説明

魚釣用リール

【課題】異なるサイズの弾性部材を準備することなく、回転部材の節度感、或いは防水性の調整が行える魚釣用リールを提供する。
【解決手段】本発明に係る魚釣用リールは、回転部材30と非回転部材33bとを備え、その一方が軸部材であり、他方が軸部材の外周側に同軸中心とする断面円形状の内周面30eを有している。軸部材となる非回転部材33bの外周面33dには、複数の外径が異なる周方向溝33e,33f,33gが形成されており、これら複数の周方向溝の内、少なくとも1箇所に、断面円形状の内周面30eと接する弾性部材50が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用リールには、多数の回転部材が組み込まれており、その回転部材と非回転部材との間に弾性部材を用いることで、回転部材の操作節度感を適切に調整したり、防水性を高めることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、魚釣用電動リールのモータ操作部材の節度感に関する構成が開示されている。通常、魚釣用電動リールにおけるモータ操作部材は、操作の滑らかさと同時に誤作動防止から静止安定性も求められ、適当な節度が必要とされる。また、特許文献2には、両軸リールのハンドル軸に関する防水技術が開示されている。この公知技術のように、回転部材の防水性を高めるためには、Oリングを使用する方法とパッキンを使用する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−228859号
【特許文献2】特開2002−058401号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に開示された構成において、使用者が回転部材の節度を調整したい場合、弾性部材を別のサイズのものに変更する必要がある。すなわち、節度の大きさは任意であることから、弾性部材を多種、準備する必要がある。また、上記した特許文献2に開示された構成において、防水性を調整したい場合、節度と同様、弾性部材(Oリングやパッキン)を多種、準備する必要がある。
【0006】
さらに、上記した部位に配設される弾性部材は、長期の使用によって摩耗して行くと、節度感が軽くなったり、防水性が低下する、といった問題がある。従来の構成では、そのような問題が生じるたびに新しい弾性部材に交換する必要があり、経済性の面で劣ると共に、部材購入期間は使用できなくなる、といった問題がある。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、異なるサイズの弾性部材を準備することなく、回転部材の節度感、或いは防水性の調整が行える魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る魚釣用リールは、回転部材と非回転部材とを備え、その一方が軸部材であり、他方が前記軸部材の外周側に同軸中心とする断面円形状の内周面を有しており、前記軸部材の外周面には、複数の外径が異なる周方向溝が形成されており、前記複数の周方向溝の内、少なくとも1箇所には、前記断面円形状の内周面と接する弾性部材が配設されていることを特徴とする。
【0009】
上記した構成の魚釣用リールでは、軸部材の外周面に形成されている複数の外径が異なる円周溝のいずれかに、弾性部材を配設することで、回転部材の回転に制動を付与して節度感を持たせたり、或いは、両者の間で防水することが可能となる。このような構成において、弾性部材の配設位置を、異なる外径の円周溝に変えることで、内周面に対する接触力(摩擦力)が変化し、単一の弾性部材でありながら、回転部材の節度、或いは防水性を容易に変更することが可能となる。また、上記した弾性部材は、長期間使用することで摩耗して行くと、節度感が軽くなったり防水性が低下することもあるが、そのような場合、弾性部材の配設位置を、外径が大きい円周溝部分に変えることで、同様な節度感、或いは同様な防水性に維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の魚釣用リールによれば、異なるサイズの弾性部材を準備することなく、回転部材の節度感、或いは防水性の調整が行える魚釣用リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る魚釣用リール(電動リール)の平面図。
【図2】(a)は、図1に示した電動リールの制御ケース部分を示す平面図、(b)は、制御ケース部分を裏側から見た図。
【図3】図1のA−A線に沿った断面図。
【図4】図3に示す構成において、モータ操作部材の節度を緩く設定した状態を示す断面図。
【図5】モータ操作部材の節度を、図4に示す状態よりもきつく設定した状態を示す断面図。
【図6】モータ操作部材の節度を、図5に示す状態よりもきつく設定した状態を示す断面図。
【図7】モータ操作部材の節度を、図6に示す状態よりもきつく設定した状態を示す断面図。
【図8】図3に示す構成において、摩耗したOリングの使用例を説明する断面図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る魚釣用リール(電動リール)の平面図。
【図10】図9のB−B線に沿った要部拡大断面図。
【図11】図10の要部拡大図。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る魚釣用リール(両軸受け型リール)の平面図。
【図13】図12に示した魚釣用リールのハンドル軸部分の拡大図。
【図14】(a)は、ゴムパッキンの初期設定状態を示す図、(b)は、防水性を高めたゴムパッキンの設定状態を示す図。
【図15】(a)は、摩耗した状態のゴムパッキンを説明する図、(b)は、摩耗したゴムパッキンを再利用した状態を示す図。
【図16】(a)は、周方向溝の変形例を説明する図、(b)は、周方向溝の別の変形例を説明する図、(c)は、周方向溝のさらに別の変形例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る魚釣用リールの実施形態について説明する。
図1から図3は本発明の第1の実施形態を示す図であり、図1は平面図、図2(a)は図1に示した電動リールの制御ケース部分を示す平面図、図2(b)は制御ケース部分を裏側から見た図、そして、図3は図1のA−A線に沿った断面図である。
【0013】
本実施形態に係る魚釣用リール1は、電動リールとして構成されており、左右のフレーム3a,3bに左右カバー4a,4bを取着して構成される左右側板5A,5Bを具備したリール本体5を有している。前記リール本体5を構成する一方の側板(右側板5B)側には、巻取り操作される手動ハンドル6が設けられており、左右側板5A,5B間には、釣糸が巻回されるスプール7がスプール軸を中心に回転可能に支持されている。また、本実施形態では、スプール7の前方側における左右側板5A,5B間に駆動モータ8を保持しており、スプール7は、手動ハンドル6の巻取り操作および駆動モータ8の回転駆動によって、動力伝達機構10を介して釣糸巻取り方向に回転駆動される。
【0014】
前記動力伝達機構10については、駆動モータ8の回転駆動力を減速してスプール7側に伝達する機能、駆動モータ8が回転駆動しても手動ハンドル6を連れ回しさせない機能や手動ハンドル6の逆回転を防止する機能などを備えた公知のものによって構成することが可能である。また、そのような動力伝達機構10については、左側板5A側に配設されていても良いし、右側板5B側に配設されていても良く、或いは、左右側板それぞれに振り分けて配設されていても良い。なお、図において、符号12は、ハンドル6に結合されたハンドル軸、符号13は、ハンドル軸12に回転可能に支持されたドライブギヤ、符号14は、ドライブギヤ13に噛合するピニオンであり、これらは前述した動力伝達機構10を構成する。また、図中、符号15は、魚釣時にスプール7から釣糸が繰り出された際にスプール7の回転にドラグ力を付与する公知のドラグ機構であり、リール本体5とハンドル6との間には、ドラグ機構15によるドラグ力の調整を行なうための星型のドラグ調整ノブ(スタードラグ)16が設けられている。
【0015】
また、リール本体5内には、前記ピニオン14を軸方向に移動させてスプール7を釣糸巻き取り状態/フリー回転状態に切り換える公知のクラッチ機構17が配設されている。このクラッチ機構17は、動力伝達機構10に介在されて手動ハンドル6および駆動モータ8からの動力伝達を継脱する機能を備えており、本実施形態では、右側板5B側に設置されている。
【0016】
前記クラッチ機構17は、スプール7をサミングしながら操作が可能となる位置、具体的には、スプール7の後方側の左右側板5A,5B間に橋設されたクラッチOFF切換部材18を備えており、その表面に親指を載置して下方に押し下げ操作することで、クラッチ機構17をON状態からOFF状態に切り換える(スプールを釣糸巻き取り状態からフリー回転状態に切り換える)よう構成されている。また、クラッチ機構17は、スプール7をサミングしている指(親指)が届く位置、具体的には、スプール7の後方側の右側板表面に揺動可能に支持されたクラッチON切換部材19を備えており、その表面に親指を載置して下方に押し下げ操作することで、クラッチ機構17をOFF状態からON状態に切り換える(スプールをフリー回転状態から釣糸巻き取り状態に切り換える)よう構成されている。
【0017】
前記リール本体5には、駆動モータ8に対して電力を供給するための給電部20が設けられている。この給電部20は、左側板5Aの前方側の下面領域に形成されており、この給電部20に対しては、着脱可能な携帯バッテリ(図示せず)を装着したり、或いは、足元に置いたバッテリや釣り船に設置されている電源部から電力供給される給電コードが装着される。
【0018】
前記左右側板5A,5B間のスプール7の上方には、駆動モータ8を制御する制御部を収容した箱型の制御ケース21が配設されている。この制御ケース21の後方部分には、駆動モータ8の出力を調整するモータ出力操作部材(以下、操作部材と称する)30が配置されている。本実施形態の操作部材30は、スプール7(スプール軸)の上方で制御ケース21の中央部分(左右側板5A,5Bの間の中心領域)に設置されている。具体的には、制御ケース21の後方側には、その中央領域に、制御ケース21の後端縁21aから前方側に向かって延び、制御ケース21の後端で開口した凹陥部(開放部)21Aが形成されており、この凹陥部21Aを横切るようにして前記操作部材30が回転可能に支持されている(操作部材は回転部材を構成する)。
【0019】
前記操作部材30は、図3に示すように、中空円筒状に形成されており、前記制御ケース21の凹陥部21Aの両サイドにそれぞれ固定される取付部材33,34を介して回転可能に支持されている。前記取付部材33は、基部33aと円柱状の軸部33bを備えた軸部材として構成されており、基部33aが制御ケース21に対して固定されることで、非回転状態となっている(非回転部材を構成する)。また、取付部材34は、角度センサ40を保持した状態で制御ケース21に対して固定されており、角度センサ40の軸部40aが操作部材30と共に回転駆動され、その操作角度を検知するようになっている。
【0020】
具体的には、前記操作部材30の内部には、区画壁30aが形成されており、左側の円形開口30b側から前記取付部材33の軸部33bが挿入され、操作部材30の断面円形状の内周面30eが軸部33bの軸心と同軸となるように配置されている。この場合、軸部33bの外周面33dと内周面30eとの間は、後述する弾性部材を介して一定の隙間が維持されている。一方、右側の円形開口30c側からは、角度センサ40の円柱基部(軸受部)40bがカラー37を介して圧入され、円柱基部40bの中心に突出する軸部40aが区画壁30aを貫いてナット38で固定されている。これにより、操作部材30は、非回転となる軸部33bの回りに回転可能に支持されると共に、その回転操作量については、一体回転する軸部40aを介して前記角度センサ40によって検出され、駆動モータ8の出力は、操作部材30の操作位置に応じて調整することが可能となっている。なお、軸部33bは、中実状に限ることなく、円筒状としても良い。
【0021】
なお、本実施形態では、操作部材30に釣糸が接触しないように、操作部材30の下方側にカバー部材39が配されており、前記取付部材33,34は、カバー部材39を含めてネジ等で制御ケース15に固定されている。
【0022】
また、前記制御ケース21の表面には、繰り出された釣糸の長さ(糸長情報)などを表示する表示部(液晶表示部)22が設けられており、また、その周囲には、各種の情報が設定可能な複数の操作ボタン23a,23bが配設されている。なお、本実施形態において、操作ボタン23a,23bは、図1に示されるように、制御ケース21の上面において、表示部22と操作部材30との間で、且つ釣竿とともにリール本体5を把持保持した状態で親指が届く位置とされている。
【0023】
上記したように構成される操作部材30は、下側から回転操作(スプールをサミングしたまま親指を伸ばして押し上げるような回転操作)することが可能であり、かつ、上方からリール本体を押さえ付けた状態でも回転操作することが可能となっている。この場合、操作部材30の回転節度は、軸部33bの外周面と、操作部材30の内周面30eとの間に介在される弾性部材50の摩擦力によって特定されるが、以下のような構造によって、その回転節度は調整可能に構成されている。
【0024】
前記軸部33bの外周面33dには、複数の周方向溝33e,33f,33gが形成されている。これらの周方向溝は、軸方向に沿って隣接して形成されており、各周方向溝の外径は異なるように形成されている。具体的には、端部側の周方向溝33eの外径<中央の周方向溝33fの外径<基端側の周方向溝33gの外径となるように形成されており、端部側の周方向溝が深くなるように形成されている。また、周方向溝33e,33f,33gは、操作領域(本実施形態では、膨出して指が当接する領域)Wの範囲内に形成されていることが好ましく、これにより、操作部材30の操作性の安定化を図ることが可能となる。
【0025】
そして、これらの周方向溝の少なくとも1箇所には、操作部材30の内周面30eと接する弾性部材50が配設されている。この弾性部材50は、Oリングとして構成されており、弾性変形可能なように、加硫ゴムや熱可塑性エラストマー等によって形成され、前記外径が異なるいずれかの周方向溝に配設することで、操作部材30の内周面30eに対する圧接力が変わり、操作部材30を回転操作する際の節度を変更(調整)することが可能となっている。
【0026】
すなわち、図4に示すように、弾性部材50を、外径が小さい(溝が深い)周方向溝33eに配設することで、操作部材30の節度を弱める(回転抵抗を軽くする)ことができ、図5に示すように、それよりも外径が大きい(溝が浅い)周方向溝33fに配設することで、操作部材30の節度を強く(回転抵抗を重くする)ことが可能となる。さらに、図6に示すように、弾性部材50を、それよりも外径が大きい(溝が浅い)周方向溝33gに配設することで、操作部材30の節度をより強く(回転抵抗をより重くする)ことが可能となる。このように、単に、弾性部材50の配設位置を変えるだけで、使用者の好みに応じて、操作部材50の節度を容易に調整することが可能となる。なお、図7に示すように、周方向溝の内、複数個所に弾性部材50を配設することで、より節度を高めることも可能となる。
【0027】
また、上記したような節度を調整する以外にも、長期の使用によって弾性部材50が摩耗しても、節度感を一定に保つことができる、という作用効果も得られる。
例えば、図8に示すように、最初、外径が小さい周方向溝33eに弾性部材50を配設していたところ、長期の使用によって、その表面が摩耗しても、その摩耗した弾性部材50aを、それよりも外径が大きい周方向溝33f,33gに位置変更することで、節度感が復活するようになる(防水性も復活する)。
【0028】
次に、本発明に係る魚釣用リールの別の実施形態について説明する。
なお、以下の実施形態では、特徴的な部分について説明し、上記した実施形態と同様な構成部材については、同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0029】
図9から図11は、本発明の第2の実施形態に係る魚釣用リール(電動リール)を示ししており、図9は平面図、図10は図9のB−B線に沿った要部拡大断面図、そして、図11は図10の要部拡大図である。
本実施形態では、操作部材60を右側板5Bの前方側に回動可能に配設しており、操作部材60を前後方向に回動操作することで、駆動モータ8の回転が調整できるよう構成されている。
【0030】
前記操作部材60は、円筒基部61と、指によって操作されるレバー部62とを備えており、円筒基部61は、リール本体側に向けて突出する断面円形状の内周面61eを有している。また、リール本体の右側板側には、操作部材60の回動量を検知するポテンショメータ70を収容したメータケース63が配設されており、メータケース63は、その開口端に形成された雄ネジ部63aに螺合される外蓋65によって閉塞されている。前記ポテンショメータ70は、その軸受部70aが外蓋65を貫通し、その貫通した部分に形成された雄ネジ部70bに固定ナット72を螺合することでメータケース63内に保持されている。また、ポテンショメータ70の回転軸70cは、軸受部70aの先端から突出しており、回転軸70cに形成された雄ネジ部70dに固定ナット75を螺合することで、操作部材60の円筒基部61の部分を一体的に固定している。すなわち、操作部材60を回動操作することで、ポテンショメータ70の回転軸70cも一体的に回転され、その操作量がポテンショメータ70によって検知されるようになっている。
【0031】
前記操作部材60の円筒基部61は、固定部材である前記外蓋65の円筒部65aと同軸中心で回転する部材となっており、円筒基部61の内周面61eと前記外蓋65の円筒部65aとの間に介在された弾性部材50によって、節度をもって回転可能に支持されている。この場合、操作部材60(円筒基部61)の回転節度は、上記した実施形態と同様、調整可能に構成されている。すなわち、円筒部65aの外周面65dには、複数の周方向溝65e,65fが隣接して形成されており、各周方向溝の外径は異なるように形成されている。具体的には、端部側の周方向溝65eの外径<基部側の周方向溝65fの外径となるように形成されており、端部側の周方向溝が深くなるように形成されている。
【0032】
このような構成においても、弾性部材50の配設位置を変えることで、操作部材60の回転節度を調整することができ、上記した実施形態と同様な作用効果を得ることが可能となる。
【0033】
図12から図15は、本発明の第3の実施形態に係る魚釣用リール(両軸受け型リール)を示しており、図12は平面図、図13は図12に示した魚釣用リールのハンドル軸部分の拡大図、図14(a)はゴムパッキンの初期設定状態を示す図、図14(b)は防水性を高めたゴムパッキンの設定状態を示す図、そして、図15(a)は摩耗した状態のゴムパッキンを説明する図、図15(b)は摩耗したゴムパッキンを再利用した状態を示す図である。
【0034】
本実施形態では、リール本体80の左右側板81A,81B間に回転可能に支持されるスプール83を巻き取り操作するハンドル85の回転軸(ハンドル軸)86の部分に、上述した実施形態のような構造を採用している。すなわち、リール本体80とハンドル軸86との間には、公知のように、ハンドルの逆回転を防止する一方向クラッチ90が配設されており、ハンドル軸86は、一方向クラッチ90の内輪91に対して一体回転可能となるように挿通されている。前記内輪91の軸方向突出部91aの外周面91bには、リール本体の右側板81Bを構成するカバー(非回転部材を構成する)81aの内周面81bとの間で、防水性を高めるようにゴムパッキン(弾性部材)50Aが介在されている。
【0035】
この場合、内輪91は、ハンドル軸86と共に一体回転することから、ゴムパッキン50Aの内周面81bに対する圧接力を高めると防水性が向上する反面、ハンドル軸86に対する摩擦抵抗力が高まり回転が重くなってしまう。一方、ゴムパッキン50Aの内周面81bに対する圧接力を弱めると防水性が低下する反面、ハンドル軸86に対する摩擦抵抗力が弱まり滑らかな回転が得られるようになる。
【0036】
本実施形態では、前記内輪91の外周面91bには、上述した実施形態と同様、複数の周方向溝91e,91fが隣接して形成されており、各周方向溝の外径は異なるように形成されている。具体的には、ハンドル側の周方向溝91eの外径<一方向クラッチ側の周方向溝91fの外径となるように形成されており、ハンドル側の周方向溝が深くなるように形成されている。
【0037】
これにより、図14(a)に示すように、ゴムパッキン50Aを周方向溝91eに配設することで、内周面81bに対する圧接力が弱くなって、ハンドル軸86の滑らかな回転特性が得られるようになる。一方、図14(b)に示すように、ゴムパッキン50Aを周方向溝91fに配設することで、その先端は、内周面81bに対して強く圧接して一方向クラッチ側に倒れる割合が強くなり、防水性を高めることが可能となる。すなわち、使用者の好みによって、防水性能を高めるか、ハンドル軸の回転の滑らかさを向上するかを選択することが可能となる。
【0038】
また、図15(a)に示すように、上記したゴムパッキン50Aは、長期に亘って使用すると摩耗するようになる(左側が初期状態のゴムパッキン50Aを示し、右側が長さLだけ摩耗した状態のゴムパッキン50A´を示す)。このため、最初にゴムパッキン50Aを周方向溝91eに配設しておき、長期の使用によってゴムパッキンが摩耗しても、図15(b)に示すように、周方向溝91fに配設することで、同様な性能(防水性)を維持することが可能となり、長期に亘って使用することが可能となる。
【0039】
なお、本実施形態では、ハンドル軸86の外周面86aにも、複数の外径が異なる周方向溝86e,86fを形成しており、いずれかに弾性部材(Oリング)50が配設できるように構成されている(図13では、外径が小さい周方向溝86fに弾性部材50を配設している)。このように構成することで、リール本体内部に対する防水特性を変えることも可能である。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、スピニングリールを初め、各種形式の魚釣用リールに適用することが可能である。上記した弾性部材は、各種の魚釣用リールにおいて、常に回転がなされて摩耗が激しい部分(防水性が低下し易い部分)、或いは、回転操作した際の節度感が考慮される部分に適用することが可能である。すなわち、上記した実施形態以外に、例えば、スピニングリールにおけるロータと本体との間、ドラグノブとスプールとの間、スプール軸とロータ(ピニオンギヤ)との間に介在される弾性部材に適用することが可能である。また、両軸受け型リールのスプール制動調整機構のメカニカルノブの部分、各種リールのハンドルアームとハンドルノブとの間に適用することも可能である。
【0041】
また、上述した周方向溝については、単に、軸部に断面長方形の溝を形成する例に限らず、その形状については、例えば、図16(b),図16(c)に示すように、断面三角形状や円弧状に形成したものであっても良い。また、軸部の外周面に溝を形成する以外にも、例えば、図16(a)〜(c)に示すように、軸部100の軸長方向に、近接する2つの周方向突部101を設けることで、その間を溝状(その形状は、長方形形状、三角形状、円弧形状等、特に限定されることはない)にしたものであっても良い。すなわち、配設される弾性部材50の軸方向への移動を規制し、その弾性部材が、軸部の外表面よりも外周方向に突出していれば良い。
【符号の説明】
【0042】
1 魚釣用リール
30 操作部材(回転部材)
33 取付部材
33b 軸部(非回転部材)
33e,33f,33g 周方向溝
50 弾性部材(Oリング)
50A 弾性部材(パッキン)
61 円筒基部(回転部材)
65a 円筒部(非回転部材)
65f,65e 周方向溝
81a カバー(非回転部材)
90 一方向クラッチ
91 内輪(回転部材)
91e,91f 周方向溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材と非回転部材とを備え、その一方が軸部材であり、他方が前記軸部材の外周側に同軸中心とする断面円形状の内周面を有する魚釣用リールにおいて、
前記軸部材の外周面には、複数の外径が異なる周方向溝が形成されており、
前記複数の周方向溝の内、少なくとも1箇所には、前記断面円形状の内周面と接する弾性部材が配設されていることを特徴とする魚釣用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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