説明

IPボタン電話装置

【課題】多種のメディア能力の内線電話機を収容し、内線電話機と音声通信および映像通信をサポートするIP外線との間での最適なメディア能力を自動判定し、最適なメディア能力で通話可能とすること。
【解決手段】IPボタン電話装置100は、多種メディア能力の内線電話機91,92,・・・を収容し、音声通信および映像通信をサポートするIP外線と通話可能とする。CCU1は、内線電話機がIP外線に発信する場合、相手側装置と互いにメディア能力をSIPで交換しながらフォールバックし、通話に最適なメディア能力を選択する。また、CCU1は、IP外線から個別着信または放送着信があった場合、システムデータに従う着信可否判断表をアルゴリズムとして、SIPで相手側装置と互いにメディア能力を交換しながら、通話のメディア能力を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IPボタン電話装置に関し、特に、多種メディア能力の内線電話機を収容し、内線電話機と音声通信および映像通信をサポートするIP外線との間での通話に最適なメディア能力を自動判定し、最適なメディア能力で通話可能とするIPボタン電話装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のIP外線網は、標準音質以外の高音質の音声通信や映像通信をサポートしていない。したがって、IP外線と内線電話機の間に介在するIPボタン電話装置は、標準音質の音声通信だけをサポートしているだけで十分であり、高音質の音声通信や映像通信をサポートする必要はなく、音声および映像能力の自動判定制御を行う必要もない。
【0003】
次世代ネットワーク(NGN)のIP外線網は、高音質の音声通信や映像通信をサポートするものとされている。
【0004】
特許文献1には、通信網上で同一の位置情報を有する複数の着信側通信端末装置と発信側通信端末装置との通信を制御する通信制御装置において、複数の着信側通信端末の位置情報、メディア受信能力情報、優先着信端末情報をそれぞれ格納する手段と、これらの情報を参照して複数の着信側通信端末装置から最適な通信端末装置を選択する着信先端末制御手段を備えることが記載されている。
【特許文献1】特開2005−130287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
NGNのIP外線網は、高音質の音声通信や映像通信をサポートするので、IPボタン電話装置でも、高音質の音声通信、さらには映像通信もサポートする必要がある。
【0006】
NGNでは、IPボタン電話装置に、標準音声だけのメディア能力の内線電話機、標準音質と高音質の2つの音声メディア能力の内線電話機、標準音質だけの音声と映像のメディア能力の内線電話機、標準音質と高音質の2つの音声と映像のメディア能力の内線電話機など、多種メディア能力の内線電話機を収容すると考えられる。
【0007】
また、IPボタン電話装置の着信には、個別着信と放送着信がある。個別着信とは、ダイヤルインでその番号の特定の内線電話機にだけ着信を表示する機能であり、その特定の内線電話機だけが受話できる。
【0008】
一方、放送着信とは、グループ化された複数の内線電話機に対して着信を表示できる機能である。この場合のグループ化される複数の内線電話機は、メディア能力が同じものに限られず、メディア能力が異なるものを含ませてもよい。放送着信に対しては、グループ内の如何なるメディア能力の内線電話機でも受話できる。すなわち、グループを構成する複数の内線電話機のうちの任意のもので受話できる。
【0009】
IPボタン電話装置の内線電話機からIP外線に発信するとき、着信先電話機のメディア能力が予め判っている場合には、発信元内線電話機のメディア能力をそれに合わせることにより通話できる。しかし、着信先電話機のメディア能力が判らない場合もあり、この場合に発信元内線電話機と着信先電話機との間での通話を可能にするためには、互いにあるいは片方で適切なメディア能力を選択して通話できるようにする仕組みが必要となる。
【0010】
また、IP外線からIPボタン電話装置に個別着信があったとき、着信先内線電話機が着信を受けることになるが、発信元電話機が着信先内線電話機と異なるメディア能力を持つ場合にも発信元電話機と着信先内線電話機での通話を可能とするためには、互いにあるいは片方で適切なメディア能力を選択して通話できるようにする仕組みが必要となる。
【0011】
また、IP外線からIPボタン電話装置に放送着信があったとき、グループを構成する複数の内線電話機のうちのいずれかの1台の内線電話機が着信を受けることになるが、複数の内線電話機としては種々のメディア能力を持つものが含まれていることもある。このような状況下で、放送着信をどのように受けるのかの仕組みが必要となる。
【0012】
また、内線電話機では通話を保留して他の内線電話機に転送することが可能である。音声と映像のメディア能力を持つ電話機同士がIP外線経由で音声と映像の通話しているとき、保留操作されて音声のメディア能力しか持たない内線電話機へ転送された場合、転送先内線電話で一時的に不要になった映像をどのように扱うかの仕組みも必要となる。
【0013】
特許文献1に記載されている通信制御装置は、IP電話ネットワークにIP電話サーバとして設けられるものであり、IP電話ネットワーク上の同一の位置情報を有する複数の着信側通信端末の位置情報、メディア受信能力情報、優先着信端末情報をそれぞれ格納するので、ネットワーク全体のシステム構成を考慮する必要がある。また、これは、IP電話ネットワーク上の同一の位置情報(同一の電話番号もしくはID)を有する複数の着信側通信端末から最適な通信端末装置を選択することを可能にするものであり、発信側通信端末装置と着信側通信端末装置とが協働して両者に最適なメディア能力を選択して通信するものではない。
【0014】
本発明の目的は、多種のメディア能力の内線電話機を収容し、内線電話機と音声通信および映像通信をサポートするIP外線との間での最適なメディア能力を自動判定し、最適なメディア能力で通話可能とするIPボタン電話装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は、多種メディア能力の内線電話機を収容し、音声通信および映像通信をサポートするIP外線との通話を可能とするIPボタン電話装置において、SIPで相手側装置と互いにメディア能力を交換しながら、内線電話機と相手側装置とに最適なメディア能力を選択して通話可能とする主制御ユニットを備えたことを特徴としている。
【0016】
また、本発明は、前記主制御ユニットが、内線電話機がIP外線に発信する場合に、相手側装置と互いにメディア能力をSIPで交換しながらフォールバックし、内線電話機と相手側装置とに最適なメディア能力を選択して通話可能とすることを特徴としている。
【0017】
また、本発明は、前記主制御ユニットが、IP外線から内線電話機に個別着信があった場合、IPボタン電話装置に予め設定されたシステムデータに従う着信可否判断表をアルゴリズムとしてSIPで相手側装置と互いにメディア能力を交換しながら、内線電話機と相手側装置とに最適なメディア能力で通話可能とすることを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、前記主制御ユニットが、IP外線から内線電話機に放送着信があった場合、IPボタン電話装置に予め設定されたシステムデータに従う着信可否判断表をアルゴリズムとしてSIPで相手側装置とメディア能力を交換し、着信可能でなければ着信拒否とし、着信可能であれば呼び出し状態にして、グループ化された複数の内線電話機のうちの任意の内線電話機で通話可能とすることを特徴としている。
【0019】
また、本発明は、前記主制御ユニットが、IP外線から内線電話機に映像と音声を含む放送着信が可能である場合の呼び出し状態に対して、映像の能力を持たない内線電話機が受話した場合には、IP外線からの映像パケットを廃棄すると共に、ミュート画像を映像パケットとしてIP外線に送信することを特徴としている。
【0020】
さらに、本発明は、前記主制御ユニットが、IP外線から内線電話機に音声および映像の放送着信があって、IP外線と内線電話機での映像および音声での通話状態から保留操作がなされて音声のメディア能力しか持たない内線電話機へ転送された場合、IP外線からの映像パケットを廃棄すると共に、ミュート画像を映像パケットとしてIP外線に送信することを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、IPボタン電話装置が収容する多種のメディア能力の内線電話機と音声通信および映像通信をサポートするIP外線との間での、IP外線発信時、個別着信時、放送着信時などでの通話に最適なメディア能力を自動判定し、最適なメディア能力を選択して通話可能にすることができる。
【0022】
また、放送着信時、映像通信中であるにも拘わらず映像の能力を持たない内線電話機が受話した場合、ミュート画像を送信することにより、相手側装置に映像が表示されなくなる現象をなくすことができる。
【0023】
また、映像と音声の通話が開始された後、内線電話機で保留操作がなされ、音声のメディア能力だけの内線電話機に転送された場合、ミュート画像を送信することにより、映像通信中であるにも拘わらず相手側装置に一時的に映像が表示されなくなる現象をなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明を説明する。図1は、本発明の一実施形態を示す機能ブロック図であり、ここでは、本発明の説明に不要な構成は図示省略している。
【0025】
本実施形態のIPボタン電話装置100は、外線としてアナログ回線、ナンバーディスプレイ契約回線、網番号ダイヤルイン回線、アナログ専用線、デジタル専用線およびISDN回線などのレガシー(従来型・旧型)外線(TDM外線)のみならず、VoIP回線、NGN(Next Generation Network:次世代ネットワーク)回線(IP外線)を収容する。また、内線電話機として一般アナログ端末、デジタルボタン電話機、ISDN端末、ホテルフォンおよびFAXなどのレガシー端末(TDM内線電話機)のみならず、IPボタン電話機などのIP内線端末(IP内線電話機)を収容し、各外線と各内線電話機との間の通話を制御する。
【0026】
IPボタン電話装置100において、主制御ユニット(CCU:Central Control Unit)1は、1枚の基板に搭載され、主制御ソフトウエアに従ってIPボタン電話装置全体の基本動作の制御(主制御)を行う。また、CCU1は、IP外線、IP内線、TDM外線およびTDM内線とそれらの間(IP内線同士、TDM内線同士を含む。)の呼処理制御を行い、多様な通話を可能とする。主制御ソフトウエアは、IP外線のプロトコルであるSIPを解釈することができ、これによって、IP外線を収容してIP外線の発着信ができるようになっている。
【0027】
TDM系主制御ユニット(TCCU:TDM Central Control Unit)2も、1枚の基板に搭載され、CCU1と制御情報を送受信し、TDM系主制御を行う。この制御は、例えば、TDM外線およびTDM内線の各種専用インターフェース(TDM制御ユニット)の制御を含む。
【0028】
カスタマエッジユニット(CEU:Customer Edge Unit)3は、音声情報と制御情報が多重化されたIP通信を行う高速ブロードバンドルータとしての機能を備える。音声変換ユニット(VCU:Voice Conversion Unit)4は、音声についてのメディア能力が異なる内線電話機に転送されるなどした場合に、通話に選択されたメディア能力および内線電話機のメディア能力に合わせて音声パケットを高音質から標準音質に、あるいはその逆に変換する。また、高音質と標準音質の保留音を保持して保留時に保留音を持たない内線電話機に通話時のメディア能力に合わせて高音質または標準音質の音声パケットを送出する。
【0029】
TCCU2には、ファックス端末81、ホテルフォン端末82、デジタルボタン電話機83、単体電話機84などのレガシー端末(TDM内線電話機)、および一般外線、ISDNネット回線、アナログ専用線、デジタル専用線などのレガシー外線(TDM外線)が、各種専用インターフェース(TDM制御ユニット)およびTDM通信用のTDMバス5を介して接続可能である。TDMバス5は、制御情報を送受信するDチャネルおよび音声情報を送受信するBチャネルを備える。
【0030】
CCU1とTCCU2とは音声情報伝送用LANケーブル8および制御情報伝送用LANケーブル9の2本のLANケーブルで接続される。CCU1とCEU3およびVCU4もLANケーブルで接続される。CCU1にはさらに、LANケーブル10を介して保守用コンピュータ95が接続されると共に、LANケーブル6を介してスイッチングハブ(HUB)7が接続される。HUB7には、専用インターフェースを介してIPボタン電話機91や音声会議装置92が接続され、無線アクセスポイント(AP)にはIPコードレスフォン93が収容され、さらにソフトフォンのアプリケーションが実装されたコンピュータ94が接続される。
【0031】
CCU1は、CPU11、DDRメモリ(RAM)12、フラッシュメモリ13、パケット転送の制御に特化した専用チップ14、挿抜自在のコンパクトフラッシュ(登録商標)(CF)メモリ15およびレイヤ2スイッチ(L2SW)16を主な構成要素としている。専用チップ14は、パケット転送回路として機能するカスタムLSIである。
【0032】
CCU1がパワーオンあるいはリセット(POWERON/RESET)されると、まず、フラッシュメモリ13にあるブートローダ(ソフトウエア)が動作し、CFメモリ15のファイルシステムに格納されているOSをDDRメモリ12にロードし起動する。次にOSがCFメモリ15のアプリケーション(主制御ソフトウエア)をDDRメモリ12にロードし起動する。これにより主制御ソフトウエアが動作するようになる。
【0033】
また、CFメモリ15には、IPボタン電話装置のシステムデータ(設定データ)のデータベース(DB)があり、これは必要に応じて取り出され、DDRメモリ12上の変数に設定される。これにより、IPボタン電話装置は、システムデータに従って動作する。なお、システムデータは、保守用コンピュータ95により設定できる。
【0034】
TCCU2は、CPU21、DDRメモリ22、フラッシュメモリ23、ファイ(PHY)24、TDMバス5のBチャネルを制御するハイウエイスイッチ25、Dチャネルを制御するDch制御信号通信チップ26およびDSP(Digital Signal Processor)27を主な構成要素としている。前記PHY24は、Ethernet(登録商標)(図示せず)の物理層を制御するLSIである。
【0035】
CEU3は、CPU31、DDRメモリ32、フラッシュメモリ33、パケット転送の制御に特化した専用チップ34およびL2SW35を主な構成要素としている。専用チップ34は、専用チップ14と同様のものである。VCU4は、CPU41、DDRメモリ42、フラッシュメモリ43、L2SW44およびDSP45を主な構成要素としている。DSP45は、音声パケットを高音質から標準音質に変換する。その逆の変換も行う。
【0036】
上記実施形態のIPボタン電話装置100では、CCU1、TCCU2、CEU3およびVCU4のそれぞれにCPU11,21,31,41を分散配置し、それらのCPUを連動させて全体の制御を行うマルチCPUシステムとして構成しているので、負荷分散を実現できる。なお、各種専用インターフェース(TDM制御ユニット)もCPUを含んでいる。また、CCU1およびCEU3に搭載された専用チップ14,34のハードウエアによりパケット転送を制御するので、CPUの処理負荷が軽減される。
【0037】
IPボタン電話装置100において、例えば、単体電話機84がTDM外線経由で発着信した場合、TCCU2は、CCU1とLANケーブル9を介して制御情報を送受信してTDM系主制御を行い、TDM内線とTDM外線間で音声情報の送受信を可能にする。単体電話機84とTCCU2は、PCM変換された音声情報をTDMバス5を介して時分割多重化通信により送受信する。
【0038】
また、例えば、単体電話機84がIP外線経由で発着信した場合、単体電話機84とTCCU2との間ではPCM変換された音声情報がTDMバス5上で時分割多重化通信により送受信される。TCCU2とCCU1との間ではLANケーブル8を介して音声パケットが交換される。音声情報のTDMとパケットの相互変換にはTCCU2のDSP27が使用される。CEU3ではL2SW35経由でIP外線に接続されており、CCU1およびCEU3は、それぞれの専用チップ14,34を利用して音声パケットを交換する。
【0039】
また、例えば、IPボタン電話機91がTDM外線経由で発着信した場合は、TDMバス5、TCCU2、CCU1およびHUB7の経路が確立される。さらに、IPボタン電話機91がIP外線経由で発着信した場合は、CEU3、CCU1およびHUB7の経路が確立される。
【0040】
IPボタン電話装置100に収容される内線電話機には、標準音声だけのメディア能力の内線電話機の他、標準音質と高音質の2つの音声メディア能力の内線電話機、標準音質だけの音声と映像のメディア能力の内線電話機、標準音質と高音質の2つの音声と映像のメディア能力の内線電話機があり、さらには、自身を含む3者での会議通話機能を持つ内線電話機(IP-KT:Internet Protocol Key Telephone)、映像の入力(CCD)/出力(LCD)機能とブラウザ機能を持つ内線電話機(A-KT:Advanced Key Telephone)、カメラとマイクとスピーカを接続したPCにアプリケーションとしてボタン電話機能を搭載した内線電話機(ソフトフォン:Software Key Telephone)など、多種多様の内線電話機がある。
【0041】
IP-KTは、標準音質および高音質の音声のメディア能力を持つが、映像のメディア能力はない。A-KTは、標準音質および高音質の音声のメディア能力を持ち、さらに、MPEG4 Encoder/Decoder(Simple Profile Level 0〜3)、QVGA(320x240),QCIF(176x144)の映像サイズ、最大15fpsのフレームレートの映像のメディア能力を持つ。ソフトフォンは、標準音質および高音質の音声のメディア能力を持ち、さらに、MPEG4 Encoder/Decoder(Simple Profile Level 0〜3)、VGA(640x480),QVGA(320x240),CIF(352x288),QCIF(176x144)の映像サイズ、最大30fpsのフレームレートの映像のメディア能力を持つ。
【0042】
図1では、IP内線電話機として、IPボタン電話機91、音声会議装置92、IPコードレスフォン93、コンピュータ94を図示している。これらのIP内線電話機は、IPボタン電話装置100を経由して標準音質と高音質の音声と映像をサポートするIP外線と発着信する。
【0043】
IPボタン電話装置100は、通話する内線電話機の互いのメディア能力を自動判定制御して、最適なメディアで通話可能とする機能を持つことが要請される。そこで、IPボタン電話装置100のCCU1上で動作する主制御ソフトウエアに、SIPで相手側装置と互いにメディア能力を交換しながら、内線電話機と相手側装置とに最適なメディア能力を選択し、通話可能とする機能を持たせる。
【0044】
まず、内線電話機がIP外線に発信する場合、CCU1は、相手側装置と互いにメディア能力をSIPで交換しながらフォールバックし、内線電話機と相手側装置とに最適なメディア能力を選択して通話可能とする。
【0045】
図2は、内線電話機がIP外線に発信する場合のフォールバックの例を示すフローチャートである。内線電話機が映像と音声のメディア能力を持つ場合、まず、映像と音声のメディア能力で互いに通話可能かどうかを調べる。このため、発側(SIP-UA)から映像と音声のメディア能力を含めたSDP(INVITE(映像+音声))を網に送出(SDPオファー)する。SDP(Session Description Protocol)は、メディア能力を記述するプロトコルでSIPメッセージ内に記述されることがある。
【0046】
これに対して相手側装置から試行実施メッセージ(100 Trying)が返され、相手側装置が映像と音声のメディア能力を持っている場合には、続いて着信可の応答が返される。この場合、内線電話機と相手側装置は、互いに通話するメディア能力として映像と音声のメディア能力を選択する。しかし、相手側装置が映像か音声のいずれかのメディア能力しか持っていない場合には、相手側装置から着信拒否の応答(Not Acceptable Here (warn-code=304))が返される。warn-code=304は、「メディアで使用できないものがある」というレスポンスであるので、発側(SIP-UA)から確認メッセージ(ACK)を送出した後、音声のみのメディア能力を含めたSDP(INVITE(音声))を網に送出し、上記と同様にして、音声のみのメディア能力で互いに通話可能かどうかを調べる。ここで、相手側装置から着信可の応答が返されれば、内線電話機と相手側装置は、互いに通話するメディア能力として音声のメディア能力を選択する。しかし、着信拒否の応答が返されれば、音声のみのメディア能力でも通話が不可であるので着信拒否とする。
【0047】
このように、内線電話機からIP外線に発信する場合、SIPにおけるメディア能力を落として再発信(フォールバック)することにより、内線電話機と相手側装置とが通話する際の最適なメディア能力を選択することができる。
【0048】
次に、個別着信と放送着信の場合、CCU1は、SIPで相手側装置と互いにメディア能力を交換しながら、着信可否判断を実施する。このため、CCU1上で動作する主制御ソトウエアは、メディア能力交換に関するシステムデータを持ち、システムデータに従う着信可否判断表をアルゴリズムとして、SIPで相手側装置と互いにメディア能力を交換しながら、最終的に相手側装置と内線電話機との通話に最適なメディア能力を決定する。システムデータは、保守用コンピュータ95を用いてCFメモリ15に予め格納される。
【0049】
図3は、システムデータに従う着信可否判断表の例を示す。同図において、「受信オファー映像能力解析結果」の「○」は、着信可を示し、「×」は、着信不可(提示能力では応答できないこと)を示す。また、「映像着信不可」とは、映像の通信が制限されることを意味する。
【0050】
本例の着信可否判断表は、「映像着信制限」と「映像サイズ制限」という映像能力についての2つのシステムデータを持つ。内線電話機の映像能力は、プロファイルレベル(映像能力に関して、包括的に最大能力を提示するパラメータ)と映像サイズ(対応する映像サイズについて個別に提示するパラメータ)で規定され、プロファイルレベルには4a、3、0がある。また、映像サイズにはVGA、QVGA、QCIFがある。ここで、VGA>QVGA>QCIF、L4a/VGA>L4a/QVGA>L3/QVGA>L0/QCIF>なし(音声)である。
【0051】
「映像着信制限」には、映像着信制限の「あり」、「無し」を設定し、「映像サイズ制限」には、制限無し(VGA可)、QVGAモード<標準>、QCIFモードの映像能力を設定する。
【0052】
「映像着信制限」無しの場合、内線電話機の映像能力によらず、「映像サイズ制限」と「受信オファー映像能力解析結果」に従って放送着信、個別着信の可否を行う。例えば、放送着信は、「映像サイズ制限」が制限無し(VGA可)の場合、「受信オファー映像能力解析結果」がSP@L4a/VGA、SP@L4a/QVGA、SP@L3/QVGA、SP@L0/QCIFのいずれでも可となる。また、個別着信は、「映像サイズ制限」がQVGAモード<標準>の場合、「受信オファー映像能力解析結果」がSP@L4a/VGA、SP@L4a/QVGAであれば拒否されるが、SP@L3/QVGA、SP@L0/QCIFであれば可となる。
【0053】
「映像着信制限」ありの場合、放送着信は、「映像サイズ制限」、「受信オファー映像能力解析結果」、「端末映像能力」によらず、映像通信は制限される。また、対応する映像能力を持たない内線電話機への個別着信は拒否される。なお、内線電話機が映像の能力を持っておらず、音声の能力のみを持っている場合には、「受信オファー映像能力解析結果」によらず、映像通信は制限される。
【0054】
以上のように、「映像着信制限」が無しの場合、内線電話機の映像能力によらず、「映像サイズ制限」と「受信オファー映像能力解析結果」に従って着信の可否が決定されるので、その呼び出し状態に対して映像の能力を持たない内線電話機が受話することもある。この場合、そのままでは映像通信中であるにも拘わらず相手側装置に映像が表示されなくなって映像通信モードそのままでは相手側装置には映像が送信されないことになる。
【0055】
このような現象をなくすために、放送着信の呼び出し状態に対して映像の能力を持たない内線電話機が受話した場合には、IP外線からの映像パケットを廃棄すると共に、ミュート画像を映像パケットとしてIP外線に送信するのが好ましい。ミュート画像としては、例えば、「映像モード通信中です。映像課金中です。」の文字の静止画像を用いることができる。ミュート画像を送信することにより、IP外線の相手側装置の映像画面に映像モード通信中であることを示すことができる。ミュート画像は、IPボタン電話装置のVCU4で生成し、送出させることができる。すなわち、フラッシュメモリ43にミュート画像を格納しておき、起動時にDDRメモリ42上に展開する。そして、CCU1からのコマンドに従ってDDRメモリ42上のミュート画像を指定されたサイズで、指示されたIPアドレスとUDPポートに送信する。
【0056】
また、放送着信の呼び出し状態に対して映像の能力を持った内線電話機が受話したが、その内線電話機で保留操作がなされて音声のメディア能力しか持たない内線電話機への転送が行われた場合にも同様の現象が生じる。この場合にもIP外線からの映像パケットを廃棄すると共に、ミュート画像を映像パケットとしてIP外線に送信するのが好ましい。
【0057】
音声についても、選択されたメディア能力と異なる内線電話機が受話する場合がある。この場合には、VCU4が、選択されたメディア能力と内線電話機のメディア能力に合わせて音声パケットを高音質あるいは低音質に変換する。
【0058】
図4は、内線電話機がIP外線に発信する場合の動作を示すフローチャートである。
【0059】
まず、発側(SIP-UA)からIP外線を通して相手側装置にINVITE送信(S41)する。このINVITE送信には、メディア能力として、音声:高音質,標準音質、映像:SP@L4a 2M VGA 30fpsを含ませる。このINVITE送信に対するレスポンスを受信(S42)し、その種別を判定(S43)する。ここで、180 Ringingと判定した場合、200 OK レスポンスを受信(S44)した後、ACKを送信(S45)し、音声:高音質または標準音質(200 OK レスポンスに含まれているSDPのコーディック種別による)、映像:SP@L4a 2M VGA 30fpsのメディア能力で通話を開始(S46)する。なお、180 Ringingは、呼び出し中(提示されたメディア能力で通話可能)であることを表している。また、200 OK レスポンスは、受話したことを表しており、そのレスポンスの発信元装置のメディア能力のSDPが付加されている。
【0060】
S43で、488 Warning 304と判定した場合には、ACKを送信(S47)し、フォールバックする。つまり、INVITE送信するが、488 Warning 304は、「オファーしたメディア種別を使用する能力がない」というレスポンスであるので、それに含ませるメディア能力を、音声:高音質,標準音質、映像:なし(S48)に落とす。このINVITE送信に対するレスポンスを受信(S49)し、その種別を判定(S50)する。ここで、180 Ringingと判定した場合には、200 OK レスポンスを受信(S51)した後、ACKを送信(S52)し、音声:高音質または標準音質、映像:なしのメディア能力で通話を開始(S53)する。しかし、S50で、488 Warning 305またはその他の4xxレスポンスと判定した場合には、S61に進む。なお、488 Warning 305は、「オファーしたメディアのコーディックを使用する能力がない」というレスポンスである。また、その他の4xxレスポンスは、「具体的なフォールバックのレスポンスがない」というレスポンスなので、標準音質のみのメディア能力にフォールバックしてみるのである。
【0061】
S43で、488 Warning 305または488 Warning 370と判定した場合には、ACKを送信(S54)し、フォールバックする。つまり、INVITE送信するが、それに含ませるメディア能力を、音声:標準音質、映像:SP@L0 48K QCIF 15fps(S55)に落とす。488 Warning 370は、「利用できる帯域に対して過大である」というレスポンスである。このINVITE送信に対するレスポンスを受信(S56)し、その種別を判定(S57)する。ここで、180 Ringingと判定した場合には、200 OK レスポンスを受信(S58)した後、ACKを送信(S59)し、音声:標準音質、映像:SP@L0 48K QCIF 15fpsのメディア能力で通話を開始(S60)する。しかし、S57で、488 Warning 304、488 Warning 305、488 Warning 370またはその他の4xxレスポンスと判定した場合には、S61に進む。
【0062】
S43で、その他の4xxレスポンスと判定した場合には、S61に進む。S61では、ACKを送信(S61)し、フォールバックする。今度は、音声:標準音質、映像:なしの最低のメディア能力を含ませてINVITE送信(S62)する。このINVITE送信に対するレスポンスを受信(S63)し、その種別を判定(S64)する。ここで、180 Ringingと判定した場合には、200 OK レスポンスを受信(S65)した後、ACKを送信(S66)し、音声:標準音質、映像:なしのメディア能力で通話を開始(S67)する。しかし、S64で、その他の4xxレスポンスと判定した場合には、ACKを送信(S68)するが、再発信しない(S69)。つまり、通話不可となる。
【0063】
図5は、IP外線から個別着信があった場合の動作を示すフローチャートである。 図5(a)は、発信側のメディア能力を受け入れない場合の動作であり、IP外線から音声:高音質,標準音質、映像:SP@L4a 2M VGA 30fpsのメディア能力を含んだINVITEを受信(S70)した場合、「オファーしたメディア種別を使用する能力がない」というレスポンス488 Warning 304を送信(S71)する。その後、ACK受信(S72)する。その後は、IP外線側の対応、および上記着信可否判断表に従って動作する(S73)。
【0064】
図5(b)は、発信側のメディア能力をそのまま受け入れる場合の動作であり、IP外線から音声:高音質,標準音質、映像:SP@L4a 2M VGA 30fpsのメディア能力を含んだINVITEを受信(S74)した場合、提示されたメディア能力で通話可能である旨のレスポンス180 Ringingを送信(S75)し、さらに、音声については受話する内線電話機のメディア能力の一番高い、または内線電話機の音質選択ボタンで選択された高音質か標準音質のSDPを付加した200 OK レスポンスを送信(S76)する。そして、ACKを受信(S77)した後、音声:高音質か標準音質、映像:SP@L4a 2M VGA 30fpsのメディア能力で通話を開始(S78)する。
【0065】
図6は、IP外線から放送着信があった場合の動作を示すフローチャートである。 図6(a)は、映像の着信制限をしていて、発信側のメディア能力を受け入れない場合の動作であり、IP外線から音声:高音質,標準音質、映像:SP@L4a 2M VGA 30fpsのメディア能力を含んだINVITEを受信(S79)した場合、映像着信制限による音声のみへのフォールバック要求のレスポンス488 Warning 304を送信(S80)する。その後、ACK受信(S81)する。その後は、IP外線側の対応、および上記着信可否判断表に従って動作する(S82)。
【0066】
図6(b)は、映像の着信制限をしていなくて、発信側のメディア能力をそのまま受け入れる場合の動作であり、IP外線から音声:高音質,標準音質、映像:SP@L4a 2M VGA 30fpsのメディア能力を含んだINVITEを受信(S83)した場合、そのまま通話可能である旨のレスポンス180 Ringingを送信(S84)し、さらに、音声については受話する内線電話機のメディア能力の一番高い、または内線電話機の音質選択ボタンで選択された高音質か標準音質のSDPを付加した200 OK レスポンスを送信(S85)する。そして、ACKを受信(S86)した後、音声:高音質か標準音質、映像:SP@L4a 2M VGA 30fpsのメディア能力で通話を開始(S87)する。この場合、受話した内線電話機によって、高音質あるいは標準音質の音声を選択することになり、上述したように、ミュート画像を送出する場合もある。
【0067】
以上実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記の内線電話機のメディア能力は、一例に過ぎず、その他のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】内線電話機がIP外線に発信する場合のフォールバックの例を示すフローチャートである。
【図3】システムデータに従う着信可否判断表の例を示す図である。
【図4】内線電話機がIP外線に発信する場合の動作を示すフローチャートである。
【図5】IP外線から個別着信があった場合の動作を示すフローチャートである。
【図6】IP外線から放送着信があった場合の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1・・・主制御ユニット(CCU)、2・・・TDM系主制御ユニット(TCCU)、3・・・カスタマエッジユニット(CEU)、4・・・音声変換ユニット(VCU)、5・・・TDMバス、6,8,9,10・・・LANケーブル、7・・・スイッチングハブ(HUB)、11,21,31,41・・・CPU、12,22,32,42・・・DDRメモリ(RAM)、13,23,33,43・・・フラッシュメモリ、14,34・・・専用チップ、15・・・コンパクトフラッシュ(登録商標)(CF)メモリ、16,35,44・・・レイヤ2スイッチ(L2SW)、24・・・ファイ(PHY)、25・・・ハイウエイスイッチ、26・・・Dch制御信号通信チップ、27,45・・・DSP、81・・・ファックス端末、82・・・ホテルフォン端末、83・・・デジタルボタン電話機、84・・・単体電話機、91・・・IPボタン電話機、92・・・音声会議装置、93・・・IPコードレスフォン、94・・・コンピュータ、95・・・保守用コンピュータ、100・・・IPボタン電話装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多種メディア能力の内線電話機を収容し、音声通信および映像通信をサポートするIP外線との通話を可能とするIPボタン電話装置において、
SIPで相手側装置と互いにメディア能力を交換しながら、内線電話機と相手側装置とに最適なメディア能力を選択して通話可能とする主制御ユニットを備えたことを特徴とするIPボタン電話装置。
【請求項2】
前記主制御ユニットは、内線電話機がIP外線に発信する場合に、相手側装置と互いにメディア能力をSIPで交換しながらフォールバックし、内線電話機と相手側装置とに最適なメディア能力を選択して通話可能とすることを特徴とする請求項1に記載のIPボタン電話装置。
【請求項3】
前記主制御ユニットは、IP外線から内線電話機に個別着信があった場合、IPボタン電話装置に予め設定されたシステムデータに従う着信可否判断表をアルゴリズムとしてSIPで相手側装置と互いにメディア能力を交換しながら、内線電話機と相手側装置とに最適なメディア能力で通話可能とすることを特徴とする請求項1に記載のIPボタン電話装置。
【請求項4】
前記主制御ユニットは、IP外線から内線電話機に放送着信があった場合、IPボタン電話装置に予め設定されたシステムデータに従う着信可否判断表をアルゴリズムとしてSIPで相手側装置とメディア能力を交換し、着信可能でなければ着信拒否とし、着信可能であれば呼び出し状態にして、グループ化された複数の内線電話機のうちの任意の内線電話機で通話可能とすることを特徴とする請求項1に記載のIPボタン電話装置。
【請求項5】
前記主制御ユニットは、IP外線から内線電話機に映像と音声を含む放送着信が可能である場合の呼び出し状態に対して、映像の能力を持たない内線電話機が受話した場合には、IP外線からの映像パケットを廃棄すると共に、ミュート画像を映像パケットとしてIP外線に送信することを特徴とする請求項4に記載のIPボタン電話装置。
【請求項6】
前記主制御ユニットは、IP外線から内線電話機に音声および映像の放送着信があって、IP外線と内線電話機での映像および音声での通話状態から保留操作がなされて音声のメディア能力しか持たない内線電話機へ転送された場合、IP外線からの映像パケットを廃棄すると共に、ミュート画像を映像パケットとしてIP外線に送信することを特徴とする請求項4に記載のIPボタン電話装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−109738(P2010−109738A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280128(P2008−280128)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【出願人】(399040405)東日本電信電話株式会社 (286)
【出願人】(399041158)西日本電信電話株式会社 (215)
【Fターム(参考)】