説明

LED照明器具

【課題】蛍光色に偏った光の照射を抑制することができるLED照明器具を提供する。
【解決手段】青色LEDとしてのLED65を蛍光体が散布された樹脂製の封止体95に封入し、前記LED65の発光色と前記蛍光体の蛍光色の混合により白色光を得る白色LEDとしてのLEDパッケージ35を光源に備えたLED投光器1において、底部43Aが開口した凹状反射面43を有し、前記底部43Aの開口に前記LEDパッケージ35が配置された反射体41を備え、前記底部43Aの開口を前記LEDパッケージ35の上に所定の空隙を設けて配置し、前記LEDパッケージ35から放射される光成分のうち、前記封止体95を通過する距離が長く蛍光色成分に偏った光成分を前記空隙から前記反射体41の外部に放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDを光源に採用したLED照明器具に係り、特に、青色LEDにより黄色蛍光体を光らせて白色光を得る白色LEDを備えたLED照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LEDを光源とした各種のLED照明器具が知られている(例えば、特許文献1参照)。また近年では、白色光を出力する白色LEDが知られている。この種の白色LEDには、黄色蛍光体を分散させた樹脂で青色LEDを封止することで、青色LEDの発光色と黄色蛍光体の蛍光色との混色によって白色光を得るものが良く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−234558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、青色LEDの発光面から出た光が黄色蛍光体を通過したときの経路の違いによっては、黄色の蛍光色が強くなり過ぎて青色との混合でも白色光が得られずに黄色光となる。このため、照射光には白色光の他に黄色光が含まれることとなり、係る照射光が照射されと照射面では黄色味を帯びた箇所が生じることで色ムラの発生や、被照射体の発色不良、照射箇所に描かれた絵柄や文字の識別性の低下を招いていた。この問題を解決するために、色分解レンズに照射光を通して黄色光だけを分離することが考え得るが、そうすると照射光量が低下する、という問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、蛍光色に偏った光の照射を抑制することができるLED照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、青色LEDを蛍光体が散布された樹脂に封入し、前記青色LEDの発光色と前記蛍光体の蛍光色の混合により白色光を得る白色LEDを光源に備えたLED照明器具において、底部が開口した凹状反射面を有し、前記底部の開口に前記白色LEDが配置された反射体を備え、前記底部の開口を前記白色LEDの上に所定の空隙を設けて配置し、前記白色LEDから放射される光成分のうち、前記樹脂を通過する距離が長く蛍光色成分に偏った光成分を前記空隙から前記反射体の外部に放出することを特徴とする。
【0006】
また本発明は、上記LED照明器具において、前記白色LEDは、前記青色LEDが実装されLED基板と、前記凹状反射面の底部と前記LED基板の間に配置され、前記所定の空隙を形成する空隙形成部材とを備え、前記空隙形成部材が絶縁性及び柔軟性を有し、前記凹状反射面の底部により押圧されて前記LED基板を器具本体側の高熱伝導性部材に密着させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、白色LEDから放射される光成分のうち、樹脂を通過する距離が長く蛍光色成分に偏った光成分を空隙から反射体の外部に放出する。このため、蛍光色に偏った光が凹状反射面に進入することが無いから、当該光の照射が抑制され、白色光を主として照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係るLED投光器の正面、平面、右側面及び背面を共に示す図である。
【図2】光源ケースと光源ユニットの組立図である。
【図3】LEDパッケージの構成を示す図である。
【図4】LEDパッケージと反射体を拡大して示す図である。
【図5】LEDパッケージの発光部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、LED照明器具の一例としてLED投光器を例示するが、本発明は、これに限らず、支持脚を有するLED照明器具であれば任意の器具に適用することができる。
【0010】
図1は、本実施形態に係るLED投光器1の正面、平面、右側面及び背面を共に示す図である。LED投光器1は、光源ケース3及び電源ケース5を一体に結合してなる照明器具本体7と、この照明器具本体7を角度可変に支持した構造物取付用の支持脚9とを備えている。光源ケース3、電源ケース5及び支持脚9のそれぞれは、例えばアルミダイカスト等の高熱伝導性を有する材料から一体成形されている。
【0011】
光源ケース3は、複数のLEDパッケージ35を有する光源ユニット33を収めるケースであり、縦横の長さに比して厚みが小さい略箱型状を成し、正面には略矩形の照射開口13が開口しガラス製或いは樹脂製の透明カバー15が嵌め込まれ、この照射開口13から正面に向けて光を照射する。光源ケース3の背面は略円弧状に膨らみ、この背面には上下に延びる多数の放熱フィン11が一体に形成されている。
この光源ケース3の下端部には、光源ケース3の主要部の幅Aよりも狭い幅Bに形成された支持脚取付部4が一体に形成されている。
【0012】
電源ケース5は、LEDパッケージ35への電力供給用の電源回路を内蔵する横長の箱型状のケースである。その横幅は光源ケース3の支持脚取付部4よりも若干小さく形成されており支持脚9との間に隙間が設けられている。この電源ケース5の背面にも、光源ケース3と同様に上下に延びる複数の放熱フィン19が一体に設けられている。この電源ケース5は、光源ケース3の支持脚取付部4の下端に一体に結合され、これらによって照明器具本体7が構成される。
【0013】
支持脚9は、建物の壁面や支柱等の構造物に照明器具本体7を角度可変に支持するための、全体的に略コ字状に形成された部材であり、開放端部が光源ケース3の支持脚取付部4の左右側面に軸支部材(支持軸)21で回動自在に支持されている。軸支部材21は、光源ケース3等と同様に例えばアルミダイカスト等の高熱伝導性を有する材料から成形され、光源ケース3と支持脚9を熱的に良好に結合する。
【0014】
また、支持脚9の横幅は、光源ケース3の横幅Aと同程度であり、照明器具本体7に対して支持脚9が横に突出しないように意匠的工夫がなされている。
このとき、支持脚9の脚部9Aは、幅Aと幅Bの差で規定される太さCを有し、従来のLED投光器に比べて、その脚部9Aの厚みを大きくすることで、脚部9Aの熱容量を増加させている。この脚部9Aの太さCは、光源ケース3だけでは放熱仕切れないLEDパッケージ35の発熱分を伝導させて良好に放熱できる程度の太さとされている。これにより、照明器具本体7を大型化せずとも、LEDパッケージ35が発する熱の放熱性が高められている。
【0015】
また、上述したように、電源ケース5が支持脚9に接していないため、支持脚9から電源ケース5に熱が伝達することがないから、電源ケース5の電源回路に余計な熱が加わることがなく、当該電源ケース5に収めた電源回路の熱による損傷が防止される。
【0016】
図2は、光源ケース3と光源ユニット33の組立図である。
光源ユニット33は、複数のLEDパッケージ35を配線34で直列に接続し、熱伝導性の高い例えばアルミナから成る1枚の矩形のセラミック板37の上に所定の間隔で接着配置して構成され、係るセラミック板37を光源ケース3の底面3Aに密着させて設けられる。このように各LEDパッケージ35を1枚のセラミック板37に配置することで、それぞれの絶縁を図りつつ均等な冷却が図られる。
また光源ケース3には、各LEDパッケージ35に対応して凹状反射面43が形成された反射体41が光源ユニット33を上から押さえ付けるように取り付けられ、光源ユニット33と光源ケース3の密着性が高められている。
【0017】
ここで光源ユニット33は、上述の通り、1枚のセラミック板37に複数のLEDパッケージ35を接着して構成されているため、LEDパッケージ35の各々の間でセラミック板37の密着性にバラツキが生じ易い。このようにバラツキが生じると放熱性が異なるため、LEDパッケージ35の寿命にも違いが生じたりする。そこで、反射体41が各LEDパッケージ35を押圧することで密着性にバラツキが無いようにしている。
詳述すると、LEDパッケージ35は、図3に示すように、金属板61Aの表面に絶縁層61Bを設けたLED基板61の上に、24×3個のLED65を格子状に配列してなる発光部63とを備え、この発光部63から面状光が照射される。なお、同図において、符号66はLED基板61に形成されたアノード電極、符号67はカソード電極を示す。係るLEDパッケージ35は約1100lm以上の光束を出力する高出力なものであり、6個のLEDパッケージ35で上記光源ユニット33が構成されている。
【0018】
光源ユニット33の上には、当該光源ユニット33を光源ケース3の底面3Aに押し付けるように上記反射体41が設けられる。この反射体41には、光源ユニット33の各LEDパッケージ35の発光部63に対応して凹状反射面43が形成されるが、この凹状反射面43の底部43Aには、図4に示すように、柔軟性及び絶縁性を有する緩衝材71が配置される。そして、各凹状反射面43の底部43Aが緩衝材71を介してLED基板61をセラミック板37に押し付けることで、LEDパッケージ35の各々がセラミック板37に密着し、密着性のバラツキが解消されるのである。
【0019】
図5は、LEDパッケージ35の発光部63を拡大して示す図である。
LEDパッケージ35は、上述のように、LED基板61の上に格子状に配列した多数のLED65を実装して構成されている。これらのLED65には、青色光を発光する青色LEDが用いられる。また、これらのLED65は、青色光の光を受けて黄色の蛍光を発する蛍光体が散布され、発光面が平らにされた樹脂製の封止体95に封止されている。そして、LED65の青色の発光色と蛍光体の黄色の蛍光色の混色によって白色光が得られる。
【0020】
このとき、LED65の発光色と蛍光体の蛍光色のバランスが崩れ蛍光色成分が強くなると、混色によって得られる光が黄色に偏る。すなわち、図5に示すように、LED65から真上に向かう光成分K1と、斜め方向に向かう光成分K2とを対比すると、それぞれの光成分K1、K2の間で封止体95を通過する際の経路長L1、L2は、斜め方向の光成分K2の経路長L2の方が長くなる。このため、光成分K2の方向では、光成分K1の方向に比べて蛍光体による蛍光が強くなることを示す。
LED65の主照射方向に対する角度をθとし、LED65の発光色と蛍光体の蛍光色のバランスが崩れて蛍光色への偏りが灯具の使用用途上無視できなくなる閾値角度をθthとした場合、経路長Lは角度θが大きくなるほど長くなるから、180度≧閾値角度θthの範囲(以下、「蛍光色過剰範囲」と言う)に照射される光成分は蛍光色の黄色に顕著に偏る。係る光が照射されると、照射範囲の外側で被照射体が黄色を帯びてしまうこととなる。
【0021】
そこで本実施形態では、図4に示すように、反射体41の凹状反射面43の底部43AをLEDパッケージ35に対して、蛍光色過剰範囲の光成分が通る範囲よりも上方に配置している。このため、蛍光色過剰範囲の光成分は、反射体41の底部43Aと、LEDパッケージ35の間の空隙から反射体41の外部に放出され、凹状反射面43に進入した光、すなわち、白色光が反射体41により照射光として照射されることとなる。
【0022】
反射体41の底部43Aと、LEDパッケージ35の間の空隙は、上記緩衝材(空隙形成部材)71によって形成され、その厚みや柔軟性等によって空隙の大きさが調整される。この緩衝材71には、黄色光に対して高い透過性を有する材料(例えばシリコンゴム)が用いられており、これにより、緩衝材71で黄色光が反射され凹状反射面43に入り込むことが防止される。
【0023】
このように本実施形態によれば、LEDパッケージ35から放射される光成分のうち、封止体95を通過する経路長Lが長く蛍光色成分に偏る光成分を、凹状反射面43の底部43AとLEDパッケージ35の間に設けた空隙から反射体41の外部に放出する構成とした。このため、蛍光色に偏った光が凹状反射面43に進入することが無く、白色光を反射体41で反射して照射光として利用することができる。
【0024】
また本実施形態によれば、前記白色LEDは、前記青色LEDが実装されLED基板と、前記凹状反射面の底部と前記LED基板の間に配置され、前記所定の空隙を形成する空隙形成部材とを備え、前記空隙形成部材が絶縁性及び柔軟性を有し、凹状反射面43の底部43Aにより緩衝材71を押圧してLEDパッケージ35のLED基板61を照明器具本体7に設けたセラミック板(高熱伝導部材)37に密着させる構成とした。
この構成により、反射体41の組み付け時に各LEDパッケージ35をセラミック板37に密着性にバラツキ無く密着させ、均等かつ良好に冷却することができる。
【0025】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0026】
1 LED照明器具(LED投光器)
7 照明器具本体
33 光源ユニット
35 LEDパッケージ(白色LED)
37 セラミック板
41 反射体
43 凹状反射面
43A 底部
61 LED基板
63 発光部
65 LED(青色LED)
71 緩衝材(空隙形成部材)
95 封止体(樹脂)
θth 閾値角度
K1、K2 光成分
L1、L2 経路長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色LEDを蛍光体が散布された樹脂に封入し、前記青色LEDの発光色と前記蛍光体の蛍光色の混合により白色光を得る白色LEDを光源に備えたLED照明器具において、
底部が開口した凹状反射面を有し、前記底部の開口に前記白色LEDが配置された反射体を備え、前記底部の開口を前記白色LEDの上に所定の空隙を設けて配置し、
前記白色LEDから放射される光成分のうち、前記樹脂を通過する距離が長く蛍光色成分に偏った光成分を前記空隙から前記反射体の外部に放出することを特徴とするLED照明器具。
【請求項2】
前記白色LEDは、前記青色LEDが実装されLED基板と、
前記凹状反射面の底部と前記LED基板の間に配置され、前記所定の空隙を形成する空隙形成部材とを備え、
前記空隙形成部材が絶縁性及び柔軟性を有し、前記凹状反射面の底部により押圧されて前記LED基板を器具本体側の高熱伝導性部材に密着させることを特徴とする請求項1に記載のLED照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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