説明

1液型熱硬化型接着剤組成物

【課題】 水分や湿分を含有した材料に対して2液エポキシ接着剤と同等の接着力を有し、且つ無黄変の1液型接着剤の提供。
【解決手段】 (成分a)水酸基含有(メタ)アクリレート、(成分b)ウレタン(メタ)アクリレート、(成分c)アルキル基の炭素数が1〜18のポリ(メタ)アクリレート系ポリマー、及び(成分d)熱反応開始剤を有する熱硬化型接着剤組成物であって、(成分e)アルキル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートを更に含有する熱硬化型接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分や湿分を含有した材料、例えばタイルや陶器に対して高接着力を奏する、1液型の熱硬化型接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイルや陶器は、若干の水分を含んでいるため、親油性の接着剤では接着力が弱く、親水性の接着剤を用いなければならない。1液型では酢酸ビニルエマルジョンが大量に生産・使用されているが、硬化型ではないため耐水性や接着力が弱く、高接着力を要求される分野では使用できない。また、シアノアクリレートは水分で硬化するため、湿潤面に適用されることはあるが、耐水性が弱くまた耐衝撃性がないため、高接着力を要求される分野では使用できない。そのため、タイルの接着には2液タイプのエポキシ接着剤が使用されている。
【0003】
ここで、エポキシ接着剤は、接着力が高く、若干の水分を含んだ材料であっても強力に接着する。しかしながら、2液であるため、現場で少量ずつ混合しなければならず、可使時間(ポットライフ)を過ぎると廃棄しなければならないという欠点がある。更に、エポキシ樹脂は耐侯性に劣るため、建築分野では外面に使用すると、黄変する欠点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、水分を含有した材料に対して2液エポキシ接着剤と同等の接着力を有し、且つ無黄変の1液型接着剤を提供することを目的とする。
【0005】
ここで、上記課題を解決するために、まず、本発明者は、湿潤面に接着させるために、水酸基やカルボキシル基含有の極性、親水性の高いモノマーを使用することを検討した。しかしながら、当該モノマーを使用した場合、組成物中の熱反応開始剤(100℃以下で分解する熱反応開始剤)が、加熱して融解しても室温に戻るとすぐに結晶化して析出したり、分離したりするため実際には製品化できないという問題が発生する。これは、当該熱反応開始剤が親油性であるので、当該水酸基やカルボキシル基含有の極性、親水性の高いモノマーに本質的に難溶もしくは不溶であるからである。
【0006】
加えて、接着力をエポキシ接着剤同等にするための成分として、前記モノマーと相溶性のあるポリマーを添加することに加え、耐侯性を向上させる成分として、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを添加した場合にも、組み合わせ次第では、同様の問題を生じることが判明した。
【0007】
したがって、本発明は、100℃以下で分解し常温で保存可能な、水分を含有した材料に対して高接着力を奏する熱硬化型接着剤組成物を提供するに際し、水酸基含有モノマーを主成分とする組成物の中で、熱反応開始剤、親水性モノマーと相溶性のあるポリマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを接着力を落とさずに安定的に存在させる技術を提供することを具体的な課題とする。
【0008】
尚、以下に挙げる特許文献は、本発明と関連する公知文献である。以下、それらの内容を簡単に説明すると共に、本発明との相違点を説明する。
【0009】
特許文献1には、常温で硬化可能であり、経時的着色の少ない合わせ硝子用樹脂組成物が開示されている。具体的には、この硝子用樹脂組成物は、<成分1>(メタ)アクリレート共重合体、<成分2>(メタ)アクリレート、<成分3>熱反応開始剤、<成分4>熱硬化成分としてメルカプトシラン化合物、を含有する。ここで、本樹脂組成物の結合対象は、湿潤状態にはないガラスである。また、本樹脂組成物は、注型直前に、成分1+成分2の結合剤成分に、成分3+成分4等を添加するという、2液以上の成分液の混合系である(第2頁右上欄5〜6行、第5頁左下欄下から2行〜右下欄10行)。更に、本樹脂組成物は、熱を負荷しない常温での硬化を目指している(例えば、成分4のメルカプトシラン化合物は、常温硬化性を高めるよう機能している)。
【0010】
特許文献2には、硬化性及び耐久性に優れた、光ファイバーや光ファイバーテープ芯線等の被覆材料として好適な液状硬化性樹脂組成物が開示されている。具体的には、この液状硬化性樹脂組成物は、<成分1>ウレタン(メタ)アクリレート、<成分2>重合性単官能ビニルモノマー、<成分3>重合開始剤、を含有する。更に、上記必須成分の他、硬化性のポリマー{ポリエステル(メタ)アクリレート等}を配合してもよい旨記載されている(段落番号0034)。ここで、本樹脂組成物の結合対象は、湿潤状態にはない光ファイバー等である。
【0011】
特許文献3には、作業性と常温硬化性が良好である、樹脂モルタルやレジンコンクリートを得ることができる硬化性樹脂組成物(重合性液状樹脂)が開示されている。具体的には、この硬化性樹脂組成物は、<成分1>(メタ)アクリル酸等の単量体成分、<成分2>該単量体成分に溶解可能な樹脂、を含有する。ここで、更に、上記必須成分の他、前記成分1に溶解可能であれば、ウレタン(メタ)アクリレート等の反応性オリゴマー類を添加してもよいと記載されている(段落番号0012)。
【0012】
このように、本発明に係る接着剤を構成する複数の成分の一部組み合わせを開示した先行技術は存在するものの、いずれも水分を含有した材料向けの接着剤ではない。しかも、本発明のポイントは、エポキシ系接着剤と同等の接着力を発揮する水分含有材料用接着剤を得るために選択された複数の好適成分を同一系内に存在させた際、相溶性に乏しい成分の組み合わせが二つ発生する状況下、一つの相溶化剤の添加だけで当該問題を解消する点にあるところ、先行技術では、相溶性のよいもののみを組み合わせている等を踏まえても明らかなように、いずれの先行技術にも当該事項は何ら考慮されていない。
【特許文献1】特開平2−97439号公報
【特許文献2】特開平5−163318号公報
【特許文献3】特開平10−287716号公報
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、鋭意研究の結果、所定成分が、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーと熱反応開始剤との相溶化剤として機能すると共に、前記モノマーと相溶性のある所定ポリマー(例えばポリメチルメタアクリレート)とウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとの相溶化剤として機能することを見出し、本発明を完成させたものである。
【0014】
本発明(1)は、(成分a) 水酸基含有(メタ)アクリレート、
(成分b) ウレタン(メタ)アクリレート、
(成分c) アルキル基の炭素数が1〜18のポリ(メタ)アクリレート系ポリマー、及び
(成分d) 熱反応開始剤
を有する熱硬化型接着剤組成物であって、
(成分e) アルキル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレート
を更に含有する熱硬化型接着剤組成物である。
【0015】
本発明(2)は、(1) 成分aと成分eの合計が、成分a〜c及びeの合計量に対して60質量%以上であり、かつ、
(2) 成分a/成分eの質量比が、3〜1である、
前記発明(1)の熱硬化型接着剤組成物である。
【0016】
本発明(3)は、成分a〜c及びeの合計量に対して、成分aが30〜75質量%、成分bが5〜35質量%、成分cが5〜15質量%、成分eが15〜30質量%であると共に、成分a〜c及びeの合計量100質量部に対して、成分dを0.1〜5質量部含有する、前記発明(1)又は(2)の熱硬化型接着剤組成物である。
【0017】
本発明(4)は、(成分f)無水珪酸系充填剤を更に含む、前記発明(1)〜(3)のいずれか一つの熱硬化接着剤組成物である。
【0018】
本発明(5)は、成分a〜c及びeの合計量100質量部に対して、成分fを50質量部以下含有する、前記発明(4)の熱硬化接着剤組成物である。
【0019】
本発明(6)は、成分aが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートから選択される1種以上である、前記発明(1)〜(5)のいずれか一つの熱硬化型接着剤組成物である。
【0020】
本発明(7)は、成分aが、2−ヒドロキシエチルメタアクリレートである、前記発明(6)の熱硬化型接着剤組成物である。
【0021】
本発明(8)は、成分cが、炭素数1〜2の(メタ)アクリレートを80%以上含有するホモポリマー及びコポリマー並びにこれらの変性物から選択される1種以上である、前記発明(1)〜(7)のいずれか一つの熱硬化型接着剤組成物である。
【0022】
本発明(9)は、成分dが、ラウロイルパーオキサイドである、前記発明(1)〜(8)のいずれか一つの熱硬化型接着剤組成物である。
【0023】
本発明(10)は、成分eが、炭素数が4〜12のアルキル(メタ)アクリレートである、前記発明(1)〜(9)のいずれか一つの熱硬化型接着剤組成物である。
【0024】
本発明(11)は、成分eが、炭素数が4〜8のアルキル(メタ)アクリレートである、前記発明(10)の熱硬化型接着剤組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係る「熱硬化型接着剤組成物」は、(成分a)水酸基含有(メタ)アクリレート、(成分b)ウレタン(メタ)アクリレート、(成分c)アルキル基の炭素数が1〜18のポリ(メタ)アクリレート系ポリマー、(成分d)熱反応開始剤、を有する熱硬化型接着剤組成物であって、(成分e)成分aと成分dの相溶化剤及び成分bと成分cの相溶化剤として、アルキル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレート、を更に含有する。このように、本組成物は、5成分を必須成分としている。ここで、まず、相溶性の悪い2つの系を組み合わせ{4材料:水酸基含有(メタ)アクリレート/熱反応開始剤、ウレタン(メタ)アクリレート/ポリメチルメタアクリレート系ポリマー}は、エポキシ系接着剤と同等の接着力を発現している。また、アルキル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートは、2つの非相溶系の、或いは相溶性の悪い2つの系の共通の相溶化剤として機能している。以下、各成分について詳述する。
【0026】
まず、「成分a」に係る水酸基含有(メタ)アクリレートは、分子内に水酸基を有する(メタ)アクリレートである限り特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。ここで、エステル部分の炭化水素鎖が短くなる程、接着力が向上する傾向にあるので、より高い接着力を得る観点からは、炭化水素鎖が短い2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好適である。加えて、アクリレートの方がメタクリレートより反応速度が大きいので、アクリレートを使用する方が硬化時間が短くなり有利である。尚、アクリレートで炭化水素鎖が短いものは、皮膚刺激性が大きく加熱時の臭気も強い。したがって、反応速度、皮膚刺激性の観点から最も好ましいのは、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレートである。作業環境を整備すれば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートも好ましく使用できる。
【0027】
次に、「成分b」に係るウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン骨格を有する反応性(メタ)アクリレートオリゴマーである限り特に限定されない。ここで、好適なウレタン(メタ)アクリレートは、数平均分子量500〜20000のオリゴマーである(より好適には1000〜15000)。更には、好適なウレタン(メタ)アクリレートは、粘度(B型粘度計で測定)が100〜30000mPa・s(60℃)のオリゴマーである。加えて、(メタ)アクリロイル基の数は、2〜6個であることが好適である。ここで、当該成分は、耐侯性が良好で、熱硬化が可能で耐侯湿性、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性等を満たす材料として知られている。尚、当該成分としては、黄変を避けるために、ベンゼン環を含まないものを選定することが好ましい。具体的には、根上工業株式会社の「アートレジンシリーズ」(例えば、UN−8030X、UN−9000PEP)、サートマー・ジャパン株式会社の「CNシリーズ」(例えばCN980、CN996)、日本合成化学の紫外線硬化型樹脂である「紫光シリーズ」等という商品名で入手可能である。
【0028】
次に、「成分c」に係るアルキル基の炭素数が1〜18のポリ(メタ)アクリレート系ポリマーは、特に限定されないが、重量平均分子量が50000〜2000000であるものが好適である。このような成分を添加することにより、成分aと成分bとの組み合わせだけでは得ることができない、エポキシ接着剤と同等の接着力を獲得することが可能となる。ここで、当該ポリマーは、成分aには溶解又は分散するが、成分bには安定的に相溶しない(このため、後述する成分eの添加が必要となる)。
【0029】
ここで、好適な「成分c」は、炭素数1〜2の(メタ)アクリレートを80%以上含有するホモポリマー又はコポリマー或いはこれらの変性物である。変性物としては、分子中又は分子末端をエポキシ変性、マレイン酸変性したこれらのポリマーを使用することができる。特に、好適な「成分c」は、ポリメチルメタアクリレート及びその誘導体・変性物である。これらのポリマーとしては、パラペット(登録商標){(株)クラレ製}、ダイヤナール(登録商標)LP3106{三菱レイヨン(株)製}、ゼフィアックF340A{ゼオン化成(株)製}、ハイパールM4202{根上工業(株)製}等が挙げられる。
【0030】
次に、「成分d」に係る熱反応開始剤は、常温保管が可能であるものであれば特に限定されず、ベンゼン環を含まず(黄変の原因になるため)、半減期1分の温度が90〜160℃のものが好適である。特に、100〜130℃のものが好適である。ここで、当該成分は親油性であるため、成分aには溶解しない(このため、後述する成分eの添加が必要となる)。当該成分としては、多くの種類があるが、接着剤組成物が室温で保存可能で且つ100℃−30分でほぼすべてが分解するものとしては、パーロイルTCP(ジ−4−t−ブチルシクロヘキシルパーオキシジカーボネート)、パーロイルL(ラウロイルパーオキサイド)、B.P.O.(ベンゾイルパーオキサイド)、パーヘキサC(C){1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン}{いずれも日本油脂(株)製}等を挙げることができる。これらの中で最も好ましいのは、ラウロイルパーオキサイドである。
【0031】
次に、「成分e」に係るアルキル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートは、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーと熱反応開始剤との相溶化剤として機能すると共に、前記モノマーと相溶性のある所定ポリマー(例えば、ポリメチルメタアクリレートやその変性物)とウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとの相溶化剤としても機能する。即ち、本成分は、相溶性の悪い2つの系の共通の相溶化剤として有効である。より好ましくはアルキル基の炭素数が4〜12のアルキル(メタ)アクリレートであり、最も好ましいのはアルキル基の炭素数が4〜8のアルキル(メタ)アクリレートである。例えば、2エチルへキシル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
以上で本熱硬化型接着剤組成物の各必須成分について詳述したので、次に、本熱硬化型接着剤組成物について説明する。
【0033】
まず、「成分a」の含有量は、成分a〜c及びeの合計量に対して、30〜75質量%が好適である。これより少ないと接着力が低下する。また、この範囲を超えると耐水性が低下する。
【0034】
次に、「成分b」の含有量は、成分a〜c及びeの合計量に対して、5〜35質量%が好適であり、10〜30質量%がより好適であり、15〜20質量%が特に好適である。これより少ないと接着力が減少傾向である。また、この範囲を超えても接着特性が低下傾向である。
【0035】
次に、「成分c」の含有量は、成分a〜c及びeの合計量に対して、5〜15質量%が好適であり、6〜10質量%がより好適であり、6〜7質量%が特に好適である。これより少ないと接着力が減少傾向である。またこの範囲を超えても粘度が高くなり作業性が悪く、接着特性も低下傾向である。
【0036】
次に、「成分d」の含有量は、成分a〜c及びeの合計量100質量部に対して、0.1〜5質量部が好適であり、0.3〜3質量部がより好適であり、0.5〜2.5質量部が特に好適である。これより少ないと硬化不足になる傾向がある。またこの範囲を超えると発泡が起きる可能性がある。
【0037】
次に、「成分e」の含有量は、成分a〜c及びeの合計量に対して、15〜30質量%が好適であり、20〜28質量%がより好適であり、25〜26質量%が特に好適である。これより少ないと相溶性が悪くなる。またこの範囲を超えても接着特性が低下傾向である。
【0038】
ここで、成分aと成分eの合計が、成分a〜c及びeの合計量に対して60質量%以上であり、かつ、成分a/成分eの質量比が、3〜1であることが好適である。また、成分aと成分eの合計が、成分a〜c及びeの合計量に対して65〜80質量%であり、かつ、成分a/成分eの質量比が、2.8〜1.1であることがより好適である。当該範囲内である場合、成分eの相溶化剤としての機能を十分に発揮することができる。
【0039】
本熱硬化型接着剤組成物は、必要に応じ、他の成分を含有してもよい。例えば、粘度調整を目的として、(成分f)充填剤を含有していてもよい(例えば無水珪酸系充填剤)。ここで、当該成分の含有量は、成分a〜c及びeの合計量100質量部に対して、0〜50質量部程度である(好適には1〜50質量部)。この範囲であれば、遥変性を付与でき、流動性を抑えることができる。また、他の任意成分として、無水珪酸系充填剤以外の充填剤、重合禁止剤、難燃剤等を含有してもよい。
【0040】
次に、本熱硬化型接着剤組成物は、接着剤の「たれ」を防止するためにチキソトロピー性を有することが好適である。ここで、本組成物は、B型粘度計での粘度が25℃で500〜500000mPa・s、チキソトロピー係数が1.1以上であることが好ましい。ここで、本組成物の粘度は、B型粘度計(型式:BH型、ローターNo.6又は7}を用いて測定した回転数2〜20rpmの粘度である。また、本組成物のチキソトロピ−係数(TI値)は、同様に測定した回転数2rpmと20rpmの本組成物のみかけ粘度、η2とη20の比η2/η20である。
【0041】
次に、本熱硬化型接着剤組成物は、通常の手法に従い、前記各成分を混合することにより製造可能である。尚、本組成物の製造時に気泡が入らないようにすることが好適である。また、本組成物中に気泡が入った場合には、周知手法に従い脱泡することが好適である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。
【0043】
テスト方法:接着役物タイルの品質基準(社団法人全国タイル業協会 接着役物タイル品質基準検討委員会)に基づき接着強さを測定する。
テストピース作成方法:厚さ5mm、幅45mmのタイルの一辺を45°にカットしたタイルどうしを接着剤で90度角に接着したものをテストピースとする。具体的には、2枚のテストピースの45度にカットされている部分を突合せ、平坦場所で枠に接する部分をマスキングテープでマスクし、接着部分に接着剤を塗布、直角の枠にテストピース(タイル)を置き、90℃30分熱硬化する。塗布量:0.2〜0.5g/4.5cm
試験方法・評価方法:テストピースを圧縮試験機に山形に設置し、上から圧縮し破壊テストを行う。1種類につき、テストピースは5個使用する。平均接着強度が200N/cm有るものを○とした。
【表1】

【表2】

【0044】
発明の効果:1液、常温保管可能、100℃以下で硬化可能、エポキシ同等の接着力、黄変なし。現場混合必要なく、廃棄ゼロ可能。建築業界では高い価値がある。タイル業界では、現在2液エポキシ接着剤を使用、2液のため現場混合で作業性悪い。混合後余剰接着剤は廃棄するしかない。耐侯性良くなくタイル施工後10年内に黄変した場合は再施工必要。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分a) 水酸基含有(メタ)アクリレート、
(成分b) ウレタン(メタ)アクリレート、
(成分c) アルキル基の炭素数が1〜18のポリ(メタ)アクリレート系ポリマー、及び
(成分d) 熱反応開始剤
を有する熱硬化型接着剤組成物であって、
(成分e) アルキル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレート
を更に含有する熱硬化型接着剤組成物。
【請求項2】
(1) 成分aと成分eの合計が、成分a〜c及びeの合計量に対して60質量%以上であり、かつ、
(2) 成分a/成分eの質量比が、3〜1である、
請求項1記載の熱硬化型接着剤組成物。
【請求項3】
成分a〜c及びeの合計量に対して、成分aが30〜75質量%、成分bが5〜35質量%、成分cが5〜15質量%、成分eが15〜30質量%であると共に、成分a〜c及びeの合計量100質量部に対して、成分dを0.1〜5質量部含有する、請求項1又は2記載の熱硬化型接着剤組成物。
【請求項4】
(成分f)無水珪酸系充填剤を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の熱硬化接着剤組成物。
【請求項5】
成分a〜c及びeの合計量100質量部に対して、成分fを50質量部以下含有する、請求項4記載の熱硬化接着剤組成物。
【請求項6】
成分aが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートから選択される1種以上である、請求項1〜5のいずれか一項記載の熱硬化型接着剤組成物。
【請求項7】
成分aが、2−ヒドロキシエチルメタアクリレートである、請求項6記載の熱硬化型接着剤組成物。
【請求項8】
成分cが、炭素数1〜2の(メタ)アクリレートを80%以上含有するホモポリマー及びコポリマー並びにこれらの変性物から選択される1種以上である、請求項1〜7のいずれか一項記載の熱硬化型接着剤組成物。
【請求項9】
成分dが、ラウロイルパーオキサイドである、請求項1〜8のいずれか一項記載の熱硬化型接着剤組成物。
【請求項10】
成分eが、炭素数が4〜12のアルキル(メタ)アクリレートである、請求項1〜9のいずれか一項記載の熱硬化型接着剤組成物。
【請求項11】
成分eが、炭素数が4〜8のアルキル(メタ)アクリレートである、請求項10記載の熱硬化型接着剤組成物。

【公開番号】特開2008−31277(P2008−31277A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205746(P2006−205746)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【Fターム(参考)】