説明

2ビーム光源装置及びそれを備えた光学走査装置

【課題】 LDの選別時や破損時における組立て性を大幅に向上できる2ビーム光源装置及びそれを備えた光学走査装置を提供する。
【解決手段】 LD9aは第1基板14aに接続され、LD9bは第2基板14bに接続されており、それぞれベース部材8の立設部8bに固定されている。第1基板14a及び第2基板14bは同一形状であり、第2基板14bは第1基板14aに対し180°反転させて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタやファクシミリ、複写機などの画像形成装置において、書き込み用の光源として用いられる2ビーム光源装置及びそれを備えた光学走査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、光学走査装置は、レーザ発光部を有するビーム光源装置から射出されたビームを、シリンダレンズ、ポリゴンミラー、fθレンズ等から構成される走査光学系により、ビームスポットとして被走査面上に結像させ、ポリゴンミラーを回転させることにより、被走査面上を主走査方向に等速走査させるようにしたものである。特に、特許文献1に開示されているような複数のLDを備えたマルチビーム光学走査装置は、1つのビームを用いて走査する場合に比べ、ポリゴンミラーの回転数を上げることなく被走査面の走査及び静電潜像の形成を迅速に行うことができるため、複写機、レーザプリンタ、レーザファクシミリ等の画像形成装置に広く用いられている。
【0003】
従来の光学走査装置の構成を図4に示す。100は光学走査装置であり、光学走査装置100内には2個のレーザダイオード(以下、LDという)を備えた光源装置1、ポリゴンミラー2、走査レンズ3及び折り返しミラー4等が配置されている。光源装置1から射出された2本のビーム光は、光源装置1上に配置された各光学部材及び平面ミラー5を介してポリゴンミラー2に入射する。ポリゴンミラー2の偏向面で偏向されたビーム光は、fθ特性を有する走査レンズ3、折り返しミラー4を経て被走査面(図示せず)上に結像される。光学走査装置100の底面には、ビーム光を被走査面に向けて導くための窓部6が設けられている。また、光学走査装置100の上部は図示しない蓋部材により閉塞されている。
【0004】
図5は、従来の2ビーム光源装置の構成を示す概略斜視図であり、図6は光源装置を図5の紙面手前側から見た側面図である。光源装置1は、後述するLD及び各光学部材をベース部材8上に配置して成るものである。熱膨張係数の小さいベース部材8を用いることにより、LDや光学部材を光学走査装置100の筐体底面に直接配置する方法に比べて筐体底面の熱膨張による光学部材の位置関係のずれを抑制し、ひいては被走査面上でのビームスポットの位置ずれも抑制することができる。ベース部材8は、光学走査装置の筐体に水平に固定される平板部8aと、平板部8aの一端より上方向に突出する立設部8bにより側面視略L字型に一体形成されている。立設部8bには2つのLD9a、9bが取り付けられている。
【0005】
平板部8a上には、立設部8b側から順に、LD9a、9bから射出したビーム光を略平行光束にするコリメータレンズ10と、平板光学素子、レンズ、プリズム等の光路変更手段11と、副走査方向にのみ屈折力を有するシリンドリカルレンズ12とから成る光学部材が配置されており、それぞれ固定金具及びビスにより平板部8a上に固定されている。
【0006】
シリンドリカルレンズ12を通過した各ビーム光は、平面ミラー5(図4参照)により反射された後、ポリゴンミラー2(図4参照)により偏向され、走査レンズ3(図4参照)を介して被走査面上にビームスポットを形成して画像情報の記録を行う。また、平板部8aは、立設部8b近傍の2箇所及び反対側の1箇所において、ビス13a、13b、13cにより光学走査装置100の筐体底面にビス固定されている。これにより、ベース部材8は光学走査装置100の筐体底面に確実に固定されるため、外力や振動等によるベース部材8上のLD9a、9bや各光学部材10〜12の位置ずれを防止する。なお、ここではビス13cは図示していない。
【0007】
14は画像データに応じてLD9a、9bを変調制御するAuto power control基板(以下、APC基板という)であり、ビス15a、15bにより立設部8bの背面に固定されている。APC基板14上には、トランジスタやコンデンサ等の電子部品16、及び電源回路との接続に用いられるコネクタ17が配置されている。また、APC基板14には、LD9a、9bのリードピンが挿入されるピン穴18が形成されている。
【0008】
図7は、光源装置を光学走査装置内に組み込んだ状態を示す断面図(図4のAA′′断面)である。図5、図6と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。図7に示すように、立設部8bにはLD9aが挿入された保持部材20aが装着されている。また、立設部8bに設けられたボス21にはAPC基板14に設けられたビス穴を貫通してビス15aが締結されている。コリメータレンズ10、光路変更手段11、及びシリンドリカルレンズ12は、LD9aから射出されたビーム光dが通過した後、平面ミラー5(図4参照)に入射するように配置調整されている。
【0009】
このような2ビーム光源装置では、従来、図5に示したように、1枚のAPC基板を2つのLDに対して共通に用いていた。そのため、LDのうちいずれか1つが破損した場合には、破損したLDをAPC基板から取り外した後、新たなLDを取り付ける必要があるため、光源装置の再組立てに時間を要していた。
【0010】
また、2ビーム光源装置においては、2つのLD間の波長に差があると光学部材の屈折率が変化し、画像に影響を及ぼすおそれがある。そのため、できるだけ波長のばらつきの小さいLDを選別して使用する必要があるが、一旦LDをAPC基板に取り付けた後、波長のばらつきの小さいLDに交換する場合には、破損の場合と同様に再組立てが煩雑となっていた。
【0011】
なお、各LD用の小基板を使用し、それとは別個に共通のAPC基板を設ける方法も行われているが、APC基板を別個に設けるため部品点数が増加し、コストアップに繋がるとともに、基板の配置スペースも余分に必要になる。さらに、各小基板とAPC基板との接続部分にノイズが乗りやすいという問題点もあった。
【特許文献1】特開2004−37836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑み、LDの選別時や破損時における組立て性を大幅に向上できる2ビーム光源装置及びそれを備えた光学走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、2個のレーザダイオードと、該レーザダイオードを変調制御するLD制御基板とを備え、前記レーザダイオードから射出された光ビームにより、被走査面上の副走査方向の2ラインを同時に走査可能とする2ビーム光源装置において、前記LD制御基板を同一形状の2枚の基板に分け、前記各レーザダイオードにそれぞれ取り付けたことを特徴としている。
【0014】
また本発明は、上記構成の2ビーム光源装置において、前記2個のレーザダイオード及び前記2枚の基板は、1つのベース部材上に配置されることを特徴としている。
【0015】
また本発明は、上記構成の2ビーム光源装置において、前記ベース部材には、前記レーザダイオードから射出された光ビームをカップリングする光学部材が搭載されることを特徴としている。
【0016】
また本発明は、上記構成の2ビーム光源装置において、前記2枚の基板のうち1枚は、180°反転させて配置されることを特徴としている。
【0017】
また本発明は、上記構成の2ビーム光源装置が搭載された光学走査装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の構成によれば、LDの破損時や装置組立て時におけるLDの交換或いはLD波長選択の際、LDを基板ごと交換可能となるため、LDの基板からの取り外しや基板への再取り付けを行う必要がなく作業性が格段に向上する。また、同一形状の基板を2枚使用することにより、部品点数が削減されるとともに基板の製造コストも低減される。
【0019】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の2ビーム光源装置において、2つのLD及び2枚の基板を1つのベース部材上に配置することにより、2個のLD間の位置調整作業が簡単になるとともに、熱膨張係数の小さいベース部材を用いた場合、光学走査装置の筐体にLDを直接配置する場合に比べて取り付け部分の熱変形によるLDの位置ずれを抑制することができる。
【0020】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第2の構成の2ビーム光源装置において、レーザダイオードから射出された光ビームをカップリングする光学部材をベース部材に搭載することにより、レーザダイオードと光学部材との位置関係の調整を容易に行うことができる。
【0021】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の2ビーム光源装置において、2枚の基板のうち1枚を180°反転させて配置することにより、2個のLDを近接させて配置可能となり、基板全体の形状及び大きさを1枚の基板を用いた場合とほぼ同一の形状及び大きさとすることができる。
【0022】
また、本発明の第5の構成によれば、上記第1乃至第4のいずれかの構成の光源装置を搭載することにより、製造コスト及びメンテナンスコストの安価な光学走査装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の2ビーム光源装置を示す概略斜視図である。従来例の図5と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。図1に示すように、APC基板は第1基板14a及び第2基板14bから構成されており、LD9a(図示せず)は第1基板14aに接続され、LD9b(図示せず)は第2基板14bに接続されている。第1基板14a及び第2基板14b上には、それぞれ電子部品16及びコネクタ17が配置されており、ビス15a〜15dにより立設部8bの背面に固定されている。
【0024】
本発明においては、APC基板14を第1基板14a及び第2基板14bに分割したことを特徴としている。この構成とすることにより、例えばLD9aが破損した場合は、ビス15a、15bを外してLD9aを第1基板14aごと交換すれば良く、従来のようにLDを基板から取り外し、再度基板に取り付ける必要がなくなるため、LD破損時の再組立て作業性が格段に向上する。
【0025】
また、光源装置の組立て時にLDの波長選別を行う場合においても同様に、LD9aを第1基板14aと共に、或いはLD9bを第2基板14bと共に交換可能となるため、LDの基板への取り付けや基板からの取り外し操作を繰り返し行う必要がなく、選別作業効率が格段に向上する。
【0026】
図2は本発明の光源装置をAPC基板側から見た側面図である。従来例の図6と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。図2に示すように、第1基板14aと第2基板14bは同一の形状であり、第2基板14bは第1基板14aを180°反転させた状態で立設部8bに取り付けられている。これにより、第1基板14a及び第2基板14bに共通の基板を使用することができ、部品点数及び製造コストを低減することができる。
【0027】
また、第2基板14bを180°反転させて配置することにより、各基板のピン穴18間の距離が近くなるため、LD9a、9bを近接させて配置可能となって、ベース部材8上でのLD9a、9bの位置関係を従来と同様に設定することができる。また、第1基板14a及び第2基板14bから成るAPC基板全体の形状及び大きさを、従来のAPC基板14(図6参照)とほぼ同一の形状及び大きさとすることができるため、光源装置1が配置される光学走査装置100のレイアウトの変更が不要となる。
【0028】
なお、第1基板14a、第2基板14bとして使用される基板の形状及び大きさは、上記実施形態に限らず、光源装置1が配置される光学走査装置100の仕様に応じて任意に設定すれば良い。また、常にいずれか一方の基板を反転させて配置する必要はなく、例えば図3のように縦長状の基板を2枚用い、第2基板14bを反転させずに第1基板14aと並べで立設部8bに配置することもできる。この場合、第2基板14bを反転させた図2の場合に比べて高さ方向に大きな配置スペースが必要となるが、幅方向の配置スペースを小さくすることができる。
【0029】
本発明の2ビーム光源装置を光学走査装置に搭載することにより、LDの破損時や装置組立て時におけるLDの交換或いはLD波長選択の作業性が格段に向上するため、光学走査装置の製造コスト及びメンテナンスコストを低減することができる。
【0030】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば上記実施形態では、LD9a、9bを第1基板14a、第2基板14bと共にL字状のベース部材8上に配置し、さらにベース部材8上にコリメータレンズ10、光路変更手段11、シリンドリカルレンズ12等の光学部材を配置して2ビーム光源装置1を構成しているが、ベース部材8の形状、大きさや、ベース部材8上の各光学部材の組み合わせ及び配置等はこれに限定されるものではなく、例えばLD9a、9b及び基板14a、14bと共にコリメータレンズ10のみをベース部材8上に配置しても良く、LD9a、9b及び基板14a、14bのみをベース部材8上に配置しても良い。
【0031】
即ち、ベース部材8上に配置される光学部材は、光源装置や光学走査装置の仕様に応じて任意に選択することができる。さらに本発明は、ベース部材8を用いずに、LD9a、9bを第1基板14a、第2基板14bと共に光学走査装置の筐体底面に直接配置する場合にも適用可能であり、同様の効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、2個のレーザダイオードと、該レーザダイオードを変調制御するLD制御基板とを備え、レーザダイオードから射出された光ビームにより、被走査面上の副走査方向の2ラインを同時に走査可能とする2ビーム光源装置において、LD制御基板を同一形状の2枚の基板に分け、各レーザダイオードにそれぞれ取り付けたものである。
【0033】
これにより、LDの交換或いはLD波長選択の際、LDを基板ごと交換可能となるため、LDの基板からの取り外しや基板への再取り付けを行う必要がなく作業性が格段に向上した2ビーム光源装置を簡便且つ低コストで提供することができる。
【0034】
また、2個のレーザダイオード及び2枚の基板を1つのベース部材上に配置したので、2個のLD間の位置調整作業が簡単な2ビーム光源装置となり、熱膨張係数の小さいベース部材を使用すれば、取り付け部分の熱変形によるLDの位置ずれを抑制することができる。さらに、レーザダイオードと共に光ビームをカップリングする光学部材をベース部材に搭載しておけば、レーザダイオードと光学部材との位置関係の調整も容易となる。
【0035】
また、2枚の基板のうち1枚を180°反転させて配置したので、2個のLDを近接させて配置可能となり、1枚の基板を用いた場合とほぼ同一の形状及び大きさとなるため、2つのLDの配置及び光源装置のサイズを従来通りに収めることができ、光源装置が配置される光学走査装置のレイアウトの変更が不要となる。
【0036】
また、本発明の光源装置を光学走査装置に搭載することにより、製造コスト及びメンテナンスコストの安価な光学走査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】は、本発明の2ビーム光源装置の構成を示す概略図である。
【図2】は、本発明の2ビーム光源装置をAPC基板側から見た側面図である。
【図3】は、本発明の2ビーム光源装置の他の構成例をAPC基板側から見た側面図である。
【図4】は、従来の光学走査装置の構成を示す概略平面図である。
【図5】は、従来の2ビーム光源装置の構成を示す概略斜視図である。
【図6】は、従来の2ビーム光源装置をAPC基板側から見た側面図である。
【図7】は、従来の光源装置を光学走査装置内に組み込んだ状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 光源装置
2 ポリゴンミラー
3 走査レンズ
4 折り返しミラー
6 平面ミラー
8 ベース部材
9a、9b LD
10 コリメータレンズ(光学部材)
11 光路変更手段(光学部材)
12 シリンドリカルレンズ(光学部材)
14 APC基板(LD制御基板)
14a 第1基板(LD制御基板)
14b 第2基板(LD制御基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個のレーザダイオードと、該レーザダイオードを変調制御するLD制御基板とを備え、前記レーザダイオードから射出された光ビームにより、被走査面上の副走査方向の2ラインを同時に走査可能とする2ビーム光源装置において、
前記LD制御基板を同一形状の2枚の基板に分け、前記各レーザダイオードにそれぞれ取り付けたことを特徴とする2ビーム光源装置。
【請求項2】
前記2個のレーザダイオード及び前記2枚の基板は、1つのベース部材上に配置されることを特徴とする請求項1に記載の2ビーム光源装置。
【請求項3】
前記ベース部材には、前記レーザダイオードから射出された光ビームをカップリングする光学部材が搭載されることを特徴とする請求項2に記載の2ビーム光源装置。
【請求項4】
前記2枚の基板のうち1枚は、180°反転させて配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の2ビーム走査装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の2ビーム光源装置が搭載された光学走査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−52225(P2007−52225A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237268(P2005−237268)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】