Cεへの免疫グロブリン重鎖クラススイッチングが増強された高IgE動物モデル
免疫グロブリン重鎖遺伝子がcイプシロンへのスイッチの増強された確率を有する動物モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についてのクロスリファレンス
本出願は、2009年2月27日に出願された「Cεへの免疫グロブリン重鎖クラススイッチングが増強された高IgE動物モデル」と題する米国仮特許出願出願番号61/156,299に対して優先権を主張する。
【0002】
配列表
配列番号:1−20を含む配列表は、表1として本願明細書に添付される。配列表において提供されるそれぞれの配列は、あらゆる目的のために、その全てが本願明細書に援用されたものとする。
【0003】
技術分野
この開示は、アレルギー治療を試験するための組み換えマウス及び方法に関連する。
【0004】
背景
喘息は、先進国世界人口の5分の1に影響を及ぼす衰弱性疾患である。重症喘息は、入院及び健康管理費用の主要な原因である。臨床診療において、喘息は、皮膚プリックテスト(SPT)又はインビトロ技術(RAST又はELISA)によって検出される局所的空中アレルゲンに対する循環IgEの有無によりアトピー性又は非アトピー性に分類される。これらのIgE抗体はマストセル上の高親和性IgE受容体(FceRI)と相互作用し、アレルゲン誘発の即時過敏症及び疾患の急性増悪を引き起こす。
【0005】
成体喘息患者の約3分の1は非アトピー性に分類される。それらはより重症疾患(多くの場合慢性鼻副鼻腔炎と関連している)を有する傾向があるが、アレルゲンへの急性反応性の欠如は別として、それらの疾患は臨床的に類似している。
【0006】
アレルギーは、一般に即時過敏症型の、アレルゲンと呼ばれる抗原の特定の型に対する免疫反応である。そのような反応は、アナフィラキシー、アレルギー性鼻炎(花粉症)、蕁麻疹及びアレルギー性喘息の発作の基礎をなしており、ブタクサ、花粉、ミツバチ又はスズメバチの毒、動物の鱗屑、カビ又はハウスダスト(例えばダニ)の成分のような共通のアレルゲンによって誘発され得る。
【0007】
喘息、アレルギー性鼻炎及び過敏性皮膚炎の間には近い一致がある;これらの対象物の一つの存在は、他の2つの相対リスクを、対象の生涯にわたり3−30倍増加させる。これらの疾患のうちの3つ全ては、高レベルの非特異性及び抗原特異性血清免疫グロブリンE(IgE)と関連している。
【0008】
ヒトにおいて、即時過敏症(IH)は、皮膚及びその他に存在するマストセル及び好塩基球の表面に固着されたIgEアイソタイプの抗体によって媒介される。これらの細胞結合IgE分子への抗原の結合は、細胞からヒスタミンのようなメディエーターの放出を誘発し、メディエーターが臨床現象(例えばアレルギー性反応を象徴する組織の膨張、そう痒又は気管支の平滑筋収縮)を誘導する。
【0009】
特定のアレルゲンに特異的なIgE抗体は、アレルゲンの接触に応じてBリンパ球によって産生及び分泌される。まず最初に、Bリンパ球(又はB細胞)はIgMアイソタイプの抗体を発現し、それぞれのB細胞は特定の抗原決定基に特異的な抗体を製造することに関与している。抗原決定基を有するアレルゲン及びTリンパ球によって製造される特定の因子の両方との接触により、B細胞がいわゆる抗体重鎖クラススイッチを経るように誘導される(B細胞によって産生される抗体の抗原特異性部分は変化しない)が、それはIgMアイソタイプのμ−重鎖よりもε−重鎖(産生IgE抗体)に付着される。そのようなクラススイッチは一見特定のB細胞にとって永続的であり、そうするように刺激されたときはいつでもアレルゲンに特異的なIgE抗体を分泌する。
【0010】
マウスにおけるオバルブミン(OVA)−誘導喘息は、ヒト喘息の最も一般的に用いられるモデルの一つである。Th2型細胞は、OVA誘導喘息の病因において決定的であると考えられる。Th2リンパ球がアレルギー性喘息の開始、進行及び持続において重要な役割を果たすことは公知であるのに対して、免疫調節性メカニズムについては理解されるべきことが多く存在する。このモデルは、高IgEと関連するヒト疾患を模倣していない。
【0011】
アレルギー性喘息モデルは、大きい動物モデル(例えばネコ、イヌ、ブタ、ヒツジ及びサル)においても記載されている。これらの種の中で、ネコが自然に特発性の喘息を発症するので、ネコ科のものは特に興味がある。しかしながら、大きい動物モデルは、高価で、時間がかかり、免疫学的及び/又は分子ツールとしての利用可能性が限られている。
【0012】
US6118044(2000)は、IgE重鎖定常領域を有し、予め定義された抗原(すなわちTNP)に特異的な、導入遺伝子によってコード化される抗体型分子を恒常的に発現するトランスジェニックマウスを提供する。それは、未知又は非特異的抗原に対してポリクローナル反応を生じない。
【0013】
現在、ヒト喘息の多くの主要な病理学的特徴(例えば平滑筋のマストセル浸潤)を欠いていることから、慢性気道疾患の望ましいモデルは存在しない。さらに、マウスは喘息にかからないので、それらのほぼ全ては時間とともに自然に回復する。したがって、抗体レパートリーがポリクローナルである天然のヒト以外の動物と比較して高いIgE反応を起こすことが可能なヒト以外の動物モデルを有することが望ましい。
【0014】
現在、アレルギーに対する共通の治療は、推測されるアレルゲンの回避;特定の保護メカニズムを刺激し、それにより最終的にはアレルゲンへの宿主の感度を減少させる免疫療法としてのアレルゲンの注入;コルチコステロイドのような薬剤(マストセルからアレルギーのメディエーターの放出に干渉する);及び抗ヒスタミン薬のような薬剤(放出されたメディエーターの生物学的作用を阻害する)を含む。しかしながら、アレルギー治療(特に副作用のないB細胞においてIgEアイソタイプスイッチを阻害する治療剤)を試験するための望ましい動物モデルが存在しない。
【0015】
したがって、高いIgE反応を起こす能力を有する細胞及び/又は動物を有することが望ましい。換言すれば、IgE製造のための選択的鎖スイッチ組換えの速度を増強することが望ましい。
発明の簡単な要約
【0016】
進行中の調査にもかかわらず、非特異的抗原(すなわち予め定義されていない抗原)へのポリクローナル反応を起こす喘息、アレルギー及び他の免疫性病態へのIgEの関与のインビボモデルに対するニーズがある。高い血清IgE反応がある高IgE産生インビボ動物モデルも存在しない。
【0017】
本願明細書において、抗アレルギー薬のサーチ及び/又は評価のための信頼性が高いモデルとして有用な組換え非ヒト動物(及びそれを用いる方法)が提供される。
【0018】
野生型(すなわち天然又は未改変の)免疫グロブリン遺伝子座に実質的に類似する遺伝子座のゲノム構造を有し、抗原曝露に応答して免疫グロブリンの完全なレパートリーを提供する潜在性を保持する動物モデルは、IgEアイソタイプスイッチを阻害する抗アレルギー薬のサーチ及び/又は評価を可能にする。
【0019】
本願明細書の開示は、アレルギー治療を試験するための動物モデルを提供する。動物モデルは抗原チ曝露への応答において抗体産生の広い多様性を提供し、抗体アイソタイプの完全な多様性及び抗原上のエピトープへの特異性の完全な成分を産生する。動物モデルは、さらに、アレルギー及び喘息に対するIgEの生理的重要性を理解する手段を提供する。
【0020】
第一の実施態様において、以下を含むターゲッティングベクターが提供される:
a)変更されるスイッチ領域の5’末端(5’アーム/アクセプター)に相同なDNAの断片は、NCBI受託番号NT_166318(マウス第12染色体ゲノムコンティグ、C57BL/6J系統)のヌクレオチド25470628から25468161(配列番号:5)に対応する少なくとも1500ヌクレオチド、少なくとも1800ヌクレオチド、少なくとも2000ヌクレオチド、少なくとも2200ヌクレオチド及び少なくとも2400ヌクレオチドからなる群から選択される;
b)選択可能な遺伝子マーカー;
c)ドナースイッチ領域をコード化する、所望の/ドナーのDNA配列;及び
d)変更されるスイッチ領域の3’末端(3’アーム/アクセプター)に相同なDNAの第二の断片は、NCBI受託番号NT_166318(マウス第12染色体ゲノムコンティグ、C57BL/6J 1系統)のヌクレオチド25470628から2546816(配列番号:8)に対応する少なくとも1500ヌクレオチド、少なくとも1800ヌクレオチド、少なくとも2000ヌクレオチド、少なくとも2200ヌクレオチド及び少なくとも2400ヌクレオチドからなる群から選択される。
【0021】
一態様において、ターゲッティングベクターは、配列番号:4又は5を含む5’アームを有する。実施態様において、5’アームは、配列番号:4の残基25−2471を含む。更なる態様において、5’アームは、内因性Iεの領域3’及び内因性Sεの5’に相同である。第二の態様において、ターゲッティングベクターは、配列番号:7又は8を含む3’アームを有する。実施態様において、3’アームは、配列番号:7の残基2−2495を含む。第三の態様において、ターゲッティングベクターは、ネオマイシン及びチミジンキナーゼからなる群から選択される選択可能な遺伝子マーカーを有する。更なる態様において、選択可能な遺伝子マーカーは、ネオマイシンである。第四の態様において、ターゲッティングベクターは、loxp部位が隣接する選択可能な遺伝子マーカーを有する。第五の態様において、ターゲッティングベクターは、ヒト及びマウスからなる群から選択される所望のスイッチ領域を有する。第六の態様において、所望のスイッチ領域は、Sμ、Sγ1、Sγ2a、Sγ2b及びSγ3から選択される。第七の態様において、所望のスイッチ領域は、マウスSμ領域の大部分を含むHindIII/NheI断片である。第八の態様において、所望のスイッチ領域は、NCBI受託番号NT_166318(マウス第12染色体ゲノムコンティグ、C57BL/6J系統)のヌクレオチド25617172から25615761(配列番号:6)を含む。第九の態様において、4.9kbのNheI−HindIII断片を含むSμ領域は、BACクローンRP23−354L16から単離されたゲノム断片を含むプラスミドからサブクローニングされた。
【0022】
第二の実施形態において、以下の工程を含む改変された胚性幹細胞をインビトロで製造する方法が提供される:
a)以下から選択される、Cεを発現するためにクラススイッチ組換え(CSR)の確率を増強するために前記細胞のゲノムDNAを改変する工程;
b)内因性のSε領域に直列に少なくとも一つの付加的なSεコピーを付加することによってSε長を増加させる工程;
c)Sε領域の置換;及び
d)正しく改変されたゲノムDNAのために細胞を選択する工程。
【0023】
ある態様において、改変は、Sε領域の、Sμ、Sγ1、Sγ2a、Sγ2b及びSγ3から選択されるスイッチ領域での置換である。更なる態様において、改変は、Sε領域の、Sμ領域での置換である。更なる態様において、改変は、任意のアクセプターS領域(Sγ1、Sγ2a、Sγ2b及びSγ3、Sa)のSmでの置換、又はその逆である。
【0024】
第三の実施態様において、以下の工程を含む改変された胚性幹細胞(ESC)をインビトロで製造するための方法が提供される:
a)SμをSε領域と交換するために請求項1のベクターを用いる工程
b)正しく改変されたゲノムDNAの細胞を選択する工程。
【0025】
一つの態様において、本発明の方法は、Sε領域を、Sμ、Sγ1、Sγ2a、Sγ2b及びSγ3から選択されるスイッチ領域で置換する改変を提供する。更なる態様において、本発明の方法は、Sε領域をSμ領域で置換する改変を提供する。別の態様において、本発明の方法は、BALB/c又はC57BL/6から選択されるマウス系統のESCを提供する。
【0026】
第四の実施態様において、以下の非ヒト動物が提供される:
a)IgH遺伝子座の少なくとも一つのアレルが、非改変アレルと比較してIgE発現/産生/分泌/速度を増強するように改変されている;及び
b)以下からなる群から選択されるIgEプロファイルを有している:
i.全ての血清抗体のIgE画分が0.04%以上である;
ii.IgE血清中濃度が4,000ng/ml以上である;
iii.IgG/IgEの比率が10未満である。
【0027】
第一の態様において、ヒト以外の哺乳動物は、4,000ng/ml以上、10,000ng/ml以上、15,000ng/ml以上、30,000ng/ml以上、90,000ng/ml以上、10μg/ml以上、20μg/ml以上、30μg/ml以上、40μg/ml以上、50μg/ml以上、60μg/ml以上、70μg/ml以上、80μg/ml以上、90μg/ml以上又は100μg/ml以上のIgE血清レベルを有する。第二の態様において、ヒト以外の哺乳動物は、0.1から10のIgG/IgE比を有する。第三の態様において、ヒト以外の哺乳動物は、100ng/mLから10000ng/mLの曝露されていない(すなわち休止期の)IgE血清中濃度を有している。第四の態様において、ヒト以外の哺乳動物は、1000ng/mLから1000000ng/mLの曝露された(すなわち活性化又は刺激された)IgE血清中濃度を有している。第五の態様において、動物モデルはヒト以外の脊椎動物である。第六の態様において、動物モデルは、マウス、ラット、モルモット、ウサギ又は霊長類である。第七の態様において、本願明細書に記載される非動物のゲノムは、より多くのIgEを発現/産生するように改変されたIgH遺伝子座のSε領域を有している。第八の態様において、ヒト以外の動物/哺乳動物モデルは、ジーンターゲッティングによって達成される改変を有する。第九の態様において、ヒト以外の哺乳動物は、少なくとも0.04%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%又は1.0%のIgE画分を有する。
【0028】
第五の実施態様において、アレルギー性疾患の治療方法の投与の前、同時又は後に動物をアレルゲンに暴露すること、及びIgE反応を評価することを含む、動物モデルを用いたアレルギー治療を試験する方法が提供される。本発明の方法の第一の態様において、抗原曝露への応答におけるIgEレベルは、アレルギー治療をしない場合よりも低い。第二の態様において、試験動物及びコントロール動物は、同腹仔である。
【0029】
第六の実施態様において、アレルギー治療を試験する方法によりアレルギーの治療のための医薬として同定された化合物の使用が提供される。
【0030】
第七の実施態様において、本願明細書に記載される動物モデルから入手可能な細胞株が提供される。
【0031】
第八の実施態様において、本願明細書に記載される動物モデルから単離される細胞が提供される。
【0032】
第九の実施態様において、非ヒト動物モデルの作出方法が提供され、前記方法は:
a)断片がCε−コード化領域の上流においてゲノムDNAに組み込まれ、Cε−コード化領域に作動可能に連結されるように、マウスの受精卵に配列番号:6(Sμ)をコード化するプラスミドの直線化断片を顕微注入すること、b)前もって偽妊娠を誘導するように処理された雌マウスの卵管に前記受精卵を移植すること、及びc)雌マウスの子宮において前記卵子を発生させること、を含む。
【0033】
第十の実施態様において、IgE産生率を増強するように改変されたIgH遺伝子座の少なくとも一つのアレルを含む改変ゲノムを生殖系列に含む組換えマウスが提供される。第一の態様において、組換えマウスは、Sε領域のSμ領域又はその機能部分での置換を含む改変を有する。第二の態様において、Sμ機能部分は、少なくとも1kbから10kb長である。
【0034】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明白になる。しかしながら、この詳細な説明から本発明の範囲及び趣旨の様々な変型及び改変が当業者にとって明らかになるので、詳細な説明及び具体的な実施例は、本発明の好ましい実施態様を示しているが、例示することのみを目的としていることはよく理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、マウスIgH遺伝子座の遺伝子改変の概略図である。(A)生殖系列配置におけるCmまでの可変領域のゲノム機構。(B)V(D)J遺伝子組換えは、B細胞を産生する低親和性IgMの大きいプールを生成する機能コード化可変領域を構築する。(C)AID及び生殖系列転写の誘導に付随するB細胞の活性化はSHMを引き起こし、ポイントミューテーションは構築された可変領域に導入される(アスタリスク)。Sm及び下流のS領域(例えばSg1)におけるAID媒介DSBs(電光シンボル)は、新規のアイソタイプ(例えばIgG1)転写を引き起こすために接続される。さらに、切除された環状の断片は、介在配列を接続することによって生成される。
【0036】
【図2A】図2Aは、ジーンターゲッティングストラテジーの概略図及びマウスSε領域の改変のための組換え部位を例示する。Cre_loxP遺伝子組換え後の標的アレルの構造は、一番下に例示される。制限酵素切断部位は明示される。R1は、EcoRIのためのスプライスサイトを示す。他の全ての制限酵素は、それらの正式な表記を有する。
【0037】
【図2B】図2Bは、ターゲッティングベクターpSW312の概略図である。実施例3を参照のこと。
【0038】
【図3】図3は、ドナースイッチ領域を有するSε領域の置換の前後のマウスIgH遺伝子座全体の概略図である。このダイアグラムにおいて、ドナースイッチ領域はSμである。上のパネルは、未改変IgH遺伝子座である;下のパネルは、本願明細書に記載される改変IgE遺伝子座を例示する。
【0039】
【図4A】図4Aは、未改変(すなわち野生型)ゲノム遺伝子座の概略図であり、制限酵素認識部位、プローブ及びスイッチ領域の相対的位置関係を例示する。5’相同アームは、ブラックボックスによって表される。3’相同アームは、灰色のボックスによって表される。
【0040】
【図4B】図4Bは、改変ゲノム遺伝子座の概略図であり、Smで置換されたSeを有する制限酵素認識部位、プローブ及びスイッチ領域の相対的位置関係を例示する。5’相同アームは、ブラックボックスによって表される。3’相同アームは、灰色のボックスによって表される。
【0041】
【図4C】図4Cは、SμでのSεの置換を確認するサザンブロットである。野生型B6試料は関連する大きさのバンドを一つのみ示し、単一のゲノムI領域の存在を示しているのに対し、標的胚性幹細胞試料は異なる大きさの2つのバンドとして明らかにされた野生型及び標的S部位(SεがSμで置換されている)を示す。これは、意図されたスイッチ領域の成功したターゲッティング及び置換を示す。
【0042】
【図4D】図4Dは、SμでのSεの置換を確認するサザンブロットである。野生型B6試料は関連する大きさのバンドを一つのみ示し、単一のゲノムI領域の存在を示しているのに対し、標的胚性幹細胞試料は異なる大きさの2つのバンドとして明らかにされた野生型及び標的S部位(SεがSμで置換されている)を示す。これは、意図されたスイッチ領域の成功したターゲッティング及び置換を示す。
【0043】
図5−11は、本願明細書に記載されるヌクレオチドを示す。ヌクレオチド塩基コードは、以下の通りである:A又はaはアデニンである;C又はcはシトシンである;G又はgはグアニンである;T又はtはチミンである;M又はmは、アデニン又はシトシンである;S又はsは、シトシン又はグアニンである;及び、N又はnは、アデニン又はシトシン又はグアニン又はチミンである。
【0044】
【図5】図5は、マウスの2つのヌクレオチド配列を示す。モチーフGGGCTGGGCTG(図5Aに示される配列番号:1)はSm及びSeにおいて見いだされ、第二のモチーフGAGCTGACTはSe領域においてわずかにGAGCTGAGCTに改変された(Smモチーフと比較して付加されたGを有する)(図5Bに示される配列番号:2)。
【0045】
【図6】図6は、IgH遺伝子座のBamHI/PVuI断片から欠失された2055塩基対(配列番号:3)を示す。
【0046】
【図7】図7は、A)配列番号:4、2471塩基対5’アーム(129マウス)、及びB)NCBI NT_166318のヌクレオチド25468161から25470628に対応する配列番号:5、2467の塩基対5’アーム(C57Bl/6J系統)を示す。
【0047】
【図8】図8は、NCBI受託番号NT_166318(マウス第12染色体ゲノムコンティグ、C57BL/6J系統)のヌクレオチド25617172から25615761に対応する配列番号:6(大文字で)(1141の塩基対)を示す。
【0048】
【図9】図9は、A)配列番号:7、3’アーム(129マウス配列)、及びB)NCBI NT_166318の25463273から25466106に対応する配列番号:8、3’アーム(C57Bl/6J配列)を示す。
【0049】
【図10】図10は、A)BamHIの3.7kb上流(5’プローブを設計するために用いられた)(配列番号:9)、及びB) PVUIからECORIの断片(3’プローブを設計するために用いられた)(配列番号:10)を示す。
【0050】
【図11】図11は、実施例2において用いられたプローブを示す。A)配列番号:11、I−mu Forward−1(21塩基対);及びB)配列番号:12、C−epsilon Reverse−1(30塩基対);C)配列番号:13、E−mu Forward−2(20塩基対);D)配列番号:14、C−epsilon Reverse−2(30塩基対);E)配列番号:15、Forward:SM5’(20塩基対);F)配列番号:16、9225F(19塩基対);G)配列番号:17、9518F(26塩基対);及びH)配列番号:18、Reverse(30塩基対)。
【0051】
【図12】図12は、BAC RP23−135L12(Invitrogen)から読み出されたIgE C57BL/6ゲノム配列(太字で下線を引かれたフォントに示された欠失されるSe領域)である(配列番号:19)。
【0052】
【図13】図13A−Dは、免疫刺激後の野生型(WT)及びヘテロ接合体(HET)脾細胞における様々な免疫グロブリンの細胞内レベルのFACSデータをまとめている。図13Aは、リポポリサッカライド(LPS)刺激後のIgMレベルがWT及びHET動物で同一であることを示す棒グラフである。図13Bは、リポポリサッカライド(LPS)刺激後のIgG3レベルがWT及びHET動物で同一であることを示す棒グラフである。図13Cは、IL−4と抗CD40(4/40)の併用刺激後のIgG1レベルがWTと比較してHET動物において減少したことを示す棒グラフである。図13Dは、IL−4と抗CD40(4/40)の併用刺激後のIgEレベルがWTと比較してHET動物において増加したことを示す棒グラフである。
【0053】
【図14】図14A−Dは、図13に示されるデータを作成するために用いられたものと同一の脾細胞についてのELISAデータを要約している。刺激後6日目において、FACS解析のために用いられたものと同じように刺激された脾細胞(3匹のHet及び3匹のWTマウス)の上清は、ELISAアッセイに用いられた。FACS解析において観察されたものと一致して、IL4/抗−CD40で刺激された場合、WTと比較してHetにおいて増加したIgE発現レベル及び減少したIgG1発現レベルも観察された。これは、IgG1へのスイッチと競合し、IgEスイッチレベルを増加させるSmKI部位において頻繁な破壊が発生していることを示唆する。LPS刺激はコントロールとして働き、WT及びHetが同様のIgM及びIgG3レベルを有することを示しており、他のスイッチ配列がクラススイッチのために利用できる場合、遺伝子座が未改変で、正常に機能することを示唆する。
【発明の詳細な説明】
【0054】
本発明は、次に、参照することを目的に以下の定義及び例のみを用いて詳述される。本願明細書に言及される全ての特許及び刊行物は、特許及び刊行物中で開示される全ての配列を含めて、明確に出典明示により援用されたものとする。
【0055】
本願明細書に定義されない限り、本願明細書において用いられる全ての専門的及び科学的な用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。Singleton, et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY, 2D ED.、John Wiley and Sons, New York (1994)及びHale & Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY, Harper Perennial, NY (1991)は、本発明において用いられる用語の一般的な定義の多くを当業者に提供する。本願明細書に記載されるものと類似又は同等なあらゆる方法及び材料を本発明を実行又は試験する際に用いることができるが、好ましい方法及び材料を記載する。数値範囲は、範囲を定義する数値を含む。特に明記しない限り、それぞれ核酸は左から右に5’から3’方向に記載され;アミノ酸配列は左から右にアミノからカルボキシ方向に記載される。専門家は、技術の定義及び用語について、特にSambrook et al., 1989, and Ausubel FM et al., 1993を参考にする。本発明は、記載された特定の方法論、プロトコル及び試薬には限定されず、異なり得ることはよく理解されることである。
【0056】
数値範囲は、範囲を定義している数値を含む。
【0057】
特に明記しない限り、それぞれ核酸は左から右に5’から3’方向に記載され;アミノ酸配列は左から右にアミノからカルボキシ方向に記載される。
【0058】
本願明細書に提供される見出しは、明細書全体を参照することで得られる本発明の様々な態様又は実施態様を限定するものではない。したがって、下記に定義される用語は、明細書全体を参照することでより明確に定義される。
【0059】
定義
新規な組換え非ヒト宿主、特に哺乳動物宿主、通常ミューリン(murine)は提供され、宿主は免疫原(抗原とも称される)に対して免疫応答を開始することが可能である。総血清Ig濃度の高いIgE成分又は画分を伴うが、産生される免疫応答は抗体の完全なレパートリーである。
【0060】
「組換え」は、動物又は細胞のDNAが遺伝子工学による改変を含むことを意味する。したがって、例えば、「組換え動物」は、本願明細書に記載されるように、少なくとも一部の細胞が遺伝子組換えを含むものである。同様に、「組換え細胞」は、本願明細書に記載されるように、そのゲノムが遺伝子組み替えを有するものである。
【0061】
「非特異的抗原」は、単独又はより大きな分子(タンパク質)と複合体を形成した後に免疫応答を引き起こし、免疫応答の産物(抗体又はT細胞)と結合可能な、身体にとって異質なあらゆる物質(免疫原又はハプテン)を意味する。
【0062】
本明細書において使用されるように、「アイソタイプ」は、重鎖定常域遺伝子によってコード化される抗体クラス(例えばIgM又はIgG1)を意味する。
【0063】
本明細書において使用されるように、「アイソタイプスイッチング」は、抗体のクラス又はアイソタイプがあるIgクラスから他のIgクラスに変化する現象を意味する。
【0064】
本明細書において使用されるように、「非スイッチアイソタイプ」は、アイソタイプスイッチングが起こらなかった場合に産生される重鎖のアイソタイプクラスを意味する;非スイッチアイソタイプをコード化しているCH遺伝子は、一般的に機能的に再編成されたVDJ遺伝子のすぐ下流の第一のCH遺伝子である。
【0065】
本明細書において使用されるように、用語「スイッチ配列」は、スイッチ組換えに関与するDNA配列を意味する。クラススイッチ組換え(CSR)の間、「スイッチドナー」配列(一般的にμスイッチ領域)は、スイッチ組換えの間に欠失される領域の5’(すなわち上流)に存在する。「スイッチアクセプター」領域は、欠失される領域と置換定常領域(例えばγ、ε等)との間に存在する。遺伝子組換えが常に発生する特定の部位がないように、最終的な遺伝子配列は一般的に予測可能でない。スイッチ配列は、本願明細書においてスイッチ領域と交換可能に用いられる。
【0066】
本願明細書に記載される遺伝子改変(すなわち組換え)動物において、スイッチアクセプター領域は、血清IgEレベルが上昇するように、CSRを増強するように改変される。
【0067】
S領域は、長さにおいて大きく異なる、大きな反復性イントロン配列である(反復領域は、マウスにおいて2.0から6.5kbにわたる)。哺乳動物S領域は、非鋳型鎖上で非常にGが豊富であり、主にTGGGG、GGGGT、GGGCT、GAGCT及びAGCTなどの特定のモチーフが優勢な直列型の反復ユニットから構成される。
【0068】
用語「再編成された」は、本願明細書で用いられるように、基本的に完全なVH又はVLドメインのそれぞれをコード化しているコンフォメーションにおいてVセグメントがD−J又はJセグメントに隣接して位置する、重鎖又は軽鎖免疫グロブリン遺伝子座の配置を意味する。再編成された免疫グロブリン遺伝子座は、生殖系列DNAとの比較により同定することができる;再編成された遺伝子座は、少なくとも一つの組換え七量体/九量体相同エレメントを有する。
【0069】
用語「再編成されていない」又は「生殖系列配置」は、Vセグメントに関して本願明細書において用いられるように、VセグメントがD又はJセグメントと隣接するために組み換えられていない配置を意味する。図1を参照のこと。
【0070】
核酸のために、用語「実質的な相同性」は、2つの核酸又はその明示された配列は、最適に整列して比較した場合、適切なヌクレオチド挿入又は欠失を伴い、ヌクレオチドの少なくとも約80%、通常は約90から95%、より好ましくはヌクレオチドの少なくとも約98〜99.5%が同一であることを示す。あるいは、セグメントが選択的ハイブリダイゼーション条件下で相補鎖にハイブリダイズする場合、実質的な相同性が存在する。核酸は、細胞全体、細胞可溶化物、又は部分的に精製されたか実質的に純粋な形態中に存在し得る。アルカリ性の/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィ、アガロースゲル電気泳動及び当該技術分野で周知の他の標準技術を含む標準技術によって、他の細胞成分又は他の不純物、例えば他の細胞の核酸又はタンパク質から精製された場合、核酸は「単離された」又は「実質的に純粋になる」。F. Ausubel, et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York (1987)を参照のこと。
【0071】
cDNA、ゲノム又は混合物からの本発明の核酸組成は、多くの場合天然配列であるが(改変された制限酵素認識部位などを除いて)、遺伝子配列を提供する標準技術に従って変異させてもよい。コード化配列に対して、これらの変異は要望通りにアミノ酸配列に影響を及ぼし得る。特に、天然のV配列、D配列、J配列、定常配列、スイッチ配列及び本明細書に記載される他の配列に実質的に相同的なDNA配列又はそれから誘導されるDNA配列が意図される(「誘導された」は、配列が同一又は他の配列から改変されることを示す)。
【0072】
核酸が他の核酸配列と共に機能的関係に入れられる場合、核酸は「作動可能に連結される」。例えば、配列の転写に影響を及ぼす場合、プロモーター又はエンハンサーはコード化配列に作動可能に連結される。転写制御配列に関して、作動可能に連結は、連結されるDNA配列が近接し、2つのタンパク質コード化領域を連結する必要がある場合に近接し、リーディングフレーム中に存在することを意味する。スイッチ配列に対して、作動可能に連結は、配列がスイッチ組換えをもたらすことが可能なことを示す。
【0073】
抗体レパートリーを伴って異物抗原刺激に反応する非ヒト動物の設計は、動物に含まれる免疫グロブリン遺伝子がB細胞発生経路にわたって正しく機能することが必要である。重鎖遺伝子の正しい機能は、アイソタイプスイッチングを含む。したがって、本発明の遺伝子は、アイソタイプスイッチング及び以下の一以上を生じさせるために構築される:(1)高レベル及び細胞型特異的な発現、(2)機能遺伝子再構成、(3)アレル排除の活性化及びアレル排除への反応、(4)充分な一次レパートリーの発現、(5)シグナル伝達、(6)体細胞性過剰変異及び(7)免疫応答中のIgE抗体遺伝子座の支配。
【0074】
マウスにおいて、CH遺伝子は、5’−V(D)J−Cμ−Cδ−Cγ3−Cγ1−Cγ2b−Cγ2a−Cε−Cα−3’の順で編成される。CSRは、個々のCH遺伝子の1から10キロベース(kb)の反復DNAエレメント5’であるスイッチ(S)領域において発生する。CSRはCm(Sm)上流のS領域とS領域の下流の間での組換えから生じ、介在配列の欠失が付随する。
【0075】
免疫グロブリン
免疫系は、抗体を産生することによって異種侵入物(抗原)に応答する。抗体は、侵入する微生物に自身を付着させ、破壊するためにそれらを標識する、又は細胞に感染するのを予防するタンパク質分子である。抗体は、抗原特異的である。すなわち、抗原暴露に応答して産生される抗体は、その抗原に特異的である。
【0076】
哺乳動物は、四つのIgアイソタイプ(又はクラス)を産生する:IgM、IgG、IgE及びIgA(それぞれ、μ、γ、ε及びα定常領域によってコード化される)。
【0077】
関連するIgGサブクラスは、異なるCγ領域によってコード化される。それぞれのIgアイソタイプは、抗原除去の特定の形態に特殊化されている。IgM(B細胞によって合成される第一のアイソタイプ)は、補体を活性化する。IgG(血清において最も豊富なアイソタイプ)は、食細胞上の受容体に結合する。IgG抗体は、胎児へ母性保護を提供するために、胎盤を越える。IgA抗体は、分泌物(例えば涙及び唾液)において豊富である;それらは、侵入した病原体の増殖を予防するために被覆する。IgE抗体は寄生線虫に対する保護を提供することができるが、それらは先進国において悪者である:それらは好塩基及びマストセルに結合し、ヒスタミン放出を活性化して、アレルギー応答を引き起こす。
【0078】
免疫原(又は抗原)は、抗体反応を誘発することができる。多くの異なる型の抗原の成功した認識及び根絶には、抗体の多様性が必要とされる;それらのアミノ酸組成は異なり、それらが多くの異なる抗原と相互作用することができる。ヒトは約100億の異なる抗体を生成し、それぞれの抗原の異なるエピトープに結合することが可能であることが推測されている。異なる抗体の膨大なレパートリーが単一の個体において生成されるにもかかわらず、これらのタンパク質を製作するために利用可能な遺伝子の数は限られている。脊椎動物B細胞が比較的少ない抗体遺伝子から抗体の多様なプールを生成することを可能とするいくつかの複雑な遺伝子のメカニズムが進化してきた。
【0079】
B細胞の発生
B細胞は、成熟した機能的細胞になる前に、骨髄及び脾臓において一連の分化チェックポイントを経る。分化を続けるか、細胞死を経るかの決定は、これらのチェックポイントで発生し、主に免疫グロブリンB細胞受容体(BCR)及び抗原結合性及びシグナル伝達分子として機能する能力を中心に展開する。そのような最初の二つのチェックポイントは、新しく合成された重鎖(H)がプレ−BCRを形成するために代替軽鎖(L)と結合するプロ−Bからプレ−Bへの移行における骨髄、及びH鎖がBCRを形成するために通常のL鎖と結合するpre−Bから未分化B細胞のステージにおける骨髄に存在する。プレ−BCR又はBCRを形成することができない細胞はアポトーシス(プログラム細胞死)を経るが、BCRを形成することができるものは分化を続ける。末梢へ移動する成熟B細胞は抗原によって活性化され、抗体を分泌するプラズマ細胞又はメモリーB細胞となり、より迅速に抗原への2度目の暴露に反応する。抗原活性化B細胞が増殖するのを止める場合、それらは成熟プラズマ細胞に分化することができる。プラズマ細胞は、基本的に『抗体工場』である。(Hardy & Hayakawa, B Cell Development Pathways, Annu Rev Immunol. (2001) 19:595-621を参照。)
【0080】
最初に、全てのB細胞は、IgM抗体を産生する。m重鎖の可変領域ドメインをコード化しているV、D及びJエレメントは、IgMC領域をコード化するCmエキソンに隣接して免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子座の5’末端に位置する。適切な刺激に続いて、B細胞は、抗体の抗原特異性を保持しながら、クラススイッチングにより、産生する抗体のアイソタイプを変えることができる。クラススイッチングは、クラススイッチ組換え(CSR)と呼ばれるメカニズムによって、重鎖遺伝子座において発生する。このメカニズムは、それぞれの定常域遺伝子(δ−鎖を除く)の上流のDNAにおいて見いだされるスイッチ(S)領域と呼ばれる保存されたヌクレオチドのモチーフに依存する。このプロセスにおいて、ゲノムDNAはスプライシングされ、それぞれIgG、IgE及びIgAアイソタイプのγ、ε及びα鎖をコード化するC領域エキソンにVDJエレメントを並置するために再結合される;これらのC−領域エキソンは、IgH領域のさらに下流に位置する。このプロセスは、異なるアイソタイプの抗体をコード化する免疫グロブリン遺伝子をもたらす。
【0081】
S領域
活性化B細胞におけるCγ、Cε及びCα遺伝子の発現の抗体クラススイッチングの分子基盤は、VDJ遺伝子の次に新規なCH遺伝子の3’に配置する遺伝子組換えである。明確なIgクラススイッチ組換え部位は、S領域(Cδ以外のそれぞれのCH遺伝子の5’に存在する高頻度反復DNA配列)中に位置する。
【0082】
全てのミューリン及び多くのヒトのS領域は、少なくとも部分的に配列決定されている。それらは1−10kb長であり、高度に反復しており、GCが豊富である。ミューリン及びヒトのSμは、大部分が均一に、2つの五量体配列GAGCT及びGGGGT及び七量体配列(C/T)AGGTTGから構成される。他のS領域の全ても五量体配列の複数のコピーを含む。Sμを除く全てのミューリンS領域は、Sγ1、Sγ3及びSγ2bに対する49塩基対の反複、Sγ2aに対する52塩基対の反複、Sαに対する80塩基対の反複及びSεに対する40塩基対の反複を有する、配列及び長さにおいて異なるタンデムリピートから構成される。ヒト及びミューリンのSμは、Sγ領域よりもSε及びSαに相同であり、各々相当の相同性を有する。S領域は、ヒトS領域がマウス細胞におけるスイッチ組換えのための基質として用いることができるように十分にヒト及びマウス間で保存されている。Sμ、Sε及びSα領域は、2種間で、Sγ領域よりも相同である。実際、マウスSmモチーフGGGCTGGGCTG(配列番号:1)はSeにおいて見いだされ、第二のモチーフGAGCTGACTはSe領域においてGAGCTGAGCT(Smモチーフと比較して付加されたGを有する)(配列番号:2)としてわずかに改変されている。S領域の長さは多くの対立形質の変異(長さ多型)の影響を受けており、特定のS領域の特定サイズに対する機能的要件がないことを示している。
【0083】
IgE及び血清IgEレベル
免疫グロブリンE(IgE)は、哺乳動物においてのみ見いだされる抗体のクラス(又は免疫グロブリン「アイソタイプ」)である。それは、アレルギーにおいて重要な役割を果たし、特に1型過敏症と関連している。IgEは、マンソン住血吸虫、旋毛虫及びカンテツなどほとんどの寄生虫への免疫システムの応答にも関与しており、特定の寄生原虫(例えばマラリヤ原虫)に対する免疫防御においても重要であり得る。
【0084】
IgEは一般的に最も少ないアイソタイプであるが−IgG(大部分の典型的な適応免疫応答に関与するアイソタイプ)の10mg/mlと比較して、正常な(「非アトピー性の」)個体の血清IgEレベルはIgG濃度の0.05%である−それは最も強力な免疫反応を起動させることが可能である。
【0085】
アトピー性の個体は、(高IgE症候群患者のように)血液中に正常レベルの最大10倍のIgEを有し得る。好塩基及びマストセル(炎症反応を媒介することが可能)は「初回抗原刺激を受けて」、(喘息における気道収縮、湿疹における局所的炎症、アレルギー性鼻炎における増加した粘液分泌及び増加した血管透過などのアレルギーと関連する症状の多くを引き起こす)ヒスタミン、ロイコトリエン及び特定のインターロイキンのような化学物質を放出する準備ができるようになり、他の免疫細胞が組織に接近できるように(しかし、アナフィラキシーのように血圧の潜在的に致命的な効果を導き得る)、「アレルゲン」(一般的にこれは塵ダニDerP1、ネコFelD1、クサ又はブタクサ花粉などのタンパク質である。)を特異的に認識するIgEは、その高親和性受容体(FcεRI)と固有の長期相互作用を有する。それぞれの反応のメカニズムは周知であるにもかかわらず、他が単に鼻水となる場合でも、なぜいくつかのアレルギーがそのような急激な感受性を発達させるかはまだよく分かっていない。
【0086】
血清総IgE濃度試験は、血清試料中の総IgEレベルの測定を可能にする。IgEの高いレベルは、アレルギーの存在と関連している。ある総血清IgEの試験方法は、PRIST(ペーパーラジオイムノソルベント試験)である。この試験は、血清試料を放射性ヨウ素で標識されたIgEと反応させることが関与している。結合した放射性ヨウ素(試験手順の完了後に算出される)は、血清試料中の総IgE量に比例する。臨床免疫学において、免疫グロブリンの個々のクラスのレベルは、患者の抗体プロファイルを解明するために、比濁分析(又は濁り測定)で測定される。IgEレベルを測定する他の方法は、ELISA、免疫蛍光法、ウエスタンブロット、免疫拡散及び免疫電気泳動である。
【0087】
100kU/L以上のUniCAP250(登録商標)システムを用いた血清総IgE濃度の測定結果は、上昇していると考えられる。IgEを測定する高感度二抗体ラジオイムノアッセイ法を用いたある研究において、明白なアレルギー症状のない健常人の血清IgEは、6から1000ng/mlの130倍の範囲にわたって変化していた。アレルギー性呼吸器疾患を有する患者において、IgE濃度の範囲は相当な範囲で健常人と重なっているが、約35%の未治療のアレルギー性個体は正常の97パーセンタイルより高いIgE濃度を有し、51%は95パーセンタイルより高い。(G.J. Gleich, A.K. Averbach and H.A. Swedlund, Measurement of IgE in normal and allergic serum by radioimmunoassay. J. Lab. Clin. Med. 77 (1971), p. 690を参照。)
【0088】
他の研究において、正常な成人の幾何平均IgEレベルは105ng/mlであり、5〜2045の95%区間であった。成人のIgEの正常レベルは、約100〜400ng/mlであり、IgGの1/400,000であることが報告されている。(Waldmann et al., The Journal of Immunology, 1972, 109: 304-310;Medical Immunology - 10th Ed. (2001) TG Parslow, DP Stites, AI Terr and JB Imboden, eds.、表7−2を参照)。
【0089】
若者(24−43歳)、老人(66−96)及び百歳以上の人(99−108)間の血清Igレベルの比較については、Listi et al., A Study of Serum Immunoglobulin Levels in Elderly Persons That Provides New Insights into B Cell Immunosenescence. Ann. N.Y. Acad. Sci (2006) 1089:487-495を参照のこと。特に、正常個体の免疫グロブリンの年齢及び性別に関連する血清中濃度についてはListi et al.(前掲)の表2を参照のこと。
【0090】
免疫グロブリンE(IgE)は、通常全ての血清抗体のごくわずかな画分(0.004%)のみを示すにもかかわらず、アレルギー性疾患に中心的に関与していることから、臨床的見地から極めて重要である。アレルギー応答に関与する炎症細胞の2つの分化した型(マストセル及び好塩基)は、固有の、IgE抗体に特異的な高親和性Fc受容体を有する。したがって、血液及び組織液中でIgEはとても低い濃度(およそ10−7M)にもかかわらず、これらの細胞の表面は、血液から吸収され、抗原受容体としての役割をするIgE抗体で常に装飾されている。その受動的に結合したIgE分子が抗原と接触する場合、マストセル又は好塩基は、アレルギー性疾患の急性の徴候の多くを産生する炎症媒介物質を放出する。血清IgEの高いレベルは、ぜん虫又は他の特定の多細胞寄生虫による感染も示し得る。IgG及びIgDの様に、IgEは単量体形態で存在する。Fc受容体は、主にε鎖のCH3ドメインを認識するように見える。Medical Immunology - 10th Ed.(2001;上掲)を参照のこと。
【0091】
ヒトにおける免疫グロブリンEの血清中濃度は多様であるが、約2500ng/mlを超える血清IgEレベルが種々の疾患と関連していることは明らかである。同様の低レベルのIgEがマウスにおいて報告されている(Pinaud et al., Localization of the 3' IgH locus Elements that Effect Long-Distance Regulation of Class Switch Recombination, Immunity (2001) 15(2): 187-199を参照)。
【0092】
ジーンターゲッティング及びプラスミド
ジーンターゲッティングは、設計された外因性DNAフラグメントとマウス胚性幹(ES)細胞のゲノムとの間で相同組換えを利用する技術である。導入されたDNAフラグメントに含まれる同一の領域と天然の染色体間の遺伝子組換えは、設計されたDNAでの染色体の一部の置換を引き起こす。これらの改変ES細胞は、胚盤胞に注射され、ICM(内部細胞塊)の割球とともに胎児の発生に組み込まれ、寄与する。
【0093】
手短に言えば、相同組換えを通して、変異された形態で特定の遺伝子の野生型アレルを置換するジーンターゲッティングベクターは設計される。標的ES細胞は、2−4日目の胚盤胞に移植(implant)され、偽妊娠母体に移植(transfer)される(下記参照)。
【0094】
本願明細書において用いられるターゲッティングベクターは、四つの成分を有する:
a.5’アーム(5’フランキング領域とも称される);
b.選択マーカー;
c.ドナースイッチ領域をコード化するDNA配列;及び
d.3’アーム(5’フランキング領域とも称される)。
5’アームは、置換されるスイッチ領域の5’末端に相同なDNA断片である。選択マーカーは、相同組換えにおいて選択可能な表現型を与える。選択マーカーは、loxp部位に隣接してもよい。ドナースイッチ領域は、選択マーカーの前後いずれであってもよい。3’アームは、置換されるスイッチ領域の3’末端に相同なDNA断片である。
【0095】
5’及び3’フランキング領域は、どのような長さであってもよいが、相同性の程度に依存している。ここで使用されるように、2つのDNA配列部分間の「実質的な相同性」は、DNAフラグメントが遺伝子組換えコンピテント細胞に共同導入する場合に、配列部分が検出可能な遺伝子組換えを容易にするために十分に相同であることを意味する。ヌクレオチド配列が互いに少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%及び最も好ましくは100%同一である場合、2つの配列部分は実質的に相同である。これは、相同性の減少が対応する相同組換えの成功の頻度を減少させるからである。配列相同性の実際的な下限は、相同性がさらに減少すると、遺伝子組換えコンピテント哺乳動物細胞のDNA断片の検出可能な相同組換えを媒介しない相同性として定義される。5’及び3’フランキング領域は、それぞれの相同配列部分について、好ましくは少なくとも500塩基対、より好ましくは1000塩基対、次に最も好ましくは約1800塩基対及び最も好ましくは1800塩基対より大きい。
【0096】
望ましくは、マーカー遺伝子は、欠失する配列を置換するための標的構築物において用いられる。様々なマーカー、特に正の選択を可能とするものが使用され得る。ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(「neo」)の遺伝子の発現から生じるG418耐性の使用が特に興味がある。ゲノム中のマーカー遺伝子の存在は、組込みが起こったことを示す。
【0097】
Sε領域が置換される領域である場合、ドナースイッチ領域はSμ、Sγ1、Sγ2a、Sγ2b又はSγ3領域であってもよい。ドナー領域は、刺激・非組換え条件下で(すなわちスイッチ領域は変更されていない)、Cεより高いレベルでの関連する重鎖の発現を引き起こすものである。
【0098】
ほとんどの場合、サザンブロットハイブリダイゼーションによるDNA分析は、組込み位置を確認するために使用される。挿入物及び相同組込みが発生する領域に隣接する5’及び3’領域の配列に対するプローブを用いることによって、相同的ターゲッティングが起こったことを証明することができる。
【0099】
PCRは、相同組換えの存在の検出において有利に用いられ得る。標的構築物内の配列に相補的なCRプライマー、及び標的遺伝子座において構築物の外側の配列に相補的なPCRプライマーが用いられ得る。この方法において、相同組換えが起こった場合、相補鎖に存在する両方のプライマーを有するDNA分子のみが得られる。予想される大きさの断片を示すことによって、例えばサザンブロット分析を用いて、相同組換えの発生が裏付けられる。
【0100】
標的構築物が調製され、例えば原核生物の配列などあらゆる望ましくない配列が取り除かれると、構築物は標的細胞(例えばES細胞)に導入され得る(下記参照)。標的細胞にDNAを導入するためのあらゆる便利な技術が用いられ得る。技術は、原形質融合(例えば酵母スフェロプラスト)を含む:細胞融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム媒介DNA移入又は直接的なマイクロインジェクション。
【0101】
標的細胞の形質転換又は形質移入の後、標的細胞は、前述のように陽性及び/又は陰性マーカー、ネオマイシン耐性及びアシクロビル又はガンシクロビル耐性を用いて選択され得る。望ましい表現型を示す細胞は、それから切断分析、電気泳動、サザン分析、PCR等によってさらに解析されてもよい。標的遺伝子座において望ましい改変の存在を示す断片を同定することによって、相同組換えがCεへのスイッチを増強するようにIgHの変更が起こった細胞を同定することができる。
【0102】
胚性幹(ES)細胞法
A.ES細胞へのcDNAの導入
ES細胞の培養方法及び後の組換え動物の作出方法、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム/DNA沈殿及び直接注入法のような種々の方法によるES細胞へのDNAの導入方法はTeratocarcinomas and embryonic stem cells, a practical approach, ed. E.J. Robertson, (IRL Press 1987)に詳述されており、その教示は本願明細書に援用される。組換えES細胞の望ましいクローンの選択は、いくつかの手段の一つによって達成される。配列特異的遺伝子組込みが関与する場合、対象の遺伝子と組換えるための核酸配列又はその発現を制御するための配列は、マーカー(例えばネオマイシン耐性)をコード化する遺伝子と共沈澱される。形質移入は、Lovell-Badge, in Teratocarcinomas and embryonic stem cells, a practical approach, ed. E.J. Robertson, (IRL Press 1987)又はPotter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 7161 (1984)に詳述されるいくつかの方法の一つによって実行される。リン酸カルシウム/DNA沈殿、直接注入及びエレクトロポレーションは、好ましい方法である。これらの手法において、多くのES細胞(例えば0.5×106)組織培養ディッシュに播種され、最終容量100μl中の50mgのリポフェクチンの存在下で沈澱された直線化された核酸配列及び1mgのpSV2neoDNAの混合物でトランスフェクションさせた(Southern and Berg, J. Mol. Appl. Gen. 1: 327-341 (1982))。細胞には、G418などの抗生物質(200から500μg/ml)が添加されたDMEM中の10%ウシ胎児血清を含む選択培地が供給される。G418に耐性の細胞のコロニーをクローニングリングを用いて単離し、増殖させる。DNAは薬剤抵抗性クローンから抽出され、プローブとして核酸配列を用いるサザンブロッティング実験は望ましい核酸配列を有するクローンを同定するために用いられる。いくつかの実験において、PCR法は、対象のクローンを同定するために用いられる。
【0103】
ES細胞に導入されるDNA分子は、相同組換えのプロセスを通して染色体にも組み込まれる(Capecchi, (1989) Science 244:1288-1292に記載される)。直接注入により高効率な組み込みが起こる。所望のクローンは、注入されたES細胞のプールから調製されたDNAのPCRにより同定される。プール中の陽性細胞は、細胞クローニングの後にPCRによって同定される(Zimmer and Bruss, Nature 338, 150-153 (1989))。エレクトロポレーションによるDNAの導入は、効率的でなく、選択ステップを必要とする。組換え事象の正の選択(すなわちネオ耐性)及び二重正−負の選択(すなわちネオ耐性及びガンシクロビル耐性)のための方法及び後のPCRによる所望のクローンの同定は、Joyner et al., Nature 338, 153-156 (1989) and Capecchi, (1989)に記載されており、その教示は本願明細書に援用される。
【0104】
B.胚の回収及びES細胞の注入
雌の動物に、マウスで用いられる標準技術(妊馬血清性腺刺激ホルモン(PMSG;Sigma)の注射に続いて48時間後にヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG;Sigma)の注射)を変更して作られた方法論を用いて過排卵を誘導する。雌を、hCG注射の直後に雄と共に置く。hCGのおよそ一日後、交配させた雌は犠牲となり、胚を切り取られた卵管から回収し、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma)を含むダルベッコリン酸緩衝生理食塩水に入れる。周囲の卵丘細胞は、ヒアルロニダーゼ(1mg/ml)で除去する。前核期胚w洗浄し、注入までの時間、加湿された5% CO2、95%空気の37.5℃インキュベーター中の0.5%BSAを含むアール均衡塩溶液(EBSS)に入れる。
【0105】
雄と交配した、自然に性周期が回っているか過排卵させた雌を、ES細胞の注入のための胚を採取するために用いる。適切な時期の胚は、受胎交配の後に回収する。交配した雌の子宮角を灌流し、胚をES細胞と共に注入するための10%仔ウシ血清を加えたダルベッコの改質基本培地に入れる。約10−20のES細胞を、約20μmの内径のガラス顕微針を用いて胚盤胞に注入する。
【0106】
C.偽妊娠雌への胚移植
ランダムに性周期が回っている成熟雌を、精管切除された雄とペアリングさせる。ES細胞を含む胚盤胞の着床が必要な場合、それらが交配後2.5〜3.5日(マウスに対して、又はより大きな動物に対してはより遅い)になるように、レシピエント雌を交配させる。胚移植時、レシピエント雌を麻酔する。卵巣を卵管上の体壁を切開することによって露出させ、卵巣及び子宮を外在化させる。胚盤胞が移される針で子宮角に穴を空ける。移植後、卵巣及び子宮を体内へ戻し、切開部を縫合することによって閉じる。さらに移植する場合、この手順を反対側においても繰り返す。
【0107】
胚の操作及びDNAのマイクロインジェクションのための手法はHogan et al., Manipulating the mouse embryo, Cold Spring Harbor laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1986)に詳述されており、その教示は本願明細書に援用される。これらの技術は他の動物種の胚に容易に適用でき、成功率は低いが、当業者にとっては通常の業務である。
【0108】
D.組換え動物の同定
試料(1−2cmのマウス尾部)は、幼若動物から切除される。より大きな動物については、血液又は他の組織を用いることができる。相同組換え実験のキメラを試験するため、すなわち動物に対する標的ES細胞の寄付を探すために、より大きな動物においては血液が検査されるが、マウスにおいては毛色が用いられてきた。DNAは、組換えファウンダー(F0)動物及びそれらの後代(F1及びF2)を検出するために、調製され、サザンブロット及びPCRによって解析される。
【0109】
一旦組換え動物が同定されると、系統は従前通りの交配によって確立される。
【0110】
サザン分析
DNAは、標準のフェノール抽出手法によって又はセシウム勾配遠心分離によって細胞株から得られた。
【0111】
A.フェノール抽出
細胞のフラスコをHBSSバッファーで洗浄し、2.5ml/100cm2の溶解溶液(1%ドデシル硫酸ナトリウム/150mM NaCl/10mMEDTA/10mMトリス、pH7.4)を添加する。全ての細胞が可溶化されたあと、それらを50ml円錐チューブに移し、最終濃度0.4mg/mlのプロテイナーゼKを添加する。溶解物を、DNAse酵素を不活性化するために10分間65℃でインキューベートし、次いで37℃、オーバーナイトでインキューベートした。この溶解物に、50mMトリス、pH8.0中で平衡化された新しいフェノールの等量を添加し、チューブを室温(22−24℃)で5分間穏やかに反転し、次いで5分間2000gで遠心分離し、表面の(水)層を第二のチューブに移す。50%フェノール/50%クロロホルム(v/v)の等量を添加し、反転遠心分離プロセスを繰り返した。上清を第3のチューブへ移し、クロロホルムの等量を添加する。第3の反転(遠心分離サイクル)の後、上清を第4のチューブに移し、1/10量の3M酢酸ナトリウム、2.5倍量の低温エタノールの添加により沈殿させる。70%エタノールで生じた沈殿物を洗浄し、ペレットを空気乾燥した後に、TEバッファー(10mMトリスpH7.4/1mMEDTA)に再懸濁し、50%μg/mlの最終濃度のRNaseを添加する(RNaseは、新たに懸濁された酵素を30分間、70℃で加熱することによってDNエースを含まないように調製される)。溶液を、1:1 SS−フェノール:クロロホルムの等量で抽出する。上記のような遠心分離により相が分離され、上清を等量のクロロホルムで抽出する。上記のような遠心分離に続いて、上清を等量のクロロホルムで抽出する。遠心分離に続いて、上清中のDNAを12.5mlのエタノールで沈殿させ、70%エタノールで洗浄及び風乾する。ペレットを、TEバッファーに懸濁し、DNA収量を260nMのO.D.で測定し、純度は260/280比率により測定する。DNA調製物を、4℃でTE中に保存する。
【0112】
B.培養細胞からのRNA及びDNAの塩化セシウム調製法
細胞のフラスコをHBSで洗浄し、2.5ml/100cm2のグアニジンイソシアネート(GIT)バッファーを添加した。グアニジンイソチオシアネートバッファーは、4MGIT/25mM酢酸ナトリウムpH6/0.8%ベータ−メルカプトエタノール(v/v)であった。3−5分後、穏やかな揺れで、細胞溶解物を、Beckman SW41 10ml超遠心器チューブ中の4mlの塩化セシウムバッファー上に層とした。チューブはGITバッファーで最上部まで満たされ、200℃、32,000rpm(174,000×g)でオーバーナイトで回転させた。チューブの上から3分の2のGIT溶液を取り除いて廃棄し、DNAを含むチューブの下から3分の1の塩化セシウム溶液を第二のチューブに移した。チューブの底のRNAペレットを、200μlの0.3M酢酸ナトリウム、pH6に再懸濁し、1.5mlマイクロチューブに移した。750μlのエタノールをこのチューブに添加し、チューブを10分間ドライアイスに入れた。10分間の微量遠心分離の後、上清を廃棄し、300μlの70%エタノールを添加し、チューブを再び微量遠心分離した。上清を廃棄し、ペレットを真空遠心機において乾燥させた。ペレットを、200μlのdH2O中に再懸濁した。RNA調製を、−70℃のエタノール沈殿物として保存した。DNAを含む4mlのCsClを、dH2Oで希釈した。これに、30mlの低温エタノールを添加した。DNA沈殿物を回収し、新しい50mlチューブに移し、70%エタノールですすいで、次いで空気乾燥させた。次いでペレットをプロテインキナーゼバッファー中に再懸濁し、10mgのプロテイナーゼKを添加した。65℃での15分間のインキュベーションの後、溶液を37℃、オーバーナイトでインキューベートした。加水分解物を1:1 SS−フェノール:クロロホルムを用いて抽出し、クロロホルム、エタノール沈殿に続いて、上記のように定量する。
【0113】
C.制限酵素消化、電気泳動及びサザンブロット法
制限エンドヌクレアーゼ消化条件は、供給元の推奨基準に従った。ゲノムDNAに対しての制限酵素消化は、37℃で4−6時間あった。簡素なDNA調製(クローニング又はPCR増幅)では、インキュベーションは37℃で1−2時間だった。多くの場合、10μgのDNAは、150μl量において消化された。消化物を、3μlの5MNaCl及び375μl(2.5倍量)の低温エタノールを添加して沈澱させ、4℃で10分間微量遠心分離し、500μlの低温70%エタノールで洗浄し、微量遠心分離した。
【0114】
ペレットを、真空微量遠心管中で空気乾燥させ、17μlの電気泳動ランニングバッファー(通常TAEバッファー)及び3μlのローディングバッファー(50%グリセロール/1%ブロムフェノールブルーを含むTAEバッファー)に再懸濁し、68℃で10分間加熱し、別のウェルにサイズマーカーとして働くラムダ−HindIII消化物をロードすると共にアガロースゲルのウェルにロードした。ゲル中のアガロースの濃度は1.0%であった。8−16時間の電気泳動に続いて、ゲルをエチジウムブロマイドで染色し、マーカーバンドの泳動距離を測定及び記録し、ゲルを撮影した。
【0115】
消化されたDNAをNytran膜へ真空転写した。ゲルを吸引装置上のNytran膜上に敷設し、500mlの0.4MNaOH/0.8MNaClで覆い、50cmの水圧で4分間真空加圧した。NaCl−NaOH溶液を除去し、500mlの10×SSCを添加し、50cmの水圧で30−60分間加圧した。サザンブロットを80℃で2時間乾燥し、野菜凍結バッグ中で保存した。
【0116】
D.サザンハイブリダイゼーション
サザンブロットを、熱封止可能なプラスチック袋に入れ、1MNaCl、1%SDS、10%デキストラン硫酸エステル及び200μg/mlニシン精液DNAを含む10mlのプレハイブリダイゼーションバッファーでインキューベートし、65℃で15分間インキューベートした。次いでバッグの隅を切り取り、放射性同位元素標識オリゴヌクレオチドプローブを添加した(約107dpm)。バッグを再封止し、65℃のオーブン又はウォーターバスに入れ、12−16時間穏やかに揺らすか振盪した。次いで膜をバッグから取り除き、特異的に結合したプローブと比較して背景の放射能が低くなるまで、一連の漸増希釈したより高い温度(ストリンジェンシーを増加させる)のSSCバッファーで洗浄した。次いで、暗室において、膜を増強装置スクリーンを備えたX線フィルムカセットに置かれたビニール袋に入れ、Kodak XAR 5フィルムを一枚加え、シグナル強度に合わせた時間封入されたカセットを70℃に入れた。通常、時間を変化させた後の暴露は有用である。フィルムは、Kodak X−OMAT自動現像液で現像した。膜を数回ハイブリダイズしてもよい。Nytran膜を、2分間沸騰している0.1×SSCで加熱させることによって、標識プローブを解離させてもよい。
【0117】
B細胞培養
B細胞を、ネガティブセレクションによって脾臓から精製してもよい。簡潔には、単個細胞浮遊液中のT細胞を、抗体で被覆し、補体溶解によって枯渇させる。残りの脾臓細胞を、非連続的パーコール(GE Healthcare)勾配を通して層状化した。休止B細胞を66%〜70%境界面から選択し、総B細胞(50−70%パーコール境界面)を用いた。B細胞は、10%ヒート不活性FBS、100U/mlペニシリン及びストレプトマイシン、2mML−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、10mMHepes、100mM非必須アミノ酸及び5×10−5M2−メルカプトエタノールが添加されたRPMI1640培地(Sigma Aldrich)からなるB細胞培地で培養してもよい。
【0118】
インビボ高IgE産生の確認
組換え動物を、当該分野で公知の技術を用いて、血清IgEレベルの上昇について試験する。例えば、ImmunoCAP特異的IgE血液検査(文献は:CAP RAST、CAP FEIA(フッ化酵素免疫検定法)及びファルマシアCAPとしても記載される)を用いてもよい。
【0119】
他の方法は、当該技術分野において公知である。そのような方法は、例えば、抗IgE抗体を用いた酵素結合免疫吸着検定法及び潜在的にFACSを含む。酵素結合免疫吸着検定法(ELISA、酵素免疫測定法又はEIAとも称される)は、抗体又は試料中の抗原の存在を検出するために免疫学において主に用いられる生化学技術である。蛍光活性化細胞分類(FACS)は、単一の細胞が混合された大きな群を解析するための強力な技術である。高い割合を占めるIgE陽性細胞は、高いIgE血清レベルを示す。
【0120】
ハイブリドーマ作出
IgEを産生するハイブリドーマを調製するために公知の標準的な技術を用い得る。例えばKohler & Milstein (1975) Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity, Nature 256:495及びKohler & Milstein (1976) Derivation of specific antibody-producing tissue culture and tumor lines by cell fusion. Eur. J. Immunol. 6:511参照。
【0121】
簡潔には、免疫化された脾細胞を洗浄し、適切な条件下で骨髄腫細胞と融合させる。ハイブリドーマを24時間後にHAT又は他の選択薬剤に暴露させ、融合していない骨髄腫細胞を死滅させる。融合していない脾細胞も限られた生存期間を有しており、ハイブリドーマは培養物中に残された唯一の増殖性細胞である。
【0122】
クラススイッチングについてのアッセイ
アッセイは、当該技術分野において公知であり、例えば、Shinkura, R. et al. Nat. Immunol. (2003) 4, 435-441 and Zarrin, et al., Nat. Immunol. (2004) 5, 1275-1281に記載されている。簡潔には、脾細胞を、ハイブリドーマを作出するために抗CD40及びIL−4によって4日間刺激するか、ELISAを行うために6日間刺激した。モノクローナル抗−IgE抗体を、IgE(変異アレル)を検出するために用い得る。総IgEを、ポリクローナル抗IgE抗体(Southern Biotechnology Associates)で測定してもよい。
【0123】
例えば、IgH遺伝子座におけるDNA再構成及びCSRを評価するためのサザンブロット分析を記載するSouthern and Berg (Detection of specific sequences among DNA fragments separated by gel electrophoresis. J Mol Appl Genet (1982) 1: 327-341)を参照のこと。
【0124】
ε生殖系列転写は、B細胞のIgEの合成への関与の最初の工程を特徴付ける。したがって、ε免疫グロブリン重鎖生殖系列遺伝子転写(GLT;εGLT)、円転写産(CT;Iε−Cμ CT又はIεCγCT)及びIgEの重鎖をコード化するmRNA(εmRNA)及び活性化を誘導されたシチジンデアミナーゼ(AID)を調べるためにRT−PCRを用いてもよい(Takhar et al., J Allergy Clin Immunol (2007) 119(1): 213-218を参照)。
【0125】
後の実験の開示において、以下の略語が適用される:eq(同等な);M(モル);μM(マイクロモル);N(正常な);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);kg(キログラム);μg(マイクログラム);L(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);℃(摂氏温度);h(時間);min(分);sec(秒);msec(ミリ秒);Ci(キュリー);mCi(ミリキュリー);μCi(マイクロキュリー);TLC(薄層クロマトグラフィ)。
【実施例】
【0126】
本発明は、以下の実施例において詳述されるが、特許請求の範囲に記載される発明の範囲を限定することを意図するものではない。添付された図面は、本明細書の不可欠な部分及び本発明の記載と考えられるべきである。全ての引用文献は、そこに記載される全てが出典明示により本願明細書に援用される。以下の実施例は、例示するために提供されるのであって、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではない。
【0127】
実施例1 変異マウスの遺伝子ターゲティング/ジェネレーション
この実施例は、ターゲッティングベクターの構築、胚性幹細胞(ES)の形質転換及び変異マウスの産生を例示する。
【0128】
I.一般的な手法
A.胚性幹細胞(ES)の形質転換
標的化構築物を、NCBIにおいてNT_166318として利用可能な配列情報に基づいて設計した。(Waterston et al., Initial sequencing and comparative analysis of the mouse genome, Nature. (2002) 420(6915): 520-62も参照のこと。)BamHI/PVuI断片(Se領域を含めて7022bp(129マウス);Se領域を含めて7355bp(B6マウス))を、129又はC57B6 BACクローンから単離し、増幅した。
【0129】
以下の配列(5’→3’;配列番号:3)は、BamHI/PVuI断片から欠失され、大部分のマウスSm領域を含むNeoカセットとHindIII/NheIで置換された(図2及び配列番号:6を参照)。
【0130】
類似の構築物を、IgH遺伝子座に存在するアレルの系統間の相違を説明するために、標的129SvEv ES細胞に製作してもよい。
【0131】
B.胚性幹細胞(ES)の形質転換
上記のプラスミドをPvuI制限酵素を用いて直線化した。DNAを70%エタノールで洗浄し、ペレット状にして、50μlTE中に再懸濁させた。当該分野で公知の技術を用いて(例えばTempleton et al., Efficient gene targeting in mouse embryonic stem cells, Gene Therapy (1997) 4:700-709を参照)、106ES細胞をエレクトロポレーションにより直線化されたベクターで形質移入し、G418(400μg/ml)を用いて選択した。その後、cre/loxP組換システムを用いてNeo遺伝子を欠失させた。少なくとも300塩基対の、同定された組換え構築物(図2に示される)の配列番号:9(5’プローブ)及び配列番号:10(3’プローブ)から設計された二つのプローブを用いたサザン分析によって適切に目標化されたクローンを同定した。
【0132】
C.変異マウスの産生
改変されたIgH遺伝子座を有するマウスを作出するために生殖系列マウスを産生した。Sμ/Sεの相同組み換えを示すES細胞クローンをC57B6胚盤胞に注入し、生じた雄キメラをC57B6雌と交配させた。ヘテロ接合及びホモ接合の変異マウスの生殖細胞系伝達を、毛色によって評価した。
【0133】
II.特定の手法
A. ターゲティングベクター構築
ES細胞のC57BL/6 IgE遺伝子座を標的とする構築物を、組み換え設計及び標準的な分子クローニング技術を用いて製作した。Liu et al., A highly efficient recombineering-based method for generating conditional knockout mutations. Genome Research (2003) vol. 13 (3) pp. 476-84を参照のこと。
【0134】
NCBIにおいてNT_166318として利用可能な配列情報に基づいて標的化構築物を設計した。(Waterston et al., Initial sequencing and comparative analysis of the mouse genome, Nature. (2002) 420(6915): 520-62)も参照のこと。
【0135】
最初に、C57BL/6スイッチイプシロン(本明細書においてSe又はSε又はSイプシロンと称する)を含むマウスBAC(RP23−135L12;Invitrogen, Carlsbad, CA)の6988塩基対ゲノム断片(配列番号:19;図13)領域/配列を単離し、胚性幹(ES)細胞ターゲッティングにおいて用いるためにpBlight−DTAと称されるネガティブセレクションマーカー、ジフテリアトキシンA(DTA)を含むプラスミドに導入し(Warming et al., Mol. Cell. Biol. (2006) 26 (18): 6913-22を参照)、pBlight−DTA−IgEを得た。
【0136】
次に、loxP−PGK−em7−Neo−BGHpA−loxP−HindIII−SalI−AscI−NheIカセットを相同組み換えを用いてIgE断片に挿入し、後のスイッチmu領域(本明細書においてSMu又はSμ又はSmと称する)の挿入のために内因性のSε領域をLoxPが導入されたNeo及びポリリンカーで置換した(「pBlight−DTA−IgE−lox−Neo−lox−MCS」)。
【0137】
最後に、C57BL/6SMuを含む4.9kbのHindIII−NheI断片をBAC RP23−135L12(Invitrogen)から単離し、三方向ライゲーションを用いてこの断片をpBlight−DTA−IgE−lox−Neo−lox−MCSにクローニングした(6.2kbのXhoI−HindIII断片及び4.1kbのXhoI−NheI断片(両方ともpBlight−DTA−IgE−Neo−MCS)の4.9kbのHindIII−NheI Smu断片へのライゲーション)。生じた構築物は、「pSW312」と称される(pBlight−DTA−IgE−lox−neo−lox−Smu)。図2Bを参照のこと。
【0138】
B.胚性幹細胞(ES)の形質転換
C57BL/6 ES細胞を標準法(G418陽性及びDTA陰性選択)を用いて標的化し、陽性クローンをPCR及びtaqmanの解析を用いて同定した。適切に標的化されたクローンは、HindIII消化ゲノムDNA及び外部3’プローブを用いたサザンブロット解析によって確認された(構築物の3’末端及び内因性IgE HindIII部位間の配列)(配列番号:20):
【0139】
C.変異マウスの産生
改変されたIgH遺伝子座を有するマウスを作出するために生殖系列マウスを産生した。Sμ/Sεの相同組み換えを示すES細胞クローンをC57B6胚盤胞に注入し、生じた雄キメラをC57B6雌と交配させた。ヘテロ接合及びホモ接合の変異マウスの生殖細胞系伝達を、毛色によって評価した。
【0140】
実施例2 アイソタイプスイッチを誘導するインビトロでの刺激(抗CD40/IL4;LPS)
以下の実施例は、どのようにB細胞が集められ、クラススイッチ組換え(CSR)について解析されたかを詳述する。
【0141】
6−8週齢の野生型又はヘテロ接合型動物の脾臓細胞を、抗CD40(1μg/mL;HM40−3、Pharmingen)に加えてIL−4(25ng/ml)又はリポポリサッカライド(LPS、20μg/mL)でインビトロにおいて刺激した。1.5×106の細胞は、10%ウシ胎仔血清、2mMグルタミン、100単位/mLのペニシリン−ストレプトマイシン及び100μMβ−メルカプトエタノールが添加されたRPMI培地の6ウェルプレート(0.5×106/mL)の一つに播種された。刺激後、活性化B細胞培養を、4−5日目にハイブリドーマを作製するために、又は6日目にELIZAでIgレベルを測定するために用いた(標準法を用いて;例えばMonoclonal Antibodies: Methods and Protocols in Methods in Molecular Biology (2007) vol. 378:1-13参照)。検出抗体としてモノクローナル抗マウス抗体(Pharmingen)に続いてアルカリフォスフォターゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgG1(Southern Biotechnology)をIgレベルを検出するために用いた。
精製されたマウスIg(Pharmingen)を基準として用いた。
【0142】
脾細胞上のPE抗マウスIg(Pharmingen)抗体を用いて表面Ig染色を行った。刺激4日目にFACS解析を行った。試料を、FACS Scan(Becton Dickinson)に回収し、Flojo解析ソフトウェアを用いて解析した。
【0143】
サザンブロット解析によってCSRを評価した。簡潔には、IgH遺伝子座におけるDNA再構成及びCSRを評価するためにハイブリドーマクローンのゲノムDNAを用いた。ハイブリドーマゲノムDNA(約150ul)をEcoRI(NEB)制限酵素を用いてオーバーナイトで消化し、試料を0.7%アガロースゲルにアプライすることにより消化物を分離した。分離された試料を、Zeta−プローブブロッティングメンブレン(Bio-Rad)に転写し、UV架橋により固定及び/又は80°摂氏真空オーブンにおいて(20分)乾燥させ、標準のサザンブロッティングプロトコル(Molecular Cloning, 3rd Edition Vol.1, pages 6.33-6.64)に従って32P標識I−mu、C−mu、I−epsilon又はC−epsilonプローブを用いて精査した。標識されたDNAを、メンブレンをX線フィルム(Kodak)上に置くことによって視覚化した。
【0144】
IgE陽性ハイブリドーマクローンにおけるS−mu及びS−epsilon CSRの接合を配列決定するために、この領域を増幅及び配列決定するためにネステッドPCRを用いた。最初に、我々は、PCRでゲノムハイブリドーマDNAのこの領域を増幅するために、I−mu Forward−1:5’−CTCTGGCCCTGCTTATTGTTG−3’(配列番号:11)及びC−epsilon Reverse−1:5’−CCTGATAGAGGCTGTGAGAAAGGAAGGACC−3’(配列番号:12)プライマーを用いた。PCRサイクルは94℃で2分間であった;(94℃で10秒、60℃で30秒及び68℃で150秒)×35サイクル、68℃で7分間。このPCR工程からの産物は、第二のPCRサイクルのテンプレート(2μl)として用いられた、以下のプライマを用いた:E−mu Forward−2:5’−AGACCTGGGAATGTATGGTT−3’(配列番号:13)及びC−epsilon Reverse−2:5’−TAGGTTAGACTTATTTATATCACTGCATGC−3’(配列番号:14)。アニーリング温度を55℃に低下させた以外は、PCRプログラムは上記と同一であった。PCR産物をゲル精製し(Quigen)、以下のプライマーを用いて直接的に配列決定した:Forward:SM5’:5’−GTTGAGAGCCCTAGTAAGCG−3’(配列番号:15);9225F:5’−TTGAGAGCCCTAGTAAGCG−3’(配列番号:16);9518F:TGAGCTCAGCTATGCTACGCGTGTTG−3’(配列番号:17);Reverse:5’−GCCCGATTGGCTCTACCTACCCAGTCTGGC−3’(配列番号:18)。
【0145】
実施例3 細胞内IgE染色及びFACS解析
この実施例は、異なる刺激への暴露後のヘテロ接合マウス及び野生型マウスから得られた組織のIgEの細胞内染色及びFACS 解析を示す。
【0146】
0.5×106の脾細胞を遠心沈澱させ、FACSバッファー(PBS+0.5%ウシ胎児血清)中に再懸濁した。抗IgE抗体(e-Bioscience, San Diego, CA; Cat. No. 14-5992-85)を、表面IgE分子をブロックするために1g/試料で添加した。細胞を4℃で15分間インキューベートし、次いでFACSバッファーで二回洗浄し、1700のrpmで3分間の遠心分離によってペレット状にした。ペレット状の細胞を1%ウシ胎児血清PBS中に再懸濁した。
【0147】
細胞をボルテックスし、細胞を固定するためにBD Cytofix/Cytoperm(BD Biosciences, San Jose, CA; Cat. No. 554722)200μl/試料で添加した。4℃で20分間インキューベートした。
【0148】
細胞を1×BD Perm/Washバッファー(BD Biosciences, San Diego, CA; Cat. No. 554723)で2回洗浄し、Fc−ブロッカーを含む250lの1×BD Perm/Washバッファーに再懸濁した。細胞アリコートは、1:200の最終抗体希釈のB220−FITCと共にビオチン−アイソタイプコントロール(e-Bioscience, 13-4301-82)又は抗IgE−ビオチン(e-Bioscience, 13-5992-82)での染色のために用いられた。4℃で30分間インキューベートした。
【0149】
細胞を1×BD Perm/Washバッファーで二回洗浄した。
【0150】
1×BDPerm/Wash中のストレプトアビジン−PE(Pharmingen)を1:200の希釈で添加した。4℃で10分間インキューベートした。
【0151】
BD Perm/Washバッファーで二度洗浄し、細胞を200lのFACSバッファー中に再懸濁し、細胞を解析するためにBD FACS Calibur装置及びCellQuest Proプログラムを用いたFACS解析を行った。
【0152】
結果を図13に示す。図13において、IgEに対して陽性に染色した細胞数がWTと比較して増加したことが分かる。FACS結果は、IgG1レベルがWTと比較してHetの約半分に低下する一方、IgE発現B細胞の割合がWT動物と比較してHet動物において増加する(約二倍)ことを示す。これは、SmKI(Seの代わりに)を有することが、この遺伝子座と競合することによってIgG1にスイッチする機会が減少すると同時に、IgEへスイッチすることを増加させることを証明する。
【0153】
実施例4 IgEアッセイ/測定
この実施例は、曝露されたか曝露されていない組換え動物又はインビトロの細胞培養においてIgEを測定するために、ELISA(ルミネックス又は従来のELISA)の使用を示す。インビトロでの細胞培養において、細胞をLPS又は抗CD40/IL4で刺激してもよい。
【0154】
ルミネックスマウス7−plex免疫グロブリンアイソタイプアッセイ
このアッセイは、Luminex(登録商標)Instrument systemの単一のウェルにおいてマウスモノクローナル細胞培養上清又は血清試料(Millipore Mouse Isotyping Serum Diluentを用いる)をアイソタイプ同定(重鎖:IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgA、IgE、IgM;及び軽鎖:カッパ又はラムダ)するためにマルチプレックスアッセイキット(Millipore Beadlyte Mouse Immunoglobulin Isotyping Kit、Cat#48−300)を用いる。
【0155】
用いる前に、あらゆる粒子を取り除くために細胞培養上清を14,000×gで遠心分離する。同様に、粒子及び脂質層を取り除くために、アッセイの前に血清及び血漿試料を遠心沈澱(8000×g)する。これは、洗浄プレート及び試料針をつまらせることを予防する。
【0156】
ビーズベースマルチプレックスアッセイに用いられる材料
Millipore Beadlyte Mouse Immunoglobulin Isotyping Kit Cat#48−300(Beadlyteサイトカインアッセイバッファー、Cat#43−002、Beadlyteマウスマルチ−免疫グロブリンビーズ、Cat#42−045、Beadlyteマウス免疫グロブリンポジティブコントロール、Cat#43−008、Beadlyte抗マウスk軽鎖、PE(100×)、Cat#44−029、Beadlyte抗マウスラムダ軽鎖、PE(100×)、Cat#44−029を含む)。
【0157】
Millipore Beadlyte マウスアイソタイピング血清希釈液(5×)、Cat#43−033(1%ウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝生理食塩水)。
【0158】
Ig標準曲線試薬:ミリポア:凍結乾燥Beadlyteマウスマルチ免疫グロブリン標準(IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgA、IgE、IgM)(balb/cマウスCat#47−300)。
【0159】
フィルタープレート:界面活性剤を含まないミリポアマルチスクリーン−HA0.45μm。
【0160】
Millipore Filtration System(注:ddH2Oを提供するあらゆるシステムを作用する。)
【0161】
アッセイは、製造業者の説明書に従って行われ得る。
【0162】
ビーズベースマルチプレックスアッセイを行うための一般的なプロトコール
適切な希釈液に希釈する前にあらゆる粒子を沈殿させるために試料を(必要に応じて)遠心分離する。適切な希釈液に標準を再懸濁し、二倍階段希釈を用いた8点標準曲線を作成する。ウェルにつき50−100μlアッセイ希釈液でフィルタープレートを濡らす。
【0163】
プレート嵌合:それぞれのウェルに標準又は試料を50μl添加する。均質な懸濁液を産生するために、15−20秒間結合したビーズを音波破砕する。少なくとも10秒間ビーズを十分にボルテックスする。ウェルにつき1500のビーズとなるようビーズを希釈して、それぞれのウェルに希釈されたビーズ懸濁液25μlを添加する。暗所において室温で15分間インキューベートする。(インキュベーション時間は異なり、一般的に15分から2時間の間である。ビーズ及び試料の一次インキュベーションは、より大きな低感受性で、4℃、オーバーナイトで行うことができる。)。
【0164】
洗浄工程:液体を取り除くために、フィルタープレートの底部に真空マニホールドを適用し、拭き取る。アッセイ希釈液の75μlを添加することによって洗浄し、吸い取り、拭き取る。洗浄を2度繰り返す。ビーズをアッセイ希釈液75μlに再懸濁する。それぞれのウェルに検出抗体溶液25μlを添加する。暗所において室温で15分間インキューベートする。液体を取り除くために、フィルタープレートの底部に真空マニホールドを適用する。アッセイ希釈液の125μlを添加することによって洗浄し、吸い取り、拭き取る。洗浄を2度繰り返す。ビーズをアッセイバッファー125μlに再懸濁する。プレートシェーカー上で1分間インキューベートする。Luminex(登録商標)100計測器の結果を読む。データ評価:4−PL又は5−PLカーブの試料濃度を推定する。
【0165】
刺激後6日目に、FACS解析のために用いられた同様に刺激された脾細胞(3匹のHet及び3匹のWTマウス)の上清を、上記の通りにELISAアッセイに用いた。我々がFACS解析において観察したものに一致して、我々は、IL4/抗CD40で刺激した場合にWTと比較してIgE発現レベルの増加及びIgG1発現レベルの減少を観察した。これは、IgG1へのスイッチと競合するSmKI部位においてより頻繁に発生する破壊及びIgEスイッチの増加があることを示唆している。LPS刺激は、コントロールとしての役割を果たし、WT及びHetが同様のIgM及びIgG3レベルを有することを示しており、他のスイッチ領域がクラススイッチングに利用できる場合、遺伝子座は未改変であり、正常に機能することを示唆する。図14を参照のこと。
【0166】
総マウスIgE結合ELISA
このアッセイは、naive及び免疫動物のマウスのIgE血清レベルを定量するために行われる。
【0167】
I.捕捉抗体での被覆:
精製された抗マウスIgE捕捉mAbを(ラット抗mu IgE(クローンR35−92、BD Pharmingen, San Diego, CA)、4℃保存、Cat #553416(0.5mg/ml))、コーティングバッファー(0.05M炭酸塩/重炭酸塩、pH9.6)で2μg/mlaに希釈する。増強されたタンパク質−結合ELISAプレート(例えばNunc免疫プレートCat #464718、384−Well)に、ウェルにつき100μlを添加する。全てのウェルが捕捉抗体溶液によっておおわれるように、プレートを振盪する。プレートをおおい、4℃、オーバーナイトでインキューベートする。[注:37℃で1時間行ってもよい。PBS/Tween(登録商標)(PBS+0.05%Tween20)で、プレート3回洗浄する。それぞれの洗浄について、ウェルを200μlのPBS/Tween(登録商標)で満たし、吸引又は除去の前に少なくとも1分静置させる。最終工程として、過剰なバッファーを取り除くために、プレートをペーパータオル上で軽くたたく。
【0168】
II.ブロッキング:
ウェルにつきブロッキングバッファー(PBS+0.5%ウシ血清アルブミン+10ppmプロクリン、pH7.4)50μlでプレートをブロッキングする。プレートをおおって及び穏やかに撹拌しながらRTで1時間インキューベートする。上記のように、PBS/Tween(登録商標)でプレートを3回洗浄する。
【0169】
III.標準及び試料を適用する:
カラム1を空のウェルとして残す(すなわち抗原を添加しない、ウェルにつきブロッキングバッファー25μlのみ)。標準(ウェルにつき25μl)の複製のためにカラム2及び3を用いる:500ug/mlストック標準抗体から10ng/ml(1:50,000)の開始標準濃度までの標準曲線を作成する。1:2段階希釈物(PBS+0.5%BSA+0.05%Tween20+15ppmプロクリン+0.2%BgG+0.25%CHAPS+5mMEDTA、pH7.4)を作製する。マウスIgE標準曲線:10.0、5.0、2.50、1.25、0.625、0.313、0.156、0ng/ml。アッセイコントロールは、以下の希釈:8ng/ml、4ng/ml、0.5ng/mlのマウスIgEκアイソタイプコントロール(BD Bioscience、Catalog #557079、メインストック:0.5mg/ml、4℃で保存)。ブロッキングバッファー中の様々な希釈の試料(ウェルにつき25μl)を添加するために残りのカラムを用いる。血清試料を、アッセイ希釈物(PBS+0.5%BSA+0.05%Tween20+15ppmプロクリン)で希釈する(ハミルトン希釈装置を用いて、1:25最小初期希釈、1:3連続希釈)。プレートを覆い、穏やかに撹拌しながら2時間インキューベートする。[注:RTで少なくとも1時間又は4℃でオーバーナイトで行われる。]上記のように、PBS/Tween(登録商標)でプレートを6回洗浄し、1時間撹拌しながらインキューベートする。
【0170】
IV.検出抗体とのインキュベーション:
ウェルにつき25μlのビオチン化抗マウスIgEを添加する(ラット抗mu IgE−ビオチン、クローンR35−118、BD Pharmingen, San Diego, CA、0.5μg/ml、4℃、Cat #553419)。プレートを覆い、穏やか撹拌しながら30分間RTでインキューベートする。上記のように、PBS/Tween(登録商標)でプレートを6回洗浄する。
【0171】
V.ストレプトアビジン−ワサビペルオキシダーゼ(SAv−HRP)を添加する:
ストレプトアビジン−HRP(GE Healthcare、前Amersham Biosciences, Piscataway, NJ、1mg/ml、4℃保存、Cat #RPN4401)を1:20,000に、最終濃度50ng/mlにブロッキングバッファーで希釈する。ウェルにつき25μlを添加し、30分間撹拌しながらインキューベートする。[注:アビジン−HRPは、当該技術分野において言及されるように、適切に改変してストレプトアビジン−HRPの代わりに用いられてもよい。]プレートを覆い、30分間のRTでインキューベートする。このプロトコルにおいて上記のように、PBS/Tween(登録商標)でプレートを6回洗浄する。
【0172】
VI.基質を添加し、発色させる:
TMB Aの一部をTMB Bの一部に混合する(TMBペルオキシダーゼ溶液A及びB(KPL, Gaithersburg, MD、それぞれCat# 50−76−02及び50−65−02)、4℃保存)。それぞれのウェルに25μlのTMB基質を添加し、振盪する。発色させるために室温で15分インキューベートし消光させるために1MH3PO4を25μl添加する。450−650nmでプレートを読みとる。
【0173】
標準曲線から血清試料IgEレベルを内挿する。
【0174】
実施例5 抗体アイソタイプを定量するハイブリドーマ
ハイブリドーマを当該分野の公知技術を用いて構築する。実施例4のアッセイを用いて、免疫グロブリンアイソタイプの特性を示す。
【0175】
結合親和性、エピトープ特性評価及び関連する経路における作用様式について抗体の特性を決定する。
【0176】
実施例6 免疫化:インビボでスイッチするアイソタイプを誘導するTNP−OVA;OVA;フィコール
本明細書に記載されているように、この実施例は組換え動物のインビボにおける免疫化を例示する。
【0177】
8週間齢、性別の適合した、約25−30gの重さのBalb/Cマウスを、100μl無菌PBS中のTNP−OVA50μg/alum2mg又はTNP−フィコール50μlの腹腔内投与により免疫化し、28日目に追加免疫した。60μl試料は、実施例4に記載されるアッセイを用いて抗体アイソタイプ測定のために3、7、14、21、28、35及び42日目に尾静脈から採取される。
【0178】
II.抗原誘導腹膜炎モデルと腹水ヒスタミンの測定。
動物及び感作手法
8週齢、約25−30gのパスツール研究所(Paris, France)で飼育されたBalb/Cマウスを、1.6mgの水酸化アルミニウム(Andersson & Brattsand, 1982)に吸着された100gLgオバルブミンを含む0.4ml0.9%w/vNaCl(生理食塩水)の皮下(s.c.)注射によって、能動感作した。7日間後、動物にAl(OH)3の存在下で同用量のオバルブミンを接種し、7日後に用いた。
【0179】
抗原誘導腹膜炎
腹膜炎は、無菌生理食塩水に希釈された2.5又は25gm/mlのオバルブミンを含む溶液0.4mlを腹腔内(i.p.)注射することによって誘導する(腔につき注射された最終的な用量としてオバルブミン1又は10μg)。コントロール動物には、同量の無菌生理食塩水を接種する。抗原曝露後の様々な時間間隔(30分−164h)で、動物を過量のエーテルによって安楽死させ、腹腔を切開し、3mlのヘパリン生理食塩水(1mlにつき10U)で洗浄する。初期容積の約90%は回収される。まれなケースにおいて、腹腔において出血がみられる場合、動物は用いられる。
【0180】
ヒスタミンレベルは、当該分野で公知の方法を用いて測定する。
【0181】
実施例7 IgEを誘導するためのブラジル鉤虫の感染
この実施例は、寄生虫、ブラジル鉤虫の感染へのIgE反応を例示する。
【0182】
ブラジル鉤虫の発生過程はマウスにおいて特性が明らかとされている(Love, Nippostrongylus brasiliensis infections in mice: the immunological basis of worm expulstion, (1975) Parasitiology 70:11)。マウスにおいて感染幼虫(L3)が皮膚に侵入すると、リンパ及び血管系を経て肺まで運ばれる。気管−食道への移動の後、第四期の幼虫(本来のL3用量の約15−35%)は、小腸の内腔へと運ばれ、成熟する。感染は、幼虫の播種の後の7日目までに明らかとなる。糞便の卵排出量の急低下が先行して起こり、虫の排除は、明らかとなったすぐ後に起こる(約日9及び実質的に12日目までに完了する)。
【0183】
実験条件化でのブラジル鉤虫の維持、感染方法、虫の移行及び計数のための虫の回収は先に記載される(Love & Ogilvie, Nippostrongylus brasiliensis in young rats. Lymphocytes expel larval infections but not adult worms. (1975) Clin. Exp. Immunol. 21:155)。生きている虫を、虫のマウントから精製する。精製された虫を、計数し、2500虫/mlでリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁する。Ogilvieによって記載されるように(Reagin-like antibodies in animals immune to helminth parasites Nature (1964) 204:91)、マウスを500虫/200μlで皮下注射により感染させる。感染させられたマウスを通常の食事で飼い、任意で抗生水(5000mlddH2O中の0.5gポリミキシンB及び10g硫酸ネオマイシン)を5日間に提供した。肺炎症について9日目にマウスを確認し、実施例4で提供された方法を用いて9日目及び15日目に血清IgEレベルを確認する。
【0184】
実施例8 IgE(気道、皮膚)を誘導するためのアレルゲンパネルでの感作
この実施例は、様々なアレルゲンへのIgE反応を例示する。
【0185】
アレルゲン(臨床で用いられる)(例えば塵ダニ、コナヒョウダニ、ヤケヒョウヒダニ、ワモンゴキブリ、アルテルナリア属テニウス(Alternaria tenuis)、アスペルギルス、クロカワカビ(Cladosporidium herbarum)、ネコ、イヌ、オオバコ−スイバ類、ブタクサ(Short Ragweed)、ウエストオーク(West Oak)混合、草混合/ギョウギシバ(Bermuda)/セイバンモロコシ(Johnson)、真菌及び他のアレルゲン)のパネルを様々な用量で注射し、血清免疫グロブリンレベルを上記の通りに評価する。
【0186】
実施例9 所望の治療の投与に続く血清IgE及びメモリーIgE陽性B細胞の評価
この実施例は、様々な治療が様々な条件の下でIgE反応にどのように影響するかについて例示する。予防的及び治療的介入を、同様の方法で評価する。提案された治療剤への言及は、予防的及び治療的介入を包含することを意図している。
【0187】
naive動物の血清IgE濃度を測定する。動物をランダムに7つの群の一つに割当てた。第一の群は、治療的介入又は抗原曝露を受けない。第二の群は、ビヒクルのみを受け(すなわち抗原を受けない)、ついで提案された治療剤を受ける。第三の群は、抗原曝露を受け、ついで提案された治療剤を接種される。第四の群は、提案された治療剤を受け、ついでビヒクルのみを受ける。第五の群は、提案された治療剤を受け、ついで抗原曝露を受ける。第六の群は、ビヒクルのみを受ける(すなわち提案された治療剤を受けない)。第七の群は、抗原曝露のみを受ける(すなわち提案された治療剤を受けない)。
【0188】
抗原曝露と提案された治療剤の投与(又はその逆)との間隔は、最適投与時間を決定するために変化し得る。
【0189】
提案された治療のIgE血清レベルを調整する能力を評価するために、動物IgEレベルを長時間測定する。実施例4に記載されるアッセイを用いた抗体アイソタイプ測定のために3、7、14、21、28、35及び42日目(抗原曝露後)に尾静脈から試料を60μl採取する。
【0190】
本願明細書に記載されている実施例及び実施態様は、例証することのみを目的とし、その様々な改変又は変更は当業者に示唆され、本出願及び添付の請求の範囲の趣旨に含まれるべきであることはよく理解される。本願明細書に引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、あらゆる目的のためのその全てが本願明細書に出典明示により援用されるものとする。
【0191】
産業上の利用可能性
本願明細書に提供される胚性幹細胞は、非特異的アレルゲンへのインビボモデルIgE反応の産生を可能にする。
【0192】
本願明細書に記載されるインビボ動物モデルは、非特異的アレルゲンへのIgE反応の完全なレパートリーを提供する。
表1:配列の概要
【0193】
引用リスト
特許文献
Karasuyama et al., US 6118044 - September 12, 2000 - Transgenic non-human animal allergy models
【0194】
非特許文献
Gerstein et al., Isotype switching of an immunoglobulin heavy chain transgene occurs by DNA recombination between different chromosomes, Cell (1990) 63:537-548[195] Liu et al., A highly efficient recombineering-based method for generating conditional knockout mutations. Genome Research (2003) vol. 13 (3) pp. 476-84
【0195】
Pan et al., Characterization of Human γ4 Switch Region Polymorphisms Suggests a Meiotic Recombinational Hot Spot Within the Ig Locus: Influence of S Region Length on IgG4 Production, J. Immunol. (1998) 161:3520-3526
【0196】
Schmidtz, J and Radbruch, A, Immunoglobulin Class Switching in Encyclopedia of Immunology, Delves and Roitt (eds.), pages 1302-1306
【0197】
Szurek et al., Complete nucleotide sequence of the murine gamma-3 switch region and analysis of switch recombination in two gamma-3 expressing hybridomas, J. Immunol. 135:620-626 (1985)
【0198】
Warming et al., Mol. Cell. Biol. (2006) 26 (18): 6913-22) for subsequent use in embryonic stem (ES) cell targeting, resulting in "pBlight-DTA-IgE"
【0199】
Waterston et al., Initial sequencing and comparative analysis of the mouse genome, Nature. (2002) 420(6915): 520-62
【0200】
Zarrin et al., Influence of switch region length on immunoglobulin class switch recombination, Proc Natl Acad Sci (2005) 102(7): 2466-2470
【0201】
Zarrin et al., Antibody Class Switching Mediated by Yeast Endonuclease-Generated DNA Breaks, Science (2007) 315:377-381
【0202】
Zarrin et al., Sgamma3 switch sequences function in place of endogenous Sgamma1 to mediate antibody class switching, (2008) J. Exp. Med. 205, 1567
【図1A】
【技術分野】
【0001】
関連出願についてのクロスリファレンス
本出願は、2009年2月27日に出願された「Cεへの免疫グロブリン重鎖クラススイッチングが増強された高IgE動物モデル」と題する米国仮特許出願出願番号61/156,299に対して優先権を主張する。
【0002】
配列表
配列番号:1−20を含む配列表は、表1として本願明細書に添付される。配列表において提供されるそれぞれの配列は、あらゆる目的のために、その全てが本願明細書に援用されたものとする。
【0003】
技術分野
この開示は、アレルギー治療を試験するための組み換えマウス及び方法に関連する。
【0004】
背景
喘息は、先進国世界人口の5分の1に影響を及ぼす衰弱性疾患である。重症喘息は、入院及び健康管理費用の主要な原因である。臨床診療において、喘息は、皮膚プリックテスト(SPT)又はインビトロ技術(RAST又はELISA)によって検出される局所的空中アレルゲンに対する循環IgEの有無によりアトピー性又は非アトピー性に分類される。これらのIgE抗体はマストセル上の高親和性IgE受容体(FceRI)と相互作用し、アレルゲン誘発の即時過敏症及び疾患の急性増悪を引き起こす。
【0005】
成体喘息患者の約3分の1は非アトピー性に分類される。それらはより重症疾患(多くの場合慢性鼻副鼻腔炎と関連している)を有する傾向があるが、アレルゲンへの急性反応性の欠如は別として、それらの疾患は臨床的に類似している。
【0006】
アレルギーは、一般に即時過敏症型の、アレルゲンと呼ばれる抗原の特定の型に対する免疫反応である。そのような反応は、アナフィラキシー、アレルギー性鼻炎(花粉症)、蕁麻疹及びアレルギー性喘息の発作の基礎をなしており、ブタクサ、花粉、ミツバチ又はスズメバチの毒、動物の鱗屑、カビ又はハウスダスト(例えばダニ)の成分のような共通のアレルゲンによって誘発され得る。
【0007】
喘息、アレルギー性鼻炎及び過敏性皮膚炎の間には近い一致がある;これらの対象物の一つの存在は、他の2つの相対リスクを、対象の生涯にわたり3−30倍増加させる。これらの疾患のうちの3つ全ては、高レベルの非特異性及び抗原特異性血清免疫グロブリンE(IgE)と関連している。
【0008】
ヒトにおいて、即時過敏症(IH)は、皮膚及びその他に存在するマストセル及び好塩基球の表面に固着されたIgEアイソタイプの抗体によって媒介される。これらの細胞結合IgE分子への抗原の結合は、細胞からヒスタミンのようなメディエーターの放出を誘発し、メディエーターが臨床現象(例えばアレルギー性反応を象徴する組織の膨張、そう痒又は気管支の平滑筋収縮)を誘導する。
【0009】
特定のアレルゲンに特異的なIgE抗体は、アレルゲンの接触に応じてBリンパ球によって産生及び分泌される。まず最初に、Bリンパ球(又はB細胞)はIgMアイソタイプの抗体を発現し、それぞれのB細胞は特定の抗原決定基に特異的な抗体を製造することに関与している。抗原決定基を有するアレルゲン及びTリンパ球によって製造される特定の因子の両方との接触により、B細胞がいわゆる抗体重鎖クラススイッチを経るように誘導される(B細胞によって産生される抗体の抗原特異性部分は変化しない)が、それはIgMアイソタイプのμ−重鎖よりもε−重鎖(産生IgE抗体)に付着される。そのようなクラススイッチは一見特定のB細胞にとって永続的であり、そうするように刺激されたときはいつでもアレルゲンに特異的なIgE抗体を分泌する。
【0010】
マウスにおけるオバルブミン(OVA)−誘導喘息は、ヒト喘息の最も一般的に用いられるモデルの一つである。Th2型細胞は、OVA誘導喘息の病因において決定的であると考えられる。Th2リンパ球がアレルギー性喘息の開始、進行及び持続において重要な役割を果たすことは公知であるのに対して、免疫調節性メカニズムについては理解されるべきことが多く存在する。このモデルは、高IgEと関連するヒト疾患を模倣していない。
【0011】
アレルギー性喘息モデルは、大きい動物モデル(例えばネコ、イヌ、ブタ、ヒツジ及びサル)においても記載されている。これらの種の中で、ネコが自然に特発性の喘息を発症するので、ネコ科のものは特に興味がある。しかしながら、大きい動物モデルは、高価で、時間がかかり、免疫学的及び/又は分子ツールとしての利用可能性が限られている。
【0012】
US6118044(2000)は、IgE重鎖定常領域を有し、予め定義された抗原(すなわちTNP)に特異的な、導入遺伝子によってコード化される抗体型分子を恒常的に発現するトランスジェニックマウスを提供する。それは、未知又は非特異的抗原に対してポリクローナル反応を生じない。
【0013】
現在、ヒト喘息の多くの主要な病理学的特徴(例えば平滑筋のマストセル浸潤)を欠いていることから、慢性気道疾患の望ましいモデルは存在しない。さらに、マウスは喘息にかからないので、それらのほぼ全ては時間とともに自然に回復する。したがって、抗体レパートリーがポリクローナルである天然のヒト以外の動物と比較して高いIgE反応を起こすことが可能なヒト以外の動物モデルを有することが望ましい。
【0014】
現在、アレルギーに対する共通の治療は、推測されるアレルゲンの回避;特定の保護メカニズムを刺激し、それにより最終的にはアレルゲンへの宿主の感度を減少させる免疫療法としてのアレルゲンの注入;コルチコステロイドのような薬剤(マストセルからアレルギーのメディエーターの放出に干渉する);及び抗ヒスタミン薬のような薬剤(放出されたメディエーターの生物学的作用を阻害する)を含む。しかしながら、アレルギー治療(特に副作用のないB細胞においてIgEアイソタイプスイッチを阻害する治療剤)を試験するための望ましい動物モデルが存在しない。
【0015】
したがって、高いIgE反応を起こす能力を有する細胞及び/又は動物を有することが望ましい。換言すれば、IgE製造のための選択的鎖スイッチ組換えの速度を増強することが望ましい。
発明の簡単な要約
【0016】
進行中の調査にもかかわらず、非特異的抗原(すなわち予め定義されていない抗原)へのポリクローナル反応を起こす喘息、アレルギー及び他の免疫性病態へのIgEの関与のインビボモデルに対するニーズがある。高い血清IgE反応がある高IgE産生インビボ動物モデルも存在しない。
【0017】
本願明細書において、抗アレルギー薬のサーチ及び/又は評価のための信頼性が高いモデルとして有用な組換え非ヒト動物(及びそれを用いる方法)が提供される。
【0018】
野生型(すなわち天然又は未改変の)免疫グロブリン遺伝子座に実質的に類似する遺伝子座のゲノム構造を有し、抗原曝露に応答して免疫グロブリンの完全なレパートリーを提供する潜在性を保持する動物モデルは、IgEアイソタイプスイッチを阻害する抗アレルギー薬のサーチ及び/又は評価を可能にする。
【0019】
本願明細書の開示は、アレルギー治療を試験するための動物モデルを提供する。動物モデルは抗原チ曝露への応答において抗体産生の広い多様性を提供し、抗体アイソタイプの完全な多様性及び抗原上のエピトープへの特異性の完全な成分を産生する。動物モデルは、さらに、アレルギー及び喘息に対するIgEの生理的重要性を理解する手段を提供する。
【0020】
第一の実施態様において、以下を含むターゲッティングベクターが提供される:
a)変更されるスイッチ領域の5’末端(5’アーム/アクセプター)に相同なDNAの断片は、NCBI受託番号NT_166318(マウス第12染色体ゲノムコンティグ、C57BL/6J系統)のヌクレオチド25470628から25468161(配列番号:5)に対応する少なくとも1500ヌクレオチド、少なくとも1800ヌクレオチド、少なくとも2000ヌクレオチド、少なくとも2200ヌクレオチド及び少なくとも2400ヌクレオチドからなる群から選択される;
b)選択可能な遺伝子マーカー;
c)ドナースイッチ領域をコード化する、所望の/ドナーのDNA配列;及び
d)変更されるスイッチ領域の3’末端(3’アーム/アクセプター)に相同なDNAの第二の断片は、NCBI受託番号NT_166318(マウス第12染色体ゲノムコンティグ、C57BL/6J 1系統)のヌクレオチド25470628から2546816(配列番号:8)に対応する少なくとも1500ヌクレオチド、少なくとも1800ヌクレオチド、少なくとも2000ヌクレオチド、少なくとも2200ヌクレオチド及び少なくとも2400ヌクレオチドからなる群から選択される。
【0021】
一態様において、ターゲッティングベクターは、配列番号:4又は5を含む5’アームを有する。実施態様において、5’アームは、配列番号:4の残基25−2471を含む。更なる態様において、5’アームは、内因性Iεの領域3’及び内因性Sεの5’に相同である。第二の態様において、ターゲッティングベクターは、配列番号:7又は8を含む3’アームを有する。実施態様において、3’アームは、配列番号:7の残基2−2495を含む。第三の態様において、ターゲッティングベクターは、ネオマイシン及びチミジンキナーゼからなる群から選択される選択可能な遺伝子マーカーを有する。更なる態様において、選択可能な遺伝子マーカーは、ネオマイシンである。第四の態様において、ターゲッティングベクターは、loxp部位が隣接する選択可能な遺伝子マーカーを有する。第五の態様において、ターゲッティングベクターは、ヒト及びマウスからなる群から選択される所望のスイッチ領域を有する。第六の態様において、所望のスイッチ領域は、Sμ、Sγ1、Sγ2a、Sγ2b及びSγ3から選択される。第七の態様において、所望のスイッチ領域は、マウスSμ領域の大部分を含むHindIII/NheI断片である。第八の態様において、所望のスイッチ領域は、NCBI受託番号NT_166318(マウス第12染色体ゲノムコンティグ、C57BL/6J系統)のヌクレオチド25617172から25615761(配列番号:6)を含む。第九の態様において、4.9kbのNheI−HindIII断片を含むSμ領域は、BACクローンRP23−354L16から単離されたゲノム断片を含むプラスミドからサブクローニングされた。
【0022】
第二の実施形態において、以下の工程を含む改変された胚性幹細胞をインビトロで製造する方法が提供される:
a)以下から選択される、Cεを発現するためにクラススイッチ組換え(CSR)の確率を増強するために前記細胞のゲノムDNAを改変する工程;
b)内因性のSε領域に直列に少なくとも一つの付加的なSεコピーを付加することによってSε長を増加させる工程;
c)Sε領域の置換;及び
d)正しく改変されたゲノムDNAのために細胞を選択する工程。
【0023】
ある態様において、改変は、Sε領域の、Sμ、Sγ1、Sγ2a、Sγ2b及びSγ3から選択されるスイッチ領域での置換である。更なる態様において、改変は、Sε領域の、Sμ領域での置換である。更なる態様において、改変は、任意のアクセプターS領域(Sγ1、Sγ2a、Sγ2b及びSγ3、Sa)のSmでの置換、又はその逆である。
【0024】
第三の実施態様において、以下の工程を含む改変された胚性幹細胞(ESC)をインビトロで製造するための方法が提供される:
a)SμをSε領域と交換するために請求項1のベクターを用いる工程
b)正しく改変されたゲノムDNAの細胞を選択する工程。
【0025】
一つの態様において、本発明の方法は、Sε領域を、Sμ、Sγ1、Sγ2a、Sγ2b及びSγ3から選択されるスイッチ領域で置換する改変を提供する。更なる態様において、本発明の方法は、Sε領域をSμ領域で置換する改変を提供する。別の態様において、本発明の方法は、BALB/c又はC57BL/6から選択されるマウス系統のESCを提供する。
【0026】
第四の実施態様において、以下の非ヒト動物が提供される:
a)IgH遺伝子座の少なくとも一つのアレルが、非改変アレルと比較してIgE発現/産生/分泌/速度を増強するように改変されている;及び
b)以下からなる群から選択されるIgEプロファイルを有している:
i.全ての血清抗体のIgE画分が0.04%以上である;
ii.IgE血清中濃度が4,000ng/ml以上である;
iii.IgG/IgEの比率が10未満である。
【0027】
第一の態様において、ヒト以外の哺乳動物は、4,000ng/ml以上、10,000ng/ml以上、15,000ng/ml以上、30,000ng/ml以上、90,000ng/ml以上、10μg/ml以上、20μg/ml以上、30μg/ml以上、40μg/ml以上、50μg/ml以上、60μg/ml以上、70μg/ml以上、80μg/ml以上、90μg/ml以上又は100μg/ml以上のIgE血清レベルを有する。第二の態様において、ヒト以外の哺乳動物は、0.1から10のIgG/IgE比を有する。第三の態様において、ヒト以外の哺乳動物は、100ng/mLから10000ng/mLの曝露されていない(すなわち休止期の)IgE血清中濃度を有している。第四の態様において、ヒト以外の哺乳動物は、1000ng/mLから1000000ng/mLの曝露された(すなわち活性化又は刺激された)IgE血清中濃度を有している。第五の態様において、動物モデルはヒト以外の脊椎動物である。第六の態様において、動物モデルは、マウス、ラット、モルモット、ウサギ又は霊長類である。第七の態様において、本願明細書に記載される非動物のゲノムは、より多くのIgEを発現/産生するように改変されたIgH遺伝子座のSε領域を有している。第八の態様において、ヒト以外の動物/哺乳動物モデルは、ジーンターゲッティングによって達成される改変を有する。第九の態様において、ヒト以外の哺乳動物は、少なくとも0.04%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%又は1.0%のIgE画分を有する。
【0028】
第五の実施態様において、アレルギー性疾患の治療方法の投与の前、同時又は後に動物をアレルゲンに暴露すること、及びIgE反応を評価することを含む、動物モデルを用いたアレルギー治療を試験する方法が提供される。本発明の方法の第一の態様において、抗原曝露への応答におけるIgEレベルは、アレルギー治療をしない場合よりも低い。第二の態様において、試験動物及びコントロール動物は、同腹仔である。
【0029】
第六の実施態様において、アレルギー治療を試験する方法によりアレルギーの治療のための医薬として同定された化合物の使用が提供される。
【0030】
第七の実施態様において、本願明細書に記載される動物モデルから入手可能な細胞株が提供される。
【0031】
第八の実施態様において、本願明細書に記載される動物モデルから単離される細胞が提供される。
【0032】
第九の実施態様において、非ヒト動物モデルの作出方法が提供され、前記方法は:
a)断片がCε−コード化領域の上流においてゲノムDNAに組み込まれ、Cε−コード化領域に作動可能に連結されるように、マウスの受精卵に配列番号:6(Sμ)をコード化するプラスミドの直線化断片を顕微注入すること、b)前もって偽妊娠を誘導するように処理された雌マウスの卵管に前記受精卵を移植すること、及びc)雌マウスの子宮において前記卵子を発生させること、を含む。
【0033】
第十の実施態様において、IgE産生率を増強するように改変されたIgH遺伝子座の少なくとも一つのアレルを含む改変ゲノムを生殖系列に含む組換えマウスが提供される。第一の態様において、組換えマウスは、Sε領域のSμ領域又はその機能部分での置換を含む改変を有する。第二の態様において、Sμ機能部分は、少なくとも1kbから10kb長である。
【0034】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明白になる。しかしながら、この詳細な説明から本発明の範囲及び趣旨の様々な変型及び改変が当業者にとって明らかになるので、詳細な説明及び具体的な実施例は、本発明の好ましい実施態様を示しているが、例示することのみを目的としていることはよく理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、マウスIgH遺伝子座の遺伝子改変の概略図である。(A)生殖系列配置におけるCmまでの可変領域のゲノム機構。(B)V(D)J遺伝子組換えは、B細胞を産生する低親和性IgMの大きいプールを生成する機能コード化可変領域を構築する。(C)AID及び生殖系列転写の誘導に付随するB細胞の活性化はSHMを引き起こし、ポイントミューテーションは構築された可変領域に導入される(アスタリスク)。Sm及び下流のS領域(例えばSg1)におけるAID媒介DSBs(電光シンボル)は、新規のアイソタイプ(例えばIgG1)転写を引き起こすために接続される。さらに、切除された環状の断片は、介在配列を接続することによって生成される。
【0036】
【図2A】図2Aは、ジーンターゲッティングストラテジーの概略図及びマウスSε領域の改変のための組換え部位を例示する。Cre_loxP遺伝子組換え後の標的アレルの構造は、一番下に例示される。制限酵素切断部位は明示される。R1は、EcoRIのためのスプライスサイトを示す。他の全ての制限酵素は、それらの正式な表記を有する。
【0037】
【図2B】図2Bは、ターゲッティングベクターpSW312の概略図である。実施例3を参照のこと。
【0038】
【図3】図3は、ドナースイッチ領域を有するSε領域の置換の前後のマウスIgH遺伝子座全体の概略図である。このダイアグラムにおいて、ドナースイッチ領域はSμである。上のパネルは、未改変IgH遺伝子座である;下のパネルは、本願明細書に記載される改変IgE遺伝子座を例示する。
【0039】
【図4A】図4Aは、未改変(すなわち野生型)ゲノム遺伝子座の概略図であり、制限酵素認識部位、プローブ及びスイッチ領域の相対的位置関係を例示する。5’相同アームは、ブラックボックスによって表される。3’相同アームは、灰色のボックスによって表される。
【0040】
【図4B】図4Bは、改変ゲノム遺伝子座の概略図であり、Smで置換されたSeを有する制限酵素認識部位、プローブ及びスイッチ領域の相対的位置関係を例示する。5’相同アームは、ブラックボックスによって表される。3’相同アームは、灰色のボックスによって表される。
【0041】
【図4C】図4Cは、SμでのSεの置換を確認するサザンブロットである。野生型B6試料は関連する大きさのバンドを一つのみ示し、単一のゲノムI領域の存在を示しているのに対し、標的胚性幹細胞試料は異なる大きさの2つのバンドとして明らかにされた野生型及び標的S部位(SεがSμで置換されている)を示す。これは、意図されたスイッチ領域の成功したターゲッティング及び置換を示す。
【0042】
【図4D】図4Dは、SμでのSεの置換を確認するサザンブロットである。野生型B6試料は関連する大きさのバンドを一つのみ示し、単一のゲノムI領域の存在を示しているのに対し、標的胚性幹細胞試料は異なる大きさの2つのバンドとして明らかにされた野生型及び標的S部位(SεがSμで置換されている)を示す。これは、意図されたスイッチ領域の成功したターゲッティング及び置換を示す。
【0043】
図5−11は、本願明細書に記載されるヌクレオチドを示す。ヌクレオチド塩基コードは、以下の通りである:A又はaはアデニンである;C又はcはシトシンである;G又はgはグアニンである;T又はtはチミンである;M又はmは、アデニン又はシトシンである;S又はsは、シトシン又はグアニンである;及び、N又はnは、アデニン又はシトシン又はグアニン又はチミンである。
【0044】
【図5】図5は、マウスの2つのヌクレオチド配列を示す。モチーフGGGCTGGGCTG(図5Aに示される配列番号:1)はSm及びSeにおいて見いだされ、第二のモチーフGAGCTGACTはSe領域においてわずかにGAGCTGAGCTに改変された(Smモチーフと比較して付加されたGを有する)(図5Bに示される配列番号:2)。
【0045】
【図6】図6は、IgH遺伝子座のBamHI/PVuI断片から欠失された2055塩基対(配列番号:3)を示す。
【0046】
【図7】図7は、A)配列番号:4、2471塩基対5’アーム(129マウス)、及びB)NCBI NT_166318のヌクレオチド25468161から25470628に対応する配列番号:5、2467の塩基対5’アーム(C57Bl/6J系統)を示す。
【0047】
【図8】図8は、NCBI受託番号NT_166318(マウス第12染色体ゲノムコンティグ、C57BL/6J系統)のヌクレオチド25617172から25615761に対応する配列番号:6(大文字で)(1141の塩基対)を示す。
【0048】
【図9】図9は、A)配列番号:7、3’アーム(129マウス配列)、及びB)NCBI NT_166318の25463273から25466106に対応する配列番号:8、3’アーム(C57Bl/6J配列)を示す。
【0049】
【図10】図10は、A)BamHIの3.7kb上流(5’プローブを設計するために用いられた)(配列番号:9)、及びB) PVUIからECORIの断片(3’プローブを設計するために用いられた)(配列番号:10)を示す。
【0050】
【図11】図11は、実施例2において用いられたプローブを示す。A)配列番号:11、I−mu Forward−1(21塩基対);及びB)配列番号:12、C−epsilon Reverse−1(30塩基対);C)配列番号:13、E−mu Forward−2(20塩基対);D)配列番号:14、C−epsilon Reverse−2(30塩基対);E)配列番号:15、Forward:SM5’(20塩基対);F)配列番号:16、9225F(19塩基対);G)配列番号:17、9518F(26塩基対);及びH)配列番号:18、Reverse(30塩基対)。
【0051】
【図12】図12は、BAC RP23−135L12(Invitrogen)から読み出されたIgE C57BL/6ゲノム配列(太字で下線を引かれたフォントに示された欠失されるSe領域)である(配列番号:19)。
【0052】
【図13】図13A−Dは、免疫刺激後の野生型(WT)及びヘテロ接合体(HET)脾細胞における様々な免疫グロブリンの細胞内レベルのFACSデータをまとめている。図13Aは、リポポリサッカライド(LPS)刺激後のIgMレベルがWT及びHET動物で同一であることを示す棒グラフである。図13Bは、リポポリサッカライド(LPS)刺激後のIgG3レベルがWT及びHET動物で同一であることを示す棒グラフである。図13Cは、IL−4と抗CD40(4/40)の併用刺激後のIgG1レベルがWTと比較してHET動物において減少したことを示す棒グラフである。図13Dは、IL−4と抗CD40(4/40)の併用刺激後のIgEレベルがWTと比較してHET動物において増加したことを示す棒グラフである。
【0053】
【図14】図14A−Dは、図13に示されるデータを作成するために用いられたものと同一の脾細胞についてのELISAデータを要約している。刺激後6日目において、FACS解析のために用いられたものと同じように刺激された脾細胞(3匹のHet及び3匹のWTマウス)の上清は、ELISAアッセイに用いられた。FACS解析において観察されたものと一致して、IL4/抗−CD40で刺激された場合、WTと比較してHetにおいて増加したIgE発現レベル及び減少したIgG1発現レベルも観察された。これは、IgG1へのスイッチと競合し、IgEスイッチレベルを増加させるSmKI部位において頻繁な破壊が発生していることを示唆する。LPS刺激はコントロールとして働き、WT及びHetが同様のIgM及びIgG3レベルを有することを示しており、他のスイッチ配列がクラススイッチのために利用できる場合、遺伝子座が未改変で、正常に機能することを示唆する。
【発明の詳細な説明】
【0054】
本発明は、次に、参照することを目的に以下の定義及び例のみを用いて詳述される。本願明細書に言及される全ての特許及び刊行物は、特許及び刊行物中で開示される全ての配列を含めて、明確に出典明示により援用されたものとする。
【0055】
本願明細書に定義されない限り、本願明細書において用いられる全ての専門的及び科学的な用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。Singleton, et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY, 2D ED.、John Wiley and Sons, New York (1994)及びHale & Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY, Harper Perennial, NY (1991)は、本発明において用いられる用語の一般的な定義の多くを当業者に提供する。本願明細書に記載されるものと類似又は同等なあらゆる方法及び材料を本発明を実行又は試験する際に用いることができるが、好ましい方法及び材料を記載する。数値範囲は、範囲を定義する数値を含む。特に明記しない限り、それぞれ核酸は左から右に5’から3’方向に記載され;アミノ酸配列は左から右にアミノからカルボキシ方向に記載される。専門家は、技術の定義及び用語について、特にSambrook et al., 1989, and Ausubel FM et al., 1993を参考にする。本発明は、記載された特定の方法論、プロトコル及び試薬には限定されず、異なり得ることはよく理解されることである。
【0056】
数値範囲は、範囲を定義している数値を含む。
【0057】
特に明記しない限り、それぞれ核酸は左から右に5’から3’方向に記載され;アミノ酸配列は左から右にアミノからカルボキシ方向に記載される。
【0058】
本願明細書に提供される見出しは、明細書全体を参照することで得られる本発明の様々な態様又は実施態様を限定するものではない。したがって、下記に定義される用語は、明細書全体を参照することでより明確に定義される。
【0059】
定義
新規な組換え非ヒト宿主、特に哺乳動物宿主、通常ミューリン(murine)は提供され、宿主は免疫原(抗原とも称される)に対して免疫応答を開始することが可能である。総血清Ig濃度の高いIgE成分又は画分を伴うが、産生される免疫応答は抗体の完全なレパートリーである。
【0060】
「組換え」は、動物又は細胞のDNAが遺伝子工学による改変を含むことを意味する。したがって、例えば、「組換え動物」は、本願明細書に記載されるように、少なくとも一部の細胞が遺伝子組換えを含むものである。同様に、「組換え細胞」は、本願明細書に記載されるように、そのゲノムが遺伝子組み替えを有するものである。
【0061】
「非特異的抗原」は、単独又はより大きな分子(タンパク質)と複合体を形成した後に免疫応答を引き起こし、免疫応答の産物(抗体又はT細胞)と結合可能な、身体にとって異質なあらゆる物質(免疫原又はハプテン)を意味する。
【0062】
本明細書において使用されるように、「アイソタイプ」は、重鎖定常域遺伝子によってコード化される抗体クラス(例えばIgM又はIgG1)を意味する。
【0063】
本明細書において使用されるように、「アイソタイプスイッチング」は、抗体のクラス又はアイソタイプがあるIgクラスから他のIgクラスに変化する現象を意味する。
【0064】
本明細書において使用されるように、「非スイッチアイソタイプ」は、アイソタイプスイッチングが起こらなかった場合に産生される重鎖のアイソタイプクラスを意味する;非スイッチアイソタイプをコード化しているCH遺伝子は、一般的に機能的に再編成されたVDJ遺伝子のすぐ下流の第一のCH遺伝子である。
【0065】
本明細書において使用されるように、用語「スイッチ配列」は、スイッチ組換えに関与するDNA配列を意味する。クラススイッチ組換え(CSR)の間、「スイッチドナー」配列(一般的にμスイッチ領域)は、スイッチ組換えの間に欠失される領域の5’(すなわち上流)に存在する。「スイッチアクセプター」領域は、欠失される領域と置換定常領域(例えばγ、ε等)との間に存在する。遺伝子組換えが常に発生する特定の部位がないように、最終的な遺伝子配列は一般的に予測可能でない。スイッチ配列は、本願明細書においてスイッチ領域と交換可能に用いられる。
【0066】
本願明細書に記載される遺伝子改変(すなわち組換え)動物において、スイッチアクセプター領域は、血清IgEレベルが上昇するように、CSRを増強するように改変される。
【0067】
S領域は、長さにおいて大きく異なる、大きな反復性イントロン配列である(反復領域は、マウスにおいて2.0から6.5kbにわたる)。哺乳動物S領域は、非鋳型鎖上で非常にGが豊富であり、主にTGGGG、GGGGT、GGGCT、GAGCT及びAGCTなどの特定のモチーフが優勢な直列型の反復ユニットから構成される。
【0068】
用語「再編成された」は、本願明細書で用いられるように、基本的に完全なVH又はVLドメインのそれぞれをコード化しているコンフォメーションにおいてVセグメントがD−J又はJセグメントに隣接して位置する、重鎖又は軽鎖免疫グロブリン遺伝子座の配置を意味する。再編成された免疫グロブリン遺伝子座は、生殖系列DNAとの比較により同定することができる;再編成された遺伝子座は、少なくとも一つの組換え七量体/九量体相同エレメントを有する。
【0069】
用語「再編成されていない」又は「生殖系列配置」は、Vセグメントに関して本願明細書において用いられるように、VセグメントがD又はJセグメントと隣接するために組み換えられていない配置を意味する。図1を参照のこと。
【0070】
核酸のために、用語「実質的な相同性」は、2つの核酸又はその明示された配列は、最適に整列して比較した場合、適切なヌクレオチド挿入又は欠失を伴い、ヌクレオチドの少なくとも約80%、通常は約90から95%、より好ましくはヌクレオチドの少なくとも約98〜99.5%が同一であることを示す。あるいは、セグメントが選択的ハイブリダイゼーション条件下で相補鎖にハイブリダイズする場合、実質的な相同性が存在する。核酸は、細胞全体、細胞可溶化物、又は部分的に精製されたか実質的に純粋な形態中に存在し得る。アルカリ性の/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィ、アガロースゲル電気泳動及び当該技術分野で周知の他の標準技術を含む標準技術によって、他の細胞成分又は他の不純物、例えば他の細胞の核酸又はタンパク質から精製された場合、核酸は「単離された」又は「実質的に純粋になる」。F. Ausubel, et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York (1987)を参照のこと。
【0071】
cDNA、ゲノム又は混合物からの本発明の核酸組成は、多くの場合天然配列であるが(改変された制限酵素認識部位などを除いて)、遺伝子配列を提供する標準技術に従って変異させてもよい。コード化配列に対して、これらの変異は要望通りにアミノ酸配列に影響を及ぼし得る。特に、天然のV配列、D配列、J配列、定常配列、スイッチ配列及び本明細書に記載される他の配列に実質的に相同的なDNA配列又はそれから誘導されるDNA配列が意図される(「誘導された」は、配列が同一又は他の配列から改変されることを示す)。
【0072】
核酸が他の核酸配列と共に機能的関係に入れられる場合、核酸は「作動可能に連結される」。例えば、配列の転写に影響を及ぼす場合、プロモーター又はエンハンサーはコード化配列に作動可能に連結される。転写制御配列に関して、作動可能に連結は、連結されるDNA配列が近接し、2つのタンパク質コード化領域を連結する必要がある場合に近接し、リーディングフレーム中に存在することを意味する。スイッチ配列に対して、作動可能に連結は、配列がスイッチ組換えをもたらすことが可能なことを示す。
【0073】
抗体レパートリーを伴って異物抗原刺激に反応する非ヒト動物の設計は、動物に含まれる免疫グロブリン遺伝子がB細胞発生経路にわたって正しく機能することが必要である。重鎖遺伝子の正しい機能は、アイソタイプスイッチングを含む。したがって、本発明の遺伝子は、アイソタイプスイッチング及び以下の一以上を生じさせるために構築される:(1)高レベル及び細胞型特異的な発現、(2)機能遺伝子再構成、(3)アレル排除の活性化及びアレル排除への反応、(4)充分な一次レパートリーの発現、(5)シグナル伝達、(6)体細胞性過剰変異及び(7)免疫応答中のIgE抗体遺伝子座の支配。
【0074】
マウスにおいて、CH遺伝子は、5’−V(D)J−Cμ−Cδ−Cγ3−Cγ1−Cγ2b−Cγ2a−Cε−Cα−3’の順で編成される。CSRは、個々のCH遺伝子の1から10キロベース(kb)の反復DNAエレメント5’であるスイッチ(S)領域において発生する。CSRはCm(Sm)上流のS領域とS領域の下流の間での組換えから生じ、介在配列の欠失が付随する。
【0075】
免疫グロブリン
免疫系は、抗体を産生することによって異種侵入物(抗原)に応答する。抗体は、侵入する微生物に自身を付着させ、破壊するためにそれらを標識する、又は細胞に感染するのを予防するタンパク質分子である。抗体は、抗原特異的である。すなわち、抗原暴露に応答して産生される抗体は、その抗原に特異的である。
【0076】
哺乳動物は、四つのIgアイソタイプ(又はクラス)を産生する:IgM、IgG、IgE及びIgA(それぞれ、μ、γ、ε及びα定常領域によってコード化される)。
【0077】
関連するIgGサブクラスは、異なるCγ領域によってコード化される。それぞれのIgアイソタイプは、抗原除去の特定の形態に特殊化されている。IgM(B細胞によって合成される第一のアイソタイプ)は、補体を活性化する。IgG(血清において最も豊富なアイソタイプ)は、食細胞上の受容体に結合する。IgG抗体は、胎児へ母性保護を提供するために、胎盤を越える。IgA抗体は、分泌物(例えば涙及び唾液)において豊富である;それらは、侵入した病原体の増殖を予防するために被覆する。IgE抗体は寄生線虫に対する保護を提供することができるが、それらは先進国において悪者である:それらは好塩基及びマストセルに結合し、ヒスタミン放出を活性化して、アレルギー応答を引き起こす。
【0078】
免疫原(又は抗原)は、抗体反応を誘発することができる。多くの異なる型の抗原の成功した認識及び根絶には、抗体の多様性が必要とされる;それらのアミノ酸組成は異なり、それらが多くの異なる抗原と相互作用することができる。ヒトは約100億の異なる抗体を生成し、それぞれの抗原の異なるエピトープに結合することが可能であることが推測されている。異なる抗体の膨大なレパートリーが単一の個体において生成されるにもかかわらず、これらのタンパク質を製作するために利用可能な遺伝子の数は限られている。脊椎動物B細胞が比較的少ない抗体遺伝子から抗体の多様なプールを生成することを可能とするいくつかの複雑な遺伝子のメカニズムが進化してきた。
【0079】
B細胞の発生
B細胞は、成熟した機能的細胞になる前に、骨髄及び脾臓において一連の分化チェックポイントを経る。分化を続けるか、細胞死を経るかの決定は、これらのチェックポイントで発生し、主に免疫グロブリンB細胞受容体(BCR)及び抗原結合性及びシグナル伝達分子として機能する能力を中心に展開する。そのような最初の二つのチェックポイントは、新しく合成された重鎖(H)がプレ−BCRを形成するために代替軽鎖(L)と結合するプロ−Bからプレ−Bへの移行における骨髄、及びH鎖がBCRを形成するために通常のL鎖と結合するpre−Bから未分化B細胞のステージにおける骨髄に存在する。プレ−BCR又はBCRを形成することができない細胞はアポトーシス(プログラム細胞死)を経るが、BCRを形成することができるものは分化を続ける。末梢へ移動する成熟B細胞は抗原によって活性化され、抗体を分泌するプラズマ細胞又はメモリーB細胞となり、より迅速に抗原への2度目の暴露に反応する。抗原活性化B細胞が増殖するのを止める場合、それらは成熟プラズマ細胞に分化することができる。プラズマ細胞は、基本的に『抗体工場』である。(Hardy & Hayakawa, B Cell Development Pathways, Annu Rev Immunol. (2001) 19:595-621を参照。)
【0080】
最初に、全てのB細胞は、IgM抗体を産生する。m重鎖の可変領域ドメインをコード化しているV、D及びJエレメントは、IgMC領域をコード化するCmエキソンに隣接して免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子座の5’末端に位置する。適切な刺激に続いて、B細胞は、抗体の抗原特異性を保持しながら、クラススイッチングにより、産生する抗体のアイソタイプを変えることができる。クラススイッチングは、クラススイッチ組換え(CSR)と呼ばれるメカニズムによって、重鎖遺伝子座において発生する。このメカニズムは、それぞれの定常域遺伝子(δ−鎖を除く)の上流のDNAにおいて見いだされるスイッチ(S)領域と呼ばれる保存されたヌクレオチドのモチーフに依存する。このプロセスにおいて、ゲノムDNAはスプライシングされ、それぞれIgG、IgE及びIgAアイソタイプのγ、ε及びα鎖をコード化するC領域エキソンにVDJエレメントを並置するために再結合される;これらのC−領域エキソンは、IgH領域のさらに下流に位置する。このプロセスは、異なるアイソタイプの抗体をコード化する免疫グロブリン遺伝子をもたらす。
【0081】
S領域
活性化B細胞におけるCγ、Cε及びCα遺伝子の発現の抗体クラススイッチングの分子基盤は、VDJ遺伝子の次に新規なCH遺伝子の3’に配置する遺伝子組換えである。明確なIgクラススイッチ組換え部位は、S領域(Cδ以外のそれぞれのCH遺伝子の5’に存在する高頻度反復DNA配列)中に位置する。
【0082】
全てのミューリン及び多くのヒトのS領域は、少なくとも部分的に配列決定されている。それらは1−10kb長であり、高度に反復しており、GCが豊富である。ミューリン及びヒトのSμは、大部分が均一に、2つの五量体配列GAGCT及びGGGGT及び七量体配列(C/T)AGGTTGから構成される。他のS領域の全ても五量体配列の複数のコピーを含む。Sμを除く全てのミューリンS領域は、Sγ1、Sγ3及びSγ2bに対する49塩基対の反複、Sγ2aに対する52塩基対の反複、Sαに対する80塩基対の反複及びSεに対する40塩基対の反複を有する、配列及び長さにおいて異なるタンデムリピートから構成される。ヒト及びミューリンのSμは、Sγ領域よりもSε及びSαに相同であり、各々相当の相同性を有する。S領域は、ヒトS領域がマウス細胞におけるスイッチ組換えのための基質として用いることができるように十分にヒト及びマウス間で保存されている。Sμ、Sε及びSα領域は、2種間で、Sγ領域よりも相同である。実際、マウスSmモチーフGGGCTGGGCTG(配列番号:1)はSeにおいて見いだされ、第二のモチーフGAGCTGACTはSe領域においてGAGCTGAGCT(Smモチーフと比較して付加されたGを有する)(配列番号:2)としてわずかに改変されている。S領域の長さは多くの対立形質の変異(長さ多型)の影響を受けており、特定のS領域の特定サイズに対する機能的要件がないことを示している。
【0083】
IgE及び血清IgEレベル
免疫グロブリンE(IgE)は、哺乳動物においてのみ見いだされる抗体のクラス(又は免疫グロブリン「アイソタイプ」)である。それは、アレルギーにおいて重要な役割を果たし、特に1型過敏症と関連している。IgEは、マンソン住血吸虫、旋毛虫及びカンテツなどほとんどの寄生虫への免疫システムの応答にも関与しており、特定の寄生原虫(例えばマラリヤ原虫)に対する免疫防御においても重要であり得る。
【0084】
IgEは一般的に最も少ないアイソタイプであるが−IgG(大部分の典型的な適応免疫応答に関与するアイソタイプ)の10mg/mlと比較して、正常な(「非アトピー性の」)個体の血清IgEレベルはIgG濃度の0.05%である−それは最も強力な免疫反応を起動させることが可能である。
【0085】
アトピー性の個体は、(高IgE症候群患者のように)血液中に正常レベルの最大10倍のIgEを有し得る。好塩基及びマストセル(炎症反応を媒介することが可能)は「初回抗原刺激を受けて」、(喘息における気道収縮、湿疹における局所的炎症、アレルギー性鼻炎における増加した粘液分泌及び増加した血管透過などのアレルギーと関連する症状の多くを引き起こす)ヒスタミン、ロイコトリエン及び特定のインターロイキンのような化学物質を放出する準備ができるようになり、他の免疫細胞が組織に接近できるように(しかし、アナフィラキシーのように血圧の潜在的に致命的な効果を導き得る)、「アレルゲン」(一般的にこれは塵ダニDerP1、ネコFelD1、クサ又はブタクサ花粉などのタンパク質である。)を特異的に認識するIgEは、その高親和性受容体(FcεRI)と固有の長期相互作用を有する。それぞれの反応のメカニズムは周知であるにもかかわらず、他が単に鼻水となる場合でも、なぜいくつかのアレルギーがそのような急激な感受性を発達させるかはまだよく分かっていない。
【0086】
血清総IgE濃度試験は、血清試料中の総IgEレベルの測定を可能にする。IgEの高いレベルは、アレルギーの存在と関連している。ある総血清IgEの試験方法は、PRIST(ペーパーラジオイムノソルベント試験)である。この試験は、血清試料を放射性ヨウ素で標識されたIgEと反応させることが関与している。結合した放射性ヨウ素(試験手順の完了後に算出される)は、血清試料中の総IgE量に比例する。臨床免疫学において、免疫グロブリンの個々のクラスのレベルは、患者の抗体プロファイルを解明するために、比濁分析(又は濁り測定)で測定される。IgEレベルを測定する他の方法は、ELISA、免疫蛍光法、ウエスタンブロット、免疫拡散及び免疫電気泳動である。
【0087】
100kU/L以上のUniCAP250(登録商標)システムを用いた血清総IgE濃度の測定結果は、上昇していると考えられる。IgEを測定する高感度二抗体ラジオイムノアッセイ法を用いたある研究において、明白なアレルギー症状のない健常人の血清IgEは、6から1000ng/mlの130倍の範囲にわたって変化していた。アレルギー性呼吸器疾患を有する患者において、IgE濃度の範囲は相当な範囲で健常人と重なっているが、約35%の未治療のアレルギー性個体は正常の97パーセンタイルより高いIgE濃度を有し、51%は95パーセンタイルより高い。(G.J. Gleich, A.K. Averbach and H.A. Swedlund, Measurement of IgE in normal and allergic serum by radioimmunoassay. J. Lab. Clin. Med. 77 (1971), p. 690を参照。)
【0088】
他の研究において、正常な成人の幾何平均IgEレベルは105ng/mlであり、5〜2045の95%区間であった。成人のIgEの正常レベルは、約100〜400ng/mlであり、IgGの1/400,000であることが報告されている。(Waldmann et al., The Journal of Immunology, 1972, 109: 304-310;Medical Immunology - 10th Ed. (2001) TG Parslow, DP Stites, AI Terr and JB Imboden, eds.、表7−2を参照)。
【0089】
若者(24−43歳)、老人(66−96)及び百歳以上の人(99−108)間の血清Igレベルの比較については、Listi et al., A Study of Serum Immunoglobulin Levels in Elderly Persons That Provides New Insights into B Cell Immunosenescence. Ann. N.Y. Acad. Sci (2006) 1089:487-495を参照のこと。特に、正常個体の免疫グロブリンの年齢及び性別に関連する血清中濃度についてはListi et al.(前掲)の表2を参照のこと。
【0090】
免疫グロブリンE(IgE)は、通常全ての血清抗体のごくわずかな画分(0.004%)のみを示すにもかかわらず、アレルギー性疾患に中心的に関与していることから、臨床的見地から極めて重要である。アレルギー応答に関与する炎症細胞の2つの分化した型(マストセル及び好塩基)は、固有の、IgE抗体に特異的な高親和性Fc受容体を有する。したがって、血液及び組織液中でIgEはとても低い濃度(およそ10−7M)にもかかわらず、これらの細胞の表面は、血液から吸収され、抗原受容体としての役割をするIgE抗体で常に装飾されている。その受動的に結合したIgE分子が抗原と接触する場合、マストセル又は好塩基は、アレルギー性疾患の急性の徴候の多くを産生する炎症媒介物質を放出する。血清IgEの高いレベルは、ぜん虫又は他の特定の多細胞寄生虫による感染も示し得る。IgG及びIgDの様に、IgEは単量体形態で存在する。Fc受容体は、主にε鎖のCH3ドメインを認識するように見える。Medical Immunology - 10th Ed.(2001;上掲)を参照のこと。
【0091】
ヒトにおける免疫グロブリンEの血清中濃度は多様であるが、約2500ng/mlを超える血清IgEレベルが種々の疾患と関連していることは明らかである。同様の低レベルのIgEがマウスにおいて報告されている(Pinaud et al., Localization of the 3' IgH locus Elements that Effect Long-Distance Regulation of Class Switch Recombination, Immunity (2001) 15(2): 187-199を参照)。
【0092】
ジーンターゲッティング及びプラスミド
ジーンターゲッティングは、設計された外因性DNAフラグメントとマウス胚性幹(ES)細胞のゲノムとの間で相同組換えを利用する技術である。導入されたDNAフラグメントに含まれる同一の領域と天然の染色体間の遺伝子組換えは、設計されたDNAでの染色体の一部の置換を引き起こす。これらの改変ES細胞は、胚盤胞に注射され、ICM(内部細胞塊)の割球とともに胎児の発生に組み込まれ、寄与する。
【0093】
手短に言えば、相同組換えを通して、変異された形態で特定の遺伝子の野生型アレルを置換するジーンターゲッティングベクターは設計される。標的ES細胞は、2−4日目の胚盤胞に移植(implant)され、偽妊娠母体に移植(transfer)される(下記参照)。
【0094】
本願明細書において用いられるターゲッティングベクターは、四つの成分を有する:
a.5’アーム(5’フランキング領域とも称される);
b.選択マーカー;
c.ドナースイッチ領域をコード化するDNA配列;及び
d.3’アーム(5’フランキング領域とも称される)。
5’アームは、置換されるスイッチ領域の5’末端に相同なDNA断片である。選択マーカーは、相同組換えにおいて選択可能な表現型を与える。選択マーカーは、loxp部位に隣接してもよい。ドナースイッチ領域は、選択マーカーの前後いずれであってもよい。3’アームは、置換されるスイッチ領域の3’末端に相同なDNA断片である。
【0095】
5’及び3’フランキング領域は、どのような長さであってもよいが、相同性の程度に依存している。ここで使用されるように、2つのDNA配列部分間の「実質的な相同性」は、DNAフラグメントが遺伝子組換えコンピテント細胞に共同導入する場合に、配列部分が検出可能な遺伝子組換えを容易にするために十分に相同であることを意味する。ヌクレオチド配列が互いに少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%及び最も好ましくは100%同一である場合、2つの配列部分は実質的に相同である。これは、相同性の減少が対応する相同組換えの成功の頻度を減少させるからである。配列相同性の実際的な下限は、相同性がさらに減少すると、遺伝子組換えコンピテント哺乳動物細胞のDNA断片の検出可能な相同組換えを媒介しない相同性として定義される。5’及び3’フランキング領域は、それぞれの相同配列部分について、好ましくは少なくとも500塩基対、より好ましくは1000塩基対、次に最も好ましくは約1800塩基対及び最も好ましくは1800塩基対より大きい。
【0096】
望ましくは、マーカー遺伝子は、欠失する配列を置換するための標的構築物において用いられる。様々なマーカー、特に正の選択を可能とするものが使用され得る。ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(「neo」)の遺伝子の発現から生じるG418耐性の使用が特に興味がある。ゲノム中のマーカー遺伝子の存在は、組込みが起こったことを示す。
【0097】
Sε領域が置換される領域である場合、ドナースイッチ領域はSμ、Sγ1、Sγ2a、Sγ2b又はSγ3領域であってもよい。ドナー領域は、刺激・非組換え条件下で(すなわちスイッチ領域は変更されていない)、Cεより高いレベルでの関連する重鎖の発現を引き起こすものである。
【0098】
ほとんどの場合、サザンブロットハイブリダイゼーションによるDNA分析は、組込み位置を確認するために使用される。挿入物及び相同組込みが発生する領域に隣接する5’及び3’領域の配列に対するプローブを用いることによって、相同的ターゲッティングが起こったことを証明することができる。
【0099】
PCRは、相同組換えの存在の検出において有利に用いられ得る。標的構築物内の配列に相補的なCRプライマー、及び標的遺伝子座において構築物の外側の配列に相補的なPCRプライマーが用いられ得る。この方法において、相同組換えが起こった場合、相補鎖に存在する両方のプライマーを有するDNA分子のみが得られる。予想される大きさの断片を示すことによって、例えばサザンブロット分析を用いて、相同組換えの発生が裏付けられる。
【0100】
標的構築物が調製され、例えば原核生物の配列などあらゆる望ましくない配列が取り除かれると、構築物は標的細胞(例えばES細胞)に導入され得る(下記参照)。標的細胞にDNAを導入するためのあらゆる便利な技術が用いられ得る。技術は、原形質融合(例えば酵母スフェロプラスト)を含む:細胞融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム媒介DNA移入又は直接的なマイクロインジェクション。
【0101】
標的細胞の形質転換又は形質移入の後、標的細胞は、前述のように陽性及び/又は陰性マーカー、ネオマイシン耐性及びアシクロビル又はガンシクロビル耐性を用いて選択され得る。望ましい表現型を示す細胞は、それから切断分析、電気泳動、サザン分析、PCR等によってさらに解析されてもよい。標的遺伝子座において望ましい改変の存在を示す断片を同定することによって、相同組換えがCεへのスイッチを増強するようにIgHの変更が起こった細胞を同定することができる。
【0102】
胚性幹(ES)細胞法
A.ES細胞へのcDNAの導入
ES細胞の培養方法及び後の組換え動物の作出方法、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム/DNA沈殿及び直接注入法のような種々の方法によるES細胞へのDNAの導入方法はTeratocarcinomas and embryonic stem cells, a practical approach, ed. E.J. Robertson, (IRL Press 1987)に詳述されており、その教示は本願明細書に援用される。組換えES細胞の望ましいクローンの選択は、いくつかの手段の一つによって達成される。配列特異的遺伝子組込みが関与する場合、対象の遺伝子と組換えるための核酸配列又はその発現を制御するための配列は、マーカー(例えばネオマイシン耐性)をコード化する遺伝子と共沈澱される。形質移入は、Lovell-Badge, in Teratocarcinomas and embryonic stem cells, a practical approach, ed. E.J. Robertson, (IRL Press 1987)又はPotter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 7161 (1984)に詳述されるいくつかの方法の一つによって実行される。リン酸カルシウム/DNA沈殿、直接注入及びエレクトロポレーションは、好ましい方法である。これらの手法において、多くのES細胞(例えば0.5×106)組織培養ディッシュに播種され、最終容量100μl中の50mgのリポフェクチンの存在下で沈澱された直線化された核酸配列及び1mgのpSV2neoDNAの混合物でトランスフェクションさせた(Southern and Berg, J. Mol. Appl. Gen. 1: 327-341 (1982))。細胞には、G418などの抗生物質(200から500μg/ml)が添加されたDMEM中の10%ウシ胎児血清を含む選択培地が供給される。G418に耐性の細胞のコロニーをクローニングリングを用いて単離し、増殖させる。DNAは薬剤抵抗性クローンから抽出され、プローブとして核酸配列を用いるサザンブロッティング実験は望ましい核酸配列を有するクローンを同定するために用いられる。いくつかの実験において、PCR法は、対象のクローンを同定するために用いられる。
【0103】
ES細胞に導入されるDNA分子は、相同組換えのプロセスを通して染色体にも組み込まれる(Capecchi, (1989) Science 244:1288-1292に記載される)。直接注入により高効率な組み込みが起こる。所望のクローンは、注入されたES細胞のプールから調製されたDNAのPCRにより同定される。プール中の陽性細胞は、細胞クローニングの後にPCRによって同定される(Zimmer and Bruss, Nature 338, 150-153 (1989))。エレクトロポレーションによるDNAの導入は、効率的でなく、選択ステップを必要とする。組換え事象の正の選択(すなわちネオ耐性)及び二重正−負の選択(すなわちネオ耐性及びガンシクロビル耐性)のための方法及び後のPCRによる所望のクローンの同定は、Joyner et al., Nature 338, 153-156 (1989) and Capecchi, (1989)に記載されており、その教示は本願明細書に援用される。
【0104】
B.胚の回収及びES細胞の注入
雌の動物に、マウスで用いられる標準技術(妊馬血清性腺刺激ホルモン(PMSG;Sigma)の注射に続いて48時間後にヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG;Sigma)の注射)を変更して作られた方法論を用いて過排卵を誘導する。雌を、hCG注射の直後に雄と共に置く。hCGのおよそ一日後、交配させた雌は犠牲となり、胚を切り取られた卵管から回収し、0.5%ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma)を含むダルベッコリン酸緩衝生理食塩水に入れる。周囲の卵丘細胞は、ヒアルロニダーゼ(1mg/ml)で除去する。前核期胚w洗浄し、注入までの時間、加湿された5% CO2、95%空気の37.5℃インキュベーター中の0.5%BSAを含むアール均衡塩溶液(EBSS)に入れる。
【0105】
雄と交配した、自然に性周期が回っているか過排卵させた雌を、ES細胞の注入のための胚を採取するために用いる。適切な時期の胚は、受胎交配の後に回収する。交配した雌の子宮角を灌流し、胚をES細胞と共に注入するための10%仔ウシ血清を加えたダルベッコの改質基本培地に入れる。約10−20のES細胞を、約20μmの内径のガラス顕微針を用いて胚盤胞に注入する。
【0106】
C.偽妊娠雌への胚移植
ランダムに性周期が回っている成熟雌を、精管切除された雄とペアリングさせる。ES細胞を含む胚盤胞の着床が必要な場合、それらが交配後2.5〜3.5日(マウスに対して、又はより大きな動物に対してはより遅い)になるように、レシピエント雌を交配させる。胚移植時、レシピエント雌を麻酔する。卵巣を卵管上の体壁を切開することによって露出させ、卵巣及び子宮を外在化させる。胚盤胞が移される針で子宮角に穴を空ける。移植後、卵巣及び子宮を体内へ戻し、切開部を縫合することによって閉じる。さらに移植する場合、この手順を反対側においても繰り返す。
【0107】
胚の操作及びDNAのマイクロインジェクションのための手法はHogan et al., Manipulating the mouse embryo, Cold Spring Harbor laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1986)に詳述されており、その教示は本願明細書に援用される。これらの技術は他の動物種の胚に容易に適用でき、成功率は低いが、当業者にとっては通常の業務である。
【0108】
D.組換え動物の同定
試料(1−2cmのマウス尾部)は、幼若動物から切除される。より大きな動物については、血液又は他の組織を用いることができる。相同組換え実験のキメラを試験するため、すなわち動物に対する標的ES細胞の寄付を探すために、より大きな動物においては血液が検査されるが、マウスにおいては毛色が用いられてきた。DNAは、組換えファウンダー(F0)動物及びそれらの後代(F1及びF2)を検出するために、調製され、サザンブロット及びPCRによって解析される。
【0109】
一旦組換え動物が同定されると、系統は従前通りの交配によって確立される。
【0110】
サザン分析
DNAは、標準のフェノール抽出手法によって又はセシウム勾配遠心分離によって細胞株から得られた。
【0111】
A.フェノール抽出
細胞のフラスコをHBSSバッファーで洗浄し、2.5ml/100cm2の溶解溶液(1%ドデシル硫酸ナトリウム/150mM NaCl/10mMEDTA/10mMトリス、pH7.4)を添加する。全ての細胞が可溶化されたあと、それらを50ml円錐チューブに移し、最終濃度0.4mg/mlのプロテイナーゼKを添加する。溶解物を、DNAse酵素を不活性化するために10分間65℃でインキューベートし、次いで37℃、オーバーナイトでインキューベートした。この溶解物に、50mMトリス、pH8.0中で平衡化された新しいフェノールの等量を添加し、チューブを室温(22−24℃)で5分間穏やかに反転し、次いで5分間2000gで遠心分離し、表面の(水)層を第二のチューブに移す。50%フェノール/50%クロロホルム(v/v)の等量を添加し、反転遠心分離プロセスを繰り返した。上清を第3のチューブへ移し、クロロホルムの等量を添加する。第3の反転(遠心分離サイクル)の後、上清を第4のチューブに移し、1/10量の3M酢酸ナトリウム、2.5倍量の低温エタノールの添加により沈殿させる。70%エタノールで生じた沈殿物を洗浄し、ペレットを空気乾燥した後に、TEバッファー(10mMトリスpH7.4/1mMEDTA)に再懸濁し、50%μg/mlの最終濃度のRNaseを添加する(RNaseは、新たに懸濁された酵素を30分間、70℃で加熱することによってDNエースを含まないように調製される)。溶液を、1:1 SS−フェノール:クロロホルムの等量で抽出する。上記のような遠心分離により相が分離され、上清を等量のクロロホルムで抽出する。上記のような遠心分離に続いて、上清を等量のクロロホルムで抽出する。遠心分離に続いて、上清中のDNAを12.5mlのエタノールで沈殿させ、70%エタノールで洗浄及び風乾する。ペレットを、TEバッファーに懸濁し、DNA収量を260nMのO.D.で測定し、純度は260/280比率により測定する。DNA調製物を、4℃でTE中に保存する。
【0112】
B.培養細胞からのRNA及びDNAの塩化セシウム調製法
細胞のフラスコをHBSで洗浄し、2.5ml/100cm2のグアニジンイソシアネート(GIT)バッファーを添加した。グアニジンイソチオシアネートバッファーは、4MGIT/25mM酢酸ナトリウムpH6/0.8%ベータ−メルカプトエタノール(v/v)であった。3−5分後、穏やかな揺れで、細胞溶解物を、Beckman SW41 10ml超遠心器チューブ中の4mlの塩化セシウムバッファー上に層とした。チューブはGITバッファーで最上部まで満たされ、200℃、32,000rpm(174,000×g)でオーバーナイトで回転させた。チューブの上から3分の2のGIT溶液を取り除いて廃棄し、DNAを含むチューブの下から3分の1の塩化セシウム溶液を第二のチューブに移した。チューブの底のRNAペレットを、200μlの0.3M酢酸ナトリウム、pH6に再懸濁し、1.5mlマイクロチューブに移した。750μlのエタノールをこのチューブに添加し、チューブを10分間ドライアイスに入れた。10分間の微量遠心分離の後、上清を廃棄し、300μlの70%エタノールを添加し、チューブを再び微量遠心分離した。上清を廃棄し、ペレットを真空遠心機において乾燥させた。ペレットを、200μlのdH2O中に再懸濁した。RNA調製を、−70℃のエタノール沈殿物として保存した。DNAを含む4mlのCsClを、dH2Oで希釈した。これに、30mlの低温エタノールを添加した。DNA沈殿物を回収し、新しい50mlチューブに移し、70%エタノールですすいで、次いで空気乾燥させた。次いでペレットをプロテインキナーゼバッファー中に再懸濁し、10mgのプロテイナーゼKを添加した。65℃での15分間のインキュベーションの後、溶液を37℃、オーバーナイトでインキューベートした。加水分解物を1:1 SS−フェノール:クロロホルムを用いて抽出し、クロロホルム、エタノール沈殿に続いて、上記のように定量する。
【0113】
C.制限酵素消化、電気泳動及びサザンブロット法
制限エンドヌクレアーゼ消化条件は、供給元の推奨基準に従った。ゲノムDNAに対しての制限酵素消化は、37℃で4−6時間あった。簡素なDNA調製(クローニング又はPCR増幅)では、インキュベーションは37℃で1−2時間だった。多くの場合、10μgのDNAは、150μl量において消化された。消化物を、3μlの5MNaCl及び375μl(2.5倍量)の低温エタノールを添加して沈澱させ、4℃で10分間微量遠心分離し、500μlの低温70%エタノールで洗浄し、微量遠心分離した。
【0114】
ペレットを、真空微量遠心管中で空気乾燥させ、17μlの電気泳動ランニングバッファー(通常TAEバッファー)及び3μlのローディングバッファー(50%グリセロール/1%ブロムフェノールブルーを含むTAEバッファー)に再懸濁し、68℃で10分間加熱し、別のウェルにサイズマーカーとして働くラムダ−HindIII消化物をロードすると共にアガロースゲルのウェルにロードした。ゲル中のアガロースの濃度は1.0%であった。8−16時間の電気泳動に続いて、ゲルをエチジウムブロマイドで染色し、マーカーバンドの泳動距離を測定及び記録し、ゲルを撮影した。
【0115】
消化されたDNAをNytran膜へ真空転写した。ゲルを吸引装置上のNytran膜上に敷設し、500mlの0.4MNaOH/0.8MNaClで覆い、50cmの水圧で4分間真空加圧した。NaCl−NaOH溶液を除去し、500mlの10×SSCを添加し、50cmの水圧で30−60分間加圧した。サザンブロットを80℃で2時間乾燥し、野菜凍結バッグ中で保存した。
【0116】
D.サザンハイブリダイゼーション
サザンブロットを、熱封止可能なプラスチック袋に入れ、1MNaCl、1%SDS、10%デキストラン硫酸エステル及び200μg/mlニシン精液DNAを含む10mlのプレハイブリダイゼーションバッファーでインキューベートし、65℃で15分間インキューベートした。次いでバッグの隅を切り取り、放射性同位元素標識オリゴヌクレオチドプローブを添加した(約107dpm)。バッグを再封止し、65℃のオーブン又はウォーターバスに入れ、12−16時間穏やかに揺らすか振盪した。次いで膜をバッグから取り除き、特異的に結合したプローブと比較して背景の放射能が低くなるまで、一連の漸増希釈したより高い温度(ストリンジェンシーを増加させる)のSSCバッファーで洗浄した。次いで、暗室において、膜を増強装置スクリーンを備えたX線フィルムカセットに置かれたビニール袋に入れ、Kodak XAR 5フィルムを一枚加え、シグナル強度に合わせた時間封入されたカセットを70℃に入れた。通常、時間を変化させた後の暴露は有用である。フィルムは、Kodak X−OMAT自動現像液で現像した。膜を数回ハイブリダイズしてもよい。Nytran膜を、2分間沸騰している0.1×SSCで加熱させることによって、標識プローブを解離させてもよい。
【0117】
B細胞培養
B細胞を、ネガティブセレクションによって脾臓から精製してもよい。簡潔には、単個細胞浮遊液中のT細胞を、抗体で被覆し、補体溶解によって枯渇させる。残りの脾臓細胞を、非連続的パーコール(GE Healthcare)勾配を通して層状化した。休止B細胞を66%〜70%境界面から選択し、総B細胞(50−70%パーコール境界面)を用いた。B細胞は、10%ヒート不活性FBS、100U/mlペニシリン及びストレプトマイシン、2mML−グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、10mMHepes、100mM非必須アミノ酸及び5×10−5M2−メルカプトエタノールが添加されたRPMI1640培地(Sigma Aldrich)からなるB細胞培地で培養してもよい。
【0118】
インビボ高IgE産生の確認
組換え動物を、当該分野で公知の技術を用いて、血清IgEレベルの上昇について試験する。例えば、ImmunoCAP特異的IgE血液検査(文献は:CAP RAST、CAP FEIA(フッ化酵素免疫検定法)及びファルマシアCAPとしても記載される)を用いてもよい。
【0119】
他の方法は、当該技術分野において公知である。そのような方法は、例えば、抗IgE抗体を用いた酵素結合免疫吸着検定法及び潜在的にFACSを含む。酵素結合免疫吸着検定法(ELISA、酵素免疫測定法又はEIAとも称される)は、抗体又は試料中の抗原の存在を検出するために免疫学において主に用いられる生化学技術である。蛍光活性化細胞分類(FACS)は、単一の細胞が混合された大きな群を解析するための強力な技術である。高い割合を占めるIgE陽性細胞は、高いIgE血清レベルを示す。
【0120】
ハイブリドーマ作出
IgEを産生するハイブリドーマを調製するために公知の標準的な技術を用い得る。例えばKohler & Milstein (1975) Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity, Nature 256:495及びKohler & Milstein (1976) Derivation of specific antibody-producing tissue culture and tumor lines by cell fusion. Eur. J. Immunol. 6:511参照。
【0121】
簡潔には、免疫化された脾細胞を洗浄し、適切な条件下で骨髄腫細胞と融合させる。ハイブリドーマを24時間後にHAT又は他の選択薬剤に暴露させ、融合していない骨髄腫細胞を死滅させる。融合していない脾細胞も限られた生存期間を有しており、ハイブリドーマは培養物中に残された唯一の増殖性細胞である。
【0122】
クラススイッチングについてのアッセイ
アッセイは、当該技術分野において公知であり、例えば、Shinkura, R. et al. Nat. Immunol. (2003) 4, 435-441 and Zarrin, et al., Nat. Immunol. (2004) 5, 1275-1281に記載されている。簡潔には、脾細胞を、ハイブリドーマを作出するために抗CD40及びIL−4によって4日間刺激するか、ELISAを行うために6日間刺激した。モノクローナル抗−IgE抗体を、IgE(変異アレル)を検出するために用い得る。総IgEを、ポリクローナル抗IgE抗体(Southern Biotechnology Associates)で測定してもよい。
【0123】
例えば、IgH遺伝子座におけるDNA再構成及びCSRを評価するためのサザンブロット分析を記載するSouthern and Berg (Detection of specific sequences among DNA fragments separated by gel electrophoresis. J Mol Appl Genet (1982) 1: 327-341)を参照のこと。
【0124】
ε生殖系列転写は、B細胞のIgEの合成への関与の最初の工程を特徴付ける。したがって、ε免疫グロブリン重鎖生殖系列遺伝子転写(GLT;εGLT)、円転写産(CT;Iε−Cμ CT又はIεCγCT)及びIgEの重鎖をコード化するmRNA(εmRNA)及び活性化を誘導されたシチジンデアミナーゼ(AID)を調べるためにRT−PCRを用いてもよい(Takhar et al., J Allergy Clin Immunol (2007) 119(1): 213-218を参照)。
【0125】
後の実験の開示において、以下の略語が適用される:eq(同等な);M(モル);μM(マイクロモル);N(正常な);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);g(グラム);mg(ミリグラム);kg(キログラム);μg(マイクログラム);L(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);℃(摂氏温度);h(時間);min(分);sec(秒);msec(ミリ秒);Ci(キュリー);mCi(ミリキュリー);μCi(マイクロキュリー);TLC(薄層クロマトグラフィ)。
【実施例】
【0126】
本発明は、以下の実施例において詳述されるが、特許請求の範囲に記載される発明の範囲を限定することを意図するものではない。添付された図面は、本明細書の不可欠な部分及び本発明の記載と考えられるべきである。全ての引用文献は、そこに記載される全てが出典明示により本願明細書に援用される。以下の実施例は、例示するために提供されるのであって、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではない。
【0127】
実施例1 変異マウスの遺伝子ターゲティング/ジェネレーション
この実施例は、ターゲッティングベクターの構築、胚性幹細胞(ES)の形質転換及び変異マウスの産生を例示する。
【0128】
I.一般的な手法
A.胚性幹細胞(ES)の形質転換
標的化構築物を、NCBIにおいてNT_166318として利用可能な配列情報に基づいて設計した。(Waterston et al., Initial sequencing and comparative analysis of the mouse genome, Nature. (2002) 420(6915): 520-62も参照のこと。)BamHI/PVuI断片(Se領域を含めて7022bp(129マウス);Se領域を含めて7355bp(B6マウス))を、129又はC57B6 BACクローンから単離し、増幅した。
【0129】
以下の配列(5’→3’;配列番号:3)は、BamHI/PVuI断片から欠失され、大部分のマウスSm領域を含むNeoカセットとHindIII/NheIで置換された(図2及び配列番号:6を参照)。
【0130】
類似の構築物を、IgH遺伝子座に存在するアレルの系統間の相違を説明するために、標的129SvEv ES細胞に製作してもよい。
【0131】
B.胚性幹細胞(ES)の形質転換
上記のプラスミドをPvuI制限酵素を用いて直線化した。DNAを70%エタノールで洗浄し、ペレット状にして、50μlTE中に再懸濁させた。当該分野で公知の技術を用いて(例えばTempleton et al., Efficient gene targeting in mouse embryonic stem cells, Gene Therapy (1997) 4:700-709を参照)、106ES細胞をエレクトロポレーションにより直線化されたベクターで形質移入し、G418(400μg/ml)を用いて選択した。その後、cre/loxP組換システムを用いてNeo遺伝子を欠失させた。少なくとも300塩基対の、同定された組換え構築物(図2に示される)の配列番号:9(5’プローブ)及び配列番号:10(3’プローブ)から設計された二つのプローブを用いたサザン分析によって適切に目標化されたクローンを同定した。
【0132】
C.変異マウスの産生
改変されたIgH遺伝子座を有するマウスを作出するために生殖系列マウスを産生した。Sμ/Sεの相同組み換えを示すES細胞クローンをC57B6胚盤胞に注入し、生じた雄キメラをC57B6雌と交配させた。ヘテロ接合及びホモ接合の変異マウスの生殖細胞系伝達を、毛色によって評価した。
【0133】
II.特定の手法
A. ターゲティングベクター構築
ES細胞のC57BL/6 IgE遺伝子座を標的とする構築物を、組み換え設計及び標準的な分子クローニング技術を用いて製作した。Liu et al., A highly efficient recombineering-based method for generating conditional knockout mutations. Genome Research (2003) vol. 13 (3) pp. 476-84を参照のこと。
【0134】
NCBIにおいてNT_166318として利用可能な配列情報に基づいて標的化構築物を設計した。(Waterston et al., Initial sequencing and comparative analysis of the mouse genome, Nature. (2002) 420(6915): 520-62)も参照のこと。
【0135】
最初に、C57BL/6スイッチイプシロン(本明細書においてSe又はSε又はSイプシロンと称する)を含むマウスBAC(RP23−135L12;Invitrogen, Carlsbad, CA)の6988塩基対ゲノム断片(配列番号:19;図13)領域/配列を単離し、胚性幹(ES)細胞ターゲッティングにおいて用いるためにpBlight−DTAと称されるネガティブセレクションマーカー、ジフテリアトキシンA(DTA)を含むプラスミドに導入し(Warming et al., Mol. Cell. Biol. (2006) 26 (18): 6913-22を参照)、pBlight−DTA−IgEを得た。
【0136】
次に、loxP−PGK−em7−Neo−BGHpA−loxP−HindIII−SalI−AscI−NheIカセットを相同組み換えを用いてIgE断片に挿入し、後のスイッチmu領域(本明細書においてSMu又はSμ又はSmと称する)の挿入のために内因性のSε領域をLoxPが導入されたNeo及びポリリンカーで置換した(「pBlight−DTA−IgE−lox−Neo−lox−MCS」)。
【0137】
最後に、C57BL/6SMuを含む4.9kbのHindIII−NheI断片をBAC RP23−135L12(Invitrogen)から単離し、三方向ライゲーションを用いてこの断片をpBlight−DTA−IgE−lox−Neo−lox−MCSにクローニングした(6.2kbのXhoI−HindIII断片及び4.1kbのXhoI−NheI断片(両方ともpBlight−DTA−IgE−Neo−MCS)の4.9kbのHindIII−NheI Smu断片へのライゲーション)。生じた構築物は、「pSW312」と称される(pBlight−DTA−IgE−lox−neo−lox−Smu)。図2Bを参照のこと。
【0138】
B.胚性幹細胞(ES)の形質転換
C57BL/6 ES細胞を標準法(G418陽性及びDTA陰性選択)を用いて標的化し、陽性クローンをPCR及びtaqmanの解析を用いて同定した。適切に標的化されたクローンは、HindIII消化ゲノムDNA及び外部3’プローブを用いたサザンブロット解析によって確認された(構築物の3’末端及び内因性IgE HindIII部位間の配列)(配列番号:20):
【0139】
C.変異マウスの産生
改変されたIgH遺伝子座を有するマウスを作出するために生殖系列マウスを産生した。Sμ/Sεの相同組み換えを示すES細胞クローンをC57B6胚盤胞に注入し、生じた雄キメラをC57B6雌と交配させた。ヘテロ接合及びホモ接合の変異マウスの生殖細胞系伝達を、毛色によって評価した。
【0140】
実施例2 アイソタイプスイッチを誘導するインビトロでの刺激(抗CD40/IL4;LPS)
以下の実施例は、どのようにB細胞が集められ、クラススイッチ組換え(CSR)について解析されたかを詳述する。
【0141】
6−8週齢の野生型又はヘテロ接合型動物の脾臓細胞を、抗CD40(1μg/mL;HM40−3、Pharmingen)に加えてIL−4(25ng/ml)又はリポポリサッカライド(LPS、20μg/mL)でインビトロにおいて刺激した。1.5×106の細胞は、10%ウシ胎仔血清、2mMグルタミン、100単位/mLのペニシリン−ストレプトマイシン及び100μMβ−メルカプトエタノールが添加されたRPMI培地の6ウェルプレート(0.5×106/mL)の一つに播種された。刺激後、活性化B細胞培養を、4−5日目にハイブリドーマを作製するために、又は6日目にELIZAでIgレベルを測定するために用いた(標準法を用いて;例えばMonoclonal Antibodies: Methods and Protocols in Methods in Molecular Biology (2007) vol. 378:1-13参照)。検出抗体としてモノクローナル抗マウス抗体(Pharmingen)に続いてアルカリフォスフォターゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgG1(Southern Biotechnology)をIgレベルを検出するために用いた。
精製されたマウスIg(Pharmingen)を基準として用いた。
【0142】
脾細胞上のPE抗マウスIg(Pharmingen)抗体を用いて表面Ig染色を行った。刺激4日目にFACS解析を行った。試料を、FACS Scan(Becton Dickinson)に回収し、Flojo解析ソフトウェアを用いて解析した。
【0143】
サザンブロット解析によってCSRを評価した。簡潔には、IgH遺伝子座におけるDNA再構成及びCSRを評価するためにハイブリドーマクローンのゲノムDNAを用いた。ハイブリドーマゲノムDNA(約150ul)をEcoRI(NEB)制限酵素を用いてオーバーナイトで消化し、試料を0.7%アガロースゲルにアプライすることにより消化物を分離した。分離された試料を、Zeta−プローブブロッティングメンブレン(Bio-Rad)に転写し、UV架橋により固定及び/又は80°摂氏真空オーブンにおいて(20分)乾燥させ、標準のサザンブロッティングプロトコル(Molecular Cloning, 3rd Edition Vol.1, pages 6.33-6.64)に従って32P標識I−mu、C−mu、I−epsilon又はC−epsilonプローブを用いて精査した。標識されたDNAを、メンブレンをX線フィルム(Kodak)上に置くことによって視覚化した。
【0144】
IgE陽性ハイブリドーマクローンにおけるS−mu及びS−epsilon CSRの接合を配列決定するために、この領域を増幅及び配列決定するためにネステッドPCRを用いた。最初に、我々は、PCRでゲノムハイブリドーマDNAのこの領域を増幅するために、I−mu Forward−1:5’−CTCTGGCCCTGCTTATTGTTG−3’(配列番号:11)及びC−epsilon Reverse−1:5’−CCTGATAGAGGCTGTGAGAAAGGAAGGACC−3’(配列番号:12)プライマーを用いた。PCRサイクルは94℃で2分間であった;(94℃で10秒、60℃で30秒及び68℃で150秒)×35サイクル、68℃で7分間。このPCR工程からの産物は、第二のPCRサイクルのテンプレート(2μl)として用いられた、以下のプライマを用いた:E−mu Forward−2:5’−AGACCTGGGAATGTATGGTT−3’(配列番号:13)及びC−epsilon Reverse−2:5’−TAGGTTAGACTTATTTATATCACTGCATGC−3’(配列番号:14)。アニーリング温度を55℃に低下させた以外は、PCRプログラムは上記と同一であった。PCR産物をゲル精製し(Quigen)、以下のプライマーを用いて直接的に配列決定した:Forward:SM5’:5’−GTTGAGAGCCCTAGTAAGCG−3’(配列番号:15);9225F:5’−TTGAGAGCCCTAGTAAGCG−3’(配列番号:16);9518F:TGAGCTCAGCTATGCTACGCGTGTTG−3’(配列番号:17);Reverse:5’−GCCCGATTGGCTCTACCTACCCAGTCTGGC−3’(配列番号:18)。
【0145】
実施例3 細胞内IgE染色及びFACS解析
この実施例は、異なる刺激への暴露後のヘテロ接合マウス及び野生型マウスから得られた組織のIgEの細胞内染色及びFACS 解析を示す。
【0146】
0.5×106の脾細胞を遠心沈澱させ、FACSバッファー(PBS+0.5%ウシ胎児血清)中に再懸濁した。抗IgE抗体(e-Bioscience, San Diego, CA; Cat. No. 14-5992-85)を、表面IgE分子をブロックするために1g/試料で添加した。細胞を4℃で15分間インキューベートし、次いでFACSバッファーで二回洗浄し、1700のrpmで3分間の遠心分離によってペレット状にした。ペレット状の細胞を1%ウシ胎児血清PBS中に再懸濁した。
【0147】
細胞をボルテックスし、細胞を固定するためにBD Cytofix/Cytoperm(BD Biosciences, San Jose, CA; Cat. No. 554722)200μl/試料で添加した。4℃で20分間インキューベートした。
【0148】
細胞を1×BD Perm/Washバッファー(BD Biosciences, San Diego, CA; Cat. No. 554723)で2回洗浄し、Fc−ブロッカーを含む250lの1×BD Perm/Washバッファーに再懸濁した。細胞アリコートは、1:200の最終抗体希釈のB220−FITCと共にビオチン−アイソタイプコントロール(e-Bioscience, 13-4301-82)又は抗IgE−ビオチン(e-Bioscience, 13-5992-82)での染色のために用いられた。4℃で30分間インキューベートした。
【0149】
細胞を1×BD Perm/Washバッファーで二回洗浄した。
【0150】
1×BDPerm/Wash中のストレプトアビジン−PE(Pharmingen)を1:200の希釈で添加した。4℃で10分間インキューベートした。
【0151】
BD Perm/Washバッファーで二度洗浄し、細胞を200lのFACSバッファー中に再懸濁し、細胞を解析するためにBD FACS Calibur装置及びCellQuest Proプログラムを用いたFACS解析を行った。
【0152】
結果を図13に示す。図13において、IgEに対して陽性に染色した細胞数がWTと比較して増加したことが分かる。FACS結果は、IgG1レベルがWTと比較してHetの約半分に低下する一方、IgE発現B細胞の割合がWT動物と比較してHet動物において増加する(約二倍)ことを示す。これは、SmKI(Seの代わりに)を有することが、この遺伝子座と競合することによってIgG1にスイッチする機会が減少すると同時に、IgEへスイッチすることを増加させることを証明する。
【0153】
実施例4 IgEアッセイ/測定
この実施例は、曝露されたか曝露されていない組換え動物又はインビトロの細胞培養においてIgEを測定するために、ELISA(ルミネックス又は従来のELISA)の使用を示す。インビトロでの細胞培養において、細胞をLPS又は抗CD40/IL4で刺激してもよい。
【0154】
ルミネックスマウス7−plex免疫グロブリンアイソタイプアッセイ
このアッセイは、Luminex(登録商標)Instrument systemの単一のウェルにおいてマウスモノクローナル細胞培養上清又は血清試料(Millipore Mouse Isotyping Serum Diluentを用いる)をアイソタイプ同定(重鎖:IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgA、IgE、IgM;及び軽鎖:カッパ又はラムダ)するためにマルチプレックスアッセイキット(Millipore Beadlyte Mouse Immunoglobulin Isotyping Kit、Cat#48−300)を用いる。
【0155】
用いる前に、あらゆる粒子を取り除くために細胞培養上清を14,000×gで遠心分離する。同様に、粒子及び脂質層を取り除くために、アッセイの前に血清及び血漿試料を遠心沈澱(8000×g)する。これは、洗浄プレート及び試料針をつまらせることを予防する。
【0156】
ビーズベースマルチプレックスアッセイに用いられる材料
Millipore Beadlyte Mouse Immunoglobulin Isotyping Kit Cat#48−300(Beadlyteサイトカインアッセイバッファー、Cat#43−002、Beadlyteマウスマルチ−免疫グロブリンビーズ、Cat#42−045、Beadlyteマウス免疫グロブリンポジティブコントロール、Cat#43−008、Beadlyte抗マウスk軽鎖、PE(100×)、Cat#44−029、Beadlyte抗マウスラムダ軽鎖、PE(100×)、Cat#44−029を含む)。
【0157】
Millipore Beadlyte マウスアイソタイピング血清希釈液(5×)、Cat#43−033(1%ウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝生理食塩水)。
【0158】
Ig標準曲線試薬:ミリポア:凍結乾燥Beadlyteマウスマルチ免疫グロブリン標準(IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgA、IgE、IgM)(balb/cマウスCat#47−300)。
【0159】
フィルタープレート:界面活性剤を含まないミリポアマルチスクリーン−HA0.45μm。
【0160】
Millipore Filtration System(注:ddH2Oを提供するあらゆるシステムを作用する。)
【0161】
アッセイは、製造業者の説明書に従って行われ得る。
【0162】
ビーズベースマルチプレックスアッセイを行うための一般的なプロトコール
適切な希釈液に希釈する前にあらゆる粒子を沈殿させるために試料を(必要に応じて)遠心分離する。適切な希釈液に標準を再懸濁し、二倍階段希釈を用いた8点標準曲線を作成する。ウェルにつき50−100μlアッセイ希釈液でフィルタープレートを濡らす。
【0163】
プレート嵌合:それぞれのウェルに標準又は試料を50μl添加する。均質な懸濁液を産生するために、15−20秒間結合したビーズを音波破砕する。少なくとも10秒間ビーズを十分にボルテックスする。ウェルにつき1500のビーズとなるようビーズを希釈して、それぞれのウェルに希釈されたビーズ懸濁液25μlを添加する。暗所において室温で15分間インキューベートする。(インキュベーション時間は異なり、一般的に15分から2時間の間である。ビーズ及び試料の一次インキュベーションは、より大きな低感受性で、4℃、オーバーナイトで行うことができる。)。
【0164】
洗浄工程:液体を取り除くために、フィルタープレートの底部に真空マニホールドを適用し、拭き取る。アッセイ希釈液の75μlを添加することによって洗浄し、吸い取り、拭き取る。洗浄を2度繰り返す。ビーズをアッセイ希釈液75μlに再懸濁する。それぞれのウェルに検出抗体溶液25μlを添加する。暗所において室温で15分間インキューベートする。液体を取り除くために、フィルタープレートの底部に真空マニホールドを適用する。アッセイ希釈液の125μlを添加することによって洗浄し、吸い取り、拭き取る。洗浄を2度繰り返す。ビーズをアッセイバッファー125μlに再懸濁する。プレートシェーカー上で1分間インキューベートする。Luminex(登録商標)100計測器の結果を読む。データ評価:4−PL又は5−PLカーブの試料濃度を推定する。
【0165】
刺激後6日目に、FACS解析のために用いられた同様に刺激された脾細胞(3匹のHet及び3匹のWTマウス)の上清を、上記の通りにELISAアッセイに用いた。我々がFACS解析において観察したものに一致して、我々は、IL4/抗CD40で刺激した場合にWTと比較してIgE発現レベルの増加及びIgG1発現レベルの減少を観察した。これは、IgG1へのスイッチと競合するSmKI部位においてより頻繁に発生する破壊及びIgEスイッチの増加があることを示唆している。LPS刺激は、コントロールとしての役割を果たし、WT及びHetが同様のIgM及びIgG3レベルを有することを示しており、他のスイッチ領域がクラススイッチングに利用できる場合、遺伝子座は未改変であり、正常に機能することを示唆する。図14を参照のこと。
【0166】
総マウスIgE結合ELISA
このアッセイは、naive及び免疫動物のマウスのIgE血清レベルを定量するために行われる。
【0167】
I.捕捉抗体での被覆:
精製された抗マウスIgE捕捉mAbを(ラット抗mu IgE(クローンR35−92、BD Pharmingen, San Diego, CA)、4℃保存、Cat #553416(0.5mg/ml))、コーティングバッファー(0.05M炭酸塩/重炭酸塩、pH9.6)で2μg/mlaに希釈する。増強されたタンパク質−結合ELISAプレート(例えばNunc免疫プレートCat #464718、384−Well)に、ウェルにつき100μlを添加する。全てのウェルが捕捉抗体溶液によっておおわれるように、プレートを振盪する。プレートをおおい、4℃、オーバーナイトでインキューベートする。[注:37℃で1時間行ってもよい。PBS/Tween(登録商標)(PBS+0.05%Tween20)で、プレート3回洗浄する。それぞれの洗浄について、ウェルを200μlのPBS/Tween(登録商標)で満たし、吸引又は除去の前に少なくとも1分静置させる。最終工程として、過剰なバッファーを取り除くために、プレートをペーパータオル上で軽くたたく。
【0168】
II.ブロッキング:
ウェルにつきブロッキングバッファー(PBS+0.5%ウシ血清アルブミン+10ppmプロクリン、pH7.4)50μlでプレートをブロッキングする。プレートをおおって及び穏やかに撹拌しながらRTで1時間インキューベートする。上記のように、PBS/Tween(登録商標)でプレートを3回洗浄する。
【0169】
III.標準及び試料を適用する:
カラム1を空のウェルとして残す(すなわち抗原を添加しない、ウェルにつきブロッキングバッファー25μlのみ)。標準(ウェルにつき25μl)の複製のためにカラム2及び3を用いる:500ug/mlストック標準抗体から10ng/ml(1:50,000)の開始標準濃度までの標準曲線を作成する。1:2段階希釈物(PBS+0.5%BSA+0.05%Tween20+15ppmプロクリン+0.2%BgG+0.25%CHAPS+5mMEDTA、pH7.4)を作製する。マウスIgE標準曲線:10.0、5.0、2.50、1.25、0.625、0.313、0.156、0ng/ml。アッセイコントロールは、以下の希釈:8ng/ml、4ng/ml、0.5ng/mlのマウスIgEκアイソタイプコントロール(BD Bioscience、Catalog #557079、メインストック:0.5mg/ml、4℃で保存)。ブロッキングバッファー中の様々な希釈の試料(ウェルにつき25μl)を添加するために残りのカラムを用いる。血清試料を、アッセイ希釈物(PBS+0.5%BSA+0.05%Tween20+15ppmプロクリン)で希釈する(ハミルトン希釈装置を用いて、1:25最小初期希釈、1:3連続希釈)。プレートを覆い、穏やかに撹拌しながら2時間インキューベートする。[注:RTで少なくとも1時間又は4℃でオーバーナイトで行われる。]上記のように、PBS/Tween(登録商標)でプレートを6回洗浄し、1時間撹拌しながらインキューベートする。
【0170】
IV.検出抗体とのインキュベーション:
ウェルにつき25μlのビオチン化抗マウスIgEを添加する(ラット抗mu IgE−ビオチン、クローンR35−118、BD Pharmingen, San Diego, CA、0.5μg/ml、4℃、Cat #553419)。プレートを覆い、穏やか撹拌しながら30分間RTでインキューベートする。上記のように、PBS/Tween(登録商標)でプレートを6回洗浄する。
【0171】
V.ストレプトアビジン−ワサビペルオキシダーゼ(SAv−HRP)を添加する:
ストレプトアビジン−HRP(GE Healthcare、前Amersham Biosciences, Piscataway, NJ、1mg/ml、4℃保存、Cat #RPN4401)を1:20,000に、最終濃度50ng/mlにブロッキングバッファーで希釈する。ウェルにつき25μlを添加し、30分間撹拌しながらインキューベートする。[注:アビジン−HRPは、当該技術分野において言及されるように、適切に改変してストレプトアビジン−HRPの代わりに用いられてもよい。]プレートを覆い、30分間のRTでインキューベートする。このプロトコルにおいて上記のように、PBS/Tween(登録商標)でプレートを6回洗浄する。
【0172】
VI.基質を添加し、発色させる:
TMB Aの一部をTMB Bの一部に混合する(TMBペルオキシダーゼ溶液A及びB(KPL, Gaithersburg, MD、それぞれCat# 50−76−02及び50−65−02)、4℃保存)。それぞれのウェルに25μlのTMB基質を添加し、振盪する。発色させるために室温で15分インキューベートし消光させるために1MH3PO4を25μl添加する。450−650nmでプレートを読みとる。
【0173】
標準曲線から血清試料IgEレベルを内挿する。
【0174】
実施例5 抗体アイソタイプを定量するハイブリドーマ
ハイブリドーマを当該分野の公知技術を用いて構築する。実施例4のアッセイを用いて、免疫グロブリンアイソタイプの特性を示す。
【0175】
結合親和性、エピトープ特性評価及び関連する経路における作用様式について抗体の特性を決定する。
【0176】
実施例6 免疫化:インビボでスイッチするアイソタイプを誘導するTNP−OVA;OVA;フィコール
本明細書に記載されているように、この実施例は組換え動物のインビボにおける免疫化を例示する。
【0177】
8週間齢、性別の適合した、約25−30gの重さのBalb/Cマウスを、100μl無菌PBS中のTNP−OVA50μg/alum2mg又はTNP−フィコール50μlの腹腔内投与により免疫化し、28日目に追加免疫した。60μl試料は、実施例4に記載されるアッセイを用いて抗体アイソタイプ測定のために3、7、14、21、28、35及び42日目に尾静脈から採取される。
【0178】
II.抗原誘導腹膜炎モデルと腹水ヒスタミンの測定。
動物及び感作手法
8週齢、約25−30gのパスツール研究所(Paris, France)で飼育されたBalb/Cマウスを、1.6mgの水酸化アルミニウム(Andersson & Brattsand, 1982)に吸着された100gLgオバルブミンを含む0.4ml0.9%w/vNaCl(生理食塩水)の皮下(s.c.)注射によって、能動感作した。7日間後、動物にAl(OH)3の存在下で同用量のオバルブミンを接種し、7日後に用いた。
【0179】
抗原誘導腹膜炎
腹膜炎は、無菌生理食塩水に希釈された2.5又は25gm/mlのオバルブミンを含む溶液0.4mlを腹腔内(i.p.)注射することによって誘導する(腔につき注射された最終的な用量としてオバルブミン1又は10μg)。コントロール動物には、同量の無菌生理食塩水を接種する。抗原曝露後の様々な時間間隔(30分−164h)で、動物を過量のエーテルによって安楽死させ、腹腔を切開し、3mlのヘパリン生理食塩水(1mlにつき10U)で洗浄する。初期容積の約90%は回収される。まれなケースにおいて、腹腔において出血がみられる場合、動物は用いられる。
【0180】
ヒスタミンレベルは、当該分野で公知の方法を用いて測定する。
【0181】
実施例7 IgEを誘導するためのブラジル鉤虫の感染
この実施例は、寄生虫、ブラジル鉤虫の感染へのIgE反応を例示する。
【0182】
ブラジル鉤虫の発生過程はマウスにおいて特性が明らかとされている(Love, Nippostrongylus brasiliensis infections in mice: the immunological basis of worm expulstion, (1975) Parasitiology 70:11)。マウスにおいて感染幼虫(L3)が皮膚に侵入すると、リンパ及び血管系を経て肺まで運ばれる。気管−食道への移動の後、第四期の幼虫(本来のL3用量の約15−35%)は、小腸の内腔へと運ばれ、成熟する。感染は、幼虫の播種の後の7日目までに明らかとなる。糞便の卵排出量の急低下が先行して起こり、虫の排除は、明らかとなったすぐ後に起こる(約日9及び実質的に12日目までに完了する)。
【0183】
実験条件化でのブラジル鉤虫の維持、感染方法、虫の移行及び計数のための虫の回収は先に記載される(Love & Ogilvie, Nippostrongylus brasiliensis in young rats. Lymphocytes expel larval infections but not adult worms. (1975) Clin. Exp. Immunol. 21:155)。生きている虫を、虫のマウントから精製する。精製された虫を、計数し、2500虫/mlでリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁する。Ogilvieによって記載されるように(Reagin-like antibodies in animals immune to helminth parasites Nature (1964) 204:91)、マウスを500虫/200μlで皮下注射により感染させる。感染させられたマウスを通常の食事で飼い、任意で抗生水(5000mlddH2O中の0.5gポリミキシンB及び10g硫酸ネオマイシン)を5日間に提供した。肺炎症について9日目にマウスを確認し、実施例4で提供された方法を用いて9日目及び15日目に血清IgEレベルを確認する。
【0184】
実施例8 IgE(気道、皮膚)を誘導するためのアレルゲンパネルでの感作
この実施例は、様々なアレルゲンへのIgE反応を例示する。
【0185】
アレルゲン(臨床で用いられる)(例えば塵ダニ、コナヒョウダニ、ヤケヒョウヒダニ、ワモンゴキブリ、アルテルナリア属テニウス(Alternaria tenuis)、アスペルギルス、クロカワカビ(Cladosporidium herbarum)、ネコ、イヌ、オオバコ−スイバ類、ブタクサ(Short Ragweed)、ウエストオーク(West Oak)混合、草混合/ギョウギシバ(Bermuda)/セイバンモロコシ(Johnson)、真菌及び他のアレルゲン)のパネルを様々な用量で注射し、血清免疫グロブリンレベルを上記の通りに評価する。
【0186】
実施例9 所望の治療の投与に続く血清IgE及びメモリーIgE陽性B細胞の評価
この実施例は、様々な治療が様々な条件の下でIgE反応にどのように影響するかについて例示する。予防的及び治療的介入を、同様の方法で評価する。提案された治療剤への言及は、予防的及び治療的介入を包含することを意図している。
【0187】
naive動物の血清IgE濃度を測定する。動物をランダムに7つの群の一つに割当てた。第一の群は、治療的介入又は抗原曝露を受けない。第二の群は、ビヒクルのみを受け(すなわち抗原を受けない)、ついで提案された治療剤を受ける。第三の群は、抗原曝露を受け、ついで提案された治療剤を接種される。第四の群は、提案された治療剤を受け、ついでビヒクルのみを受ける。第五の群は、提案された治療剤を受け、ついで抗原曝露を受ける。第六の群は、ビヒクルのみを受ける(すなわち提案された治療剤を受けない)。第七の群は、抗原曝露のみを受ける(すなわち提案された治療剤を受けない)。
【0188】
抗原曝露と提案された治療剤の投与(又はその逆)との間隔は、最適投与時間を決定するために変化し得る。
【0189】
提案された治療のIgE血清レベルを調整する能力を評価するために、動物IgEレベルを長時間測定する。実施例4に記載されるアッセイを用いた抗体アイソタイプ測定のために3、7、14、21、28、35及び42日目(抗原曝露後)に尾静脈から試料を60μl採取する。
【0190】
本願明細書に記載されている実施例及び実施態様は、例証することのみを目的とし、その様々な改変又は変更は当業者に示唆され、本出願及び添付の請求の範囲の趣旨に含まれるべきであることはよく理解される。本願明細書に引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、あらゆる目的のためのその全てが本願明細書に出典明示により援用されるものとする。
【0191】
産業上の利用可能性
本願明細書に提供される胚性幹細胞は、非特異的アレルゲンへのインビボモデルIgE反応の産生を可能にする。
【0192】
本願明細書に記載されるインビボ動物モデルは、非特異的アレルゲンへのIgE反応の完全なレパートリーを提供する。
表1:配列の概要
【0193】
引用リスト
特許文献
Karasuyama et al., US 6118044 - September 12, 2000 - Transgenic non-human animal allergy models
【0194】
非特許文献
Gerstein et al., Isotype switching of an immunoglobulin heavy chain transgene occurs by DNA recombination between different chromosomes, Cell (1990) 63:537-548[195] Liu et al., A highly efficient recombineering-based method for generating conditional knockout mutations. Genome Research (2003) vol. 13 (3) pp. 476-84
【0195】
Pan et al., Characterization of Human γ4 Switch Region Polymorphisms Suggests a Meiotic Recombinational Hot Spot Within the Ig Locus: Influence of S Region Length on IgG4 Production, J. Immunol. (1998) 161:3520-3526
【0196】
Schmidtz, J and Radbruch, A, Immunoglobulin Class Switching in Encyclopedia of Immunology, Delves and Roitt (eds.), pages 1302-1306
【0197】
Szurek et al., Complete nucleotide sequence of the murine gamma-3 switch region and analysis of switch recombination in two gamma-3 expressing hybridomas, J. Immunol. 135:620-626 (1985)
【0198】
Warming et al., Mol. Cell. Biol. (2006) 26 (18): 6913-22) for subsequent use in embryonic stem (ES) cell targeting, resulting in "pBlight-DTA-IgE"
【0199】
Waterston et al., Initial sequencing and comparative analysis of the mouse genome, Nature. (2002) 420(6915): 520-62
【0200】
Zarrin et al., Influence of switch region length on immunoglobulin class switch recombination, Proc Natl Acad Sci (2005) 102(7): 2466-2470
【0201】
Zarrin et al., Antibody Class Switching Mediated by Yeast Endonuclease-Generated DNA Breaks, Science (2007) 315:377-381
【0202】
Zarrin et al., Sgamma3 switch sequences function in place of endogenous Sgamma1 to mediate antibody class switching, (2008) J. Exp. Med. 205, 1567
【図1A】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)NCBI受託番号NT_166318(マウス第12染色体ゲノムコンティグ、C57BL/6J系統)のヌクレオチド25470628から25468161(配列番号:5)に対応する少なくとも1500ヌクレオチド、少なくとも1800ヌクレオチド、少なくとも2000ヌクレオチド、少なくとも2200ヌクレオチド及び少なくとも2400ヌクレオチドからなる群から選択される、変更されるスイッチ領域の5’末端(5’アーム/アクセプター)に相同なDNA断片;
b)選択可能な遺伝子マーカー;
c)ドナースイッチ領域をコード化する、所望の/ドナーのDNA配列;及び
d)NCBI受託番号NT_166318(マウス第12染色体ゲノムコンティグ、C57BL/6J 1系統)のヌクレオチド25470628から2546816(配列番号:8)に対応する少なくとも1500ヌクレオチド、少なくとも1800ヌクレオチド、少なくとも2000ヌクレオチド、少なくとも2200ヌクレオチド及び少なくとも2400ヌクレオチドからなる群から選択される、変更されるスイッチ領域の3’末端(3’アーム/アクセプター)に相同な第二のDNA断片、
を含むターゲティングベクター。
【請求項2】
5’アームが配列番号:4又は5を含む、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項3】
5’アームが、内因性Iεの3’及び内因性Sεの5’の領域に相同である、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項4】
3’アームが配列番号:7又は8を含む、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項5】
選択可能なマーカーが、ネオマイシン及びチミジンキナーゼからなる群から選択される、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項6】
選択可能なマーカーがネオマイシンである、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項7】
選択可能なマーカーがloxp部位に隣接している、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項8】
所望のスイッチ領域がマウスからのものである、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項9】
所望のスイッチ領域が、Sμ、Sγ1、Sγ2a、Sγ2b及びSγ3から選択される、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項10】
所望のスイッチ領域が、マウスSm領域の大部分を含むHindIII/Nhel断片である、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項11】
所望のスイッチ領域がNCBI受託番号NT_166318(マウス第12染色体ゲノムコンティグ、C57BL/6J系統)のヌクレオチド25617172から25615761に対応するヌクレオチドを含む、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項12】
インビトロで改変された胚性幹細胞を製造するための方法であって、
a)以下のi及びiiから選択される、CSRがCεを発現する確率を増強するために、前記細胞においてゲノムDNAを改変する工程
i.内因性のSε領域に直列に少なくとも1つの付加的なSεコピーを付加することによるSε長の増加;
ii.Sε領域の置換;及び
b)正しく改変されたゲノムDNAの細胞を選択する工程、
を含む方法。
【請求項13】
改変が、Sμ、Sγ1、Sγ2a、Sγ2b及びSγ3から選択されるスイッチ領域のSε領域への置換である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
改変がSμ領域のSε領域での置換である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
改変された胚性幹細胞をインビトロで製造する方法であって、
a.SμをSε領域と交換するために請求項1に記載のベクターを用いる工程
b.正しく改変されたゲノムDNAの細胞を選択する工程
を含む方法。
【請求項16】
改変が、Sμ、Sγ1、Sγ2a、Sγ2b及びSγ3から選択されるスイッチ領域のSε領域への置換である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
改変がSμ領域のSε領域での置換である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ESCがBALB/c又はC57BL/6から選択されるマウス系統のものである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
a.IgH遺伝子座の少なくとも1つのアレルがIgEの発現/産生/分泌が非改変アレルと比較して増強されるように改変されている;及び
b.以下からなる群から選択されるIgEプロファイルを有する、非ヒト動物、
i.全ての血清抗体のIgE画分が0.04%以上である;
ii.IgE血清中濃度が4,000ng/ml以上である;
iii.IgG/IgEの比率が10未満である。
【請求項20】
4000ng/ml以上のレベルでIgE分子を発現するように改変されたゲノムを有する、非ヒト哺乳動物。
【請求項21】
0.1から10のIgG/IgE比を有する非ヒト哺乳動物。
【請求項22】
100ng/mlから10000ng/mlの非曝露(休止)IgE血清濃度を有する非ヒト哺乳動物。
【請求項23】
1000ng/mlから1000000ng/mlの曝露(活性化)IgE血清濃度を有する非ヒト哺乳動物。
【請求項24】
動物モデルが非ヒト脊椎動物である、請求項19に記載の動物モデル。
【請求項25】
動物モデルがマウス、ラット、モルモット、ウサギ又は霊長類である、請求項19に記載の動物モデル。
【請求項26】
非ヒト動物のゲノムがより多くのIgEを発現/産生するように改変されたIgH遺伝子座のSε領域を有している、請求項19に記載の非ヒト動物/哺乳動物モデル。
【請求項27】
改変が遺伝子ターゲティングによるものである、請求項19に記載の非ヒト動物/哺乳動物モデル。
【請求項28】
請求項19に記載の動物モデルを用いたアレルギー治療を試験する方法であって、前記アレルギー性疾患の治療方法の投与の前、投与と同時又は投与後に、前記動物をアレルゲンに曝露すること、及びIgE反応を評価することを含む、方法。
【請求項29】
IgE反応がアレルギー治療なしの場合よりも小さい、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
試験動物及びコントロール動物が同腹仔である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
請求項28に記載の方法によりアレルギーの治療のための医薬として同定された化合物の使用。
【請求項32】
請求項19に記載の動物モデルから得られる細胞株。
【請求項33】
請求項19に記載の動物モデルから単離される細胞。
【請求項34】
非ヒト動物モデルの作出方法であって、
a.断片がCε−コード化領域の上流においてゲノムDNAに組み込まれ、Cε−コード化領域に作動可能に連結されるように、マウスの受精卵に配列番号:6(Sμ)をコード化するプラスミドの直線化断片を顕微注入すること、
b.前もって偽妊娠を誘導するように処理された雌マウスの卵管に前記受精卵を移植すること、及び
c.雌マウスの子宮において前記卵子を発生させること、
を含む、方法。
【請求項35】
生殖系列に改変されたゲノムを含む組換えマウスであって、前記改変がIgE産生率を増強するように変更されたIgH遺伝子座の少なくとも1つのアレルを含む、組換えマウス。
【請求項36】
変更がSμ又はその機能的部分でのSεの置換を含む、請求項35に記載の組換えマウス。
【請求項37】
Sμ機能的部位が少なくとも1kbから10kb長である、請求項35に記載の組換えマウス。
【請求項1】
a)NCBI受託番号NT_166318(マウス第12染色体ゲノムコンティグ、C57BL/6J系統)のヌクレオチド25470628から25468161(配列番号:5)に対応する少なくとも1500ヌクレオチド、少なくとも1800ヌクレオチド、少なくとも2000ヌクレオチド、少なくとも2200ヌクレオチド及び少なくとも2400ヌクレオチドからなる群から選択される、変更されるスイッチ領域の5’末端(5’アーム/アクセプター)に相同なDNA断片;
b)選択可能な遺伝子マーカー;
c)ドナースイッチ領域をコード化する、所望の/ドナーのDNA配列;及び
d)NCBI受託番号NT_166318(マウス第12染色体ゲノムコンティグ、C57BL/6J 1系統)のヌクレオチド25470628から2546816(配列番号:8)に対応する少なくとも1500ヌクレオチド、少なくとも1800ヌクレオチド、少なくとも2000ヌクレオチド、少なくとも2200ヌクレオチド及び少なくとも2400ヌクレオチドからなる群から選択される、変更されるスイッチ領域の3’末端(3’アーム/アクセプター)に相同な第二のDNA断片、
を含むターゲティングベクター。
【請求項2】
5’アームが配列番号:4又は5を含む、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項3】
5’アームが、内因性Iεの3’及び内因性Sεの5’の領域に相同である、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項4】
3’アームが配列番号:7又は8を含む、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項5】
選択可能なマーカーが、ネオマイシン及びチミジンキナーゼからなる群から選択される、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項6】
選択可能なマーカーがネオマイシンである、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項7】
選択可能なマーカーがloxp部位に隣接している、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項8】
所望のスイッチ領域がマウスからのものである、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項9】
所望のスイッチ領域が、Sμ、Sγ1、Sγ2a、Sγ2b及びSγ3から選択される、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項10】
所望のスイッチ領域が、マウスSm領域の大部分を含むHindIII/Nhel断片である、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項11】
所望のスイッチ領域がNCBI受託番号NT_166318(マウス第12染色体ゲノムコンティグ、C57BL/6J系統)のヌクレオチド25617172から25615761に対応するヌクレオチドを含む、請求項1に記載のターゲティングベクター。
【請求項12】
インビトロで改変された胚性幹細胞を製造するための方法であって、
a)以下のi及びiiから選択される、CSRがCεを発現する確率を増強するために、前記細胞においてゲノムDNAを改変する工程
i.内因性のSε領域に直列に少なくとも1つの付加的なSεコピーを付加することによるSε長の増加;
ii.Sε領域の置換;及び
b)正しく改変されたゲノムDNAの細胞を選択する工程、
を含む方法。
【請求項13】
改変が、Sμ、Sγ1、Sγ2a、Sγ2b及びSγ3から選択されるスイッチ領域のSε領域への置換である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
改変がSμ領域のSε領域での置換である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
改変された胚性幹細胞をインビトロで製造する方法であって、
a.SμをSε領域と交換するために請求項1に記載のベクターを用いる工程
b.正しく改変されたゲノムDNAの細胞を選択する工程
を含む方法。
【請求項16】
改変が、Sμ、Sγ1、Sγ2a、Sγ2b及びSγ3から選択されるスイッチ領域のSε領域への置換である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
改変がSμ領域のSε領域での置換である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ESCがBALB/c又はC57BL/6から選択されるマウス系統のものである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
a.IgH遺伝子座の少なくとも1つのアレルがIgEの発現/産生/分泌が非改変アレルと比較して増強されるように改変されている;及び
b.以下からなる群から選択されるIgEプロファイルを有する、非ヒト動物、
i.全ての血清抗体のIgE画分が0.04%以上である;
ii.IgE血清中濃度が4,000ng/ml以上である;
iii.IgG/IgEの比率が10未満である。
【請求項20】
4000ng/ml以上のレベルでIgE分子を発現するように改変されたゲノムを有する、非ヒト哺乳動物。
【請求項21】
0.1から10のIgG/IgE比を有する非ヒト哺乳動物。
【請求項22】
100ng/mlから10000ng/mlの非曝露(休止)IgE血清濃度を有する非ヒト哺乳動物。
【請求項23】
1000ng/mlから1000000ng/mlの曝露(活性化)IgE血清濃度を有する非ヒト哺乳動物。
【請求項24】
動物モデルが非ヒト脊椎動物である、請求項19に記載の動物モデル。
【請求項25】
動物モデルがマウス、ラット、モルモット、ウサギ又は霊長類である、請求項19に記載の動物モデル。
【請求項26】
非ヒト動物のゲノムがより多くのIgEを発現/産生するように改変されたIgH遺伝子座のSε領域を有している、請求項19に記載の非ヒト動物/哺乳動物モデル。
【請求項27】
改変が遺伝子ターゲティングによるものである、請求項19に記載の非ヒト動物/哺乳動物モデル。
【請求項28】
請求項19に記載の動物モデルを用いたアレルギー治療を試験する方法であって、前記アレルギー性疾患の治療方法の投与の前、投与と同時又は投与後に、前記動物をアレルゲンに曝露すること、及びIgE反応を評価することを含む、方法。
【請求項29】
IgE反応がアレルギー治療なしの場合よりも小さい、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
試験動物及びコントロール動物が同腹仔である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
請求項28に記載の方法によりアレルギーの治療のための医薬として同定された化合物の使用。
【請求項32】
請求項19に記載の動物モデルから得られる細胞株。
【請求項33】
請求項19に記載の動物モデルから単離される細胞。
【請求項34】
非ヒト動物モデルの作出方法であって、
a.断片がCε−コード化領域の上流においてゲノムDNAに組み込まれ、Cε−コード化領域に作動可能に連結されるように、マウスの受精卵に配列番号:6(Sμ)をコード化するプラスミドの直線化断片を顕微注入すること、
b.前もって偽妊娠を誘導するように処理された雌マウスの卵管に前記受精卵を移植すること、及び
c.雌マウスの子宮において前記卵子を発生させること、
を含む、方法。
【請求項35】
生殖系列に改変されたゲノムを含む組換えマウスであって、前記改変がIgE産生率を増強するように変更されたIgH遺伝子座の少なくとも1つのアレルを含む、組換えマウス。
【請求項36】
変更がSμ又はその機能的部分でのSεの置換を含む、請求項35に記載の組換えマウス。
【請求項37】
Sμ機能的部位が少なくとも1kbから10kb長である、請求項35に記載の組換えマウス。
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A−1】
【図10A−2】
【図10B−1】
【図10B−2】
【図11】
【図12−1】
【図12−2】
【図12−3】
【図13】
【図14】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A−1】
【図10A−2】
【図10B−1】
【図10B−2】
【図11】
【図12−1】
【図12−2】
【図12−3】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2012−519001(P2012−519001A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552173(P2011−552173)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/025507
【国際公開番号】WO2010/099384
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/025507
【国際公開番号】WO2010/099384
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】
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