説明

1,3−アダマンタンジメタノールモノビニルエーテル及び1,3−アダマンタンジメタノールジビニルエーテル並びにその製法

【課題】電子材料に用いられる低臭気、低揮発性且つ、低皮膚刺激性であって、毒性が低く、また、硬化性、剛直性、密着性、特定波長における透明性に優れる重合組成物原料として、有用な1,3−アダマンタンジメタノールモノビニルエーテル及び1,3−アダマンタンジメタノールジビニルエーテルの提供。
【解決手段】式(I):


で表される1,3−アダマンタンジメタノールモノビニルエーテルおよび1,3−アダマンタンジメタノールジビニルエーテル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なビニルエーテル並びにその製造方法及び用途に関し、更に詳しくは例えば、インク、塗料、レジスト、カラ−フィルタ等の用途並びに接着剤、製版材、封止剤、画像形成剤、界面活性剤の原料等に用いられる硬化性、剛直性、密着性、特定波長における透明性に優れた重合組成物原料として、あるいは架橋剤、さらには種々の合成試薬として、極めて有用な1,3−アダマンタンジメタノールモノビニルエーテル及び1,3−アダマンタンジメタノールジビニルエーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る1,3−アダマンタンジメタノールモノビニルエーテル(別名:3−(エテニルオキシメチル)アダマンタンメタノール)及び1,3−アダマンタンジメタノールジビニルエーテル(別名:1,3−ビス(エテニルオキシメチル)アダマンタン)に関しては、ケミカルアブストラクト(Chemical
Abstract)に記載がなく、また、本発明者等の知るかぎりでは、その他の文献にも記載が見当たらないので、この化合物は新規化合物であると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、1,3−アダマンタンジメタノールモノビニルエーテル及び1,3−アダマンタンジメタノールジビニルエーテル並びにその製造方法及び用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に従えば、式(I)及び式(II):
【化1】

【化2】

で表される1,3−アダマンタンジメタノールモノビニルエーテル及び1,3−アダマンタンジメタノールジビニルエーテルが提供される。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る1,3−アダマンタンジメタノールモノビニルエーテル及び1,3−アダマンタンジメタノールジビニルエーテルは、低臭気、低揮発性且つ、低皮膚刺激性であって、毒性が低く、また、硬化性、剛直性、密着性、特定波長における透明性に優れる重合組成物原料として、極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明に係るビニルエーテル(I)及び(II)は、次のような反応式に従って調製することができる。
【化3】

【0007】
本発明化合物の具体的な合成法としては、例えば、次のような方法を挙げることができる。
例えば、SUS(ステンレス鋼)製の耐圧反応容器中に、溶媒として、非プロトン性極性溶媒、一例として1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを入れてから、1,3−アダマンタンジメタノールを入れ、反応触媒として、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物などのアルカリ性化合物を添加する。この時、非プロトン性極性溶媒の使用量としては、1,3−アダマンタンジメタノール1.0モルに対して非プロトン性極性溶媒1〜20モルで反応させるのが好ましく、特に好ましい使用量は1,3−アダマンタンジメタノール1モルに対して非プロトン性極性溶媒3モル〜13モルである。アルカリ性化合物の添加量としては、特に制限はされないが、1,3−アダマンタンジメタノール1.00モルに対して約0.05モル以上で行うのが経済的に好ましく、0.10〜0.50モルの範囲で行うのがより好ましい。
【0008】
次いで、窒素ガスにより該容器内を置換した後、反応容器を密封して、アセチレンを圧入しながら、昇温して反応させ、本発明の新規化合物である1,3−アダマンタンジメタノールモノビニルエーテル、次いで1,3−アダマンタンジメタノールジビニルエーテルが生成する。
反応条件としては、アセチレンの圧力がゲージ圧で0.01MPa以上、反応温度が80〜180℃が好ましい。より好ましくは、アセチレン圧がゲージ圧で0.15MPa以上、反応温度が100〜140℃である。
【実施例】
【0009】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0010】
実施例1
攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管、ガスパージラインを備えた容量2000mlのSUS製耐圧反応容器に、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン304.4g、1,3−アダマンタンジメタノール142.0g(0.720mol)、純度95重量%の水酸化カリウム4.2g(0.071mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを1.8kg/cmの圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を1.8kg/cmに保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が140℃を越えないように制御し、約12時間反応させた。この間、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力は常に1.8kg/cmに保った。反応終了後、残留するアセチレンガスをパージして反応液506.7gを得た。ガスクロ分析の結果、1,3−アダマンタンジメタノールの転化率は99.7%、1,3−アダマンタンジメタノールジビニルエーテルの選択率は99.0%であった。
次いで、実施例1で得られた反応液を減圧下(3〜4mmHg)に蒸留し、135℃〜140℃で留出した留分152.0gを集めた。NMRによる分析の結果、下記式で示される1,3−アダマンタンジメタノールジビニルエーテルであった(ガスグロマトグラフィーによる純度98.5%、単離収率83.8%)。
【化4】

得られた1,3−アダマンタンジメタノールジビニルエーテルのNMR測定結果を示す。
H-NMR(CDCl、TMS、400MHz):δppm 1.39(s,2H;h),1.49−1.57(m,8H;e),1.65(t,2H,J=3.0Hz;g),2.09(septet,2H,J=3.0Hz;f),3.28(s,4H;c),3.93(dd,2H,J=6.8,1.8Hz;Ha),4.14(dd,2H,J=14.3,1.8Hz;Ha),6.48(dd,2H,J=14.3,6.8Hz;Hb)
13C-NMR(CDCl、400MHz):δppm 28.1(f),34.0(d),36.5(g),39.0(e),41.2(h),78.1(c),85.7(a),152.6(b)
【0011】
実施例2.
攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管、ガスパージラインを備えた容量2000mlのSUS製耐圧反応容器に、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン372.3g、1,3−アダマンタンジメタノール49.3g(0.250mol)、純度95重量%の水酸化カリウム3.7g(0.062mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを1.8kg/cmの圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を1.8kg/cmに保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が90℃に達してから、そのままの温度で50分間反応させた。この間、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力は常に1.8kg/cmに保った。反応終了後、残留するアセチレンガスをパージして反応液424.1gを得た。ガスクロ分析の結果、1,3−アダマンタンジメタノールの転化率は79.8%であり、1,3−アダマンタンジメタノールジビニルエーテルが選択率36.7%で、1,3−アダマンタンジメタノールモノビニルエーテルが選択率42.9%で各々生成していた。
次いで、実施例2で得られた反応液の一部2.70gを分取HPLCにて成分分離し、その中から真空乾燥後重量で78.3mgの単一成分を得た。NMRによる分析の結果、下記式で示される1,3−アダマンタンジメタノールモノビニルエーテルであった(単離換算収率21.5%)。
【化5】

得られた1,3−アダマンタンジメタノールモノビニルエーテルのNMR測定結果を示す。
H-NMR(CDCl、TMS、400MHz):δppm 1.33(s,2H;h),1.43−1.56(m,8H;e,i),1.64(t,2H,J=3.0Hz;g),1.84(brs,1H;HOH),2.10(septet,2H,J=2.9Hz;f),3.23(s,2H;k),3.28(s,2H;c),3.93(dd,1H,J=6.8,1.9Hz;Ha),4.14(dd,1H,J=14.3,1.9Hz;Ha),6.47(dd,1H,J=14.3,6.8Hz;Hb)
13C-NMR(CDCl、400MHz):δppm 28.1(f),34.0(d or j),35.0(d or j),36.6(g),38.6(e or i),39.0(e
or i),40.9(h),73.3(k),78.1(c),85.7(a),152.5(b)
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明の新規化合物1,3−アダマンタンジメタノールモノビニルエーテル及び1,3−アダマンタンジメタノールジビニルエーテルは、低臭気、低揮発性且つ、低皮膚刺激性であって、毒性が低く、また、硬化性、剛直性、密着性、特定波長における透明性に優れる重合組成物原料として、有用な特性を有することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1の1,3−アダマンタンジメタノールジビニルエーテルのH-NMRチャートである。
【図2】実施例1の1,3−アダマンタンジメタノールジビニルエーテルの13C-NMRチャートである。
【図3】実施例2の1,3−アダマンタンジメタノールモノビニルエーテルのH-NMRチャートである。
【図4】実施例2の1,3−アダマンタンジメタノールモノビニルエーテルの13C-NMRチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)及び式(II)で表される化合物。
【化1】

【化2】

【請求項2】
式(III)で表される1,3−アダマンタンジメタノールを、アルカリ金属化合物存在下に、アセチレンと反応させてなる請求項1に記載の化合物。
【化3】

【請求項3】
1,3−アダマンタンジメタノール1モルに対して非プロトン性極性溶媒1〜20モルの使用量でアセチレンと反応させる請求項1に記載の化合物の製造法。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物を用いてなるレジスト材料等の電子材料原料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−53087(P2010−53087A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220641(P2008−220641)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】