説明

2軸ヒンジ装置並びにこの2軸ヒンジ装置を用いた携帯機器

【課題】 全体として小型化し、部品点数を削減してコストダウンを図った上で、充分な強度を有し、開閉操作時のガタを小さくすることができる2軸ヒンジ装置並びにこの2軸ヒンジ装置を用いた携帯機器を提供する。
【解決手段】 2軸ヒンジ装置としては、基板部とこの基板部より互いに直交する方向へ立設した一対の第1軸受部と第2軸受部とを具えた取付フレームと、第1変形頭部の側を前記第1軸受部に回転可能に取り付けて成る第1シャフトと、第2変形頭部の側を前記第2軸受部に回転可能に取り付けて成る第2シャフトと、前記第1変形頭部と第2変形頭部との間に設けられた規制手段と、を含んで構成し、この規制手段を、前記第1変形頭部と第2変形頭部の各側部に設けた交叉部と非交叉部で構成することで解決し、携帯機器としては、上記2軸ヒンジ装置を第1筐体と第2筐体の角部に取り付けることで解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機器を構成する第1筐体と第2筐体とを互いに重ね合わせた閉成状態から、上下方向と左右方向の2方向へ相対的に開閉させる際に用いて好適な2軸ヒンジ装置並びにこの2軸ヒンジ装置を用いた携帯機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯機器の一種である携帯電話機においては、キーボード等を上面に設けた第1筐体とディスプレイ等の表示部を下面に設けた第2筐体とを有し、これらの第1筐体と第2筐体とを2方向へヒンジ装置を介して開閉可能に連結した2つ折りのものが市場に出回っている。この2つ折りの携帯電話機は、第1筐体の上面後部に対して第2筐体が2軸ヒンジ装置を介して開閉可能に連結されており、第1筐体の上面に第2筐体を重ね合わせて第2筐体で第1筐体の上面を覆う閉成状態と、第2筐体を第1筐体に対して回動させて第1筐体の上面を露出させる開成状態とを作り出すことができる。
【0003】
近年、携帯電話機は、通話機能の他にインターネット等の通信回線を利用して各種映像を取り込んで表示する機能やゲーム機能等の多種多様な機能を備えたものが市場に出回っている。このような各種機能を持った携帯電話機は、ディスプレイ等の表示部を縦長にのみしか利用できないと、その機能を十分に発揮することができない。すなわち、従来のヒンジ装置は、第1筐体と第2筐体を上下方向に開閉可能に連結するものであり、1方向しか開閉させることができず、表示部を縦長にのみ利用することしかできなかった。このため、第1筐体と第2筐体とを上下方向に開閉させる以外に左右方向に開閉させることができるようにした2軸ヒンジ装置並びにこの2軸ヒンジ装置を用いた携帯電話機が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007-177829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1に記載されている2軸ヒンジ装置は、基板部とこの基板部の両端部より軸受孔を有する一対の軸受部を離間対向させて立設してなる断面異形コの字形状の基本フレームと、前記一対の軸受部に回転可能に取り付けて成る開閉軸と、前記基板部の中央部に前記開閉軸に対し直交する方向へ回転可能に取り付けた回転軸と、開閉軸と軸受部との間に設けた多数の部品からなる弾性手段を作用させた開閉軸用のカム機構と、回転軸と基板部との間に設けた同じく多数の部品からなる弾性手段を作用させた回転軸用のカム機構と、開閉軸と回転軸の各頭部の間に設けた規制手段とから構成されている。
【0005】
ところで、近年、携帯機器、とくに、携帯電話機は、上述した多機能化と共に小型薄型化が図られており、その開閉装置も小型化とコストダウンを図ることを迫られている。この点、特許文献1に記載された2軸ヒンジ装置は、装置としてまだ大型であり、部品点数も多いことから、携帯電話機を薄型にする点ではいまひとつである上に、部品点数が多く製作コストが高くつくという問題があった。さらに、特許文献1のものは、携帯電話機を構成する第1筐体と第2筐体を上下方向と左右方向の2方向へ開閉させる構成のものではないことから、上下方向と左右方向の2方向へ開閉させることのできる、小型で、製作コストの安価な2軸ヒンジが求められている。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、携帯機器を構成する第1筐体と第2筐体を重ね合わせた状態から、その上下方向と左右方向の2方向へ開閉操作できる機能を持ち、全体として小型化してコストダウンを図った上で、部品点数を削減した上で、充分な強度を有し、開閉操作時のガタを小さくすることができる2軸ヒンジ装置並びにこの2軸ヒンジ装置を備えた携帯機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための本発明に係る携帯機器の2軸ヒンジ装置は、基板部とこの基板部より互いに直交する方向へ立設すると共に、互いの水平方向対角位置にそれぞれ第1軸受孔と第2軸受孔を有する一対の第1軸受部と第2軸受部とを具えた取付フレームと、第1変形頭部と第1軸部を有し、前記第1変形頭部の側を前記第1軸受部に回転可能に取り付ける共に、前記第1軸部の側を前記第1筐体の側に取り付けて成る第1シャフトと、第2変形頭部と第2軸部を有し、前記第2変形頭部の側を前記第2軸受部に回転可能に取り付けると共に、前記第2軸部を前記第2筐体の側へ取り付けて成る第2シャフトと、前記第1変形頭部と第2変形頭部との間に設けられた規制手段と、を含んで構成され、前記規制手段を、前記第1変形頭部と第2変形頭部の各側部に設けた交叉部と非交叉部で構成することにより、前記第1筐体及び第2筐体が閉成状態のときは、前記非交叉部が互いに対角位置にあって当該第1筐体及び第2筐体を前記2方向のいずれの方向にも開成可能であり、前記第1筐体と前記第2筐体のいずれか一方が開成されたときは、前記各交叉部と非交叉部が対角位置にあって当該第1筐体と第2筐体のいずれか他方が開成されることを規制するように構成したことを特徴とする。
【0008】
その際に本発明は、前記第1シャフト又は第2シャフトと前記第1軸受部又は第2軸受部の間に、当該第1シャフトと第2シャフトの回転を制御する回転制御手段を設けることが好ましい。
【0009】
さらに本発明は、前記回転制御手段の一方或は双方が弾性手段を作用させたカム機構とすることができる。
【0010】
さらに本発明は、前記弾性手段の一方或は双方を、スプリングワッシャーとしたり、コンプレッションコイルスプリングとすることができる。
【0011】
さらに本発明は、前記第1シャフトと第2シャフトには、いずれもその軸方向にケーブルを通す挿通孔が貫通して設けられることが好ましい。
【0012】
さらに本発明は、前記カム機構の一方又は双方を、前記第1軸受部又は第2軸受部の面部に第1軸受孔又は第2軸受孔を囲んで設けた凹部と凸部から成る固定カム部と、前記第1及び第2シャフトに回転を規制されて軸方向へスライド可能に設けられたところの前記固定カム部と対向する面部に設けた凹部と凸部から成る回転カム部を設けた回転カムとで構成することができる。
【0013】
さらに本発明は、前記取付フレームの第1軸受部と第2軸受部の一方或は双方を、複数のプレートを重ね合わせて形成することが好ましい。
【0014】
さらに本発明は、前記取付フレームの基板部を複数プレートを重ね合わせて形成させ、上側に位置するプレートの端部と前記第1及び第2軸受部の一方或は双方との間に、前記第1シャフト及び又は第2シャフトの第1変形頭部と第2変形頭部の端部を嵌入させる動作安定溝を設けたことを特徴とする。
【0015】
さらに本発明は、前記第1筐体の端部に、当該第1筐体と第2筐体の開成時にその開成角度を規制するストッパー部を設けることができる。
【0016】
そして本発明は、上記各構成の2軸ヒンジ装置の第1シャフトと第2シャフトのいずれか一方を第1筐体へ、他方を第2筐体へ取り付けて携帯機器を構成するものである。
【0017】
本発明によれば、2軸ヒンジ装置を、基板部とこの基板部より互いに直交する方向へ立設すると共に、互いの水平方向対角位置に一対の第1軸受部と第2軸受部とを具えた取付フレームと、第1変形頭部と第1軸部を有し、前記第1変形頭部の側を前記第1軸受部に回転可能に取り付ける共に、前記第1軸部の側を前記第1筐体の側に取り付けて成る第1シャフトと、第2変形頭部と第2軸部を有し、前記第2変形頭部の側を前記第2軸受部に回転可能に取り付けると共に、前記第2軸部を前記第2筐体の側へ取り付けて成る第2シャフトと、前記第1変形頭部と第2変形頭部との間に設けられた規制手段と、を含んで構成し、この規制手段を、前記第1変形頭部と第2変形頭部の各側部に設けた交叉部と非交叉部で構成したので、上下方向と左右方向の2方向へ第1筐体と第2筐体を開閉させることができる構成としても、装置の小型化を図ることができ、かつ、部品点数を省略してコストダウンを図ることができるものである。また、基板部や軸受部にプレートの二重構造を採用した場合には、小型でも必要な強度が得られるものである。したがって、2軸ヒンジ装置を小型化することができることから携帯機器を小型薄型にすることが可能となっている。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明に係る携帯機器の2軸ヒンジ装置並びにこの2軸ヒンジ装置を用いた携帯機器によれば、2軸ヒンジ装置の小型化を図ることができ、部品点数を省略してコストダウンを図った上で、必要な強度を得ることができ、この2軸ヒンジ装置を用いた携帯機器の小型薄肉化を図ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る2軸ヒンジ装置並びのこの2軸ヒンジ装置を用いた携帯機器を添付図面に基づいて詳述する。
【0020】
図1は本発明に係る携帯機器の2軸ヒンジ装置を備えた携帯機器の一例を示す図である。図2〜図7は本発明に係る携帯機器の2軸ヒンジ装置の一例を示す図である。本発明に係る携帯機器の2軸ヒンジ装置は、図1と図5、図7に示すように、携帯機器1を構成する第1筐体2と第2筐体3とを互いに重ね合わせた閉成状態から、上下方向と左右方向の2方向へ相対的に開閉させるものである。
【0021】
携帯機器1としては、特に限定されず、例えば、携帯電話機、PDA、ノート型のパソコン、ザウルス(商標)等の携帯端末機、電卓、ポケットコンピュータ、携帯ゲーム機等が挙げられ、携帯電話機等であることが好ましい。なお、本発明において携帯機器としては、その他、灰皿、ケース蓋等も含まれる。すなわち、2つの筐体を互いに上下方向と左右方向の2方向へ開閉させるものであれば特に限定されない。また、本実施の形態では、携帯機器としては、特に限定することなく説明する。
【0022】
第1筐体2は、小型電子機器のような携帯機器の場合には、図示してないがキーボード等を上面に有しており、第2筐体3は、図示してないLCDなどのディスプレイ装置等を下面に有している。第1筐体2及び第2筐体3は、略同じ略矩形状にそれぞれ形成されている。これらの第1筐体2と第2筐体3は、互いに重ね合わされた閉成状態から第1筐体2と第2筐体3をその上下方向と左右方向の2方向に相対的に開閉可能に2軸ヒンジ装置4を介して連結されて携帯機器1が構成されている。すなわち、この携帯機器1は、第1筐体2の上面に第2筐体3の下面が互いに重ね合わされて第1筐体2の上面を閉塞すると共に、第1筐体2の上面から第2筐体3の下面が離間して第1筐体2の上面を露出させることができるようになっている。
【0023】
本発明に係る2軸ヒンジ装置4は、第1筐体2と第2筐体3の互いの角部を連結して上下方向と左右方向へ開閉可能に連結するものであって、基板部5aとこの基板部5aより互いに直交する方向へ立設すると共に、互いの水平方向対角位置に第1軸受孔5fと第2軸受孔5gを有する一対の第1軸受部5bと第2軸受部5cとを具えた取付フレーム5と、第1変形頭部6aと第1軸部6bを有し、第1変形頭部6aの側を第1軸受部5bに回転可能に取り付ける共に、前記第1軸部6bの側を前記第2筐体3の側に取り付けて成る第1シャフト6と、第2変形頭部17aと第2軸部17bを有し、第2変形頭部17aの側を第2軸部17bに回転可能に取り付けると共に、第2軸部17bを第1筐体2の側へ取り付けて成る第2シャフト17と、第1変形頭部6aと第2変形頭部17aとの間に設けられた規制手段Aと、を含んで構成されているところに特徴がある。
【0024】
取付フレーム5は、例えばSUSのような金属プレートをプレス加工によって形成させたものであり、第2軸受部5cは、基板部5aより折り曲げた第1プレート5dと第1軸受部5bより折り曲げて来た第2プレート5eを重ね合わせた二重構造と成っている。尚、取付フレーム5はSUSに限定されず、他の強度を有する材料で構成しても良く、鍛造品或は焼結金属で構成することもまた任意である。また、軸受部の二重構造は、実施例のものは第2軸受部5cのみであるが、第1軸受部5bの側にも、例えば第2軸受部5cを形成する第1プレート5dを第1軸受部5b側に折り曲げて重ね合わせることによって、二重構造とすることができる。このように、軸受部を二重構造にすると、強度が増大する利点がある。さらに、この二重構造にする手段については、とくに限定はなく、例えば別のプレートを各軸受部に重ね合わせて固着することによって、形成させても良い。そして、第1軸受部5bと第2軸受部5cを基板部5aに対して直交状態に立設した点が、本発明に係る2軸ヒンジ装置を小型化することに大きく寄与している。
【0025】
第1軸受部5bに設けた第1軸受孔5fには、第1変形頭部6aと第1軸部6bから成る第1シャフト6が第1変形頭部6a側の第1軸部6bを回転可能に軸受させている。この第1シャフト6は、例えばSUSのような金属製の丸棒を加工して作ってあるが、材料や作り方はこのものに限定されない。鍛造品や焼結金属製であっても良い。この第1シャフト6の中芯部軸方向には、ケーブル7を通す挿通孔6cが貫通して設けられると共に、第1変形頭部6aには、その外周端面でカットした非交叉部6dと、カットしてない交叉部6eと、この交叉部6eにさらに形成したストッパー部6fが設けられている。第1軸部6bの外周は、その両側部を削り取ることにより、断面略楕円形状を呈した回転規制部6gが設けられ、自由端部側にはさらに断面略4角形状の取付部6hが設けられている。
【0026】
第1シャフト6が第1軸受孔5fを貫通して第1軸受部5bの外方向へ突出した第1軸部6bの回転規制部6gには、第1軸受部5bに接して回転カム8がその中心部軸方向に設けた変形挿通孔8a内に回転規制部6gを挿通させて第1シャフト6と共に回転するように取り付けられており、この回転カム8と第1軸受部5bの接触面に第1カム機構9が設けられている。この第1カム機構9は、同じく第1軸受孔5fを挟んだ対向位置に設けた一対の凸部10c、10dから成る固定カム部10と、回転カム8の第1軸受部5b側に変形挿通孔8aを挟んで対向位置に設けた一対の凸部11a、11bと、同じく変形挿通孔8aを挟んで対向位置に設けた一対の凹部11c、11dから成る回転カム部11とで構成されている。尚、各凸部10c、10dと11a、11bの上面は平坦に形成されている。
【0027】
次に、第1シャフト6の第1軸部6bには、その中心部軸方向に設けた各挿通孔12a、13a、14aに第1軸部6bを挿通させて3枚のスプリングワッシャー12、13、14から成る弾性手段15が設けられており、この弾性手段15は、第1軸部6bの取付部6hに取付部材16に設けた取付孔16aを嵌め、第1軸部6bしかして取付部6hの端部をかしめることによって、弾性手段15を介して回転カム8の回転カム部11を第1軸受部5b側に設けた固定カム部10へ圧接させている。尚、弾性手段15は、スプリングワッシャーの他に皿ばね、その他のもので構成されても良いし、コンプレッションコイルスプリングとしても良い。また、指示記号15aの円筒状のものは、第1カム機構9や弾性手段15を覆うカバーである。
【0028】
次に、第2軸受部5cに設けたところの第1軸受部5bに設けた第1軸受孔5fと軸芯の高さを共通にし、その水平方向の対角位置に形成した第2軸受孔5gには、第2変形頭部17aと第2軸部17bから成る第2シャフト17が第2変形頭部17a側の第2軸部17bを回転可能に軸受けさせている。このように各第1軸受孔5fと第2軸受孔5gを軸芯の高さを共通にしてその水平方向の対角位置に設けたことも、これによって第1シャフト6と第2シャフト17の取付方向が決まることから、2軸ヒンジ装置の小型化に寄与している。この第2シャフト17は、例えばSUSのような金属製の丸棒の加工品であるが、材料はこのものに限定されない。鍛造品や焼結金属製であっても良い。この第2シャフト17の中芯部軸方向には、ケーブル7を通す挿通孔17cが貫通して設けられると共に、第2変形頭部17aには、その外周端面でカットした非交叉部17dと、カットしてない交叉部17eと、この交叉部17eにさらに形成したストッパー部17fが設けられている。第2軸部17bの外周は、その両側部を削り取ることにより、断面略楕円形状を呈した回転規制部17gが設けられ、自由端部側にはさらに断面略4角形状の取付部17hが設けられている。
【0029】
第2シャフト17が第2軸受孔5gを貫通して第2軸受部5cの外方向へ突出した第2軸部17bの回転規制部17gには、第2軸受部5cに接して回転カム18がその中芯部軸方向に設けた変形挿通孔18a内に回転規制部17gを挿通させて第2シャフト17と共に回転するように取り付けられており、この回転カム18と第2軸受部5cの接触面に第2カム機構19が設けられている。この第2カム機構19は、第2軸受部5cの側の第2軸受孔5gを挟んだ対向位置に設けた一対の凹部20a、20bと、同じく第2軸受孔5gを挟んだ対向位置に設けた一対の凸部20c、20dから成る固定カム部20と、回転カム18の変形挿通孔18aを挟んだ対向位置に設けた一対の凸部21a、21bと、同じく変形挿通孔18aを挟んだ対向位置に設けた一対の凹部21c、21dとから成る回転カム部21とで構成されている。尚、各凸部20c、20dと21a、21bの上面は平坦に構成されている。
【0030】
次に、第2シャフト17の第2軸部17bには、その外周に環巻きさせて圧縮コイルスプリングから成る弾性手段22が設けられており、この弾性手段22は、第2軸部17bの取付部17hに取付部材23に設けた取付孔23fを嵌め、第2軸部17bしかして取付部17hの端部をかしめることによって、回転カム18の回転カム部21を軸受部5cの固定カム部20側に圧接させている。尚、弾性手段22は、弾性手段15のようにスプリングワッシャーや皿ばね、その他のもので構成しても良い。
【0031】
取付部材23は、基板部23aと、この基板部23aより立ち上げた補強部23bと、取付部23cから構成されており、取付部23cは、基板部23aから立ち上げた第1プレート23dと補強部23bから折り曲げた第2プレート23eを重ね合わせた二重構造と成っている。
【0032】
この取付部材23の材料はSUSであるが、このもの限定されない。SUS以外の金属、或は焼結金属、鍛造品とすることは任意である。尚、指示記号22aの円筒状のものは、第2カム機構19や弾性手段22を覆うカバーである。
【0033】
次に、本発明の作用効果について説明する。図1と図2に示したように、2軸ヒンジ装置の取付部材16は第2筐体3の端部に取り付けられ、取付部材23は第1筐体2の端部に取り付けられて、2軸ヒンジ装置4の取付フレーム5は第1筐体2の角部に形成した収容部2a内に収装されている。そして、携帯機器1の第1筐体2と第2筐体3が互いに閉じられて上下方向に重なり合った状態においては、充分に図示してないが、2軸ヒンジ装置4の第1カム機構9の回転カム部11の凸部11a、11bが、取付フレーム5の第1軸受部5bに設けた固定カム部10の凹部10a、10b内に落ち込んでおり、第2カム機構19の回転カム部21の凸部21a、21bが、取付フレーム5の第2軸受部5cの固定カム部20の凹部20a、20b内へ落ち込んでいるので、第1筐体2と第2筐体3は上下方向と左右方向のどちらの方向にも外力が加えられない限り開くことなく閉成状態を保っている。
【0034】
また、この閉成状態においては、とくに図2と図4に示したように、第1シャフト6の第1変形頭部6aの非交叉部6dと、第2シャフト17の第2変形頭部17aの非交叉部17dが、対角位置にあって非交叉状態となっており、空間部aが形成されていることから、第1筐体2と第2筐体3は相対的に上下方向と左右方向のどちらの方向にも開くことが可能である。つまり、第1シャフト6と第2シャフト17の第1変形頭部6aと第2変形頭部17aは、第1シャフト6と第2シャフト17のどちらの回転も阻止しない状態にある。この状態から、第1筐体2と第2筐体3を上下方向か左右方向のどちらかの方向へ開くと、その開成方向により共に回転する第1シャフト6と第2シャフト17によって、その第1変形頭部6aと第2変形頭部17aの交叉部6eか17eのどちらかが、空間部a内に侵入することから、第1シャフト6か第2シャフト17のどちらかが回転を阻まれることになる。つまり、第1筐体2と第2筐体3が上下方向へ開かれると、共に回転する第2シャフト17の第2変形頭部17aの交叉部17eが、空間部a内に侵入するので、第1シャフト6はその第1変形頭部6aが回転することができないことから、左右方向への開成操作はできないことになる。
【0035】
また、第1筐体2と第2筐体3を相対的に左右方向へ開くと、第1シャフト6の第1変形頭部6aの交叉部6eが空間部a内に侵入するので、第2シャフト17の第2変形頭部17aは回転することができず、第1筐体2と第2筐体3の上下方向の開成操作はできないことになる。
【0036】
このようにして、第1筐体2と第2筐体3が同時に上下方向と左右方向へ開閉されることを防止して、そのことによる不都合を解消しているものである。
【0037】
次に、第2筐体3の下面にディスプレイ装置等を取り付けてある場合、第1筐体2に対する全開成時に、第2筐体3が第1筐体2に対して180°まで開かず、160°程度にその開成角度を規制することは、ディスプレイ装置を見易くするために望まれるところであり、本発明はこの開成角度規制を第1シャフト6と第2シャフト17との第1変形頭部6aと第2変形頭部17aに、それぞれ設けたストッパー部6fと17fで行っている。即ち、第2筐体3を上下方向へ開いた時には、第2シャフト17の第2変形頭部17aに設けたストッパー部17fが、第1軸受部5bの内側に当接することによって開成角度規制させ、第2筐体3を第1筐体2に対して左右方向へ開いた時には、第1シャフト6の第1変形頭部6aに設けたストッパー部6fが第2軸受部5cに当接するとこによって開成角度規制される。
【0038】
勿論、ここのところは、各ストッパー部6f、17fが基板部5aに当接するように構成しても良い。但し、ストッパー部6fを2重に重ねた第2軸受部5cに当接するように構成すると、停止保持状態が安定するという利点がある。この回転規制角度は、実施例のもので160°であるが、この角度に限定されない。
【0039】
次に、第1カム機構9の回転カム8の回転カム部11の凸部11a、11b及び固定カム部10の凸部10c、10dと、第2カム機構19の回転カム18の回転カム部21の凸部21a、21b及び固定カム部20の凸部20c、20dの各上面は、共に平坦であるので、第1筐体2と第2筐体3を上下方向と左右方向のどちらの方向へ開閉させてもフリクショントルクが発生する。
【0040】
尚、各第1カム機構9と第2カム機構19の凸部の位置と凹部の位置はこれを逆にしても良い。さらにその設置位置を適宜選択することにより、第1筐体2と第2筐体3の開閉操作時にクリック停止させることが可能である。
【0041】
図8は、本発明に係る2軸ヒンジ装置の他の実施例を示す。図面によればこの実施例に係る2軸ヒンジ装置30は、取付フレーム31の基板部31aに、もう一枚の補強プレート32を重ね合わせると共に、この補強プレート32の端面と、第1軸受部31bと第2軸受部31cとの間に、第1シャフト33と第2シャフト34の各第1変形頭部33aと第2変形頭部34aを挟む動作安定溝35aと35bが設けられている。
【0042】
このように構成すると、取付フレーム31の強度が増大する上に、第1筐体2と第2筐体3の上下方向と左右方向の開閉操作時に、各第1シャフト33と第2シャフト34の回転及び支承動作が安定しガタガタしないという利点を有する。
【0043】
図9は、本発明に係る携帯機器の他の実施例を示す。図面によれば、この実施例に係る携帯機器40の第1筐体41の後端部には、ストッパー用突出部41aが形成されており、第2筐体42を上下方向へ開いた際に所定の開成角度で第2筐体42の後端部42aがストッパー用突出部41aに当接して、開成角度を規制するように構成されている。
【0044】
このように構成すると、第2筐体41を第1筐体42に対して開いた際に、煽り力を受ける図示してない2軸ヒンジ装置が変形してしまうことを極力防止できるという利点を有する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、2軸ヒンジ装置を小型にし、部品点数を省略できた上で、十分な強度を持つものとしたので、携帯機器、とくに携帯電話機に用いる2軸ヒンジ装置として最適であり、また、本発明にかかる2軸ヒンジ装置を携帯機器に用いた場合には、筐体を薄型にすることが可能であるので、筐体を薄くすることが求められている、とくに携帯電話機に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る2軸ヒンジ装置を用いた携帯機器の斜視図である。
【図2】本発明に係る2軸ヒンジ装置の斜視図である。
【図3】本発明に係る2軸ヒンジ装置を示し、(a)はその分解斜視図であり、(b)は取付フレームを逆方向から見た斜視図である。
【図4】本発明に係る2軸ヒンジ装置の平面断面図である。
【図5】本発明に係る携帯機器の動作を説明するための説明図である。
【図6】本発明に係る2軸ヒンジ装置の動作を説明する説明図である。
【図7】本発明に係る2軸ヒンジ装置と携帯機器の動作を説明するための説明図である。
【図8】本発明に係る2軸ヒンジ装置の他の実施例を説明するための説明図である。
【図9】本発明に係る携帯機器の他の実施例を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0047】
A 規制手段
a 空間部
1 携帯機器
2 第1筐体
3 第2筐体
4 2軸ヒンジ装置
5 取付フレーム
5a 基板部
5b 第1軸受部
5c 第2軸受部
5f 第1軸受孔
5g 第2軸受孔
6 第1シャフト
6a 第1変形頭部
6c 挿通孔
6d 非交叉部
6e 交叉部
6f ストッパー部
7 ケーブル
8 回転カム
9 第1カム機構
10 固定カム部
11 回転カム部
15 弾性手段
17 第2シャフト
17a 第2変形頭部
17c 挿通孔
17d 非交叉部
17e 交叉部
17f ストッパー部
18 回転カム
19 第2カム機構
20 固定カム部
22 弾性手段
32 補強プレート
41a ストッパー用突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と第2筐体とを、互いに重ね合わせた閉成状態から、上下方向と左右方向の2方向へ択一的かつ相対的に開閉させる2軸ヒンジ装置であって、
基板部とこの基板部より互いに直交する方向へ立設すると共に、互いの水平方向対角位置にそれぞれ第1軸受孔と第2軸受孔を有する一対の第1軸受部と第2軸受部とを具えた取付フレームと、第1変形頭部と第1軸部を有し、前記第1変形頭部の側を前記第1軸受部に回転可能に取り付ける共に、前記第1軸部の側を前記第1筐体の側に取り付けて成る第1シャフトと、第2変形頭部と第2軸部を有し、前記第2変形頭部の側を前記第2軸受部に回転可能に取り付けると共に、前記第2軸部を前記第2筐体の側へ取り付けて成る第2シャフトと、前記第1変形頭部と第2変形頭部との間に設けられた規制手段と、を含んで構成され、
前記規制手段を、前記第1変形頭部と第2変形頭部の各側部に設けた交叉部と非交叉部で構成することにより、前記第1筐体及び第2筐体が閉成状態のときは、前記非交叉部が互いに対角位置にあって当該第1筐体及び第2筐体を前記2方向のいずれの方向にも開成可能であり、前記第1筐体と前記第2筐体のいずれか一方が開成されたときは、前記各交叉部と非交叉部が対角位置にあって当該第1筐体と第2筐体のいずれか他方が開成されることを規制するように構成したことを特徴とする、携帯機器の2軸ヒンジ装置。
【請求項2】
前記第1シャフト又は第2シャフトと前記第1軸受部又は第2軸受部の間に、当該第1シャフトと第2シャフトの回転を制御する回転制御手段を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の2軸ヒンジ装置。
【請求項3】
前記回転制御手段の一方或は双方が弾性手段を作用させたカム機構であることを特徴とする、請求項2に記載の2軸ヒンジ装置。
【請求項4】
前記弾性手段の一方或は双方がスプリングワッシャーであることを特徴とする、請求項3に記載の2軸ヒンジ装置。
【請求項5】
前記弾性手段の一方或は双方がコンプレッションスプリングであることを特徴とする、請求項3に記載の2軸ヒンジ装置。
【請求項6】
前記第1シャフトと第2シャフトには、いずれもその軸方向にケーブルを通す挿通孔が貫通して設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の2軸ヒンジ装置。
【請求項7】
前記カム機構の一方又は双方は、前記第1軸受部又は第2軸受部の面部に第1軸受孔又は第2軸受孔を囲んで設けた凹部と凸部から成る固定カム部と、前記第1及び第2シャフトに回転を規制されて軸方向へスライド可能に設けられたところの前記固定カム部と対向する面部に設けた凹部と凸部から成る回転カム部を有する回転カムとで構成されていることを特徴とする、請求項3に記載の2軸ヒンジ装置。
【請求項8】
前記取付フレームの第1軸受部と第2軸受部の一方或は双方は、複数のプレートを重ね合わせて形成されていること特徴とする、請求項1に記載の2軸ヒンジ装置。
【請求項9】
前記取付フレームの基板部を複数のプレートを重ね合わせて形成させ、上側に位置するプレートの端部と前記第1及び第2軸受部の一方或は双方との間に、前記第1シャフト及び又は第2シャフトの第1変形頭部と第2変形頭部の端部を嵌入させる動作安定溝を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の2軸ヒンジ装置。
【請求項10】
前記第1筐体の端部に、当該第1筐体と第2筐体の開成時にその開成角度を規制するストッパー部を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の2軸ヒンジ装置。
【請求項11】
請求項1乃至10に各記載の2軸ヒンジ装置の第1シャフトと第2シャフトのいずれか一方を第1筐体へ、他方を第2筐体へ取り付けたことを特徴とする、携帯機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−14158(P2010−14158A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172816(P2008−172816)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000124085)加藤電機株式会社 (117)
【Fターム(参考)】