説明

GUI用デザイン装置、GUIのデザイン方法、およびGUIデザインプログラム

【課題】GUIのガイドラインを顧客層や顧客の属する組織などに合わせて定義でき、正当性を検証することができるGUI用デザイン装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るGUI用デザイン装置2は、少なくとも1つのルール101、評価GUI定義104およびパラメータ計算式102の組み合わせを記憶するGUIガイドラインルール格納手段11と、評価GUI定義に基づいて評価GUI106を表示するGUI提示手段15と、評価GUIに対する複数のユーザの操作内容を記録するGUI操作統計手段16と、GUI操作統計手段に記録された複数のユーザの操作内容およびパラメータ計算式に基づいて、ルールに対応するパラメータ108を算出するGUIガイドラインパラメータ計算手段20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータにおいてGUIのデザインを定義する方法に関し、特に特定のルールに基づいてGUIをデザインする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GUI(グラフィカルユーザインターフェース、Graphical User Interface)によって操作されるOS(オペレーティングシステム)を有するコンピュータは、既に一般的なものである。たとえば米国マイクロソフト・コーポレーションのウィンドウズ(登録商標)シリーズや、米国アップル・コンピュータ社のMac OS(登録商標)シリーズなどが、GUIによって操作されるOSの中で代表的なものである。
【0003】
GUIの設計は、GUIビルダなどのようなデザイン用ソフトウェアによって、GUIを構成する各々の入力部品の部品種別や座標、色・フォント等の属性値、イベント定義などを定義して、ウィンドウ上に配置することによって行われるのが一般的である。
【0004】
アプリケーションソフトを開発する上で、使いやすいGUIを設計することは極めて重要である。そのため、GUIガイドラインをルールとして記述し、その情報を元に、実際に作られたGUIがルールに合致しているかどうかを判断することがよく行われている。
【0005】
なお、GUIの設計について、たとえば以下のような技術が開示されている。特許文献1には、GUI情報記録手段に格納されたGUI情報とルールとの整合を判定するガイドライン自動評価システムが開示されている。特許文献2には、ユーザがGUIを操作した操作履歴を保存して解析し、点数化することによってGUIの操作性を評価するGUI評価システムが開示されている。特許文献3には、ユーザの操作パターンを学習して操作ルールを生成するリモコン装置が開示されている。特許文献4には、標準化された複数の手続きコマンドによって定義され、ユーザの注文に応じてカスタマイズ可能なGUIの作成方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平08−241191号公報
【特許文献2】特開2002−123409号公報
【特許文献3】特開2006−211541号公報
【特許文献4】特開2004−038733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、「使いやすいGUI」とは何かを定義するガイドラインを、客観的なルールとして定義することは困難である。GUIを「使いやすい/使いにくい」などのような主観的表現によって表すことができても、たとえば「○○を○○ピクセル以上にすると使いやすく、それ以下だと使いにくい」などのような定量的な表現で表すことが困難である場合が多いからである。
【0008】
また、GUIの使いやすさには個人差があり、さらに開発しているアプリケーションソフトの対象とする顧客層(年齢、性別、居住地域など)、あるいは顧客の属する組織(たとえば役所、企業など)などにおいても異なる。しかし、前述のようにGUIについてのガイドラインを客観的なルールとして定義することは困難であるので、顧客ごとにガイドラインを変化させることも困難である。特に、開発における技術力が一定水準に達していない者がGUIについてのガイドラインを定義すると、定義されるルールに不備や間違いなどが起こりうる。
【0009】
特許文献1の技術では、設計されたGUIとガイドラインとの整合性を効率的に評価することはできる。しかし、ガイドラインそのものの正当性を評価することはたできない。また、ガイドラインの範囲内で複数の選択肢(たとえば入力部品の種類および配置など)が存在する場合に、それらの選択肢を比較評価して、より適合性の高いものを選択することはできない。
【0010】
特許文献2の技術では、設計されたGUIを実際にユーザが操作することによって、GUIの操作性を評価することはできる。しかし、この技術でも、ガイドラインの範囲内で複数の選択肢が存在する場合に、それらの選択肢を比較評価して、より適合性の高いものを選択することはできない。
【0011】
特許文献3の技術をGUIの操作に適用することを考えた場合も、ユーザの操作パターンを学習してGUIの操作性を向上することはできる。しかしGUIのデザインそのものを評価するものではない。
【0012】
特許文献4の技術では、与えられた一定の範囲でGUIを変更することができる。しかし、それ自体がGUIの操作性を向上させたり評価したりするものではない。
【0013】
以上4つの特許文献、またそれらを組み合わせた技術のいずれも、GUIのガイドラインの定義を容易にする構成、特に顧客層や顧客の属する組織に基づいて最適なガイドラインを定義しやすくする構成を備えていない。さらに、定義されたガイドラインの正当性を検証する構成、特に前述のような複数の選択肢がガイドラインの範囲内に存在する場合に、いずれの選択肢がより適合性が高いかを検証できる構成も備えていない。
【0014】
本発明の目的は、GUIのガイドラインを、顧客層や顧客の属する組織などに合わせて定義でき、定義されたガイドラインの正当性を検証することができる、GUI用デザイン装置、GUIのデザイン方法、およびGUIデザインプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係るGUI用デザイン装置は、少なくとも1つのルールおよびルールに対応する評価GUI定義およびパラメータ計算式の組み合わせを記憶するGUIガイドラインルール格納手段と、評価GUI定義に基づいて評価GUIを表示するGUI提示手段と、評価GUIに対する複数のユーザの操作内容を記録するGUI操作統計手段と、GUI操作統計手段に記録された複数のユーザの操作内容およびパラメータ計算式に基づいて、ルールに対応するパラメータを算出するGUIガイドラインパラメータ計算手段とを有することを特徴とする。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係るGUIのデザイン方法は、コンピュータによってGUIをデザインする方法であって、少なくとも1つのルールおよびルールに対応する評価GUI定義およびパラメータ計算式の組み合わせを記憶するGUIガイドラインルール格納工程と、評価GUI定義に基づいて評価GUIを表示するGUI表示工程と、評価GUIに対する複数のユーザの操作内容を記録するGUI操作統計工程と、GUI操作統計工程で記録された複数のユーザの操作内容およびパラメータ計算式に基づいて、ルールに対応するパラメータを算出するGUIガイドラインパラメータ計算工程とを有することを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明に係るGUIデザインプログラムは、コンピュータによってGUIをデザインするGUIデザインプログラムであって、コンピュータに、少なくとも1つのルールおよびルールに対応する評価GUI定義およびパラメータ計算式の組み合わせを記憶するGUIガイドラインルール格納処理と、評価GUI定義に基づいて評価GUIを表示するGUI表示処理と、評価GUIに対する複数のユーザの操作内容を記録するGUI操作統計処理と、GUI操作統計処理で記録された複数のユーザの操作内容およびパラメータ計算式に基づいて、ルールに対応するパラメータを算出するGUIガイドラインパラメータ計算処理とを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上記したように評価GUIに対する複数のユーザの操作内容を記録してルールに対応するパラメータを算出するように構成しているので、操作内容に基づいて算出されたパラメータにGUIが合致しているか否かを判定できる。これによって、GUIのガイドラインを、顧客層や顧客の属する組織などに合わせて定義でき、定義されたガイドラインの正当性を検証することができるという、従来にない優れたGUI用デザイン装置、GUIのデザイン方法、およびGUIデザインプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の実施の形態におけるGUIデザインプログラム1の構成を説明するブロック図である。コンピュータ2は、GUIデザインプログラム1を実行する制御部3と、GUIを表示するディスプレイ4と、GUIを操作するマウス5およびキーボード6とを備える。制御部3は、CPU、RAM、OSなどによって構成される、コンピュータ2の中枢部分である。なお、コンピュータ2は物理的に1台のコンピュータである必要はなく、ネットワークなどによって相互に接続された複数のコンピュータによって構成することもできる。
【0020】
GUIデザインプログラム1は、GUIガイドラインルール格納手段11と、GUI編集手段12と、GUI定義格納手段13と、GUIガイドラインルール確認手段14と、GUI提示手段15と、GUI操作統計手段16と、クラスター分析手段17と、GUIガイドラインパラメータ格納手段18と、GUIガイドラインルール評価手段19と、GUIガイドラインパラメータ計算手段20から構成されている。
【0021】
GUI提示手段15は、ディスプレイ4にGUIを表示し、マウス5およびキーボード6による操作を受け付ける。
【0022】
GUIガイドラインルール格納手段11は、ルール101と、パラメータ計算式102と、操作統計指定103と、評価GUI定義104とで構成される複数のデータセットを格納する。これらの内容については後述する。
【0023】
GUI定義格納手段13は、複数のGUI定義105を格納する。GUI編集手段12は、GUI定義105を新規作成、およびGUI定義格納手段13から呼び出して編集することができる。GUI定義105は、公知のGUIビルダなどのGUI編集ソフトで利用される、各々の部品の種別、配置、色などの属性値やイベント定義などにより構成される。
【0024】
GUI編集手段12は、GUI定義105を編集している間の任意のタイミングで、GUIガイドラインルール評価手段19を呼び出し、編集中のGUI定義105がGUIガイドラインルール格納手段11に格納されたルール101およびGUIガイドラインパラメータ格納手段18に格納されたパラメータ108に合致するかどうかを判定することができる。ルールに合致しない編集は許可されないか、もしくはエラーとして警告される。GUI編集手段12は、新規作成および編集が終了したGUI定義105を、GUI定義格納手段13に保存する。
【0025】
GUIガイドラインルール確認手段14は、GUI提示手段15を利用して、GUIガイドラインルール格納手段11に格納された評価GUI定義104に従ったGUI(以後評価GUI106という)をディスプレイ4に表示する。ユーザは、表示された評価GUI106を、ディスプレイ4に表示された指示に従ってマウス5およびキーボード6によって操作する。GUI提示手段15は、評価GUI定義104に従って、評価GUI106をディスプレイ4に表示する。
【0026】
GUI操作統計手段16は、GUI提示手段15に表示された評価GUI106に対するユーザの操作のうち、操作統計指定103で指定された内容を記録し、格納する。クラスター分析手段17は、GUI操作統計手段16に格納された情報(以後、操作統計107という)を読み出し、読み出された操作統計107に対してクラスター分析を行う。
【0027】
GUIガイドラインパラメータ格納手段18は、GUIガイドラインパラメータ計算手段20によって計算されたパラメータ108を格納する。GUIガイドラインルール評価手段19は、GUIガイドラインルール格納手段からルール101を、GUIガイドラインパラメータ格納手段18からパラメータ108をそれぞれ読み出し、編集後のGUI定義105がそれらのルール101およびパラメータ108に合致するかどうかを判定する。
【0028】
GUIガイドラインパラメータ計算手段20は、クラスター分析手段17から出力された各クラスターの代表値に、GUIガイドラインルール格納手段11に格納されているパラメータ計算式102をあてはめてパラメータ108の値を計算し、保持する。
【0029】
図2は、図1に示したGUIガイドラインルール格納手段11が格納するルール101のデータ内容の例を示す概念図である。ルール101は、番号201と、コンテキスト202と、部品種別203と、条件204と、パラメータ205を含む。番号201は、登録された全ての条件に対して一意で割り振られる通し番号である。コンテキスト202は、その条件が適用される領域を示す。「任意」を定義すれば、GUI全体にその条件が適用される。あるいは部品名を指定して、特定の部品に対してのみその条件が適用されるようにすることもできる。
【0030】
部品種別203は、コンテキスト202で指定された範囲の中で、さらにその条件が適用される対象となる部品名を指定する。以後、本実施の形態でGUIはHTMLによって構成されるものとすると、コンテキスト202および部品種別203で指定される部品名は、たとえばtextarea(複数行のテキストを入力する領域)、text(1行のテキストを入力する領域)、checkbox(複数選択に使用するボタン)、radio(単一選択に使用するボタン)、select(選択に使用するリストの領域)、option(選択肢)、button(実行に使用するボタン)、form(GUIのグループ)などを選択することができる。なお、本発明はHTML以外の方法によって構成されるGUIにも適用できる。
【0031】
条件204は、部品の存在や個数、部品の属性、他の部品の属性との関係、パラメータ値などを数式・論理式として組み合わせ、評価GUI106が満たすべき条件を表したものである。条件204では、∀および∃の記号を論理式として使用することができる。
【0032】
∀は「全ての」を表し、GUI全体、もしくはコンテキスト202で表された指定コンテキスト内の全ての部品に対して該論理式で表されたルールをチェックし、全ての部品が論理式を満たす場合に限って真とし、それ以外は全て偽とすることを意味する。∃は「存在する」を表し、GUI全体、もしくはコンテキスト202で表された指定コンテキスト内の全ての部品に対しルールをチェックし、1つでもルールが真になった場合全体を真とすることを意味する。
【0033】
パラメータ205は、条件204の式に代入されるパラメータを表す。GUIガイドラインパラメータ格納手段18に格納されるパラメータ108を、パラメータ205に代入することができる。パラメータ205は、数値、文字列、論理値など、任意のデータ型を取ることができる。またパラメータ205に論理値のパラメータを含むことにより、あるルールの有効・無効の指定も可能である。条件204が、パラメータ205を含まない場合もある(図2では、その場合はパラメータ205に「なし」と記載している)。パラメータ205を含まない条件204は、どのような場合にも必ず従う必要がある。
【0034】
図2に記載された例では、番号1の条件(番号201)は、GUI全体の(コンテキスト202)、全ての部品に対して(部品種別203)、整数MARGINをパラメータとして(パラメータ205)、「横並びの部品はMARGINだけ間隔を置く」という条件を定義している(条件204)ことを意味する。
【0035】
番号2の条件(番号201)は、GUI全体の(コンテキスト202)、テキスト部品(text)に対して(部品種別203)、整数TEXTMARGINMINおよび整数TEXTMARGINMAXをパラメータとして(パラメータ205)、「テキスト部品の左側(間隔TEXTMARGINMINからTEXTMARGINMAXの間)にはラベルが存在する」という条件を定義している(条件204)ことを意味する。
【0036】
番号3の条件(番号201)は、フォーム(form)内の(コンテキスト202)、ボタン部品(button)に対して(部品種別203)、パラメータは無しで(パラメータ205)、「form内にはtypeがsubmitであるbuttonが必ず1つ存在する」という条件を定義している(条件204)ことを意味する。
【0037】
番号4の条件(番号201)は、リスト(select)内の(コンテキスト202)、オプションボタン部品(option)に対して(部品種別203)、パラメータは無しで(パラメータ205)、「select内のoptionは2個以上存在する」という条件を定義している(条件204)ことを意味する。「count(部品名)」は特定の部品の個数を示す関数であり、これを論理式の中で使用することもできる。
【0038】
番号5の条件(番号201)は、フォーム(form)内の(コンテキスト202)、チェックボックス(checkbox)およびリスト(select)に対して(部品種別203)、ブーリアン「リスト使用」をパラメータとして(パラメータ205)、「リスト使用が真であれば、複数選択にはリストを使用し、チェックボックスは使用しない。リスト使用が偽であれば、複数選択にはチェックボックスを使用し、リストは使用しない」という条件を定義している(条件204)ことを意味する。
【0039】
図3は、図1で開示した評価GUI106に含まれる入力部品の例を示すイメージ図である。評価GUI106は、図3の(a)はリスト301aとボタン302a、図3の(b)はチェックボックス301bとボタン302bをそれぞれ含む。リスト301aおよびチェックボックス301bは、3個の選択肢を表示している。図3の(a)および(b)のいずれにも、「正しい式を1つ選んで下さい」というメッセージ303が表示されている。
【0040】
ユーザは、リスト301aもしくはチェックボックス301bに示される3個の選択肢の中から1つを選んで、「OK」と書かれたボタン302aもしくは302bをクリックする。3つの選択肢は、いずれも同程度の難易度を有する計算問題であり、正しい計算を表す選択肢はその中の一つだけである。ただし、リスト301aとチェックボックス301bとでは、それぞれ別々の選択肢が示される。
【0041】
なお、評価GUI106を記述するHTMLで、リスト301aは要素名(name)がselection1、チェックボックス301bは要素名(name)がradio1、ボタン302aは要素名(name)がOK1、ボタン302bは要素名(name)がOK2として記述されているものとする。
【0042】
このように評価GUI106に簡単な問題と選択肢を表示して実際にユーザに操作させ、その操作内容を取得して判断する評価方法を、ここでは「GUI例示」という。評価方法には他に「アンケート」もある。これは、図3の(c)に示すように、メッセージ303cを「(A)と(B)とで、どちらの画面がより操作しやすいですか?」などのように、ユーザに直接GUIについての嗜好を問う内容の質問文にし、リスト301cおよびチェックボックス301dの選択肢もそれに対応した内容にするものである。
【0043】
図4は、図3で開示した評価GUI106に対して指定される操作統計指定103の例を示す概念図である。操作統計指定103は、番号351と、対象GUI要素352と、記録対象353とを含む。番号351は、操作統計指定103に登録された全ての条件に対して一意で割り振られる通し番号である。対象GUI要素352は、記録対象353の指定の対象になるGUI要素を表す。記録対象353は、結果353a、回数353b、時間353cの3つのブーリアンを含み、真(○)である記録対象についてGUI操作統計手段16がユーザの操作内容を記録する。偽(×)である記録対象については記録しない。
【0044】
図4の(a)は図3(a)のGUIに対する指定、図4の(b)は図3(b)のGUIに対する指定をそれぞれ表す。図4の(a)で、番号1の条件(番号351)は、GUI要素selection1(リスト301a)に対して(対象GUI要素352)、結果と時間を記録せず、回数を記録する(記録対象353)ことを意味する。番号2の条件(番号351)は、GUI要素OK1(ボタン302a)に対して(対象GUI要素352)、結果と回数を記録せず、時間を記録する(記録対象353)ことを意味する。
【0045】
図4の(b)で、番号1の条件(番号351)は、GUI要素radio1(チェックボックス301b)に対して(対象GUI要素352)、結果と時間を記録せず、回数を記録する(記録対象353)ことを意味する。番号2の条件(番号351)は、GUI要素OK2(ボタン302b)に対して(対象GUI要素352)、結果と回数を記録せず、時間を記録する(記録対象353)ことを意味する。
【0046】
これらの操作統計指定103は、リスト301aもしくはチェックボックス301bが表示された時点を基準として、リスト301aもしくはチェックボックス301bを操作した回数と、ボタン302aもしくは302bが最後に操作された時間を記録するということである。リスト301aもしくはチェックボックス301bの操作回数は通常は1回だけだが、操作に手間取った場合は2回以上操作が記録されることになる。また、ボタン302aもしくは302bが最後に操作された時間が速ければ速いほど、評価GUI106の操作が効率的に素早く行われたことを示す。
【0047】
図5は、図1で開示した操作統計107の例であり、図3で開示した評価GUI106を5人のユーザが操作した結果の例を示す概念図である。図4で示した操作統計指定103に基づいて、5人のユーザのリスト301a(selection1)およびチェックボックス301b(radio1)を操作した回数と、ボタン302a(OK1)もしくは302b(OK2)が最後に操作された時間が、GUI操作統計手段16によって操作統計107として記録されている。
【0048】
この5人による操作結果を、ルール101に対応する以下のパラメータ計算式102に当てはめる。
計算式「selection1:回数 < radio1:回数 && OK1:時間 < OK2:時間」
パラメータ「boolean リスト使用」
【0049】
この式は、図3の(a)に示すリスト301aによるGUIと、図3の(b)に示すチェックボックス301bによるGUIとを比較して、前者を使用した場合が後者と比べて操作ミス回数が少なくかつ操作完了時間も短い場合は前者を使用し、この条件にあてはまらない場合は後者を使用するという判断基準を意味する。判断結果として、前者を使用する場合は真、そうでない場合は偽となるブーリアン「リスト使用」が出力される。
【0050】
図5で示した結果では、番号「1番・3番」の2名にとっては、リスト301aの方がチェックボックス301bと比べて操作性が良く(リスト使用=真)、番号「2番・4番・5番」の3名にとっては、チェックボックス301bの方がリスト301aと比べて操作性が良い(リスト使用=偽)というように、2つのグループに分かれたことがわかる。
【0051】
本実施の形態では、クラスター分析手段17が操作統計107を読み出し、クラスター分析を行って、このようなGUIの操作性に対する嗜好について、複数のクラスター(グループ)に分かれている場合はそのことを検出する。もちろん、図5の例にある5人よりも大幅に多い人数の操作統計107に対してクラスター分析手段17を行うこともできる。
【0052】
これによって、GUIガイドラインパラメータ計算手段20が各々のクラスターに対して代表的な傾向を表すパラメータ108(この場合はブーリアン「リスト使用」が真であるか偽であるか)を発見することができ、それに基づいて各々のクラスターに適したGUIガイドラインを得ることができる。このブーリアン「リスト使用」を、前述の図2の番号5の条件204に代入することにより、編集中のGUI定義105においてリストおよびチェックボックスのうちどちらを使用するかを決定することができる。
【0053】
クラスター分析は公知の技術であり、たとえば特許第3675682号公報に掲載されている手法を利用してもよいし、これ以外の手法を利用してもよい。また実際には、1回の操作入力だけでは1回目よりも2回目の方が早く操作できるなどの可能性もあるので、同一の評価GUI106にあっても順番や選択肢などの異なるものをいくつか同一ユーザに操作させて、それらの結果から統計的手法によって判断することが望ましい。
【0054】
クラスターが発見できない場合は、GUIガイドラインパラメータ格納手段18に格納されるパラメータ108は1セットのみである。クラスター分析手段17によって複数のクラスターが発見された場合は、GUIガイドラインパラメータ格納手段18には複数のパラメータ108が格納される。
【0055】
図6は、図1で開示したGUIガイドラインルール確認手段14の動作を表すアクティビティ図である。処理を開始すると、GUIガイドラインルール確認手段14はGUIガイドラインルール格納手段11からルール101を1つ取得する(ステップS401)。
【0056】
ここで、取得したルール101が「GUI例示」であるか「アンケート」であるかを判断し(ステップS402)、「GUI例示」であればGUIガイドラインルール確認手段14は評価GUI定義104を読み出してディスプレイ4に表示し(ステップS403a)、GUI操作統計手段16がマウス5およびキーボード6によるユーザの操作を受け付ける(ステップS404a)。そしてGUIガイドラインルール確認手段14が、パラメータ108の値を計算する(ステップS405a)。
【0057】
取得したルール101が「アンケート」であるとステップS402で判断された場合も、アンケート画面は評価GUI定義104としてあらかじめ格納されている。GUIガイドラインルール確認手段14はこの評価GUI定義104を読み出してディスプレイ4に表示し(ステップS403b)、GUI操作統計手段16がマウス5およびキーボード6によるユーザからの回答を受け付ける(ステップS404b)。そしてGUIガイドラインルール確認手段14が、クラスター分析手段17およびGUIガイドラインパラメータ計算手段20によって、ユーザの回答からパラメータ108の値を計算する(ステップS405b)。
【0058】
ただし、アンケートの場合は原則として、GUI操作統計手段16はユーザの操作にかかった時間、回数、操作順序などを取得せず、「どちらの画面がより操作しやすいですか?」などの質問に対して入力された回答のみを取得する。GUIガイドラインルール確認手段14はこの回答のみからパラメータ108の値を計算する。なお、「GUI例示」の場合と同じようにユーザの操作にかかった時間、回数、操作順序を取得して、入力された回答の統計と合わせて総合的に判断するようにしてもよい。
【0059】
「GUI例示」と「アンケート」のどちらの場合も、1つのルール101についての処理が終了したら、全てのルール101に対して評価の処理を実施したかどうかを判断する(ステップS405)。評価していないルール101が存在すれば、ステップS401に戻る。全てのルール101が評価されていれば、計算されたパラメータ108をGUIガイドラインパラメータ格納手段18に格納する(ステップS406)。以上で、GUIガイドラインルール確認手段14の動作は終了する。
【0060】
図7は、図1で開示したGUIガイドラインルール評価手段19の動作を表すアクティビティ図である。処理を開始すると、GUIガイドラインルール評価手段19はGUIガイドラインルール格納手段11からルール101を1つ取得し(ステップS501)、取得したルール101に対応するパラメータ108がGUIガイドラインパラメータ格納手段18に存在するか否かを判断する(ステップS502)。パラメータ108が存在していれば、該パラメータ108を取得して(ステップS503)ステップS504に進む。パラメータ108が存在していなければ、そのままステップS504に進む。
【0061】
ここまでのステップが完了した後、GUIガイドラインルール評価手段19は、GUI編集手段12で現在編集されているGUI定義105について、ルール101にパラメータ108とGUI定義105を代入して(ステップS504)、ルール101に適合しているか否かを判断する(ステップS505)。ルール101に適合していなければ、エラー情報を記憶して(ステップS506)ステップS507に進む。ルール101に適合していれば、そのままステップS507に進む。このエラー情報は図7に示される処理が行われている間だけ記憶されていればよいので、コンピュータ2があらかじめ備える一時的記憶手段(図示せず)を利用して記憶するようにすることができる。
【0062】
ここまでのステップが完了した後、GUIガイドラインルール評価手段19はGUIガイドラインルール格納手段11にまだ評価していないルール101があるか否かを判定する(ステップS507)。もし未評価のルールがあれば、ステップS501に戻り処理を繰り返す。未評価のルールがない場合、エラー情報が記憶されているか否かを判定し(ステップS508)、エラーが存在する場合は、GUI定義105を編集中の画面にエラーを表示した(ステップS509)後、編集をキャンセルする(ステップS510)。なお、ユーザの設定により、ステップS510を省略して、エラーを表示するだけにすることもできる。以上で、GUIガイドラインルール評価手段19の動作は終了する。
【0063】
なお、図6〜7の各アクティビティ図に係る各ステップの動作内容は、コンピュータ2の制御部3で動作するプログラムであるGUIデザインプログラム1として実行させるように構成することもできるし、それ以外のプログラムや形態で実行させるように構成してもよい。
【0064】
以上に示したように、本実施の形態では複数のユーザが走査した結果に基づいて、GUIのガイドラインルールのパラメータを調節することができる。従って、利用者にとって最適なGUIガイドラインを構築できる。たとえ構築されたGUIガイドラインがユーザにとって不適切なものであっても、パラメータによってその正当性を検証し、不適切なガイドラインルールを修正することができる。特に、入力部品などで複数の選択肢が存在する場合に、それらの選択肢を比較評価して、より適合性の高いものを選択することが可能となる。
【0065】
また、クラスター分析によって利用者を少数のクラスターに分類し、その各々に対してクラスターを代表するパラメータ値を得ることができるので、各々のクラスターに対して最適なデザインを構築することができる。1つのデザインで利用者全体に対して適したものを考える必要はないので、特に特定の顧客層や顧客の属する組織に基づいて最適なガイドラインを定義することに適している。
【0066】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることは言うまでもないことである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
GUIによって操作されるソフトウェアやウェブサイトなどの画面デザインにおいて幅広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態におけるGUIデザインプログラムの構成を説明するブロック図である。
【図2】図1に示したGUIガイドラインルール格納手段が格納するルールのデータ内容の例を示す概念図である。
【図3】図1で開示した評価GUIに含まれる入力部品の例を示すイメージ図である。
【図4】図3で開示した評価GUIに対して指定される操作統計指定の例を示す概念図である。
【図5】図1で開示した操作統計の例であり、図3で開示した評価GUIを5人のユーザが操作した結果の例を示す概念図である。
【図6】図1で開示したGUIガイドラインルール確認手段の動作を表すアクティビティ図である。
【図7】図1で開示したGUIガイドラインルール評価手段の動作を表すアクティビティ図である。
【符号の説明】
【0069】
1 GUIデザインプログラム
2 コンピュータ
3 制御部
4 ディスプレイ
11 GUIガイドラインルール格納手段
12 GUI編集手段
13 GUI定義格納手段
14 GUIガイドラインルール確認手段
15 GUI提示手段
16 GUI操作統計手段
17 クラスター分析手段
18 GUIガイドラインパラメータ格納手段
19 GUIガイドラインルール評価手段
20 GUIガイドラインパラメータ計算手段
101 ルール
102 パラメータ計算式
103 操作統計指定
104 評価GUI定義
105 GUI定義
106 評価GUI
107 操作統計
108、205 パラメータ
202 コンテキスト
203 部品種別
204 条件

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのルールおよび前記ルールに対応する評価GUI定義およびパラメータ計算式の組み合わせを記憶するGUIガイドラインルール格納手段と、
前記評価GUI定義に基づいて評価GUIを表示するGUI提示手段と、
前記評価GUIに対する複数のユーザの操作内容を記録するGUI操作統計手段と、
前記GUI操作統計手段に記録された複数のユーザの操作内容および前記パラメータ計算式に基づいて、前記ルールに対応するパラメータを算出するGUIガイドラインパラメータ計算手段と
を有することを特徴とするGUI用デザイン装置。
【請求項2】
前記ルールに対応するパラメータを記憶するGUIガイドラインパラメータ格納手段と、
GUIを編集するGUI編集手段と、
前記GUI編集手段で編集中のGUIが前記ルールおよび前記ルールに対応するパラメータに合致するか否かを判定するGUIガイドラインルール評価手段と
を有することを特徴とする、請求項1に記載のGUI用デザイン装置。
【請求項3】
前記評価GUI定義が、複数種類の部品種別と、前記GUIガイドラインパラメータ計算手段によって算出されたパラメータを適用することによって該部品の中から前記GUIのデザインに使用する部品を選択する基準である選択条件を含むことを特徴とする、請求項2に記載のGUI用デザイン装置。
【請求項4】
前記GUI操作統計手段に記録された複数のユーザの操作内容に対してクラスター分析を行うクラスター分析手段を有し、
前記GUIガイドラインパラメータ計算手段が前記クラスター分析手段によって検出されたクラスターの各々に対して前記ルールに対応するパラメータを算出することを特徴とする、請求項2に記載のGUI用デザイン装置。
【請求項5】
コンピュータによってGUIをデザインする方法であって、
少なくとも1つのルールおよび前記ルールに対応する評価GUI定義およびパラメータ計算式の組み合わせを記憶するGUIガイドラインルール格納工程と、
前記評価GUI定義に基づいて評価GUIを表示するGUI提示工程と、
前記評価GUIに対する複数のユーザの操作内容を記録するGUI操作統計工程と、
前記GUI操作統計工程で記録された複数のユーザの操作内容および前記パラメータ計算式に基づいて、前記ルールに対応するパラメータを算出するGUIガイドラインパラメータ計算工程と
を有することを特徴とするGUIのデザイン方法。
【請求項6】
前記ルールに対応するパラメータを記憶するGUIガイドラインパラメータ格納工程と、
GUIを編集するGUI編集工程と、
前記GUI編集工程で編集中のGUIが前記ルールおよび前記ルールに対応するパラメータに合致するか否かを判定するGUIガイドラインルール評価工程と
を有することを特徴とする、請求項5に記載のGUIのデザイン方法。
【請求項7】
前記GUI操作統計工程で記録された複数のユーザの操作内容に対してクラスター分析を行うクラスター分析工程を有し、
前記GUIガイドラインパラメータ計算工程が前記クラスター分析工程によって検出されたクラスターの各々に対して前記ルールに対応するパラメータを算出することを特徴とする、請求項6に記載のGUIのデザイン方法。
【請求項8】
コンピュータによってGUIをデザインするGUIデザインプログラムであって、前記コンピュータに、
少なくとも1つのルールおよび前記ルールに対応する評価GUI定義およびパラメータ計算式の組み合わせを記憶するGUIガイドラインルール格納処理と、
前記評価GUI定義に基づいて評価GUIを表示するGUI提示処理と、
前記評価GUIに対する複数のユーザの操作内容を記録するGUI操作統計処理と、
前記GUI操作統計処理で記録された複数のユーザの操作内容および前記パラメータ計算式に基づいて、前記ルールに対応するパラメータを算出するGUIガイドラインパラメータ計算処理と
を実行させることを特徴とするGUIデザインプログラム。
【請求項9】
前記コンピュータに、
前記ルールに対応するパラメータを記憶するGUIガイドラインパラメータ格納処理と、
GUIを編集するGUI編集処理と、
前記GUI編集処理で編集中のGUIが前記ルールおよび前記ルールに対応するパラメータに合致するか否かを判定するGUIガイドラインルール評価処理と
を実行させることを特徴とする、請求項8に記載のGUIデザインプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−104313(P2009−104313A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274047(P2007−274047)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】