説明

鮨飯および鮨飯の製造方法

【課題】独創的な外観の鮨を作ることができると共に栄養価が高く旨みがある鮨飯およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】鮨の種12が、マグロ、カツオ、サーモンなどの赤身魚やエビである場合は、種12が呈する赤色と、鮨飯10が呈する黒色またはグレー色とのコントラストが美しく斬新であり、独創的な外観の握り鮨14を作ることができる。また、鮨の種12が、ヒラメなどの白身魚やホタテである場合においても、種12が呈する白色と鮨飯10とが呈する色とのコントラストが美しく、同様に、独創的な外観の握り鮨14を作ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独創的な外観の鮨を作ることができると共に栄養価が高く旨みがある鮨飯およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鮨は、酢が混ぜ合わせられた鮨飯に、魚介類などの種を組み合わせて作られる日本の伝統的な料理である。鮨の種の盛り付け、海苔の巻き方、包装を工夫することにより、美観を向上させるアイデアも提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−150937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、鮨飯の外観に工夫を凝らしたものは今まであまり提供されておらず、消費者の購入意欲をより喚起するためにも、鮨の美観向上に寄与する鮨飯の開発が待望されている、という問題点があった。また、鮨飯の栄養価や旨みを従来よりも高めることができば、それが付加価値となって、健康志向の消費者の需要を喚起することができる。
【0004】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、独創的な外観の鮨を作ることができると共に栄養価が高く旨みがある鮨飯およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、請求項1記載の鮨飯は、酢が混ぜ合わされた米飯がイカスミで色付けされていることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の鮨飯は、請求項1記載の鮨飯において、100重量部の米飯が、1〜5重量部のイカスミで色付けされていることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の鮨飯は、請求項1または2に記載の鮨飯において、前記米飯に、イカの身が混合されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の鮨飯は、請求項3記載の鮨飯において、前記イカの身は、前記イカスミで色付けされていることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の鮨飯は、請求項3または4に記載の鮨飯において、100重量部の米飯に対し、10〜30重量部のイカの身が混合されていることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の鮨飯の製造方法は、米飯に酢を混ぜ合わせた酢飯を準備する酢飯準備工程と、その酢飯準備工程により準備された酢飯に、イカスミを混ぜ合わせるイカスミ合わせ工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の鮨飯によれば、酢が混ぜ合わされた米飯がイカスミで色付けされているので、酢飯が黒色またはグレー色に色付けされる。よって、このような鮨飯を利用して、独創的な外観の鮨を作ることができるという効果がある。また、イカスミは栄養価に優れると共に旨みの元となるアミノ酸を豊富に含むため、イカスミを含まない従来の鮨飯に比較して、栄養価が高く旨みのある鮨飯を提供することができるという効果がある。
【0012】
なお、請求項1記載の鮨飯は、酢を米飯に混ぜ合わせた後にイカスミで色付けすることにより製造されても良いが、イカスミで色付けするのと同時、あるいはイカスミで色付けした後に米飯に酢を混ぜ合わせることにより製造されても良い。また、イカスミで米飯を色付けするためには、米飯にイカスミを混ぜ合わせて絡めることとしても良いし、イカスミを混合した水で米を炊くことにより、米飯をイカスミで色付けしても良い。
【0013】
請求項2記載の鮨飯によれば、請求項1記載の鮨飯の奏する効果に加え、100重量部の米飯を色付けするイカスミを1重量部以上とすることにより、鮨飯全体を黒色またはグレー色に色むら無く色付けすることができるという効果がある。また、100重量部の米飯を色付けするイカスミを5重量部以下とすることにより、過剰なイカスミが垂れ下がって、皿や手、衣服などを汚すことを抑制できるという効果がある。
【0014】
請求項3記載の鮨飯によれば、請求項1または2に記載の鮨飯の奏する効果に加え、前記米飯に、イカの身が混合されているので、イカが含有する水分が鮨飯の乾燥を抑制すると共に、鮨飯に適度な光沢を付与し、鮨飯の見た目および食感を良好に保つことができるという効果がある。乾燥により粉状となるイカスミを絡めた米飯は、通常の米飯に比較して乾燥し易いため、イカの身を混合することにより得られる乾燥抑制、光沢付与の効果は極めて大である。
【0015】
請求項4記載の鮨飯によれば、請求項3記載の鮨飯の奏する効果に加え、イカの身はイカスミで色付けされているので、米飯に混在されたイカの身を米飯と同じ色合いに色付けすることができ、鮨飯に混ぜられているイカの身を目立たなくすることができるという効果がある。
【0016】
請求項5記載の鮨飯によれば、請求項3または4に記載の鮨飯の奏する効果に加え、100重量部の米飯に対して混合するイカの身を10重量部以上とすることにより、鮨飯の乾燥を好適に抑制し、適度な光沢を付与できるという効果がある。また、100重量部の米飯に対して混合するイカの身を30重量部以下とすることにより、米飯の味わいが保たれ、鮨飯を食する者に違和感を与えることを抑制できるという効果がある。
【0017】
請求項6記載の鮨飯の製造方法によれば、酢飯を準備するという従来から行われている工程の後、必要な分量の酢飯をイカスミで色付けすることができる。したがって、作業工程の増加を抑制することができるという効果がある。また、必要な量の酢飯だけをイカスミで色付けすることができるので、色付けした鮨飯が多すぎて余ることを抑制できるという効果がある。また、炊飯器の釜がイカスミによって汚れることを防止することができるという効果がある。すなわち、米飯をイカスミで色付けするために、例えば、米をイカスミ共に炊き込めば良いが、そのようにすると炊飯器の釜がイカスミで汚れ、次に炊く米飯に色を残さないために、釜を入念に洗わなければならなくなるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態の鮨飯10の外観図であり、図1(b)は、鮨飯10の上に鮨の種12を載せて作られる握り鮨14の外観図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の鮨飯10は、成型器や作業者の手によって俵型に成形されている。鮨飯10を構成する米飯は、酢が混ぜ合わされると共にイカスミで色付けされることにより、黒色またはグレー色に色付けされている。イカスミは栄養価に優れると共にアミノ酸を豊富に含むため、栄養価が高く旨みのある鮨飯10を提供することができる。なお、鮨飯10を構成する米飯には、細切れにしたイカの身が混合されているが、詳細は図2を参照して説明する。
【0020】
鮨の種12は、俵型に成形された鮨飯10の上に載置される魚介類の切り身や卵焼きなどの具である。鮨の種12が、マグロ、カツオ、サーモンなどの赤身魚やエビである場合は、種12が呈する赤色と、鮨飯10が呈する黒色またはグレー色とのコントラストが美しく斬新であり、独創的な外観の握り鮨14を作ることができる。また、鮨の種12が、白身魚やホタテである場合においても、種12が呈する白色と鮨飯10とが呈する色とのコントラストが美しく、同様に、独創的な外観の握り鮨14を作ることができる。
【0021】
次に、図2を参照して、鮨飯10の製造方法について説明する。図2は、鮨飯10の製造工程を説明する図である。
【0022】
まず、昆布などの出し汁で米飯15を炊き、図2(a)に示すように、酢を含む調味料16を米飯15に混ぜ合わせて酢飯を準備する(酢飯準備工程)。調味料16を混ぜ合わせた後の米飯15を、以下、酢飯17と称する。なお、調味料16は、塩、砂糖、みりん、生姜などを食酢に加えて調合される、いわゆる合わせ酢である。
【0023】
この工程で準備した酢飯17は、イカスミで色付けしない通常の鮨飯として利用することができる。よって、準備した酢飯17から、イカスミで着色する分を別途取り分け、以降の工程で処理するとよい。このように、色付けしない通常の鮨飯と、色付けした鮨飯10との製造工程を一部共通化し、同時に準備を進めれば、作業効率が良い。
【0024】
次に、図2(b)に示すように、イカの身18を酢飯17に投入して混合し、酢飯17にイカの身18を分散させる。ここで、イカの身18は、生のイカ20を細切れにしたものである。イカの身18を混合することにより、イカが含有する水分が鮨飯10(図1参照)の乾燥を抑制すると共に、鮨飯10に適度な光沢を付与し、鮨飯10の見た目および食感を良好に保つことができる。後述するイカスミ合わせ工程では、酢飯17にイカスミ22を混ぜ合わせるのであるが、イカスミ22は、乾燥すると粉状になって米飯を乾燥し易くする。よって、イカの身18を混ぜ合わせることにより、乾燥を抑制することの効果が大きいのである。
【0025】
好適には、酢飯17に混ぜ合わされるイカの身18の1つ1つが、米飯1粒と同程度の大きさとなるように、生のイカ20が切断される。このようにすれば、米飯15に混ぜられているイカの身18を目立たなくすることができ、鮨飯10を食する者に違和感を抱かせない。なお、作業者の技量によってはイカの身18の大きさにばらつきが生じる場合があるが、イカの身18を目立たなくさせるためには、少なくとも、イカの身18の1つ1つの大きさが、米飯1粒の体積の3倍以下の大きさまで細切れにされていると良い。また、図2(b)において、イカの身18の最適な大きさを正確に図示すると図面が見難くなるため、図2(b)において、イカの身18と米飯との大小関係は正確には図示していない。
【0026】
次に、図2(c)に示すように、酢飯17にイカスミ22を混ぜ合わせる(イカスミ合わせ工程)。これにより、酢飯17を黒色またはグレーに色づけすることができる。イカの身18を混合した後にイカスミ22を混ぜ合わせることにより、酢飯17に混在させたイカの身18を酢飯17と同じイカスミ22で同様の色合いに色づけすることができるので、鮨飯10に混ぜられているイカの身18を目立たなくすることができる。
【0027】
本実施形態の鮨飯10の製造方法によれば、酢飯17を準備する工程の後、必要な分量の酢飯17をイカスミ22で色付けすることができる。したがって、従来の鮨飯10に比較しても、作業工程をそれほど増やすことがない。また、必要な量の酢飯10だけをイカスミで色付けすることができるので、色付けした鮨飯が多すぎて余る、という事態を回避することができる。また、炊飯器の釜がイカスミによって汚れることを防止することができる。
【0028】
次に、イカスミ22およびイカの身18の好適な分量について説明する。以下の説明では、調味料16を混ぜ合わせる前の米飯15の分量を基準とし、その米飯15の分量に対するイカスミ22とイカの身18の適量を説明する。
【0029】
本発明者は、鋭意検討の結果、鮨飯10を作る際には、100重量部の米飯15を、1〜5重量部のイカスミで色付けすると良いことを見いだした。100重量部の米飯15を色付けするイカスミを1重量部以上とすることにより、鮨飯10全体を黒色またはグレー色に、色むら無く色付けすることができる。また、100重量部の米飯15を色付けするイカスミを5重量部以下とすることにより、過剰なイカスミが垂れ下がって、皿や手、衣服などを汚すことを抑制することができる。
【0030】
さらに好適には、100重量部の米飯15を色付けするイカスミ22を、1.5〜3重量部とすると良い。このようにすれば、米飯15に後述する分量のイカの身18を混合した場合であっても、米飯15およびイカの身18の色むらを防止しつつ、イカスミ22の使用量を抑制し、材料コストを抑制することができる。
【0031】
次に、イカの身18の分量について説明する。本発明者は、鋭意検討の結果、100重量部の米飯15に対し、10〜30重量部のイカの身18を混合すると良いことを見いだした。100重量部の米飯15に対して混合するイカの身18を10重量部以上とすることにより、鮨飯10の乾燥を好適に抑制することができ鮨飯に適度な光沢を付与することができる。また、100重量部の米飯15に対して混合するイカの身18を30重量部以下とすることにより、米飯15の味わいが保たれ、握り鮨14(図1(b)参照)を食する者に違和感を与えることを抑制できる。
【0032】
また、さらに好適には、100重量部の米飯10に対し、15〜25重量部のイカの身18を混合すると良い。このようにすれば、鮨飯10の乾燥を防止し光沢を付与することができると共に、材料コストを抑制することができる。
【0033】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0034】
例えば、上記実施形態では、鮨飯10が俵型に成形されるものとして説明したが、円筒状など他の形状に成形されても良く、また成形されずに用いられても良い。鮨飯10を円筒状に成形したものは、巻き鮨として利用することができ、鮨飯10を成形しない場合には、ちらし鮨用の鮨飯として利用可能である。
【0035】
また、握り鮨、ちらし鮨、巻き鮨以外にも、押し鮨や稲荷鮨など、他の種類の鮨についても、本実施形態の鮨飯10は利用可能である。すなわち、鮨飯10は、どのような種類の鮨にも利用することができ、上記実施形態の握り鮨14と同様に、独創的な外観の鮨を作ることができる。
【0036】
また、上記実施形態では、生のイカ20を細切れにしたイカの身18が鮨飯10に混合されているものとして説明したが、ゆでるまたは焼くことにより調理されたイカの身が鮨飯10に混合されても良い。このようにすれば、鮨飯10の腐敗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態の鮨飯の外観図であり、(b)は、鮨飯の上に鮨の種を載せて作られる握り鮨の外観図である。
【図2】鮨飯の製造工程を説明する図である。
【符号の説明】
【0038】
10 鮨飯
15 米飯
17 酢飯
18 イカの身
22 イカスミ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢が混ぜ合わされた米飯がイカスミで色付けされていることを特徴とする鮨飯。
【請求項2】
100重量部の米飯が、1〜5重量部のイカスミで色付けされていることを特徴とする請求項1記載の鮨飯。
【請求項3】
前記米飯に、イカの身が混合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の鮨飯。
【請求項4】
前記イカの身は、前記イカスミで色付けされていることを特徴とする請求項3記載の鮨飯。
【請求項5】
100重量部の米飯に対し、10〜30重量部のイカの身が混合されていることを特徴とする請求項3または4に記載の鮨飯。
【請求項6】
米飯に酢を混ぜ合わせた酢飯を準備する酢飯準備工程と、
その酢飯準備工程により準備された酢飯に、イカスミを混ぜ合わせるイカスミ合わせ工程とを含むことを特徴とする鮨飯の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−22225(P2010−22225A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184729(P2008−184729)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(500318324)株式会社チアフル (1)
【Fターム(参考)】