説明

1−デオキシガラクトノジリマイシンの製造方法、合成中間体およびその製造方法

【課題】より短工程かつ高収率で1-デオキシガラクトノジリマイシンを合成する方法を提供すること。
【解決手段】1-デオキシノジリマイシンの窒素と6位水酸基を保護して式(II)で表わされる化合物を得る工程;式(II)で表わされる化合物の2位と3位の水酸基を保護して式(III)で表わされる保護体を得る工程;式(III)で表わされる化合物の4位水酸基をスルホニル化して式(IV)で表わされる化合物を得る工程;式(IV)で表わされる化合物の4位を反転させて式(V)で表わされる化合物を得る工程;式(V)で表わされる化合物のすべての保護基を脱保護し、1-デオキシガラクトノジリマイシンを得る工程により、1-デオキシノジリマイシンから1-デオキシガラクトノジリマイシンを得る。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1-デオキシノジリマイシンから、1-デオキシガラクトノジリマイシンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノジリマイシンは、ストレプトミセス属放線菌の培養液から取得されたアミノ糖に分類される抗生物質であり(非特許文献1)、その誘導体である1-デオキシガラクトノジリマイシンは、難病として知られるファブリー病の治療に有効であることが知られている。
【0003】
1-デオキシガラクトノジリマイシンの合成方法としては、1-デオキシノジリマイシンを多段階で保護した後、4位水酸基の反転を行い、脱保護を行う方法が報告されている(非特許文献2)。この方法では、1-デオキシノジリマイシンの保護の方法として、窒素をまず保護し、次いで2位と3位の水酸基を保護し、最後に6位の水酸基を保護する方法を採用している。非特許文献2に記載の方法では、その後、4位水酸基の反転を行い、後に各々の保護基を脱保護し、合計10工程を経て、収率7.9%で1-デオキシノジリマイシンから1-デオキシガラクトノジリマイシンへの変換を達成している。
【0004】
非特許文献2に記載の方法は、目的物である1-デオキシガラクトノジリマイシンを得るまでに10工程を要し、収率も工業的な側面から考えて満足できるものではない。特に目的の4位水酸基以外を保護する工程に5工程、反転後の脱保護に3工程を要しており、多工程で煩雑である。さらに工程数の増加と共に収率も低くなり、反応も長時間となる。そのため、1-デオキシガラクトノジリマイシンを効率的かつ高収率で製造する方法が求められていた。
【非特許文献1】J.Anitibiotics,1966,19,288
【非特許文献2】カルボハイドレートリサーチ、1990,203,314
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる状況下、本発明は、より短工程かつ高収率で1-デオキシガラクトノジリマイシンを合成する方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、1-デオキシノジリマイシンから出発し、より短工程かつ高収率で1-デオキシガラクトノジリマイシンを合成する方法を鋭意研究した結果、窒素と6位水酸基の1工程での簡便な保護法、2位および3位の位置選択的な水酸基の保護、簡便な4位水酸基の反転反応、1工程での全保護基の脱保護法を見出した。その結果、本発明者らは、従来の半分程度の工程数で1-デオキシノジリマイシンから1-デオキシガラクトノジリマイシンを合成できる方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の上記目的を達成する手段は以下の通りである。
[1]式(V)
【化1】

(式中、Wはカルボニル基または式(D)で表わされる基
【化2】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表す)を表わし、
Rcは、水素原子、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアリール基を表わす)で表わされる化合物の製造方法であって、
(a)式(I)
【化3】

で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(A)
【化4】

(式中、Raは、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基を表わし、Xはハロゲン原子を表わす)で表わされる化合物と反応させ、式(II)
【化5】

で表わされる化合物を製造する工程、
(b)工程(a)によって得られた式(II)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(B)
【化6】

(式中、Wは上記と同義であり、X1およびX2はそれぞれ独立にハロゲン原子またはトリクロロメチルオキシ基を表わす)で表わされる化合物と反応させ、式(III)
【化7】

(式中、Wは上記と同義である)で表わされる化合物を製造する工程、
(c)工程(b)によって得られた式(III)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中でスルホニル化剤と反応させ、式(IV)
【化8】

(式中、Wは上記と同義であり、Yは置換スルホニルオキシ基を示す)で表わされる化合物を製造する工程、および
(d)工程(c)によって得られた式(IV)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(C)
【化9】

(式中、Rcは上記と同義である)で表わされるカルボン酸と反応させ、前記式(V)で表わされる化合物を製造する工程、
を含む方法。
[2]式(I)
【化10】

で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(A)
【化11】

(式中、Raは、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基を表わし、Xはハロゲン原子を表わす)で表わされる化合物と反応させ、式(II)
【化12】

で表わされる化合物を製造する方法。
[3]式(III)
【化13】

(式中、Wはカルボニル基または式(D)で表わされる基
【化14】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)で表わされる化合物。
[4]式(II)
【化15】

で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(B)
【化16】

(式中、Wはカルボニル基または式(D)で表わされる基
【化17】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表す)を表わし、X1およびX2はそれぞれ独立にハロゲン原子またはトリクロロメチルオキシ基を表わす)で表わされる化合物と反応させ、式(III)
【化18】

(式中、Wは上記と同義である)で表わされる化合物を製造する方法。
[5]前記式(II)で表わされる化合物が[2]に記載の方法で製造されたものである、[4]に記載の方法。
[6]式(IV)
【化19】

(式中、Wはカルボニル基または式(D)で表わされる基
【化20】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表す)を表わし、Yは置換スルホニルオキシ基を示す)で表わされる化合物。
[7]式(III)
【化21】

(式中、Wはカルボニル基または式(D)で表わされる基
【化22】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表す)を表わす)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中でスルホニル化剤と反応させ、式(IV)
【化23】

(式中、Wは上記と同義であり、Yは置換スルホニルオキシ基を表わす)で表わされる化合物を製造する方法。
[8]前記式(III)で表わされる化合物が[4]または[5]に記載の方法で製造されたものである、[7]に記載の方法。
[9]式(V)
【化24】

(式中、Wはカルボニル基または式(D)で表わされる基
【化25】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、
Rcは、水素原子、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアリール基を表わす)で表わされる化合物。
[10]式(IV)
【化26】

(式中、Wはカルボニル基または式(D)で表わされる基
【化27】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、Yは置換スルホニルオキシ基を表わす)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(C)
【化28】

(式中、Rcは、水素原子、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアリール基を表わす)で表わされるカルボン酸と反応させ、
式(V)
【化29】

(式中、W、Rcはそれぞれ上記と同義である)で表わされる化合物を製造する方法。
[11]前記式(IV)で表わされる化合物が[7]または[8]に記載の方法で製造されたものである、[10]に記載の方法。
[12]式(V)
【化30】

(式中、Wはカルボニル基または式(D)で表わされる基
【化31】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、
Rcは、水素原子、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアリール基を表わす)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で脱保護させることを特徴とする、式(VI)
【化32】

で表わされる1-デオキシガラクトノジリマイシンの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、従来の半分程度の工程数で1-デオキシノジリマイシンから1-デオキシガラクトノジリマイシンを合成することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明において記載された各種の用語・記号等について説明する。
本発明において用いる「C1−C22アルキル基」とは、炭素数が1ないし22個の直鎖または分枝状アルキル基を表わし、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1-プロピルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
【0010】
本発明において用いる「C1−C6アルキル基」とは、炭素数が1ないし6個の直鎖または分枝状アルキル基を表わし、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。
【0011】
本発明において用いる「C2−C22不飽和アルキル基」とは、炭素数2ないし22個の直鎖もしくは分枝状アルケニル基、または炭素数が2ないし22個の直鎖または分枝状アルキニル基を表わし、例えばビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、1,3-ヘキサンジエニル基、1,5-ヘキサンジエニル基、エチニル基、1-プロピニル基、1-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、1,3-ヘキサンジインイル基、1,5-ヘキサンジインイル基等が挙げられる。
【0012】
本発明において用いる「C2−C6不飽和アルキル基」とは、炭素数2ないし6個の直鎖または分枝状アルケニル基あるいは炭素数が2ないし6個の直鎖または分枝状アルキニル基を表わし、例えばビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、3-メチル-2-ブテニル基、エチニル基、1-プロピニル基、3-メチル-1-プロピニル基等が挙げられる。
【0013】
本発明において用いる「C6−C14アリール基」とは、6ないし14個の炭素原子で構成された芳香族炭化水素環式基を意味し、単環式基、二環式基または三環式基等の縮合環も含まれる。例えばフェニル基、インデニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、インダセニル基、アセナフチル基、フルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0014】
本発明における「C4−C14ヘテロアリール基」とは、窒素原子、硫黄原子および酸素原子からなる群より選ばれる複素原子を1個以上含んでなる単環式、二環式または三環式の5ないし14員芳香族複素環式基をいう。具体的には、含窒素芳香族複素環式基としては、例えば、インドリル基等;含硫黄芳香族複素環式基としては、例えばチエニル基、ベンゾチエニル基等;含酸素芳香族複素環式基としては、例えばフリル基、ピラニル基、シクロペンタピラニル基、ベンゾフリル基、イソベンゾフリル基等が挙げられる。
【0015】
本発明において用いる「C7−C22アラルキル基」とは、前記定義の「C1−C22アルキル基」において、置換可能な部分が前記定義の「C6−C14アリール基」で置換された基を意味し、例えばベンジル基、ジフェニルメチル基、トリチル基、1-フェネチル基、1-フェニルプロピル基、1-フェニルブチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0016】
本発明において用いる「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味する。
【0017】
本発明において用いる「置換基を有していてもよい」の置換基とは、アルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、水酸基、チオール基、アルキルチオ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシスルホニル基またはアミノ基を意味する。
【0018】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明によれば、以下の工程により、1-デオキシノジリマイシンから1-デオキシガラクトノジリマイシンを得ることができる。
[工程(a)]1-デオキシノジリマイシンの窒素と6位水酸基を保護して式(II)で表わされる化合物を得る工程;
[工程(b)]式(II)で表わされる化合物の2位と3位の水酸基を保護して式(III)で表わされる保護体を得る工程;
[工程(c)]式(III)で表わされる化合物の4位水酸基をスルホニル化して式(IV)で表わされる化合物を得る工程;
[工程(d)]式(IV)で表わされる化合物の4位を反転させて式(V)で表わされる化合物を得る工程;
[工程(e)]式(V)で表わされる化合物のすべての保護基を脱保護し、1-デオキシガラクトノジリマイシンを得る工程。
【0019】
上記反応スキームを以下に示す。
【化33】

【0020】
以下、上記各工程について説明する。
[工程(a)]
本発明は、工程(a)にかかる、式(II)で表わされる化合物の製造方法に関する。
工程(a)は、1-デオキシノジリマイシンの窒素と6位水酸基を保護する工程である。工程(a)では、式(I)
【化34】

で表わされる1-デオキシノジリマイシンを、塩基の存在下、溶媒中で式(A)
【化35】

(式中、Raは、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基を表わし、Xはハロゲン原子を表わす)で表わされる化合物と反応させ、式(II)
【化36】

で表わされる保護体(以下、保護体Iともいう)を製造する。
【0021】
工程(a)では、1-デオキシノジリマイシンを式(A)で表わされる化合物と反応させ、窒素を保護した後に6位水酸基との閉環を行うことにより、窒素と6位水酸基の保護を一工程で行うことができる。
従来用いられてきた水とエーテル系有機溶媒(例えば1,4-ジオキサン等)を用いた塩基性条件下での代表的保護法である、ショッテン・バウマー法では、1-デオキシノジリマイシンの窒素と6位水酸基を一工程で保護することは不可能であった。そのため、ショッテン・バウマー法を用いて1-デオキシノジリマイシンの窒素と6位水酸基を保護する場合、非効率かつ経済的にも不利な側面があるにもかかわらず、多段階の保護反応を経由する方法しか無かった(例えばカルボハイドレートリサーチ、1990,203,314、ジャーナル オブ カルボハイドレート ケミストリー、1991,10(1),25参照)。
それに対し、上記工程(a)によれば、窒素と6位水酸基の保護を一工程で行うことができるため、従来法に比べ効率的である。例えば式(A)で表される化合物としてベンジルオキシカルボニルクロリド(Z-Cl)を用いた場合で説明すると、この反応は理論的に反応中間体としてN−Z保護体を経由すると考えられるが、このN−Z保護体を単離することなく、窒素と6位水酸基が保護された保護体Iを得ることができる。
【0022】
工程(a)の出発物質である1-デオキシノジリマイシンは、テトラへドロン,1968,24,2125、ケミッシュベリヒテ,1967,100,802または日本農芸化学会誌,1976,50,571に記載の方法により製造することができる。また、市販品をシグマ社等より入手可能である。
【0023】
前記式(A)中、Raは、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基を表わす。
【0024】
Raで表される基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、ニトロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基等の直鎖または分枝の飽和アルキル基、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、1,3-ヘキサンジエニル基、1,5-ヘキサンジエニル基、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-エチニル-2―プロピニル基、2-メチル-3-ブチニル基、1-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、1,3-ヘキサンジインイル基、1,5-ヘキサンジインイル基、トリメチルシリルビニル基、フルオロビニル基、ブロモビニル基等の直鎖または分枝の不飽和アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状飽和アルキル基あるいは、フェニル基、p-ニトロフェニル基、p-メトキシフェニル基、p-トルイル基、3,5-ジメチルフェニル基、4-クロロフェニル基、ナフチル基等のアリール基あるいはベンジル基、3,5-メトキシベンジル基、3,5-ジメチルベンジル基、3,4-ジメチルベンジル基、2,4-ジメチルベンジル基、2,5-ジメチルベンジル基、4-メトキシベンジル基、ニトロベンジル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基等の置換基を有していてもよいアラルキル基を挙げることができる。
【0025】
これらの基の中で、メチル基、エチル基、iso-プロペニル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、フェニル基、4-クロロフェニル基、p-ニトロフェニル基、ベンジル基、4-メトキシベンジル基、ニトロベンジル基が好ましい例として挙げることができ、中でも、入手の容易さの点からベンジル基が特に好ましい。
【0026】
式(A)中、Xはハロゲン原子を示し、例えば、臭素原子、塩素原子であることができる。中でも、入手の容易さの点を考慮すると、Xは塩素原子であることが好ましい。
【0027】
式(A)で表わされる化合物は、公知の方法で合成することができ、また、市販品として入手可能なものもある。
【0028】
式(A)で表わされる化合物の具体例としては、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸iso-プロペニル、クロロギ酸n-ブチル、クロロギ酸iso-ブチル、クロロギ酸tert-ブチル、クロロギ酸ヘキシル、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸ベンジル、ブロモギ酸メチル、ブロモギ酸エチル等が挙げられる。
【0029】
工程(a)に使用する溶媒としては、1-デオキシノジリマイシンを溶解できる溶媒であれば特に限定されない。また、2種以上の溶媒を併用することも可能である。なお、塩基として無機塩類を使用する場合には、反応溶液中に水分がまったくない状態では反応が完全に完了しないので、含水系で反応を行うことが好ましい。その場合には、溶媒としては、水と均一に混和するものを使用することが好ましい。工程(a)では、例えば、メタノール、エタノール等のアルコールを使用することができ、エタノールを使用することが好ましい。また、二種以上の混合溶媒を使用することもできる。
【0030】
工程(a)に使用する塩基としては、無機塩、有機アミン類等の公知の塩基を使用することができる。中でも、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩、トリエチルアミン(TEA)、N, N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)等の有機アミン類を使用することが好ましい。入手容易性、価格を考慮すると、炭酸カリウムを使用することが好ましい。
【0031】
前述のように、無機塩を塩基として使用する場合には、含水系で反応を行うことが好ましい。水分量が10容量%より低下すると、反応が完全に完了しないことがあるため、反応中の水分量は、10容量%以上にすることが好ましく、約15容量%とすることがより好ましい。
【0032】
反応溶液中の1-デオキシノジリマイシンの濃度は1〜10重量%程度とすることができ、望ましくは5重量%程度である。また使用する塩基は1-デオキシノジリマイシンに対して1.5〜5モル等量程度使用でき、3モル等量程度が望ましい。
【0033】
工程(a)における反応温度は、室温(例えば0〜25℃)で問題ないが、反応が完結しない場合には、例えば約40℃に加温することもできる。なお、1-デオキシノジリマイシン、塩基、式(A)で表わされる化合物の溶媒への添加順序は特に限定されない。塩基として無機塩類を使用する場合は、水に溶解して添加することもできる。
【0034】
反応時間は、例えば約10〜24時間であるが、薄層クロマトグラフィー(TLC)分析により反応を追跡し反応時間を適宜決定することが好ましい。反応は、攪拌下で行うことが好ましい。反応を完了させるために、反応溶液に式(A)で表わされる化合物および/または塩基を追加で添加すると効果がある場合がある。
【0035】
以上の工程により、式(II)で表わされる保護体Iが得られる。式(II)で表わされる保護体Iは、通常用いられる精製方法、例えばカラムクロマトグラフィー、結晶化、液液分配等を単独または組み合わせて単離精製できるが、これに限定されないことは言うまでもない。なお、目的物である保護体Iが生成されたことは、TLC、核磁気共鳴装置(NMR)等により容易に確認することができる。
【0036】
[工程(b)]
本発明は、工程(b)にかかる、式(III)によって表わされる化合物の製造方法にも関する。工程(b)は、式(II)で表わされる保護体Iの2位と3位の水酸基を保護する工程である。工程(b)では、式(II)で表わされる保護体Iを、塩基の存在下、溶媒中で式(B)
【化37】

(式中、Wはカルボニル基または式(D)で表わされる基
【化38】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、X1およびX2はそれぞれ独立にハロゲン原子またはトリクロロメチルオキシ基を表わす)で表わされる化合物と反応させ、式(III)
【化39】

(式中、Wは上記と同義である)で表わされる化合物(以下、保護体IIともいう)を製造する。
【0037】
前記式(B)で表わされる化合物は、保護用試薬として公知であり、その詳細については、例えば、T.W.グリーン著、プロテクティブグループス イン オルガニック シンセシス 第3版、 ウイリーインターサイエンス社を参照することができる。但し、この保護用試薬を、1-デオキシノジリノマイシン類に適用することは今まで行われていなかった。本発明では、式(B)で表わされる化合物を用いることにより、保護体Iの2位と3位の水酸基を選択的に保護することができる。
【0038】
式(B)中、Wは、カルボニル基または上記式(D)で表わされる基を示す。
【0039】
式(D)中、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす。好ましくは、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、C2−C6不飽和アルキル基またはフェニル基である。また、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、同じであっても異なっていてもよい。
【0040】
具体的には、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基が挙げられるが、保護体IIの単離精製の容易さ並びに収率の点からメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基が好ましい。
【0041】
式(D)で表わされる基の具体例としては、テトラメチルジシロキシル、テトライソプロピルジシロキシル等を挙げることができる。
【0042】
Wは、好ましくは、テトライソプロピルジシロキシルである。Wがテトライソプロピルジシロキシルであることは、単離精製の容易さおよび生成物の安定性の点から望ましい。
【0043】
式(B)中、X1およびX2は、それぞれ独立にハロゲン原子またはトリクロロメチルオキシ基を示し、ハロゲン原子としては例えば、臭素原子、塩素原子であることができる。中でも、入手の容易さの点を考慮すると、X1、X2は、塩素原子であることが好ましい。なお、X1、X2は同じであっても異なっていてもよい。
【0044】
式(B)で表わされる化合物は、公知の方法で合成することができ、また、市販品として入手可能なものもある。
【0045】
式(B)で表わされる化合物の具体例としては、ホスゲン、トリホスゲン、1,3-ジクロロ-1,1,3,3,-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジクロロ-1,1,3,3,-テトライソプロピルジシロキサン、臭化カルボニル等が挙げられる。
【0046】
工程(b)において使用される溶媒は、保護体Iを溶解できるものであれば特に限定されない。使用可能な溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン、2,6-ルチジン、1,4-ジオキサンを挙げることができる。また、2種以上の溶媒を併用することも可能である。中でも、反応性の点から、DMFを使用することが好ましい。
【0047】
工程(b)において使用される塩基としては、イミダゾール、ピリジン、2,6-ルチジン、4-ジメチルアミノピリジン、TEA等の有機アミン類が好ましい。特に、DMF中でイミダゾールを使用することが好ましい。
【0048】
保護体Iの反応溶液中の濃度は約1〜10重量%が利用できるが望ましくは約5重量%である。また反応試薬は保護体Iに対して約1〜1.5モル当量が利用できるが、望ましくは約1.2モル当量である。さらに使用する塩基においては約2〜5モル当量使用できるが、望ましくは約3モル当量である。
【0049】
工程(b)において、反応温度は、氷冷から室温の範囲、例えば、0〜25℃の範囲で設定することが好ましい。特に、氷冷下で反応を行うことが好ましい。反応は、攪拌下で行うことが好ましい。また、反応を完結させるために、反応を氷冷から室温に徐々に昇温することも効果的である。なお、工程(b)において、保護体I、式(B)で表わされる化合物、塩基の溶媒への添加順序は特に限定されない。
【0050】
反応時間は、約3〜10時間で十分あるが、必要なら延長することもできる。なお、反応を完結させる目的で、式(B)で表わされる化合物および/または塩基を反応途中で添加することもできる。
【0051】
以上の工程により、式(III)で表わされる保護体IIが得られる。式(III)で表わされる保護体IIは、通常用いられる精製方法、例えばカラムクロマトグラフィー、結晶化、液液分配等を単独または組み合わせて単離精製することができるが、これに限定されないことは言うまでもない。なお、目的物である保護体IIが生成されたことは、TLC、NMR等により容易に確認することができる。
【0052】
本発明は、式(III)
【化40】

で表わされる化合物にも関する。式(III)で表わされる化合物は、前述の工程によって得ることができる。
【0053】
式(III)中、Wは、カルボニル基または上記式(D)で表わされる基を示す。
式(D)中、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす。好ましくは、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、C2−C6不飽和アルキル基またはフェニル基である。また、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、同じであっても異なっていてもよい。
【0054】
具体的には、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基を挙げることができる。
【0055】
式(D)で表わされる基の具体例としては、テトラメチルジシロキシル、テトライソプロピルジシロキシル等を挙げることができる。
【0056】
Wは、テトライソプロピルジシロキシルであることが、単離精製の容易さ並びに生成物の安定性の点から言って望ましい。
【0057】
式(III)で表わされる化合物の具体例としては、
【化41】

が挙げられる。
【0058】
[工程(c)]
本発明は、工程(c)にかかる、式(IV)で表わされる化合物の製造方法にも関する。工程(c)は、後述の工程(d)におけるワルデン反転に先立ち、式(III)で表わされる保護体IIの4位水酸基をスルホニル化する工程である。工程(c)では、式(III)で表わされる保護体IIを、塩基の存在下、溶媒中でスルホニル化剤と反応させ、式(IV)
【化42】

(式中、Wは前述と同義であり、Yは置換スルホニルオキシ基を示す)で表わされる化合物(以下、スルホニル化物ともいう)を製造する工程である。
【0059】
工程(c)において使用するスルホニル化剤は、保護体IIに導入するYに応じて選択することができる。スルホニル化剤としては、例えば、メタンスルホニルクロリド、トシルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルクロリド、ベンジルスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホン酸無水物などを用いることができる。これらのスルホニル化剤は、市販品として入手可能である。また、公知の方法で合成することもできる。
【0060】
工程(c)において使用する溶媒は、保護体IIを溶解できるものであれば特に限定されない。使用可能な溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、THF、ピリジン、酢酸エチル、1,4-ジオキサン等を挙げることができる。2種以上の溶媒を併用することも可能である。中でも、ジクロロメタンを使用することが好ましい。
【0061】
工程(c)において使用する塩基としては、イミダゾール、ピリジン、2,6-ルチジン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、TEA等の有機アミン類を挙げることができる。中でも、反応性の点からDMAPを用いることが好ましい。
【0062】
保護体IIの反応溶液中の濃度は約1〜10重量%とすることができ、望ましくは約3重量%である。またスルホニル化剤は保護体IIに対して約1〜10モル当量で使用でき、望ましくは約5モル当量である。さらに塩基は、保護体IIに対して約1〜20モル当量で使用でき、望ましくは約10モル当量である。
【0063】
工程(c)において、反応温度は、氷冷から室温の範囲、例えば、0〜25℃の範囲で設定することが好ましい。特に、氷冷下で反応を行うことが好ましい。反応は、攪拌下で行うことが好ましい。なお、保護体II、スルホニル化剤、塩基の溶媒への添加順序は特に限定されない。
【0064】
反応時間は、例えば1〜5時間、好ましくは約3時間である。反応を完結させるために、スルホニル化剤および/または塩基を適量、反応途中で添加することもできる。
【0065】
以上の工程により、式(IV)で表わされるスルホニル化物が得られる。式(IV)で表わされるスルホニル化物は、通常用いられる精製方法、例えばカラムクロマトグラフィー、結晶化、液液分配等を単独または組み合わせて単離精製することができるが、これに限定されないことは言うまでもない。なお、目的物であるスルホニル化物が生成されたことは、TLC、NMR等により容易に確認することができる。
【0066】
本発明は、式(IV)
【化43】

で表わされる化合物にも関する。式(IV)で表わされる化合物は、前述の工程によって得ることができる。
【0067】
式(IV)中、Wは、カルボニル基または式(D)で表わされる基を示す。
式(D)中、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす。好ましくは、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、C2−C6不飽和アルキル基またはフェニル基である。また、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、同じであっても異なっていてもよい。
【0068】
具体的には、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基を挙げることができる。
【0069】
式(D)で表わされる基の具体例としては、テトラメチルジシロキシル、テトライソプロピルジシロキシル等を挙げることができる。
【0070】
Wは、テトライソプロピルジシロキシルであることが、単離精製の容易さ並びに収率の点から言って望ましい。
【0071】
式(IV)中、Yは置換スルホニルオキシ基である。Yは例えばメタンスルホニル、トシル、トリフルオロメタンスルホニル等が挙げられるが、収率等の点から好ましいのはトリフルオロメタンスルホニルである。
【0072】
式(IV)で表される化合物の具体例としては、
【化44】

が挙げられる。
【0073】
[工程(d)]
本発明は、工程(d)にかかる、式(V)で表わされる化合物の製造方法にも関する。工程(d)は、式(IV)で表わされるスルホニル化物のワルデン反転工程である。工程(d)では、式(IV)で表わされるスルホニル化物を、塩基の存在下、溶媒中で式(C)
【化45】

(式中、Rcは、水素原子、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアリール基を表わす)で表わされるカルボン酸と反応させ、式(V)で表わされる化合物(以下、4位反転体ともいう)を製造する。
【0074】
式(C)中、Rcは、水素原子、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアリール基を表わす。
【0075】
Rcの具体例としては、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フリル基、チオフェン基等を挙げることができる。中でも、原料の入手の容易さの点を考慮すると、Rcはメチル基であることが好ましい。
【0076】
式(C)で表わされる化合物は、公知の方法で合成することができ、市販品としても入手可能である。
【0077】
工程(d)において使用する溶媒は、式(IV)で表わされるスルホニル化物を溶解できるものであれば特に限定されない。使用可能な溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、THF、DMF、ジメトキシエタン(DME)、ヘキサン、トルエン、1,4-ジオキサン等を挙げることができる。また、2種以上の溶媒を併用することも可能である。中でも、反応温度の管理の点から、ジクロロメタンを使用することが好ましい。なお、溶媒としてジクロロメタンを使用する場合は、還流させることが好ましい。
【0078】
工程(d)において使用する塩基としては、TEA、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ピリジン、2,6-ルチジン、1,8-ジアゾビシクロ[5,4,0]ウンデカ-7-エン(DBU)等を挙げることができる。中でも、入手の容易さの点から、トリエチルアミン(TEA)を用いることが好ましい。
【0079】
式(IV)で表わされるスルホニル化物の反応溶液中の濃度は約1〜10重量%とすることができ、望ましくは約3重量%である。またカルボン酸は式(IV)で表わされるスルホニル化物に対して約1〜20モル当量で使用でき、望ましくは約10モル当量である。さらに塩基は、式(IV)で表わされるスルホニル化物に対して約1〜20モル当量使用でき、望ましくは約10モル当量である。
【0080】
工程(d)において、反応温度は、例えば、0〜50℃の範囲で設定することができる。反応温度は、50℃前後であることが最も好ましい。反応は、攪拌下で行うことが好ましい。反応時間は、例えば1〜5時間、好ましくは2〜3時間とすることができる。
【0081】
以上の工程により、4位が反転した式(V)で表わされる化合物を得ることができる。式(V)で表わされる化合物は、通常用いられる精製方法、例えばカラムクロマトグラフィー、結晶化、液液分配等を単独または組み合わせて単離精製することができるが、これに限定されないことは言うまでもない。なお、目的物が生成されたことは、TLC、NMR等により容易によって確認することができる。
【0082】
本発明は更に、式(V)
【化46】

で表わされる化合物に関する。式(V)で表わされる化合物は、前述の工程によって得ることができる。
【0083】
式(V)中、Wは、カルボニル基または式(D)で表わされる基を示す。
【0084】
式(D)中、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす。好ましくは、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいC1−C6アルキル基、C2−C6不飽和アルキル基またはフェニル基である。また、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、同じであっても異なっていてもよい。
【0085】
具体的には、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基を挙げることができる。
【0086】
式(D)で表わされる基の具体例としては、テトラメチルジシロキシル、テトライソプロピルジシロキシル等を挙げることができる。
【0087】
Wは、テトライソプロピルジシロキシルであることが、単離精製の容易さ並びに収率の点から言って望ましい。
【0088】
式(V)中、Rcは、水素原子、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアリール基を表わす。
【0089】
Rcの具体例としては、水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フリル基、チオフェン基等を挙げることができる。中でも、原料の入手の容易さの点を考慮すると、Rcはメチル基であることが好ましい。
【0090】
式(V)で表わされる化合物の具体例としては、
【化47】

を挙げることができる。
【0091】
本発明は、更に、工程(a)〜(d)を含む、式(V)で表わされる化合物の製造方法にも関する。各工程の詳細は、前述の通りである。
【0092】
[工程(e)]
本発明は、工程(e)にかかる、式(VI)で表わされる化合物の製造方法にも関する。工程(e)は、式(V)で表わされる4位反転体のすべての保護基を脱保護し、1-デオキシガラクトノジリマイシンを得る工程である。工程(e)では、式(V)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で脱保護させる。
【0093】
工程(e)において使用される溶媒としては、式(V)で表わされる化合物を溶解できるものであれば特に限定されない。塩基として無機塩類を使用する場合には、水と混和する溶媒を用いることが好ましい。なお、2種以上の溶媒を併用することも可能である。工程(e)において使用される溶媒の具体例としては、THF、DMF、メタノール、エタノール、1,4-ジオキサン等を挙げることができる。
【0094】
工程(e)において使用される塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム等の無機塩類を使用することが好ましい。またこれら無機塩は水溶液として用いるのが好ましい。反応溶液中の式(V)で表される化合物の濃度は約1〜10重量%とすることができ、望ましくは約5重量%である。また塩基は式(V)で表される化合物Iに対して約1〜10モル当量で使用でき、望ましくは約5モル当量である。
【0095】
反応温度は、例えば室温〜100℃程度とすることができ、50〜100℃の範囲とすることが好ましい。反応時間は、例えば1〜5時間、好ましくは2〜3時間とすることができる。4位反転体および塩基の添加順序は特に限定されない。また、反応は攪拌下で行うことが好ましい。
【0096】
以上の工程により、式(VI)で表わされる1-デオキシガラクトノジリマイシンを得ることができる。1-デオキシガラクトノジリマイシンは、通常用いられる精製方法、例えばカラムクロマトグラフィー、結晶化、液液分配等を単独または組み合わせて行なうことができるが、これに限定されるものでないことは言うまでもない。なお、目的物が生成されたことは、TLC、NMR等により容易に確認することができる。
【0097】
以上説明した方法により、1-デオキシノジリマイシンから1-デオキシガラクトノジリマイシンを得ることができる。本発明の方法によれば、新規な保護方法に始まり従来法の半分程度の工程で1-デオキシガラクトノジリマイシンを得ることができる。また、使用する反応試薬等は、いずれも入手容易なものであり、反応条件も温和なものである。このように、本発明の方法は、きわめて効率的かつ工業化可能な方法である。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例により説明する。但し、本発明は、以下の態様に限定されるものではない。

[実施例1]
保護体Iの合成
1-デオキシノジリマイシン(1g, 6.1mmol)、炭酸カリウム(2.54g, 18.4mmol)の水溶液(5ml)、ベンジルオキシカルボニルクロリド(2.62g, 15.3mmol)、エタノール(25ml)を室温下で混合攪拌し、反応を終夜行った。反応終了後液層を分離した。残った固体にエタノール(25ml)を加え攪拌した後、液層を分離した。この操作を計2回行った後、液層を濃縮した。得られた固形物にトルエン(20ml)を加えた。生成してくる結晶を濾過取し、保護体Iを白色紛体として得た(1.13g、収率97%)。
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):2.75(dd, 1H, J=11 and 13Hz), 3.24(comp.t, 2H), 3.36(m, 1H), 3.58(m, 1H), 3.85(dd, 1H, J=6 and 13Hz), 4.25(dd, 1H, J=4 and 9Hz), 4.44(dd, 1H, J=8 and 9Hz)。
【0099】
[実施例2]
保護体IIの合成
実施例1で得た保護体I(1.13g, 6.0mmol)、イミダゾール(1.23g, 18mmol)をジメチルホルムアミド(20ml)に加えた。氷冷下で1,3-ジクロロ-1,1,3,3,-テトライソプロピルジシロキサン(2.27g, 7.2mmol)のジメチルホルムアミド溶液(3.5ml)を滴下した。滴下後、反応物を室温に戻した。室温に戻した後、反応を3時間行った。反応終了後、反応物を約半分までに濃縮した。酢酸エチル(250ml)で希釈した後、0.1mol/l HCl、5%炭酸水素ナトリウム水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=9/1〜1/1)で分離精製すると、以下に示す保護体IIが白色粉体として得られた(1.90g、収率74%)。
【化48】

【0100】
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):1.09(m, 28H), 2.58(d, 1H, J=1Hz), 2.82(dd, 1H, J=10 and 13Hz), 3.38(ddd, 1H, J=1, 9 and 10Hz), 3.54(t, 1H, J=9Hz), 3.57(m, 1H), 3.69(m, 1H), 3.69(m, 1H), 4.04(dd, 1H, J=6 and 13Hz), 4.27(dd, 1H, J=4 and 9Hz), 4.43(dd, 1H, J=8 and 9Hz)。
【0101】
[実施例3]
スルホニル化物の合成
実施例2で得た保護体II(1.9g, 4.4mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(2.68g, 22mmol)をジクロロメタン(50ml)に加えた。氷冷下でトリフルオロメタンスルホン酸無水物(5.92g, 21mmol)のジクロロメタン溶液(7ml)を滴下した。室温で3時間反応させた後、4-ジメチルアミノピリジン(2.68g, 22mmol)を加えた。反応終了後、ジクロロメタン(75ml)を加えた。反応物を0.1mol/l HCl、5%炭酸水素ナトリウム水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後濾過濃縮すると以下に示すスルホニル化物が白色非結晶として得られた(2.42g、収率98%)。
【化49】

【0102】
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):1.05(m, 28H), 2.83(dd, 1H, J=10 and 14Hz), 3.78(m, 1H), 3.86(t, 1H, J=9Hz), 3.89(m, 1H), 4.06(dd, 1H, J=6 and 14Hz), 4.28(dd, 1H, J=5 and 10Hz), 4.47(dd, 1H, J=8 and 10Hz), 4.65(t, 1H, J=9Hz)。)
【0103】
[実施例4]
4位反転体の合成
トリエチルアミン(4.34g, 43mmol)、酢酸(2.57g, 43mmol)をジクロロメタン(40ml)に加えた。この溶液に対し、実施例3で得られたスルホニル化物(2.42g, 4.3mmol)のジクロロメタン溶液(40ml)を氷冷下で加えた。反応を3時間還流させた。その後室温下で一夜反応させた。反応物を0.1mol/l HCl、5%炭酸水素ナトリウム水、精製水、飽和食塩水で洗浄した。次いで、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後濾過濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=9/1〜3/1)で分離精製すると以下に示す4位反転体が白色粉体として得られた(1.56g、収率77%)。
【化50】

【0104】
1H-NMR(CDCl3)δ(ppm):1.02(m, 28H), 2.12(s, 3H), 2.77(dd, 1H, J=10 and 14Hz), 3.75(dd, 1H, J=3 and 9Hz), 3.95(m, 1H), 3.99(m, 1H), 4.01(dd, 1H, J=4 and 9Hz), 4.13(dd, 1H, J=6 and 14Hz), 4.33(t, 1H, J=9Hz), 5.35(t, 1H, J=3Hz)。
【0105】
[実施例5]
4位反転体からの1-デオキシガラクトノジリマイシンの合成
実施例4で得た4位反転体(50mg, 0.11mmol)、1,4-ジオキサン(0.5ml)、1mol/l NaOH(0.5ml)を混合し、100℃で3時間反応させた後、1mol/l HCl(0.5ml)を加えた。その後、ヘキサン(2ml)で洗浄した。アンバーライトIR-120Hカラム(0.5mmol〜1mmol/lアンモニア水)にて分離精製し、1-デオキシガラクトノジリマイシンを白色紛体として得た(14mg、収率75%)。
【0106】
1H-NMR(D2O)δ(ppm):2.49(dd, 1H, J=11 and 13Hz), 2.90(t, 1H, J=6Hz), 3.21(dd, 1H, J=5 and 13Hz), 3.50(dd, 1H, J=3 and 10Hz), 3.66(m, 2H), 3.81(ddd, 1H, J=5, 10 and 11Hz), 4.03(dd, 1H),。
【0107】
以上の反応スキームを以下に示す。
【化51】

【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明によれば、温和な条件下での新規な保護法により、1-デオキシノジリマイシンの保護を行うことができる。その結果、短工程かつ高収率で1-デオキシガラクトノジリマイシンを得ることができる。さらに、本発明により、1-デオキシノジリマイシンの窒素と6位水酸基を一工程で簡便に保護する方法が提供された。本発明の方法は、従来法と比較し効率的な保護法、効率的な脱保護法を特徴とする、1-デオキシガラクトノジリマイシンの新規製造方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(V)
【化1】

(式中、Wはカルボニル基または式(D)で表わされる基
【化2】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表す)を表わし、
Rcは、水素原子、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアリール基を表わす)で表わされる化合物の製造方法であって、
(a)式(I)
【化3】

で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(A)
【化4】

(式中、Raは、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基を表わし、Xはハロゲン原子を表わす)で表わされる化合物と反応させ、式(II)
【化5】

で表わされる化合物を製造する工程、
(b)工程(a)によって得られた式(II)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(B)
【化6】

(式中、Wは上記と同義であり、X1およびX2はそれぞれ独立にハロゲン原子またはトリクロロメチルオキシ基を表わす)で表わされる化合物と反応させ、式(III)
【化7】

(式中、Wは上記と同義である)で表わされる化合物を製造する工程、
(c)工程(b)によって得られた式(III)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中でスルホニル化剤と反応させ、式(IV)
【化8】

(式中、Wは上記と同義であり、Yは置換スルホニルオキシ基を示す)で表わされる化合物を製造する工程、および
(d)工程(c)によって得られた式(IV)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(C)
【化9】

(式中、Rcは上記と同義である)で表わされるカルボン酸と反応させ、前記式(V)で表わされる化合物を製造する工程、
を含む方法。
【請求項2】
式(I)
【化10】

で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(A)
【化11】

(式中、Raは、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基または置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基を表わし、Xはハロゲン原子を表わす)で表わされる化合物と反応させ、式(II)
【化12】

で表わされる化合物を製造する方法。
【請求項3】
式(III)
【化13】

(式中、Wはカルボニル基または式(D)で表わされる基
【化14】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)で表わされる化合物。
【請求項4】
式(II)
【化15】

で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(B)
【化16】

(式中、Wはカルボニル基または式(D)で表わされる基
【化17】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表す)を表わし、X1およびX2はそれぞれ独立にハロゲン原子またはトリクロロメチルオキシ基を表わす)で表わされる化合物と反応させ、式(III)
【化18】

(式中、Wは上記と同義である)で表わされる化合物を製造する方法。
【請求項5】
前記式(II)で表わされる化合物が請求項2に記載の方法で製造されたものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式(IV)
【化19】

(式中、Wはカルボニル基または式(D)で表わされる基
【化20】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表す)を表わし、Yは置換スルホニルオキシ基を示す)で表わされる化合物。
【請求項7】
式(III)
【化21】

(式中、Wはカルボニル基または式(D)で表わされる基
【化22】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表す)を表わす)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中でスルホニル化剤と反応させ、式(IV)
【化23】

(式中、Wは上記と同義であり、Yは置換スルホニルオキシ基を表わす)で表わされる化合物を製造する方法。
【請求項8】
前記式(III)で表わされる化合物が請求項4または5に記載の方法で製造されたものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式(V)
【化24】

(式中、Wはカルボニル基または式(D)で表わされる基
【化25】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、
Rcは、水素原子、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアリール基を表わす)で表わされる化合物。
【請求項10】
式(IV)
【化26】

(式中、Wはカルボニル基または式(D)で表わされる基
【化27】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、Yは置換スルホニルオキシ基を表わす)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で式(C)
【化28】

(式中、Rcは、水素原子、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアリール基を表わす)で表わされるカルボン酸と反応させ、
式(V)
【化29】

(式中、W、Rcはそれぞれ上記と同義である)で表わされる化合物を製造する方法。
【請求項11】
前記式(IV)で表わされる化合物が請求項7または8に記載の方法で製造されたものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
式(V)
【化30】

(式中、Wはカルボニル基または式(D)で表わされる基
【化31】

(但し、Rb1、Rb2、Rb3およびRb4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基または置換基を有していてもよいC6−C14アリール基を表わす)を表わし、
Rcは、水素原子、置換基を有していてもよいC1−C22アルキル基、置換基を有していてもよいC2−C22不飽和アルキル基、置換基を有していてもよいC6−C14アリール基、置換基を有していてもよいC7−C22アラルキル基または置換基を有していてもよいC4−C14へテロアリール基を表わす)で表わされる化合物を、塩基の存在下、溶媒中で脱保護させることを特徴とする、式(VI)
【化32】

で表わされる1-デオキシガラクトノジリマイシンの製造方法。

【公開番号】特開2007−55960(P2007−55960A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245308(P2005−245308)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000001915)メルシャン株式会社 (48)
【出願人】(000004156)日本新薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】