説明

齧歯類忌避剤およびこれを用いた齧歯類の忌避方法

【課題】 鼠等の齧歯類に対して十分な忌避効果を発揮し、しかもその効果の持続性にも優れた齧歯類忌避剤と、これを用いた忌避方法とを提供する。
【解決手段】 本発明の齧歯類忌避剤は、有効成分として、2個又は3個の窒素原子を骨格内に有する複素環(A)、N−N単結合(B)およびアゾ基(C)からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する含窒素化合物、好ましくは、メトキサジアゾン、ピラゾロンオレンジ、アゾベンゼンおよびアゾジカルボンアミドからなる群より選ばれる化合物を含む。齧歯類の忌避方法は、前記本発明の齧歯類忌避剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼠等の齧歯類に対して有効な忌避剤、および該忌避剤を用いる忌避方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鼠、兎、鹿、イタチ、スカンク等の齧歯類は、農作物、花卉、食物等を加害する。そこで、従来から、ハッカ油、カプサイシン等を用いて齧歯類を忌避することで、その被害を防ぐ試みがなされていた。また、これらのほかにも、鼠に対する忌避剤としてニンニク精油が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、これら従来の忌避剤には、忌避効果が不十分であったり、その効果に持続性がないという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開平7−285821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、鼠等の齧歯類に対して十分な忌避効果を発揮し、しかもその効果の持続性にも優れた齧歯類忌避剤と、これを用いた忌避方法とを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の齧歯類忌避剤は、有効成分として、2個又は3個の窒素原子を骨格内に有する複素環(A)、N−N単結合(B)およびアゾ基(C)からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する含窒素化合物を含む、ことを特徴とする。
上記構成において、前記複素環(A)は、ピラゾール環、ピラゾリジン環、ピラゾリン環、ピラゾリジノン環、ピラゾロン環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、オキサジアゾリジン環、オキサジアゾリジノン環、トリアゾール環からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。また、前記アゾ基(C)は、ナフチルアゾ基、フェニルアゾ基、トリルアゾ基、ビスアゾ基、クミルアゾ基、キシリルアゾ基およびアニシルアゾ基からなる群より選ばれるいずれかであることが望ましい。また、前記含窒素化合物は、メトキサジアゾン、ピラゾロンオレンジ、アゾベンゼンおよびアゾジカルボンアミドからなる群より選ばれるものであることが望ましい。
【0006】
本発明の齧歯類の忌避方法は、前記本発明の齧歯類忌避剤を用いることを特徴とする。上記構成において、前記齧歯類忌避剤は、撒布、噴霧(エアゾール、全量噴射エアゾールなど)、塗布、加熱蒸散、送風式揮散またはくん煙のいずれかの手段で用いることが望ましい。また、上記構成においては、適用場所1〜10m2当たりの有効成分量が1〜20gとなる量の齧歯類忌避剤を用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鼠等の齧歯類に対して十分な忌避効果を発揮し、その効果の持続性にも優れた忌避剤を提供することができる。これにより、長期にわたり、より確実に鼠等の齧歯類を忌避することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の齧歯類忌避剤は、2個又は3個の窒素原子を骨格内に有する複素環(A)、N−N単結合(B)およびアゾ基(C)からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する含窒素化合物(以下「特定含窒素化合物」と称することもある)を必須の有効成分として含むものである。詳しくは、この特定含窒素化合物は、少なくとも2個の窒素原子を有するものであり、このような含窒素構造によって、齧歯類に対する優れた忌避効果を発揮する。なお、必須有効成分とする特定含窒素化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0009】
前記複素環(A)は、例えば、ピラゾール環(下記構造式(a1))、ピラゾリジン環(下記構造式(a2))、ピラゾリン環(下記構造式(a3))、ピラゾリジノン環(下記構造式(a4))、ピラゾロン環(下記構造式(a5))、イミダゾール環(下記構造式(a6))、オキサジアゾール環(下記構造式(a7))、オキサジアゾリジン環(下記構造式(a8))、オキサジアゾリジノン環(下記構造式(a9))、トリアゾール環(下記構造式(a10))からなる群より選ばれる少なくとも1種の複素5員環であることが好ましく、より好ましくは、オキサジアゾリジノン環またはピラゾロン環であるのがよい。
【0010】
【化1】

【0011】
前記N−N単結合(B)は、例えば、下記一般式(b)に示すような構造に含まれる結合であることが好ましい。この式(b)中、R1〜R4は、各々同じであってもよいし異なっていてもよく、例えば、水素原子、各種有機基(具体的には、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基等の炭化水素基等)が挙げられる。より好ましくは、前記N−N単結合(B)は、ヒドラジ基やヒドラゾ基に含まれる結合であるのがよい。
【0012】
【化2】

【0013】
前記アゾ基(C)は、N原子とN原子とが二重結合したものであり、下記一般式(c)に示すような構造に含まれていることが好ましい。この式(c)中、R5、R6は、各々同じであってもよいし異なっていてもよく、例えば、水素原子、各種有機基(具体的には、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基等の炭化水素基等)が挙げられる。前記アゾ基(C)としては、具体的には、例えば、ナフチルアゾ基、フェニルアゾ基、トリルアゾ基、ビスアゾ基、クミルアゾ基、キシリルアゾ基およびアニシルアゾ基からなる群より選ばれるいずれかが好ましく挙げられる。ここで挙げたアゾ基は一般的なアゾ色素に含まれており、アゾ色素(例えば、後述するもの)は特定含窒素化合物として好適に用いることができる。
【0014】
【化3】

【0015】
前記特定含窒素化合物の具体例としては、例えば、
前記2個又は3個の窒素原子を骨格内に有する複素環(A)を有するものとして、メトキサジアゾン(下記構造式(I))やピラゾロンオレンジ(下記構造式(II))等;
前記N−N単結合(B)を有するものとして、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、ヒドラゾベンゼン等;
前記アゾ基(C)を有するものとして、アゾベンゼン(下記構造式(III))、アゾジカルボンアミド(下記構造式(IV))、アゾビスイソブチロニトリル、各種アゾ色素(アマランス、ニューコクシン、サンセットイエロー、リソールルビンB、リソールルビン、レーキレッド、レーキレッドCBA、リソールレッド、リソールレッドCA、リソールレッドBA、リソールレッドSR、ブリリアントレーキレッドR、デイープマルーン、トルイジンレッド、スダンIII、パーマトンレッド、パーマネントオレンジ、ベンチジンオレンジG、オレンジII、レゾルシンブラウン、ブリリアントファストスカーレット、パーマネントレッドF5R、スカーレットレッドN.F、ポンソー3R、ポンソーR、ポンソーSX、オイルレッドXO、ファストレッドS、ハンザオレンジ、オレンジI、オレンジSS、ハンザイエロー、ポーライエロー5G、イエローAB、イエローOB、メタニルイエロー、ファストライトイエロー3G、ナフトールブルーブラックなど)等;が挙げられる。なお、前記特定含窒素化合物は、例えば複素環(A)であるピラゾロン環とアゾ基(C)の両方を有するピラゾロンオレンジのように、前記含窒素構造を2種以上有する化合物であってもよい。
【0016】
【化4】

【0017】
前記特定含窒素化合物としては、上述した具体例のなかでも特に、構造式(I)〜(IV)で示した、メトキサジアゾン、ピラゾロンオレンジ、アゾベンゼンおよびアゾジカルボンアミドからなる群より選ばれるものが、高い忌避効果を発揮する点で好ましい。
【0018】
本発明の齧歯類忌避剤においては、上記に例示した特定含窒素化合物のほかに、例えば、以下に挙げる化合物の1種又は2種以上を有効成分として用いてもよい。すなわち、イミダゾール系化合物(チアペンダゾール、イプロジオン、オキスポコナゾールフマル酸塩など)、テフルベンズロン、フルフェノクスロン、ヘキサフルムロン、クロルフルアズロン、ジフルベンズロン、チオジカルブ、ベンフラカルブ、アラニルカルブ、フラチオカルブ、アセタミプリド、フラメトピル、ネオニコチノイド系化合物(イミダクロプリド、MTI−446、チアメトキサムなど)、メチダチオン、ピラクロフォス、シロマジン、エチプロール、トルフェンピラド、ジアクロデン、フェンプロキシメート、インドキサカルブ、フィプロニル、テブフェンピラド、ピリダベン、ピリミジフェン、クロフェンテジン、フルアクリピリム、酒石酸モランテイル、ベノミル、トリフルミゾール、プロクロラズ、ペフラゾエート、トリアジメホン、ピテルタノール、フェンブコナゾール、ミクロブタニル、ヘキサコナゾール、テブコナゾール、プロピコナゾール、ジフェノコナゾール、イプコナゾール、イミベンコナゾール、シプロコナゾール、テトラコナゾール、シメコナゾール、エクロメゾール、シアゾファミド等を有効成分とすることができる。
【0019】
本発明の齧歯類忌避剤の剤型は、有効成分とする化合物の物性等に応じて、適宜設計すればよく、特に限定されないが、例えば、前記有効成分を、溶媒(液体担体)に溶解乃至分散させたり、固体担体と混合したり、固体担体に吸着又は含浸させるなどして、製剤化すればよい。勿論、前記有効成分を単独で用いて製剤化することもできる。
本発明の齧歯類忌避剤に適用することのできる剤型の具体例としては、例えば、噴霧剤、噴射剤を使用して噴霧するエアゾール剤、ポンプ剤、塗布剤、加熱蒸散用、送風式揮散用もしくはくん煙用等のマット(シート)剤、テープ剤、ハニカム剤、液剤、粉剤、顆粒剤等が挙げられる。
【0020】
前記溶媒としては、一般的には、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、グリコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ヘキサン、ケロシン、パラフィン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、灯油等が使用できる。これら溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記固体担体としては、一般的には、例えば、カオリン、タルク、ベントナイト、クレー、珪藻土、炭酸カルシウム、シリカ、ゼオライト等の鉱物質又は無機質粉末、木粉、大豆粉、小麦粉、澱粉粉等の植物質粉末、パルプ、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリブタジエン等のプラスチック、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、繊維又はゴムの粉末、樟脳、ナフタレン、パラジクロロベンゼン、トリイソプロピル−S−トリオキサン、シクロドデカン、アダマンタン等の昇華性粉末等が使用できる。これら固体担体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、その形状は、一般に、簡単な構造で、通気性の大きいものが好ましく、例えば、ハニカム形状、網形状、スリット形状、格子形状、もしくは開孔を設けた紙類等の構造のものが挙げられる。
【0022】
以下に、本発明の齧歯類忌避剤の調製例を代表的な剤型別に具体的に挙げる。
(1)噴霧剤:必須の有効成分としてピラゾロンオレンジを1重量部と、その他の成分としてフェノキシエタノールを0.2重量部とを、担体であるグリコール類/水混合溶媒(プロピレングリコール/水 =10/88.8(重量比))98.8重量部に溶解乃至は分散させ、噴霧容器に収容する。
(2)噴霧剤:必須の有効成分としてメトキサジアゾンを1重量部と、その他の成分として酢酸プロピレングリコールを10重量部とを、担体であるエタノール89重量部に溶解乃至は分散させ、噴霧容器に収容する。
(3)エアゾール剤:必須の有効成分としてメトキサジアゾンを1重量部と、その他の成分として酢酸プロピレングリコールを15重量部とを、担体であるエタノール34重量部に溶解乃至は分散させ、噴射剤としてジメチルエーテルを50重量部加えて、噴射容器に充填する。
(4)エアゾール剤:必須の有効成分としてピラゾロンオレンジを2重量部と、その他の成分としてブチルパラベンを0.3重量部とを、担体であるアルコール類/水混合溶媒(エタノール/水 =28.5/21.2(重量比))49.7重量部に溶解乃至は分散させ、噴射剤としてジメチルエーテルを50重量部加えて、噴射容器に充填する。
(5)加熱蒸散用液剤:必須の有効成分としてアゾベンゼンを2重量部と、その他の成分としてBHTを0.5重量部、乳酸オクチルを19.5重量部とを、担体である灯油78重量部に溶解させ、該溶液に浸るような位置に配された吸液芯と加熱手段(例えば電気的加熱手段)を備えた容器に収容する。
(6)加熱蒸散用液剤:必須の有効成分としてメトキサジアゾンを5重量部と、その他の成分としてBHTを0.5重量部、オレイン酸を0.5重量部、脂肪酸アルミニウムを5重量部、および酢酸プロピレングリコールを25重量部とを、担体である灯油64重量部に溶解させ、若しくは担体を用いることなくそのままの状態で(すなわち、添加原体として0.01重量%の濃度で色素(緑色202号)を添加したメトキサジアゾンを使用)、加熱手段(例えば電気的加熱手段)を備えた薄型トレイに収容する。
(7)加熱蒸散用マット:必須の有効成分としてピラゾロンオレンジを2重量部と、その他の成分としてBHTを0.5重量部とを、担体であるアルコール類/水混合溶媒(エタノール/水 =25/25(重量比))50重量部に溶解させ、該溶液中に担体であるパルプマットを浸漬することにより有効成分を含浸させた後、常温で自然乾燥して、有効成分含有マットを得る。この場合、得られたマットを、加熱手段(例えば電気的加熱手段)で高温に保持した板上に載置することで、有効成分を安定して加熱蒸散させることができる。
(8)加熱蒸散用顆粒剤:必須の有効成分としてアゾベンゼンを1重量部と、その他の成分としてラウリン酸ヘキシル5重量部とを、エタノール94重量部に溶解させ、該溶液を担体であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)に噴霧することにより有効成分を含浸させた後、常温で自然乾燥して、有効成分含有顆粒を得る。この場合、得られた顆粒を、加熱手段(例えば電気的加熱手段)で高温に保持した板上に載置することで、有効成分を安定して加熱蒸散させることができる。
(9)送風式揮散用ハニカム剤:必須の有効成分としてアゾベンゼンを5重量部と、その他の成分としてラウリン酸ヘキシル25重量部とを、エタノール70重量部に溶解させ、該溶液中に担体であるハニカム状成形体(材質:紙)を浸漬することにより有効成分を含浸させた後、常温で自然乾燥して、有効成分含有ハニカム体を得る。この場合、得られたハニカム体に、駆動モータにより駆動する送風手段(ファン等)を用いて発生させた気流を当てることで、有効成分を安定して揮散させることができる。
(10)送風式揮散用顆粒剤:必須の有効成分としてメトキサジアゾンを5重量部と、その他の成分として酢酸プロピレングリコールを30重量部とを、エタノール25重量部に溶解させ、該溶液を担体であるパルプ粒に噴霧することにより有効成分を含浸させた後、常温で自然乾燥して、有効成分含有パルプ粒(顆粒)を得る。この場合、得られたパルプ粒(顆粒)に、駆動モータにより駆動する送風手段(ファン等)を用いて発生させた気流を当てることで、有効成分を安定して揮散させることができる。
(11)くん煙用顆粒剤;必須の有効成分としてピラゾロンオレンジを10重量部と、その他の成分としてアゾジカルボンアミドを87.5重量部およびヒドロキシプロピルセルロースを2.5重量部とを混合水練し、顆粒状に成形した後、常温で自然乾燥して、有効成分含有顆粒を得る。この場合、得られた顆粒をくん煙させることで、有効成分を安定して揮散させることができる。
【0023】
本発明の齧歯類忌避剤に含有させる前記有効成分(前記特定含窒素化合物)の含有量は、忌避剤の剤型等に応じて適宜決定すればよく、特に制限されない。例えば、有効成分を分散体や溶液の状態とした剤型(例えば、噴霧剤、塗布剤、加熱蒸散用、送風式揮散用もしくはくん煙用の液剤など)の場合は、有効成分を0.1〜40重量%、好ましくは1〜20重量%含有させればよく、エアゾール剤やポンプ剤の剤型とする場合には、有効成分を0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%含有させればよく、有効成分を固体の状態とした剤型(例えば、加熱蒸散用、送風式揮散用もしくはくん煙用等のマット(シート)剤、テープ剤、ハニカム剤、粉剤、顆粒剤など)の場合には、有効成分を0.01〜40重量%、好ましくは0.1〜20重量%含有させればよい。
【0024】
本発明の齧歯類忌避剤には、所望の剤型に調製する目的で、必要に応じて、塗膜形成剤、乳化剤、分散剤、展着剤、湿潤剤、安定化剤、噴射剤等の添加剤を配合することができる。これらの添加剤としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、シリコーン、アクリル樹脂、塩化ゴム、石油樹脂、メチルセルロース、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ラテックスエマルジョン等の塗膜形成剤、脂肪族モノカルボン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等の界面活性剤、カゼイン、ゼラチン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、液化石油ガス、ジメチルエーテル、フルオロカーボン、圧縮ガス等が挙げられる。また、例えば剤型をくん煙剤とする場合には、発熱物質(ニトログアニジン、ニトロセルロース等)、燃焼を促進させる酸化剤(過塩素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩等)、くん煙剤の燃焼を調整する燃焼調整剤(炭素粉末、澱粉、糖類、セルロース等)などが添加剤として配合される。これら添加剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明の齧歯類忌避剤には、さらに、必要に応じて、齧歯類防除剤、殺虫剤、腹足類防除剤、害虫忌避剤、殺菌剤、防黴剤、香料、酸化防止剤、撥水・撥油剤等を含有させることができる。例えば、ワルファリンなどの齧歯類防除剤、ピレスロイド系殺虫剤、カーバメイト系殺虫剤、有機リン系殺虫剤、フッ素系殺虫剤、昆虫成長制御剤等の殺虫剤、N,N−ジエチル−m−トルアミド、ジメチルフタレート、アミドアミン等の害虫忌避剤、メタアルデヒド等の腹足類防除剤、パラクロロメタキシレート等の殺菌剤、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、γ−オリザノール等の酸化防止剤、レモン系、ローズ系、グリーン系等の各種香料、ロウ、油脂、金属セッケン、フッ素系撥油剤等の撥水・撥油剤等の1種又は2種以上を含有させることができる。
【0026】
本発明の忌避方法は、前述した本発明の齧歯類忌避剤を用いるものである。その使用にあたっては、忌避を要求される齧歯類の生息場所や侵入食害場所、例えば、農作物自体やそれが栽培されている畑、果樹園、花卉等の生育している花壇、植木鉢及びその周囲、一般家庭や食堂等の厨房、洗面所、ベランダ、物置等に、撒布したり、噴霧したり、塗布したり、加熱蒸散や送風式揮散やくん煙などの手段で気化させるなどすればよい。さらに、別途に有効成分またはこれを含有する紙、布、樹脂、ロープ、金属線、棚、網等を前記の場所や農作物、花卉などに設置するなどしてもよい。
【0027】
本発明の忌避方法において用いる本発明の齧歯類忌避剤の適用量は、齧歯類忌避剤中の有効成分含有量、忌避剤の剤型や適用方法、適用場所等に応じて適宜決定すればよく、特に制限されないが、通常、適用場所1〜10m2当たりの有効成分量が1〜20g、好ましくは3〜10g程度となる量を目安とすればよい。
【0028】
本発明において、忌避の対象とする齧歯類としては、特に限定されないが、例えば、鼠、兎、鹿、イタチ、スカンク等の齧歯類を挙げることができる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例において本発明を具体的に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
アゾジカルボンアミド88重量部とメトキサジアゾン(3−(2−メトキシフェニル)−5−メトキシ−1,3,4−オキサジアゾール−2−オン)12重量部との混練物10gを有効成分とし、これに、ヒドロキシプロピルセルロースを2g添加し、水を加え練合し顆粒状に成形して、忌避剤を得た。
【0030】
(実施例2)
メトキサジアゾン(3−(2−メトキシフェニル)−5−メトキシ−1,3,4−オキサジアゾール−2−オン)1.0gを有効成分としたこと以外は、実施例1と同様にして、顆粒状の忌避剤を得た。
【0031】
(実施例3)
ピラゾロンオレンジ0.3gを有効成分としたこと以外は、実施例1と同様にして、顆粒状の忌避剤を得た。
【0032】
(実施例4)
アゾベンゼン0.3gを有効成分としたこと以外は、実施例1と同様にして、顆粒状の忌避剤を得た。
【0033】
(実施例5)
アゾジカルボンアミド10gを有効成分としたこと以外は、実施例1と同様にして、顆粒状の忌避剤を得た。
【0034】
(比較例1)
ペルメトリンを有効成分とし、水で発熱させる市販のくん煙式忌避剤を、比較用の忌避剤とした。
【0035】
以上の実施例1〜5および比較例1で得られた忌避剤の忌避効力を下記の試験によって評価した。
<忌避効力試験>
暗室であるA室(高さ1m×幅1m×奥行1.5m)と、300Wの照明で照射した明室であるB室(高さ0.2m×幅0.23m×奥行0.38m)とをパイプ(内径7cm、長さ50cm)で連結し、マウスが自由に両室を往復できるように形成した齧歯類忌避試験装置を用い、忌避効力試験を行った。
上記齧歯類忌避試験装置においては、マウスは次のような行動をとることを予め確認した。すなわち、通常の場合には、マウスは光を嫌う性質を持つのでB室には侵入しないが、A室で忌避剤による刺激を受けた場合には、B室側へ侵入(移動)する。しかし、A室で忌避剤による刺激を受けてB室へ移動したマウスは、B室における光を嫌がり、通常しばらくすると再びA室へ移動する。
【0036】
上記齧歯類忌避装置に7週齢のddY系マウス(雄)5頭を放し、A室において各忌避剤を使用した。そして、忌避剤の使用開始から30分間の間、各マウスのB室への出入りを観察し、B室への延べ侵入回数(すなわち、B室へ侵入したのちA室へ戻ったマウスが再度B室へ移動した場合にも同様に「1回」と計数した)と、1回の侵入におけるB室滞在時間(B室へ侵入してからA室へ戻るまでの時間)とを計測した。B室への侵入回数を滞在時間ごとに纏め、表1に示した。
なお、忌避剤の使用に際しては、実施例1、5および比較例1の場合にはくん煙させ、これら以外の場合には450℃に熱した板上で加熱して揮散させた。
【0037】
【表1】

【0038】
(実施例6)
メトキサジアゾン(3−(2−メトキシフェニル)−5−メトキシ−1,3,4−オキサジアゾール−2−オン)0.4gを50mLのエタノール中に溶解させ、得られた溶液にマウス用固形飼料(「マウス、ラット、ハムスター用CE2」日本クレア製)を60分間浸漬することにより有効成分であるメトキサジアゾンを充分に含浸させたのち、40℃で10分間乾燥して、忌避剤含有固形飼料を得た。
【0039】
(実施例7)
メトキサジアゾンの量を0.4gから2.0gに変更したこと以外は、実施例6と同様にして、忌避剤含有固形飼料を得た。
【0040】
以上の実施例6および7で得られた固形飼料を用いて摂食忌避効果を下記の試験によって評価した。
<摂食忌避試験>
マウス飼育用ケージ内に同じ環境条件の薬剤区と対照区を設け、薬剤区には、実施例で得られた固形飼料を、対照区には、上記実施例6で用いたマウス用固形飼料をエタノール単独の溶液に実施例6と同条件(浸漬時間、乾燥温度、乾燥時間)で浸漬して乾燥して得られた固形飼料(無毒餌)を、それぞれ約20gずつ精秤して併置した(このときの重量を初期重量とする)。また、該ゲージ内において、水はマウスが所望の時にいつでも摂取できるようにしておいた。このような状態のゲージの中に、7週齢のマウス(雄)4頭を放ち、15時間後に各固形飼料を回収してそれぞれ残存重量を測定した(このときの重量を15時間後重量とする)。そして、薬剤区、対照区それぞれについて初期重量からの減量分を摂食量として算出し、下記式に基づき摂食忌避率(%)を求めた。なお、試験はN=2で行い、平均重量の値を使用した。
摂食忌避率(%)=100−[(薬剤区の摂食量/対照区の摂食量)×100]
【0041】
【表2】

【0042】
表2から、メトキサジアゾンには摂食忌避効果が認められ、その効果は濃度依存的であることが判る。
【0043】
(実施例8)
アゾジカルボンアミド77重量部とメトキサジアゾン(3−(2−メトキシフェニル)−5−メトキシ−1,3,4−オキサジアゾール−2−オン)20重量部との混練物を有効成分とし、これに、ヒドロキシプロピルセルロースを3重量部添加し、水を加え練合し顆粒状に成形して、忌避剤を得た。
【0044】
上記で得た忌避剤と比較例1の忌避剤の忌避効力を、暗室であるA室の大きさが異なる齧歯類忌避試験装置を用いたこと以外は、実施例1〜5と同様の忌避効力試験によって評価した。すなわち、ここで用いた齧歯類忌避試験装置は、暗室であるA室(高さ2.4m×幅3.6m×奥行き2.7m)と、300Wの照明で照射した明室であるB室(高さ0.2m×幅0.23m×奥行0.38m)とをパイプ(内径7cm、長さ50cm)で連結し、マウスが自由に両室を往復できるように形成した装置である。忌避剤の使用に際しては、忌避剤10gを加熱くん煙装置を用いて蒸散させた。結果を表3に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
以上、本発明にかかる齧歯類忌避剤およびこれを用いた齧歯類の忌避方法について詳しく説明したが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更または改善しうるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、2個又は3個の窒素原子を骨格内に有する複素環(A)、N−N単結合(B)およびアゾ基(C)からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する含窒素化合物を含む、ことを特徴とする齧歯類忌避剤。
【請求項2】
前記複素環(A)は、ピラゾール環、ピラゾリジン環、ピラゾリン環、ピラゾリジノン環、ピラゾロン環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、オキサジアゾリジン環、オキサジアゾリジノン環、トリアゾール環からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の齧歯類忌避剤。
【請求項3】
前記アゾ基(C)は、ナフチルアゾ基、フェニルアゾ基、トリルアゾ基、ビスアゾ基、クミルアゾ基、キシリルアゾ基およびアニシルアゾ基からなる群より選ばれるいずれかである、請求項1記載の齧歯類忌避剤。
【請求項4】
前記含窒素化合物は、メトキサジアゾン、ピラゾロンオレンジ、アゾベンゼンおよびアゾジカルボンアミドからなる群より選ばれるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の齧歯類忌避剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の齧歯類忌避剤を用いることを特徴とする齧歯類の忌避方法。
【請求項6】
前記齧歯類忌避剤は、撒布、噴霧、塗布、加熱蒸散、送風式揮散またはくん煙のいずれかの手段で用いる、請求項5記載の齧歯類の忌避方法。

【公開番号】特開2008−297300(P2008−297300A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101854(P2008−101854)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】