説明

(メタ)アクリル系接着剤

【課題】耐ブロッキング性、接着性および耐候性に優れた接着剤、前記接着剤からなる接着剤層を有する太陽電池モジュール用バックシート、太陽電池モジュールおよび太陽電池を提供すること。
【解決手段】(メタ)アクリル系重合体を含有する(メタ)アクリル系接着剤であって、前記(メタ)アクリル系重合体がカルボニル基および当該カルボニル基に隣接する炭化水素基を有する基をもつ(メタ)アクリル系重合体であることを特徴とする(メタ)アクリル系接着剤、前記接着剤からなる接着剤層を有する太陽電池モジュール用バックシート、太陽電池モジュールおよび太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル系接着剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、単量体としてカルボン酸ビニルが用いられた重合体を含有する被着体、特にエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有する被着体などに好適に使用することができる(メタ)アクリル系接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単量体としてカルボン酸ビニルが用いられた重合体、特にエチレン−酢酸ビニル共重合体は、可撓性を有し、水および紫外線に対する安定性に優れているとともに、ゴム弾性、柔軟性、強靭性、低温特性、耐候性、透明性、剛性、耐摩擦性、電気絶縁性などにも優れていることから、農業用フィルム、建築土木用シート、人工芝、太陽電池用セル封止剤、自動車用外装部品、食品包装紙、靴底などの材料として幅広く用いられている。
【0003】
前記材料には、ポリエステルウレタン系接着剤(例えば、特許文献1参照)、ポリエーテルウレタン系接着剤(例えば、特許文献2参照)、ウレタン変性アクリル樹脂系接着剤(例えば、特許文献3参照)などのウレタン系接着剤が用いられている。しかし、これらの接着剤には、接着性が低く、特に屋外で使用される環境ではさらに耐候性に劣るという欠点がある。
【0004】
そこで、近年、耐ブロッキング性、接着性および耐候性に優れた接着剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−043238号公報
【特許文献2】特開2011−042756号公報
【特許文献3】特開2011−153204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、耐ブロッキング性、接着性および耐候性に優れた接着剤を提供することを目的とする。本発明は、また前記接着剤からなる接着剤層を有する太陽電池モジュール用バックシート、太陽電池モジュールおよび太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1) (メタ)アクリル系重合体を含有する(メタ)アクリル系接着剤であって、前記(メタ)アクリル系重合体が、カルボニル基および当該カルボニル基に隣接する炭化水素基を有する基をもつ(メタ)アクリル系重合体であることを特徴とする(メタ)アクリル系接着剤、
(2) (メタ)アクリル系重合体が、カルボニル基および当該カルボニル基に隣接する炭化水素基を有する基を側鎖にもつ前記(1)に記載の(メタ)アクリル系接着剤、
(3) 前記(1)または(2)に記載の(メタ)アクリル系接着剤からなる接着剤層が形成されてなる太陽電池モジュール用バックシート、
(4) 前記(3)に記載の太陽電池モジュール用バックシートを有することを特徴とする太陽電池モジュール、および
(5) 前記(4)に記載の太陽電池モジュールを有することを特徴とする太陽電池
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐ブロッキング性、接着性および耐候性に優れた(メタ)アクリル系接着剤が提供される。本発明の太陽電池モジュール用バックシートは、前記(メタ)アクリル系接着剤からなる接着剤層が形成されているので、当該接着剤層が耐ブロッキング性、接着性および耐候性に優れている。また、本発明の太陽電池モジュールは、前記太陽電池モジュール用バックシートを有し、本発明の太陽電池は、当該太陽電池モジュールを有するので、いずれも、これらに用いられている接着剤層が耐ブロッキング性、接着性および耐候性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の(メタ)アクリル系接着剤が用いられた太陽電池モジュール用バックシートの一実施態様を示す概略断面図である。
【図2】バリア層を有する、本発明の(メタ)アクリル系接着剤が用いられた太陽電池モジュール用バックシートの他の一実施態様を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の(メタ)アクリル系接着剤は、前記したように、(メタ)アクリル系重合体を含有し、当該(メタ)アクリル系重合体がカルボニル基および当該カルボニル基に隣接する炭化水素基を有する基をもつ(メタ)アクリル系重合体〔以下、(メタ)アクリル系重合体という〕であることを特徴とする。
【0011】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル系」は、アクリル系および/またはメタクリル系を意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0012】
(メタ)アクリル系重合体は、カルボニル基および当該カルボニル基に隣接する炭化水素基を有する基をもつ。カルボニル基および当該カルボニル基に隣接する炭化水素基を有する基は、接着性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、(メタ)アクリル系重合体の側鎖に存在することが好ましい。
【0013】
カルボニル基およびカルボニル基に隣接する炭化水素基を有する基としては、例えば、式(I):
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基または水酸基、R2は炭素数1〜4のアルキレン基または炭素数1〜4のアミノアルキレン基を示す)
で表される基、式(II):
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、R1およびR2は前記と同じ)
で表される基などが挙げられる。これらのカルボニル基およびカルボニル基に隣接する炭化水素基を有する基のなかでは、式(II)で表される基が好ましい。
【0018】
式(I)および式(II)において、R1は、炭素数1〜18のアルキル基または水酸基であるが、接着性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基または水酸基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基または水酸基、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基または水酸基である。好適なアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。R1のなかでは、接着性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、メチル基および水酸基がより一層好ましい。
【0019】
式(I)および式(II)において、R2は、炭素数1〜4のアルキレン基または炭素数1〜4のアミノアルキレン基である。炭素数1〜4のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基およびtert-ブチレン基が挙げられる。炭素数1〜4のアミノアルキレン基としては、例えば、式(III):
−R3−NH− (III)
(式中、R3は、炭素数1〜4のアルキレン基を示す)
で表されるアミノアルキレン基などが挙げられる。R3の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基およびtert-ブチレン基が挙げられる。
【0020】
2のなかでは、接着性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、炭素数1〜4のアルキレン基および式(II)で表されるアミノアルキレン基において、R3が炭素数1〜4のアルキレン基である基が好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル系重合体は、カルボニル基および当該カルボニル基に隣接する炭化水素基を有する基をもつ単量体を含有する単量体成分を重合させることにより、調製することができる。
【0022】
カルボニル基および当該カルボニル基に隣接する炭化水素基を有する基をもつ単量体としては、例えば、アクリロイルオキシメチルコハク酸、メタクリロイルオキシメチルコハク酸、アクリロイルオキシエチルコハク酸、メタクリロイルオキシエチルコハク酸、アクリロイルオキシプロピルコハク酸、メタクリロイルオキシプロピルコハク酸、アクリロイルオキシブチルコハク酸、メタクリロイルオキシブチルコハク酸などのアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリロイルオキシアルキルコハク酸;アセトアセトキシメチルアクリル酸、アセトアセトキシメチルメタクリル酸、アセトアセトキシエチルアクリル酸、アセトアセトキシエチルメタクリル酸、アセトアセトキシプロピルアクリル酸、アセトアセトキシプロピルメタクリル酸、アセトアセトキシブチルアクリル酸、アセトアセトキシブチルメタクリル酸などのアルキル基の炭素数が1〜4のアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリル酸;ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド;N−(2−オキソメチル)アクリルアミド、N−(2−オキソメチル)メタクリルアミド、N−(2−オキソエチル)アクリルアミド、N−(2−オキソエチル)メタクリルアミド、N−(2−オキソプロピル)アクリルアミド、N−(2−オキソプロピル)メタクリルアミド、N−(2−オキソブチル)アクリルアミド、N−(2−オキソブチル)メタクリルアミドなどのアルキル基の炭素数が1〜4のN−(2−オキソアルキル)(メタ)アクリルアミド;N−(メタンアミドメチル)アクリルアミド、N−(メタンアミドメチル)メタクリルアミド、N−(メタンアミドエチル)アクリルアミド、N−(メタンアミドエチル)メタクリルアミド、N−(メタンアミドプロピル)アクリルアミド、N−(メタンアミドプロピル)メタクリルアミド、N−(メタンアミドブチル)アクリルアミド、N−(メタンアミドブチル)メタクリルアミド、N−(エタンアミドメチル)アクリルアミド、N−(エタンアミドメチル)メタクリルアミド、N−(エタンアミドエチル)アクリルアミド、N−(エタンアミドエチル)メタクリルアミド、N−(エタンアミドプロピル)アクリルアミド、N−(エタンアミドプロピル)メタクリルアミド、N−(エタンアミドブチル)アクリルアミド、N−(エタンアミドブチル)メタクリルアミド、N−(プロパンアミドメチル)アクリルアミド、N−(プロパンアミドメチル)メタクリルアミド、N−(プロパンアミドエチル)アクリルアミド、N−(プロパンアミドエチル)メタクリルアミド、N−(プロパンアミドプロピル)アクリルアミド、N−(プロパンアミドプロピル)メタクリルアミド、N−(プロパンアミドブチル)アクリルアミド、N−(プロパンアミドブチル)メタクリルアミド、N−(ブタンアミドメチル)アクリルアミド、N−(ブタンアミドメチル)メタクリルアミド、N−(ブタンアミドエチル)アクリルアミド、N−(ブタンアミドエチル)メタクリルアミド、N−(ブタンアミドプロピル)アクリルアミド、N−(ブタンアミドプロピル)メタクリルアミド、N−(ブタンアミドブチル)アクリルアミド、N−(ブタンアミドブチル)メタクリルアミド、N−(ペンタンアミドメチル)アクリルアミド、N−(ペンタンアミドメチル)メタクリルアミド、N−(ペンタンアミドエチル)アクリルアミド、N−(ペンタンアミドエチル)メタクリルアミド、N−(ペンタンアミドプロピル)アクリルアミド、N−(ペンタンアミドプロピル)メタクリルアミド、N−(ペンタンアミドブチル)アクリルアミド、N−(ペンタンアミドブチル)メタクリルアミドなどのアルカンの炭素数が1〜6であり、アルキル基の炭素数が1〜4のN−(アルカンアミドアルキル)(メタ)アクリルアミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0023】
(メタ)アクリル系重合体におけるカルボニル基および当該カルボニル基に隣接する炭化水素基を有する基の含有率は、単量体成分におけるカルボニル基および当該カルボニル基に隣接する炭化水素基を有する基をもつ単量体の含有率を調整することにより、容易に調節することができる。
【0024】
単量体成分におけるカルボニル基および当該カルボニル基に隣接する炭化水素基を有する基をもつ単量体の含有率は、接着性を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、耐候性および電気出力特性を向上させ、バックシートの外観を良好にする観点から、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0025】
単量体成分において、カルボニル基および当該カルボニル基に隣接する炭化水素基を有する基をもつ単量体以外の単量体として、他の単量体が用いられる。他の単量体は、カルボニル基および当該カルボニル基に隣接する炭化水素基を有する基をもつ単量体との合計量が100質量%となるように調整される。したがって、単量体成分における他の単量体の含有率は、耐候性および電気出力特性を向上させ、バックシートの外観を良好にする観点から、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、接着性を向上させる観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
【0026】
他の単量体は、得られる(メタ)アクリル系重合体に要求される性質に応じて適宜選択して用いることができる。
【0027】
他の単量体としては、例えば、カルボキシル基を有する単量体、酸性リン酸エステル系単量体、水酸基を有する単量体、(メタ)アクリル酸エステル、窒素原子を有する単量体、2個以上の重合性二重結合を有する単量体、芳香族系単量体、ハロゲン原子を有する単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの脂肪族モノカルボン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
酸性リン酸エステル系単量体としては、例えば、2−アクリロイルオキシメチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシメチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの酸性リン酸エステル系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
水酸基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチルなどのアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルアクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜4のカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜4の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルメタクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル、α−ヒドロキシメチルメタクリル酸エチルなどの各アルキル基の炭素数が1〜4のα−ヒドロキシアルキルアクリル酸アルキルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水酸基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレートは、例えば、ダイセル化学工業(株)製、商品名:プラクセルFM1、プラクセルFM1D、プラクセルFM2D、プラクセルFM3、プラクセルFA1DM、プラクセルFA2Dなどとして商業的に容易に入手することができる。
【0031】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのアルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸アルキル;アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのシクロアルキル基の炭素数が3〜8の(メタ)アクリル酸シクロアルキル;アクリル酸シクロヘキシルメチル、メタクリル酸シクロヘキシルメチル、アクリル酸シクロヘキシルエチル、メタクリル酸シクロヘキシルエチル、アクリル酸シクロヘキシルプロピル、メタクリル酸シクロヘキシルプロピル、アクリル酸4−メチルシクロヘキシルメチル、メタクリル酸4−メチルシクロヘキシルメチルなどのアルキル基の炭素数が1〜8であり、シクロアルキル基の炭素数が3〜8である(メタ)アクリル酸シクロアルキルアルキルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
窒素原子を有する単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド、アクリル酸N,N’−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N’−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、アクリル酸イミド、メタクリル酸イミドなどの窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの窒素原子を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0033】
2個以上の重合性二重結合を有する単量体としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの2個以上の重合性二重結合を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0034】
芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの芳香族系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0035】
ハロゲン原子を有する単量体としては、例えば、塩化ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ハロゲン原子を有する単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
ビニルエステル系単量体としては、例えば、酢酸ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ビニルエステル系単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
ビニルエーテル系単量体としては、例えば、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのビニルエーテル系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0038】
前記他の単量体のなかでは、水酸基を有する単量体および(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、アルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸アルキルおよびシクロアルキル基の炭素数が3〜8の(メタ)アクリル酸シクロアルキルがより好ましい。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
また、前記他の単量体には、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、ベンゾトリアゾール系単量体、ベンゾフェノン系単量体、トリアジン系単量体などの紫外線吸収性基を有する単量体;紫外線安定性基を有する単量体などが含まれていてもよい。紫外線吸収性基を有する単量体は、例えば、大塚化学(株)製、商品名:RUVA93、大阪有機化学工業(株)製、商品名:BP−1Aなどとして商業的に容易に入手することができる。紫外線安定性基を有する単量体は、例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87などのアデカスタブシリーズなどとして商業的に容易に入手することができる。
【0040】
また、単量体成分には、耐加水分解性および耐絶縁性を向上させる観点から、ビスアリールフルオレンを基本構造としたアクリル酸を含有させてもよい。ビスアリールフルオレンを基本構造としたアクリル酸は、例えば、大阪ガスケミカル(株)製、商品名:オグソールEA−0200、オグソールEA−0200、オグソールEA−0500、オグソールEA−1000などとして商業的に容易に入手することができる。また、単量体成分には、特開2002−69130号公報に開示されているような(メタ)アクリル酸のシクロヘキシルアルキルエステル、ジシクロペンテニル(メタ)アクリル酸、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリル酸、ジシクロペンタニル(メタ)アクリル酸、トリシクロ[5.2.1.02.6]デカ−8−イル(メタ)アクリル酸やテルペン系(メタ)アクリル酸などを含有させることもできる。
【0041】
単量体成分を重合させる際には、分子量分布の増大やゲル化を抑制する観点から、必要により連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸などのメルカプトカルボン酸類;メルカプト酢酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸n−オクチル、3−メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸ステアリル、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)などのメルカプトカルボン酸エステル類;エチルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、1,2−ジメルカプトエタンなどのアルキルメルカプタン類;2−メルカプトエタノール、4−メルカプト−1−ブタノールなどのメルカプトアルコール類;ベンゼンチオール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール、2−ナフタレンチオールなどの芳香族メルカプタン類;トリス〔(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル〕イソシアヌレートなどのメルカプトイソシアヌレート類;2−ヒドロキシエチルジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどのジスルフィド類;ベンジルジエチルジチオカルバメートなどのジチオカルバメート類;α−メチルスチレンダイマーなどのダイマー類;四臭化炭素などのハロゲン化アルキルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの連鎖移動剤のなかでは、入手が容易であること、架橋防止性に優れていること、重合速度の低下の度合いが小さいことなどから、メルカプトカルボン酸類、メルカプトカルボン酸エステル類、アルキルメルカプタン類、メルカプトアルコール類、芳香族メルカプタン類、メルカプトイソシアヌレート類などのメルカプト基を有する化合物が好ましい。
【0042】
連鎖移動剤の量は、単量体成分の組成、重合温度などの重合条件、目標とする重合体の分子量などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得る場合には、単量体成分100質量部あたり、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜15質量部であることがより好ましい。
【0043】
単量体成分を重合させる方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0044】
単量体成分を溶液重合法によって重合させる場合、溶媒として、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒などの有機溶媒が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。溶媒の量は、重合条件、単量体成分の組成、得られる重合体の濃度などを考慮して適宜決定すればよい。
【0045】
単量体成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。重合開始剤の量は、得られる重合体の所望する物性などに応じて適宜設定すればよいが、通常、単量体成分100質量部あたり、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.05〜20質量部である。
【0046】
単量体成分を重合させる際の重合条件は、重合方法に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。重合温度は、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは40〜140℃の範囲から適切な温度を選択することが望ましい。反応時間は、単量体成分の重合反応が完結するように適宜設定すればよい。また、重合の際の雰囲気は、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
【0047】
以上のようにして単量体成分を重合させることにより、(メタ)アクリル系重合体が得られる。得られる(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、好ましくは5000〜100万、より好ましくは1万〜50万、さらに好ましくは3万〜30万である。なお、重量平均分子量は、ポリスチレン標準でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定したときの値である。
【0048】
また、(メタ)アクリル系重合体(不揮発分)の水酸基価は、接着性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、好ましくは0.1〜200mgKOH/g、より好ましくは1〜100mgKOH/g、さらに好ましくは3〜60mgKOH/gである。
【0049】
本発明の(メタ)アクリル系接着剤は、前記(メタ)アクリル系重合体を含有する。(メタ)アクリル系接着剤における(メタ)アクリル系重合体(不揮発分)の含有率は、接着性および耐候性を向上させる観点から、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは5〜60質量%である。(メタ)アクリル系接着剤における(メタ)アクリル系重合体(不揮発分)の含有率は、(メタ)アクリル系接着剤に含まれる有機溶媒の量を調整することによって調節することができる。有機溶媒としては、例えば、前記(メタ)アクリル系重合体を調製する際に用いられる有機溶媒などが挙げられるが、本発明は、当該有機溶媒の種類によって限定されるものではない。
【0050】
なお、(メタ)アクリル系接着剤の不揮発分は、(メタ)アクリル系重合体のみで構成されていてもよいが、本発明の目的を阻害しない範囲内であれば、他の重合体が含まれていてもよい。
【0051】
本発明の(メタ)アクリル系接着剤には、耐加水分解性および耐絶縁性を向上させる観点から、硬化剤が含まれていてもよい。
【0052】
硬化剤としては、例えば、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、およびオキサゾリン基含有樹脂、アミノプラスト樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの硬化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記硬化剤のなかでは、硬化性および耐候性の観点から、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、およびオキサゾリン基含有樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体が好ましく、(ブロック)ポリイソシアネート化合物がより好ましい。
【0053】
(ブロック)ポリイソシアネート化合物とは、ポリイソシアネート化合物および/またはブロックポリイソシアネート化合物を意味する。
【0054】
ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を分子内に少なくとも2つ有する化合物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのポリイソシアネート;これらのポリイソシアネートのアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体などのポリイソシアネートの変性物(誘導体)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0055】
ブロックポリイソシアネート化合物は、加熱によって接着剤を架橋させるが、常温で貯蔵安定性を向上させる性質および接着性を有する。また、ブロックポリイソシアネート化合物は、太陽電池として実際に使用される環境だけでなく、太陽電池モジュールを評価する際に検討される高温多湿の雰囲気中における促進試験を行なった場合であっても、太陽電池に用いられる充填材に対する接着性にさらに優れている。ブロックポリイソシアネート化合物は、通常、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック化剤でブロックさせたものである。ブロック化剤としては、例えば、ε−カプロラクタム、フェノール、クレゾール、オキシム、アルコールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ブロックポリイソシアネート化合物のなかでは、芳香環に直接結合したイソシアネート基を有しない無黄変性ポリイソシアネート化合物は、接着剤層の黄変を防止する観点から好ましい。
【0056】
(ブロック)ポリイソシアネート化合物は、例えば、住化バイエルウレタン(株)製、商品名:デスモジュールN3200、デスモジュールN3300、デスモジュールBL3175、デスモジュールN3400、デスモジュールN3600、デスモジュールVPLS2102、スミジュールBL3575MPA/X;旭化成ケミカルズ(株)製、商品名:デュラネートE−402−90T、デュラネートE−405−80T、デュラネートTPA−B80E、デュラネートMF−B60X、デュラネートMF−K60Xなどとして商業的に容易に入手することができる。
【0057】
(ブロック)ポリイソシアネート化合物の量は、特に限定されない。例えば、(メタ)アクリル系重合体中の水酸基1モルあたりの(ブロック)ポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基の量は、接着剤層の耐加水分解性および耐絶縁性を向上させる観点から、好ましくは0.6モル以上、より好ましくは0.8モル以上であり、未反応のイソシアネート基が空気中の水分と反応することによって接着剤層が発泡したり、白化することを防止する観点から、好ましくは1.4モル以下、より好ましくは1.2モル以下である。
【0058】
エポキシ樹脂としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名:エピコート828、エピコート1001X70、エピコート815;旭電化工業(株)製、商品名:アデカレジンEP−4100などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0059】
オキサゾリン基含有樹脂としては、例えば、(株)日本触媒製、商品名:エポクロスK−2000シリーズ、エポクロスWS−500、エポクロスWS−700などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0060】
アミノプラスト樹脂は、メラミンやグアナミンなどのアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの付加縮合物であり、アミノ樹脂とも呼ばれている。
【0061】
アミノプラスト樹脂としては、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、完全アルキル型メチル化メラミン、完全アルキル型ブチル化メラミン、完全アルキル型イソブチル化メラミン、完全アルキル型混合エーテル化メラミン、メチロール基型メチル化メラミン、イミノ基型メチル化メラミン、メチロール基型混合エーテル化メラミン、イミノ基型混合エーテル化メラミンなどのメラミン樹脂;ブチル化ベンゾグアナミン、メチル/エチル混合アルキル化ベンゾグアナミン、メチル/ブチル混合アルキル化ベンゾグアナミン、ブチル化グリコールウリルなどのグアナミン樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0062】
アミノプラスト樹脂は、例えば、三井サイテック(株)製、商品名:サイメル1128、サイメル303、マイコート506、サイメル232、サイメル235、サイメル771、サイメル325、サイメル272、サイメル254、サイメル1170などとして商業的に容易に入手することができる。
【0063】
アミノプラスト樹脂の量は、特に限定されない。(メタ)アクリル系重合体とアミノプラスト樹脂との固形分の質量比〔(メタ)アクリル系重合体/アミノプラスト樹脂〕は、接着性を向上させる観点から、好ましくは6/4以上であり、接着剤層の耐加水分解性および密着性を高める観点から、好ましくは9/1以下である。
【0064】
硬化剤の量は、硬化剤の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、側鎖の末端にエチレン性不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル系重合体100質量部あたり、接着剤層の耐加水分解性および耐絶縁性の観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、接着性を向上させる観点から、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
【0065】
本発明の(メタ)アクリル系接着剤は、その用途や該(メタ)アクリル系接着剤に用いられる硬化剤の種類などに応じて種々の硬化条件で硬化させることができる。本発明の(メタ)アクリル系接着剤は、常温硬化型、加熱硬化型、紫外線硬化型または電子線硬化型として用いることができる。また、硬化剤の量、その添加方法や分散方法などには、特に限定がない。例えば、側鎖の末端にエチレン性不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル系重合体が1分子内に複数個の水酸基を有する場合には、当該(メタ)アクリル系重合体に応じて硬化剤の量を調整したり、添加方法や分散方法を選択すればよい。
【0066】
本発明の(メタ)アクリル系接着剤には、必要に応じて、側鎖の末端にエチレン性不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル系重合体と硬化剤との架橋反応を促進させるための硬化触媒を含有させてもよい。硬化触媒としては、特に限定がないが、例えば、(ブロック)ポリイソシアネート化合物を用いる場合には、ジブチル錫ジラウレート、第3級アミンなどが好ましい。また、アミノプラスト樹脂を用いる場合には、酸性または塩基性の硬化触媒が好ましい。
【0067】
また、本発明の(メタ)アクリル系接着剤には、添加剤などを含有させてもよい。添加剤としては、フィルムやコーティング膜などを形成する樹脂組成物に一般に使用されている添加剤などが挙げられる。添加剤の具体例としては、レベリング剤;コロイド状シリカ、アルミナゾルなどの無機微粒子;ポリメチルメタクリレート系の有機微粒子;消泡剤;タレ性防止剤;シランカップリング剤;チタン白、複合酸化物顔料、カーボンブラック、有機顔料、顔料中間体などの顔料;顔料分散剤;リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤などの酸化防止剤;粘性調整剤;紫外線安定剤;金属不活性化剤;過酸化物分解剤;難燃剤;補強剤;可塑剤;潤滑剤;防錆剤;蛍光性増白剤;有機系および無機系の紫外線吸収剤、無機系熱線吸収剤;有機系および無機系の防炎剤;有機系および無機系の帯電防止剤;オルソギ酸メチルなどの脱水剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0068】
なお、硬化触媒、溶媒および添加剤の量は、それらの種類などによって異なるので一概には決定することができないことから、接着剤層に要求される性質に応じて適宜調整することが好ましい。
【0069】
本発明においては、接着性を向上させる観点から、(メタ)アクリル系接着剤に、例えば、ポリエステル系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAという)、ポリビニルブチラール(PVB)、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、アミノ基含有樹脂などの熱可塑性樹脂、粘着性付与剤などを含有させてもよい。
【0070】
前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、東洋紡績(株)製、バイロン(登録商標)103、240、500、GK110、GK640など;日本合成化学工業(株)製、ニチゴーポリエスター(登録商標)TP−220、TP−235、TP−236、TP−290などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0071】
前記変性オレフィン系樹脂としては、例えば、日本製紙ケミカル(株)製、アウローレン(登録商標)100、200、350、S−5189など;三洋化成工業(株)、ユーメックス1001、1010、2000などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0072】
前記EVAとしては、例えば、東ソー(株)製、メルセン(登録商標)H−6051、H−6410など;住友化学(株)製、スミテート(登録商標)KA−31、KA−42などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0073】
前記ポリビニルブチラール(PVB)としては、例えば、(株)クラレ製、Mowital(登録商標)シリーズB30H、B45M、B60Hなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0074】
前記シリコーン樹脂としては、例えば、信越化学工業(株)製、品番:KE−103、KE−1013などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0075】
前記塩化ビニル樹脂としては、例えば、積水化学工業(株)製、商品名:セキスイPVCTSなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0076】
前記ポリウレタンとしては、例えば、ディーアイシーバイエル重合体(株)製、商品名:デスモパンDP6580Aなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0077】
前記アミノ基含有樹脂としては、例えば、(株)日本触媒製、商品名:ポリメントNK−350、NK−380などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0078】
前記粘着性付与剤としては、ロジン系粘着性付与剤;ロジンエステル系粘着性付与剤、テルペン系粘着性付与剤、テルペンフェノール系粘着性付与剤、飽和炭化水素樹脂、クマロン系粘着性付与剤、クマロンインデン系粘着性付与剤、スチレン樹脂系粘着性付与剤、キシレン樹脂系粘着性付与剤、フェノール樹脂系粘着性付与剤、石油樹脂系粘着性付与剤などが挙げられ、これらの粘着性付与剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0079】
前記ロジン系粘着性付与剤としては、例えば、ハリマ化成(株)製、商品名:ハリエスターDS−90などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0080】
前記ロジンエステル系粘着性付与剤としては、例えば、荒川化学工業(株)製、商品名:パインクリスタルKE−100、KE−311などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0081】
前記テルペン系粘着性付与剤としては、ヤスハラケミカル(株)製、クリアロン(登録商標)M−115、P−115などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0082】
前記テルペンフェノール系粘着性付与剤としては、例えば、荒川化学工業(株)製、商品名:タノマル803Lなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0083】
前記飽和炭化水素樹脂としては、例えば、荒川化学工業(株)製、商品名:アルコンP−90、P−100などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0084】
前記スチレン樹脂系粘着性付与剤としては、例えば、三井化学(株)製、品番:FTR−6000などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0085】
粘着性付与剤の量は、所望する粘着性に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、(メタ)アクリル系重合体100質量部あたり、被着体に対する粘着性を向上させる観点から、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、粘着力の低下を抑制する観点から、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下である。
【0086】
本発明の(メタ)アクリル系接着剤を適用することができる被着体としては、例えば、カルボン酸ビニルエステルを含有する単量体成分を重合させることによって得られた重合体からなる被着体、ポリエステルからなる被着体、ポリカーボネートからなる被着体、フッ素樹脂からなる被着体、(メタ)アクリル系樹脂からなる被着体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの被着体のなかでは、耐候性およびコストの観点から、ポリエステル基材およびフッ素樹脂基材が好ましい。
【0087】
本発明の(メタ)アクリル系接着剤は、カルボン酸ビニルエステルを含有する単量体成分を重合させることによって得られた重合体からなる被着体に好適に使用することができるという利点を有する。カルボン酸ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニルなどのハロゲン原子などの置換基を有していてもよい飽和脂肪族カルボン酸ビニルエステル;シクロヘキシルカルボン酸ビニルなどの脂環式カルボン酸ビニルエステル;アジピン酸ジビニル、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニルなどの不飽和脂肪族カルボン酸ビニルエステル;安息香酸ビニル、ケイヒ酸ビニルなどの芳香族カルボン酸ビニルエステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0088】
本発明の(メタ)アクリル系接着剤を、カルボン酸ビニルエステルを含有する単量体成分を重合させることによって得られた重合体からなる被着体に用いた場合には、本発明の(メタ)アクリル系接着剤と当該被着体とを強固に接着させることができるという利点がある。
【0089】
また、本発明においては、前記した被着体以外にも、耐熱性、強度物性、電気絶縁性、耐加水分解性などを考慮して、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂などの樹脂からなる被着体を用いることができる。
【0090】
被着体の形態としては、例えば、フィルム、プレートなどをはじめ、所定形状に成形された成形体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。本発明において好適な被着体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含有する樹脂からなるフィルムなどが挙げられる。
【0091】
被着体の用途としては、例えば、太陽電池用封止材、農業用樹脂フィルム、建設土木用樹脂シート、自動車外装部品、食品用包装紙、紙の表面が樹脂コートされた積層材料、人工芝、靴底などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0092】
また、本発明の(メタ)アクリル系接着剤を太陽電池モジュールに用いられるバックシートに塗布することにより、当該(メタ)アクリル系接着剤からなる接着剤層が形成された太陽電池モジュール用バックシートを製造することができる。この接着剤層が形成された太陽電池モジュール用バックシートにおいて、接着剤層が形成されている面は、太陽電池モジュールを構成する充填材と貼り合わされる面となる。バックシートとしては、通常、太陽電池に用いられているものであればよく、本発明は、当該バックシートの種類によって限定されるものではない。
【0093】
充填材としては、例えば、EVA、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、耐候性および難燃性の観点および接着強度を高める観点から、EVAが好ましい。太陽電池モジュールを構成する充填材と貼り合わされる面に形成される本発明の(メタ)アクリル系接着剤からなる接着剤層の乾燥後の厚さは、接着性および耐候性の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、脆化防止の観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
【0094】
前記基材が接着剤で貼り合わせた太陽電池モジュール用バックシートの構成を示す概略断面図を図1に示す。図1は、太陽電池モジュール用バックシートのもっとも単純な構造を有する。2つの基材1,1は、接着剤2で貼り合わされている。基材1,1は、それぞれ同じ材質からなる基材であってもよく、あるいは異なる材質からなる基材であってもよい。
【0095】
接着剤2としては、例えば、本発明の(メタ)アクリル系接着剤、本発明の(メタ)アクリル系接着剤以外の(メタ)アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリカーボネート系接着剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。接着剤2は、接着性および耐候性の観点から、本発明の(メタ)アクリル系接着剤であることが好ましい。2つの基材1,1のうちの一方表面には、本発明の(メタ)アクリル系接着剤からなる接着剤層4が形成されている。
【0096】
本発明の(メタ)アクリル系接着剤は、太陽電池として実際に使用される環境だけでなく、太陽電池モジュールを評価する際に検討される高温多湿の雰囲気中における促進試験を行なった場合であっても、太陽電池に用いられる充填材に対する接着性および耐候性に優れ、電気出力特性を維持し、バックシートの外観不良を生じがたいという優れた効果を発現する。
【0097】
図2は、太陽電池モジュール用バックシートにバリア層3を介在させたときの他の一実施態様を示す概略断面図である。図2において、2つの基材1,1のそれぞれ一方表面には接着剤2,2が塗布されており、2つの基材1,1上に接着剤2,2によって形成されている接着剤層の間に例えばガスバリア層などのバリア層3を介在させて2つの基材が一体化されており、太陽電池モジュールを構成する充填材と貼り合わされる面に本発明の(メタ)アクリル系接着剤からなる接着剤層4を形成されている。この実施態様の太陽電池モジュール用バックシートにおいても、本発明の(メタ)アクリル系接着剤からなる接着剤層4が形成されているので、太陽電池として実際に使用される環境だけでなく、太陽電池モジュールを評価する際に検討される高温多湿の雰囲気中における促進試験を行なった場合であっても、太陽電池に用いられる充填材に対する接着性および耐候性に優れ、電気出力特性を維持し、バックシートの外観不良を生じがたいという優れた効果が発現される。
【0098】
図1に示されたバックシートおよび図2に示されたバックシートのなかでは、図1に示された接着剤は、低コスト化の観点から好ましい。
【0099】
図2に示されるガスバリア層3としては、例えば、金属箔、金属蒸着フィルム、酸化物蒸着フィルムなどの酸化物を蒸着した蒸着基材などが挙げられる。
【0100】
金属箔としては、例えば、アルミニウム箔などが挙げられる。金属蒸着フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルムやポリオレフィン系延伸フィルムにアルミニウムなどの金属を蒸着させたアルミニウム蒸着フィルムなどの金属蒸着フィルムが挙げられる。
【0101】
酸化物蒸着フィルムとしては、例えば、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化インジウム、これらの複合酸化物などをポリエステルフィルムに蒸着したフィルムであって、透明でかつ酸素、水蒸気などのガスバリア性を有するものなどが挙げられる。これらのなかでは、二酸化ケイ素をポリエステルフィルムに蒸着したフィルムおよび酸化アルミニウムをポリエステルフィルムに蒸着したフィルムが好ましい。
【0102】
酸化物蒸着フィルムにおいて、好適な酸化物の蒸着層の厚さは、酸化物の種類や組成によって異なるが、一般に、均一な酸化物の蒸着層を形成させる観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、柔軟性を付与し、外的応力によって亀裂が生じないようにする観点から、好ましくは300nm以下、より好ましくは150nm以下である。
【0103】
酸化物の蒸着層を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法をはじめ、薄膜形成方法であるスパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0104】
本発明の(メタ)アクリル系接着剤を被着体に塗布する前には、本発明の(メタ)アクリル系接着剤と被着体との接着強度を向上させる観点から、被着体の表面に有機過酸化物を塗布するか、当該有機過酸化物を本発明の(メタ)アクリル系接着剤に含有させるか、または当該有機過酸化物を被着体にあらかじめ含有させておくことが好ましい。特に、被着体として、カルボン酸ビニルエステルを含有する単量体成分を重合させることによって得られた重合体からなる被着体を用いた場合には、被着体の表面に有機過酸化物を塗布するか、または当該有機過酸化物を本発明の(メタ)アクリル系接着剤に含有させることにより、本発明の(メタ)アクリル系接着剤と被着体との接着強度を向上させることができる。
【0105】
有機過酸化物としては、例えば、ジベンゾイルパーオキサイド、ジイソブチルパーオキサイド、ジトリメトキシヘキサノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジコハク酸パーオキサイド、ジ(メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジイソノニルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソノナノエート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ヘキシルパーオキシ-2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、テトラメチルブチルパーオキシエチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエートなどのアルキルパーオキシエステル;ジn−プロピルパーオキシカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジsec−ブチルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6−ビス(tert−ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサン、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、ジ(sec−ブチル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシカーボネート;ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、ジ(イソプロピル)パーオキシカーボネート、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(sec−ブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6−ビス(tert−ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサン、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートなどのジアルキルパーオキサイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機過酸化物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0106】
有機過酸化物を被着体の表面に塗布する際、必要により、有機過酸化物を有機溶媒に所望の濃度となるように溶解させ、得られた溶液を被着体に塗布してもよい。有機過酸化物の被着体への塗布量(固形分量)は、当該有機過酸化物の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、0.01〜1g/m2程度であることが好ましい。また、有機過酸化物を本発明の(メタ)アクリル系接着剤に含有させる場合、本発明の(メタ)アクリル系接着剤における有機過酸化物の含有率は、当該有機過酸化物の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、0.01〜10質量%程度であることが好ましい。
【0107】
また、本発明の(メタ)アクリル系接着剤のガスバリア性を安定させるとともに向上させる観点から、例えば、被着物上にアクリルポリオール、イソシアネート化合物およびシラン化合物からなるアンダーコート層が設けられていてもよく、酸化物の蒸着層上にポリビニルアルコールの部分または完全ケン化物とシラン化合物とからなるオーバーコート層が設けられていてもよい。
【0108】
本発明の(メタ)アクリル系接着剤を、例えば、被着物上にグラビアコート、ロールコート、バーコート、リバースコートなどの方法で、乾燥後の膜厚が0.1〜20μmとなるように塗工し、その基材上に他の基材をドライラミネートなどの方法で貼り合わせた後、太陽電池モジュールを構成する充填材と貼り合わされる面に(メタ)アクリル系接着剤からなる接着剤層を形成させることにより、太陽電池モジュールを製造することができる。このとき、基材には、必要に応じて、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理などの接着性を向上させるための表面処理を施してもよい。例えば、基材としてフッ素樹脂からなる基材を用いる場合には、その基材にプラズマ処理などを施すことが好ましい。
【0109】
本発明の(メタ)アクリル系接着剤が用いられた太陽電池モジュールは、太陽電池として実際に使用される環境だけでなく、太陽電池モジュールを評価する際に検討される高温多湿の雰囲気中における促進試験を行なった場合であっても、太陽電池に用いられる充填材に対する接着性および耐候性に優れ、電気出力特性を維持し、バックシートの外観不良を生じがたいという優れた効果を奏する。
【0110】
本発明の(メタ)アクリル系接着剤が用いられた太陽電池モジュールは、例えば、一般に用いられている太陽電池モジュールにおいて、バックシートとして本発明の(メタ)アクリル系接着剤を置き換えることによって容易に構成させることができる。また、本発明の太陽電池は、例えば、一般に用いられている太陽電池において、太陽電池モジュールを本発明の太陽電池モジュールに置き換えることによって容易に構成させることができる。
【0111】
したがって、本発明の(メタ)アクリル系接着剤は、太陽電池用モジュールに用いられるバックシートと充填材とを貼り合わせるための太陽電池モジュール用接着剤として好適に使用することができるものである。太陽電池モジュールを構成する充填材と貼り合わされる面に、本発明の(メタ)アクリル系接着剤からなる接着剤層を形成されたバックシートは、太陽電池モジュール用バックシートとして好適に使用することができる。この太陽電池モジュール用バックシートを有する太陽電池用モジュールは、太陽電池に好適に使用することができる。
【実施例】
【0112】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0113】
基材または充填材として、以下のものを用いた。
<基材1>
帝人デュポンフィルム(株)製、商品名:テトロンU298W〔白色ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)フィルム〕
<基材2>
三菱樹脂(株)製、商品名:テックバリア(二酸化ケイ素蒸着PETフィルム)
<基材3>
東レ(株)製、商品名:ルミラーX10S(耐熱性オリゴマーPETフィルム)
<充填材>
三井化学ファブロ(株)製、商品名:ファストキュア、品番:RC02B(厚さが400μmのEVAシート)
【0114】
製造例1
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入口を備えた500ミリリットル容のフラスコ内に、酢酸エチル60gを仕込み、窒素ガスを導入し、攪拌しながら酢酸エチルを約80℃で還流させた。このフラスコ内にシクロヘキシルメタクリレート84g、2−エチルヘキシルアクリレート2g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート9gおよび2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸5gからなる単量体成分、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5gおよび酢酸エチル40gからなる混合物を2時間かけてフラスコ内に連続的に滴下した後、さらに3時間加熱することにより、(メタ)アクリル系重合体の不揮発分の含有率が49.8質量%の溶液を得た。得られた(メタ)アクリル系重合体(以下、重合体1という)の水酸基価は42mgKOH/gであり、重量平均分子量は110000であった。
【0115】
製造例2
製造例1において、単量体成分の組成をシクロヘキシルメタクリレート84g、2−エチルヘキシルアクリレート2g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート9gおよびアセトアセトキシエチルメタクリレート5gに変更したこと以外は、製造例1と同様にして重合反応を行なったところ、(メタ)アクリル系重合体の不揮発分の含有率が50.0質量%の溶液が得られた。得られた(メタ)アクリル系重合体(以下、重合体2という)の水酸基価は42mgKOH/gであり、重量平均分子量は120000であった。
【0116】
製造例3
製造例1において、単量体成分の組成をシクロヘキシルメタクリレート84g、2−エチルヘキシルアクリレート2g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート9gおよびダイアセトンアクリルアミド5gに変更したこと以外は、製造例1と同様にして重合反応を行なったところ、(メタ)アクリル系重合体の不揮発分の含有率が49.7質量%の溶液が得られた。得られた(メタ)アクリル系重合体(以下、重合体3という)の水酸基価は42mgKOH/gであり、重量平均分子量は130000であった。
【0117】
製造例4
製造例1において、単量体成分の組成をシクロヘキシルメタクリレート45g、2−エチルヘキシルアクリレート2g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート9gおよびダイアセトンアクリルアミド44gに変更したこと以外は、製造例1と同様にして重合反応を行なったところ、(メタ)アクリル系重合体の不揮発分の含有率が49.8質量%の溶液が得られた。得られた(メタ)アクリル系重合体(以下、重合体4という)の水酸基価は42mgKOH/gであり、重量平均分子量は110000であった。
【0118】
製造例5
製造例1において、単量体成分の組成をシクロヘキシルメタクリレート9g、2−エチルヘキシルアクリレート2g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート9gおよびダイアセトンアクリルアミド80gに変更したこと以外は、製造例1と同様にして重合反応を行なったところ、(メタ)アクリル系重合体の不揮発分の含有率が49.7質量%の溶液が得られた。得られた(メタ)アクリル系重合体(以下、重合体5という)の水酸基価は42mgKOH/gであり、重量平均分子量は120000であった。
【0119】
製造例6
製造例1において、単量体成分の組成をシクロヘキシルメタクリレート89g、2−エチルヘキシルアクリレート2gおよび2−ヒドロキシエチルメタクリレート9gに変更したこと以外は、製造例1と同様にして重合反応を行なったところ、(メタ)アクリル系重合体の不揮発分の含有率が49.9質量%の溶液が得られた。得られた(メタ)アクリル系重合体(以下、重合体6という)の水酸基価は42mgKOH/gであり、重量平均分子量は120000であった。
【0120】
実施例1
製造例1で得られた重合体1の不揮発分100質量部あたりポリイソシアネート硬化剤〔住化バイエルウレタン(株)製、商品名:デスモジュールN3200〕7質量部の割合で、重合体1およびポリイソシアネート硬化剤を容器内に入れ、不揮発分濃度が10質量%となるように酢酸エチルで希釈することにより、接着剤1を得た。
【0121】
実施例2
製造例2で得られた重合体2の不揮発分100質量部あたりポリイソシアネート硬化剤〔住化バイエルウレタン(株)製、商品名:デスモジュールN3200〕7質量部の割合で、重合体2およびポリイソシアネート硬化剤を容器内に入れ、不揮発分濃度が10質量%となるように酢酸エチルで希釈することにより、接着剤2を得た。
【0122】
実施例3
製造例3で得られた重合体3の不揮発分100質量部あたりポリイソシアネート硬化剤〔住化バイエルウレタン(株)製、商品名:デスモジュールN3200〕7質量部の割合で、重合体3およびポリイソシアネート硬化剤を容器内に入れ、不揮発分濃度が10質量%となるように酢酸エチルで希釈することにより、接着剤3を得た。
【0123】
実施例4
製造例4で得られた重合体4の不揮発分100質量部あたりポリイソシアネート硬化剤〔住化バイエルウレタン(株)製、商品名:デスモジュールN3200〕7質量部の割合で、重合体4およびポリイソシアネート硬化剤を容器内に入れ、不揮発分濃度が10質量%となるように酢酸エチルで希釈することにより、接着剤4を得た。
【0124】
実施例5
製造例5で得られた重合体5の不揮発分100質量部あたりポリイソシアネート硬化剤〔住化バイエルウレタン(株)製、商品名:デスモジュールN3200〕7質量部の割合で、重合体5およびポリイソシアネート硬化剤を容器内に入れ、不揮発分濃度が10質量%となるように酢酸エチルで希釈することにより、接着剤5を得た。
【0125】
比較例1
製造例6で得られた重合体6の不揮発分100質量部あたりポリイソシアネート硬化剤〔住化バイエルウレタン(株)製、商品名:デスモジュールN3200〕7質量部の割合で、重合体6およびポリイソシアネート硬化剤を容器内に入れ、不揮発分濃度が10質量%となるように酢酸エチルで希釈することにより、接着剤6を得た。
【0126】
実験例〔太陽電池モジュール用バックシートの作製〕
表1に示すように接着剤1〜6のうちいずれかを用い、その接着剤を乾燥後の塗工量が1g/m2となるように基材1に塗布し、100℃で1分間乾燥させることにより、接着剤層を形成させた。その後、基材1〜3を充填材側から順に、基材1の接着剤層が形成されていない面が接着剤Xと重ね合わされるようにして、基材1/接着剤X/基材2/接着剤X/基材3の順に重ね合わせ、ドライラミネート法によって積層することにより、積層体を得た。得られた積層体を50℃で5日間養生することにより、太陽電池モジュール用バックシートを作製した。
【0127】
なお、前記接着剤Xとして、ポリエステル系接着剤の主剤〔大日本インキ化学工業(株)製、品番:LX703VL〕とポリイソシアネート硬化剤〔大日本インキ化学工業(株)製、品番:KE90〕を用い、接着剤Xの乾燥後の塗工量が10g/m2となるように調整した。
【0128】
次に、前記で得られた太陽電池モジュール用バックシートの物性を以下の方法により調べた。その結果を表1に示す。
【0129】
〔耐ブロッキング性〕
前記で得られた太陽電池モジュール用バックシートを幅5cm、長さ20cmに裁断し、裁断されたシートの接着層面が形成されている面と未処理の耐熱性オリゴマーPETフィルム〔東レ(株)製、商品名:ルミラーX10S〕(以下、未処理のPETフィルムという)とを重ね合わせ、得られた積層体の上に質量が5kgの錘を載せ、この積層体を温度40℃のオーブン内に入れて24時間保持した。その後、オーブンから積層体を取り出し、積層体の接着剤層を目視により観察し、耐ブロッキング性を以下の評価基準に基づいて評価した。
【0130】
(評価基準)
○:接着剤層が未処理のPETフィルムに転写されていない(合格)。
×:接着剤層が未処理のPETフィルムに転写されている(不合格)。
【0131】
〔接着性〕
前記で得られたバックシートを幅60mm、長さ200mmに裁断したもの1枚と、EVAシート〔三井化学ファブロ(株)製、品番:RC02B、厚さ:400μm〕を幅60mm、長さ90mmに裁断したもの1枚と、強化ガラス(幅:10mm、長さ:100mm、厚さ:3mm)とを用意した。
【0132】
太陽電池モジュール用バックシートの接着性を評価する面がEVAシートと接するように、バックシート/EVAシート/強化ガラス板の順に重ね合わせた。得られた積層体を5N/cm2の加圧下で150℃の温度で3分間真空引きをし、150℃に加温したオーブン中で8分間保管し、架橋反応を進行させることにより、サンプルを得た。
【0133】
温度が23℃で相対湿度が65%の雰囲気中で、前記で得られたサンプルの未接着部の強化ガラス板とEVAシートとをオートグラフ〔(株)島津製作所製〕の上下のクリップにそれぞれ挟み、180度剥離法により、幅25mmのクロスヘッド速度300mm/minにおける剥離強度(初期値)を測定し、以下の評価基準に基づいて接着性を評価した。
【0134】
さらに、前記剥離強度を測定したサンプルとは別のサンプルを温度が85℃で相対湿度が85%の雰囲気中で1000時間または2000時間放置した後、前記と同じ条件で剥離強度を測定し、以下の評価基準に基づいて接着性を評価した。
【0135】
(評価基準)
EX:剥離強度が80N/10mm以上(接着性に著しく優れている)
A:剥離強度が40N/10mm以上、80N/10mm未満(接着性に優れている)
B:剥離強度が20N/10mm以上、40N/10mm未満(接着性が良好)
C:剥離強度が10N/10mm以上、20N/10mm未満(接着性がやや良好)
D:剥離強度が10N/10mm未満(接着性が不良)(不合格)
【0136】
〔耐候性、電気出力特性およびバックシートの外観〕
(1)耐候性
A4サイズの強化ガラス板上に、太陽電池モジュール用充填材として前記強化ガラス板と同じA4サイズのEVAシート〔三井化学ファブロ(株)製、品番:RC02B、厚さ:400μm〕で挟まれた多結晶系シリコン製の太陽電池セルを載せた後、さらにその上に前記で得られたバックシートをその接着剤層がEVAシートと接するように設けることにより、積層体を得た。
【0137】
次に、前記で得られた各積層体を5N/cmの加圧下で150℃の温度で3分間真空引きをした後、150℃に加温したオーブン中で8分間保管し、架橋反応を進行させた。その後、アルミニウムフレームで枠組みを行なうことにより、サンプルを作製した。
【0138】
前記サンプルをアイスーパーUVテスター〔岩崎電気(株)製、品番:SUV−W151〕を用い、100mW/cmで温度60℃、相対湿度50%の条件で紫外線を100時間または150時間照射することにより、耐候性促進試験を行なった。
【0139】
次に、オートグラフ〔(株)島津製作所製〕を用いて180度剥離法によりクロスヘッド速度300mm/minにおける剥離強度を測定し、式:
〔保持率(%)〕
=〔(促進試験後の剥離強度)÷(促進試験前の剥離強度)〕×100
に基づいて保持率を求め、耐候性を以下の評価基準に基づいて評価した。
【0140】
(評価基準)
○:保持率が50%以上であるもの(合格)
×:保持率が50%未満であるもの(不合格)
【0141】
(2)電気出力特性
前記耐候性促進試験前後のサンプルの最大出力をJIS C8913に準じて測定し、式:
〔最大出力の変化率(%)〕
=〔(促進試験後の最大出力)÷(促進試験前の最大出力)〕×100
に基づいて最大出力の変化率を求め、電気出力特性を以下の評価基準に基づいて評価した。
【0142】
(評価基準)
〇:最大出力の変化率が95%以上(合格)
△:最大出力の変化率が90%以上95%未満(合格)
×:最大出力の変化率が90%未満(不合格)
【0143】
(3)バックシートの外観
前記耐候性促進試験後のサンプルのバックシートの外観に浮きなどがないかどうかを目視で観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0144】
(評価基準)
〇:異常なし(合格)
×:EVAシートと基材と間で浮きがあり(不合格)
【0145】
【表1】

【0146】
表1に示された結果から、各実施例で得られた(メタ)アクリル系接着剤は、いずれも、耐ブロッキング性に優れており、比較例1で得られた(メタ)アクリル系接着剤と対比して、太陽電池として実際に使用される環境だけでなく、太陽電池モジュールを評価する際に検討される高温多湿の雰囲気中における促進試験を行なった場合であっても、太陽電池に用いられる充填材に対する接着性および耐候性に優れ、電気出力特性を維持し、バックシートの外観にも優れていることがわかる。したがって、各実施例で得られた(メタ)アクリル系接着剤は、いずれも、太陽電池モジュールおよび太陽電池に好適に使用することができることがわかる。
【符号の説明】
【0147】
1:基材
2:接着剤
3:バリア層
4:接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系重合体を含有する(メタ)アクリル系接着剤であって、前記(メタ)アクリル系重合体が、カルボニル基および当該カルボニル基に隣接する炭化水素基を有する基をもつ(メタ)アクリル系重合体であることを特徴とする(メタ)アクリル系接着剤。
【請求項2】
(メタ)アクリル系重合体が、カルボニル基および当該カルボニル基に隣接する炭化水素基を有する基を側鎖にもつ請求項1に記載の(メタ)アクリル系接着剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の(メタ)アクリル系接着剤からなる接着剤層が形成されてなる太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項4】
請求項3に記載の太陽電池モジュール用バックシートを有することを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の太陽電池モジュールを有することを特徴とする太陽電池。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−71947(P2013−71947A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209965(P2011−209965)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】