説明

2成分形ポリサルファイド系シーリング材組成物

【課題】硬化する際の発泡を抑制すると共に、得られる硬化物の強度を向上させることを可能とする2成分形ポリサルファイド系シーリング材組成物を提供する。
【解決手段】1分子中に、ポリスルフィド結合を含有し、末端に1以上のチオール基を含むポリサルファイドポリエーテルポリマーを含む第1液と、末端にイソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーと、少なくとも1つのオキサゾリジン環を有する化合物とを含む第2液と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2成分形ポリサルファイド系シーリング材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、両末端にチオール基を有し、ポリエーテルのブロックセグメントを有するポリサルファイドブロックポリマーを配合した2液硬化型ポリサルファイド系シーリング材組成物は、アミン触媒の存在下によりチオール基とイソシアネート基とが反応してチオウレタン結合を形成し、硬化することでシーリング材が得られる。
【0003】
2液硬化型ポリサルファイド系シーリング材組成物を作製する方法として、例えば、両末端にチオール基を有するポリサルファイドポリマーにヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)またはヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を反応させ、ポリサルファイド含有ブロック共重合体を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−196753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、2液硬化型ポリサルファイド系シーリング材組成物を用いて硬化させる際、施工時の環境雰囲気中に存在する水分や被着体に含まれる水分とウレタンプレポリマーのイソシアネート基とが反応して炭酸ガスを生成することによって、2液硬化型ポリサルファイド系シーリング材組成物が硬化する際に発泡が生じる、という問題がある。そのため、得られるシーリング材に多数の気孔が観察され、美観を損なってしまう。
【0006】
ウレタンプレポリマーのイソシアネート基が水分と反応し、消費されることで、ポリサルファイドブロックポリマーの末端のスルフィド基は未反応となる。これにより、ポリサルファイドブロックポリマーのチオール基とウレタンプレポリマーのイソシアネート基とによるチオウレタン結合の反応率が低下するため、ポリサルファイドポリマーを硬化させることで得られる硬化物の強度が低下する、という問題がある。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑み、硬化する際の発泡を抑制すると共に、得られる硬化物の強度を向上させることを可能とする2成分形ポリサルファイド系シーリング材組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、次に示す(1)〜(4)である。
(1) 1分子中に、ポリスルフィド結合を含有し、末端に1以上のチオール基を含むポリサルファイドポリエーテルポリマーを含む第1液と、末端にイソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーと、少なくとも1つのオキサゾリジン環を有する化合物とを含む第2液と、を含むことを特徴とする2成分形ポリサルファイド系シーリング材組成物。
(2) 前記ポリサルファイドポリエーテルポリマーが、スルフィド基と、ポリプロピレンオキサイド基を含む上記(1)に記載の2成分形ポリサルファイド系シーリング材組成物。
(3) 前記オキサゾリジン環を有する化合物が、分子中にヒドロキシル基を有する上記(1)又は(2)に記載の2成分形ポリサルファイド系シーリング材組成物。
(4) 前記オキサゾリジン環を有する化合物が、3−(2−hydroxyethyl)−2−(1−methylbuthyl) oxazolidine、又は2−phenyl−3−(2−hydroxyethyl) oxazolidineである上記(3)に記載の2成分形ポリサルファイド系シーリング材組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、硬化する際の発泡を抑制すると共に、得られる硬化物の強度を向上させることを可能とする2成分形ポリサルファイド系シーリング材組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明について詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0011】
本実施形態に係る2成分形ポリサルファイド系シーリング材組成物について説明する。本実施形態に係る2成分形ポリサルファイド系シーリング材組成物は、1分子中に、ポリスルフィド結合を含有し、末端に1以上のチオール(SH)基を含むポリサルファイドポリエーテルポリマーを含む第1液と、末端にイソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーと、少なくとも1つのオキサゾリジン環を有する化合物とを含む第2液と、を含む2成分形ポリサルファイド系シーリング材組成物である。以下、本実施形態に係る2成分形ポリサルファイド系シーリング材組成物を、「本実施形態のシーリング材組成物」ということがある。
【0012】
<第1液>
第1液は、1分子中に、ポリスルフィド結合を含有し、末端に1以上のチオール(SH)基(メルカプト基含有基)を含むポリサルファイドポリエーテルポリマーを含むものである。第1液は、1分子中に2個以上のチオール基を有するポリサルファイドポリマーと、末端にチオール基を有するポリエーテルポリマーとを反応させて得られるものである。なお、本実施形態においては、第1液を主剤ということがある。
【0013】
[ポリサルファイドポリエーテルポリマー]
第1液に含まれるポリサルファイドポリエーテルポリマーは、1分子中に、ポリスルフィド結合を有し、末端に1以上のチオール基を有する。ポリサルファイドポリエーテルポリマーは、末端に1以上のチオール基を有し、主鎖中に、−(R−Sx)−で示される構造単位を有する(RはC24OCH2OC24または炭素数1以上12以下のアルキレン基を表し、xは2以上5以下の整数を表す。)。ポリサルファイドポリエーテルポリマーは、例えば、ジブロックポリマー、トリブロックポリマーであってもよい。
【0014】
ポリサルファイドポリエーテルポリマー中、−(R−Sx)−で示される構造単位は、主鎖の全て(100質量%)を形成しているのが好ましく、他の構造単位を含有する場合であっても5質量%以上95質量%以下を形成しているのが好ましい。
【0015】
ポリサルファイドポリエーテルポリマーの数平均分子量は、通常300以上200000以下であるのが好ましく、500以上50000以下であるのがより好ましい。さらにシーリング材としての機能である目地の追従性向上の観点から、低モジュラス、高伸長が望ましく、1000以上10000以下であるのが好ましく、3000以上5000以下であるのがより好ましい。ポリサルファイドポリマーの作製方法は、特に制限されるものではなく、例えば、従来より公知の方法が挙げられる。
【0016】
ポリサルファイドポリエーテルポリマーとして、主鎖中に、−(R1O)n−(R1は炭素数2以上4以下のアルキル基であり、nは6以上200以下の整数である。)で示されるポリエーテル単位と、−COCHOCSx−および−CHCH(OH)CHSx−(xは1以上5以下の整数である。)で示されるポリサルファイド単位とを有し、かつ末端に−COCHOCSHおよび/または−CHCH(OH)CHSHで示されるチオール基を有するポリサルファイドポリエーテルポリマーが好ましく挙げられる。このようなポリサルファイドポリエーテルポリマーの具体例としては、商品名「チオコールLP−282」(東レ・ファインケミカル社製)などが挙げられる。本実施形態に係るシーリング材組成物は、2種以上のポリサルファイドポリマーを含んでいてもよい。
【0017】
ポリサルファイドポリマーとチオール基含有ポリエーテルポリマーとの混合比は、質量比で、95/5〜5/95、好ましくは90/10〜10/90である。
【0018】
ポリサルファイドポリマーとチオール含有ポリエーテルポリマーとの反応条件は10以上100℃以下、好ましくは20以上80℃以下で、1以上60分以下の間、撹拌すればよい。
【0019】
ポリサルファイドポリマーは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
(ポリサルファイドポリマー)
ポリサルファイドポリエーテルポリマーを作製する際に使用されるポリサルファイドポリマーについて以下に説明する。ポリサルファイドポリマーは、1分子中に、ポリスルフィド結合を含有し、末端に2個以上のチオール(SH)基を含むものである。
【0021】
ポリサルファイドポリマーの好ましい具体例は、下記一般式(1)で示される。
HS−(A−Sx)m−ASH ・・・(1)
(式中、Aはオキシアルキレン基であり、xは1以上5以下の整数であり、mは1以上50以下の整数である。)
【0022】
上記式(1)中、Aで示されるオキシアルキレン基としては、たとえば−CH2OCH2−、−C24OC24−、−C24OCH2OC24−、−C36OC36−、−C48OC48−などが挙げられる。xは好ましくは1、2または3であり、mは好ましくは6以上40以下の整数である。上記式(1)で示されるポリサルファイドポリマーは、常温で流動性を有し、その分子量(質量平均分子量)は、通常100以上200000以下である。このようなポリサルファイドポリマーの具体例としては、商品名「チオコールLP−32」、「チオコールLP−55」(東レ・ファインケミカル社製)、商品名「THIOPLASTポリマー」(AKZO NOBEL社製)などが挙げられる。
【0023】
(チオール基含有ポリエーテルポリマー)
チオール基含有ポリエーテルポリマーは、例えば、特公昭47−48279号公報に記載されている公知の方法などを利用して合成することができる。すなわち、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールにエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等のエピハロヒドリンを付加した後に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ(MSH、ただしMはアルカリ金属)、アルカリ金属の硫化物(MSx、ただしxは1以上5以下の整数を表す。)の何れか一方または両方と反応させることにより、末端にチオール基を有するポリエーテルポリマーが得られる。このようにして得られたポリマーの主鎖には、一部ポリスルフィド結合を含んでおり、本実施形態のチオール基を含むポリエーテルポリマーとして好適である。
【0024】
[金属触媒]
本実施形態のシーリング材組成物においては、第1液に金属触媒を含んでもよい。第1液に含まれる金属触媒は特に制限されない。金属触媒としては、例えば、有機カルボン酸金属塩、無機カルボン酸金属塩が挙げられる。なかでも、相溶性、耐発泡性により優れ、可使時間を適正な長さとすることができ、硬化性に優れるという観点から、有機カルボン酸金属塩が好ましい。
【0025】
有機カルボン酸金属塩は、有機カルボン酸と金属とによって形成される塩であれば特に制限されない。
【0026】
有機カルボン酸金属塩を形成するために使用される有機カルボン酸としては、2−エチルへキシル酸、ネオデカン酸などが挙げられる。なかでも、相溶性、耐発泡性により優れ、可使時間を適正な長さとすることができ、硬化性に優れるという観点から、2−エチルへキシル酸およびネオデカン酸の何れか一方または両方のビスマス塩であるのが好ましい。
【0027】
有機カルボン酸金属塩を形成するために使用される金属としては、例えば、ビスマス、錫、亜鉛、ジルコニウム、コバルト、バナジウム、アルミニウム、バリウム、チタン(チタニウム)などが挙げられる。なかでも、相溶性、耐発泡性により優れ、可使時間を適正な長さとすることができ、硬化性に優れるという観点から、ビスマスが好ましい。
【0028】
金属触媒はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
金属触媒の量は、相溶性、耐発泡性により優れ、可使時間を適正な長さとすることができ、硬化性に優れるという観点から、シーリング材組成物全量中の0.01質量%以上3.0質量%以下であるのが好ましく、0.05質量%以上0.15質量%以下であるのがより好ましい。
【0030】
本実施形態のシーリング材組成物は、ポリサルファイドポリエーテルポリマーに対して、例えば、有機カルボン酸金属塩などの金属触媒を含むことで、金属触媒は、緩やかな促進効果があるため、適切な可使時間を得ることができる。また、金属触媒(特に有機カルボン酸金属塩)に、さらに有機酸(フリーカルボン酸)を添加することで、ウレタン結合を基本とする結合と一部の尿素結合を形成することができる。これにより、アミン触媒を使用する場合に比べ、安定した性能と物性を得ることができる。
【0031】
[ポリオキシアルキレンポリオール]
本実施形態のシーリング材組成物においては、相溶性、耐発泡性により優れ、硬化物の強度、伸びに優れるという観点から、第1液は、さらにポリオキシアルキレンポリオールを含むことが好ましい。
【0032】
ポリオキシアルキレンポリオールは、オキシアルキレン基を繰り返し単位として有する主鎖を有し、ヒドロキシ基を2個以上有する。
【0033】
オキシアルキレン基は、炭素原子数が4以上400以下のものが挙げられる。なかでも、相溶性、可使時間を有した状態での耐発泡性により優れ、硬化性に優れるという観点から、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましい。
【0034】
ポリオキシアルキレンポリオールは、相溶性、可使時間を有した状態での耐発泡性により優れ、硬化物性の耐水性に優れるという観点から、ポリオキシプロピレントリオールが好ましい。
【0035】
ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量は、相溶性、可使時間を有した状態での耐発泡性により優れ、硬化物性の耐水性に優れるという観点から、300以上200000以下であるのが好ましく、400以上50000以下であるのがより好ましい。
【0036】
ポリオキシアルキレンポリオールは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
ポリオキシアルキレンポリオールの含有量は、相溶性、耐発泡性により優れ、硬化物性の耐水性に優れるという観点から、第1液全量中0質量%よりも大きく50.0質量%以下であるのが好ましく5.0質量%以上30.0質量%以下であるのがより好ましい。
【0038】
[有機酸]
本実施形態のシーリング材組成物において、耐発泡性により優れ、可使時間と硬化性のバランスに優れるという観点から、第1液は、さらに有機酸を含むことが好ましい。
【0039】
有機酸は、カルボン酸を1個以上有する炭化水素化合物であれば特に制限されない。例えば、カルボン酸が有する炭素原子以外の炭素原子数が3以上20以下のものが挙げられる。なかでも、耐発泡性により優れ、可使時間と硬化性のバランスに優れるという観点から、オクチル酸、2−エチルへキシル酸、ネオデカン酸が好ましい。
【0040】
有機酸はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
有機酸の含有量は、相溶性、耐発泡性により優れ、可使時間と硬化性のバランスに優れるという観点から、第1液全量中の0.01質量%以上3.00質量%以下であるのが好ましく0.1質量%以上1.0質量%以下であるのがより好ましい。
【0042】
<第2液>
第2液は、末端にイソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーと、少なくとも1つのオキサゾリジン環を有する化合物とを含む。なお、本実施形態においては、第2液またはオキサゾリジンを含むウレタンプレポリマーを硬化剤ということがある。またオキサゾリジン環を有する化合物をオキサゾリジン化合物ということがある。
【0043】
(ウレタンプレポリマー)
ウレタンプレポリマーについて以下に説明する。本実施形態のシーリング材組成物において、第2液に含まれるウレタンプレポリマーは、特に制限されない。例えば、従来より公知のものが挙げられる。具体的には、例えば、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを、イソシアネート基(NCO基)がヒドロキシ基(OH基)に対して過剰となるように反応させることにより得られる反応生成物などが挙げられる。ウレタンプレポリマーは、0.5質量%以上5質量%以下のイソシアネート基を分子末端に含有するのが好ましい。
【0044】
ウレタンプレポリマーを作製する際に使用されるポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI))、MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI))、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)のような脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような脂環式ポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネートが挙げられる。これらのうち、得られるウレタンプレポリマーが低粘度となり、取り扱いが容易となり、相溶性、耐発泡性により優れ、硬化性に優れるという観点から、特にトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が好ましい。
【0045】
ポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
ウレタンプレポリマーを作製する際に使用されるポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2個以上有するものであれば特に限定されない。ポリオール化合物としては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオール;ポリエステルポリオール;ポリマーポリオール;ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールのような低分子量のポリオールが挙げられる。なかでも、相溶性、耐発泡性により優れ、硬化物の強度、伸びに優れるという観点から、ポリオキシアルキレンポリオールが好ましい。
【0047】
ポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールおよびペンタエリスリトールからなる群から選択される少なくとも1種に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびポリオキシテトラメチレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種を付加させて得られるポリオール等が挙げられる。具体的には、ポリオキシエチレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレントリオールが好適に例示される。
【0048】
ポリオール化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。ポリオール化合物は、相溶性、耐発泡性により優れ、硬化物の強度、伸びに優れるという観点から、ポリオキシアルキレンポリオールであるのが好ましく、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレントリオールであるのがより好ましい。
【0049】
ポリオール化合物の数平均分子量は、相溶性、耐発泡性により優れ、硬化物の強度、伸びに優れるという観点から、400以上10000以下であるのが好ましく、400以上8000以下であるのがより好ましい。
【0050】
ウレタンプレポリマーを作製する際に使用されるポリオール化合物は、相溶性、耐発泡性により優れ、硬化物の強度、伸びに優れるという観点から、ポリサルファイドポリエーテルポリマーを作製する際に使用されるポリオキシアルキレンポリオールと同じであるのが好ましい。
【0051】
本実施形態においては、ウレタンプレポリマーを作製する際のポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との組み合わせとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)およびジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)からなる群から選択される少なくとも1種と、ポリオキシプロピレンジオールおよび/またはポリオキシプロピレントリオールとの組み合わせが好適に例示される。
【0052】
ウレタンプレポリマーを作製する際のポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との量は、イソシアネート基とヒドロシル基との当量比(イソシアネート基(NCO基)/ヒドロシル基(OH基))が、1.2以上2.5以下となるのが好ましく、1.5以上2.0以下となるのがより好ましい。当量比がこのような範囲である場合、得られるウレタンプレポリマーの粘度が適当となり、ウレタンプレポリマー中の未反応のポリイソシアネート化合物の残存量を低減することができる。
【0053】
ウレタンプレポリマーの作製方法は特に限定されず、例えば、上述の当量比(NCO基/OH基)のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを、50℃以上130℃以下で加熱かくはんすることによって作製することができる。また、必要に応じて、例えば、有機錫化合物、有機ビスマス、アミンのようなウレタン化触媒を用いることができる。
【0054】
ウレタンプレポリマーは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
ウレタンプレポリマーの量は、第2液中のウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基の、第1液中に含まれるポリサルファイドポリエーテルポリマーが有するチオール基に対する当量比(イソシアネート基(NCO基))/チオール基(SH基))が、0.7以上1.3以下となるのが、硬化物の性状により優れ、耐発泡性に優れるという観点から好ましく、0.85以上1.15以下となるのがより好ましい。
【0056】
第1液がさらにポリオキシアルキレンポリオールを含む場合においても、上記の当量比(NCO基/SH基)の分母は、ポリサルファイドポリエーテルポリマーが有するチオール基の量とポリオキシアルキレンポリオールが有するヒドロキシ基との合計量である。
【0057】
第2液は、上記のように、以下に示す、少なくとも1つのオキサゾリジン環を有する化合物を含む。この場合、分母は、ポリサルファイドポリエーテルポリマーが有するチオール基とオキサゾリジン環を有する化合物から生成するアミノ基との合計量である。
【0058】
第1液がさらにポリオキシアルキレンポリオールを含み、第2液がさらに、以下に示す、少なくとも1つのオキサゾリジン環を有する化合物を含む場合、上記の当量比の分母は、ポリサルファイドポリエーテルポリマーが有するチオール基とポリオキシアルキレンポリオールが有するヒドロキシ基とオキサゾリジン環を有する化合物から生成するアミノ基との合計量である。
【0059】
(オキサゾリジン環を有する化合物)
第2液は、さらに少なくとも1つのオキサゾリジン環を有する化合物を含むことができる。オキサゾリジン化合物は、1個以上のオキサゾリジン環を有する炭化水素化合物であれば特に制限されない。本実施形態において、少なくとも1つのオキサゾリジン環を有する化合物を以下「オキサゾリジン化合物」ということがある。第2液はさらにオキサゾリジン化合物を含むことで、可使時間を適正な長さにすることができると共に、発泡の抑制を向上させることができる。
【0060】
オキサゾリジン化合物はオキサゾリジン環以外に例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基のような活性水素基を有することができる。
【0061】
活性水素基を含有するオキサゾリジン化合物としては、例えば、下記式(2)で表されるものが挙げられる。
【化1】


(上記式(2)中、R5はアルキレン基であり、R6は炭化水素基であり、X(活性水素基)はヒドロキシ基、アミノ基、チオール基である。)
【0062】
アルキレン基は、相溶性に優れるという観点から、炭素原子数は1以上5以下であるのが好ましい。具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基が挙げられる。
【0063】
6としての炭化水素基は特に制限されない。例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基などこれらの何れか1つ以上を組み合わせたものが挙げられる。
【0064】
オキサゾリジン化合物は、可使時間を適正な長さにすることができ、貯蔵安定性、発泡抑制性に優れるという観点から分子中にヒドロキシ基を1個以上有するのが好ましい。
【0065】
オキサゾリジン化合物が分子中にヒドロキシ基を1個以上有する場合、ウレタンプレポリマーを作製する際にオキサゾリジン化合物を使用しウレタンプレポリマーにオキサゾリジン環を導入することができ、耐発泡性により優れ、貯蔵安定性に優れる。また、分子中にヒドロキシ基を1個以上有するオキサゾリジン化合物は第2液中でウレタンプレポリマーと反応することができ、耐発泡性により優れ、貯蔵安定性に優れる。
【0066】
ヒドロキシ基を有するオキサゾリジン化合物としては、例えば、2−イソプロピル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、3−(2−ヒドロキシエチル)−2−(1−メチルブチル)オキサゾリジン、2−フェニル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2−(p−メトキシフェニル)−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2−(2−メチルブチル)−3−(2−ヒドロキシエチル)−5−メチルオキサゾリジン、下記式(3)、式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0067】
【化2】


(上記式(3)、式(4)中、nは0以上2以下の整数を表し、R1は、ヒドロキシ基または炭素数1以上12以下の分岐していてもよいアルキル基もしくはアルコキシ基であり、nが2の場合のR1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R2は、炭素数1以上6以下の分岐していてもよいヒドロキシ基を有するアルキル基である。R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上6以下の分岐していてもよいアルキル基またはフェニル基である。)
【0068】
具体的には、上記式(3)で表される化合物としては、下記式(5)で表される化合物等が好適に挙げられる。上記式(4)で表される化合物としては、下記式(6)、(7)で表される化合物等が好適に挙げられる。
【0069】
【化3】

【0070】
ヒドロキシ基を1個以上有するオキサゾリジン化合物は、耐発泡性により優れ、貯蔵安定性に優れるという観点から、3−(2−ヒドロキシエチル)−2−(1−メチルブチル)オキサゾリジンおよび/または2−フェニル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジンであるのが好ましい。
【0071】
オキサゾリジン化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0072】
オキサゾリジン化合物は、例えば、作製中、貯蔵中などにウレタンプレポリマーと反応してもよい。
【0073】
オキサゾリジン化合物の量は、耐発泡性により優れ、貯蔵安定性に優れるという観点から、シーリング材組成物全量中の0.01質量%以上3.00質量%以下であるのが好ましく、0.05質量%以上1.00質量%以下であるのがより好ましい。
【0074】
本実施形態のシーリング材組成物は、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、可塑剤、充填剤(例えば、炭酸カルシウム、表面処理された炭酸カルシウム、樹脂中空体)、硬化触媒、チクソトロピー性付与剤、シランカップリング剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、乾性油、接着性付与剤、分散剤、脱水剤、紫外線吸収剤、溶剤などが挙げられる。
【0075】
本実施形態のシーリング材組成物の作製方法は、特に限定されるものではない。例えば、1分子中に、ポリスルフィド結合を含有し、末端に1以上のチオール(SH)基を含むポリマー化合物を有する第1液と、末端にイソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーと、少なくとも1つのオキサゾリジン環を有する化合物とを含む第2液とを別々に窒素ガス雰囲気下で十分に混合する方法などにより調製することができる。本実施形態のシーリング材組成物は、調製された第1液と第2液とを、窒素ガス等で置換された容器に各々充填し、保存することもできる。本実施形態のシーリング材組成物は、第1液と第2液とを十分に混合して使用することによって使用することができる。
【0076】
本実施形態のシーリング材組成物の用途としては、例えば、シーリング材、接着剤が挙げられる。本実施形態のシーリング材組成物を適用することができる被着体としては、例えば、モルタル、コンクリート、金属、塗装板、プラスチック、ゴムが挙げられる。本実施形態のシーリング材組成物を被着体に塗布する方法は特に制限されない。例えば、従来より公知のものが挙げられる。
【0077】
このように、本実施形態のシーリング材組成物によれば、以下に示すような効果を有することができる。
1.第1液は、主鎖骨格にポリスルフィド結合を有したポリマーであるため、ポリサルファイドの耐熱性、自着性、耐候性、目地などの周辺の汚染を抑制する効果を維持することができる。
2.第2液は、末端にイソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーと、少なくとも1つのオキサゾリジン環を有する化合物とを含むため、施工時の環境雰囲気中や被着体の水分とウレタンプレポリマーのイソシアネート基とが反応し、炭酸ガスの生成によって生じる発泡を抑制することができる。これにより、硬化物の外観の美観性の低下や硬化物強度の低下を防止することができる。また施工時のシーリング材組成物の表面及び被着体界面では、オキサゾリジンの開環速度が速まり、オキサゾリジンとのウレア結合が形成される。これにより、施工時の環境雰囲気中に存在する水分や被着体に含まれる水分より先に第2液のオキサゾリジンが反応することで、施工時の環境雰囲気中や被着体の水分とウレタンプレポリマーのイソシアネート基とが反応して炭酸ガスを生成する副生反応を抑制することができ、本来の構造設計通りの硬化体を得ることができる。よって、ポリサルファイドブロックポリマー末端のスルフィド基とイソシアネートとの反応率の高いチオウレタン結合が確保され、紫外線劣化、熱劣化、加水分解劣化などの影響を受け難くなるため、耐候性を向上させた硬化物を得ることができる。
3.第2液は、オキサゾリジン環を有する化合物を含むため、基材中の3級アミンの添加量を低減することができる。これにより、貯蔵中に3級アミンの反応促進によるジスルフィド結合を抑制し、粘度が上昇するのを抑制することができ、貯蔵安定性を向上させることができる。
4.第2液は、さらにオキサゾリジン化合物を含む場合、密閉容器中で保管されている第1液と第2液とを混合することにより硬化剤の成分中のオキサゾリジン環が系内の水分と触れることで開環し、イソシアネートと反応する官能基(アミノ基)を生じ、反応が促進される。系内の水分はイソシアネートと反応すると炭酸ガスを発生し、あるいは硬化触媒を失活させる。そのため、水がイソシアネートと反応し、炭酸ガスを発生することで、得られるシーリング材の表面に多数の気孔が発生し、外観を損なう虞がある。特にモルタルなど水分を多く含む被着体に施した場合、界面付近での物性の低下が生じやすくなるため接着不良をおこす虞がある。また、硬化触媒を失活させるとイソシアネートとポリオールとの反応よりもイソシアネートと水との反応がより進行してしまうため発泡が発生しやすくなる。第2液がオキサゾリジン化合物を含むことで、第1液と第2液とを混合することにより第2液(硬化剤)の成分中のオキサゾリジン環が系内の水分と触れることで開環し、イソシアネートと反応する官能基(アミノ基)を生じ、反応を促進することができるため、系内の水分がイソシアネートと反応して炭酸ガスが生じるのを抑制することができる。
5.第2液は、さらにオキサゾリジン化合物を含む場合、水分の影響を受けにくくなり、貯蔵中の吸湿の影響を低減できるため貯蔵安定性に優れたシーリング材組成物となる。オキサゾリジン化合物が空気中の水分と反応するのを促進するため、特に表面硬化性が向上するため内部の硬化速度を遅くすることが可能となり、可使時間を確保することができる。
【実施例】
【0078】
以下に、実施例を示して本発明のシーリング材組成を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0079】
<第1液(主剤)の調整>
下記表1に示す各成分を同表に示す割合(質量部)で配合して、第1液(主剤)を作製した。
【0080】
【表1】

【0081】
上記表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・ポリサルファイドポリエーテルポリマー:数平均分子量1100(商品名「チオコールLP−282」、東レ・ファインケミカル株式会社製) また、ポリサルファイドポリエーテルポリマーの数平均分子量は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン換算で表わされたものである。
・ポリオキシアルキレンポリオール:数平均分子量3000のポリオキシプロピレントリオール(商品名「EXCENOL−3030」、旭硝子ウレタン株式会社製)
・可塑剤:フタル酸ジイソノニル(商品名「DINP」、株式会社ジェイ・プラス製)
・金属触媒1:有機カルボン酸ビスマス塩(商品名「プキャット10」、日本化学産業株式会社製)
・金属触媒2:有機カルボン酸亜鉛塩(商品名「ニッカオクチックス亜鉛8%EH」、日本化学産業株式会社製)
・有機酸:有機カルボン酸(商品名「オクチル酸」、協和発酵株式会社製)
・フェノール系酸化防止剤(商品名「AO―30」、アデカ株式会社製)
・チオエーテル系酸化防止剤(商品名「AO―412S」、アデカ株式会社製)
・無水石膏(商品名「D−1」、株式会社ノリタケカンパニーリミテド製)
・樹脂中空体:有機バルーン(商品名「MFL100L」、松本油脂製薬株式会社製)
・炭酸カルシウム1:表面処理軽質炭酸カルシウム(商品名「MS−700」、丸尾カルシウム株式会社製)
・炭酸カルシウム2:表面処理軽質炭酸カルシウム(商品名「N−350」、丸尾カルシウム株式会社製)
・炭酸カルシウム3:重炭酸カルシウム(商品名「スーパーSS」、丸尾カルシウム株式会社製)
【0082】
<第2液(硬化剤)の調整>
下記表2に示す各成分を同表に示す割合(質量部)で配合して、80℃の条件下で24時間反応させて、第2液(硬化剤1、2)を作製した。NCO基/OH基(第2液中の全OH基当量に対するイソシアネート基当量の割合)および最終NCO%(第2液中の未反応のNCOの割合)も表2に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
上記表2中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・ポリオキシアルキレンポリオール1:数平均分子量1000のポリオキシプロピレントリオール(商品名「EXCENOL−1000」、旭硝子ウレタン株式会社製)
・ポリオキシアルキレンポリオール2:数平均分子量2000のポリオキシプロピレンジオール(商品名「EXCENOL−2020」、旭硝子ウレタン株式会社製)
・可塑剤:アジピン酸ジイソノニル(商品名「DINA」、株式会社ジェイ・プラス製)
・ポリイソシアネート:キシレンジイソシアネート(商品名「タケネート500」、三井化学ポリウレタン株式会社製)
・オキサゾリジン化合物:3−(2−hydroxyethyl)−2−(1−methylbuthyl) oxazolidine(商品名「PHO」、横浜ゴム株式会社製)
【0085】
<評価>
下記のようにして得られたシーリング材組成物について以下に示す方法で相溶性、耐熱性、加水分解性、引張接着性、耐候性を評価した。評価結果を表3に示す。
【0086】
(相溶性)
相溶性の評価は、第1液と第2液とを20℃、50%RH(相対湿度)の条件下で混合して混合物(シーリング材組成物)を形成し、第1液と第2液との混合後の混合物の外観と、混合物を硬化した後の硬化物の外観と、硬化物の硬化状態とを目視により観察して行った。第1液と第2液とを混合した後の混合物の外観と、硬化物の外観と、硬化物の硬化状態との試験結果は、各々以下のように評価した。試験結果を表1に示す。表1中、○、×は、各々以下の状態を示す。混合後の混合物の外観及び硬化後の硬化物の外観が、透明(クリヤー)であれば、相溶性に優れると判断した。また、硬化物の硬化状態が、偏り無く均一に硬化したものであれば、相溶性に優れると判断した。
(混合後の混合物の外観、硬化物の外観)
○:混合後の混合物の外観及び硬化後の硬化物の外観が透明(クリヤー)であったもの
×:若干白濁してしまったもの
(硬化物の硬化状態)
○:硬化物の状態が偏り無く均一に硬化したもの
×:偏りがあり不均一に硬化したもの
【0087】
(耐熱性)
耐熱性の評価は、第1液と第2液とを20℃、50%RH(相対湿度)の条件下で混合して得られた硬化物を、120℃の高温雰囲気下に7日間静置し、硬化物の状態を目視及び指触により観察して行った。試験結果は、以下のように評価した。試験結果を表1に示す。表1中、○、×は、各々以下の状態を示す。硬化物の表面状態及び指で触った感触より、硬化後と変化なく異常ない状態であれば、耐熱性に優れると判断した。
(評価基準)
○:硬化物の表面状態及び指で触った感触より、硬化後と変化なく異常ないと認められたもの
×:硬化物の表面が柔らかくベタツキのあるもの
【0088】
(加水分解性)
加水分解性の評価は、第1液と第2液とを20℃、50%RH(相対湿度)の条件下で混合して得られた硬化物を、オートクレーブ中に120℃、24時間静置し、硬化物の状態を目視及び指触により観察して行った。試験結果は、以下のように評価した。試験結果を表1に示す。表1中、○、×は、各々以下の状態を示す。硬化物の表面状態及び指で触った感触より、硬化後と変化なく異常ない状態であれば、加水分解性に優れると判断した。
(評価基準)
○:硬化物の表面状態及び指で触った感触より、硬化後と変化なく異常ないと認められたもの
×:硬化物の表面が柔らかくベタツキのあるもの
【0089】
(引張接着性)
引張接着性の評価は、シーリング材組成物の硬化を標準養生した後の硬化物と、得られた硬化物を水中に浸漬して後(浸漬後)の硬化物とを用いて、各々、引張接着性試験を行った。引張接着性試験は、得られた各シーリング材組成物を、JIS A1439:2004の「建築用シーリング材の試験方法」で規定する「5.20 引張接着性試験」にしたがって行った。試験は、23℃、50%相対湿度の条件下で行った。被着体には、アルミニウムを用い、試験体の形状は、JIS A1439に示す図14(b)2形とした。標準養生は、JIS A1439における表3養生条件(多成分形、23℃、50%RH×7日間(前養生)+50℃×7日間(後養生))の硬化養生を行った。得られた硬化物は、水中温度が20℃×7日間、水中に浸漬した。シーリング材組成物を標準養生した後の硬化物の最大引張応力(Tmax)と最大荷重時の伸び(Emax)と破壊状態と、水中に浸漬後の硬化物のTmaxとEmaxと破壊状態との試験結果を表1に示す。破壊状態は、凝集破壊(CF)の割合で評価した。標準養生後、水中に浸漬後の硬化物に関して、硬化物のTmaxは、0.4N/mm以上の場合、硬化物のEmaxは、400%以上の場合、破壊状態は、CFが75%以上の場合であれば、引張接着性が良好であると判断した。
【0090】
(耐候性(促進耐候試験))
得られた各シーリング材組成物を板ガラスに3mm厚で塗布し試験体を得た。この試験体を20℃、65%RHの雰囲気下に7日間置いた後、メタルウェザオメータに300時間放置して耐候性を評価した。試験結果は、以下のように評価した。試験結果を表1に示す。表1中、○、×は、各々以下の状態を示す。外観上、異常がない場合であれば、耐候性が良好であると判断した。
(評価基準)
○:外観上、異常がない場合
×:ヘアークラックが発生している場合
【0091】
<シーリング材組成物の作製>
表1及び表2に示す成分を同表に示す量(質量部)で用いて、第1液、第2液を含むシーリング材組成物を作製した。
【0092】
【表3】

【0093】
表3に示す結果から明らかなように、比較例1では、ポリサルファイドポリマーと第2液とは相溶せず、外観、硬化性は劣っていることが確認された。また、比較例2では、引張接着性と耐候性に劣っていることが確認された。一方、相溶性を確認するための実施例1〜2では、相溶性は良好であり(特に、ポリサルファイドポリマーを含む第1液とウレタンプレポリマーを含む第2液との間の相溶性)、これらに充填剤等を配合した実施例3〜4では、引張接着性、耐候性は良好であったことが確認された。
【0094】
よって、第2液(硬化剤)にオキサゾリジン化合物を含まない場合には、ポリサルファイドポリマーと第2液とが相溶せず硬化性に劣るといえる。また、第2液にオキサゾリジン化合物を含まない場合には、引張接着性と耐候性とが劣るといえる。これに対して、第2液にオキサゾリジン化合物を含むことで、相溶性、引張接着性、耐候性の何れも優れるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上のように、本発明に係る2成分形ポリサルファイド系シーリング材組成物は、炭酸ガスの生成による発泡を抑制し、硬化物の強度向上に有用であり、特に、2液硬化型ポリサルファイド系シーリング材に用いるのに適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に、ポリスルフィド結合を含有し、末端に1以上のチオール基を含むポリサルファイドポリエーテルポリマーを含む第1液と、
末端にイソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーと、少なくとも1つのオキサゾリジン環を有する化合物とを含む第2液と、
を含むことを特徴とする2成分形ポリサルファイド系シーリング材組成物。
【請求項2】
前記ポリサルファイドポリエーテルポリマーが、スルフィド基と、ポリプロピレンオキサイド基を含む請求項1に記載の2成分形ポリサルファイド系シーリング材組成物。
【請求項3】
前記オキサゾリジン環を有する化合物が、分子中にヒドロキシル基を有する請求項1又は2に記載の2成分形ポリサルファイド系シーリング材組成物。
【請求項4】
前記オキサゾリジン環を有する化合物が、3−(2−hydroxyethyl)−2−(1−methylbuthyl) oxazolidine、又は2−phenyl−3−(2−hydroxyethyl) oxazolidine
である請求項3に記載の2成分形ポリサルファイド系シーリング材組成物。

【公開番号】特開2012−111904(P2012−111904A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264072(P2010−264072)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】