説明

(ヘテロ)ディールス−アルダー反応用触媒、それを用いたおよびジヒドロピラン化合物およびディールス−アルダー反応付加物の製造方法

【課題】触媒量で(ヘテロ)ディールス−アルダー反応生成物を高収率で与える触媒の提供。
【解決手段】下記繰返単位(1)および(2)または(1)、(2)および(3)を含むヘテロディールス-アルダー反応またはディールス-アルダー反応用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(ヘテロ)ディールス-アルダー反応用触媒、それを用いたアルデヒド化合物と共役ジエン化合物とのヘテロディールス−アルダー反応により5,6−ジヒドロ−2H−ピラン環を有する化合物(以下、ジヒドロピラン化合物と称す。)および共役ジエン化合物とジエノフィル化合物とのディールス-アルダー反応付加物の製造方法に関するものである。尚、本願明細書において、ディールス-アルダー反応およびヘテロディールス-アルダー反応を(ヘテロ)ディールス-アルダー反応と表記することがある。
【背景技術】
【0002】
ジヒドロピラン化合物は医・農薬品や香料などの重要な原料である。また、いくつかのジヒドロピラン化合物はそれ自身が香料としても用いられている。ジヒドロピラン化合物は、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド化合物とイソプレンや2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどの共役ジエン化合物とのヘテロディールス−アルダー反応により製造できることが知られている。しかしながら、このヘテロディールス−アルダー反応を利用して実用的な収率でジヒドロピラン化合物を得ようとすると、グリオキシル酸エステルやトリクロロアセトアルデヒドのような反応性の高いアルデヒド化合物の使用が必要であった。
【0003】
その改良方法として、ルイス酸触媒を用いてアルデヒド化合物と共役ジエン化合物を反応させる方法に関する提案がある。例えば、ベンズアルデヒドとイソプレンとをシクロヘキサンやトルエンなどの炭化水素溶媒中で、無水塩化アルミニウムなどのルイス酸触媒の存在下に環化付加反応して目的物を得る方法が挙げられる(非特許文献1)。
【0004】
また、アルデヒド化合物と共役ジエン化合物を塩化アルミニウムまたは四塩化錫から選択されるルイス酸触媒および脂肪族または芳香族ニトロ化合物を助触媒とし5,6−ジヒドロ−2H−ピラン化合物を得る提案がなされている(特許文献1)。
【0005】
更なる改良法として、アルデヒド化合物と共役ジエン化合物とをルイス酸触媒の存在下に反応させる際に脂肪族エステル類のようなルイス酸触媒を溶解させる働きを持つ化合物(特許文献2)、ピリジンのような塩基(特許文献3)、更にはルイス酸を溶解させる働きを持つ化合物と塩基を共使用(特許文献4)することによりジヒドロピラン化合物を改善された収率で得る方法が提案されている。
【0006】
近年、スカンジウム(III) パーフルオロオクタンスルフォネートなどの希土類金属化合物を触媒として用い、ヘテロディールス−アルダー反応を行う方法(非特許文献2および非特許文献3)が報告されている。
【0007】
ルイス酸触媒は有機化合物の合成に極めて重要な位置を占めており、多くの有機化合物の工業的合成に利用されている。しかし、三フッ化ホウ素、四塩化チタンや塩化アルミニウムのような従来から利用されてきたルイス酸触媒は毒性および腐食性が高いものが多く、環境負荷の観点から改善が望まれていた。
【0008】
このような課題を解決するため、アルキルアルミニウム化合物をディールス-アルダー反応の触媒として利用しようとする試みがなされている(非特許文献4および非特許文献5)。例えば、メタクリル酸メチルとシクロペンタジエンの反応にトリメチルアルミニウムを用いた場合、室温下、42時間の反応により適度な収率でエンド体リッチ(エンド体:エキソ体=97:3)の目的物を得ることが出来ると報告されている。
【0009】
また、トリメチルアルミニウムの部分加水分解物であるポリメチルアルミノキサンをメタロセン錯体の助触媒としてではなく、ルイス酸性を有する反応触媒として利用する試みもなされており、ディールス-アルダー反応やアミド化反応を促進することが報告されている(非特許文献4)。特に、シクロペンタジエンと種々のジエノフィル化合物とのディールス-アルダー反応においては、ほぼ定量的な収率で付加物を与えることが示されている。
【0010】
アルキルアルミニウムは通常3配位構造をとるため、メタクロレインのような単座ジエノフィル化合物に対しては等量使用レベルで反応を促進させるが、3-アクリロイルオキサゾリジノンのような2座ジエノフィル化合物に対しては過剰量のアルキルアルミニウム使用が必要であることが知られている(非特許文献6)。
また、スカンジウムなどの希土類金属を有する触媒を用いてディールス-アルダー反応を行う方法も知られている(非特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平6−99419号公報
【特許文献2】特開平10−338687号公報
【特許文献3】特開平10−109980号公報
【特許文献4】特開平11−29564号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Comprehensive Organic Synthesis,(United Kingdom),Pergamon Press,1991,vol.5, p.431
【非特許文献2】New Journal of Chemistry,(United Kingdom),Royal Society of Chemistry,1995,vol.19,p.707
【非特許文献3】Bull.Chem.Soc.,Jpn.,1997,No.6,vol.5,p.431
【非特許文献4】Synlett,(Germany),Thieme Chemistry,1997,p.277
【非特許文献5】Journal of American Chemistry,(United Stetes of America),American Chemical Society,1988,vol.110,p.1238
【非特許文献6】Journal of Organometallic Chemistry,(Switzerland),Elsevier Sequoia,2001,vol.624,p.392
【非特許文献7】Lewis Acids in Organic Synthesis,H.Yamamoto,;Ed.,(Germany),Wiley−VCH,2000,vol.2,p.191
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、ヘテロディールス-アルダー反応におけるジヒドロピラン化合物の合成において、非特許文献1に記載の方法では50%以下の低い収率でしか目的物である4−メチル−6−フェニル−5,6−ジヒドロ−2H−ピランを得ることは出来ない。
【0014】
特許文献1の実施例1には、ベンズアルデヒドとイソプレンから4−メチル−6−フェニル−5,6−ジヒドロ−2H−ピランを得る反応を記載するが、この反応では、ベンズアルデヒドに対し多量のルイス酸触媒と助触媒(40mol%の塩化アルミニウムと40mol%の2−ニトロプロパン)を用いながら、ベンズアルデヒド基準の収率は僅かに50%を超える程度である。加えて、四塩化錫や塩化アルミニウムのようなルイス酸触媒は毒性および腐食性が高く、環境負荷の観点から改善が望まれている。
【0015】
特許文献3、4に記載の方法においては、反応系にルイス酸触媒に加え助触媒と称される成分を多量に添加する。しかし、これらの処方は生成物の精製を著しく煩雑にするもので、実用的ではない。また、例えば、特許文献1に記載の方法に比べてジヒドロピラン化合物の収率は改善されてはいるものの、十分とは言い難い。したがって、これら提案の方法は依然として課題を残したものと言わざるを得ない。
【0016】
非特許文献2および3には、希土類金属化合物の中でも、スカンジウム金属を有する錯体の触媒性能が特異的に高いと記載されている。スカンジウム(III)パーフルオロオクタンスルフォネートは、アルデヒド化合物と共役ジエン化合物の組み合わせ及び使用溶媒に影響を受けるが、ヘキサン溶媒中でヘテロディールス−アルダー反応を促進し、室温下、24時間の反応により90%を超える高い収率でジヒドロピラン化合物を与えることが報告されている。しかしながら、スカンジウムが希少金属で、触媒が高価であることから、工業的な使用に適するものではない。
【0017】
一方、ディールス-アルダー反応付加物の合成において、非特許文献4に記載の方法ではジエノフィル化合物であるメタクリル酸メチルに対し1.5当量のトリメチルアルミニウムの使用が求められ、その使用量の削減が大きな課題となっている。
非特許文献5ではトリメチルアルミニウムよりも強いルイス酸性を示すことが知られているジエチルアルミニウムクロライドを用いているが、ジエノフィル化合物に対し1.4当量のジエチルアルミニウムクロライド添加が依然として必要で、触媒量で反応を進行させる触媒の開発が望まれている。
【0018】
更に、非特許文献6に示されるように、2座ジエノフィル化合物に対してはジエノフィル化合物の当量を更に大きく超えるアルキルアルミニウム化合物添加が必要であることが知られているが、この課題を解決するアルキルアルミニウム化合物は全く知られていない。
【0019】
非特許文献7に示される希土類金属を有する触媒の中でも、スカンジウム触媒は単座および2座ジエノフィル化合物を基質とするディールス-アルダー反応に対し、いずれの基質にも高い触媒活性を示す化合物として知られている。しかし、希土類金属で希少元素であるスカンジウムの利用は工業的利用を考えた場合、供給不安や価格高騰などの不安があるため、工業的な使用に適するものではない。
【0020】
そこで本発明においては、触媒量でアルデヒド化合物と共役ジエン化合物との反応などのヘテロディールス−アルダー反応およびジエノフィル化合物と共役ジエン化合物との反応などのディールス-アルダー反応を高効率で促進するために、汎用金属元素であるアルミニウムを利用した経済性に優れたヘテロディールス-アルダー反応およびディールス-アルダー反応用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を続けた結果、アルデヒド化合物と共役ジエン化合物のヘテロディールス−アルダー反応によるジヒドロピラン化合物および共役ジエン化合物とジエノフィル化合物のディールス-アルダー反応によるディールス-アルダー反応付加物の製造において、ポリアルミノキサン化合物の有する特異な−Al−O−Al−O−鎖構造へ置換基として特定のスルホン酸基を導入した触媒の存在下に反応を行うことで、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0022】
すなわち本発明は、下記繰返単位(1)および(2)または(1)、(2)および(3)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物を含むヘテロディールス-アルダー反応またはディールス-アルダー反応用触媒であって、
繰返単位(1)中、Rはハロゲン原子、C1〜C6のアルキル基、C2〜C6のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子で置換されていても良く、
繰返単位(2)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良く、
繰返単位(3)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良く、
繰返単位(1)および(2) の合計数は2〜30の範囲であり、繰返単位(1)、(2)および(3)の合計数は3〜30の範囲であり、繰返単位(1)および(2)または(1)、(2)および(3)の順番は任意である、前記触媒。
【化1】

【0023】
さらに本発明は、上記の繰返単位(1)および(2)または(1)、(2)および(3)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物を含む触媒の存在下に、下記一般式(I)で示されるアルデヒド化合物と下記一般式(II)で示される共役ジエン化合物とを環化付加反応させることを含む、下記一般式(III)で示されるジヒドロピラン化合物の製造方法に関する。
【化2】

(式中、Rは水素原子またはC1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、アルキル基で置換されていても良いC3〜C20のシクロアルキル基、またはアルキル基若しくはアルコキシ基で置換されていても良いC6〜C20のアリール基の炭化水素基を示す。)
【化3】

(式中、R, R, R10およびR11はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1〜C10アルキル基、C2〜C10のアルケニル基、C6〜C10のアリール基、C1〜C10のアルコキシ基、またはC6〜C10のアリールオキシ基を表し、但し、RとR11が結合して炭素環を形成していても良い。)
【化4】

(式中、R, R, R, R10, R11は前記と同じ。)
【0024】
さらに本発明は、上記の繰返単位(1)および(2)または(1)、(2)および(3)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物を含む触媒の存在下に、下記一般式(IV)で示されるジエン化合物と下記一般式(V)で示されるジエノフィル化合物とを環化付加反応させることを含む、下記一般式(VI)で示されるディールス-アルダー付加物の製造方法に関する。
【化5】

(式中、R12, R13, R14, R15, R16およびR17はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6のアルキル基、C1〜C5のアルコキシ基、C6〜C10アリール基、C2〜C5のアルキルカルボニルオキシ基、またはC2〜C6のアルコキシカルボニル基を表し、但し、R12およびR17は結合して環状構造の一部を形成していても良い。)
【化6】

(式中、R18,R19,R20及びR21はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、C1〜C10アルキル基、C2〜C10のアルケニル基、C6〜C10のアリール基、C1〜C10のアルコキシ基、C2〜C5のアルキルカルボニルオキシ基、C2〜C5のアルカノイル基、C2〜C5のアルコキシカルボニル基、またはC6〜C10のアリールオキシ基を表し、但し、R18,R19,R20及びR21の少なくとも一つは電子吸引性置換基である。)
【化7】

(式中、R12,R13,R14,R15,R16,R17,R18,R19,R20およびR21は前記と同じ。)

【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、マイルドな条件下にヘテロディールス−アルダー反応またはディールス−アルダー反応により、種々のジヒドロピラン化合物またはディールス-アルダー反応付加物を高い収率で生成することができる触媒を提供できる。さらに本発明によれば、上記触媒を用いて、種々のジヒドロピラン化合物またはディールス-アルダー反応付加物を高い収率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に用いたポリメチルアルミノキサン(i)(MAO,実施例1記載)と本発明の触媒(ii)(MAO−OTf,実施例1記載)のH−NMRスペクトルである。
【図2】本発明のCDCl溶媒中で触媒(MAO-OTf、実施例1記載)と等量接触させたシクロヘキサノンのカルボニル炭素の13C−NMRスペクトル(d)である。比較のために、MeAlNTfと等量接触させたシクロヘキサノン (a)、シクロヘキサノン自身(b)、ポリメチルアルミノキサンと等量接触させたシクロヘキサノン (c)のカルボニル炭素の13C−NMRスペクトルを併記する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の触媒は、下記繰返単位(1)および(2)または(1)、(2)および(3)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物を含むヘテロディールス-アルダー反応またはディールス-アルダー反応用触媒である。本発明の触媒は下記繰返単位(1)および(2)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物であるか、あるいは下記繰返単位 (1)、(2)および(3)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物を含む。
【0028】
【化8】

【0029】
繰返単位(1)中、Rはハロゲン原子、C1〜C6のアルキル基、C2〜C6のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子で置換されていても良い。C1〜C6のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基などである。C2〜C6のアルケニル基は、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、シクロペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などである。C6〜C20のアリール基は、例えば、例えば、フェニル基、トリル基などを挙げることができる。アリール基は、入手の容易さ等を考慮すると、C6〜C10である。Rとしてのハロゲン原子、並びにアルキル基、アルケニル基およびアリール基が置換基として有してもよいハロゲン原子は、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。アルキル基、アルケニル基およびアリール基が置換基としてのハロゲン原子を、各基の炭素数に応じて、例えば、1〜20個有することができる。
【0030】
の具体例としては、フッ素、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、n−ヘプタフルオロプロピル基、i−ヘプタフルオロプロピル基、n−ノナフルオロブチル基、i−ノナフルオロブチル基、sec−ノナフルオロブチル基、tert−ノナフルオロブチル基、テトラフルオロビニル基、ペンタフルオロプロペニル基、ヘプタフルオロブテニル基、ノナフルオロペンテニル基、ヘキサフルオロシクロペンテニル基、ノナフルオロシクロへキシル基などを挙げることができる。これらの中で好ましくは、フッ素、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、n−ヘプタフルオロプロピル基、n−ナノフルオロブチル基、ナノフルオロシクロヘキシル基である。
【0031】
繰返単位(2)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良い。
C1〜C20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基などである。アルキル基は、入手の容易さ等を考慮すると、C1〜C6である。C2〜C20のアルケニル基は、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、シクロペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などである。アルケニル基は、入手の容易さ等を考慮すると、C2〜C6である。C6〜C20のアリール基は、例えば、例えば、フェニル基、トリル基などを挙げることができる。アリール基は、入手の容易さ等を考慮すると、C6〜C10である。
【0032】
としてのハロゲン原子、並びにアルキル基、アルケニル基およびアリール基が置換基として有してもよいハロゲン原子は、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素である。アルキル基、アルケニル基およびアリール基は、置換基としてのハロゲン原子を、各基の炭素数に応じて例えば、1〜20個有することができる。アルケニル基およびアリール基が置換基として有してもよいC1〜C8の炭化水素基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基などである。この炭化水素基は、入手の容易さ等を考慮すると、C1〜C3である。
【0033】
は、より好ましくはメチル基、エチル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、フッ素または塩素である。
【0034】
繰返単位(3)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良い。
繰返単位(3)中、Rは上記Rで例示した基と同一のものを用いることができる。但し、RとRは、異なる基から選ばれる。
【0035】
繰返単位(1)および(2) の合計数は2〜30の範囲であり、繰返単位(1)、(2)および(3)の合計数は3〜30の範囲であり、繰返単位(1)および(2)または(1)、(2)および(3)の順番は任意である。
繰返単位(1)および(2)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物においては、繰返単位(1)および(2)の合計数は2〜30の範囲である。繰返単位(1)および(2)の合計数が2未満では、アルミノキサンユニット連鎖が形成されないため触媒性能を十分発現させることが出来ず、30を超えるとアルミノキサン同士の会合のため触媒反応に寄与できるアルミノキサンユニットの量が低下し触媒性能の十分な発現を妨げてしまう。繰返単位(1)および(2)の合計数は、アルミノキサンユニット連鎖の特徴を効率的に発現するという観点から、5〜10の範囲であることが好ましい。スルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物において、繰返単位(1)および(2)の順番は任意である。
【0036】
繰返単位(1)および(2)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物においては、繰返単位(1)と(2)のモル比((1):(2))は、2:8〜10:0の範囲であることが、十分な触媒性能を発現するという観点から好ましい。繰返単位(1)と(2)のモル比((1):(2))は、好ましくは3:7〜10:0の範囲である。
【0037】
繰返単位 (1)、(2)および(3)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物においては、繰返単位(1)、(2)および(3)の合計数は3〜30の範囲である。繰返単位(1)、(2)および(3)の合計数の合計数が3未満では、十分なアルミノキサンユニット連鎖長が形成されないため触媒性能を十分発現させることが出来ず、30を超えるとアルミノキサン同士の会合のため触媒反応に寄与できるアルミノキサンユニットの量が低下し触媒性能の十分な発現を妨げてしまう。繰返単位(1)、(2)および(3)の合計数の合計数は、十分な触媒性能を発現するという観点から、5〜10の範囲であることが好ましい。スルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物において、繰返単位 (1)、(2)および(3)の順番は任意である。
【0038】
繰返単位(1)、(2)および(3)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物は、繰返単位(1)と(2)および(3)のモル比((1):((2)+(3)))は、2:8〜10:0の範囲であり、繰返単位(2)と(3)のモル比((2):(3))は、1:10〜10:1の範囲であることが、十分な触媒性能を効率的に発現するという観点から好ましい。繰返単位(1)と(2)および(3)のモル比((1):((2)+(3)))は、好ましくは3:7〜10:0の範囲であり、繰返単位(2)と(3)のモル比((2):(3))は、2:9〜9:2の範囲である
【0039】
本発明の触媒に含まれるスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物は、環状化合物であるか、または線状化合物であることができる。環状化合物であるか、線状化合物であるかは、製造時の条件により異なる。線状化合物である場合、末端のアルミニウムにはR、RまたはRが2個結合した構造を有する。
【0040】
本発明の触媒に含まれるスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物は、繰返単位(1)および(2) の合計数が異なる2以上の複数のスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物を含有するか、または(1)、(2)および(3)の合計数が異なる2以上の複数のスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物を含有することができる。スルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物は後述するように、有機アルミニウム化合物からポリアルミノキサン化合物を調製し、次いでポリアルミノキサン化合物をスルホン酸変成することで調製される。有機アルミニウム化合物からのポリアルミノキサン化合物の調製に際しては、繰返単位(2)の数または、 (2)および(3)の合計数が異なる2以上の複数のポリアルミノキサン化合物の混合物が得られる。そのため、この混合物をスルホン酸変成して得られるスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物も混合物となる。また、製造条件によっては、環状のスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物と線状のスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物が混在する場合もある。従って、本発明の触媒は、環状のスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物と線状のスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物が混在するものであることもできる。
【0041】
[スルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物の製造方法]
本発明の触媒に含まれるスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物の出発原料となるポリアルミノキサン化合物は、繰返単位 (1) および(2)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物の場合には、上記式(2)の繰返単位で示されるアルミノキサン構造を有する有機金属ポリマーであり、繰返単位 (1)、(2)および(3)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物の場合には、下記一般式(4)で示されるアルミノキサン構造を有する有機金属ポリマーである。
【化9】

【0042】
式中の、RおよびRは前記のとおりであり、oおよびpは正の整数を示し、o+p≧2であり、o+pの上限は、スルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物の繰返単位の合計の上限が30であることから、30である。ポリアルミノキサン化合物は単種で用いても良く、混合物で用いても良い。
【0043】
本発明の触媒のスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物の出発物質として好ましいポリアルミノキサン化合物は、例えば式(2)のRがメチル基であるポリメチルアルミノキサン、式(4)のRがイソブチル基またはn−オクチル基であるポリイソブチルアルミノキサンまたはポリn−オクチルアルミノキサン、式(4)のRがメチル基、Rがエチル基、イソブチル基あるいはn−ヘキシル基でo/pの比が1〜10のポリアルミノキサン化合物である。
【0044】
本発明の触媒の出発物質となるポリアルミノキサン化合物の構成単位−(R)AlO−と−(R)AlO−の結合はブロック的あるいはランダム的またはそれらの混在した結合となっていてもよい。また、ポリアルミノキサン化合物は線状構造あるいは環状構造およびそれらの混在した構造であってよい。
【0045】
スルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物は、前記ポリアルミノキサン化合物と一般式(5)で表されるスルホン酸化合物の反応により調製される。
【化10】

【0046】
式中、Rは前述のとおりである。スルホン酸化合物は単種で用いても良く、Rが異なる複数のスルホン酸化合物の混合物を用いても良い。
【0047】
スルホン酸化合物の具体例としては、例えば、フルオロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、n−ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、i−ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、n−ノナフルオロブタンスルホン酸、i−ノナフルオロブタンスルホン酸、sec−ノナフルオロブタンスルホン酸、tert−ノナフルオロブタンスルホン酸などを挙げることが出来る。
【0048】
本発明の触媒の製造方法は、特に制限されるものではないが、ポリアルミノキサン化合物の溶液にスルホン酸化合物を添加反応する方法が一般的なものとして挙げられる。
【0049】
本発明の式(2)または式(4)で示されるアルミノキサン構造を有するポリアルミノキサン化合物と式(5)で示されるスルホン酸化合物の反応に用いる量は、生成物であるスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物に含まれる(1)で示される繰返単位の量(数)を考慮して決定される。ポリアルミノキサン化合物中のアルミニウムのモル数に対するスルホン酸化合物のモル数を、例えば、0.2〜1モルの範囲とすればよく、好ましくは0.5〜1.0モルの範囲である。この範囲とする。この範囲とすることで、繰返単位(1)および(2)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物においては、繰返単位(1)と(2)のモル比((1):(2))が、2:8〜10:0の範囲、好ましくは3:7〜10:0の範囲である化合物が得られる。また、繰返単位(1)、(2)および(3)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物については、繰返単位(1)と(2)および(3)のモル比((1):((2)+(3)))が、2:8〜10:0の範囲、好ましくは3:7〜10:0の範囲である化合物が得られる。
【0050】
ポリアルミノキサン化合物とスルホン酸化合物の反応に際して、反応の均質性を増大させる目的でアルキルアルミニウム化合物を共存させても良い。アルキルアルミ二ウム化合物を共存させることで、ポリアルミノキサン化合物が過度に高会合状態となり溶媒溶解性の低下を引き起こすことを抑制し、スルホン酸化合物によるポリアルミノキサン化合物の均質な変性ができ、高い触媒性能を有する触媒をえることができる。即ち、アルキルアルミ二ウム化合物の適度の存在は、ポリアルミノキサン化合物とスルホン酸化合物の均質な反応を容易にし、触媒性能の高い触媒調製を可能とする。
【0051】
共存させることができるアルキルアルミニウム化合物としては、例えば、下記一般式(6)で示されるアルキルアルミニウム化合物を挙げることができる。
【化11】

(式中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C20のアリール基、を示す。また、R、R、およびRの内、最低一つはアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基またはアリロキシ基である。)
【0052】
C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C20のアリール基は、RおよびRとして挙げた基と同様である。C1〜C20のアルコキシ基は、例えば、メトキシ基またはエトキシ基などである。C6〜C20のアリロキシ基は、例えば、フェノキシ基などである。
【0053】
式(6)中のR、RおよびRは、より好ましくは、メチル基、エチル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、フッ素または塩素であり、さらに、R、RおよびRは、2つまたは全てがアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基またはアリロキシ基である化合物である。
【0054】
このようなアルキルアルミニウム化合物の具体例として、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムを、トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウムを、またジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどの含ハロゲンアルキルアルミニウムを挙げることができる。ここに挙げたアルキルアルミニウム化合物の中で好ましいものは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミ二ウム、トリイソブチルアルミニウム、およびジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドである。
【0055】
上記アルキルアルミニウム化合物は、ポリアルミノキサン化合物中のアルミニウムのモル数に対するアルキルアルミニウム化合物のモル数を0.05〜1.0mol/molの範囲で用いることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.6mol/molの範囲で、さらに好ましくは0.05〜0.3mol/molの範囲である。これらの範囲にすることで、ポリアルミノキサン化合物とスルホン酸化合物の均質な反応を容易にし、触媒性能の高い触媒調製を可能とする。
【0056】
アルキルアルミニウム化合物共存下に触媒を調製する場合には、スルホン酸化合物のモル数は、アルキルアルミニウム化合物とポリアルミノキサン化合物の全アルミニウムのモル数に対して規定され、例えば、0.2〜1モルの範囲とし、好ましくは0.5〜1モルの範囲である。この範囲とすることで、スルホン酸化合物と反応し得るアルキルアルミニウム化合物の共存下であっても、繰返単位(1)および(2)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物においては、繰返単位(1)と(2)のモル比((1):(2))が、2:8〜10:0の範囲、好ましくは3:7〜10:0の範囲である化合物が得られる。また、繰返単位(1)、(2)および(3)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物については、繰返単位(1)と(2)および(3)のモル比((1):((2)+(3)))が、2:8〜10:0の範囲、好ましくは3:7〜10:0の範囲である化合物が得られる。
【0057】
ポリアルミノキサン化合物あるいはアルキルアルミニウム化合物共存下にポリアルミノキサン化合物とスルホン酸化合物との反応は、ポリアルミノキサン化合物、さらにはアルキルアルミニウム化合物を溶解できる溶媒中で行うことが適当である。ポリアルミノキサン化合物を溶解およびスルホン酸化合物と反応を行う溶媒としては、ポリアルミノキサン化合物と反応する反応性基を有しないものであればよく、具体的にはペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタンなどのハロゲン含有炭化水素溶媒、DMFなどの極性溶媒およびそれらの混合溶媒を用いることが好ましい。より好ましくはペンタン、ヘキサン、トルエン、キシレン、ジクロロメタンおよびそれらの混合溶媒である。
【0058】
ポリアルミノキサン化合物あるいはアルキルアルミニウム化合物共存下にポリアルミノキサン化合物とスルホン酸化合物との反応は、−40℃〜150℃の温度範囲で実施することが可能である。ポリアルミノキサン化合物溶液の溶媒として用いられるトルエンなどの芳香族炭化水素化合物の沸点とポリアルミノキサン化合物溶液とスルホン酸化合物との反応副生物生成を抑制する目的で好ましくは−40℃〜100℃の範囲で、より好ましくは−40℃〜40℃である。
【0059】
以上の方法で製造したスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物を含有する反応生成物、またはスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物とアルキルアルミニウム化合物(またはそのスルホン酸変成物も含む)を含有する反応生成物は、そのまま、または精製をして、触媒として使用することができる。
【0060】
尚、アルキルアルミニウム化合物のスルホン酸変成物は、以下の一般式(7)で示される。
【化12】

(式中、R,R,Rは前記と同じ。)
【0061】
本発明の上記触媒は、酸触媒により反応が促進される種々の有機化合物の合成反応において優れた触媒性能を示す。具体的に代表的な反応例を挙げると、ヘテロディールス−アルダー反応およびディールス−アルダー反応の他に、アルドール反応、エステル化反応、フリーデル−クラフツ反応、アセタール化反応、カルボニル基のアリル化反応、マイケル付加反応、ニトロ化反応などを挙げることができる。
【0062】
有機化合物の合成反応、特に、ヘテロディールス−アルダー反応およびディールス−アルダー反応における本発明の触媒使用量は特に制限されるものではない。通常のヘテロディールス−アルダー反応における使用においては、原料基質であるアルデヒド化合物のモル数に対する触媒中のアルミニウムのモル数で表した場合0.05〜10mol/molの範囲でよく、好ましくは0.05〜3mol/molである。本発明の触媒の活性を考慮し、合成反応後の反応液の処理を考えると、さらに好ましくは0.05〜1mol/molの範囲である。本発明のディールス−アルダー反応の場合、一般的にはジエノフィル化合物が基準となって触媒の使用量が表現され、原料基質であるジエノフィル化合物のモル数に対する触媒中のアルミニウムのモル数で表した場合0.05〜10mol/molの範囲でよく、好ましくは0.05〜3mol/molである。本発明の触媒の活性を考慮し、合成反応後の反応液の処理を考えると、さらに好ましくは0.05〜1mol/molの範囲である。
【0063】
[ジヒドロピラン化合物の製造方法]
本発明は、上記繰返単位(1)および(2)または(1)、(2)および(3)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物を含む触媒の存在下に、下記一般式(I)で示されるアルデヒド化合物と下記一般式(II)で示される共役ジエン化合物とを環化付加反応させることを含む、下記一般式(III)で示されるジヒドロピラン化合物の製造方法を包含する。
【0064】
【化13】

(式中、Rは水素原子またはC1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、アルキル基で置換されていても良いC3〜C20のシクロアルキル基、またはアルキル基若しくはアルコキシ基で置換されていても良いC6〜C20のアリール基の炭化水素基を示す。)
【0065】
一般式(I)中のRとしては、具体的に示すと、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−オクチル基またはイソオクチル基などのアルキル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基などのアルケニル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基などを挙げることができる。
【0066】
アルデヒド化合物の具体例としては、アセトアルデヒド、プロピオアルデヒド、ブチルアルデヒド、ピバルアルデヒド、シクロプロピルアルデヒド、シクロペンチルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、ナフチルアルデヒド、4−ニトロアルデヒド、4−クロロベンズアルデヒドなどを挙げることができる。
【0067】
【化14】

(式中、R,R,R10およびR11はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1〜C10アルキル基、C2〜C10のアルケニル基、C6〜C10のアリール基、C1〜C10のアルコキシ基、またはC6〜C10のアリールオキシ基を表し、RとR11が結合して炭素環を形成していても良い。)
【0068】
一般式(II)の中のR,R,R10およびR11としては、具体的に示すと、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などのアルキル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基などのアルケニル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基などを挙げることができ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられ、アリールオキシ基としてはフェノキシ基などを挙げることができる。
【0069】
共役ジエン化合物の具体例としては、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエンなどが挙げられ、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエンが好ましい。
【0070】
[ディールス-アルダー反応付加物の製造方法]
本発明は、上記繰返単位(1)および(2)または(1)、(2)および(3)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物を含む触媒の存在下に、下記一般式(IV)で示される共役ジエン化合物と下記一般式(V)で示されるジエノフィル化合物とを環化付加反応させることを含む、下記一般式(VI)で示されるディールス-アルダー付加物の製造方法を包含する。
【0071】
【化15】

(式中、R12, R13, R14, R15, R16およびR17はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6のアルキル基、C1〜C5のアルコキシ基、C6〜C10アリール基、C2〜C5のアルキルカルボニルオキシ基またはC2〜C6のアルコキシカルボニル基を表し、但し、R12およびR17は結合して環状構造の一部を形成していても良い。)
【0072】
一般式(IV)の中のR12, R13, R14, R15, R16およびR17としては、具体的に示すと、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などのアルキル基が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基などを挙げることができる。アルキルカルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、i-プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、i-ブチルカルボニルオキシ基などが挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、i-ブトキシカルボニル基などが挙げられる。ハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0073】
共役ジエン化合物の具体例としては、ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエンなどが挙げられる。
【0074】
【化16】

(式中、R18,R19,R20及びR21はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、C1〜C10アルキル基、C2〜C10のアルケニル基、C6〜C10のアリール基、C1〜C10のアルコキシ基、C2〜C5のアルキルカルボニルオキシ基、C2〜C5のアルカノイル基、C2〜C5のアルコキシカルボニル基、またはC6〜C10のアリールオキシ基を表し、但し、R18,R19,R20及びR21の少なくとも一つは電子吸引性置換基である。)
【0075】
一般式(V)の中のR18,R19,R20及びR21としては、具体的に示すと、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などのアルキル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基などのアルケニル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基などを挙げることができ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられ、アリールオキシ基としてはフェノキシ基などが挙げられる。アルキルカルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、i-プロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、i-ブチルカルボニルオキシ基などが挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、i-ブトキシカルボニル基などが挙げられ、アルカノイル基としては、アシル基、エチルカルボニル基、n-プロピルカルボニル基、i-プロピルカルボニル基などが挙げられる。ハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。R18,R19,R20及びR21の中の電子吸引性置換基としては、ホルミル基、カルボキシル基、フェニル基、シアノ基、ニトロ基、アルカノイル基、アルコキシカルボニル基などが挙げられる。
【0076】
ジエノフィル化合物の具体例としては、メタクロレイン、α-ブロモアクロレイン、メチルビニルケトン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリルなどの単座ジエノフィル化合物、3-アクリロイルオキサゾリジノンなどの2座ジエノフィル化合物を例示することができる。
【0077】
本発明のヘテロディールス−アルダー反応において、アルデヒド化合物と共役ジエン化合物の使用比率は、アルデヒド化合物1モルに対し、共役ジエン化合物使用量が1〜5モルの範囲で良く、好ましくは1〜3モルの範囲である。一方、ディールス-アルダー反応において、共役ジエン化合物とジエノフィル化合物の使用比率は、ジエノフィル化合物1モルに対し、共役ジエン化合物使用量が1〜5モルの範囲で良く、好ましくは1〜3モルの範囲である。
【0078】
本発明における(ヘテロ)ディールス-アルダー反応用触媒を用いた反応は、無溶媒でも溶媒を用いても行うことができる。本発明で用いられる溶媒として、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレンなどの塩素系溶媒、更にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミドなどの含酸素系溶媒が挙げられる。これらの溶媒の中で好ましいものはクロロベンゼン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレンなどの塩素系溶媒である。また、ここに挙げた溶媒は1種類のみで用いてもよく、2種類以上の溶媒を混合しても反応に用いることができる。
【0079】
溶媒の使用量は基本的に任意に設定することができるが(ヘテロ)ディールス-アルダー反応用触媒、アルデヒド化合物および共役ジエン化合物または共役ジエン化合物およびジエノフィル化合物のそれぞれの濃度が低くなりすぎると反応速度が低下し、反応完結に要する時間が長くかかる。一般的には、例えば、アルデヒド化合物またはジエノフィル化合物重量を基準にすると、溶媒は5000重量%以下の使用量に抑えるのが良い。
【0080】
反応温度は用いる溶媒やアルデヒド化合物および共役ジエン化合物または共役ジエン化合物およびジエノフィル化合物により適する範囲が変るが、一般には-80℃〜100℃の範囲で実施され、好ましくは-80℃〜20℃の範囲である。
【0081】
反応時間は5分〜30時間の範囲でよく、反応後の目的物は加水分解され、加水分解後に有機溶媒で有機層の抽出およびカラムクロマトグラフィーを用いて目的物を得ることが出来る。また、更なる精製を行うため、再結晶を実施しても良い。
なお、本発明に係る(ヘテロ)ディールス-アルダー反応用触媒は、メタロセン錯体などの均一系重合触媒として用いられるポリアルミノキサン構造を有すため、重合用助触媒としての検討も試みた。しかし、スルホン酸変性ポリアルキルアルミノキサンは、未処理のポリアルキルアルミノキサンに対し全く低い重合活性しか発現しなかった。
【0082】
本発明の触媒は、ルイス酸触媒に分類され、好ましくは50モル%以下の触媒量で基質であるアルデヒド化合物またはジエノフィル化合物を活性化する。上記したヘテロディールス−アルダー反応に用いるアルデヒド化合物の活性化は、ルイス酸化合物のカルボニル酸素への配位によると考えられる。したがって、用いた触媒が有するルイス酸がどの程度、カルボニル基を活性化するのか評価することが重要である。ルイス酸触媒のルイス酸性は、例えば、シクロヘキサノンのカルボニル炭素の13C−NMRによるケミカルシフト値を利用して評価することができる。一般的に知られているように、ルイス酸化合物はカルボニル酸素の非共有電子対に配位し、カルボニル炭素の電子密度を低下させる。言い換えれば、カルボニル基の活性化であり、NMRにおけるケミカルシフト値を低磁場シフトさせる。具体的には、ルイス酸化合物とシクロヘキサノンを等量混合し、重クロロホルム溶媒中で室温下に13C−NMR測定を行うことで、触媒のルイス酸性は評価できる。
【0083】
以下に本発明の触媒のルイス酸性の評価と触媒性能の関係について、NMRにおけるケミカルシフト値に基づいて考察するが、本発明者らは、理論に拘泥する意図ではない。本発明は、あくまでも、理論や考察にかかわらず、請求項に記載のディールス−アルダー反応およびヘテロディールス−アルダー反応用の触媒とこの触媒を利用したジヒドロピラン化合物およびディールス-アルダー反応付加物の製造方法を請求するものである。
【0084】
ポリメチルアルミノキサンは塩化アルミニウム相当のルイス酸性を有することが知られている。そのため、上述非特許文献1に示されるように、ヘテロディールス−アルダー反応によるジヒドロピラン化合物が50%程度の収率で得られるものと推定した。しかし、後述の比較例2に示すように、ベンズアルデヒドと2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンとの反応による目的物は全く得られなかった。シクロヘキサノンとポリメチルアルミノキサンの等量接触した溶液を重クロロホルム中で13C−NMR測定したところ、シクロヘキサノン自身の211.9ppmから211.8ppmにカルボニル炭素ピークが僅かに高磁場シフトする結果を得た。このNMR測定結果は、上記推定の下では意外なものであったが、ポリメチルアルミノキサンの嵩高い構造による遮蔽効果が一因の可能性があると推察される。これらの結果は、ポリメチルアルミノキサンではルイス酸性が弱く、ヘテロディールス−アルダー反応を進行させるほど十分にアルデヒド化合物を活性化できないことを示すものと考えられる。
【0085】
一方、後述の比較例1に用いたジメチルアルミニウムスルホニルアミド(MeAlNTf)はベンズアルデヒドと2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンの目的ジヒドロピラン化合物を全く与えなかった。このMeAlNTfとシクロヘキサノンの等量接触においては、212.8ppmにシクロヘキサノンのカルボニル炭素のピークを示す。この結果は、強すぎるルイス酸性を有する触媒は逆に反応抑制作用を呈し、アルデヒド化合物との強すぎる結合が原因であるものと推察される。
【0086】
本発明に係る触媒(ポリメチルアルミノキサンとトリフルオロメタンスルホン酸の反応生成物であるスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物。実施例1記載を例示。)を用いた場合、驚いたことにシクロヘキサノンのカルボニル炭素は211.8ppm〜212.8ppmの間にピーク(212.5ppm)を示し、適度なルイス酸性を有することが示された。すなわち、ポリメチルアルミノキサンより強く、MeAlNTfよりもルイス酸性の弱いルイス酸触媒の創製が重要で、シクロヘキサノンを用いて触媒のヘテロディールス−アルダー反応促進性能を規定することができ、シクロヘキサノンのカルボニル炭素の13C−NMRのケミカルシフト値を211.8ppm〜212.8ppmの間にシフトさせる触媒こそが本発明に係るルイス酸触媒である。このような適度なルイス酸性を示す理由の一つは、アルミノキサン独特の嵩高い分子構造に起因するものと推察される。
【0087】
次に、本発明に係る触媒(ポリメチルアルミノキサンとトリフルオロメタンスルホン酸の反応生成物。後述の実施例1に記載)を用いた場合、驚いたことにシクロヘキサノンのカルボニル炭素は211.8ppm〜212.8ppmの間にピーク(212.5ppm)を示し、適度なルイス酸性を有することが示された。すなわち、このことが本発明の触媒の性能を規定していると理解することができる。
【0088】
後述の実施例1で固体ルイス酸の調製に用いたポリメチルアルミノキサン(MAO)とこれとトリフルオロメタンスルホン酸との反応により得られたスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物(MAO−OTf)を含む触媒のH−NMRスペクトルを例として図1に示す。H−NMR測定は400MHzのNMR測定装置で、重溶媒として重クロロホルムを用い室温下に行った。
図2に上述したシクロヘキサノンのカルボニル炭素部の13C−NMRスペクトルを示す。
【0089】
本発明のスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物を含有する触媒は、13C−NMRにおけるシクロヘキサノンのカルボニル基のケミカルシフトを低磁場シフトさせ、そのピークが211.8ppm〜212.8ppmの間に存在させたスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物を含むことが好ましい。このようなスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物は、前述のように、式(2)または(4)のポリアルミノキサン化合物と式(5)で示されるスルホン酸化合物を上述した量論比内で反応させることで製造できる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0091】
以下の反応は乾燥窒素ガス雰囲気下に行った。トルエン溶媒はケチルラジカルにより乾燥し、蒸留したものを用いた。また、ジクロロメタン溶媒は水素化カルシウムにより乾燥し、蒸留したものを用いた。
【0092】
実施例1
(1)ポリメチルアルミノキサン化合物(以下、MAOと称す)の合成
撹拌装置を有する内容積2Lのセパラブルフラスコに、トリメチルアルミニウム(TMAL)240.8g(3.34mol)、トルエン160.2gを入れた。この溶液に26℃で安息香酸のトルエン溶液500.1g(安息香酸0.49mol)をゆっくりと添加した。この反応液に、安息香酸85.5g(0.70mol)を26℃で粉体投入し、その後50℃で加熱熟成を1時間行った。この時、TMALと安息香酸の酸素原子のモル比は、1.40であった。反応液を80℃で2時間加熱し、その後60℃で6.0時間加熱することにより、MAOのトルエン溶液を得た。得られた溶液は、ゲル状物のない透明な液体であった。反応液回収後に行ったAl分析結果より、Al原子基準で示す反応収率は定量的なものであった。得られた反応液のAl濃度は9.1wt%−Al(比重0.97g/ml)であった。H−NMR測定結果より、得られたMAOには、Al元素基準で15mol%のトリメチルアルミニウムを含んでいた。ウベローデ粘度計を用いて測定したMAOの溶液粘度は1.60cPであった。TMAOとシクロヘキサノンを等量混合し、重クロロホルム中で13C−NMRを測定したところ、シクロヘキサノンのカルボニル炭素のケミカルシフト値は211.8ppmであった。
【0093】
(2)触媒-1(以下、MAO−OTfと称す)の合成
【化17】

【0094】
窒素雰囲気下、室温でMAOのトルエン溶液(比重:0.97g/ml,Al濃度9.1wt%)1.4ml(Al量4.58mmol)にトリフルオロメタンスルホン酸(513mg,3.42mmol)のトルエン溶液(15mL)を30分かけて滴下した。さらに室温20時間撹拌したところMAO−OTfが沈殿した。次いで、生成した白色固体を無水トルエン10mLで三回洗浄した。その後、減圧下、三時間乾燥した。グローブボックスに入れ計量を行ったところ、710mgのMAO−OTfを得た。得られた710mgのMAO−OTfのAl含有量をICPにより測定したところ、4.49mmolのAl原子が含まれていた。NMRのデータから推定したMAO−OTfの各繰返単位のモル比(Alベース表記)は以下のとおりである。
MeAlOTf:−Al(OTf)−O−:−AlMe−O− =15:60:25
【0095】
(3)4−ニトロベンズアルデヒドと2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンとのヘテロディールス−アルダー反応(MAO−OTfを29mol%用いた実施例)
【化18】

【0096】
窒素雰囲気下、MAO−OTf(47mg,Al量0.29mmol,29mol%)のトルエン溶液(2ml)に4−ニトロベンズアルデヒド(151mg,1.0mmol)を加え、室温で30分撹拌した。ついで、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン(123mg,1.5mmol)を加えて室温で12時間攪拌した。その後、1Nの塩酸(2ml)を反応溶液に加えて有機層を分離し、水層を2mlのジクロロメタンにより二回抽出した。有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた溶液を減圧下、濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製したところ、3,4−ジメチル−6−(4−ニトロフェニル)−5,6−ジヒドロ−2H−ピランを無色固体として収率96%(223mg,0.96mmol)で得た。
【0097】
H NMR(400MHz, CDCl) δ1.63 (s, 3H), 1.72 (s, 3H), 2.11 (d, 1H, J = 16.6 Hz), 2.20 (m, 1H), 4.16 (d, 1H, J = 15.6 Hz),4.24 (d, 1H, J = 16.1 Hz),4.63(dd, 1H J=3.9,10.3 Hz), 7.55 (d, 2H, J = 8.9 Hz), 8.21 (d, 2H, J = 8.9 Hz);
13C NMR(100MHz, CDCl) δ13.86, 18.34, 38.44, 70.15, 75.18, 123.35, 124.65, 124.80, 126.39, 147.12,150.10;
IR (KBr) 2919, 2844, 1602, 1518, 1421, 1346, 1240, 1197, 850, 832, 671, 605 cm−1
【0098】
実施例2
4−クロロベンズアルデヒドと2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンとのヘテロディールス−アルダー反応(MAO−OTfを29mol%用いた実施例)
【化19】

【0099】
窒素雰囲気下、実施例1で調製したMAO−OTf(93mg,Al量0.58mmol,29mol%)のトルエン(2ml)に4−クロロベンズアルデヒド(280mg,2.0mmol)を加え、室温で30分撹拌した。ついで、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン(328mg,4.0mmol)を加えて室温で12時間攪拌した。その後、1Nの塩酸(2ml)を反応溶液に加えて有機層を分離し、水層を2mlのジクロロメタンにより二回抽出した。有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた溶液を減圧下、濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)により精製したところ、3,4−ジメチル−6−(4−クロロフェニル)−5,6−ジヒドロ−2H−ピランを無色液体として収率93%(413mg,1.86mmol)で得た。
【0100】
H NMR(400MHz, CDCl) δ1.62 (s, 3H), 1.71 (s, 3H), 2.10 (d, 1H, J = 16.6 Hz), 2.20 (m, 1H), 4.15 (d, 1H, J = 15.6 Hz), 4.53 (dd, 1H J=3.9,10.3 Hz), 7.33 (s, 4H);
13C NMR(100MHz, CDCl) δ13.82, 18.31, 38.47, 70.18, 75.54, 124.35, 124.60, 127.18, 126.43, 132.98,141.21;
IR (neat) 2918, 2857, 1602, 1493, 1450, 1384, 1240, 1092, 888, 821, 727, 610 cm−1
【0101】
実施例3
ベンズアルデヒドと2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンとのヘテロディールス−アルダー反応 (MAO−OTfを29mol%用いた実施例)
【化20】

【0102】
窒素雰囲気下、実施例1で調製したMAO−OTf(93mg,Al量0.58mmol,29mol%)のトルエン溶液に(2ml)にベンズアルデヒド(212mg,2.0mmol)を加え、室温で30分撹拌した。ついで、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン(330mg,4.0mmol)を加えて室温で48時間攪拌した。その後、1Nの塩酸(2ml)を反応溶液に加えて有機層を分離し、水層を2mlのジクロロメタンにより二回抽出した。有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた溶液を減圧下、濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)により精製したところ、3,4−ジメチル−6−フェニル−5,6−ジヒドロ−2H−ピランを無色液体として収率82%(308mg,1.64mmol)で得た。
【0103】
H NMR(400MHz, CDCl) δ1.62 (s, 3H), 1.72 (s, 3H), 2.10 (d, 1H, J = 16.6 Hz), 2.32 (dd, 1H J=11.7,16.6 Hz), 4.14 (d, 1H, J = 15.1 Hz),4.24 (d, 1H, J = 15.6 Hz),4.57(dd, 1H J=3.7,10.5 Hz), 7.20−7.42 (m, 5H);
13C NMR(100MHz, CDCl) δ13.85, 18.30, 38.54, 70.43,76.30, 123.90, 124,55, 125.89, 127.37, 128.24,142.90;
IR (neat) 2914, 2808, 1452, 1385, 1103, 760, 715, 670 cm−1
【0104】
比較例1
ベンズアルデヒドと2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンとのヘテロディールス−アルダー反応(MeAlNTfを20mol%用いた比較例)
【化21】

【0105】
窒素雰囲気下、MeAlのトルエン溶液(0.5M)100μlにHNTfのジクロロメタン溶液(0.5M)100μlをジクロロメタン4mlで希釈した後加え、室温で30分撹拌することでジメチルアルミニウムスルホニルアミド(MeAlNTf)を調製した[A.Marx and H. Yamamoto, Angew. Chem. Int. Ed. 2000, 39. 178参照]。MeAlNTfとシクロヘキサノンを等量混合し、重クロロホルム中で13C−NMRを測定したところ、シクロヘキサノンのカルボニル炭素のケミカルシフト値は212.8ppmであった。
【0106】
これに室温下、ベンズアルデヒド(26mg,0.25mmol)を加えて室温で30分撹拌した。ついで、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン(62mg,0.75mmol)を加えて室温で12時間攪拌した。その後、1Nの塩酸(2ml)を反応溶液に加えて有機層を分離し、水層を2mlのジクロロメタンにより二回抽出した。有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた溶液を減圧下、濃縮し、得られた粗生成物をH NMR(400MHz, CDCl)で分析したところ、3,4−ジメチル−6−フェニル−5,6−ジヒドロ−2H−ピランの生成は認められなかった。
【0107】
比較例2
ベンズアルデヒドと2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンとのヘテロディールス−アルダー反応(MAOを20mol%用いた比較例)
【化22】

【0108】
窒素雰囲気下、実施例1で調製したMAOのトルエン溶液(濃度3.4M)30μlをジクロロメタン2mlで希釈した。これに室温下、ベンズアルデヒド(53mg,0.5mmol)を加えて室温で30分撹拌した。ついで、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン(123mg,1.5mmol)を加えて室温で12時間攪拌した。その後、1Nの塩酸(2ml)を反応溶液に加えて有機層を分離し、水層を2mlのジクロロメタンにより二回抽出した。有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた溶液を減圧下、濃縮し、得られた粗生成物をH NMR(400MHz,CDCl)で分析したところ、3,4−ジメチル−6−フェニル−5,6−ジヒドロ−2H−ピランの生成は認められなかった。
【0109】
実施例4
4−クロロベンズアルデヒドと2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンとのヘテロディールス−アルダー反応(MAO−OTfを29mol%用いた実施例)
【化23】

【0110】
窒素雰囲気下、実施例1で調製したMAO−OTf(93mg,Al量0.58mmol,29mol%)のジクロロメタン(2ml)に4−クロロベンズアルデヒド(280mg,2.0mmol)を加え、室温で30分撹拌した。ついで、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン(328mg,4.0mmol)を加えて室温で12時間攪拌した。その後、1Nの塩酸(2ml)を反応溶液に加えて有機層を分離し、水層を2mlのジクロロメタンにより二回抽出した。有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。得られた溶液を減圧下、濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)により精製したところ、3,4−ジメチル−6−(4−クロロフェニル)−5,6−ジヒドロ−2H−ピランを無色液体として収率64%(284mg,1.28mmol)で得た。
【0111】
H NMR(400MHz, CDCl) δ1.62 (s, 3H), 1.71 (s, 3H), 2.10 (d, 1H, J = 16.6 Hz), 2.20 (m, 1H), 4.15 (d, 1H, J = 15.6 Hz), 4.53 (dd, 1H J=3.9,10.3 Hz), 7.33 (s, 4H);
13C NMR(100MHz, CDCl) δ13.82, 18.31, 38.47, 70.18, 75.54, 124.35, 124.60, 127.18, 126.43, 132.98,141.21;
IR (neat) 2918, 2857, 1602, 1493, 1450, 1384, 1240, 1092, 888, 821, 727, 610 cm−1
【0112】
実施例5
シクロペンタジエンとメタクロレインのディールス-アルダー反応(MAO−OTfを18mol%用いた実施例)
【化24】

【0113】
窒素雰囲気下、実施例1で調製したMAO-OTf (14.3 mg, Al量0.09mmol, 18 mol%)のトルエン溶液(2ml)を-40℃に冷却した。メタクロレイン (41μl, 0.5 mmol)およびシクロペンタジエン (127μl, 1.5 mmol)を加えて-40℃で6時間攪拌した。反応終了後、1規定の塩酸を加えて有機層を分離し、水層を2 ml のジクロロメタンにより抽出した。有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下濃縮し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製したところ、5-メチル-5-ホルミルビシクロ[2,2,1]ヘプタ-2-エンのエンド体およびエキソ体の異性体混合物を無色液体として収率88% (59.5mg, 0.44mmol) で得た。1H NMRを測定し生成物のホルミル基のプロトン積分比から、異性体比をエンド体:エキソ体=10:64と決定した。
【0114】
エキソ体:1H NMR(400MHz, CDCl3) δ0.75 (d, 1H J=12.0 Hz), 1.00 (s, 3H), 1.38-1.39 (m, 2H), 2.24 (dd, 1H J=3.9,12.0 Hz), 2.81 (bs, 1H), 2.89 (bs, 1H),6.10 (dd, 1H J=2.8,5.6 Hz), 6.29 (dd, 1H J=2.9,5.6 Hz) , 9.66 (s, 1H)
ホルミル基のプロトン化学シフト、エンド体;δ9.37 (s, 1H) : エキソ体;δ9.66 (s, 1H) 。
【0115】
実施例6
シクロペンタジエンとメチルビニルケトンのディールス-アルダー反応(MAO−OTfを18mol%用いた実施例)
【化25】

【0116】
窒素雰囲気下、実施例1で調製したMAO-OTf(28.6 mg, Al量0.18mmol, 18mol%)のトルエン溶液(4ml)を-78℃まで冷却した。そしてメチルビニルケトン (84μl, 1.0 mmol)を加えて、シクロペンタジエン (254μl, 3.0 mmol)を加えて-78℃で3時間攪拌した。反応終了後、1規定の塩酸を反応溶液に加えて有機層を分離し、水層をエーテルで抽出した。有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製したところ、5-アセチルビシクロ[2,2,1]ヘプタ-2-エンのエンド体のみを無色液体として収率99% (134mg, 0.99 mmol) で得た。この際、エキソ体の生成は認められなかった。
【0117】
エンド体:1H NMR(400MHz, CDCl3) δ1.30 (d, 1H J=8.1 Hz), 1.42-1.48 (m, 2H), 1.69-1.75 (m, 1H), 2.10 (s, 3H) , 2.87 (bs, 1H), 2.96-3.00 (m, 1H), 3.21 (bs, 1H), 5.82-5.84 (m, 1H), 6.12-6.14 (m, 1H)
【0118】
実施例7
シクロペンタジエンとアクリル酸メチルのディールス-アルダー反応(MAO−OTfを18mol%用いた実施例)
【化26】

【0119】
窒素雰囲気下、実施例1で調製したMAO-OTf(28.6mg, 0.18mmol, 18mol%)のトルエン溶液(4ml)を-78℃に冷却した。そしてアクリル酸メチル (90μl, 1.0 mmol)を加えて、シクロペンタジエン (254μl, 3.0 mmol)を加えて-78℃で6時間攪拌した。反応終了後、1規定の塩酸を加えて有機層を分離し、水層をエーテルで抽出した。有機層を合わせて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製したところ、2-メトキシカルボニルビシクロ[2,2,1]ヘプタ-5-エンのエンド体およびエキソ体の混合物を無色液体として収率98% (149 mg, 0.98 mmol) で得た。1H NMRを測定し生成物のメトキシカルボニル基のメチル基の積分比から異性体比を決定した。エンド体:エキソ体=90:10。
【0120】
エンド体:1H NMR(400MHz, CDCl3) δ1.27 (d, 1H J=8.3 Hz), 1.35-1.43 (m, 2H), 1.87-1.93 (m, 1H), 2.90 (bs, 1H), 2.92-2.96 (m, 1H), 3.19 (bs, 1H), 3.61 (s, 3H), 5.92 (dd, 1H J=2.8,5.6 Hz), 6.18 (dd, 1H J=2.8,5.6 Hz)
メチル基の化学シフト;エンド体:δ3.61 (s, 3H)、エキソ体:δ3.68 (s, 3H)。
【0121】
実施例8
シクロペンタジエンとメタクリル酸メチルのディールス-アルダー反応(MAO−OTfを18mol%用いた実施例)
【化27】

【0122】
窒素雰囲気下、実施例1で調製したMAO-OTf(14.3 mg, Al量0.09mmol, 18mol%)のトルエン溶液(2ml)を0℃に冷却した。メタクリル酸メチル (54μl, 0.5 mmol)およびシクロペンタジエン (127μl, 1.5 mmol)を加えて0℃で20時間攪拌した。反応終了後、1規定の塩酸を加え有機層を分離し、水層をエーテルにより抽出した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製したところ、2-メトキシカルボニル-2-メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタ-5-エンのエンド体およびエキソ体の混合物を無色液体として収率89% (74mg, 0.45 mmol) で得た。1H NMRを測定し生成物のメトキシカルボニル基のメチル基の積分比から異性体比を決定した。エンド体:エキソ体=37:38。
【0123】
エキソ体:1H NMR(400MHz, CDCl3) δ0.82 (dd, 1H J=2.7,12.2 Hz), 1.07 (s, 3H) ,1.32-1.42 (m, 2H), 2.40 (dd, 1H J=3.8,12.1 Hz), 2.78 (bs, 1H) , 2.99 (bs, 1H), 3.66 (s, 3H), 6.04 (dd, 1H J=3.2,5.6 Hz), 6.09 (dd, 1H J=3.2,5.6 Hz)
メチル基の化学シフト;エンド体:δ3.57 (s, 3H) 、エキソ体:δ3.66 (s, 3H)
【0124】
実施例9
シクロペンタジエンとアクリロニトリルのディールス-アルダー反応(MAO−OTfを18mol%用いた実施例)
【化28】

【0125】
窒素雰囲気下、実施例1で調製したMAO-OTf(28.6 mg, Al量0.18mmol, 18mol%)のトルエン溶液(2ml)を0℃に冷却した。アクリロニトリル (65μl, 1.0 mmol)およびシクロペンタジエン (254μl, 3.0 mmol)を加えて0℃で6時間攪拌した。反応終了後、1規定の塩酸を加えて有機層を分離し、水層をエーテルで抽出した。有機層を合わせて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=20:1)により精製したところ、2-シアノビシクロ[2,2,1]ヘプタ-5-エンのエンド体およびエキソ体の混合物を無色液体として収率98% (117mg, 0.98 mmol) で得た。1H NMRを測定し生成物の二重結合上のプロトンの積分比により異性体比を決定した。エンド体:エキソ体=65:29。
【0126】
エンド体:1H NMR(400MHz, CDCl3) δ1.18 (dd, 1H J=0.6,8.9 Hz), 1.32 (dt, 1H J=3.4,11.9 Hz), 1.48-1.54 (m, 1H), 2.09-2.15 (m, 1H), 2.83 (dt, 1H J=3.8,9.4 Hz), 3.01 (bs, 1H), 3.21 (bs, 1H), 6.18 (dd, 1H J=2.8,5.6 Hz), 6.31 (dd, 1H J=3.2,5.6 Hz)
二重結合上のプロトンの化学シフト;エンド体;δ6.31 (dd, 1H) : エキソ体;δ6.02 (dd, 1H)。
【0127】
実施例10
シクロペンタジエンと3-アクリロイルオキサゾリジノンを用いるディールス-アルダー反応(MAO−OTfを18mol%用いた実施例)
【化29】

【0128】
窒素雰囲気下、実施例1で調製したMAO-OTf (14.3 mg, Al量0.09 mmol, 18mol%)のトルエン溶液(2ml)に3-アクリロイルオキサゾリジノン(71mg, 0.5 mmol)を加え、さらにトルエン(2ml)を加えて-20℃に冷却した。その後、シクロペンタジエン (127μl, 1.5 mmol)を加えて-20℃で20時間攪拌した。反応終了後、1規定の塩酸を加えて有機層を分離し、水層をエーテルで抽出した。有機層を合わせて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=1:1)により精製したところ、3-(ビシクロ[2,2,1]ヘプタ-5’-エン-2’-カルボニル)-2-オキサゾリジノンのエンド体およびエキソ体の異性体混合物を無色液体として収率93%(96 mg, 0.47 mmol) で得た。1H NMRを測定し二重結合上のプロトンの積分比により異性体比を決定した。エンド体:エキソ体=73:9。
【0129】
エンド体:1H NMR(400MHz, CDCl3) δ1.39-1.51 (m, 3H), 1.92-1.98 (m, 1H), 2.94 (bs, 1H), 3.31 (bs, 1H), 3.91-4.05 (m, 3H), 4.35-4.44 (m, 2H), 5.87 (dd, 1H J=2.8,5.6 Hz), 6.24 (dd, 1H J=2.8,5.6 Hz)
二重結合上のプロトンの化学シフト;エンド体:δ5.87 (dd, 1H J=2.8,5.6 Hz) , 6.24 (dd, 1H J=2.8,5.6 Hz) : エキソ体:δ6.17-6.19 (m, 2H)
【0130】
実施例11
(1)触媒-2(以後、MMAO -OTfと称す)の合成
窒素雰囲気下、室温で市販の修飾ポリメチルアルミノキサンのトルエン溶液 (東ソー・ファインケム社製 MMAO-3A/Tol, iBu/Me=28/72(mol/mol), 濃度2.17M) 1.66ml(Al量3.6 mmol)にトリフルオロメタンスルホン酸(422mg, 2.81 mmol)のトルエン溶液(10mL)を30分かけて滴下した。さらに室温で17時間撹拌したところMMAO−OTfが沈殿した。さらに、ヘキサン50mlを加えて沈殿を促進した。次いで、固体生成物を濾別し、減圧下で3時間乾燥し溶媒を留去した。その後、グローブボックスに入れ計量を行った。580mgのMMAO-OTfを得た。分析の結果、得られたMMAO−OTfには16.2wt%のAl原子が含まれていた。NMRのデータから推定したMMAO−OTfの各繰返単位のモル比(Alベース表記)は以下のとおりである。
MeAlOTf:iBuAlOTf:−Al(OTf)−O−:−AlMe−O−:−AliBu−O− =2:2:74:16:6
【0131】
(2) シクロペンタジエンとアクリル酸メチルのディールス-アルダー反応(MMAO−OTfを20mol%用いた実施例)
【化30】

【0132】
窒素雰囲気下、MMAO-OTf(34 mg, 0.20mmol, 20mol%)のトルエン溶液(4ml)を-78℃に冷却した。そしてアクリル酸メチル (90μl, 1.0 mmol)を加えて、シクロペンタジエン (254μL, 3.0 mmol)を加えて-78℃から自然に昇温させて20時間攪拌した。反応終了後、1規定の塩酸を加えて有機層を分離し、水層をエーテルで抽出した。有機層を合わせて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製したところ、2-メトキシカルボニルビシクロ[2,2,1]ヘプタ-5-エンのエンド体およびエキソ体の混合物を無色液体として収率98%(149 mg, 0.98 mmol) で得た。1H NMRを測定し生成物のメトキシカルボニル基のメチル基の積分比から異性体比を決定した。エンド体:エキソ体=90:10。
【0133】
エンド体:1H NMR(400MHz, CDCl3) δ1.27 (d, 1H J=8.3 Hz), 1.35-1.43 (m, 2H), 1.87-1.93 (m, 1H), 2.90 (bs, 1H), 2.92-2.96 (m, 1H), 3.19 (bs, 1H), 3.61 (s, 3H), 5.92 (dd, 1H J=2.8,5.6 Hz), 6.18 (dd, 1H J=2.8,5.6 Hz)
メチル基の化学シフト;エンド体:δ3.61 (s, 3H)、エキソ体:δ3.68 (s, 3H)。
【0134】
実施例12
(1) 触媒-3(以後、PBAO−OTfと称す)の合成
窒素雰囲気下、室温で市販のポリブチルアルミノキサンのトルエン溶液 (東ソー・ファインケム社製 PBAO/Tol, 濃度1.0M) 3.6ml(Al量3.6 mmol)にトリフルオロメタンスルホン酸(422mg, 2.81 mmol)のトルエン溶液(10mL)を30分かけて滴下した。さらに室温で17時間撹拌したところPBAO−OTfが沈殿した。さらに、ヘキサン50mlを加えて沈殿を促進した。次いで、固体生成物を濾別し、減圧下で3時間乾燥し溶媒を留去した。その後、グローブボックスに入れ計量を行った。560.4mgのPBAO−OTfを得た。分析の結果、得られたPBAO−OTfには15.6wt%のAl原子が含まれていた。PBAO−OTfとシクロヘキサノンを等量混合し、重クロロホルム中で13C-NMRを測定したところ、カルボニル炭素のケミカルシフト値は212.0ppmであった。NMRのデータから推定したPBAO−OTfの各繰返単位のモル比(Alベース表記)は以下のとおりである。
iBuAlOTf:−Al(OTf)−O−:−AliBu−O−=14:66:20
【0135】
(2) シクロペンタジエンとアクリル酸メチルのディールス-アルダー反応(PBAO−OTfを23mol%用いた実施例)
【化31】

【0136】
窒素雰囲気下、PBAO−OTf(39.8mg, 0.230mmol, 23mol%)のトルエン溶液(4ml)を-78℃に冷却した。そしてアクリル酸メチル (90μl, 1.0 mmol)を加えて、シクロペンタジエン (254μL, 3.0 mmol)を加えて-78℃から自然に昇温させて20時間攪拌した。反応終了後、1規定の塩酸を加えて有機層を分離し、水層をエーテルで抽出した。有機層を合わせて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製したところ、2-メトキシカルボニルビシクロ[2,2,1]ヘプタ-5-エンのエンド体およびエキソ体の混合物を無色液体として収率90%(136.8mg, 0.90mmol) で得た。1H NMRを測定し生成物のメトキシカルボニル基のメチル基の積分比から異性体比を決定した。エンド体:エキソ体=88:12。
【0137】
エンド体:1H NMR(400MHz, CDCl3) δ1.27 (d, 1H J=8.3 Hz), 1.35-1.43 (m, 2H), 1.87-1.93 (m, 1H), 2.90 (bs, 1H), 2.92-2.96 (m, 1H), 3.19 (bs, 1H), 3.61 (s, 3H), 5.92 (dd, 1H J=2.8,5.6 Hz), 6.18 (dd, 1H J=2.8,5.6 Hz)
メチル基の化学シフト;エンド体:δ3.61 (s, 3H)、エキソ体:δ3.68 (s, 3H)。
【0138】
比較例3
シクロペンタジエンとアクリロニトリルのディールス-アルダー反応 (MeAlNTfを20mol%用いた比較例)
【化32】

【0139】
窒素雰囲気下、Me3Alのトルエン溶液(0.5 M)0.32μlにHNTf2 のジクロロメタン溶液(0.5 M) 0.32μlをジクロロメタン4mlで希釈した後加え、室温で30分撹拌することでMe2AlNTf2 (0.16 mmol)を調製した[A. Marx and H. Yamamoto, Angew. Chem. Int. Ed. 2000, 39. 178参照]。この溶液を0℃に冷却し、アクリロニトリル (52μl, 0.8 mmol)およびシクロペンタジエン (202μl, 2.4 mmol)を加えて0℃で6時間攪拌した。反応終了後、1規定の塩酸を加えて有機層を分離し、水層をエーテルで抽出した。有機層を合わせて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=20:1)により精製したところ、2-シアノビシクロ[2,2,1]ヘプタ-5-エンのエンド体およびエキソ体の混合物を無色液体として収率15% (14 mg, 0.12 mmol) で得た。1H NMRを測定し生成物の二重結合上のプロトンの積分比により異性体比を決定した。エンド体:エキソ体=72:54。
【0140】
エンド体:1H NMR(400MHz, CDCl3) δ1.18 (dd, 1H J=0.6,8.9 Hz), 1.32 (dt, 1H J=3.4,11.9 Hz), 1.48-1.54 (m, 1H), 2.09-2.15 (m, 1H), 2.83 (dt, 1H J=3.8,9.4 Hz), 3.01 (bs, 1H), 3.21 (bs, 1H), 6.18 (dd, 1H J=2.8,5.6 Hz), 6.31 (dd, 1H J=3.2,5.6 Hz)
二重結合上のプロトンの化学シフト;エンド体;δ6.31 (dd, 1H) : エキソ体;δ6.02 (dd, 1H)。
【0141】
比較例4
シクロペンタジエンとメタクリル酸メチルのディールス-アルダー反応(MAOを150mol%用いた比較例)
【化33】

【0142】
窒素雰囲気下、Me3Alのトルエン溶液(0.5M)1.5ml(Al量0.75 mmol, 150 mol%)のジクロロメタン溶液(2ml)を0℃に冷却した。メタクリル酸メチル (54μl, 0.5 mmol)およびシクロペンタジエン (127μl, 1.5 mmol)を加えて0℃で20時間攪拌した。反応終了後、1規定の塩酸を加え有機層を分離し、水層をエーテルにより抽出した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機溶媒を減圧留去して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン:酢酸エチル=10:1)により精製したところ、2-メトキシカルボニル-2-メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタ-5-エンのエンド体およびエキソ体の混合物を無色液体として収率79% (65.3mg, 0.40 mmol) で得た。1H NMRを測定し生成物のメトキシカルボニル基のメチル基の積分比から異性体比を決定した。エンド体:エキソ体=97:3。
【0143】
エキソ体:1H NMR(400MHz, CDCl3) δ0.82 (dd, 1H J=2.7,12.2 Hz), 1.07 (s, 3H) ,1.32-1.42 (m, 2H), 2.40 (dd, 1H J=3.8,12.1 Hz), 2.78 (bs, 1H) , 2.99 (bs, 1H), 3.66 (s, 3H), 6.04 (dd, 1H J=3.2,5.6 Hz), 6.09 (dd, 1H J=3.2,5.6 Hz)
メチル基の化学シフト;エンド体:δ3.57 (s, 3H) 、エキソ体:δ3.66 (s, 3H)

【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明は、やヘテロディールス-アルダー反応およびディールス-アルダー反応用として有用な性能を示す新規なルイス酸触媒を提供するもので、種々の有機合成反応が関係する分野に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記繰返単位(1)および(2)または(1)、(2)および(3)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物を含むヘテロディールス-アルダー反応またはディールス-アルダー反応用触媒であって、
繰返単位(1)中、Rはハロゲン原子、C1〜C6のアルキル基、C2〜C6のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子で置換されていても良く、
繰返単位(2)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良く、
繰返単位(3)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基またはC6〜C20のアリール基を表し、前記アルキル基、アルケニル基およびアリール基はハロゲン原子、水酸基またはC1〜C8の炭化水素基で置換されていても良く、
繰返単位(1)および(2)の合計数は2〜30の範囲であり、繰返単位(1)、(2)および(3)の合計数は3〜30の範囲であり、繰返単位(1)および(2)または(1)、(2)および(3)の順番は任意である、前記触媒。
【化1】

【請求項2】
前記スルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物は繰返単位(1)および(2)を含み、繰返単位(1)と(2)のモル比((1):(2))は、2:8〜10:0の範囲である請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記スルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物は繰返単位(1)、(2)および(3)を含み、繰返単位(1)と(2)および(3)のモル比((1):((2)+(3)))は、2:8〜10:0の範囲であり、繰返単位(2)と(3)のモル比((2):(3))は、1:10〜10:1の範囲である請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記スルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物は、環状化合物であるか、または線状化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の触媒。
【請求項5】
繰返単位(1)および(2)または(1)、(2)および(3)の合計数が異なる2以上の複数のスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の触媒。
【請求項6】
前記Rは、トリフルオロメタン基、ペンタフルオロエタン基及びヘプタフルオロプロパン基からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の固体ルイス酸触媒。
【請求項7】
下記一般式(6)で示されるトリアルキルアルミニウム化合物および下記一般式(7)で示されるスルホン酸ジアルキルアルミニウム化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに含む請求項1〜6のいずれかに記載の触媒。
【化2】

(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立してC1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C20のアリール基などの炭化水素基、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基またはアリロキシ基を示し、R、RおよびRの内、少なくとも一つは炭化水素基、アルコキシ基またはアリロキシ基である。)
【化3】

(式中、R,R,Rは前記と同じ。)
【請求項8】
請求項1に記載の繰返単位(1)および(2)または(1)、(2)および(3)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物を含む触媒の存在下に、下記一般式(I)で示されるアルデヒド化合物と下記一般式(II)で示される共役ジエン化合物とを環化付加反応させることを含む、下記一般式(III)で示されるジヒドロピラン化合物の製造方法。
【化4】

(式中、Rは水素原子、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、アルキル基で置換されていても良いC3〜C20のシクロアルキル基、またはアルキル基若しくはアルコキシ基で置換されていても良いC6〜C20のアリール基を示す。)
【化5】

(式中、R, R, R10およびR11はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1〜C10アルキル基、C2〜C10のアルケニル基、C6〜C10のアリール基、C1〜C10のアルコキシ基、またはC6〜C10のアリールオキシ基を表し、但し、RとR11が結合して炭素環を形成していても良い。)
【化6】

(式中、R, R, R, R10, R11は前記と同じ。)
【請求項9】
上記の繰返単位(1)および(2)または(1)、(2)および(3)を含むスルホン酸変成ポリアルミノキサン化合物を含む触媒の存在下に、下記一般式(IV)で示される共役ジエン化合物と下記一般式(V)で示されるジエノフィル化合物とを環化付加反応させることを含む、下記一般式(VI)で示されるディールス-アルダー付加物の製造方法。
【化7】

(式中、R12, R13, R14, R15, R16およびR17はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6のアルキル基、C1〜C5のアルコキシ基、C6〜C10アリール基、C2〜C5のアルキルカルボニルオキシ基、またはC2〜C6のアルコキシカルボニル基を表し、但し、R12およびR17は結合して環状構造の一部を形成していても良い。)
【化8】

(式中、R18,R19,R20及びR21はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、ホルミル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、C1〜C10アルキル基、C2〜C10のアルケニル基、C6〜C10のアリール基、C1〜C10のアルコキシ基、C2〜C5のアルキルカルボニルオキシ基、C2〜C5のアルカノイル基、C2〜C5のアルコキシカルボニル基、またはC6〜C10のアリールオキシ基を表し、但し、R18,R19,R20及びR21の少なくとも一つは電子吸引性置換基である。)
【化9】

(式中、R12,R13,R14,R15,R16,R17,R18,R19,R20およびR21は前記と同じ。)
で示されるディールス-アルダー付加物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−56396(P2011−56396A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208708(P2009−208708)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(301005614)東ソー・ファインケム株式会社 (38)
【出願人】(506122327)公立大学法人大阪市立大学 (122)
【Fターム(参考)】