説明

IDタグ内蔵型遊技媒体

【課題】外部からの衝撃が加えられた際に、この衝撃を緩和してIDタグの損傷を防止できるIDタグ内蔵型遊技媒体を提供する。
【解決手段】ID情報が記憶されたIDタグ11と、IDタグ11の周囲を覆設する第1の樹脂材料12と、第1の樹脂材料12よりも弾性係数が大きく、且つ、第1の樹脂材料12の周囲を覆設して円形の平板形状とする第2の樹脂材料13を備える。従って、遊技媒体1の外部に衝撃が加えられた場合には、第2の樹脂材料13により遊技媒体1の変形を少なくし、且つ、第1の樹脂材料12によりIDタグ11に伝達される応力を緩和するので、IDタグ11の損傷を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カジノホール等で使用され、IDタグを内蔵したコインやトークン等の平板形状の遊技媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
カジノホールでは、遊技者が使用するコインやトークン等の遊技媒体を自動識別するために、内部にIDタグを内蔵した平板形状の遊技媒体が用いられている。例えば、遊技機のベット領域内にID読み取り装置を設けて、このベット領域上に載置された遊技媒体内部のIDタグを読み取り、読み取られたIDタグの識別情報を用いることにより、ベット金額やベット枚数を自動認識することができ、また、他のカジノホールのコインが混入した場合には、即時にこれを認識することができる。
【0003】
このような平板形状のIDタグ内蔵型遊技媒体の従来例として、例えば特開2008−33716号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。この特許文献1に記載されたコインは、コイン内部の弾性係数の大きい樹脂材料で構成される基板上に、IDタグを載置する構成としている。そして、読み取り装置よりトリガ信号を出力すると、この内部のIDタグの識別情報が送信され、読み取り装置側でこのコインの識別情報を受信することができる。
【特許文献1】特開2008−33716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した平板形状のIDタグ内蔵型遊技媒体は、多数積み重ねることや、遊技に興奮した遊技者がベット領域上に叩きつける等の行為が行われる場合に、遊技媒体に内蔵されたIDタグが衝撃により損傷することが多々発生し得る。
【0005】
従って、特許文献1におけるIDタグを内蔵したコインは、コイン内部のIDタグが弾性係数の大きい樹脂材料の基板上に設けられているので、外部からの衝撃を受けた場合に、IDタグが損傷し易いという欠点があった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、外部からの衝撃を緩和してIDタグの損傷を防止することができるIDタグ内蔵型遊技媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、ID情報が記憶されたIDタグと、前記IDタグの周囲を覆設する第1の樹脂材料と、前記第1の樹脂材料よりも弾性係数が大きく、且つ、前記第1の樹脂材料の周囲を覆設して平板形状とする第2の樹脂材料と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項1の発明では、IDタグの周囲が例えばエラストマ樹脂やシリコーン系樹脂等の第1の樹脂材料で覆設され、更に、この第1の樹脂材料の周囲がABS樹脂等の第2の樹脂材料で覆設される。そして、第2の樹脂材料は第1の樹脂材料よりも相対的に弾性係数が大きいので、遊技媒体の外部から衝撃を受けた場合の遊技媒体そのものの変形を少なくし、耐衝撃性を高めることができ、その結果、遊技媒体内部のIDタグの損傷を防止することができる。また、第1の樹脂材料は、第2の樹脂材料よりも相対的に弾性係数が小さいので、遊技媒体の外部から衝撃が加えられた場合には、遊技媒体内部のIDタグに伝達する衝撃が第1の樹脂材料により緩和される。従って、多数の遊技媒体が積み重ねられる場合や、遊技媒体が叩きつけられる場合であってもIDタグの損傷を防止することができる。なお、平板形状には、コイン形状、紙幣形状等の種々の形態のものが含まれる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記IDタグを前記第1の樹脂材料でインサート成形することにより成形中間体を得、得られたこの成形中間体を前記第2の樹脂材料でインサート成形することにより前記平板形状の成形体を製造することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明では、IDタグを第1の樹脂材料でインサート成形することにより成形中間体を得、得られたこの成形中間体に更に第2の樹脂材料でインサート成形することにより平板形状の成形体を製造するので、外周部に継ぎ目の無い遊技媒体を製造することができる。遊技媒体に継ぎ目が存在する場合には、外部から衝撃が加えられた場合に、この継ぎ目部分に応力が集中して損傷し易くなる。従って、この継ぎ目を無くすることで、一体性が増して遊技媒体そのものを損傷し難くすることができる。更に、インサート成形を用いずに製造される従来の遊技媒体では、IDタグを位置決めするため遊技媒体内部にリブを固定して設ける必要があり、外部から衝撃が加えられた場合にIDタグの重心が変位して位置決め用のリブとの間でIDタグの損傷が発生し得るが、インサート成形を用いる本願請求項2の発明ではリブそのものが不要となるので、たとえIDタグの重心が外部からの衝撃により変位した場合でもIDタグの損傷を防止することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記IDタグは、ICチップ及びアンテナを備え、前記ICチップ及びアンテナが、前記平面形状の成形体を構成する面のうち、最も面積が大きい主面に平行となる同一平面上に設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明では、IDタグを構成するICチップ及びアンテナが、平面形状の成形体を構成する面のうち、最も面積が大きい主面と平行な同一平面上に設けられるので、外部から衝撃が加えられた場合に生じるせん断応力等により、ICチップとアンテナとが離接することを防止できる。従って、遊技媒体の外部から衝撃が加えられた場合に、遊技媒体内部に設けられるIDタグの損傷を防止することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記ICチップ及び前記アンテナが、一体成形されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明では、ICチップとアンテナとが一体成形されているため、ICチップとアンテナとの接点劣化や機械的なストレスによる不良障害の発生を防止できる。従って、遊技媒体の外部から衝撃が加えられた場合に、遊技媒体内部に設けられるIDタグの損傷を防止できる。また、ICチップとアンテナが一体成形されることにより、IDタグの周囲に第1の樹脂材料を注入する際に、ICチップとアンテナとの間に無理な応力が加えられることを防止でき、IDタグの損傷を防止することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記IDタグはフィルム基板に設けられることを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明では、IDタグがフィルム基板に設けられるので、遊技媒体の外部から衝撃が加えられた場合に、この衝撃により発生する応力がフィルム基板で分散吸収され、IDタグに加えられる応力が緩和されるので、遊技媒体内部に設けられるIDタグの損傷を防止することができる。また、フィルム基板にIDタグが支持されることにより、IDタグの周囲に第1の樹脂材料を注入する際に、IDタグに無理な応力が加えられることを防止でき、IDタグの損傷を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るIDタグ内蔵型遊技媒体は、IDタグの周囲が第1の樹脂材料で覆設され、且つ、この第1の樹脂材料の周囲が第2の樹脂材料で覆設され、全体が平板形状とされる。そして、第2の樹脂材料は第1の樹脂材料よりも弾性係数が大きいので、遊技媒体の外部から衝撃が加えられた場合にはこの衝撃が第1の樹脂材料により緩和され、遊技媒体内部に設けられるIDタグの損傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るIDタグ内蔵型遊技媒体(以下、単に「遊技媒体」という)の構成を示す一部破断斜視図、図2は断面図である。
【0019】
図1、図2に示すように、遊技媒体1は内部にIDタグ11が設けられ、その周囲が第1の樹脂材料12で覆設され、更に、この第1の樹脂材料12の周囲が第2の樹脂材料13で覆設されている。そして、全体が円形の平板形状をなしている。
【0020】
IDタグ11は、後述する図3に示すように、外部に設けられるリーダ・ライタモジュール41との間で通信を行うためのICチップ21、及びアンテナコイル22を備えている。ICチップ21、及びアンテナコイル22は、シリコンウェハに一体化されて設けられており、例えば一辺が2.5[mm]程度の矩形状をなしている。
【0021】
第1の樹脂材料12は、例えばエラストマ樹脂、シリコーン系樹脂、弾性ゴム等の材料が用いられる。そして、IDタグ11の周囲を第1の樹脂材料12で覆設して、円形の平板形状をなす成形中間体61を形成する。
【0022】
第2の樹脂材料13は、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアーマロイ、エンジニアリングプラスチック等の、第1の樹脂材料12よりも弾性係数が大きい樹脂材料が用いられる。そして、成形中間体61の周囲を第2の樹脂材料13で覆設して、円形の平板形状をなす遊技媒体1を形成する。なお、第1の樹脂材料12、及び第2の樹脂材料13は後述するように、インサート成形により形成することができる。
【0023】
ここで、弾性係数は、変形のしにくさを表す物理量であり、縦弾性係数(記号Eで示す)、或いは横弾性係数(記号Gで示す)で示すことができる。
【0024】
縦弾性係数E(「ヤング率」とも称する)は、材料に加える垂直応力をσとし、材料に生じる歪みをεとした場合に「E=σ/ε」で定義される値である。例えば、第1の樹脂材料12として使用する弾性ゴムの縦弾性係数は、1.5〜5.0×10−4[Pa]程度であり、第2の樹脂材料13として使用するポリエチレンの縦弾性係数は、0.4〜1.3×10[Pa]程度である。
【0025】
従って、第1の樹脂材料12として例えば弾性ゴムを使用し、第2の樹脂材料13として例えばポリエチレンを使用することにより、IDタグ11の周囲が、第2の樹脂材料13よりも相対的に縦弾性係数の小さい第1の樹脂材料12で覆設されて成形中間体61が形成され、更に、この成形中間体61の周囲が、第1の樹脂材料12よりも相対的に縦弾性係数が大きい第2の樹脂材料13で覆設されて、本実施形態に係る遊技媒体1が形成されることになる。
【0026】
横弾性係数G(「ずれ弾性率」、「剛性率」とも称する)は、上記の縦弾性係数E、及びポアソン比γを用いて「G=E/2(1+γ)」で定義される値である。例えば、第1の樹脂材料12として使用する弾性ゴムの横弾性係数は、5〜15×10−5[Pa]程度であり、第2の樹脂材料13として使用するポリエチレンの横弾性係数は、2.6×10[Pa]程度である。
【0027】
従って、第1の樹脂材料12として例えば弾性ゴムを使用し、第2の樹脂材料13として例えばポリエチレンを使用することにより、IDタグ11の周囲が、第2の樹脂材料13よりも相対的に横弾性係数の小さい第1の樹脂材料12で覆設されて成形中間体61が形成され、更に、この成形中間体61の周囲が、第1の樹脂材料12よりも相対的に横弾性係数が大きい第2の樹脂材料13で覆設されて、本実施形態に係る遊技媒体1が形成されることになる。
【0028】
よって、遊技媒体1の周囲から衝撃が加えられた場合には、この衝撃は第1の樹脂材料12よりも変形し難い第2の樹脂材料13に直接作用するので、遊技媒体1の変形を少なくすることができ、また、第2の樹脂材料13よりも変形し易い第1の樹脂材料12がIDタグ11の周囲に設けられるので、第2の樹脂材料13から第1の樹脂材料12を経由してIDタグ11に伝達される衝撃が緩和され、IDタグ11の損傷を防止することができる。
【0029】
図3は、IDタグ11、及び該IDタグ11と通信を行うリーダ・ライタモジュール41の構成を示す回路図である。図3に示すように、IDタグ11は、ICチップ21及びアンテナコイル22から構成されており、全体が一つのシリコンウェハに一体化されて形成されている。ICチップ21は、該ICチップ21が搭載される遊技媒体1の識別情報を記憶するメモリ31、及びコントロール回路32を備えている。メモリ31に記憶される識別情報には、遊技媒体1のユニークID、金額情報、該遊技媒体1が使用されるカジノホールを特定するカジノホール情報等が含まれている。
【0030】
そして、IDタグ11は、外部機器であるリーダ・ライタモジュール41が近接配置され、該リーダ・ライタモジュール41より送信される識別情報の読み取り要求信号を受信した場合には、メモリ31に記憶されている識別情報が、アンテナコイル22を介して外部に送信される。
【0031】
リーダ・ライタモジュール41は、リーダ・ライタコントローラ42と、リーダ・ライタ送受信器43、及びアンテナコイル44を備えており、IDタグ11に記憶されている識別情報を非接触で読み取ることができる。即ち、リーダ・ライタモジュール41は、遊技媒体1に設けられているIDタグ11の識別情報を読み取ることにより、ベット金額やベット枚数を自動認識することができ、また、他のカジノホールのコインが混入した場合には、即時にこれを認識することができることになる。
【0032】
次に、上述した遊技媒体1の製造方法について説明する。本実施形態では、第1のインサート成形工程により、IDタグ11を第1の樹脂材料12でインサート成形して成形中間体61を形成する。更に、成形中間体61の周囲を耐熱樹脂フィルムでコーティングし、その後、第2のインサート成形工程により、成形中間体61を第2の樹脂材料13でインサート成形して平板形状の成形体を製造する。即ち、IDタグ11を第1の樹脂材料12でインサート成形することにより成形中間体61を得、得られたこの成形中間体61を第2の樹脂材料13でインサート成形することにより平板形状の成形体である遊技媒体1を製造する。なお、本実施形態では、第1のインサート成形工程、及び第2のインサート成形工程を行う射出成形装置として、例えば、「(株)名機製作所,M−100A−TS」を使用する。
【0033】
射出成形は、樹脂等の加工法であり、金型に軟化する温度に過熱した樹脂を射出圧を加えて押し込んで型に充填して成形する。金属の金型鋳造法と似ているが、鋳造は金属の融点を超える比較的低粘度液体状態にて低圧で充填されるのに対して、射出成形は比較的低い温度で高圧で成形される。熱可塑性樹脂では、樹脂を高温に溶融させ、低温の金型に入れて固化させる。一般的には、樹脂の融点或いはガラス転移温度より50〜150℃高い温度に過熱される。これは、高分子特有の粘度を低下させるためである。熱可塑性樹脂では、比較的速いサイクルで成形できるという長所を持つ反面、樹脂粘度が高いので、高速、高圧充填を必要とする欠点を持つ。
【0034】
図4は、第1のインサート成形工程の処理手順を示すフローチャート、図5は第1のインサート成形工程を模式的に示す説明図、図6は、第2のインサート成形工程の手順を示すフローチャート、図7は第2のインサート成形工程を模式的に示す説明図であり、図4〜図7を参照して、第1のインサート成形工程、第2のインサート成形工程の処理手順について説明する。まず、図4に示すフローチャート及び図5に示す説明図を参照して、第1のインサート成形工程について説明する。
【0035】
図5(a)は、前述した射出成形装置を模式的に示す説明図であり、同図に示すようにこの射出成形装置は、固定板71の上面にコア72が設けられ、更に、固定板71の上方に設けられた可動板73の下面に、断面「コ」字形状をなす第1の金型74が設けられて、コア72と対向配置されている。そして、図示しない駆動機構により可動板73が上下方向に移動可能とされている。また、第1の金型74には第1の樹脂材料12を溶融して第1の金型74のキャビティ内に注入する射出機75が設けられている。更に、コア72の底面にはIDタグ11を支持するための2本の支持ピン76が設けられている。なお、図5(b)〜(d)では、射出機75を省略している。
【0036】
まず、第1のインサート成形工程を実行する前の初期操作として、射出成形装置の予備乾燥を行う。例えば、射出成形装置全体を80℃の雰囲気下で4時間乾燥させる。その後、射出機75の温度を230℃程度まで昇温する。
【0037】
そして、図4のステップS11では型開きを実行する。即ち、図5(b)に示すように可動板73を上昇させて、第1の金型74をコア72から離接させる。
【0038】
ステップS12では、図5(b)に示すように、コア72の底面に設けられた2本の支持ピン76にIDタグ11をセットする。
【0039】
ステップS13では、図5(c)に示すように、可動板73を下降させて型締めする。
【0040】
ステップS14では、射出機75により第1の金型74のキャビティ内に第1の樹脂材料12を注入する。
【0041】
第1の樹脂として、例えば、上述した弾性ゴムを用いる場合には、射出成形温度100〜125[℃]で射出機75からキャビティ内に第1の樹脂を注入する。この際、IDタグ11に設けられるICチップ21及びアンテナコイル22は一つのシリコンウェハに一体化されて成形されているので、第1の樹脂材料12が注入された場合でも、ICチップ21とアンテナコイル22の間に無理な力が加えられることがなく、IDタグ11の損傷を防止できる。
【0042】
ステップS15では、第1の金型74を冷却し、図5(d)に示すように可動板73を上昇させる。そして、コア72上に形成された第1の樹脂材料12で覆設された成形中間体61を取り出す。その結果、図5(e)に示すように、IDタグ11が第1の樹脂材料12でインサート成形された成形中間体61が形成される。
【0043】
次いで、成形中間体61の周囲を耐熱樹脂フィルムでコーティングする。この工程では、成形中間体61の周囲に、例えば融点が390℃程度の熱可塑性ポリイミド樹脂等のフィルムを用いて成形中間体61を被覆・焼成する。
【0044】
なお、第1の樹脂材料12としては、高温耐久性が強く、融点が約300℃のシリコンゴムや、フッ素ゴム(FR)、ブチルゴム(IIR)やクロロスルフォン化ポリエチレンゴム(CSM:ハイパロン(デュポン社製、商品名))、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等の第2の樹脂材料13よりも射出成形温度が高い樹脂を使用することが好ましい。これらを用いることにより、このコーティング工程を省略することができる。
【0045】
次に、図6に示すフローチャート、及び図7に示す説明図を参照して、第2のインサート成形工程について説明する。
【0046】
図7(a)は、第2のインサート成形工程で使用する射出成形装置の構成を模式的に示す説明図である。図7(a)に示すように射出成形装置は、固定板91の上面にコア92が設けられ、更に、固定板91の上方に設けられた可動板93の下面に、断面「コ」字形状をなす第2の金型94が設けられて、コア92と対向配置されている。そして、図示しない駆動機構により可動板93が上下方向に移動可能とされている。また、前述の図5(a)に示した射出機75と同様に、第2の金型94には第2の樹脂材料13を溶融して第2の金型94のキャビティ内に注入する射出機(図示省略)が設けられている。
【0047】
前述した第1のインサート成形工程と同様に、第2のインサート成形工程を実行する前の初期操作として、射出成形装置の予備乾燥を行う。例えば、射出成形装置全体を80℃の雰囲気下で4時間乾燥させる。また、射出機の温度を230℃程度まで昇温する。
【0048】
そして、図6のステップS31において、型開きを実行する。即ち、図7(a)に示すように可動板93を上昇させて、第2の金型94をコア92から離接させる。更に、ステップS32では、コア92の底面に設けられた2本の支持ピン96に成形中間体61をセットする。
【0049】
ステップS33では、図7(b)に示すように、可動板93を下降させて型締めし、その後、ステップS34では、射出機75により第2の金型94のキャビティ内に第2の樹脂材料13を注入する。
【0050】
第2の樹脂として、例えば、上述したポリエチレンを用いる場合には、射出成形温度180〜260[℃]で射出機75からキャビティ内に第2の樹脂を注入する。この際、成形中間体61は、耐熱樹脂フィルムでコーティングされているので、成形中間体61が過熱状態となって変形することを回避できる。
【0051】
ステップS35では、第2の金型94を冷却し、図7(c)に示すように可動板93を上昇させる。そして、コア92上に形成された平板形状の成形体である遊技媒体1を取り出す。その結果、図7(d)に示すように、成形中間体61が第2の樹脂材料13でインサート成形された遊技媒体1が形成されることになる。
【0052】
なお、第1のインサート成形工程で支持ピン76を使用することにより、第1のインサート成形後の第1の樹脂材料12(成形中間体61)に、支持ピン76の形状が貫通孔として残存する場合がある。同様に、第2のインサート成形工程で支持ピン96を使用することにより、第2のインサート成形後の第2の樹脂材料13(遊技媒体1)に、支持ピン96の形状が貫通孔として残存する場合がある。しかし、これらの貫通孔は極めて小さく人間の目に見えない程度の大きさであるので、強度が低下することや美観を損なうことはない。
【0053】
次に、本実施形態の変形例について説明する。上述した実施形態では、IDタグ11を構成するICチップ21及びアンテナコイル22を1つのシリコンウェハに形成して一体化する例について説明したが、変形例ではIDタグをフィルム基板上に実装する構成とする。以下、詳細に説明する。
【0054】
図8は、変形例に係る遊技媒体51に設けられるIDタグ54を示す平面図、図9は変形例に係る遊技媒体51の断面図である。図8に示すように、IDタグ54は、可撓性を有する矩形状のフィルム基板55上にICチップ52を実装し、更に該ICチップ52の周囲にアンテナコイル53を渦巻き状に実装して構成されている。ICチップ52とアンテナコイル53は同一のフィルム基板55上に実装されるので、同一の平面上に設けられることになる。
【0055】
ICチップ52及びアンテナコイル53が実装されたフィルム基板55の上面には、カバーシート56が積層され、接着剤にてフィルム基板55に固定されている。カバーシート56は、IDタグ54の全体を覆う可撓性シートであり、その材料としては、例えば、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等を用いることができる。該カバーシート56は、インサート成形する際にIDタグ54を保護する役目を果たす。
【0056】
そして、前述の図4のフローチャート及び図5の説明図に示した第1のインサート成形工程の手順と同様の手順でフィルム基板55を第1の樹脂材料12でインサート成形して平板形状の成形中間体61を形成し、更に、図6のフローチャート及び図7の説明図に示した第2のインサート成形工程の手順と同様の手順で成形中間体61を第2の樹脂材料13でインサート成形して円形の平板形状とし、遊技媒体51を形成する。
【0057】
この場合、図5(a)に示す支持ピン76にフィルム基板55取り付ける際に、フィルム基板55をコア72に対して平行となるように取り付ければ、製造される遊技媒体51は、ICチップ52、及びアンテナコイル53が設けられる平面が、遊技媒体51を構成する面のうち、最も大きい主面(遊技媒体51の円形の面)に対して平行に配置されることになる。その結果、外部から衝撃が加えられた場合に生じるせん断力等により、ICチップ52とアンテナコイル53との間に無理な力が加えられることを防止できる。
【0058】
このようにして、本実施形態に係るIDタグ内蔵型遊技媒体1,51は、IDタグ11,54の周囲が第1の樹脂材料12で覆設されて成形中間体61が形成され、更に、この成形中間体61の周囲が第2の樹脂材料13で覆設されて構成される。そして、遊技媒体1,51の外周部分を形成する第2の樹脂材料13が、遊技媒体1,51の内部を構成する第1の樹脂材料12と対比して弾性係数が相対的に大きいので、遊技媒体1,51に対して外部から衝撃が加えられた場合の、遊技媒体1,51そのものの変形を少なくし、耐衝撃性を高めることができる。その結果、遊技媒体1,51の内部に設けられたIDタグ11,54の損傷を防止することができる。
【0059】
また、遊技媒体1,51に加えられた衝撃は、第1の樹脂材料12を経由してIDタグ11,54に伝達されることになり、第1の樹脂材料12は第2の樹脂材料13と対比して相対的に弾性係数が小さいので、衝撃を吸収し易くIDタグ11,54に伝達される衝撃を緩和することができる。その結果、例えば、多数の遊技媒体1,51が積み重ねられる場合や、遊技媒体1,51が叩きつけられる場合、或いは遊技媒体1,51を床面に落とした場合等に受ける衝撃が緩和され、IDタグ11,54の損傷を防止することができる。
【0060】
更に、IDタグ11,54を第1の樹脂材料12でインサート成形することにより成形中間体61を得、得られたこの成形中間体61に、更に第2の樹脂材料13でインサート成形することにより平板形状の成形体を製造するので、外周部に継ぎ目の無い遊技媒体1,51を製造することができる。従来のように、遊技媒体1,51に継ぎ目が存在する場合には、外部から衝撃が加えられた場合に、この継ぎ目部分に応力が集中して損傷し易くなるが、本実施形態に係る遊技媒体1,51では、この継ぎ目を無くすることで一体性が増し、遊技媒体1,51そのものを損傷し難くすることができる。
【0061】
また、従来のようにインサート成形を用いない場合には、IDタグ11,54を位置決めするために、遊技媒体1,51の内部にリブを固定して設ける必要があり、外部から衝撃が加えられた場合にはIDタグ11,54の重心が変位して位置決め用のリブとの間でIDタグ11,54の損傷が発生し得るが、本実施形態のようにインサート成形を用いる場合にはリブそのものが不要となるので、たとえIDタグ11,54の重心が衝撃により変位した場合でもIDタグ11,54の損傷を防止することができる。
【0062】
更に本実施形態では、IDタグ11は、ICチップ21とアンテナコイル22が一体化されて構成されるので、ICチップ21とアンテナコイル22との間の接点劣化や機械的なストレス、経時的な疲労による不良障害の発生を防止できる。また、第1のインサート成形工程により第1の樹脂材料12を注入する際に、IDタグ11に無理な応力が作用することを防止でき、IDタグ11の損傷を防止することができる。
【0063】
また、変形例に係る遊技媒体51では、該遊技媒体51に加えられた衝撃は、第1の樹脂材料12を経由してフィルム基板55に実装されたIDタグ54に伝達されることになり、第1の樹脂材料12は第2の樹脂材料13と対比して相対的に弾性係数が小さいので、衝撃を吸収し易く、フィルム基板55に伝達される応力を緩和することができる。更に、フィルム基板55に伝達する応力は、該フィルム基板55にて分散吸収されるので、IDタグ54に伝達される応力が緩和され、該IDタグ54の損傷を防止することができる。
【0064】
また、IDタグ54を構成するICチップ52、及びアンテナコイル53は同一の平面上に設けられ、更に、この平面が遊技媒体51を構成する面のうち、最も大きい主面に対して平行に配置されるので、外部から衝撃が加えられた場合に生じるせん断力等により、ICチップ52とアンテナコイル53が離接することを防止でき、IDタグ54の損傷を防止することができる。
【0065】
以上、本発明のIDタグ内蔵型コインを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0066】
例えば、上述した各実施形態では、円形で平板形状の遊技媒体を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、紙幣形状の遊技媒体等、種々の形状の遊技媒体に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態に係るIDタグ内蔵型遊技媒体の構成を示す一部破断斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るIDタグ内蔵型遊技媒体の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るIDタグ内蔵型遊技媒体に内蔵されるIDタグの電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るIDタグ内蔵型遊技媒体を製造する際の、第1のインサート成形工程の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係るIDタグ内蔵型遊技媒体を製造する際の、第1のインサート成形工程の手順を模式的に示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るIDタグ内蔵型遊技媒体を製造する際の、第2のインサート成形工程の手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係るIDタグ内蔵型遊技媒体を製造する際の、第2のインサート成形工程の手順を模式的に示す説明図である。
【図8】本発明の変形例に係るIDタグの平面図である。
【図9】本発明の変形例に係るIDタグ内蔵型遊技媒体の断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1,51 IDタグ内蔵型遊技媒体
11,54 IDタグ
12 第1の樹脂材料
13 第2の樹脂材料
21,52 ICチップ
22,53 アンテナコイル
31 メモリ
32 コントロール回路
41 リーダ・ライタモジュール
42 リーダ・ライタコントローラ
43 リーダ・ライタ送受信器
44 アンテナコイル
55 フィルム基板
56 カバーシート
61 成形中間体
71,91 固定板
72,92 コア
73,93 可動板
74 第1の金型
75 射出機
76,96 支持ピン
94 第2の金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ID情報が記憶されたIDタグと、
前記IDタグの周囲を覆設する第1の樹脂材料と、
前記第1の樹脂材料よりも弾性係数が大きく、且つ、前記第1の樹脂材料の周囲を覆設して平板形状とする第2の樹脂材料と、
を備えることを特徴とするIDタグ内蔵型遊技媒体。
【請求項2】
前記IDタグを前記第1の樹脂材料でインサート成形することにより成形中間体を得、得られたこの成形中間体を前記第2の樹脂材料でインサート成形することにより前記平板形状の成形体を製造することを特徴とする請求項1に記載のIDタグ内蔵型遊技媒体。
【請求項3】
前記IDタグは、ICチップ及びアンテナを備え、前記ICチップ及びアンテナが、前記平面形状の成形体を構成する面のうち、最も面積が大きい主面に平行となる同一平面上に設けられることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のIDタグ内蔵型遊技媒体。
【請求項4】
前記ICチップ及び前記アンテナが、一体成形されていることを特徴とする請求項3に記載のIDタグ内蔵型遊技媒体。
【請求項5】
前記IDタグはフィルム基板に設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のIDタグ内蔵型遊技媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−142470(P2010−142470A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324038(P2008−324038)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(598098526)株式会社ユニバーサルエンターテインメント (7,628)
【Fターム(参考)】