を前方(図1において左側方向)に押し出す。これにより、回転軸3と一体の回転筒体7も前方に押し出されて、ピックアップ部材15の下端とスプール軸筒2の外周との係合(図1の係合状態)が外され、ピックアップ部材15とピン16とがコイルバネ17で押し下げられる。そのため、釣糸18とピン16との係合が解除され、釣糸18が自由に繰り出される。次に、プッシュボタン12の押圧を解除して釣糸18をスプール4に巻き取る場合には、ハンドル10の回転によって駆動ギア11、ピニオン8、回転軸3、回転筒体7を回転させる。この回転により、スプール軸筒2の前端面にコイルバネ17により当接されているピックアップ部材15の下側が偏心カム2aに係合されてスプール軸筒2の外周上に乗接される。この乗接によってピックアップ部材15が図1の上方に摺動され、回転筒体7の外周からピン16の他端が突出して釣糸18と係合する(図1の状態)。そして、この係合により釣糸18が回転筒体7の回転にしたがってスプール4に巻回される。
【0019】
図2に明確に示されるように、フレーム19は、内部空間25を横切って前後に仕切る基部19aと、基部19aからこれと略直交する方向でリヤカバー1の背面側に向けて延び且つダイヤル状のドラグノブ(相手側部品;装着部品)40を装着支持する支持部としての軸部19bと、軸部19bからこれと略直交する方向に突出(延在)する突出部(延在部)としての略傘型の抜止係止部19cとを有しており、これらの基部19a、軸部19b、抜止係止部19cが後述するように金型Mによって一体成形されることにより1つのリール構成部材を形成する。
【0020】
この場合、軸部19bは、フレーム19の成形品を金型Mから抜き取るための型抜き方向A(図4参照)へ向けて延びており、また、基部19aには、抜止係止部19cを成形するための後述する金型部品(抜止係止部成形金型部M1a;図4参照)が前記型抜き方向で挿通される一対の挿通部34,34が形成されている。これらの挿通部34,34は、図3および図5に明確に示されるように、軸部19bの軸心を中心とする円弧に沿って延びており、軸部19bに対して互いに略対称に位置している。特に本実施形態において、これらの挿通部34,34は、基部19aを貫通する円弧状の貫通孔として形成されており、それぞれが軸部19bを中心に周方向に沿って180度未満の角度にわたって延びている。したがって、軸部19bと基部19aとの間には、これらを結合する結合部39が、挿通部34,34同士を分離するように軸部19bの両側に設けられる。
【0021】
また、抜止係止部19cは、軸部19bの先端側に弾性変形可能に形成されるとともに、軸部19bの径方向外方に略傘状に突出しており、軸部19bに装着される前記ドラグノブ40を係止して軸部19bからのドラグノブ40の抜けを防止する。具体的には、抜止係止部19cは、軸部19bとの間に段部31を形成するとともに、この段部31から先端側に向かって先細るテーパ面33を外周に有している。また、抜止係止部19cは、軸方向に延びるスリ割り32をその中心部に有しており、このスリ割り32の存在により径方向に弾性変形して軸部19bに対するドラグノブ40の装着を許容するようになっている。
【0022】
また、抜止係止部19cによって抜け止めされるドラグノブ40は、それが回転操作されることにより、スプール4に対して押圧力(摩擦抵抗力)を付与し、スプール4の回転に対して制動力を与えるようになっている。具体的には、ドラグノブ40は、図3に明確に示されるように、手で摘んで回転操作できる大径なダイヤル部40aと、このダイヤル部40aから軸方向に同心的に突出する小径なギア部40bとから成る。この場合、ダイヤル部40aは、その外周の一部がリヤカバー1の開口1aから外部に突出しており、また、ギア部40bは第1のギア部材42と噛み合っている。また、第1のギア部材42は、フレーム19の基部19aに回転可能に支持された第2のギア部材43の軸部43aに回転不能に支持されている。すなわち、第1のギア部材42は第2のギア部材43と一体に回転するようになっている。更に、第2のギア部材43は、フレーム19に対して進退可能な円環状の制動板44の後側に一体形成したギア44aと噛合している。ここで、制動板44は、スプール4の側端面と摩擦接触(摺接)可能な制動面44bを先端に有するとともに、第2のギア部材43と噛合するギア44aを基端側外周に有している。また、制動板44の内周面に形成された雌ネジ部44cは、フレーム19の中心部に突設された筒部19dの外周に形成された雄ネジ部と進退可能に螺合している。なお、制動面44aとスプール4の側端面の圧接面には、コルクや織布、不織布等のライニング部材が介在されていることが好ましい。
【0023】
したがって、このような構成では、ドラグノブ40のダイヤル部40aを一方向に回転操作すると、第1のギア部材42および第2のギア部材43が一体で回転し、第2のギア部材43と噛合する制動板44が、ダイヤル部40aの操作量に応じた押し付け力でスプール4側に移動してスプール4の側端面と摩擦接触する。すなわち、ダイヤル部40aの操作量に応じた制動力がスプール4の回転に対して与えられる。
【0024】
次に、図4および図5を参照しながら、金型Mを用いてリール構成部材であるフレーム19を一体成形する方法について説明する。
【0025】
抜止係止部19cと軸部19bと基部19aとを金型Mにより一体成形してフレーム19を形成する際には、図4に示されるように、第1の金型部品としての固定側のコアM1と第2の金型部品としての可動側のキャビティM2とから成る基本金型部品のみを使用すれば済む。この場合、固定側のコアM1は、フレーム19の基部19aおよび軸部19bの形状を形作ることができる金型形状を成しているとともに、フレーム19の抜止係止部19cの段部31を成形するための抜止係止部成形金型部(延在部成形金型部)M1aを有している。また、抜止係止部成形金型部M1aは、フレーム19の基部19aの一対の挿通部34,34を形成する(成形時には、一対の挿通部34,34に型抜き方向A(軸部19bの延在方向)で挿通された状態となる)ように2つ設けられている。一方、可動側のキャビティM2は、フレーム19の抜止係止部19cの形状を形作るとともに一対の抜止係止部成形金型部M1aと嵌合し得る金型形状を成している。
【0026】
以上のような金型部品M1,M2を用いてフレーム19を成形する場合には、まず、コアM1とキャビティM2とを重ね合わせることにより、これらの間にフレーム19の形状を成す空洞部Cを形成するとともに、抜止係止部成形金型部M1aを空洞部C内に突出させるように位置させる。そして、所定のゲートGを通じて空洞部C内に成形材料mを流し込むことにより、基部19aと軸部19bと抜止係止部19cとが成形されるとともに、抜止係止部成形金型部M1aが型抜き方向Aで挿通される挿通部34,34が基部19aに形成される。その後、成形材料mが硬化した時点で、キャビティM2を型抜き方向AでコアM1から相対的に離間させるとともに、コアM1側に設けられた押し出しピンPを用いてフレーム19の成形品をコアM1から押し出すことにより、挿通部34,34を通じて抜止係止部成形金型部M1aを成形品から型抜き方向Aで引き抜いて、金型Mからフレーム19を抜き取る。
【0027】
以上説明したように、本実施形態によれば、本体側部品であるフレーム19に対して相手側部品であるドラグノブ40を抜け止めするための抜止係止部19cを、フレーム19の基部19a側から挿通する金型(抜止係止部成形金型部M1a)によって成形するようにしているため、すなわち、コアM1とキャビティM2とから成る基本金型部品のみを使用してフレーム19(型抜き方向Aに対して略直交する方向に突出部(延在部としての抜止係止部19c)が延出する形状)を一体成形できるため、簡単で且つ型割数が少ない金型構造によってフレーム19を安価に且つ高精度に(寸法および形状的に安定して)成形することができる。また、特に本実施形態では、軸部19bの先端側に形成される径方向外方に突出する抜止係止部19cを、軸部19bの基部側から先端側に向けて挿通する金型(抜止係止部成形金型部M1a)によって成形するようにしているため、軸部19bと直交する方向の形状的制約がなくなり、他の部品の設置等、スペース面での有効活用を図ることが可能となり、設計の自由度が増す。
【0028】
図6〜図10は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態では、スピニングリール等のスプールの前端に装着され且つスプールの回転に制動力を付与するためのドラグノブ50の成形方法について説明する。
【0029】
図6に示されるように、ドラグノブ50は、手で摘んで操作可能なドラグ調整ツマミ50と、ナット体52と、ナット体52と後述する押圧部材58との間に圧縮状態で介挿されるバネ54と、トラグ操作に伴ってクリック音を発生させるためのクリック係合子56と、略円筒状の押圧部材58とによって構成されている。
【0030】
ドラグ調整ツマミ(本体側部品)50は、略円盤状の基部50aと、基部50aからこれと略直交する方向に略円弧状を成して延び且つ押圧部材58(相手側部品;装着部品)40を装着支持する支持部としての一対の軸部50bと、各軸部19bからこれと略直交する方向に略楔爪状に突出(延在)する突出部(延在部)としての抜止係止部50cとを有しており、これらの基部50a、軸部50b、抜止係止部50cが後述するように金型Mによって一体成形されることにより1つのリール構成部材を形成する。
【0031】
この場合、軸部50bは、ドラグ調整ツマミ50の成形品を金型Mから抜き取るための型抜き方向A(図7参照)へ向けて延びており、また、基部50aには、抜止係止部50cを成形するための後述する金型部品(抜止係止部成形金型部M2a;図7参照)が型抜き方向Aで挿通される一対の挿通部62,62が形成されている。これらの挿通部62,62は、図8に明確に示されるように、基部50aの軸心を中心とする円弧に沿って延びており、前記軸心に対して互いに対称に位置して各軸部50bの片側に設けられている。特に本実施形態において、これらの挿通部62,62は、基部50aを貫通する円弧状の貫通孔として形成されており、それぞれが各軸部50bの形状に対応している。
【0032】
また、抜止係止部50cは、内側に弾性変形できるような厚さをもって各軸部50bの先端に形成されるとともに、軸部50bの径方向外方に略楔爪状に突出しており、軸部50bに装着される押圧部材58を係止して軸部50bからの押圧部材58の抜けを防止する。具体的には、抜止係止部50cは、軸部50bとの間に段部71を形成するとともに、この段部71から先端側に向かって先細るテーパ面72を外周に有している。
【0033】
また、ナット体52は、ドラグ調整ツマミ50の一対の軸部50b,50b同士の間に嵌め込まれるように形成された略筒状体であり、図示しないスプール側に螺着されるネジ部74と、バネ54の一端側を支持する支持溝75とを有している。
【0034】
また、クリック係合子56は、薄板により形成されるとともに、平面視で略C字形状を成しており、円弧状に突出する凸部56aを外周の一部に有している。
【0035】
また、押圧部材(本体側部品)58は、円環状の底部を成し且つバネ54の他端側を支持する支持面79を有する基部58aと、基部50aからこれと略直交する方向に延び且つドラグ調整ツマミ50(相手側部品;装着部品)50を装着支持する支持部としての円筒状の軸部58bと、軸部58bの先端側(基部50aの反対側)に設けられ且つ軸部50bに対して略直交する方向に延びる延在部としての抜止係止部58cとを有しており、これらの基部58a、軸部58b、抜止係止部58cが後述するように金型Mによって一体成形されることにより1つのリール構成部材を形成する。
【0036】
この場合、軸部58bは、押圧部材58の成形品を金型Mから抜き取るための型抜き方向A(図9参照)へ向けて延びており、また、基部58aには、抜止係止部58cを成形するための後述する金型部位(抜止係止部成形部M1b;図7参照)が型抜き方向Aで挿通される一対の挿通部70,70が形成されている。これらの挿通部70,70は、図10に明確に示されるように、基部58aの軸心を中心とする円弧に沿って延びており、前記軸心に対して互いに対称に位置して設けられている。特に本実施形態において、これらの挿通部70,70は、基部58aの外周面の一部を切り欠いて形成されている。
【0037】
また、軸部58bには、ドラグ調整ツマミ50の抜止係止部50cが係止可能な一対の開口69,69が両側に形成されており、これらの開口69,69によって段差状の前記抜止係止部58cが形成されている。なお、一方の開口69は、抜止係止部50cとクリック係合子56の凸部56aとを上下に重ね合わせた状態で径方向外側に突出させるようになっている。
【0038】
次に、図7および図8を参照しながら、金型Mを用いてリール構成部材であるドラグ調整ツマミ50を一体成形する方法について説明する。
【0039】
前述した第1の実施形態と同様に、抜止係止部50cと軸部50bと基部50aとを金型Mにより一体成形してドラグ調整ツマミ50を形成する際には、図7に示されるように、第1の金型部品としての固定側のコアM1と第2の金型部品としての可動側のキャビティM2とから成る基本金型部品のみを使用すれば済む。この場合、可動側のキャビティM2は、ドラグ調整ツマミ50の基部50aの形状を形作ることができる金型形状を成しているとともに、ドラグ調整ツマミ50の抜止係止部50cの段部71を成形するための抜止係止部成形金型部(延在部成形金型部)M2aを有している。また、抜止係止部成形金型部M2aは、ドラグ調整ツマミ50の基部50aの一対の挿通部62,62を形成する(成形時には、一対の挿通部62,62に型抜き方向A(軸部50bの延在方向)で挿通された状態となる)ように2つ設けられている。一方、固定側のコアM1は、ドラグ調整ツマミ50の軸部50bおよび抜止係止部50cの形状を形作るとともに一対の抜止係止部成形金型部M2aと嵌合し得る金型形状を成している。
【0040】
以上のような金型部品M1,M2を用いてドラグ調整ツマミ50を成形する場合には、まず、コアM1とキャビティM2とを重ね合わせることにより、これらの間にドラグ調整ツマミ50の形状を成す空洞部Cを形成するとともに、抜止係止部成形金型部M2aを空洞部C内に突出させるように位置させる。そして、所定のゲートGを通じて空洞部C内に成形材料mを流し込むことにより、基部50aと軸部50bと抜止係止部50cとが成形されるとともに、抜止係止部成形金型部M2aが型抜き方向Aで挿通される挿通部62,62が基部50aに形成される。その後、成形材料mが硬化した時点で、キャビティM2を型抜き方向AでコアM1から相対的に離間させることにより、挿通部62,62を通じて抜止係止部成形金型部M2aを成形品から型抜き方向Aで引き抜くとともに、コアM1側に設けられた押し出しピンPを用いてドラグ調整ツマミ50の成形品をコアM1から押し出すことにより、金型Mからドラグ調整ツマミ50を抜き取る。
【0041】
次に、図9および図10を参照しながら、金型Mを用いてリール構成部材である押圧部材58を一体成形する方法について説明する。
【0042】
先と同様に、抜止係止部58cと軸部58bと基部58aとを金型Mにより一体成形して押圧部材58を形成する際には、図9に示されるように、第1の金型部品としての固定側のコアM1と第2の金型部品としての可動側のキャビティM2とから成る基本金型部品のみを使用すれば済む。この場合、固定側のコアM1は、押圧部材58の基部58aおよび軸部58bの形状を形作ることができる金型形状を成しているとともに、押圧部材58の抜止係止部58cを成形するための抜止係止部成形部(延在部成形金型部)M1bを有している(図10参照)。また、抜止係止部成形部M1bは、押圧部材58の基部58aの一対の挿通部70,70を形成する(成形時には、一対の挿通部70,70に型抜き方向A(軸部58bの延在方向)で挿通された状態となる)ように、コアM1の内周面の両側に凸状に形成されている。一方、可動側のキャビティM2は、押圧部材58の軸部58bの形状を形作ることができる金型形状を成している。
【0043】
以上のような金型部品M1,M2を用いて押圧部材58を成形する場合には、まず、コアM1とキャビティM2とを重ね合わせることにより、これらの間に押圧部材58の形状を成す空洞部Cを形成するとともに、抜止係止部成形部M1bを空洞部C内に突出させるように位置させる。そして、所定のゲートG(図10参照)を通じて空洞部C内に成形材料mを流し込むことにより、基部58aと軸部58bと抜止係止部58cとが成形されるとともに、抜止係止部成形部M1bが型抜き方向Aで挿通される挿通部70,70が基部58aに形成される。その後、成形材料mが硬化した時点で、キャビティM2を型抜き方向AでコアM1から相対的に離間させるとともに、コアM1側に設けられた押し出しピンPを用いて押圧部材58の成形品をコアM1から押し出すことにより、挿通部70,70を通じて成形品を抜止係止部成形部M1bから型抜き方向Aで引き抜くとともに、金型Mから押圧部材58を抜き取る。
【0044】
以上のように、本実施形態においても、本体側部品であるドラグ調整ツマミ50に対して相手側部品である押圧部材58を抜け止めするための抜止係止部50cを、ドラグ調整ツマミ50の基部50a側から挿通する金型(抜止係止部成形金型部M2a)によって成形するようにしているため、あるいは、本体側部品である押圧部材58に対して相手側部品であるドラグ調整ツマミ50を抜け止めするための抜止係止部58cを、押圧部材58の基部58a側から挿通する金型(抜止係止部成形部M1b)によって成形するようにしているため、すなわち、コアM1とキャビティM2とから成る基本金型部品のみを使用してドラグ調整ツマミ50または押圧部材58(型抜き方向Aに対して略直交する方向に延在部が延出する形状)を一体成形できるため、簡単で且つ型割数が少ない金型構造によってフレーム19を安価に且つ高精度に(寸法および形状的に安定して)成形することができる。
【0045】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できることは言うまでもない。例えば、前述した実施形態では、ドラグノブおよびドラグノブを支持するフレームの成形に本発明が適用されているが、本発明は、成形品を金型から抜き取るための型抜き方向に対して略直交する方向に延在する延在部を有する全ての魚釣用リールの構成部材(例えば、キャップ等の小物部品や側板など)及びその成形方法に適用できる。また、前述した実施形態では、延在部として突出部や段部が一例として挙げられているが、延在部の形状や形態は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、型抜き方向に対して略直交する方向に延びる延出部を有する全てのリール構成部材に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るリール構成部材としてのフレームを備える魚釣用リールとしてのスピンキャストリールの概略断面図である。
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】(a)は本体側部品としてのフレームの斜視図、(b)は相手側部品としてのドラグノブの一部断面を有する側面図である。
【図4】(a)は金型によってフレームを成形する状態を示す断面図、(b)は成形されたフレームの成形品を金型から抜き取った状態を示す断面図である。
【図5】図4の(b)のA−A線に沿う断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るリール構成部材としてのドラグノブの組立状態の断面図、(b)は(a)のドラグノブの分解状態と半断面図である。
【図7】(a)は金型によってドラグノブのドラグ調整ツマミを成形する状態を示す断面図、(b)は成形されたドラグ調整ツマミの成形品を金型から抜き取った状態を示す断面図である。
【図8】図7の(b)のB−B線に沿う断面図である。
【図9】(a)は金型によってドラグノブの押圧部材を成形する状態を示す断面図、(b)は成形された押圧部材の成形品を金型から抜き取った状態を示す断面図である。
【図10】図9の(b)のC−C線に沿う断面図である。
【図11】(a)は従来のドラグノブを抜け止めする抜止係止部を有するリール構成部材の斜視図、(b)は(a)のリール構成部材を金型で成形する状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
19 フレーム(構成部材;本体側部品)
19a,50a,58a 基部
19b,50b,58b 軸部(支持部)
19c,50c,58c 抜止係止部(延在部)
34,62,70 挿通部
40 ドラグノブ(装着部品;相手側部品)
50 ドラグ調整ツマミ(構成部材;装着部品;本体側部品;相手側部品)
58 押圧部材(構成部材;装着部品;本体側部品;相手側部品)
C 空洞部
M1 コア(第1の金型部品)
M1a,M2a,M1b 延在部成形金型部
M2 キャビティ(第2の金型部品)
G ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型によって成形される魚釣用リールの構成部材であって、
前記構成部材の成形品を金型から抜き取るための型抜き方向へ向けて延びる軸部と、この軸部の一端側に一体で設けられた基部と、前記軸部の他端側に設けられ且つ前記軸部に対して略直交する方向に延びる延在部とを有し、
前記基部には、前記延在部を成形するための金型部品が前記型抜き方向で挿通される挿通部が形成されていることを特徴とする魚釣用リールの構成部材。
【請求項2】
前記延在部は、前記軸部に装着される装着部品を係止して前記軸部からの前記装着部品の抜けを防止する抜止係止部として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リールの構成部材。
【請求項3】
魚釣用リールの構成部材を金型によって成形する成形方法であって、前記構成部材が、当該構成部材の成形品を金型から抜き取るための型抜き方向へ向けて延びる軸部と、この軸部の一端側に一体で設けられた基部と、前記軸部の他端側に設けられ且つ前記軸部に対して略直交する方向に延びる延在部とを有している成形方法において、
第1の金型部品と第2の金型部品とを重ね合わせることにより、これらの間に前記構成部材の形状を成す空洞部を形成するとともに、前記延在部を成形するために前記第1または第2の金型部品に設けられた延在部成形金型部を前記空洞部内に突出させるように位置させる第1のステップと、
所定のゲートを通じて前記空洞部内に成形材料を流し込むことにより、前記基部と前記軸部と前記延在部とを成形するとともに、前記延在部成形金型部が前記型抜き方向で挿通される挿通部を前記基部に形成する第2のステップと、
成形材料が硬化した時点で、前記第1の金型部品と前記第2の金型部品とを前記型抜き方向で相対的に離間させることにより、前記挿通部を通じて前記延在部成形金型部を成形品から前記型抜き方向で引き抜いて、成形品を金型から抜き取る第3のステップと、
を含む成形方法。
【請求項4】
前記延在部は、前記軸部に装着される装着部品を係止して前記軸部からの前記装着部品の抜けを防止する抜止係止部として形成されていることを特徴とする請求項3に記載の成形方法。
【請求項5】
相手側部品を抜け止めするために本体側部品に形成される抜止係止部を、本体側部品の基部から挿通する金型によって成形したことを特徴とする魚釣用リールの構成部材。
【請求項6】
相手側部品が装着される支持部を有する本体側部品で構成される魚釣用リールの構成部材において、前記支持部の先端側に形成される径方向外方に突出する抜止係止部を、前記支持部の基部側から先端側に向けて挿通する金型で成形したことを特徴とする魚釣用リールの構成部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−252326(P2007−252326A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83595(P2006−83595)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】