説明

魚釣用電動リールの多機能表示装置

【課題】魚釣用電動リールの液晶表示素子の表示画面は、ライトで照明しても、リール本体の輪郭は把握できず、表示視角が狭く表示面の正面から情報を視認しなければならない。
【解決手段】魚釣用電動リールの多機能表示装置は、魚釣用電動リールに設けられた外装部材の表面上に、連続で複数に区分された発光領域が帯状に発光する帯状発光部が露呈するように設けられている。搭載される発光制御部は、帯状発光部の区分された発光領域毎に魚釣用電動リールの動作状態に応じて、発光領域が帯状となって、それぞれに点灯又は点滅による異なる発光形態を成すように発光制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用電動リールに搭載され、動作状況を光の形態で示す多機能表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、魚釣りに用いられている魚釣用電動リール(以下、電動リールと称する)は、電源の投入に伴いリール本体の上面に設けられた液晶表示画面に、電源の通電状態(バッテリー不足等)を含む種々の情報が数字又は、シンボルマーク等により表示されている。また、釣行時には、繰出された釣糸又は道糸の距離や釣行を開始してからの経過時間(所謂、コマセタイム)等も表示される。
【0003】
従って、ユーザは、必要に応じて画面表示を確認して、各操作部材の操作を行っている。しかしながら、一般的には、表示部としては、単色の液晶表示部を用いているため、朝夕の暗い環境下では、表示を視認しにくい事態となる。そこで、例えば、特許文献1には、液晶表示画面を照明する照明部を備える釣用リールが提案されている。また、蓄光樹脂に作成されたシートを表示部の裏面側に配置する構成も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−000124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献1は、液晶表示部を発光素子で照明して、表示内容を見やすくしている。通常、単色の液晶表示部は、消費電力が少なく、バッテリー等の携帯小型電源を使用時に好適する。しかし、画面をライトで照明したとしても、表示視角が狭いため、表示面の正面から見ないと表示される情報が見えなかったり、晴天の空模様が映り込んで見づらかったりする事態もある。釣行を行っているユーザの視線は、釣竿に取り付けられたリール本体の表示画面と正対しているとは限らず、側方や斜め後ろに構えて見ている姿勢も多々ある。このようなときは、表示画面をのぞき込むようにして、表示される情報を視認しなければならない。
【0006】
また、ユーザに情報を伝える手段としては、画面表示だけでは無く、ブザー音等の音による告知手段も備えられている。このような音(音声も含む)による告知は、周囲の環境下に影響され、即ち、雨天時の雨具着用時、波風の音又はエンジン音が大きい場合には、必ずしも有効な告知手段とはならない。
【0007】
そこで本発明は、リール本体の外装部材の表面に露呈する帯状光表示部を設け、画面表示の情報を点灯形態が変化する照明表示により示し、周囲の環境下に影響されずに告知可能な魚釣用電動リールの多機能表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態による魚釣用電動リールの多機能表示装置は、魚釣用電動リールに設けられた外装部材と、前記外装部材の表面上に、連続で複数に区分された発光領域が帯状に発光する帯状発光部と、前記区分された発光領域毎に、前記魚釣用電動リールの動作状態に応じて、前記発光領域が帯状となって、それぞれに点灯又は点滅による異なる発光形態を成すように発光制御する発光制御部と、を具備する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リール本体の外装部材の表面に露呈する帯状光表示部を設け、画面表示の情報を点灯形態が変化する照明表示により示し、周囲の環境下に影響されずに告知可能な魚釣用電動リールの多機能表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に係る第1の実施形態に係る魚釣用電動リールの上方から見た全体的な外観構成を示す図である。
【図2】図2は、魚釣用電動リールを正面から見た外観構成を示す図である。
【図3】図3は、魚釣用電動リールのブロック構成図を示す図である。
【図4】図4は、多機能表示装置の概念的なブロック構成の一例を示す図である。
【図5】図5は、リール本体内に設けられた多機能表示装置の概略的な構成を示す図である。
【図6】図6は、設定メニューと設定テーブルにおける発光モードの例を示す図である。
【図7】図7は、電動リールの主動作について説明するためのフローチャートである。
【図8】図8は、本実施形態における自動棚取りの発光モードについて説明するためのフローチャートである。
【図9】図9は、本実施形態における自動釣行経過時間発光モードについて説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る魚釣用電動リール(以下、電動リールと称する)を上方から見た全体的な外観構成を示す図である。図2は、電動リールを正面から見た外観構成を示す図である。図3は、電動リールのブロック構成を示す図である。尚、以下の説明でリール本体において、釣糸が繰出される矢印mの方向を前方とし、その反対の矢印nの方向を後方とする。
【0012】
電動リール1は、リール本体2として、スプール3に釣糸(又は道糸)を巻取るための駆動モータ(図示せず)を含む駆動機構4が外装部5により覆われている。また、駆動機構4には、スプール3への駆動モータの駆動力の伝達を行うクラッチ機構6が含まれている。さらに、側方の一方には、スプール3を手動で回転させる手巻き用ハンドル7が設けられ、ハンドル7の基部側にはドラグ調整用ノブ8が設けられている。
【0013】
リール本体2の上面には、液晶表示部9の表示画面9aが配置され、その後方にはメニュー選択及び各種設定を行うための複数の操作ボタン10が配置されている。さらに、操作ボタン10の後方でスプール3の上方には、角度(角度センサ)により釣糸の巻上げ開始・停止及び巻上げ速度を指示するための回動型円筒形状の操作スイッチ11が設けられている。
【0014】
また、リール本体2でスプール3を露呈させる窓(開口領域)12の一方の側端には、クラッチ機構6における駆動力の伝達を行わせるクラッチONボタン(クラッチON切換部材)13が設けられる。またリール本体2のスプール3の後方には、押し下げよりクラッチ機構6における駆動力の伝達を遮断するクラッチOFFレバー(クラッチOFF切換部材)14が設けられている。クラッチONボタン13とクラッチOFFレバー14は、クラッチ機構6に対して相関関係を有し、クラッチOFFレバー14を押し下げてロックさせた際に、クラッチが切られると共に、クラッチONボタン13の上部がポップアップして突出される。反対に、突出するクラッチONボタン13の上部を押し込むと、クラッチが繋がれると共に、クラッチOFFレバー14が開放されて上方に移動して戻る。尚、クラッチが切られた状態の時に、手動ハンドル7を回してクラッチを繋いだ場合には、クラッチONボタン13の上部が引き込まれ、クラッチOFFレバー14が開放されて戻る。
【0015】
外装部5は、フレーム20に取着する側面カバー5a,5bと、前面カバー5cとで構成される。上面は、前述した液晶表示部9、操作ボタン10及び操作スイッチ11等が設けられた箱形状の部材(箱部材)からなる制御ケース15が取り付けられている。スプール3の前方で前面カバー5cに設けられた釣糸を巻上げるための開口の内部には、スプール3に均一な高さとなるように巻き付けを行うレベルワインド機構16が設けられている。また、リール本体2の下部には、釣竿に装着するための竿取付部17が設けられている。
【0016】
外装部5における側面カバー5a,5bの外装部材の表面(ここでは、リール本体表面及び外装表面を示唆する)、操作ボタン10の近傍から前面カバー5cに回り込むように、帯状に発光する多機能表示装置の帯状光表示部18,19が設けられている。
これらの帯状光表示部18(19)は、複数の情報を発光形態で示すために、3分割された発光領域18a,18b,18c(19a,19b,19c)によって、レベル表示及び釣糸の移動方向表示等の区分発光を行う。発光色は、所望する単色のみでもよいし、複数色であってもよい。本実施形態では、単色の発光色で発光の有無、点灯及び点滅等の発光形態により後述する情報を表示する。
【0017】
図3は、電動リール1の構成を示すブロック図である。
電動リール1は、構成部材として、前述した駆動機構4と、クラッチ機構6と、クラッチONボタン13と、クラッチOFFレバー14と、操作ボタン10と、操作スイッチ11と、液晶表示部9を備えている。さらに、制御ケース15には、それぞれの構成部位を駆動制御するための種々のプログラムや設定情報等を記憶する不揮発性固体記録素子:ROM(Read Only Memory)21と、書き換え可能で一時記憶領域として利用する揮発性固体記録素子:RAM(Random Access Memory)22と、リール全体を制御する演算処理デバイス例えば、CPU(Central Processing Unit)等からなる制御部23とを備えている。尚、本実施形態の説明に必要な部材のみを示しており、他にも通常搭載している、例えば、電源部や内部バス等は含まれているものとして、ここでの記載は省略する。
【0018】
また、駆動機構4に付随するように、スプール3の回転経過からスプール3からの釣糸の繰出し量(引き出された距離)を検知する糸長計測部24が設けられ、検出信号が制御部23に入力される。また、本実施形態における多機能表示装置25と、この表示装置に含まれる前述した帯状光表示部18,19とが設けられている。
【0019】
次に、図4を参照して、多機能表示装置25の構成について説明する。
図4は、多機能表示装置25の概念的なブロック構成の一例を示す図である。図5は、リール本体内に設けられた多機能表示装置25の図1のA−Aにおける概略的な構成を示す図である。
【0020】
この多機能表示装置25は、経過時間を計測するためのタイマカウンタ31と、後述する設定テーブル32と、発光制御部33と、帯状光表示部18,19とで構成される。尚、本実施形態では、説明の理解を容易にするために、別部材として説明するが、タイマカウンタ31と設定テーブル32と発光制御部33は、制御部23とRAM22を用いた構成であってもよい。
【0021】
発光制御部33は、予め設定されたプログラムに従い、それぞれの帯状光表示部18、19に対して、点灯、消灯、点灯時間が可変する点滅、及び発光領域18a,18b,18c(19a,19b,19c)に対して各領域ごとに個別に点灯又は点滅する制御を行う。タイマカウンタ31は、発光制御部33の指示によりカウントを開始し、また指示によりリセットされる。
【0022】
設定テーブル32は、予めパターン化して発光形態が記憶されており、釣行毎に更新される又はユーザの設定による複数のパラメータを登録することで、直前の釣行と同じ棚位置及び釣行経過時間等の同じ釣行条件を実現するための設定リストである。これらは、ユーザにより選択及び設定されて実施される。
【0023】
図5に示すように、多機能表示装置25は、制御ケース15内に設けられ、制御ケース15の上面両端に設けられた帯状光表示部18,19から光を発光する。制御ケース15は、光を透過する樹脂等で形成され、操作ボタン10を設けられた領域を遮光する表面カバー15aにより帯状に発光している。尚、本実施形態では、連続する帯状に発光させているが、これに限定されること無く、不連続な帯状の発光でもよい。さらに、表面カバー15a又は外装部5の遮光形状を変えることにより、帯状発光だけでは無く、連続するドットやマーク等により種々の形態で発光することができる。
【0024】
本実施形態においては、制御ケース15内には、6個の例えば、LED等の発光素子からなる光源34が設けられ、発光制御部33により点灯、点滅が制御される。また、光源34から帯状光表示部18,19へ光が効率よく導光及び制御ケース15内に散乱するように、透明部材からなる導光部材35が設けられている。尚、帯状光表示部18,19は、制御ケース15を形成する透明樹脂の色を選択することにより、種々の色に設定することができる。
【0025】
また、無色透明な樹脂により制御ケース15を形成し、任意の発光色の光束を照射する光源を選択してもよい。また、本実施形態では、制御ケース15により光を導光したが、帯状光表示部18,19を個別に作成し、光束を光ファイバーで導光して、不透明材料により制御ケース15を形成してもよい。また、1つの光源から光ファイバーで6個に分割し、各発光領域18a,18b,18c,19a,19b,19cと光ファイバーの出射口との間に液晶シャッタをそれぞれに設けて、透過、遮光の制御により放光することも可能である。
【0026】
図6は、設定メニューと設定テーブル32における発光モード(発光形態)の例を示す図である。
この例では、帯状光表示部18,19は、それぞれ3つの区分発光(分割発光)により、同一又は異なる情報を同時に告知している。図6における発光モードは、帯状光表示部18(19)の発光領域18a,18b,18c(19a,19b,19c)に対して、発光領域毎に点灯又は点滅する。点滅の発光形態は以下のように設定される。尚、これらは一例であり、点灯及び点滅の形態が以下の形態に限定されるものではない。
【0027】
点滅1:帯状光表示部18(又は、19)は、スプール3から引き出された釣糸量(釣糸の長さ)が設定値に近づくに従い、点灯から点滅に切り換えられて、徐々に速い点滅となり、設定値で一旦消灯し、通り過ぎて設定値から離れるに従い、速い点滅から徐々に遅い点滅となり、点灯状態となる。
【0028】
点滅2:帯状光表示部18,19又は、帯状光表示部19のみが点滅状態となる。
点滅3:帯状光表示部18(又は、帯状光表示部19)が発光領域18a,18b,18c(又は、19a,19b,19c)の順で、各発光領域ごと順次点灯して、巻上げ動作を表現する。
点滅4:帯状光表示部18(又は、帯状光表示部19)が発光領域18c,18b,18a(又は、19c,19b,19a)の順で、各発光領域ごと順次点灯して、釣糸繰出し動作を表現する。
【0029】
・テーブルNo001は、電源の接続により点灯する発光モードである。
即ち、電源(船からの外部電源又はバッテリー)が電動リール1に接続された際に、帯状光表示部18,19の全発光領域が点灯する。その際に、最初のうちの短時間、例えば10秒程度は、各発光領域による区分発光により、電源の供給レベルを表示する。例えば、3つの発光領域のうち、既定電圧値(例えば、12V以上)を満たしたものは、全発光領域18a,18b,18c(19a,19b,19c)が点灯し、駆動に不足した電圧値であれば、発光領域18c,19cのみが点灯する。さらに、駆動不可な電圧値であれば、発光領域18c,19cを点滅させた後、消灯させてもよい。
【0030】
・テーブルNo002は、後述する自動棚取りの表示を示唆する発光モード(点滅1)である。電動リール1から引き出された釣糸量(釣糸の長さ)が棚(距離の設定値)として設定されており、その設定値に近づくと、点灯時間が徐々に変化する点滅を行う発光形態である。
【0031】
例えば、直前の釣行において、棚が50mに設定されていた場合、釣糸がスプール3から引き出されて、50mに近づくと、その手前(例えば、5m手前)から帯状光表示部18が点灯から点滅に変化して、50mに近づくほど点滅が速くなり、50mで一端消灯し、50mを過ぎると、再度、速い点滅から徐々に遅くなる点滅に変化する。帯状光表示部18が消灯した時点でクラッチONボタン13を押下する、又は手動ハンドル7を回してクラッチを繋いでスプール3を停止させると、前回と同じ距離の海面からの棚取りが完了する。つまり、表示画面に表示される釣糸カウント値や棚設定表示を見なくとも前回の棚で停止させている。
【0032】
尚、海底からの棚取りの場合には、設定された棚は通り過ぎているため、底着時は点灯状態となっている。しかし、海底から釣糸の巻上げにより、棚の設定値に近づくと、点滅が開始され、設定された棚位置で帯状光表示部18が一旦、消灯する。この消灯時で巻上げ動作を停止すれば、棚取りが完了する。その後、消灯が点灯に切り換えられて、その点灯状態を保持する。尚、コマセ釣り等では、帯状光表示部18が消灯してから数メートル釣糸が繰出された後、巻上げて棚取りする場合もあるが、底からの棚取りと同様である。この時のクラッチの繋ぎ位置は、点滅の変化状態を利用してもよい。例えば、点滅から点灯に戻る位置が5m行き過ぎた位置であることを利用する。
【0033】
本実施形態の発光モードにおいては、帯状光表示部18のみが棚取り発光モード(点滅1)であり、帯状光表示部19は、後述する釣糸繰出し発光モードが設定されていた場合には、後述する点滅3の発光を行う。釣糸繰出し発光モードが設定されていない場合には、帯状光表示部19は点灯状態を維持してもよいし、棚取り発光モード(点滅1)の発光のいずれであってもよい。
【0034】
・テーブルNo003は、後述する手動棚取りの表示を示唆する発光モードであり、自動棚取りの発光モードと同一である。この発光モードにおいては、自動棚取りの発光モードと区別するために、帯状光表示部19のみが棚取り発光モード(点滅1)となり、前述したと同様に、帯状光表示部18が点灯状態又は、点滅3の発光を行う。
【0035】
・テーブルNo004は、後述する自動釣行経過時間の表示を示唆する発光モードである。前述した釣糸の棚取りが完了すると、タイマカウンタ31が計時を開始する。このとき、帯状光表示部18,19の全発光領域が点灯状態となっている。タイマカウンタのカウント値が設定されている前回の釣行時の経過時間を超過したときに、全発光領域が点滅状態となる。この点滅表示は、付けえさの交換を示唆し、コマセ釣りであれば、ユーザにコマセの交換タイミングを示唆する。
【0036】
・テーブルNo005は、後述する手動釣行経過時間の表示を示唆する発光モードであり、自動釣行経過時間の表示の発光モードと同一である。但し、自動釣行経過時間の設定と区別するために、帯状光表示部19のみが点滅して経過時間の設定超過を示唆し、帯状光表示部18は点灯状態を維持する。
【0037】
・テーブルNo006は、釣糸の巻上げ状態を示唆する発光モードである。
ユーザがスプール3の上方に設けられた操作スイッチ11を操作して、又はハンドル7を回転させて、釣糸の巻上げを開始すると、点灯していた帯状光表示部18の各発光領域18a,18b,18cが巻上げを示唆する区分発光を行う。即ち、3つの発光領域が18a、18b、18cの順で1つずつ発光領域が移動するように繰り返し発光する。従って、ユーザの目には、リール本体の前側(竿側)から手元側(プーリ側)に光が流れ込むように表示されるため、ユーザが巻上げ動作を視認できる。
【0038】
さらに、スプールの回転速度(巻上げ速度)と、発光する発光領域の移動速度を関連づけて可変させることにより、光の移動速度で巻上げ速度を表現することも容易に実現できる。尚、巻上げが完了して、スプール3が停止した後は、点滅状態から点灯状態に変化する。手動設定時の帯状光表示部19においても同等の表示を行う。
【0039】
この発光モードにおいては、自動棚取り及び自動釣行経過時間の発光モードが設定されていた場合、いずれも帯状光表示部18が点滅による示唆を行い、帯状光表示部19は、点灯状態となる。反対に、手動棚取り及び手動釣行経過時間の発光モードが設定されていた場合、帯状光表示部19が点滅による示唆を行い、帯状光表示部18は、点灯状態となる。
【0040】
・テーブルNo007は、釣糸の繰出し状態を示唆する発光モードである。
釣行を開始する際に、クラッチOFFレバー14を押し下げてクラッチを切ると、フリー状態となったスプール3から釣糸が引き出されて、釣糸の繰出しが開始する。この時、点灯していた帯状光表示部19の各発光領域19c,19b,19aが繰出しを示唆する点滅4の区分発光を行う。即ち、3つの発光領域19c,19b,19aの順で1つの発光領域のみが繰り返し発光する。
【0041】
従って、ユーザの目には、リール本体の手元側(プーリ側)から前側(竿側)に光が流れ出るように表示されるため、ユーザが繰出し動作を視認できる。尚、ハンドル7を回転させてクラッチを入れ、スプール3を停止させた場合又は、仕掛けが着底して、スプール3が停止した後は、点滅3から点灯状態に変化する。手動設定時の帯状光表示部19においても同等の表示を行う。
【0042】
図7に示すフローチャートを参照して、電動リールの主動作について説明する。
まず、電動リール1に電源(携帯バッテリー)を接続すると(ステップS1)、電動リールの各構成部が起動して初期化が行われると共に、帯状光表示部18,19の全発光領域が点灯する(ステップS2)。この点灯時に、最初の例えば10秒程度は、各発光領域による区分発光により、電源の供給レベルを表示する。
【0043】
次に、ユーザによりメニュー表示を選択され、設定条件の変更が指示されたか否かを判断する(ステップS3)。この判断で、メニュー表示が選択された場合には(YES)、その設定項目が表示され、指示された内容に設定変更される(ステップS4)。メニュー表示が選択されなかった場合には(NO)、そのまま、表示画面9aが釣行モードの表示に移行する(ステップS5)。ここで、釣行モードの表示とは、少なくとも繰出された釣糸量(距離表示)、電源の供給状態(又は、バッテリー残量)、巻上げ速度表示等が表示されている。釣行を行った後、電源をOFFして釣行の終了が指示されたか否か判断し(ステップS6)、釣行の終了が指示(電源ケーブルを外す)された場合には、電源OFFとなる。
【0044】
次に、図8に示すフローチャートを参照して、本実施形態における自動棚取りの発光モードについて説明する。
まず、表示画面9aに表示されたメニュー画面にて、自動棚取りの発光モードを選択すると、以前に行った釣行の棚設定値がクリアされて、初期設定される(ステップS11)。次に、直前の棚設定値(第1のパラメータ)の有無を判断する(ステップS12)。このステップS12において、今回の釣行における初回の釣行時には、釣行の棚設定値は設定されていない。
【0045】
釣行を開始するために、クラッチOFFレバー14を押し下げてクラッチが切られると、フリー状態となったスプール3から釣糸が引き出される。この時、釣糸の繰出しが開始されたか否か判断する(ステップS13)。次に、ハンドル7等の回転によりクラッチがONされて、釣糸の繰出しが停止した後、タイマカウンタ31によるカウントが開始される(ステップS14)。その後、カウントされた時間が予め設定された設定時間を超過したか否かを判断し(ステップS15)、超過した際に、棚取りが終了したものと見なして、発光制御部33の図示しないメモリに仮の棚設定値として一時的に記憶する(ステップS16)。
【0046】
次に、釣行の継続により、表示画面9aに表示された繰り出された釣糸量(距離カウント値)の数値に変更があったか否かを判断し(ステップS18)、変更があった場合には(YES)、ステップS16に移行して、発光制御部33のメモリに棚設定値を再設定する。その後、操作スイッチ11又はハンドル7の回転により、釣糸の巻上げ動作が開始されたか否かを判断する(ステップS18)。この巻上げ開始の判断は、例えば、連続的に設定された距離(例えば、棚設定値の半分の距離)が巻上げられた場合には、巻上げ動作が行われていると判断し(YES)、直前に発光制御部33のメモリに設定されている直前の棚設定値(最新の棚設定値)を設定テーブルに第1のパラメータとして書き込み、テーブルの更新を行う(ステップS19)。ここでの釣糸の巻上げは、繰出された釣糸をスプール3に完全に巻戻すことを示唆する。釣糸の巻上げが継続され(ステップS20)、釣糸の巻上げが完了した場合には、ステップS12に戻る。
【0047】
2回目以降の釣行においては、ステップS12において、直前の棚設定値があるか否かを判断し、棚設定値があった場合に(YES)、釣糸が繰出されたか否かを判断し(ステップS21)、釣糸が繰出されたならば(YES)、前述したテーブルNo002の自動棚取りを示唆する発光モード(点滅1)による光表示を行う。
【0048】
尚、手動棚取りの発光モードの場合は、ステップS11,S12,S21,S22及びS30のステップによるルーチンとなり、初期設定の時に棚設定値を入力させて設定終了後、釣糸の繰出しを検出して、棚取り発光モードにより、棚を光表示により示唆することが釣行毎に繰り返し行われる。
【0049】
次に、図9に示すフローチャートを参照して、本実施形態における自動釣行経過時間発光モードについて説明する。
まず、表示画面9aに表示されたメニュー画面にて、自動釣行経過時間の発光モードを選択すると、以前に設定された釣行経過時間がクリアされて、初期設定される(ステップS31)。次に、直前の釣行経過時間の設定値の有無を判断する(ステップS32)。このステップS32において、今回の釣行における初回の釣行時には、釣行経過時間は設定されていない。
【0050】
次に、棚取りが完了する(ステップS33)と共に、タイムカウンタ31のカウントが開始される(ステップS34)。その後、釣糸の巻上げ動作があったか否か判断する(ステップS35)。巻上げ動作の有無は、前述したステップS18と同等でよい。巻上げ動作があった場合には(YES)、カウント開始から釣糸の巻上げ動作が指示されるまでの時間を、直前の釣行経過時間(第2のパラメータ)の設定値として、設定テーブル32に記憶し(ステップS36)、ステップS32に戻る。
【0051】
次に、ステップS32において、2回目以降の釣行については、直前の釣行経過時間の設定値があり(YES)、棚取りが完了する(ステップS37)と、タイムカウンタ31のカウントが開始される(ステップS38)。次に、カウントされた時間が設定された直前の釣行経過時間を超過したか否かを判断する(ステップS39)。設定された経過時間を超過した時に(YES)、帯状光表示部18,19の全発光領域が点灯状態から点滅状態(点滅2)となる。
【0052】
尚、棚取り完了の判断は、例えば、スプールが停止してからの計時により判断する。リール製作時において、例えば、スプール停止後30秒間と設定する。このように設定した場合、スプール3が停止して30秒が経過した後、タンマカウンタ31が30秒からカウントを開始する。尚、この設定時間は、設計時に設定されるが、パラメータ変更メニューを作成して、ユーザによる変更可能であってもよい。
【0053】
以上説明した本実施形態は、以下の効果を有している。
リール本体の外装部の周囲表面に連続する帯状又は不連続な帯状に点灯発光させているため、どのような視角から見てもリール本体の輪郭を視認することができる。よって、釣りを準備している夜明け前や日没後の片付け時や夜釣りなど、周囲が暗い状況下で、視認性の良さからリール本体の大きさ(輪郭)が把握でき、不慮に錘や重量のある物品等をぶつけることを防止できる。
【0054】
また、液晶パネルの表示面積を大きくして照明光でより明るくしたとしてもリール本体の側方からは視認し難く、ユーザが必要とする情報は原則として、数値表示又は、インジケータ表示であるため、表示画面から読み取らなければならない。
これに対して、本実施形態の多機能表示装置は、リール本体の外装部の周囲表面に露呈する帯状に配置した光表示部であるため、一目にて、リールの動作状況を把握でき、液晶パネルの表示を読み取る必要がないため、周囲が暗い又は、表示画面が見づらい場合など、特に有用である。
【0055】
また、棚設定及び釣行経過時間の設定を自動設定として、且つ直前の棚及び釣行時間へ自動的に更新されて設定されるため、従来のユーザによるその都度、最新情報に変更する煩雑な手間が無くなり、釣行に専念することができる。また、前回の魚が釣れた棚を思い出さなくとも、直前の情報が引き継がれているため、リール本体を見ているだけで、同じ棚に再度設定することができる。特に、数値として確認及び記憶する必要が無いため、道糸ライン色や液晶パネルの表示画面が見づらい状況にあっても、容易に棚取りを設定することができる。
【0056】
さらに、釣り初心者や児童等に教える場合に、最初に指導者がその電動リールを用いて釣りをするところを見せるだけで、その場の状況に合った棚取りや釣行時間が設定できるため、以降は、数値で説明しなくとも光の動きでリールの動作や釣りの状況を明確に指示することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…電動リール、2…リール本体、3…スプール、4…駆動機構、5…外装部、5a,5b…側面カバー、5c…前面カバー、6…クラッチ機構、7…手動ハンドル、8…ドラグ調整用ノブ、9…液晶表示部、9a…表示画面、10…操作ボタン、11…操作スイッチ、12…窓(開口領域)、13…クラッチONボタン(クラッチON切換部材)、14…クラッチOFFレバー(クラッチOFF切換部材)、15…制御ケース、15a…表面カバー、16…レベルワインド機構、17…竿取付部、18,19…帯状光表示部、18a,18b,18c,19a,19b,19c…発光領域、20…フレーム、21…ROM、22…RAM、23…制御部、24…糸長計測部、25…多機能表示装置、31…タイマカウンタ、32…設定テーブル、33…発光制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚釣用電動リールに設けられた外装部材と、
前記外装部材の表面上に露呈する、連続で複数に区分された発光領域が帯状に発光する帯状発光部と、
前記区分された発光領域毎に、前記魚釣用電動リールの動作状態に応じて、前記発光領域が帯状となって、それぞれに点灯又は点滅による異なる発光形態を成すように発光制御する発光制御部と、
を具備することを特徴とする魚釣用電動リールの多機能表示装置。
【請求項2】
前記多機能表示装置において、
前記発光制御部による前記発光形態を予めパターン化して記憶する設定テーブルを有することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用電動リールの多機能表示装置。
【請求項3】
前記多機能表示装置において、
前記帯状発光部は、前記外装部材の前面に設けられた釣糸を巻上げるための開口の脇から斜め側面を経て、該外装部材の上面後方に至る配置に構成され、前記魚釣用電動リールの輪郭を帯状の光で表示することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用電動リールの多機能表示装置。
【請求項4】
前記多機能表示装置において、
前記設定テーブルに記録される複数のパラメータは、釣行を実施する毎に、少なくとも前記魚釣用電動リールにおける直前の棚設定値と、直前の釣行の経過時間に更新されることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用電動リールの多機能表示装置。
【請求項5】
前記多機能表示装置において、
前記帯状発光部は、
前記魚釣用電動リールに搭載される電子部品を収納し、一体的に構成され前記外装部材の表面に露呈する前記帯状発光部が設けられ、光束を導光する透明性を有する箱部材と、
前記箱部材内に設けられる光源と、
前記光源が照射した光束を前記箱部材内に導光し、前記帯状発光部まで透過する導光部材と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用電動リールの多機能表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−13365(P2013−13365A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148372(P2011−148372)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】