説明

DLL4アンタゴニスト及び化学療法剤を用いたがんの治療方法

本発明は、Dll4アンタゴニスト、特にヒトDll4に特異的に結合するDll4抗体及びそのフラグメント、並びに化学療法剤の組み合わせを投与することによるさまざまなタイプのがん/腫瘍の治療方法を提供する。このような併用療法は、いずれかの薬剤単独による治療と比較して相乗効果を示す。従って、本発明の方法は、特にいずれかの薬剤単独による治療で必要とされた高い投与量によって引き起こされた、副作用に対する耐性が低いがん患者にとっては、有効な投与量を低下させることができるので有益である。また、薬学的組成物並びにDll4アンタゴニスト及び化学療法剤を含むキットが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デルタ様リガンド4(Dll4)アンタゴニスト、特にヒトDll4に特異的に結合するヒト抗体又はその断片を、1つ又はそれ以上の化学療法剤と組み合わせて用いたがん又は腫瘍の治療方法、並びにDll4アンタゴニスト及び化学療法剤を含んでなる薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
Dll4は、血管内皮によって高度に選択的発現を示すNotchリガンドのデルタファミリーのメンバーである(非特許文献1)。Dll4は、Notch1及びNotch4を含むNotch受容体のリガンドである。Dll4アンタゴニストは、種々のがんにおける腫瘍増殖の阻害に有用である。ヒトDll4(hDll4)の核酸及びアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:1及び2に示されている。ヒトDll4に特異的な抗体及びDll4抗体を用いたがん/腫瘍治療は、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載されている。
【0003】
化学療法剤は、単独、そして手術及び/又は放射線療法との組み合わせの両方でがんの治療に広く用いられる。Dll4アンタゴニスト及び化学療法剤を用いた併用療法は、特許文献4及び特許文献5に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許出願公開WO 2007/143689
【特許文献2】国際特許出願公開WO 2008/042236
【特許文献3】国際特許出願公開WO 2007/070671
【特許文献4】米国特許出願公開US 2008/0014196
【特許文献5】米国特許出願公開US 2008/0107648
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Shutter et al., 2000, Genes Develop. 14:1313-1318
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、本発明は、Dll4アンタゴニストを化学療法剤と組み合わせて対象に投与することを含み、その際、がんが治療される、それを必要とする対象におけるがんの治療方法を特徴とする。本発明の方法によって治療される対象には、すべての哺乳動物種が含まれうるが、好ましくはがんを患っているヒトである。
【0007】
本発明の併用療法は、Dll4活性の調整によって直接又は間接的に影響を受けるDll4が関連する又はDll4が介在する状態又は疾患において特に有用である。より具体的には、Dll4は、現在、血管成長及び発達に関与していることがわかっているため、Dll4アンタゴニストを用いて、Dll4が介在する血管の成長又は発達又は成熟を阻害又は低減することは、その成長及び生存のために十分な血液供給を必要とするがん/腫瘍に有効な治療である。さらにまた、Dll4アンタゴニストと成長抑制剤及び他の細胞毒性剤を含む化学療法剤との併用は、それらの抗がん/抗腫瘍効果を相乗的に強化する。本発明の方法によって治療できるがん/腫瘍としては、卵巣がん、子宮がん、乳がん、肺がん、肝がん、大腸がん、膀胱がん、腎臓がん、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、骨がんを含む種々の固形悪性腫瘍、黒色腫を含む皮膚がん、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪細胞肉腫(adipocytic sarcoma)、滑膜肉腫、悪性線維性組織球腫、類上皮血管内皮腫、血管肉腫、線維肉腫、及び分類されていない肉腫を含むが、それらに限定されるわけではない悪性軟部組織肉腫、骨髄腫を含む白血病、並びに同様のものが含まれるが、なんらそれらに限定されるわけではない。
【0008】
一実施態様において、Dll4アンタゴニストは、高親和性でDll4を特異的に結合し、そしてDll4がNotch受容体に結合するのを阻止する及び/又はDll4活性の効力を消すDll4抗体又はそのフラグメント(「Dll4 Ab」)である。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、又は完全なヒト抗体であってもよい。好ましくは、抗体は、完全にヒトモノクローナル抗体又はモノクローナル抗体フラグメントである。抗体フラグメントは、一本鎖抗体、Fab又は(Fab')2であってもよい。
【0009】
別の実施態様において、Dll4 Abは、Dll4(配列番号(SEQ ID NO):2)のN末端ドメイン(S27−R172)、又はDSLドメイン(V173−C217)、又はN末端−DSLドメイン(S27−C217)内でエピトープを結合する。本発明の方法に用いられるDll4 Abは、高親和性でヒトDll4を結合することができ、そしてその解離定数(K)は、表面プラスモン共鳴で測定して約500pm又はそれ未満であり、約300pm又はそれ未満を含み、そして約200pm又はそれ未満を含む。例えば、Dll4 Abは、3つの重鎖CDR(H−CDR)を含む重鎖可変領域(HCVR)及び3つの軽鎖CDR(L−CDR)を含む軽鎖可変領域(LCVR)を有し、その際、3つの重鎖CDRは、配列番号:20のアミノ酸配列のCDR1、CDR2及びCDR3を含み、そして3つの軽鎖CDRは、配列番号:28のアミノ酸配列のCDR1、CDR2及びCDR3を含む。別の実施態様において、Dll4 Abの重鎖CDR1、CDR2及びCDR3は、それぞれ配列番号:22、24及び26のアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、Dll4 Abの軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3は、それぞれ配列番号:30、32及び34のアミノ酸配列を含む。さらに別の実施態様において、Dll4 Abは、それぞれ配列番号:22、24及び26を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及びそれぞれ配列番号:30、32及び34を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。さらに別の実施態様において、Dll4 Abは、配列番号:20又は116のアミノ酸配列を含むHCVR、又は配列番号:28又は118のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。さらに別の実施態様において、Dll4 Abは、配列番号:20/28(REGN281)又は116/118(REGN421)のHCVR/LCVRの組み合わせを含む。別の実施態様において、Dll4 Abは、それぞれ配列番号:6/8/10及び配列番号:14/16/18;それぞれ配列番号:38/40/42及び配列番号:46/48/50;それぞれ配列番号:54/56/58及び配列番号:62/64/66;それぞれ配列番号:70/72/74及び配列番号:78/80/82;それぞれ配列番号:86/88/90及び配列番号:94/96/98;並びにそれぞれ配列番号:102/104/106及び配列番号:110/112/114から選ばれる、重鎖CDR1/CDR2/CDR3の組み合わせ並びに軽鎖CDR1/CDR2/CDR3の組み合わせを含む。
【0010】
別の実施態様において、Dll4 Abは、配列番号:4、36、52、68、84若しくは100のアミノ酸配列を含むHCVR、又は配列番号:12、44、60、76、92若しくは108のアミノ酸配列を含むLCVRを含む。さらに別の実施態様において、Dll4 Abは、配列番号:4/12(REGN279);配列番号:36/44(REGN290);配列番号:52/60(REGN306);配列番号:68/76(REGN309);配列番号:84/92(REGN310);及び配列番号:100/108(REGN289)から選ばれるHCVR/LCVRの組み合わせを含む。
【0011】
配列番号:4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116及び118のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、それぞれ、配列番号:3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115及び117として示される。
【0012】
一実施態様において、化学療法剤は、抗有糸分裂剤、例えばドセタキセル、パクリタキセル、及び同様のもの;白金ベースの化学療法化合物、例えばシスプラチン、カルボプラチン、イプロプラチン、オキサリプラチン、及び同様のもの;又は他の慣用の細胞毒性剤、例えば5−フルオロウラシル(5−FU)、カペシタビン、イリノテカン、ロイコボリン、ゲムシタビン;受容体チロシンキナーゼ及び/又は血管形成の阻害剤、例えばErbB阻害剤、RTKクラスIII阻害剤、VEGFR阻害剤、及び同様のものであり、そしてDll4アンタゴニストは、前記のDll4抗体又はそのフラグメントである。
【0013】
第2の態様において、本発明は、Dll4アンタゴニストを化学療法剤と組み合わせて対象に投与することを含み、その際、腫瘍増殖が減少、低下又は停止する、それを必要とする対象において腫瘍増殖を減少、低下又は停止させる方法を特徴とする。
【0014】
第3の態様において、本発明は、Dll4アンタゴニストと共に化学療法剤を投与することを含む、各薬剤単独の投与と比較して所望の治療効果を達成するのに必要な化学療法剤又はDll4アンタゴニストの量を低下する方法を特徴とする。一実施態様において、例えば、腫瘍増殖を停止又は低下させるような所望の治療効果を達成するための化学療法剤の量は、併用投与されたDll4アンタゴニストの存在下で少なくとも10%未満、少なくとも20%未満、少なくとも30%未満、少なくとも40%未満、若しくは少なくとも50%未満であり、又はその逆も同じである。一般に、化学療法剤又はDll4アンタゴニストの量は、約30%〜約50%低下することができることが望ましい。従って、本発明の方法は、いずれかの薬剤単独による治療に必要な高い投与量によって生じた副作用に対する耐性が低いがん患者にとっては、有効な投与量を減少することができるので特に有益である。
【0015】
第4の態様において、本発明は、Dll4アンタゴニスト、化学療法剤、及び薬学的に許容しうる担体を含む薬学的組成物を特徴とする。一実施態様において、Dll4アンタゴニストは、高親和性でDll4を特異的に結合してDll4活性の効力を消すDll4 Ab又はそのフラグメントであり、そして化学療法剤は、本明細書に記載されたもののいずれかである。
【0016】
第5の態様において、本発明は、本発明の薬学的組成物を含む容器、及び使用説明の添付文書を含むキットを特徴とする。一実施態様において、キットは、その中にhDll4を特異的に結合する抗体又はその抗原結合性フラグメントを含む容器、その中に本明細書に記載されたもののいずれかから選ばれる少なくとも1つの化学療法剤を含む1つ又はそれ以上のさらなる容器、及び使用説明の添付文書を含みうる。他の目的及び利点は、続く詳述の概説から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ヒト化Dll4タンパク質(ヒト化Dll4 SCIDマウス)を発現する重症複合免疫不全(SCID)マウスに移植されたヒトVMCub1腫瘍(膀胱がん)の成長におけるシスプラチンと組み合わせたDll4 Abの効果を示す(実施例1)。ヒトFc対照(実線による◆);REGN421(Dll4 Ab)2mg/kg/注射(点線による◆);シスプラチン0.5mg/kg/注射(□);シスプラチン2mg/kg/注射(■);REGN421 2mg/kg/注射+シスプラチン0.5mg/kg/注射(○);そしてREGN421 2mg/kg/注射+シスプラチン2mg/kg/注射(●)。
【図2】ヒト化Dll4 SCIDマウスに移植されたヒトA549腫瘍(非小細胞肺がん)の成長におけるシスプラチンと組み合わせたDll4 Abの効果を示す(実施例2)。ヒトFc対照(●);REGN421全量6mg/kg(○);シスプラチン全量5mg/kg(△);シスプラチン全量9mg/kg(▲);REGN421 6mg/kg+シスプラチン5mg/kgの全量(◇);そしてREGN421 6mg/kg+シスプラチン9mg/kgの全量(◆)。
【図3】ヒト化Dll4 SCIDマウスに移植されたヒトHCT116(大腸がん)の成長における5−FUと組み合わせたDll4 Abの効果を示す(実施例5)。ヒトFc対照(●);REGN421全量6mg/kg(○);5−FU全量45mg/kg(△);5−FU全量75mg/kg(▲);REGN421 6mg/kg+5−FU 45mg/kgの全量(◇);そしてREGN421 6mg/kg+5−FU 75mg/kgの全量(◆)。
【図4】ヒト化Dll4 SCIDマウスに移植されたヒトHCT116腫瘍の成長におけるイリノテカンと組み合わせたDll4 Abの効果を示す(実施例6)。ヒトFc対照(●);REGN421全量6mg/kg(○);イリノテカン全量22.5mg/kg(△);イリノテカン全量75mg/kg(▲);REGN421 6mg/kg+イリノテカン22.5mg/kgの全量(◇);そしてREGN421 6mg/kg+イリノテカン75mg/kgの全量(◆)。
【図5】0.5、5又は15mg/kgのREGN421の単回投与によるヒト化Dll4 SCIDマウスに移植されたColo205ヒト結腸直腸腫瘍細胞におけるHey1遺伝子発現の平均(4匹のマウス/群)倍率変化(fold changes)を投与後5、10、24及び72時間並びに7日で測定して15mg/kgのhFcと比較して示す。
【0018】
詳細な説明
本方法を説明する前に、このような方法及び条件は変化しうるため、本発明は、特定の方法、及び記載された実験条件に限定されないことを理解すべきである。また、本明細書に用いられる用語は、特定の実施態様を記載するためだけにあり、限定することを意図しておらず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることを理解すべきである。
【0019】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に用いられるように、文脈が別段のことを明示しない限り、単数形で記載されたものは、複数のものを包含する。従って、例えば、「方法」に対する記載には、1つ又はそれ以上の方法、及び/又は本明細書に記載された及び/又は本開示を読むと当業者に明らかになるタイプの工程が含まれる。
【0020】
特に明記しない限り、本明細書に用いられるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似又は同等のあらゆる方法及び物質は、本発明の実施又は試験に用いることができるが、好ましい方法及び物質は、ここに記載する。
【0021】
定義
「デルタ様のリガンド4(Delta-like ligand 4)」、「Dll4」、「hDll4」は、同じ意味で用いられ、配列番号:1の核酸配列をコードするタンパク質及び配列番号:2のアミノ酸配列を有するタンパク質に相当する。
【0022】
Dll4アンタゴニストには、Notch受容体へのDll4の結合を阻止することができるDll4に対する抗体及びそのフラグメント(例えばNotch1及びNotch4)、多量体化成分に融合したDll4の細胞外ドメイン含む融合タンパク質、又はそのフラグメント(例えば、米国特許出願公開第2006/0134121号及び同第2008/0107648号参照)、並びにペプチド及びペプチボディ(peptibodies)(例えば、米国特許出願公開第2003/0229023号参照)が含まれる。
【0023】
特に明記しない限り、本明細書に用いられる「抗体」という用語は、2つの免疫グロブリン重鎖及び2つの免疫グロブリン軽鎖を含む抗体分子(すなわち、「完全な抗体分子(full antibody molecules)」)並びにその抗原結合性フラグメントを包含することを理解しなければならない。本明細書に用いられる抗体の「抗原結合性の部分」、抗体の「抗原結合性フラグメント」などの用語は、抗原を特異的に結合して複合体を形成する、あらゆる自然発生の、酵素によって入手可能な、合成、又は遺伝子組換えのポリペプチド又は糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合性フラグメントは、なんらかの適切な標準技術、例えば蛋白分解又は抗体可変ドメイン(variable domains)及び場合により定常ドメイン(constant domains)をコードするDNAの操作及び発現を含む組換え型遺伝子工学技術を用いて、例えば完全な抗体分子から誘導してもよい。このようなDNAは、知られている及び/又は例えば商業的な供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ−抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であり、又は合成することができる。DNAを配列決定し、そして化学的に又は分子的生物学技術を用いることにより操作して、例えば、1つ若しくはそれ以上の可変及び/又は定常ドメインを適切な配置に配列し、又はコドンを導入し、システイン残基を作り、アミノ酸の修飾、付加若しくは削除などをしてもよい。
【0024】
抗原結合性フラグメントの非限定的な例としては、(i)Fabフラグメント;(ii)F(ab')2フラグメント;(iii)Fdフラグメント;(iv)Fvフラグメント;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAbフラグメント;及び(vii)抗体の超可変領域に類似するアミノ酸残基からなる最小限の認識単位(例えば、単離された相補性決定領域(CDR))が含まれる。また、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体及びミニ抗体(minibodies)のような他の設計された分子も、本明細書に用いられる「抗原結合性フラグメント」の表現に包含される。
【0025】
抗体の抗原結合性フラグメントは、典型的に少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、あらゆるサイズ又はアミノ酸組成であってもよく、そして1つ若しくはそれ以上のフレームワーク配列を有するフレームに隣接しているか又はフレーム中にある少なくとも1つのCDRを一般に含む。VLドメインに関連するVHドメインを有する抗原結合性フラグメントでは、VH及びVLドメインは、いずれかの適切な配置で互いに位置していてもよい。例えば、可変領域は二量体であってもよく、そしてVH−VH、VH−VL又はVL−VL二量体を含む。あるいは、抗体の抗原結合性フラグメントは、単量体VH又はVLドメインを含んでもよい。
【0026】
ある実施態様において、抗体の抗原結合性フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含んでもよい。本発明の抗体の抗原結合性フラグメント内に見出されうる可変及び定常ドメインの非限定的な典型的な配置としては、(i)VH−CH1;(ii)VH−CH2;(iii)VH−CH3;(iv)VH−CH1−CH2;(v)VH−CH1−CH2−CH3;(vi)VH−CH2−CH3;(vii)VH−CL;(viii)VL−CH1;(ix)VL−CH2;(x)VL−CH3;(xi)VL−CH1−CH2;(xii)VL−CH1−CH2−CH3;(xiii)VL−C
H2−CH3;及び(xiv)VL−CLが含まれる。上記の典型的な配置のすべてを含む可変及び定常ドメインのあらゆる配置において、可変及び定常ドメインは、いずれか互いに直接結合していてもよく又は完全な若しくは部分的なヒンジ若しくはリンカー領域によって結合してもよい。ヒンジ領域は、単一ポリペプチド分子中の隣接する可変及び/又は定常ドメインの間に柔軟性又は半柔軟性の結合を生じる少なくとも2つの(例えば、5、10、15、20、40、60又はそれ以上の)アミノ酸からなってもよい。さらに、本発明の抗体の抗原結合性フラグメントは、互いに及び/又は1つ又はそれ以上の単量体VH又はVLドメインとの非共有結合的結合で(例えば、ジスルフィド結合によって)上記の可変及び定常ドメイン配置のいずれかのホモ二量体又はヘテロ二量体(又は他の多量体)を含んでもよい。
【0027】
完全な抗体分子と同様に、抗原結合性フラグメントは単一特異性又は多重特異性(multispecific)(例えば、二重特異性)であってもよい。抗体の多重特異性抗原結合性フラグメントは、典型的に少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、その際、各可変ドメインは、同じ抗原上の別々の抗原又は異なるエピトープに特異的に結合することができる。本明細書に記載された典型的な二重特異性抗体フォーマット(format)を含むすべての多重特異性抗体フォーマットは、当分野で入手可能な慣用の技術を用いて本発明の抗体の抗原結合性フラグメントに関する使用に適応させることができる。
【0028】
本明細書に用いられる「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列から誘導された可変及び定常領域を有する抗体を含むものとする。本発明のヒトmAbは、例えばCDR中、そして特にCDR3中にヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダムな若しくは部位特異的な突然変異誘発によって又は生体内で体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含んでもよい。しかし、本明細書に用いられる「ヒト抗体」という用語は、別の哺乳動物種(例えば、マウス)の生殖細胞系列から誘導されたCDR配列がヒトFR配列に融合されたmAbを含まないものとする。
【0029】
本明細書に記載された完全なヒト抗Dll4抗体は、対応する生殖細胞系列配列と比較して重鎖及び軽鎖可変ドメインのフレームワーク及び/又はCDR領域中に1つ又はそれ以上のアミノ酸置換、挿入及び/又は欠失を含んでもよい。このような突然変異は、本明細書に記載されたアミノ酸配列を、例えば抗体配列の公開データベースから入手可能な生殖細胞系列配列と比較することによって容易に確認することができる。本発明は、本明細書に開示されたアミノ酸配列のいずれかから誘導され、その際、1つ又はそれ以上のフレームワーク及び/又はCDR領域内の1つ又はそれ以上のアミノ酸は、対応する生殖細胞系列残基に又は対応する生殖細胞系列残基の保存的アミノ酸置換(自然(natural)又は非自然(non-natural))に復帰突然変異した(このような配列変化は、本明細書において「生殖細胞系列復帰突然変異」と称する)抗体及びその抗原結合性フラグメントを含む。当業者は、本明細書に開示された重鎖及び軽鎖可変領域配列を用いて出発し、1つ若しくはそれ以上の個々の生殖細胞系列復帰突然変異又はそれらの組み合わせを含む多くの抗体及び抗原結合性フラグメントを容易に製造することができる。ある実施態様において、VH及び/又はVLドメイン内のフレームワーク及び/又はCDR残基のすべては、生殖細胞系列配列に復帰突然変異される。別の実施態様において、ある種の残基のみ、例えば、FR1の最初の8つのアミノ酸内若しくはFR4の最後の8つのアミノ酸内に見出される突然変異残基のみ、又はCDR1、CDR2若しくはCDR3内に見出される突然変異残基のみが、生殖細胞系列配列に復帰突然変異される。さらにまた、本発明の抗体は、フレームワーク及び/又はCDR領域内に2つ又はそれ以上の生殖細胞系列復帰突然変異の任意の組み合わせを含んでもよく、すなわち、その際、ある種の個々の残基は、生殖細胞系列配列に復帰突然変異されるが、生殖細胞系列配列と異なるある種の他の残基は維持される。一旦入手したら、1つ又はそれ以上の生殖細胞系列復帰突然変異を含む抗体及び抗原結合性フラグメントは、1つ又はそれ以上の所望の性質、例えば改善された結合特異性、増強された結合親和性、改善された又は強化されたアンタゴニスト又はアゴニストの生物学的性質(場合による)、低下された免疫原性などについて容易に試験することができる。この一般的なやり方で入手した抗体及び抗原結合性フラグメントは、本発明内に包含される。
【0030】
また、本発明は、1つ又はそれ以上の保存的置換を有する本明細書に開示されたHCVR、LCVR及び/又はCDRアミノ酸配列のいずれかの変異体を含む抗Dll4抗体を含む。例えば、本発明は、本明細書に開示されたHCVR、LCVR及び/又はCDRアミノ酸配列のいずれかと比べて、例えば、10個又はそれより少ない、8個又はそれより少ない、6個又はそれより少ない、4個又はそれより少ない、2又は1個の保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR及び/又はCDRアミノ酸配列を有する抗Dll4抗体を含む。一実施態様において、HCVRは、その中に10個又はそれより少ない保存的アミノ酸置換を有する配列番号:116のアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、HCVRは、その中に8個又はそれより少ない保存的アミノ酸置換を有する配列番号:116のアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、HCVRは、その中に6個又はそれより少ない保存的アミノ酸置換を有する配列番号:116のアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、HCVRは、その中に4個又はそれより少ない保存的アミノ酸置換を有する配列番号:116のアミノ酸配列を含む。さらに別の実施態様において、HCVRは、その中に2又は1個の保存的アミノ酸置換を有する配列番号:116のアミノ酸配列を含む。一実施態様において、LCVRは、その中に10個又はそれより少ない保存的アミノ酸置換を有する配列番号:118のアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、LCVRは、その中に8個又はそれより少ない保存的アミノ酸置換を有する配列番号:118のアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、LCVRは、その中に6個又はそれより少ない保存的アミノ酸置換を有する配列番号:118のアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、LCVRは、その中に4個又はより少ない保存的アミノ酸置換を有する配列番号:118のアミノ酸配列を含む。さらに別の実施態様において、LCVRは、その中に2又は1個の保存的アミノ酸置換を有する配列番号:118のアミノ酸配列を含む。
【0031】
「効力を消す」又は「阻止する」抗体とは、Dll4へ結合するとDll4の生物学的活性の阻害する抗体に相当するものとする。Dll4の生物学的活性のこの阻害は、Dll4生物学的活性の1つ又はそれ以上の指示薬(indicators)を測定することによって評価することができる。Dll4生物学的活性のこれらの指示薬は、当分野で知られているいくつかの標準的なインビトロ又はインビボアッセイの1つ又はそれ以上によって評価することができる。例えば、Dll4活性の効力を消す抗体の能力は、Notch受容体へのDll4結合の阻害によって評価される。
【0032】
「特異的に結合する」又は同様の用語は、抗体又はその抗原結合性フラグメントが生理学的状条件下で比較的安定である、抗原との複合体を形成することを意味する。特異的結合は、少なくとも約1×10-6M又はそれ未満の平衡解離定数(例えば、Kが小さいほど、より緊密な結合を表す)を特徴とすることができる。2つの分子が特異的に結合するかどうかを測定する方法は、当分野でよく知られており、そして、例えば、平衡透折、表面プラスモン共鳴及び同様のものが含まれる。しかしながら、hDll4を特異的に結合する単離された抗体は、他の種からのDll4分子のような他の抗原に対する交差反応性を示すことがありうる。それにもかかわらず、hDll4及び1つ又はそれ以上のさらなる抗原に結合する多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体(bispecifics))は、さらに本明細書に用いられるように、hDll4「を特異的に結合する」抗体とみなされる。
【0033】
本明細書に用いられる「K」という用語は、特定の抗体−抗原相互作用の解離定数に相当するものとする。
【0034】
「高親和性」抗体という用語は、例えば、単量体Dll4を用いて表面プラスモン共鳴、例えば、BIACORETM又は溶液親和性ELISAで測定して、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未満、又は約200pM未満のK;又は二量体Dll4を用いて表面プラスモン共鳴で測定して約100pM未満、約50pM未満、又は約20pM未満のKでDll4を結合するそれらの抗体のことである。
【0035】
本明細書に用いられる「表面プラスモン共鳴」という用語は、例えばBIACORETMシステム(Pharmacia Biosensor AB, Uppsala, Sweden and Piscataway, N.J.)を用いてバイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度における変化を検出することによってリアルタイム生物特異性相互作用の分析を可能にする光学現象のことである。
【0036】
「エピトープ」という用語は、抗体によって結合される抗原の領域である。エピトープは、構造的に又は機能的に定義してもよい。機能性エピトープは一般に構造性エピトープのサブセットであり、そして相互作用の親和性に直接関与するそれらの残基を有する。また、エピトープは、立体配置的(conformational)であってもよく、すなわち、非線形アミノ酸で構成される。ある実施態様において、エピトープは、分子の化学的に活性な表面群である決定要素、例えばアミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基又はスルホニル基を含んでもよく、そしてある実施態様において、特定の三次元構造特性及び/又は特定の電荷特性を有してもよい。
【0037】
化学療法剤は、がんの治療に有用な化学化合物であり、そして成長抑制剤又は他の細胞毒性剤が含まれる。本方法において用いることができる化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標));スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa);アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスファオルアミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチルオロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン及びメチラメラミン(methylamelamines);ナイトロジェンマスタード、例えばクロランブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロルエタミン、塩酸メクロルエタミンオキシド、メルファラン、ノブエンビキン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素(nitrosureas)、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えばアクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、プロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート及び5−FU;葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;
抗副腎剤(anti-adrenals)、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充液、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2''−トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド又はタキサンファミリーのメンバー、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標), Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標); Aventis Antony, フランス)及びそれらの類似体;クロランブシル;ゲムシタビン;チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラマイシン;カペシタビン;ソラフェニブ(Bayer Pharmaceuticals Corp.によるNEXAVAR(登録商標))、スニチニブ(PfizerによるSUTENT(登録商標))、パゾパニブ(GlaxoSmithKlineによるVOTRIENT(登録商標))、トセラニブ(toceranib)(PfizerによるPALLADIATM)、バンデタニブ(AstraZenecaによるZACTIMATM)、セジラニブ(AstraZenecaによるRECENTIN(登録商標))、レゴラフェニブ(regorafenib)(BayerによるBAY73−4506)、アキシチニブ(PfizerによるAG013736)、レストールチニブ(CephalonによるCEP−701)、エルロチニブ(GenentechによるTARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(AstraZenecaによるIRESSA(登録商標))、BIBW 2992(Boehringer IngelheimによるTOVOKTM)、ラパチニブ(GlaxoSmithKlineによるTYKERB(登録商標))、ネラチニブ(Wyeth/PfizerによるHKI−272)、及び同様のものを含む受容体チロシンキナーゼ及び/又は血管形成の阻害剤、並びに上記のすべての薬学的に許容しうる塩、酸又は誘導体が含まれる。また、この定義に含まれるのは、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン(keoxifene)、LY 117018、オナプリストン及びトレミフェン(FARESTON(登録商標))を含む抗エストロゲン;及びフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリンのような抗アンドロゲン;並びに上記のすべての薬学的に許容しうる塩、酸又は誘導体のような腫瘍においてホルモン作用を調節又は阻害する抗ホルモン剤である。また、Wiemann et al., 1985, in Medical Oncology (Calabresi et al.,編), Chapter 10, McMillan Publishingに記載されたもののような他の慣用の細胞毒性の化学化合物も、本発明の方法に適用できる。
【0038】
「成長抑制剤」という用語は、インビトロ又はインビボのいずれかで細胞、特にがん細胞の成長を阻害する化合物又は組成物のことである。成長抑制薬の例としては、(S期以外の箇所で)細胞周期進行を遮断する薬剤、例えばG1期停止及びM期停止を誘導する薬剤が含まれる。典型的なM期遮断剤としては、ビンカス(vincas)(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標))、及びそれらの類似体(例えば、XRP9881及びXRP6258;Ojima et al., Curr Opin Investig Drugs 4:737, 2003を参照)を含むが、それらに限定されるわけではないタキサンファミリーメンバー、並びにトポイソメラーゼ阻害剤、例えばイリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、ラメラリンD、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。また、G1期を停止するそれらの薬剤、例えば、DNAアルキル化剤、例えばタモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロルエタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5−FU及びara−Cは、S期停止にも広がる。
【0039】
一般的な説明
本発明は、特異的にDll4を結合してDll4活性を阻止するDll4アンタゴニスト、例えば、Dll4抗体又はそのフラグメントを、化学療法剤、例えば、シスプラチン又はドセタキセルと共に併用投与すると、いずれか単一の薬剤よりも腫瘍増殖の阻害がより大きくなるという発見に基づく。組換え型のヒトDll4 Abを含む完全ヒトDll4 Abの説明については、国際特許出願公開第WO 2008/076379号を参照のこと。
【0040】
Dll4 Abの製造方法
抗体の製造方法は、当分野で知られている。例えば、Kohler & Milstein (1975) Nature 256:495-497; Harlow & Lane (1988) Antibodies: a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, NY)を参照のこと。マウス、ラット、ウサギ、ウシのようなヒト以外の生物から単離された抗体は、キメラ化又はヒト化を通してよりヒト様(human-like)にすることができる。
【0041】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」又はキメラ形態は、非ヒト免疫グロブリンから誘導された抗原結合に必要な最小限の配列を含む免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はそのフラグメント(例えばFv、Fab、Fab'、F(ab')2又は抗体の他の抗原結合性部分配列)である。それらは、キメラ又はヒト化抗体を作成するための出発物質を提供するマウス又は他の非ヒト抗体として同じ又は類似の結合特異性及び親和性を有する。キメラ抗体は、軽鎖及び重鎖遺伝子が、異なる種に属している免疫グロブリン遺伝子部分から典型的に遺伝子工学によって構成された抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体からの遺伝子の可変(V)部分をヒト定常(C)部分、例えばIgG1及びIgG4に結合してもよい。従って、典型的なキメラ抗体は、マウス抗体からのV又は抗原結合ドメイン及びヒト抗体からのC又はエフェクタドメインからなるハイブリッドタンパク質である。ヒト化抗体は、実質的にヒト抗体からの可変領域フレームワーク残基(受容体抗体と称する)及び実質的にマウス抗体からの相補性決定領域(CDR領域)(ドナー免疫グロブリンと称する)を有する。Queen et al., Proc. Natl. Acad Sci. USA 86:10029-10033 (1989)並びに国際特許出願公開第WO 90/07861号及び米国特許第5,693,762号、同第5,693,761号、同第5,585,089号、同第5,530,101号及び同第5,225,539号を参照のこと。また、定常領域は、存在する場合、実質的に又は完全にヒト免疫グロブリンからである。ヒト可変ドメインは、通常、そのフレームワーク配列が、CDRを誘導するマウス可変領域ドメインと高度の配列同一性を示すヒト抗体から選ばれる。重鎖及び軽鎖可変領域フレームワーク残基は、同一又は異なるヒト抗体配列から誘導することができる。ヒト抗体配列は、自然発生のヒト抗体の配列でもあることもでき、又はいくつかのヒト抗体のコンセンサス配列であることもできる。国際特許出願公開第WO 92/22653号を参照のこと。ヒト可変領域フレームワーク残基からのある種のアミノ酸は、CDRコンフォメーション及び/又は抗原への結合におけるそれらの起こりうる影響に基づく置換のため選ばれる。このような起こりうる影響の試験は、モデリング、特定位置でのアミノ酸の特性試験、又は特定アミノ酸の置換若しくは突然変異誘発の効果の実験的観察によって実施してもよい。例えば、マウス可変領域フレームワーク残基及び選ばれたヒト可変領域フレームワーク残基の間でアミノ酸が異なるとき、アミノ酸が:(1)非共有結合的に直接抗原を結合する;(2)CDR領域に隣接している;(3)別途、CDR領域(例えば、CDR領域の約6Å内にある)と相互作用する、又は(4)VL−VHインターフェイスに加わることを合理的に期待する場合、ヒトフレームワークアミノ酸を、通常、マウス抗体からの同等のフレームワークアミノ酸によって置換しなければならない。置換のための他の候補体は、その位置でヒト免疫グロブリンにとって異なる受容体ヒトフレームワークアミノ酸である。これらのアミノ酸は、マウスドナー抗体の同等の位置から又はより典型的なヒト免疫グロブリンの同等の位置からのアミノ酸で置換することができる。置換のための他の候補体は、その位置でヒト免疫グロブリンにとって異なる受容体ヒトフレームワークアミノ酸である。ヒト化免疫グロブリンの可変領域フレームワークは、通常、ヒト可変領域フレームワーク配列又はこのような配列のコンセンサス(consensus)に対して少なくとも85%の配列同一性で示す。
【0042】
ヒト抗体の生成方法には、例えば、VELOCIMMUNETM(Regeneron Pharmaceuticals)、XENOMOUSETM技術(Abgenix)、「ミニ遺伝子座(minilocus)」アプローチ、及びファージディスプレイが含まれる。VELOCIMMUNETM技術(米国特許第6,596,541号)は、選択抗原に対するヒト高特異性の完全抗体の生成方法を包含する。この技術は、マウスが抗原性刺激に反応してヒト可変領域及びマウス定常領域含む抗体を産生するように内因性マウス定常領域座に対して作動可能に連結された(operably linked)ヒト重鎖及び軽鎖可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスの生成を含む。抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をコードしているDNAを単離し、そしてヒト重鎖及び軽鎖定常領域をコードしているDNAに作動可能に連結した。次いで、完全ヒト抗体を発現することができる細胞中でDNAを発現させる。一実施態様において、細胞は、CHO細胞である。
【0043】
XENOMOUSETM技術 (Green et al., 1994, Nature Genetics 7:13-21)では、重鎖及びカッパ軽鎖座の両方からヒト可変及び定常領域の両方を有するマウスを作成する。代替アプローチでは、外因性Ig遺伝子座がIg遺伝子座からの個々の遺伝子の封入(inclusion)を通して模倣される「ミニ遺伝子座」アプローチが利用されている(例えば、米国特許第5,545,807参照)。可変領域をコードしているDNAは、ヒト重鎖及び軽鎖定常領域をコードしているDNAに作動可能に連結して又は連結せずに単離することができる。
【0044】
別法として、ファージディスプレイ又は関連ディスプレイ技術は、Dll4に特異的に結合する抗体、抗体フラグメント、例えば可変ドメイン、及びヘテロメリックFabフラグメントの同定に用いることができる(例えば、米国特許出願公開第2003/0229023号を参照のこと)。
【0045】
好ましい免疫グロブリン(抗体)のスクリーニング及び選択は、当分野に知られているさまざまな方法によって実施することができる。Dll4に特異的なモノクローナル抗体の存在に関する最初のスクリーニングは、例えば、ELISAベースの方法又はファージディスプレイの使用により実施してもよい。第2のスクリーンは、所望のモノクローナル抗体を同定及び選択するために実施するのが好ましい。第2のスクリーニングは、当分野に知られているいずれかの適切な方法で実施してもよい。「Biosensor Modification-Assisted Profiling(「BiaMAP」)と称する1つの好ましい方法が、米国特許出願公開第2004/101920号に記載されている。BiaMAPは、所望の特性を有するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンの迅速同定が可能である。より具体的には、モノクローナル抗体は、抗体:抗原相互作用の評価に基づいて明瞭なエピトープ関連基に分類される。別法として、ELISAベース、ビーズベース、又はBIACORE(登録商標)ベースの競合アッセイは、Dll4の異なるエピトープを結合する結合対の同定に用いることができ、従って、高親和性を有するリガンドを結合するために連携することがある。
【0046】
投与方法
本発明は、Dll4アンタゴニスト、例えばDll4 Ab、及び化学療法剤、例えば抗有糸分裂剤、例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、及び同様のもの(タキサン);白金ベースの化学療法化合物、例えばシスプラチン、カルボプラチン、イプロプラチン、オキサリプラチン、及び同様のもの;ピリミジン類似体、例えば5−Fu、カペシタビン(XELODA(登録商標), Roche)、及び同様のもの;トポイソメラーゼ阻害剤、例えばイリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、ラメラリンD、及び同様のもの;及び/又はアジュバント、例えばロイコボリン(フォリン酸)、及び同様のもの(詳細については、上記の定義の節を参照のこと)を含む薬学的組成物の有効量を対象に投与することを含む治療方法を提供する。
【0047】
Dll4アンタゴニスト及び化学療法剤は、一緒に又は別々に併用投与することができる。別々の投薬製剤を用いる場合、Dll4アンタゴニスト及び化学療法剤は、同時に、又は時間をずらして別々に、すなわち、逐次的に投与することができる。
【0048】
種々の送達システム、例えば、リポソーム中のカプセル化、微小粒子、マイクロカプセル、突然変異体ウイルスを発現することができる組換え型の細胞、受容体介在性エンドサイトーシスが知られており、そして本発明の薬学的組成物を投与するために用いることができる(例えば、Wu and Wu, 1987, J. Biol. Chem. 262:4429 4432参照)。導入方法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、眼内、硬膜外及び経口経路が含まれるが、それらに限定されるわけではない。組成物は、あらゆる経路によって、例えば注入又はボーラス注射によって、上皮又は粘膜皮膚内層(例えば、経口粘膜、直腸及び腸粘膜、など)を通した吸収によって投与してもよく、そして他の生物学的に活性な薬剤と共に投与してもよい。投与は全身性又は局所性であることができる。投与は、急性若しくは慢性(例えば、毎日、毎週、毎月、など)又は他の薬剤と組み合わせることができる。また、例えば吸入器又はネブライザー及びエアロゾル化剤を用いた製剤の使用によって肺投与を用いることができる。
【0049】
皮下送達に関して、ペン送達機器は、本発明の薬学的組成物を送達する際に容易に適用される。このようなペン送達機器は、再使用可能又は使い捨てであることができる。再使用可能なペン送達機器は、一般に、薬学的組成物を含む交換可能なカートリッジを用いる。カートリッジ内の薬学的組成物のすべてが投与され、カートリッジが空になったら、空のカートリッジを容易に捨て、そして薬学的組成物を含む新しいカートリッジで置き換えることができる。次いで、ペン送達機器を再利用することができる。使い捨てのペン送達機器では、交換可能なカートリッジがない。それよりも、使い捨てのペン送達機器は、機器内のリザーバー中に保持された薬学的組成物で予め充填されている。リザーバーから薬学的組成物が空になったら、機器全体を廃棄する。
【0050】
多くの再使用可能なペン送達機器は、本発明の薬学的組成物の皮下送達において適用される。ほんの少し例を挙げれば、例としては、AUTOPENTM(Owen Mumford, Inc., Woodstock, 英国)、DISETRONICTMペン(Disetronic Medical Systems, Burghdorf, スイス)、HUMALOG MIX 75/25TMペン、HUMALOGTMペン、HUMALIN 70/30TMペン(Eli Lilly and Co., インディアナポリス, IN)、NOVOPENTM I、II及びIII(Novo Nordisk, コペンハーゲン, デンマーク)、NOVOPEN JUNIORTM(Novo Nordisk, コペンハーゲン, デンマーク)、BDTMペン(Becton Dickinson, フランクリンレイクス, NJ)、OPTIPENTM、OPTIPEN PROTM、OPTIPEN STARLETTM及びOPTICLIKTM(sanofi-aventis, フランクフルト, ドイツ)、が含まれるが、必ずそれらに限定されるわけではない。本発明の薬学的組成物の皮下送達において適用される使い捨てのペン送達機器の例としては、SOLOSTARTMペン(sanofi-aventis)、FLEXPENTM(Novo Nordisk)、及びKWIKPENTM(Eli Lilly)が含まれるが、必ずそれらに限定されるわけではない。
【0051】
別の実施態様において、活性な薬剤は、ベシクル又はリポソーム中で送達することができる(Langer (1990) Science 249:1527-1533参照)。さらに別の実施態様において、活性な薬剤は、制御放出システムで送達することができる。一実施態様において、ポンプを用いてもよい(前出、Langer (1990)参照)。別の実施態様において、ポリマー物質を用いることができる(Howard et al. (1989) J. Neurosurg. 71:105参照)。本発明の活性剤がタンパク質をコードしている核酸である別の実施態様において、核酸を適切な核酸発現ベクターの一部として構成し、そしてそれが細胞内になるようにそれを投与することによって例えば、レトロウイルスベクター(例えば、米国特許第4,980,286号参照)の使用によって、又は直接注射によって、又は微粒子銃(microparticle bombardment)(例えば、遺伝子銃;Biolistic, Dupont)、若しくは脂質若しくは細胞表面受容体若しくはトランスフェクション剤(transfecting agents)によるコーティングの使用によって、又は核に入ることが知られているホメオボックス様のペプチドへの結合にそれを投与する(例えば、Joliot et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1864-1868参照)、などによって核酸をインビボ投与してそのコードされたタンパク質の発現を促進することができる。別法として、相同組換えによって、核酸を細胞内に導入し、そして発現のため宿主細胞DNA内に組み込むことができる。
【0052】
特定の実施態様において、治療を必要とする領域に本発明の薬学的組成物を局所的に投与することは、望ましいことでありうる;これは、例えば、限定されるわけではないが、手術中の局所注入、局所適用、例えば、注射、カテーテル、又はインプラントによって達成してもよく、前記インプラントは、膜、例えばシアラスティック(sialastic)膜、繊維又は商業的な皮膚代用品を含む多孔性、非多孔性又はゼラチン状の材料である。
【0053】
がん/腫瘍の治療に有効な本発明の活性剤の量は、本説明に基づく標準臨床技術によって決定することができる。さらに、場合によりインビトロアッセイを用いて適量範囲の確認に役立ててもよい。また、処方物中に用いられる正確な用量は、投与経路、及び状態の重症度に左右され、そして医療従事者の判断及び各対象の状況に応じて決定しなければならない。しかし、静脈内投与に適切な投与量範囲は、一般に体重1キログラム当たり約0.2〜30mgの活性化合物である。鼻腔内投与に適した投与量範囲は、一般的には、約0.01pg/kg体重〜1mg/kg体重である。有効用量は、インビボ又は動物モデル試験システムから誘導された用量応答曲線から推定することができる。
【0054】
全身投与では、最初にインビトロアッセイから治療有効用量を推定することができる。例えば、細胞培養で測定されたIC50を含む循環血中の濃度範囲を達成する用量を動物モデルに処方することができる。ヒトにおける有用な用量をより正確に測定するためにこのような情報を用いることができる。また、初回投与量は、当分野でよく知られている技術を用いてインビボデータ、例えば、動物のモデルから推定することもできる。当業者は、動物データに基づいてヒトへの投与を容易に最適化することができる。
【0055】
用量は、投与すべき対象の年齢及びサイズ(例えば、体重又は体表面積)、標的疾患、状態、投与経路、及び同様のものに応じて変化しうる。Dll4アンタゴニストの全身投与では、特に、Dll4抗体について、静脈内投与の典型的な投与量範囲は、約0.01〜約100mg/kg体重、約0.1〜約50mg/kg、又は約0.2〜約10mg/kgの日用量である。皮下投与では、抗体は、少なくとも1日につき1〜5回、1週間につき1〜5回、又は1ヵ月につき1〜5回、少なくとも約25mg/ml、約50mg/ml、約75mg/ml、約100mg/ml、約125mg/ml、約150mg/ml、約175mg/ml、約200mg/ml、又は約250mg/mlの抗体濃度で、約10mg〜約500mg、約20mg〜約400mg、約30mg〜約300mg、又は約50mg〜約200mgで投与することができる。別法として、最初に静脈内注射、続いて連続的皮下投与により抗体を投与することができる。
【0056】
一般に、化学療法剤は、1週間につき50mg/m2〜5000mg/m2の用量範囲で静脈内に又は経口的に用いられるが、投与量範囲は、治療する対象、対象の体重及び年齢、苦痛の重症度、投与のやり方、使用する化学療法剤のタイプ、処方する医師の判断、及び同様のものを含む種々の要因に応じて変化する。治療は、症状が認められる間、又は症状が認められない時でも、断続的に繰り返してよい。また、治療の持続時間は、治療する状態の重症度と同様に、もしあれば、起こりうる副作用に関する対象の耐性レベルに応じて変化してもよく、そして、必要な限り、又は利益があらゆる副作用を上回る限り続けてよい。
【0057】
各薬剤の投与量は、いずれかの薬剤の単独投与と比較して所望の治療効果を達成するのに必要な各薬剤の量が減少する(すなわち、相乗効果を示す)併用療法においてさらに調整してもよい、(以下の実施例1及び2を参照のこと)。
【0058】
また、本発明の併用療法に用いることができる化学療法剤としては、よく知られた化学療法レジメンに用いられるものが含まれる。例えば、FOLFOXは、大腸がん(CRC)を治療するための化学療法レジメンであり、そして5−FU、フォリン酸及びオキサリプラチンの組み合わせである。FOLFIRIは、CRCのための別の化学療法レジメンであり、そして5−FU、フォリン酸及びイリノテカンの組み合わせである。XELOXは、CRCについて第二次化学療法レジメンであり、そしてカペシタビン及びオキサリプラチンの組み合わせである。
【0059】
さらに、化学療法剤及びDll4アンタゴニストの組み合わせによる治療は、原因となるがん/腫瘍に付随する症状を改善及び/又は軽減するために、単独で又はさらなる薬物、例えば他の血管新生阻害剤、例えば、抗VEGF抗体(例えばGenentechによるAVASTIN(登録商標))、VEGF結合融合タンパク質(例えばRegeneron Pharmaceuticalsによるアフリベルセプト)、及び同様のものを含むVEGFアンタゴニスト;並びに他の治療剤、例えば鎮痛剤、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えばCox−2阻害剤、及び同様のものを含む抗炎症剤と組み合わせて提供してもよい。
メトロノミック化学療法
【0060】
メトロノミック化学療法(metronomic chemotherapy)は、化学療法を施す改善されたやり方として現れた。従来の化学療法は、致命的な毒性レベルを生じることなしに可能な最も高い用量として、例えば、最大許容量(MTD)で単回投与又は短期療法で投与されてきた。MTD療法は、連続した治療サイクルの間に2〜3週間の長期中断が必要である。このような化学療法剤の数及びそれらを試験するために行われる多数の臨床試験にもかかわらず、がん患者の人生を回復する又は有意に延長することに関して、進歩はゆるやかである(Kerbel et al., 2004, Nature Reviews Cancer 4:423-436)。
【0061】
メトロノミック化学療法は、薬物を使用しない長期中断なしにMTDよりもかなり下の用量で化学療法剤を頻繁に、毎日でも投与することである。低下された急性毒性に加えて、VEGF阻害剤のような特定の抗血管新生薬と組み合わせて投与したときにメトロノミック化学療法の有効性は、高められうる(前出、Kerbel et al., 2004)。
【0062】
従って、本発明は、Dll4アンタゴニストを化学療法剤と組み合わせて対象に投与することを含み、その際、がんが治療される、それを必要とする対象においてがんを治療するためのメトロノミック化学療法を特徴とする。特定の実施態様において、Dll4アンタゴニスト及び化学療法剤を、比較的短期間、例えば1〜12週間、一緒に又は逐次的に投与し、続いて長期間、例えば6〜24ヵ月にわたって化学療法剤をメトロノミック投与してもよい。
【0063】
薬学的組成物
本発明は、Dll4アンタゴニスト、化学療法剤及び薬学的に許容しうる担体を含む薬学的組成物を提供する。「薬学的に許容しうる」という用語は、連邦政府若しくは州政府の監督機関によって承認された又は動物、そしてより具体的には、ヒトに使用するために米国薬局方(U.S. Pharmacopeia)若しくは他の一般に認められた薬局方に記載されていることを意味する。「担体」という用語は、それと共に治療剤が投与される希釈剤、佐剤、賦形剤又はビヒクルのことである。このような薬学的担体は、落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などのような石油、動物、植物又は合成由来のものを含む水及び油のような無菌液体であることができる。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、イネ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール及び同様のものが含まれる。また、組成物は、所望により、少量の湿潤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含むこともできる。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、持続放出製剤などの形態をとることができる。組成物は、従来の結合剤及び担体、例えばトリグリセリドを用いて坐剤として処方することができる。経口製剤は、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような標準担体を含むことができる。適切な薬学的担体の例は、E.W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences"」に記載されている。
【0064】
好ましい態様において、組成物は、ヒトへの静脈内投与に適応した薬学的組成物として慣用の方法に従って処方される。また、必要な場合、組成物は、可溶化剤及び注射部位の痛みを和らげるためのリドカインのような局所麻酔剤を含んでもよい。組成物を輸液によって投与する場合、組成物は、無菌の薬学的グレードの水又は生理食塩水を含む輸液ボトルを用いて投与することができる。組成物を注射によって投与する場合、投与前に成分を混合してもよいように無菌注射用水又は生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0065】
本発明の活性剤は、中性又は塩形態として処方することができる。薬学的に許容しうる塩としては、遊離アミノ基を用いて形成されたもの、例えば塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、などから誘導されたもの、及び遊離カルボキシル基を用いて形成されたもの、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、第二鉄水酸化物、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導されたものが含まれる。
【0066】
本発明の方法の実施に有用である組成物は、溶液中、懸濁液中、又は両方に本発明の薬剤を含む液体であってもよい。「溶液/懸濁液」という用語は、活性剤の第1の部分が溶液中に存在し、そして活性剤の第2の部分が液体マトリックス(liquid matrix)中の懸濁液中に粒状形態で存在する液体組成物のことである。液体組成物は、水性であってもよく、そしてまた、ゲル剤及び軟膏剤の形態を含む。
【0067】
本発明の方法の実施に有用な水性懸濁液又は溶液/懸濁液は、懸濁化剤として1つ又はそれ以上のポリマーを含んでもよい。有用なポリマーには、架橋されたカルボキシル含有ポリマーのような水溶性ポリマーが含まれる。本発明の水性懸濁液又は溶液/懸濁液は、好ましくは粘稠又は粘膜付着性であり、又はさらにより好ましくは、粘稠及び粘膜付着性の両方である。
【0068】
キット
さらに、本発明は、包装材、容器及び容器内に含まれる薬剤を含む製造又はキットの物品であって、薬剤が少なくとも1つのDll4アンタゴニスト、例えばDll4抗体、及び少なくとも1つの化学療法剤を含み、そして包装材が、がんを治療する若しくは腫瘍増殖を低下若しくは停止させるためにDll4アンタゴニスト及び化学療法剤を用いることができることを示すラベル又は添付文書を含む前記物品を提供する。一実施態様において、Dll4アンタゴニスト及び化学療法剤は、別々の容器中に含まれてもよい;従って、本発明は、その中にhDll4を特異的に結合する抗体又はその抗原結合性フラグメントを含む容器、及びその中に少なくとも1つの化学療法剤を含む1つ又はそれ以上のさらなる容器を含むキットを提供する。
【0069】
実施例
以下の実施例は、本発明の方法及び組成物の製造及び使用方法の完全な開示及び説明を当業者に提供するために記載されており、そして発明者らがそれらの発明とみなすものの範囲を限定しようとするものではない。使用した数(例えば、量、温度、など)に関しては、正確さを確保するように努力したが、多少の実験的な誤差及び偏差が含まれているはずである。特記しない限り、部は、質量部であり、温度は、摂氏温度であり、圧力は、大気圧又はその付近であり、そして図のエラーバー=平均±SEMである。
【0070】
実施例1:シスプラチンと組み合わせた抗hDll4抗体の効果
腫瘍増殖におけるシスプラチン(プラチノール、シス−ジアンミンジクロロプラチナ)と組み合わせた抗Dll4抗体(REGN421)の効果を、ヒト化Dll4タンパク質(ヒト化Dll4 SCIDマウス)を発現する重症複合免疫不全(SCID)マウス中に移植された腫瘍において評価した。マウスDll4遺伝子の全細胞外ドメインを胚幹(ES)細胞中のヒトDll4遺伝子(7kb)の対応する細胞外領域で置き換えることによってヒト化Dll4 SCIDマウスを作った。ホモ接合のhDll4マウスを生成し、そしてSCIDバックグラウンドに飼育した。
【0071】
各マウスに1×106ヒトVM−Cub1腫瘍細胞(膀胱がん細胞)+MATRIGELTM(BD Biosciences, #354234)を皮下(sc)移植した。腫瘍がマウスに確立された後、(150〜200mm3の腫瘍サイズ、移植の約14日後)、腫瘍を測定し、無作為化し、そしてhFc、REGN421、シスプラチン又はREGN421及びシスプラチンの組み合わせで処置した。全45匹のマウスを9群(コホート当たりn=5)に分けた。第1群は、2mg/kgのhFcで皮下(sc)処置し;第2及び第3群は、それぞれ0.5及び2mg/kgのREGN421で皮下処置し;第4及び第5群は、それぞれ0.5及び2mg/kgのシスプラチンで腹腔内(ip)処置し;第6群は、0.5mg/kgのREGN421で皮下及び0.5mg/kgのシスプラチンで腹腔内処置し;第7群は、0.5mg/kgのREGN421で皮下及び2mg/kgのシスプラチンで腹腔内処置し;第8群は、2mg/kgのREGN421で皮下及び0.5mg/kgのシスプラチンで腹腔内処置し;そして第9群は、2mg/kgのREGN421で皮下及び2mg/kgのシスプラチンで腹腔内処置した。REGN421は、14日目に開始して3〜4日毎に投与し、そして全3用量をマウスに与えた。シスプラチンは、14日目に開始して24時間毎に投与し;全4用量をマウスに与えた。
【0072】
単一薬剤として又は併用処置におけるREGN421及びシスプラチンの効果を評価するため、腫瘍サイズにおける変化を記録した。腫瘍増殖、初回REGN421処置の3日前、各REGN421処置日(14、17及び21日目)、そしてその後、腫瘍が約600mm3のサイズに到達するまで3〜4日毎に測定した。インビボ腫瘍サイズは、式(長さ×幅2)/2を用いて算出した(図1及び表1)。
【0073】
【表1】

【0074】
腫瘍増殖阻害、TGIは、対照コホートを安楽死させた日(すなわち、32日目)の処置(T)腫瘍対ビヒクル対照(C)腫瘍の腫瘍サイズにおける差を算出することによって測定した;TGI=[1−(Tfinal−Tinitial)/(Cfinal−Cinitial)]×100。
【0075】
腫瘍増殖遅延、TGDは、各コホートが明記された腫瘍サイズに到達したときの処置(T)腫瘍対対照(C)腫瘍間の日数の差として評価した。本実験の所定の腫瘍サイズは、600mm3であった。
【0076】
結果は、REGN421単独の処置では腫瘍増殖が54%低下したことを示している。シスプラチン単独の処置では、腫瘍増殖が低下した(0.5mg/kg/注射の用量では61%低下;そして2mg/kg/注射の用量では54%低下)。併用処置では、いずれかの単一薬剤処置よりも腫瘍増殖における低下が大きかった(0.5mg/kg/注射シスプラチン+2mg/kg/注射REGN421では104%低下;そして2mg/kg/注射シスプラチン+2mg/kg/注射REGN421では58%低下)。
【0077】
これらの結果は、Dll4遮断剤2mg/kg/注射及びシスプラチン0.5mg/kg/注射で、Dll4遮断剤をシスプラチンと共に組み合わせた腫瘍処置では、いずれかの単一薬剤よりも腫瘍増殖をより大きく阻害することができることを示している。
【0078】
実施例2:シスプラチンと組み合わせた抗hDll4抗体の効果
腫瘍増殖におけるシスプラチンと組み合わせたREGN421の効果を、前記のヒト化Dll4 SCIDマウスに移植された腫瘍において評価した。各マウスに5×106ヒトA549腫瘍細胞(非小細胞肺がん又は「NSCLC」)を皮下(sc)移植した。腫瘍がマウスに確立された後(100〜150mm3の腫瘍サイズ、移植の約29日後)、腫瘍を無作為化し、測定し、そしてhFc、REGN421、シスプラチン又はREGN421及びシスプラチンの組み合わせにより処置した。全36匹のマウスを6群(コホート当たりn=6)に分けた。第1群は、2mg/kgのhFcで皮下処置し;第2群は、2mg/kgのREGN421で皮下処置し;第3及び第4群は、それぞれ2.5及び4.5mg/kgのシスプラチンで腹腔内処置し;第5群は、2mg/kgのREGN421で皮下及び2.5mg/kgのシスプラチンで腹腔内処置し;そして第6群は、2mg/
kgのREGN421で皮下及び4.5mg/kgのシスプラチンで腹腔内処置した。REGN421は、29日目に開始して3〜4日毎に投与し、そして合計3用量をマウスに与えた。シスプラチンは、29日目に開始して24時間毎に投与し、そして全2用量をマウスに与えた。
【0079】
単一薬剤として又は併用におけるREGN421及びシスプラチンの効果を評価するため、腫瘍サイズ(体積)の測定を、初回REGN421処置の3日前に開始し、各薬剤の処置日(29、30、33、36日目)、そしてその後、腫瘍が約600mm3のサイズに到達するまで3〜4日毎に行った。式(長さ×幅2)/2を用いてインビボ腫瘍サイズを算出した。腫瘍増殖における効果を、図2及び表2に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
結果は、REGN421単独で処置すると腫瘍増殖が54%低下することを示している。シスプラチン単独による処置では、腫瘍増殖が低下した(2.5mg/kg/注射の用量では35%低下;そして4.5mg/kg/注射の用量では22%低下)。併用処置では、いずれかの単一薬剤処置よりも腫瘍増殖における低下がより大きかった(シスプラチン2.5mg/kg/注射+REGN421 2mg/kg/注射では69%低下;そしてシスプラチン4.5mg/kg/注射+REGN421 2mg/kg/注射では80%低下)。併用治療では、対照及びいずれかの単一薬剤(p<0.01)と比較して有意に腫瘍増殖が遅れた(シスプラチン2.5mg/kg/注射+REGN421 2mg/kg/注射では21日;そしてシスプラチン4.5mg/kg/注射+REGN421 2mg/kg/注射では26日)。
【0082】
これらの結果は、Dll4遮断剤2mg/kg/注射及びシスプラチン2.5〜4.5mg/kg/注射でDll4遮断剤とシスプラチンとの組み合わせによる腫瘍の治療が、いずれかの単一薬剤よりも腫瘍増殖の阻害を大きくできることを示している。
【0083】
実施例3:ドセタキセルと組み合わせた抗hDll4抗体の効果
腫瘍増殖におけるドセタキセル(TAXOTERE(登録商標))と組み合わせた抗Dll4抗体の効果を重症複合免疫不全(SCID)マウスに移植された腫瘍において評価した。各マウスに、1×106ラットC6腫瘍細胞(グリア芽腫細胞)を皮下(sc)移植した。腫瘍が確立された後(約100〜150mm3の腫瘍サイズ、移植の約13日後)、マウスを、hFc、ドセタキセル、Dll4抗体、又はドセタキセル+Dll4抗体の組み合わせで処理した。これらのマウスはマウスDll4を発現したため、本実験に用いるDll4 Abは、公開された配列(国際特許出願公開WO 2007/143689)に基づいて社内で製造し、そしてREGN 577として表わした。REGN 577は、ヒト及びマウスDll4に結合するが、ヒトDll1及びJAG1を検出可能的に結合するわけではない。全30匹のがんをもった雄マウスを6群(N=5)に無作為化した。第1群は、hFc(25mg/kgで)で皮下、そしてビヒクルで静脈内(iv)処置し;第2群は、5mg/kgのREGN577で皮下処置し;第3群は、4.5mg/kgのドセタキセルで静脈内処置し;第4群は、6mg/kgのドセタキセルで静脈内処置し;第5群は、4.5mg/kgのドセタキセルで静脈内+5mg/kgのREGN577で皮下処置し;第6群は、6mg/kgのドセタキセルで静脈内+5mg/kgのREGN577で皮下処置した。ドセタキセル及び/又はDll4抗体は、同じ日に投与した。動物を1週間につき2回処置し、そして合計3用量を与えた。初回治療日から開始して、腫瘍が約600mm3のサイズに到達してマウスを安楽死させるまで、体重及び腫瘍を週に2回測定した。腫瘍サイズは、式(長さ×幅2)/2を用いて算出した。
【0084】
対照腫瘍は25日目に約600mm3のサイズに到達し、そして収穫した。25日目に、Dll4抗体単独による処置により腫瘍増殖における適度の低下(約44%)を生じたことが結果からわかる。ドセタキセル単独による処置では、腫瘍増殖の低下が生じた(4.5mg/kgの用量では62%低下;そして6mg/kgの用量では70%低下)。併用処置では、対照及びいずれかの単一薬剤処置よりも腫瘍増殖における低下が大きかった(4.5mg/kgドセタキセル+Dll4 Abでは75%低下;そして6mg/kgドセタキセル+Dll4 Abでは81%低下)。TGI及びTGDを測定した(表3)。
【0085】
【表3】

【0086】
これらの結果は、Dll4遮断剤を種々の用量のドセタキセルと共に組み合わせて腫瘍を処置すると、腫瘍増殖をほとんど2倍の長さに遅らせることができ、そしていずれかの単一薬剤よりも腫瘍増殖阻害がより大きかったことを示している。
【0087】
実施例4:ドセタキセルと組み合わせた抗hDll4抗体の効果
腫瘍増殖におけるドセタキセルと組み合わせた抗Dll4抗体の効果(Taxotere(登録商標), sanofi-aventis)を重症複合免疫不全(SCID)マウスに移植された腫瘍において評価した。各マウスに5×106ヒトMDA-MB-231乳房腫瘍細胞をMATRIGELTM(BD Biosciences lot # 84540)と共に「偽同所的に(pseudo-orthotopically)」(乳腺中に皮下#3)移植した。腫瘍がマウスに確立された後(約150〜200mmの腫瘍サイズ、移植の約45日後)、マウスを、hFc、ドセタキセル、Dll4抗体、又はドセタキセル+Dll4抗体の組み合わせで処置した。全25匹の担がんの雄マウスを5群(群当たりN=5マウス)に無作為化した。第1群は、hFc(25mg/kgで)で皮下及びビヒクルで静脈内(iv)処置し;第2群は、5mg/kgのDll4抗体REGN577で皮下処置し;第3群は、4.5mg/kgのドセタキセルで静脈内処置し;第4群は、6mg/kgのドセタキセルで静脈内処置し;第5群は、6mg/kgのドセタキセルで静脈内+5mg/kgのREGN577で皮下処置した。ドセタキセル及び/又はDll4抗体は、同じ日に投与した。動物を1週間につき2回処置し、そして合計3用量を与えた。初回治療日から開始して、マウスを安楽死させるまで、体重及び腫瘍を週に2回測定した。腫瘍が約600mm3のサイズに到達したとき、マウスを安楽死させた。腫瘍サイズは、式(長さ×幅2)/2を用いて算出した。
【0088】
対照腫瘍は、63日目に約600mm3に到達し、そして収穫した。63日目に、ドセタキセル単独での処置により腫瘍増殖に適度の低下が生じたことが結果からわかる(4.5mg/kgの用量では37%低下;そして6mg/kgの用量では52%低下)。Dll4抗体単独による処置により腫瘍増殖における有意な低下が生じたが(約85%低下);一方、併用治療では、腫瘍退縮が生じた(6mg/kgのドセタキセル+Dll4 Abでは105%低下)。TGI及びTGDを測定した(表4)。
【0089】
【表4】

【0090】
ドセタキセル処置単独では、腫瘍増殖における最小限の遅延が生じた(4.5mg/kgの用量では4日;そして6mg/kgの用量では4日)。Dll4抗体単独で処置された腫瘍では、腫瘍増殖が21日遅れた。さらに、併用治療では、対照及びいずれかの単一薬剤処置と比較して腫瘍増殖が遅れた(6mg/kgのドセタキセル+Dll4 Abでは28日;p<0.5)。
【0091】
これらの結果は、MDA−MB−231腫瘍が、ドセタキセル処置単独に対しては穏やかな反応性であるが、抗Dll4抗体による処置に対して非常に感受性であることを示している。Dll4遮断剤とドセタキセルとの組み合わせは、腫瘍増殖をさらに遅らせることができ、そしていずれかの単一薬剤と比較してわずかに腫瘍増殖阻害を改善する(腫瘍退縮)。
【0092】
実施例5:5−FUと組み合わせた抗hDll4抗体の効果
腫瘍増殖における5−FUと組み合わせた抗Dll4抗体(REGN421)の効果をヒト化Dll4 SCIDマウスに移植された腫瘍において評価した。各マウスに、5×106ヒトHCT116腫瘍細胞(CRC)を皮下(sc)移植した。腫瘍がマウスに確立された後(約150mm3の腫瘍サイズ、移植の22日後)、腫瘍を測定し、そして無作為化した。次いで、マウスをhFc、REGN421、5−FU又はREGN421及び5−FUの組み合わせで処置した。全30匹のマウスを6群(コホート当たりn=5)に分けた。第1群は、2mg/kgのhFcで皮下処置し;第2群は、2mg/kgのREGN421で皮下処置し;第3及び第4群は、それぞれ15及び25mg/kgの5−FUで腹腔内処置した;第5群は、2mg/kgのREGN421で皮下及び15mg/kgの5−FUで腹腔内処置し;そして第6群は、2mg/kgのREGN421で皮下及び25mg/kgの5−FUで腹腔内処置した。REGN421は、22日目に開始して3〜4日毎に投与し、そして全3用量をマウスに与えた。5−FUは、22日目に開始して3〜4日毎に投与し、そして全3用量をマウスに与えた。
【0093】
単一薬剤として又は組み合わせにおいてREGN421及び5−FUの効果を評価するため、初回REGN421処置の3日前に開始し、次いで各薬剤処置日(22、26、29日目)に、そしてその後、腫瘍が約600mm3のサイズに到達するまで3〜4日毎に腫瘍サイズ(体積)における変化を測定した。インビボ腫瘍サイズは、式(長さ×幅2)/2を用いて算出した(図3及び表5)。
【0094】
【表5】

【0095】
5−FU処置単独では、腫瘍増殖における最小限の遅延を生じた(全量45mg/kgでは4日;そして全量75mg/kgでは2日)。Dll4抗体単独で処置した腫瘍は、腫瘍増殖が6日遅れた。対照(p<0.043)と比較して、併用治療では、さらに腫瘍増殖が遅れた。
【0096】
実施例6:イリノテカンと組み合わせた抗hDll4抗体の効果
腫瘍増殖におけるイリノテカン(塩酸イリノテカン)と組み合わせが抗Dll4抗体(REGN421)の効果をヒト化Dll4 SCIDマウスに移植された腫瘍において評価した。各マウスに、5×106ヒトHCT116腫瘍細胞を皮下(sc)移植した。腫瘍がマウスに確立された後(約150mm3の腫瘍サイズ、移植の15日後)、腫瘍を測定し、そして無作為化した。次いで、マウスを、hFc、REGN421、イリノテカン又はREGN421及びイリノテカンの組み合わせで処理した。全30匹のマウスを6群(コホート当たりn=5)に分けた。第1群は、2mg/kgのhFcで皮下処置し;第2群は、2mg/kgのREGN421で皮下処置し;第3及び第4群は、それぞれ7.5及び25mg/kgのイリノテカンで腹腔内処置し;第5群は、2mg/kgのREGN421で皮下及び7.5mg/kgのイリノテカンで腹腔内処置し;そして第6群は、2mg/kgのREGN421で皮下及び25mg/kgのイリノテカンで腹腔内処置した。REGN421は、15日目に開始して3〜4日毎に投与し、そして全3用量をマウスに与えた。イリノテカンは、15日目に開始して3〜4日毎に投与し、そして全3用量をマウスに与えた。
【0097】
単一薬剤として又は併用処置におけるREGN421及びイリノテカンの効果を評価するため、初回REGN421処置の3日前に開始し、次いで各薬剤処置日(15、19、22日目)、そしてその後、腫瘍が600mm3のサイズに到達するまで3〜4毎に腫瘍サイズ(体積)における変化を測定した。インビトロ腫瘍サイズは、式(長さ×幅2)/2を用いて算出した。結果を図4及び表6に示す。
【0098】
【表6】

【0099】
イリノテカン処置単独では、腫瘍増殖に遅延を生じた(全量22.5mg/kgでは8日;そして全量75mg/kgでは16日)。Dll4抗体単独で処置された腫瘍では、腫瘍増殖が9日遅れた。併用治療では、抗腫瘍有効性が有意に改善され、そしてさらに、いずれかの単一薬剤処置と比較して腫瘍増殖が遅れた(75mg/kgのイリノテカン+Dll4 Abでは19日;p<0.0001)。
【0100】
実施例7:Colo205腫瘍中のHey1遺伝子発現における抗hDll4抗体の効果
腫瘍中の識別的遺伝子発現における抗hDll4抗体の効果をヒトColo205結腸直腸腫瘍細胞で移植されたヒト化Dll4 SCIDマウスで試験した。簡潔には、雄及び雌のヒト化Dll4 SCIDマウスにマウス当たり2×106Colo205細胞を皮下移植した。腫瘍が約150mm3に到達したとき、マウス(群当たり4匹の動物)を一回量の0.5、5又は15mg/kgのREGN421、又は15mg/kgのhFc対照で処置した。処置後5時間、10時間、24時間、72時間及び7日で腫瘍を切除し、そしてRNA later安定化試薬(Qiagen)中に保存した。RNeasy(登録商標) Midi Kit(Qiagen)を用いて腫瘍RNAを精製した。ミキサーミル中にβ−メルカプトエタノールを含むリシスバッファー(lysis buffer)中で組織をホモジナイズし、カラム上に装填し、そして非結合汚染物を十分に洗浄した。DNase I消化をカラム上で実施し、そしてRNaseを含まない水中にRNAを溶離した。QUICK AMPTM RNA Amplification Kit(Agilent Technologies)を用いてシアニン3(Cy3)−CTPを全RNA500ngからの増幅cRNA中に組み込んだ。次いで、各サンプルからのCy3標識cRNAをマウス及びヒトトランスクリプトームをカバーしているカスタムアレイにハイブリッド形成した。アレイのハイブリッド形成及び洗浄は、製造者のプロトコールに従って実施し、そしてアレイをAgilen Microarrayスキャナ上で走査した。走査されたアレイ画像から、Agilent Feature Extraction Software 9.5を用いてデータを抽出した。
【0101】
対照と処置群の間で識別的に発現された遺伝子を同定するため、チップごとのセンタリング中央値(per-chip median centering)を各サンプルの完全ゲノムプロファイルに適用した。次いで、無作為化分散(random variance)モデルt検定を用いて遺伝子発現値を2群間で比較した(Simon, R.A. et al., 2007, “Analysis of Gene Expression Data
Using BRB-Array Tools”, Cancer Inform 3:11-7)。1.5倍を超える平均差及び2群間でp値<0.05を有するそれらの遺伝子を選択し、そして下行性の倍率変化(descending fold change)をランク付けした。また、包括的試験を実施し、その際、個々のサンプル標識を1000回まで入れ換え、そして遺伝子選択過程を繰り返した。これにより2群間で識別的に発現されたと同定される遺伝子数が単独の機会によって期待されるよりも多いかどうかを決定する。
【0102】
Hey1は、Notch活性化のすぐ下流の標的として同定されたHeyファミリーのメンバーであり、そしてマウス試験においてインビボ腫瘍中のDll4−Notch経路シグナル伝達を阻害するとHey−1 RNAレベルが低下することがわかっている(Noguera-Troise, I et al., 2006, Nature 444(7122):1032-7)。図5に示すように、マイクロアレイを用いた本試験におけるHey1 mRNAレベルの分析は、対照hFc処置マウスと比較してREGN421処置マウスにおけるHey1 mRNAレベルは、処置後10時間で減少が始まったが、処置後72時間及び7日で最も有意に減少した。有意な減少は、0.5mg/kg、すなわち、REGN421で最も低い用量で観察されなかった。これらの結果は、REGN421がNotchシグナル経路を効果的に遮断し、そしてHey1がDll4抗体によるNotchシグナル伝達の阻害の有用な薬力学的マーカーとなりうることを示している。
【0103】
実施例8:第I相における予備的な薬物動態学的試験
REGN421は、現在、ファーストインヒューマン(first-in-human)試験において試験されている。本試験の第1の目的は、将来の有効性試験のためのREGN421の推奨用量を決定することである。第2の目的は、薬物安全性プロファイル、その薬物動態、免疫原性及び薬力学、並びに有効性の予備的証拠を特徴づけることである。本試験では、従来の療法でがんが進行した患者に抗hDll4抗体REGN 421を3週毎に静脈内投与した。試験設計の後に、用量漸増及び用量制限毒性の定義についての標準方法論を続ける。現在まで、7人の患者を、3週毎に0.25mg/kg/用量で治療し、そして6人の患者を、3週毎に0.50mg/kg/用量で治療している。薬物動態学的試験のため、1日目の投薬前、0時間、並びに投薬後1、2、4及び8時間、続いてサイクル1の2、3、4、8及び15日目;そして投薬前、サイクル2以上の1日目の0時間、そして15、30及び60日目における治療後のフォローアップで血液サンプルを採取した。サンプル中のREGN421の血漿/血清レベルを原液の血清サンプル中で2.5μg/mLの定量上限及び0.039μg/mLの定量下限のELISAによって測定した。試験は、1、2、4及び7mg/kg/用量としてプロトコールに定義された、より高い用量を投与する目的で継続中である。
【0104】
0.25mg/kg(7人の患者)及び0.5mg/kg(2人の患者)のREGN421の一回30分のIV注入後に血漿薬物動態学的パラメーターを示している現在入手可能なデータを表7に示す。Cmax:薬物の最大血清中濃度;Tlast:定量化可能な最終薬物濃度までの時間;Clast:定量化可能な最終薬物濃度;AUClast:薬物の最終濃度までの曲線下面積;AUC:全曲線下面積(すなわち、薬物曝露);t1/2Z:終末相半減期;Vss:定常状態の分布体積;CL:薬物除去速度。値は:平均(CV%)、及び[範囲](a:中央値[範囲])である。
【0105】
【表7】

【0106】
表7に示すように、REGN421のピーク血清中濃度は、0.25mg/kgの用量レベルで6.27μg/mL、そして0.50mg/kgの用量レベルで9.88μg/mLの平均値であった。これらの値は、動物の異種移植モデルにおける抗腫瘍活性に関連するREGN421濃度の範囲内にある。
【0107】
REGN421投与前及び投与後24時間に採取された患者の血清サンプルにおいてマイクロアレイ技術を用いてDll4−notchシグナル伝達経路におけるREGN421の薬力学的効果を分析した。結果を表8に示す。
【0108】
【表8】

【0109】
表8に示すように、REGN421投与によるHey−1遺伝子の発現は、すべてのサンプルで、処置前のサンプルと比較して低下した。ヒト化Dll4 SCIDマウスの異種移植腫瘍モデルで観察されたように(上記の実施例7参照)、試験結果は、REGN421がヒトにおけるDll4の生物学的活性を実際に阻害していることを示唆している。
【0110】
実施例9:第I相患者に対するゲムシタビンと組み合わせたDll4 Ab
本試験は、標準療法に対して難治性である又は承認された治療選択肢がない進行性又は転移性がんを有する成人患者で実施する。ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)パフォーマンスステイタススコア0〜2(0〜5のスケール)並びに妥当な腎臓、肝臓及び血液学的検査パラメーターを有する、病理学的、物理的及び放射線学的試験に従って進行性固形悪性腫瘍を有すると診断された患者は、本試験に参加する資格がある。患者は、本試験中に、同時に輸血及び鎮痛剤のような支持的治療を受けることができる。転移性疾患については、患者は以前に化学療法又は生物学的療法を受けていてもよい。患者は、3+3のひな型の逐次投薬コホートに割り当てられる。3人の患者を1つの用量レベルで登録し、そして用量制限毒性(DLT)が生じない場合、次の用量レベルに用量漸増を行う。最初の3人の患者のうちの1人がDLTを経験する場合、3人のさらなる患者をその用量レベルで登録してもよい。最初の3人の患者のうちの2人がDLTを経験する場合、その用量レベルは過度の毒性を有するとみなされ、そして3人のさらなる患者を以前の用量レベルで登録する。患者は、1日目:30分かけて抗Dll4抗体(例えば、REGN421又はREGN281)0.25〜10mg/kgIV+30分かけてゲムシタビン1250mg/m2IV注入及び8日目:30分かけてゲムシタビン1250mg/m2IV注入を受ける。がん進行又は過度の毒性が生じるまで併用レジメンを3週毎に繰り返す。
【0111】
主要エンドポイントは、ゲムシタビンと組み合わせた抗Dll4抗体の安全性、忍容性及び用量制限毒性を評価すること、そして進行性固形悪性腫瘍を有する患者においてゲムシタビンと組み合わせて抗Dll4抗体の最大耐量(MTD)を確認することである。副次エンドポイントとしては、RECIST基準(Eisenhauer et al., 2009, Eur J Cancer 4 5:228-247による)による抗腫瘍活性の説明、ゲムシタビンと組み合わせて与えたときの抗Dll4抗体の薬物動態学的(PK)プロファイルの評価、及び抗Dll4抗体に対する免疫原性の測定が含まれる。疾患寛解は、身体的検査、放射線学的方法(X線、コンピューター断層撮影又は磁気共鳴画像法)用いて評価する。有害事象は、National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE v 4.0, National Cancer InstituteウェブサイトのCancer Therapy Evaluation Program又はCTEPの下で入手可能な)を用いて評価する。血清サンプルを患者から採取して抗Dll4抗体の濃度だけでなく抗Dll4抗体に対する可能な抗体の存在を測定する。
【0112】
実施例10:CRC患者へのDll4 Ab及びFOLFOXの投与
簡潔には、ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)パフォーマンスステイタススコア0〜2(0〜5のスケール)並びに妥当な腎臓、肝臓及び血液学的検査パラメーターを有する病理学的、物理的及び放射線学的試験に従って局所的進行性又は転移性大腸がんを有すると診断された成人患者は、本試験に参加する資格がある。患者は、本試験中に、同時に輸血及び鎮痛剤のような支持的治療を受けることができる。患者は、転移性疾患のため以前に化学療法(又は抗血管新生、若しくは抗EGFR療法)を受けていなくてもよく;それらの疾患のアジュバント治療のための以前のこのような療法は、許されており、そして本試験の登録の少なくとも12ヵ月前に終了していなければならない。患者を1:1の比率で無作為割付けして静脈内FOLFOX化学療法(1日目:オキサリプラチン85mg/m2IV注入及びロイコボリン(フォリン酸)200mg/m2IV注入、続いて2〜4分かけて与えた5−FU400mg/m2IVボーラス、続いて22時間連続注入として5−FU600mg/m2IV。2日目:ロイコボリン200mg/m2IV注入、続いて2〜4分かけて与えた5−FU400mg/m2IVボーラス、続いて22時間連注入として5−FU600mg/m2IV注入)を2週毎にビバシズマブ(AVASTIN(登録商標):血管内皮増殖因子(VEGF)に対するヒト化モノクローナルAb,Genentech)(1日目:10mg/kgIV)、又は1日目に0.25〜10mg/kgの抗Dll4抗体(REGN421)IVと共に、以前に記載された治療と組み合わせて行った。がん進行又は過度の毒性が生じるまで治療を2週毎に繰り返す。
【0113】
主要エンドポイントは、少なくとも部分寛解(RECIST基準(前出、Eisenhauer et al., 2009による)に従って、確認されたがん病変の直径の合計における30%又はより以上の減少)を達成した患者の比率であり、そして副次エンドポイントとしては、腫瘍進行までの期間(time to tumor progression)、及び全生存期間(overall survival)が含まれる。疾患寛解は、身体的検査、放射線学的方法(X線、コンピューター断層撮影又は磁気共鳴画像法)、及び血清中に測定されたがん胎児性抗原(CEA)レベルを用いて評価する。また、有害事象のような他の臨床パラメーターは、National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE v 4.0, 前出)を用いて評価する。患者の血清サンプルを採取して抗Dll4抗体の血清中濃度だけでなく抗Dll4抗体に対する可能な抗体の存在を測定する。
【0114】
実施例11:ドセタキセルと組み合わせたDll4 Abの第II相
本試験は、進行性の手術不能な又は転移性乳がんを有する成人患者で実施した。患者は、以前にアジュバント療法に失敗していてもよい。ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)パフォーマンスステイタススコア0〜2(0〜5のスケールで)並びに妥当な腎臓、肝臓及び血液学的検査パラメーターを有する病理学的、物理的及び放射線学的試験に従って乳がんを有すると診断された患者は、本試験に参加する資格がある。患者は、本試験中に、同時に輸血及び鎮痛剤のような支持的治療を受けることができる。患者は、転移性疾患のため以前に化学療法又は生物学的療法を受けていなくてもよい。患者の適格性を決定するスクリーニング方法を良好に通過した後、患者100人までの一連のコホートを治療する。
患者は、1日目:30分かけて0.25〜10mg/kgの抗Dll4抗体(REGN421)IV+30分かけてドセタキセル75mg/m2IV注入を受ける。がん進行又は過度の毒性が生じるまで併用レジメンを3週毎に繰り返す。
【0115】
主要エンドポイントは、RECIST基準(Eisenhauer et al., 2009, Eur J Cancer 4 5:228-247による)に従って腫瘍奏効率(tumor response rate)、及び無憎悪期間(time to disease progression)に基づいて治療の有効性を評価することである。副次エンドポイントとしては、ドセタキセルと組み合わせて与えたときの抗Dll4抗体の安全性及び薬物動態学的(PK)プロファイルの説明、並びに抗Dll4抗体に対する免疫原性の測定が含まれる。疾患寛解は、身体的検査、放射線学的方法(X線、コンピューター断層撮影又は磁気共鳴画像法)用いて評価する。有害事象は、National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE v 4.0, National Cancer InstituteウェブサイトのCancer Therapy Evaluation Program又はCTEPの下で入手可能な)を用いて評価する。血清サンプルを患者から採取して抗Dll4抗体の濃度だけでなく抗Dll4抗体に対する可能な抗体の存在を測定する。
【0116】
実施例12:シスプラチン/ゲムシタビンを用いたDll4 Abの第II相試験
本試験は、進行性の手術不能な又は転移性膀胱がんを有する成人患者で実施する。ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)パフォーマンスステイタススコア0〜2(0〜5のスケールで)並びに妥当な腎臓、肝臓及び血液学的検査パラメーターを有する、病理学的、物理的及び放射線学的試験により浸潤性膀胱がんを有すると診断された患者は、本試験に参加する資格がある。患者は、本試験中に、同時に輸血及び鎮痛剤のような支持的治療を受けることができる。患者は、転移性疾患のため以前に化学療法又は生物学的療法を受けていなくてもよい。患者の適格性を決定するスクリーニング方法を良好に通過した後、患者100人までの一連のコホートを治療する。患者は、1日目に30分かけて0.25〜10mg/kgの抗Dll4抗体(REGN421)IV+1、8及び15日目に30〜60分かけてゲムシタビン1,000mg/m2+2日目にシスプラチン70mg/m2を受ける。がん進行又は過度の毒性が生じるまで併用レジメンを4週毎に繰り返す。主要エンドポイントは、RECIST基準(Eisenhauer et al., 2009, Eur J Cancer 4 5:228-247による)に従って腫瘍奏効率、及び無憎悪期間に基づいて治療の有効性を評価することである。副次エンドポイントとしては、ドセタキセルと組み合わせて与えた時の抗Dll4抗体の安全性プロファイル及び薬物動態学的(PK)プロファイルの説明並びに抗Dll4抗体に対する免疫原性の測定が含まれる。疾患寛解は、身体的検査、放射線学的方法(X線、コンピューター断層撮影又は磁気共鳴画像法)用いて評価する。有害事象は、National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE v 4.0, National Cancer InstituteウェブサイトのCancer Therapy Evaluation Program又はCTEPの下で入手可能な)を用いて評価する。血清サンプルを患者から採取して抗Dll4抗体の濃度だけでなく抗Dll4抗体に対する可能な抗体の存在を測定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学療法剤と組み合わせて投与することによって対象におけるがんの治療又は腫瘍増殖の低下若しくは停止に使用するためのヒトデルタ様リガンド4(hDll4)に特異的に結合する単離されたヒト抗体又はその抗原結合性フラグメントであって、それぞれ配列番号:22、24及び26の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含んでなる重鎖可変領域(HCVR)、並びにそれぞれ配列番号:30、32及び34の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含んでなる、上記ヒト抗体又はその抗原結合性フラグメント。
【請求項2】
抗体又は抗原結合性フラグメントが、配列番号:20若しくは配列番号:116のHCVR配列、又は配列番号:28若しくは配列番号:118のLCVR配列を含んでなる、請求項1に記載のヒト抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項3】
前記抗体又は抗原結合性フラグメントが配列番号:20/28又は116/118のHCVR/LCVRの組み合わせを含んでなる、請求項1に記載のヒト抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項4】
化学療法剤が、抗有糸分裂剤、白金ベースの化学療法剤、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、ピリミジン類似体、トポイソメラーゼ阻害剤、及びアジュバントからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒト抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項5】
抗有糸分裂剤が、ドセタキセル又はパクリタキセル;又はその薬学的に許容しうる類似体若しくは塩である、請求項4に記載のヒト抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項6】
白金ベースの化学療法剤が、シスプラチン、カルボプラチン、イプロプラチン、又はオキサリプラチン;又はその薬学的に許容しうる塩である、請求項4に記載のヒト抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項7】
受容体チロシンキナーゼ阻害剤が、ソラフェニブ、スニチニブ、又はパゾパニブ;又はその薬学的に許容しうる塩である、請求項4に記載のヒト抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項8】
ピリミジン類似体が、ゲムシタビン、5−FU、又はカペシタビン;又はその薬学的に許容しうる塩である、請求項4に記載のヒト抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項9】
トポイソメラーゼ阻害剤が、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、又はラメラリンD;又はその薬学的に許容しうる塩である、請求項4に記載のヒト抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項10】
アジュバントが、フォリン酸;又はその薬学的に許容しうる塩である、請求項4に記載のヒト抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項11】
化学療法剤が、5−FU、フォリン酸及びオキサリプラチン;5−FU、フォリン酸及びイリノテカン;カペシタビン及びオキサリプラチン;又はシスプラチン及びゲムシタビンの組み合わせである、請求項4に記載のヒト抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項12】
がんが、卵巣がん、子宮がん、乳がん、肺がん、肝がん、大腸がん、膀胱がん、腎臓がん、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、骨がん、皮膚がん、白血病及び悪性軟部組織肉腫から選ばれる、請求項1〜11のいずれか1項に記載のヒト抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項13】
抗体又は抗原結合性フラグメント及び化学療法剤が、同時又は逐次的投与のためである、請求項1〜12のいずれか1項に記載のヒト抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項14】
請求項1又は4〜11のいずれか1項に定義された化学療法剤と組み合わせてヒト対象に投与するための請求項1〜13のいずれか1項に記載のヒト抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項15】
請求項1〜3のいずれか1項に定義された抗体又はその抗原結合性フラグメント、請求項1又は4〜11のいずれか1項に定義された化学療法剤、及び薬学的に許容しうる担体を含んでなる薬学的組成物。
【請求項16】
請求項1〜3のいずれか1項に定義された抗体又はその抗原結合性フラグメントをその中に含んでなる容器、及び請求項1又は4〜11のいずれか1項に定義された少なくとも1つの化学療法剤をその中に含んでなる1つ又はそれ以上のさらなる容器を含んでなるキット。
【請求項17】
請求項1又は4〜11のいずれか1項に定義された化学療法剤と組み合わせて投与することによって、対象においてがんを治療する又は腫瘍増殖を低下若しくは停止させる際の、請求項1〜3のいずれか1項に定義されたヒト抗体又は抗原結合性フラグメントの使用。
【請求項18】
請求項1又は4〜11のいずれか1項に定義された化学療法剤と組み合わせて投与することによって、対象においてがんを治療する又は腫瘍増殖を低下若しくは停止させる薬剤の製造における請求項1〜3のいずれか1項に定義されたヒト抗体又は抗原結合性フラグメントの使用。
【請求項19】
請求項1〜3のいずれか1項に定義されたヒト抗体又は抗原結合性フラグメントを請求項1又は4〜11のいずれか1項に定義された化学療法剤と組み合わせて対象に投与することを含む、対象においてがんを治療する又は腫瘍増殖を低下若しくは停止させる方法。
【請求項20】
がんが請求項12に定義された通りである、請求項17〜19のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項21】
抗体又は抗原結合性フラグメント及び化学療法剤が、同時又は逐次的投与のためである、請求項17〜20のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項22】
対象がヒト対象である、請求項17〜21のいずれか1項に記載の使用又は方法。
【請求項23】
化学療法剤を、hDll4に特異的に結合する抗体又はその抗原結合性フラグメントと組み合わせて対象に投与することを含んでなる、がん又は腫瘍を有する対象において所望の治療効果を達成するのに必要な化学療法剤の量を減少させる方法であって、抗体又は抗原結合性フラグメントは、請求項1〜3のいずれか1項に定義された通りであり、そして化学療法剤は、請求項1又は4〜11のいずれか1項に定義された通りであり;そして化学療法剤の量は、抗体又は抗原結合性フラグメントがない場合の同じ治療効果に必要な量と比較して減少している、上記方法。
【請求項24】
所望の治療効果を達成するのに必要な化学療法剤の量が、少なくとも20%、又は約30%〜約50%減少する、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−531437(P2012−531437A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517770(P2012−517770)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/039999
【国際公開番号】WO2010/151770
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(597160510)リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】