NMDA受容体モジュレータを安定化させる二次構造及びその使用
NMDA受容体の活性の改変に増強した効力を有する化合物を開示する。このような化合物は、例えば学習障害、認識活動、無感覚症のような病気や疾病の治療での使用に期待され、特に、神経障害性の痛みを緩和し、又は減少させることの使用に期待される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2010年2月11日に出願された米国特許仮出願番号61/303472の優先権を享有し、そのすべての開示内容全体を参照により本明細書に取り込む。
【背景技術】
【0002】
N−メチル−D−アスパラギン酸塩(NMDA)受容体は、とりわけ興奮性アミノ酸のグルタミン酸及びグリシン、並びにそのNMDA合成化合物、に反応性を示すシナプス後イオンチャネル型受容体である。NMDA受容体は、受容体関連のチャネルを通過してシナプス後神経系細胞に2価及び1価の両イオン流を制御する(Foster et al., Nature 1987, 329:395-396; Mayer et al, Trends in Pharmacol. Sci. 1990, 11:254-260)。NMDA受容体は、ニューロンの構造及びシナプス接続を発生するときに結び付けられ、経験依存的シナプス改変に関係している可能性がある。さらに、NMDA受容体は、長期増強電位及び中枢神経系疾患に関係があるとも考えられている。
【0003】
NMDA受容体は、記憶獲得、記憶力、学習能力等のような、多くの高度な認知機能の根底にあるシナプス可塑性に重要な役割を果たすとともに、認知経路や苦痛の知覚にも重要な役割を果たす(Collingridge et al., The NMDA Receptor, Oxford University Press, 1994)。加えて、NMDA受容体の特性は、それが知覚の基礎となる、脳内の情報処理に関連している可能性があることを示唆している。
【0004】
NMDA受容体が、CNS障害の広域スペクトルに関連することが公になってからというもの、NMDA受容体に特に関心が集まっている。例えば、脳卒中又は外傷で起きた脳虚血のときに、損傷又は酸欠状態のニューロンから、過量の興奮性アミノ酸のグルタミン酸が放出される。この多量のグルタミン酸が、NMDA受容体に結合し、NMDA受容体がイオンチャネル内蔵型受容体を開放する。これを受けて、カルシウム流入が、細胞内のカルシウムの濃度を高め、生化学のカスケード反応が活性化されて、タンパク質の分解や細胞死をもたらす。この現象は、興奮毒性として知られるが、心不全やてんかんに関係があるとも考えられている。さらに、ハンチントン病、パーキンソン病、及びアルツハイマー病の慢性神経変性に、類似した関連を示すという速報がある。NMDA受容体の活性化は、脳卒中後の痙攣の原因になることを示しており、てんかんのある特定のモデルでは、NMDA受容体の活性化が、発作の発生に必要であることを示していた。動物麻酔剤PCP(フェンシクリジン)によるNMDA受容体Ca++チャネルの阻害が、統合失調症と同様の精神異常の症状をヒトに生じさせるので、NMDA受容体の神経精神病学的な関係も認められている(reviewed in Johnson, K. and Jones, S., 1990)。さらに、NMDA受容体は特定の種類の空間学習にも関係している。
【0005】
NMDA受容体は、シナプス後膜に組み込まれたいくつかのタンパク質鎖からなると考えられている。これまでに発見されたサブユニットの最初の2つのタイプは、大きな細胞外領域を形成し、その細胞外領域は、ほとんどのアロステリック結合部位をおそらく含んでおり、いくつかの膜貫通領域は、Ca++を通すことができる孔又はチャネル、及びカルボキシル末端領域を形成するように、環状に折り重ねられる。チャネルの開閉は、細胞外表面にあるタンパク質の領域(アロステリック部位)に種々のリガンドを結合させることによって調整される。リガンドの結合は、チャネルが、開いているか、部分的に開いているか、部分的に閉まっているか、閉まっているかで、最終的に反映されるタンパク質の全体構造における立体構造変化に影響を及ぼすと考えられる。
【0006】
NMDA受容体化合物は、アロステリック部位を通じて、NMDA受容体に対する二つの(作動的/拮抗的)効果を発揮する可能性がある。これらの化合物は、「部分的作動薬」と典型的に呼ばれる。主要なリガンド部位の存在下で、部分的作動薬は、リガンドの一部を置き換えて、こうして受容体を通過するCa++の流れを減少させる。主要な配位子部位がないか、又は少ないと、部分的作動薬は、受容体チャネルを通過するCa++の流れを増加させるように作用する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当該分野においては、NMDA受容体のグリシン結合部位に結合でき又は会合でき、かつ新規で、より選択的に/より効能がある化合物、特に、NMDA受容体NR1のリガンド結合コアに結合でき又は会合でき、かつ生体内で特別な選択性及び/又は優れた効能がある化合物に対するニーズが存在し続けている。さらに、医学の分野において、このような化合物を経口投与が可能な形態に対するニーズが存在し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここで提示するものは、少なくとも一部で、NMDAモジュレータ、例えばNMDAの部分的作動性の化合物である。例えば、ここで提示するものは、NMDA受容体のグリシン結合部位、例えばSEQ ID NO.1と選択的に相互作用し得るベータターン構造を模倣する化合物である。例えば、開示のペプチド模倣薬は、SEQ ID NO.1に結合する場合、ベータターン構造を有する。いくつかの実施形態では、開示のペプチド模倣薬は、生体内又は水溶液中で、ベータターン構造を実質的に維持する。
【0009】
いくつかの実施形態では、SEQ ID NO.1のNMDAリガンド結合コアに結合し、又は会合することができるペプチド模倣薬を提供する。前記ペプチド模倣薬は、2つの炭素原子が少なくとも約6Åから約14Å離れており、又は約6Åから約8Å離れている。例えば、開示の模倣薬は、環状アミドコア、例えばスピロベーターラクタムを含んでいてもよい。
【0010】
別の実施形態において、開示のペプチド模倣薬は、カルボキシル基及びアミノ基を有する部分で置換した2又は3のアミノ酸を有するペプチドであってもよい。ある実施形態では、請求項1〜6のいずれかに開示されたペプチド模倣薬であって、そのペプチド模倣薬は、SEQ ID NO.1の次のアミノ酸:PRO124、THR126、GLU178、及びSER180の、少なくとも1、2、3又は4と水素結合を形成するか、又は4つの全てのアミノ酸と水素結合を形成する。
【0011】
例えば、ここで提示するものは、SEQ ID NO.1のNMDA配位子結合コアに結合できるペプチド模倣薬であって、前記ペプチド模倣薬は、少なくとも約6Åから約14Å(例えば約6Åから約10Å)離れた2つの炭素原子と、ペプチド模倣薬が前記SEQ ID NO.1に結合する場合に、実質的に立体配置を保持したままの二環式のアミドコア(例えばスピロ−ベータ−ラクタム)を含むベータターン構造とを有する。このようなペプチド模倣薬は、
で表わされるコアを含んでいてもよい。典型的なペプチド模倣薬は、生体中又は水溶液中でベータターン構造を実質的に維持し、SEQ ID NO.1の次のアミノ酸:PRO124、THR126、GLU178、及びSER180と水素結合を形成してもよい。いくつかの実施形態では、ベータターンコアは、1又は2のアミノ酸と結合することもある。
【0012】
患者のNMDA受容体の介在疾患を治療し、又は予防する方法をも提供する。その方法は、環状アミドの部位(例えばベータ−ラクタム部位)を有するベータターンペプチド模倣薬の環状化合物を模倣するグリシンの、NMDA配位結合コア受容体の作動又は拮抗の許容量を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0013】
ここで提示するものは、SEQ ID NO.1の活性を調整する方法であって、その調整は、化合物に導入された好ましい立体配座から生じており、前記調整は、化合物と、1、2、3、又は4の次のアミノ酸:PRO124、THR126、GLU178、及びSER180との間の水素結合相互作用から生じる。
【0014】
別の実施形態において、SEQ ID NO.1に結合できる化合物を特定する方法を提示しており、その方法は、a)SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.1の分子モデルによる原子座標、又は登録番号1PBQのタンパク質構造データバンクにある原子座標、のうちの少なくとも一部に由来するSEQ ID NO.1の1以上のターゲット領域を含む分子モデルを準備すること、b)その分子モデルを使用して、分子モデル内で1以上のターゲット領域に結合できる化合物を特定すること、及びc)その化合物を製造すること、を含んでいる。いくつかの実施形態では、このような方法は、その化合物がSEQ ID NO.1を変調するか否かを特定する追加工程をさらに含んでもよい。
【0015】
ここで提示するものは、開示の化合物及び薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的に許容される組成物でもある。このような組成物は、例えば、患者への経口投与に適している場合もある。
【0016】
物忘れ又は学習障害に関連する疾患のような認知障害の治療方法であって、開示の化合物の有効量を、必要とする患者に投与することを含む。ここで提供するものは、例えば、患者の記憶喪失又は学習障害を、治療又は改善する方法である。
【0017】
ある実施形態では、患者の神経障害性疼痛を治療する方法であって、開示の化合物を必要とする患者に有効量投与することを含む治療方法を提供する。
【0018】
ここで提示するものは、患者のうつ病、強迫性障害又は統合失調症を治療する方法であって、開示の化合物を、それを必要とする患者に有効量投与することを含む方法でもある。他の実施形態では、患者の心的外傷後ストレス障害、アルコール依存症又は習慣性薬物中毒を治療する方法であって、開示の化合物を必要とする患者に有効量投与することを含む治療方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1A〜1Dは、開示の化合物(AK52)が、シャッファー側枝CAlシナプスで、シナプス後NMDA受容体媒介興奮性シナプス後電流(e.p.s.c.s)を二相的に変化させ、LTP誘導を選択的に増強させることを示す。1A:CAl錐体神経細胞におけるシャッファー側枝誘導e.p.s.c.sのNMDA成分のAK52(1μM、実線)による顕著な減少の経時変化、各点は、5つの細胞のe.p.s.c.peNRXe振幅の平均+SEMである。1B:CAl錐体神経細胞におけるシャッファー側枝誘導e.p.s.c.sのNMDA成分のAK52の1/10の濃度(100nM、グレイバー)による増強の経時変化、各点は、5つの細胞のe.p.s.c.peNRXe振幅の平均+SEMである。1C:未処理片の対象(白丸、n=8)と比較した、1μM(黒丸、n=10)及び100nMのNRX−10,052(黒菱形、n=6)での前処理片におけるシャッファー側枝−CAIシナプスでの低周波刺激実施(2Hz/10分、矢印で開始)によって誘発されたLTDの経時変化、各点は、n片の規格化細胞外領域EPSP傾きの平均+SEMである。1D:未処理片の対象(白丸、n=15)と比較した、1μM(黒丸、n=10)又は100nMのNRX−10,052(黒菱形、n=8)での前処理片におけるシャッファー側枝−CAIシナプスでの高周波刺激実施(3×100Hz/500m秒、矢印)によって誘導されたLTP比較実験の経時変化、各点は、n片の規格化領域epsp傾きの平均+SEMである。
【0020】
【図2】図2A〜2Eは、開示の化合物Bが低濃度で、シャッファー側枝CAlシナプスで、薬理学的に分離したシナプス後NMDA受容体媒介興奮性シナプス後電流(e.p.s.c.s)を顕著に増強させ、LTPを増強させ、一方、20倍の高濃度がNMDAe.p.s.c.sを減少させることを示す。2A:CAl錐体神経細胞において記録された、単一刺激シャッファー側枝誘導の薬理学的に分離したNMDAe.p.s.c.sの化合物B(50nM、実線バー)による顕著な増強の経時変化。2B:記録した突発的誘発(4パルス/100Hz)NMDAe.p.s.c.s.の化合物による増強の経時変化(50nM、実線バー)。2C:CAl錐体神経細胞において記録された、単一刺激シャッファー側枝誘導のNMDAe.p.s.c.s.の化合物B(1μM、実線)による顕著な減少の経時変化。2D:CAl錐体神経細胞において記録された、突発的誘発(4パルス/100Hz)シャッファー側枝誘導NMDAe.p.s.c.s.の化合物B(1μM、実線バー)による減少の経時変化。2E:対照、未処理(白丸)と比較した、50nM化合物B(黒丸)によるCAI錐体神経細胞でのシナプスにおける高周波(100Hz/500m秒×3、実線矢印)シャッファー側枝刺激誘導LTPの増強、各点は、n細胞のe.p.s.c.s.peNRX振幅の平均+SEMである。
【0021】
【図3】図3A〜3Cは、開示の化合物(AK51)の100nM及び1μM濃度の双方が、シャッファー側枝CAlシナプスで、薬理学的に分離したシナプス後NMDA受容体媒介(e.p.s.c.s)を増強させ、LTPを増強させることを示す。3A:CAl錐体神経細胞において記録された、単一刺激シャッファー側枝誘導の薬理学的に分離したNMDAe.p.s.c.sのNRX−10,051(100nM、実線)による顕著な増強の経時変化(n=x)。3B:CAl錐体神経細胞において記録された、単一刺激シャッファー側枝誘導の薬理学的に分離したNMDAe.p.s.c.sのAK51(1μM、実線バー)による増強の経時変化(n=y)。3C:未処理片(白丸)と比較した、100nM()及び1μM(黒丸)のAK5151による錐体神経細胞でのシナプスにおける高周波(100Hz/500m秒×3、実線矢印)シャッファー側枝刺激誘導LTPの増強。3D:未処理片(白丸、n=8)と比較した、1μM(黒丸、n=10)又は100nMのNRX−10,051(黒菱形、n=6)で前処理した片におけるシャッファー側枝−CAIシナプスでの低周波刺激実施(2Hz/10分、矢印で開始)によって誘導されたLTDの経時変化、各点は、n細胞のe.p.s.c. peNRX振幅の平均+EMである。
【0022】
【図4】開示の化合物がNMDA電流及びLTPを増強させることを示す。A:全細胞記録下で記録された、CAl錐体神経細胞の正常化され、薬理学的に分離したNMDA受容体依存性流における100nMのAK51(実線)の20分間の潅流液中投与法(bath application)作用の経時変化。 B:全細胞記録下で記録された、CAl錐体神経細胞の正常化され、薬理学的に分離したNMDA受容体ゲート流における1μMのAK51(実線バー)の20分潅流液中投与法作用の経時変化。 C:高周波シャッファー側枝刺激(矢印、2×l00Hz/500ミリ秒)によって誘導された、細胞外興奮性シナプス後電位傾き(平均+SEM、fEPSP)の長期増強(LTP)の大きさにおける、未処理対照片(白丸、n=6)と比較した100nMのAK51(実線、黒丸、n=8)の潅流液中投与法作用の経時変化。 D:高周波シャッファー側枝刺激(矢印、2×l00Hz/500ミリ秒)によって誘導された、fEPSP傾き(平均+SEM)のLTPの大きさにおける、未処理対照片(白丸、n=6)と比較した1μMのAK51(実線バー、黒丸、n=8)の潅流液中投与法作用の経時変化。E:低周波シャッファー側枝刺激(矢印、2Hz/10分)によって誘導されたfEPSP傾き(平均+SEM)の長期抑制の大きさにおける、未処理対照片(白丸、n=8)と比較した1μMのAK51(実線、黒丸、n=10)の潅流液中投与法作用の経時変化。
【0023】
【図5】図5は、開示の化合物を用いたラットのT−迷路試験の結果を示す。
【0024】
【図6】図6は、ラットのホルマリン神経性疼痛の結果を示す。
【0025】
【図7】図7は、開示の化合物の1つの異性体AK−55−Aが、NMDA電流及びLTPを顕著に増強し、一方、AK−55−Bは、NMDA電流及びLTPを増強しないことを示す。
【0026】
【図8】図8は、GC/MSによる定量化を示し、AK−51及び[2H7]プロリン内部標準の曲線下面積を示し、Wood et al. Journal of Chromatography B, 831, 313-9 (2005)に出典の方法に基づいたTBDMS誘導体化にしたがって、選択イオンモニタリング(Selective Ion Monitoring)でGC/MSで分析した。この化合物の分析の定量範囲は、0.312pmolから10pmolカラムであった。SIMに利用するイオンは、241.2(この化合物)及び350.3(重水素で置換したプロリン)であった。R2=0.9998(二次の非線形回帰)。
【0027】
【図9】図9は、NMDA受容体NR1の配列と特定のアミノ酸に水素結合で結合する様々な化合物を示している。
【0028】
【図10】図10は、NMDA受容体NR1と化合物X(GLYX−13)の結晶構造を示している。
【0029】
【図11】図11は、アルファ炭素間が12.171Åの距離を有するモデルペプチド(GLYX−13)を示す。
【0030】
【図12】図12は、ここで開示する化合物の1H NMRスペクトルを示す。
【0031】
【図13】図13は、ここで開示する化合物の1H NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
本開示は、概して、NMDAを調整することができる化合物、例えばNMDA拮抗薬又はNMDA部分的作動薬、及び開示の化合物の組成物及び/又は使用方法を対象とする。
【0033】
以下の定義は、本明細書の記述を通して用いられる。
【0034】
「アルケニル」の用語は、ここでは、不飽和の直鎖又は分岐で、炭素炭素二重結合を少なくとも1つ有する炭化水素であり、例えば、直鎖又は分岐の炭素原子2〜12、2〜10、2〜6がそれぞれ、C2〜C12アルケニル、C2〜C10アルケニル、C2〜C6アルケニルとして言われる。典型的なアルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2−エチルヘキセニル、2−プロピル−2−ブテニル、4−(2−メチル−3−ブテン)−ペンテニル等を含むが、これらに限定されない。
【0035】
「アルコキシ」の用語は、ここでは、酸素に結合したアルキル基(−O−アルキル)を言うものとして使用する。典型的なアルコキシ基は、ここでは炭素原子1〜12、1〜8、1〜6のアルキル基がそれぞれC1〜C12アルコキシ、C1〜C8アルコキシ、C1〜C6アルコキシを言うものとするが、これらに限定されない。典型的なアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ等を含むが、これらに限定されない。同様に、典型的な「アルケノキシ」基は、ビニロキシ、アリルオキシ、ブテノキシ等を含むが、これらに限定されない。
【0036】
「アルキル」の用語は、ここでは、直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素を言うものとして使用する。典型的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−3−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等を含むが、これらに限定されない。
【0037】
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、他に指定がない限り、アルコキシ、アルキル、シクロアルキル、アミノ、ハロゲン、及びC(O)アルキルから選択される1以上の群に任意に置換することができる。いくつかの実施形態では、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基は置換されておらず、つまりは非置換である。
【0038】
「アルキニル」の用語は、ここでは、1以上の炭素炭素三重結合を有する、直鎖状又は分岐状の不飽和炭化水素を言うものとして使用する。典型的なアルキニル基は、エチニル、プロピニル、及びブチニルを含むが、これらに限定されない。
【0039】
「アミド」又は「アシルアミド」の用語は、ここでは、−RaC(O)N(Rb)−、RaC(O)N(Rb)Rc−、又はC(O)NRbRc−の形状のラジカルを言うものであり、ここで、Ra、Rb、及びRcは、それぞれ独立して、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アシルアミド、アリル、アリルアルキル、カーバメイト、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリル、ヘテロシクリル、水素、ヒドロキシル、ケトン、及びニトロから選択される。アミドは、炭素、窒素、Rb、Rc、又はRaを通じて別の基に結合することもある。アミドは、環状であってもよく、例えば、RbとRc、RaとRb、又はRaとRcが3から12員環、さらには3から10員環又は5員環から6員環を形成するように結合してもよい。「カルボキシアミド」の用語は、−C(O)NRbRcの構造を言うものとする。
【0040】
「アミン」又は「アミノ」の用語は、ここでは、−NRdReの形状のラジカルを言うものとし、Rd及びReは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリル、アリルアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリル、及びヘテロシクリルから選ばれる。アミノは環状であってもよく、例えば、Rd及びReが結合して3から12員環、つまり、モルホリノ又はピペリジニルを形成してもよい。アミノの用語は、いかなるアミン基の第4級アンモニウム塩、つまり、−[N(Rd)(Re)(Rf)]+に相当するものも含み、Rd、Re、又はRfの1以上は、アルキル基である。ある実施形態では、Rd及びReが水素又はアルキルである。
【0041】
「ハロ(halo)」、「ハロゲン(halogen)」、又は「ハル(Hal)」の用語は、F、Cl、Br、又はIを言うものとして使用される。「ハロアルキル」の用語は、1以上のハロゲン原子で置換したアルキル基を言うものとする。
【0042】
「ヘテロシクリル」又は「ヘテロシクリル基」の用語は、当該技術分野で認識されており、飽和又は部分的に不飽和の3から10員環構造、又は、3〜7員環構造であって、その環状構造に1から4の窒素、酸素、硫黄等のヘテロ原子を含むものである。ヘテロシクリルは、モノ−、ジ−、又はそれ以上の環状組織であってもよい。ヘテロシクリルは、1以上のアリル、部分的に不飽和の環状構造、又は飽和の環状構造に結合してもよい。ヘテロシクリル基は、例えば、ビオチニル、クロメニル、ジヒドロフリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジチアゾリル、ホモピペラジニル、イミダゾリジニル、イソキノリル、イソチアゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルフォリニル、オキソラニル、オキサゾリジニル、フェノキサチニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリジン−2−オニル、ピロリニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリル、チアゾリジニル、チオラニル、チオモルフォニリル、チオピラニル、キサンテニル、ラクトン、アゼチジノン及びピロリジノンのようなラクタム、スルタム、スルトン等のようなものを含む。ヘテロシクリルは、1以上の位置において、アルカノイル、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミジノ、アミノ、アリル、アリルアルキル、アジド、カルバマート、カーボネート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリル、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、イミノ、ケトン、ニトロ、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、硫酸塩エステル、硫化物、スルホンアミド、スルフォニル、及びチオカルボニルのような置換基で置換されていてもよい。ある実施形態において、ヘテロシクリル基は、置換されておらず、つまり、ヘテロシクリル基は、非置換である。
【0043】
「ヘテロシクロアルキル」の用語は、当該技術分野で認識されており、上記で定義したように、飽和ヘテロシクリル基を言う。「ヘテロシクロアルコキシ」の用語は、ここでは、酸素(―O―)に結合したヘテロシクリルであって、当該酸素がアルキル基に結合したものを言う。
【0044】
「ヒドロキシ」及び「ヒドロキシル」の用語は、ここでは、-OHラジカルを言うものとして用いられる。
【0045】
「薬学的に又は薬理学的に許容される」とは、必要とする、動物又は人間に分子実体及び物質を投与したときに、拒絶反応、アレルギー反応、又はその他有害反応を起こさない分子実体及び物質を含んでいる。人間への投与及び製造は、FDA生物製剤基準局によって要求されている、無菌性、発熱性、一般的な安全及び純度基準を満たすべきである。
【0046】
本明細書で用いられる「部分的なNMDA受容体作動薬」の用語は、NMDA受容体のグリシン結合部に結合できる化合物として定義され、低濃度では、NMDA受容体作動薬が作動薬として機能し、高濃度では、NMDA受容体作動薬が拮抗薬として機能する。これらの濃度は、全ての部分的な作動薬それぞれに対して実験的に決められている。
【0047】
「薬学的に許容されるキャリア」又は「賦形剤」は、溶剤、分散系、媒体、コーティング、抗菌薬、抗真菌薬、等張剤、吸収遅延剤等のように生理学的に混合可能ないずれか及び全てを含む。1つの実施形態において、キャリアは、非経口投与に適している。また別の実施形態として、キャリアは、点滴投与、腹膣内投与、筋肉内投与、舌下投与、又は経口投与に適している。薬学的に許容されるキャリアは、無菌の注入可能な水溶液又は分散系の即時調整のための、無菌の水溶液又は分散系及び無菌粉末を含む。このような媒体及び化学物質を薬学的活物質のために使用することは、当該技術分野でよく知られている。活性化合物との相性が悪いいずれかの従来媒体及び従来薬を除いては、本発明の医薬組成物の使用を検討される。本発明の医薬組成物は、補助的な活性化合物を含んでいてもよい。
【0048】
「薬学的に許容される塩」という用語は、ここでは、本発明の組成物に用いられる化合物に存在できる酸性塩又は塩基性塩を言うものとして用いる。本発明の組成物に含まれる化合物で、その化合物が自然界で塩基性である場合、様々な有機酸及び無機酸と多様な塩を形成することができる。このような塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩を準備するために用いる酸は、毒性がない酸付加塩を形成する化合物であり、例えば、薬理学的に許容されるアニオンを含む塩として、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチアニン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、及びパモ酸塩(例えば、1−1’−メチレン-ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩)。アミノ部分を含む本発明の組成物に含まれる化合物は、様々なアミノ酸、それに加えて上述の酸と、薬学的に許容される塩を形成し得る。本発明の組成物に含まれる化合物で、その化合物が自然界で酸性である場合、薬理学的に許容される様々なカチオンと塩基性塩を形成することができる。このような塩の例としては、アルカリ金属塩、又はアルカリ土類金属塩を含み、特に、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、カリウム塩、及び鉄塩を含む。
【0049】
開示の化合物は、1以上のキラルの中心及び/又は二重結合を含むが故に、例えば幾何異性体、光学異性体、又はジアステレオマーのような立体異性体が存在する。「立体異性体」の用語は、ここでは、あらゆる幾何異性体、光学異性体、又はジアステレオマーを含むものとして使用している。これらの化合物は、不斉炭素原子を囲む置換基の配置によって、「R」又は「S」の記号で示される。本発明は、これらの化合物及びその混合物の様々な立体異性体を含んでいる。立体異性体は、エナンチオマー及びジアステレオマーを含んでいる。エナンチオマーとジアステレオマーの混合物は、命名法によると「(±)」で決められるが、当該分野の知識を有する人であれば、暗黙の了解で、構造が、キラルの中心を表示することを認識するであろう。
【0050】
本発明の化合物の個々の立体異性体は、非対称中心又は立体中心を含む商業的に利用可能な原料から合成して準備するか、又はラセミ体の混合物を製造し、続いて当該技術分野における通常の知識を有する者に広く知られた分割方法によって製造される。これらの分割方法は、(1)光学異性体の混合物をキラル助剤に接着させ、再結晶又はクロマトグラフィーによってジアステレオマーの得られた混合物を分離し、助剤から光学的な純物質を遊離させるか、(2)光学活性の分割剤を用いて塩を生成するか、又は(3)キラルのクロマトグラフィーカラムで光学異性体の混合物を直接分離するか、が挙げられる。例えば、キラル相のガスクロマトグラフィー、キラル相の高性能の液体クロマトグラフィー、キラル塩の錯体のような化合物の結晶化、又はキラル溶媒中の化合物の結晶化等の公知の方法によって、立体異性体の混合物を個々の立体異性体に分離してもよい。立体異性体は、公知の非対称の合成法によって立体的に純粋な中間体、試薬、及び触媒から得ることもできる。
【0051】
幾何異性体も、本発明の化合物に存在することがある。記号(実線と点線が相互に平行に並ぶ二重線)は、ここで記載するように、単結合、二重結合、又は三重結合の結合を示している。本発明は、様々な幾何異性体、及び、炭素炭素二重結合の周囲の置換基の配置、又は炭素環の周りの置換基の配置に起因する幾何異性体の混合物を含む。炭素炭素二重結合の周りの置換基は、「Z」又は「E」の構造で決定され、この「Z」及び「E」という用語は、IUPAC基準に従って使用される。もし特定しない限り、二重結合を描く構造は、「E」及び「Z」の両方の異性体を含む。
【0052】
炭素炭素二重結合の周りの置換基は、「シス」又は「トランス」の二択で表されていて、「シス」は、二重結合の同じ側の置換基を表し、「トランス」は、二重結合の反対側の置換基を表す。炭素環の周りの置換基の配置は、「シス」又は「トランス」で決定される。「シス」の用語は、環の面の同じ側の置換基であることを表し、「トランス」の用語は、環の面の反対の側の置換基であることを表す。置換基が環の面の同じ側及び反対側の両方に配置された化合物の混合物は、「シス/トランス」と表される。
【0053】
本明細書で開示する化合物は、薬学的に許容される溶媒、例えば水、エタノールのようなものと、溶媒和の形態でも非溶媒和の形態でも存在することができ、溶媒和の形態及び非溶媒和の形態の両方を含んでいる。一実施形態において、本発明の化合物は、アモルファスである。一実施形態において、本発明の化合物は、多形体である。また別の実施形態では、本発明の化合物は、結晶体である。
【0054】
本発明は、1以上の原子が自然界で通常見られる原子量又は質量数とは異なる原子量や質量数を有する原子に置き換わったものを除き、以下で列挙するものと全く同一の同位体標識した化合物をも包含する。本発明の化合物に含まれる同位体の例は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、及び塩素がそれぞれ、2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、及び36Clである。
【0055】
特定の同位体標識した開示の化合物(例えば、3H及び14Cで表示された化合物)は、化合物及び/又は基質組織分布分析で有用である。トリチウム化した異性体(例えば3H)及び炭素14(つまり14C)同位体は、前処理の簡便性及び検出能のために特に好ましい。さらに、重水素(例えば2H)のようなより重い同位体での置換は、より優れた代謝的安定性(例えば生体内での半減期を上昇させる、又は必要用量を減少させる)に由来した治療上の利点を得ることができ、それゆえ、状況によっては好ましい可能性がある。本発明の同位体標識した化合物は、例えば、同位体標識していない試薬を同位体標識している試薬に置換する実施例で開示する手順に類似した以下の手順で一般的に準備される。
【0056】
本明細書において用いられる「NMDA」は、N−メチル−d−アスパラギン酸塩として定義される。
【0057】
本明細書において、「治療の有効量」の用語は、研究者、獣医、医師、又はその他の臨床医が得ようとする、組織、システム、動物、又は人間の生物的又は医療的な反応を誘発し得る主要化合物の量を意味する。本発明の化合物は、病気を治療するために治療の有効量を投与される。あるいは、化合物の治療の有効量は、所望の治療効果及び/又は所望の予防効果を得るために必要な量であり、例えば、行動(例として記憶)、生理反応(例としてLTP誘導)、又は神経障害痛の抑制、を最大限に高めるために必要とされる量として定められる量である。
【0058】
ここで用いられる「ベータターン構造」又はベータターンは、Cα(アルファ炭素)原子(カルボニル炭素の隣の炭素原子)が、実質的に閉じている化学構造をいい、例えば、ドナー残基とアクセプター残基の間に水素結合を有し、そのドナー残基とアクセプター残基が、2又は3のペプチド結合の距離に一致する距離で離れている化学構造である。例えば、開示の化学構造が、束縛回転を有する二環式の環(例えば二環式のスピロラクタム)を含むとき、その化学構造は、ベータターン構造を有する。束縛回転は、例えばH3とH5の間での微弱なnOe(核オーバーハウザー効果)スペクトルで明らかになる。
【0059】
化合物
化合物、例えばここで開示するペプチド模倣薬は、いくつかの実施形態で、SEQ IDNo.1のNDMA配位子結合コアに結合することができる。例えば、開示するペプチド模倣薬は、約6Åから約14Å、約9Åから約14Å、又は約10Åから約13Å離れた、2つのアルファ炭素原子を有してもよい。いくつかの実施形態で、考慮されたペプチド模倣薬が、例えば生物学的活性のペプチド構造を模倣し得るように、内部拘束又は等角的拘束されている可能性がある。例えば、開示のペプチド模倣薬は、環状のアミドコア、例えば二環式のベータラクタムを含んでいる。例えば、開示のペプチド模倣薬は、2つのモジュラー部を有する開示の化合物であって、各モジュラー部が自然発生的なアミノ酸に置換されることもある。
【0060】
例えば、開示の化合物は、患者への投与に安定な、つまり生体中又は水溶液中で実質的に安定なベータターン構造を有していてもよい。いくつかの実施形態で、開示の化合物は、水素結合を形成することができ、つまりSEQ ID No.1の少なくとも1、2、3、又は4のアミノ酸、例えばPRO124、THR126、GLU178、及びSER180からなる群から選択されるアミノ酸に結合することができる。
【0061】
開示のペプチド模倣薬は、配座固定された合成(例えば、非ペプチジル)小分子(例えばスピロラクタム部分)を含んでいてもよく、その小分子は、例えば、その化合物の一部のグリシン部位の作動薬活性に寄与することもある。例えば、開示の化合物は、式Iによって表わされる化合物と、薬学的に許容される塩、立体異性体、及びそれらのN−オキシドとを含み;
Tは、独立して、それぞれ、CR4R4’であり、nは、0、1、2、又は3であり、
Aは、任意に存在し、フェニル又はピリジンから任意に選択され、Aは、Raから選択される1以上の置換基によって任意に置換され、
R1は、水素、ヒドロキシル、S(O)2−C1-4アルキル、−SO2、C1-4アルキル、C2−C4アルケニル、フェニル、R7、又は
からなる群から選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、又はフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
Xは、CH又はNであり、
R3及びR3’は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、フェニル、C1-4アルキル、アミド、アミン、又はC2-4アルケニルからなる群より選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R4及びR4’は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、フェニル、C1-4アルキル、アミド、アミン、C1-4アルコキシ、又はC2-4アルケニルからなる群より選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R2は、水素、R7、S(O)2、S(O)2−C1−C4アルキル、C1-4アルキル、ヒドロキシル、又はフェニルからなる群から選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R5及びR5’は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C2-4アルケニル、シアノ、アミノ、フェニル、及びヒドロキシルからなる群より選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R7は、−C(O)−R9、−C(O)−O−R9、又は−C(O)−NRd−R9からなる群より選択され、
R9は、水素、C1-4アルキル、フェニル、又はヘテロシクリルからなる群より選択され、C1-4アルキル、フェニル、又はヘテロシクリルは、Rbから選択される1、2、又は3の置換基で任意に置換され、
R8は、水素、−C(O)−、C1-4アルキル、又はC(O)−O−C1-4アルキルからなる群より選択され、C1-4アルキルは、Raから選択される1、2、又は3の置換基で任意に置換され、
Raは、それぞれ独立して、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、フェニル、C1-4アルキル、及びC1-4アルコキシから選択され、
Rbは、それぞれ独立して、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、フェニル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ及び−NH−Rcからなる群より選択され、
Rcは、C(O)−O−C1-4アルキル、C(O)−C1-4アルキルからなる群より選択され、
Rdは、それぞれ独立して、水素及びC1-4アルキルから選択され、薬学的に許容される塩、N-オキシド、又はそれらの立体異性体。
【0062】
例えば、本発明の化合物は、以下によって表される化合物を含んでいてもよい。
Ia
R1は、C(O)−C2-4−アルキルであり、C2-4−アルキルは、炭素原子1つをNH2又はN−カルボベンジロキシで置換し、別の炭素原子をヒドロキシルで置換される。例えば、R1は、C(O)−O−C1-4-アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル)であり、C1-4-アルキルは、フェニルで置換されており、R3、R3’、R5、及びR2は、上記のとおりである。
【0063】
別の実施形態において、式IaのR1及びR2は、それぞれ独立して、アミノ酸、例えばアミノ酸のL−異性体又はD−異性体から選択され、アミノ酸は、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及び/又はバリンである。例えば、R1及びR2は、それぞれ独立して、例えば以下のL-Thr又はL−Serであってもよい。
【0064】
R’は、水素又はC1-4アルキルからなる群から選択される。
【0065】
ある実施形態において、R1は、カルボベンジロキシであってもよいし、
で表されていてもよい。
Xは、Nであってもよい;R5’は、Hであってもよい;R8は、−C(O)−C2-4アルキル(例えば、エチル、プロピル、n−ブチル、又はt−ブチル)であってもよく、C2-4アルキルは、炭素原子1つをNH2又はN−カルボベンジロキシで置換し、別の炭素原子をヒドロキシルで置換される。
【0066】
ある実施形態では、R3は、フェニル(上述のように任意に置換したもの)であってもよく、水素であってもよい。いくつかの実施形態では、-C(O)C2-4アルキル(例えば、エチル、プロピル、n−ブチル、又はt−ブチル)は、F、Cl、又はBrからなる群より選択された1、2、又は3つの置換基によって任意に置換されていてもよい。
【0067】
C1-4アルキルを含む、検討してきたあらゆるRの群(例えばR1、R3、R5)に関して、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、又はt−ブチルからなる群より選択されてもよいし、前記C1-4アルキルは、F、Cl、又はBrからなる群より選択される1、2又は3の置換基によって任意に置換されていてもよい。
【0068】
このような化合物は、異なる異性化物を有してもよいし、いくつかの実施形態では、
で表されてもよい。ここで、R1、R2、R3、R3’及びR5は、上記で記載したとおりであってもよい。
【0069】
別の実施形態において、式IIで表される化合物、並びに薬学的に許容される塩、立体異性体、及びそれらのN−オキシドであり、
R1は、水素、ヒドロキシル、S(O)2−C1-4アルキル;−SO2、C1-4アルキル;R7、又は
からなる群より選択され、
Xは、CH又は水素であり、
R3及びR3’は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、フェニル、C1-4アルキル、アミド、アミン、又はC2-4アルケニルからなる群より選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル及びフェニルは、Raからなる群より選択される1以上の置換基によって任意に置換され、
R2は、水素、R7、−S(O)2、S(O)2−C14アルキル、C1-4アルキル、ヒドロキシル、又はフェニルからなる群から選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R5は、水素、ハロゲン、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C2-4アルケニル、シアノ、アミノ、フェニル、及びヒドロキシルからなる群より選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R6は、水素、ハロゲン、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C2-4アルケニル、シアノ、アミノ、フェニル、及びヒドロキシルからなる群より選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、及びフェニルは、Raから選択される1、2、又は3の置換基で任意に置換され、
R7は、−C(O)−R9、−C(O)−O−R9、又は−C(O)−NRd−R9からなる群より選択され、
R9は、水素、C1-4アルキル、フェニル、又はヘテロシクリルからなる群より選択され、C1-4アルキル、フェニル、又はヘテロシクリルは、Rbから選択される1、2、又は3の置換基で任意に置換されるか、又は、
R1及びR6が、ともに式IIの形式となる以下の形式であり、
R8は、水素、−C(O)−、C1-4アルキル、又はC(O)−O−C1-4アルキルからなる群より選択され、C1-4アルキルは、Raから選択される1、2、又は3の置換基で任意に置換され、
Raは、それぞれ独立して、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、フェニル、C1-4アルキル、及びC1-4アルコキシから選択され、
Rbは、それぞれ独立して、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、フェニル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ及び-NH-Rcからなる群より選択され、
Rcは、それぞれ独立して、C(O)-O-C1-4アルキル、C(O)-C1-4アルキルから選択され、
Rdは、水素及びC1-4アルキルである。
【0070】
典型的な実施形態では、式I、式II、式Ia、又は式IbのR1の部分は、
からなる群より選択されてもよい。
【0071】
実施形態の化合物は、
及び
を含む。
【0072】
ここでの開示は
からなる群より選択される化合物、及びこれらの薬学的に許容される塩、並びに薬学的に許容される塩、立体異性体、又はそれらのN−オキシドからなる群より選択される化合物である。
【0073】
本開示の化合物及びその製剤は、D−異性体、L−異性体、又はラセミ混合物(D−及びL−の両異性体)の1以上のあらゆる化合物の全てを含むことを意図している。さらに、本発明の化合物の製剤は、ここで開示された1以上の類似物の、L−異性体及びD−異性体のいかなる組合せ又は比率をも含むことを意図している。D−及び/又はL−異性体類似物をより多い割合で含む開示の化合物のこれらの製剤及び他の製剤は、開示の化合物又は化合物の混合物のラセミ体の製剤と比べて治療特性を高める可能性がある。例えば、開示の化合物は、エナンチオマーである可能性があり、エナンチオマーの例は、
であってもよい。
【0074】
開示の化合物は、NMDA受容体のカチオンチャネルを効率的に開くために提供される。開示の化合物は、例えば、カチオンチャネルを開くのを助けるために、NMDA受容体のグルタミン酸塩の部分に結合するか又は配位する。開示の化合物は、作動薬としての作用を通じて、NMDA受容体を制御(付いたり離れたり)することに使ってもよい。
【0075】
ここで意図する他の化合物は、環状のアミドコアを有する化合物を含む。一実施形態では、他の典型的な化合物は、ペプチドでもよいし、また別の実施形態では、ペプチド模倣薬であってもよい。意図する化合物は、以下に表わされる化合物を含む。
【0076】
R1は、水素又はベンジル基であり、
R4は、水素又はベンジル基であり、
R5は、
であり、
R6は、
のいずれかであり、
R2は、水素又はCH3であり、
R3は、水素又はCH3であり、又は立体異性体、又は薬学的に許容される塩又はそれらのN−オキシドである。
典型的な化合物は、
【0077】
を含んでいる。
【0078】
ここに記載された化合物は、グリシン部位NMDA受容体の部分的作動薬である可能性がある。本文中で用いられる部分的作動薬は、低濃度では類似体が拮抗薬として機能し、高濃度では類似物が作動薬として機能することを意味すると理解される。グリシン結合は、グルタミン酸塩によって又はグルタミン酸塩の拮抗阻害剤によって阻害されず、さらに、NMDA受容体のグルタミン酸塩と同じ部位にも結合しない。NMDA受容体には、グリシンに対する第2の別の結合部位が存在する。このようにNMDA受容体の配位子依存性イオンチャネルは、少なくともこれらの2つの異なるアロステリック部位に制御されている。開示の化合物は、NMDA受容体のグリシン結合部位に結合又は配位することができる可能性がある。いくつかの実施形態では、開示の化合物は、既存のNMDA受容体グリシン部位の部分的作動薬の活性の10倍以上の性能を有する可能性がある。例えば、開示の化合物は、GLYX−13と比較して10倍から20倍の増強性能を有する可能性がある。GLYX−13は、以下によって表される。
【0079】
ここに提示するものは、例えば50nMの濃度での海馬CAl錐体神経細胞の培養において突発的活性化NMDA受容体依存性単一ニューロン伝導(INMDA)で測定したときに、GLYX−13と比較して少なくとも約20倍を超える性能の化合物である。他の実施形態で、提示される化合物は、100nMから1μMの濃度での海馬CAl錐体神経細胞で、増強された単一刺激誘発NMDA受容体依存性単一ニューロン伝導(INMDA)を発生させることができる可能性がある。体外の海馬片でシャッファー側枝CA−1シナプスでの長期増強(LTP)の大きさに測定されるように、開示化合物は、GLYX−13と比較して増強性能を有する可能性がある。
【0080】
化合物の製造
いくつかの実施形態において、開示の化合物、例えばSEQ ID NO.1のNMDA配位子結合コアに結合できるベータターン構造を有するペプチド模倣薬は、ペプチド内の1以上のデヒドロアミノ酸に組み合わせることによって形成することができる。例えば、デヒドロフェニルアラニン、及び/又は、デヒドロロイシン、及び/又は、α‐アミノイソ酪酸を含むペプチドを組み込んで、ベータターン構造を有するペプチド模倣薬を形成してもよい。
【0081】
また別の実施形態では、開示の化合物は、拘束された二環式のベータターンジペプチド(BTD)構造を用いて形成される可能性がある。このアプローチは、ターンを誘導するペプチドカップリング(以下の図参照)のために幾何学的に適した場所に、カルボキシル基及びアミノ基を組み込むことによるジペプチド構造の変換に基づいている。
【0082】
例えば、1以上のアザビシクロノナンのようなジペプチド構造が、ベータターン構造を有する構造を形成するために組み込まれていてもよい。別の実施例では、開示のペプチド模倣薬は、以下に例示されるような、例えば、2、3又は4のアミノ酸の位置に、コア構造を含んでいてもよい。
【0083】
【0084】
いくつかの実施形態では、アザシクロアルケンが例えば以下のベータターン模倣薬を模倣する可能性がある。
【0085】
以下のスキームは、開示の化合物及びその中間体を製造するために用いてもよい代表的な合成法である。
【0086】
スキーム1:化合物の製造
スキーム2
【0087】
硝酸セリウムアンモニウム(すなわち、「CAN」)は、式(NH4)2Ce(NO3)6の化合物である。この橙赤色の水溶性塩は、有機合成の酸化剤として広く用いられる。この化合物が、定量分析の標準的な酸化剤として使用される。
【0088】
PMPは、p−メトキシベンジリデンを指し、;Cbzは、
と表されるベンジルオキシカルボニルラジカルを指す。
【0089】
組成物
他の側面において、開示の化合物及び任意に薬学的に許容される賦形剤を含む製剤並びに組成物が提供される。いくつかの実施形態で、意図した製剤は、1以上の開示の化合物のラセミ混合物を含む。
【0090】
意図した製剤は、使用するためにいかなる様々な形式で製造されてもよい。化合物は、実施例の方法に限定されず、経口投与、皮下注射、又は薬剤学の技術においてよく知られた、動物への活物質の投与方法に適した他の投与方法で製造される。
【0091】
製剤において、ここで述べたような開示の化合物の量は、各個人の、病状、年齢、性別、体重等の要因によって様々であってもよい。用法用量は、最適な治療方法が提供されるように調整する。例えば、単回ボーラスで投与するか、数回の分割投与で徐々に投与するか、又は治療状況の要求に応じて、比例的に増加又は減少して投与する。用量単位形で非経口組成物を処方することは、投与の簡便性及び用量の均一性の観点から特に有意義である。ここで用いられる用量単位形は、哺乳類の対象を治療するための単一の用量に合った物理的に別個の単一の用量を指し、各単位は、必須の薬学的なキャリアとともに、所望の医療効果を得るために算出された活性化合物を所定量含む。
【0092】
本発明の投与単位形の仕様書は、(a)選択される化合物の固有の特性、及び達成すべき特定の治療効果、並びに(b)個々の刺激感応性の治療するための、このような化合物を処方する技術分野における固有の制約、に基づいて直接的に記述される。
【0093】
ここで用いられる「薬学的に許容されるキャリア」又は「賦形剤」は、いかなるあらゆるものを含む。
【0094】
治療組成物は、典型的には、製造及び保管の状況下に、無菌であり、かつ安定でなければならない。本発明の組成物は、溶媒、マイクロエマルジョン、リポソーム又はその他の薬物高濃度に適した秩序構造として製剤される。そのキャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液化ポリエチレングリコール等)及びそれらの適した混合物を含む、溶媒又は分散媒とすることができる。例えば、レシチンのようなコーティングを用いて分散する場合には所要の粒径の管理によって、及び界面活性剤の使用によって、好適な流動性を維持する。多くの場合、例えば、砂糖、マンニトール、ソルビトールのような多価アルコール、又は塩化ナトリウムという等張剤を組成物中に含むことが好ましい。組成物中に、吸収遅延剤、例えばモノステアリン酸塩、ゼラチンを含むことによって、注入組成物を持続的に吸収させることができる。
【0095】
本発明の化合物は、持続放出型の製剤、例えば、放出遅延ポリマーを含む製剤で投与することができる。その化合物は、急速遊離に対してその化合物を保護するキャリア、例えばインプラント又はマイクロカプセル化した配送系を含む放出制御製剤で製造することができる。生分解性、生体適合性ポリマーは、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル類、ポリ乳酸、及びポリ乳酸とポリグリコールの共重合体(PLG)等が使用される。このような製剤を製造する多くの方法は、この分野における通常の技術を有する者に公知である。
【0096】
滅菌した注射剤は、上述の列挙した成分の1つ又は組合せの適した溶媒に、必要量の化合物を組み合わせることによって、また必要があれば、以下の殺菌ろ過によって、製造することができる。一般的に、分散液は、塩基性の分散媒体及び上記で列挙した必要な他の成分を含む無菌の賦形剤に活性化合物を組み込むことによって製造される。滅菌した注射剤を製造するための滅菌した粉末の場合、好ましい製造方法は、真空乾燥、及び、前述の殺菌ろ過した溶液から活物質と所望のあらゆる追加成分の粉末を作製する凍結乾燥である。
【0097】
本発明の別の側面によれば、化合物は、その溶解性を高める1以上の添加化合物とともに製剤化されていてもよい。
【0098】
方法
認知障害を治療するための方法及び学習効果を高めるための方法が提供される。この方法は、1以上の開示の化合物の薬学的に許容される製剤を、それを必要とする患者に投与することを含む。加齢による記憶障害、統合失調症、学習障害、発作、脳卒中後のけいれん、脳虚血、低血糖症、心不全、てんかん、偏頭痛の他、ハンチントン病、パーキンソン病、及びアルツハイマー病で苦しむ患者を治療する方法も記載される。
【0099】
他の意図する方法は、脳虚血、脳卒中、脳精神的外傷、脳腫瘍、重篤な神経障害性陣痛、慢性神経障害性陣痛、睡眠障害、薬物中毒、鬱病、特定の視力障害、エタノール禁断症状、記憶障害、及び学習障害の治療法を含む。一方、また別の側面では、疼痛緩和を高めるための方法、及び動物を鎮痛するための方法を提供する。
【0100】
実施例
以下の実施例は、例示目的のためだけに提供するもので、開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0101】
実施例1−ピロリジン由来のスピロ-β−ラクタム誘導体の合成
以下の反応式(スキームA)は、スピロラクタムを合成するために用いた。原料として、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、Cbz−L−プロリン酸塩化物、及びN−(Cbz)O−(ベンジルエーテル)−L−トリオニン酸塩化物を用いた。
スキームA
【表1】
【0102】
実施例2−化合物及び中間体の合成
スピロラクタム3
トリアジン2由来のメチレンイミンを、シュタウディンガー反応によってC4非置換のスピロラクタム3に合成した。(直訳:C4非置換のスピロラクタム3の合成は、トリアジン2由来のメチレンイミンのシュタウディンガー反応を通じて行われた)。Cbz−L−プロリン酸塩化物由来のケテンとメチレンイミンとの間の[2+2]環付加反応を、以下の方法で実行した:ケテンを、−40℃で45分間のトリメチルアミンとの酸塩化物の脱塩化水素によって生成した。その後、トリアジン2及び(トリアジンを解重合する)三フッ化ホウ素エーテル塩とのジクロロメタン溶液を添加した。12時間後に、対応するスピロラクタム3をエナンチオマーの混合物として30%から50%の収率で得た。CANの存在中でスピロラクタム3からPMP基の酸化除去によって、N−非置換スピロラクタム誘導体4を得た。その誘導体は、Pd(OH)2/Cと処理することによって、相当するスピロラクタム中間体5を得た。
【0103】
スピロラクタム4を、シリカゲルのクロマトグラフィーで精製した後に、93%の純度(HPLC)で得た。スピロラクタム5を、20%から70%のエチルアセテートシクロヘキサンの勾配溶離を用いたシリカゲルのクロマトグラフィーの後に、>90%の純度(NMRによる)で、50%の収率で得た。
【0104】
実施例3−中間体化合物の合成経路
トリアジン2
酢酸エチル/水(1:1)の混合物(500ml)中のp−アニシジン(24.6g、200mmol)の溶液を0℃に冷やして、(37%)ホルムアルデヒドの水溶液(17ml)を加えた。反応混合物を0℃で3時間攪拌し、さらに室温で1時間攪拌した。すると、有機相が分離したので、(50mlの)水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。真空下で溶媒を除去し、白色固体を得た。この固体をジメチルエーテルで1度洗浄し、26.3gの純粋なトリアジン2(40℃で一晩乾かした固体)を97%の収率で得た。
【0105】
スピロラクタム中間体3
−40℃に冷やした乾燥ジクロロメタン(65ml)中のN−ベンジロキシカルボニルL−プロリン酸塩化物(5g、18.7mmol)の攪拌溶液に、乾燥したトリエチルアミン(10.4ml、74.7mmol)を滴下した。溶液が黄変し、ケテンが形成されたことを確認した。
【0106】
予めCH2Cl2(35ml)中で、トリアジン2(2.52g、6.16mmol)とBF3OEt2(2.37ml、18.7mmol)を攪拌した紫色の溶液を、−40℃で45分経過した後、滴下した。混合物を室温で一晩中ゆっくり温めて、NaHCO3飽和水溶液で急冷した。水相をCH2Cl2(20ml)で2回抽出し、一体となった有機相を、塩水(20ml)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。そして、当該溶液を濃縮し、100%シクロヘキサンから20%酢酸エチル/シクロヘキサンへの勾配溶離を用いたシリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製し、37%の収率で7.01gの純物質を得た。
【0107】
スピロラクタム中間体4
−10℃のアセトニトリル(49ml)中でスピロラクタム3(2.4g、6.55mmol)を攪拌した溶液に、予め水(30ml)に溶解させたCAN(10.8g、19.6mmol)を1時間かけて滴下した。滴下完了後に、混合物を45分間攪拌した(TLCは、原料が残存していないことを示した)。その反応混合物を、酢酸エチル(100ml)及び飽和NaHCO3(50ml)で希釈した。有機相に水(100ml)及び固体の亜硫酸水素ナトリウム(20eq)を添加した。有機相を塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。そして、溶液を濃縮し、100%/シクロヘキサンから50%酢酸エチル/シクロヘキサンへの勾配溶離を用いたシリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製し、50%の収率で、0.87gの純物質を得た。
【0108】
スピロラクタム中間体5(AK−51)
0.5gの4を、20mlの酢酸エチルに溶かして、カニューレを通して、10%のPd(OH)2−C触媒50mgを含むH2(1atm)下のフラスコに移した。その混合物をH2の下、50PSiで一晩中攪拌し、その後、セライトによって触媒をろ過して除去した。有機相を濃縮し、シリカゲルのクロマトグラフィーで精製し、50%の収率で120mgの生成物を得た。
【0109】
N−(Cbz)−O−(ベンジルエーテル)−L−トレオニン酸塩化物7
乾燥エーテル(27mL)中でN−(Cbz)−O−(ベンジルエーテル)−L−トレオニン(0.95g、2.7mmol)を攪拌した溶液に、PCl5(0.61g、2.9mmol)を添加し、その混合物を室温で3時間攪拌した。そして、室温での高真空により溶媒を除去した。トルエンを添加し、上述のように除去した。なんら精製せずに、粗白色固体をカップリング反応に使用した。
【0110】
スピロラクタム中間体8及び9
乾燥THF(4mL)中でスピロラクタム4(200mg、0.76mmol)を攪拌した溶液に、−78℃でBuLi(ヘキサン中、0.32mL、0.80mmol)を滴下した。滴下完了後、その混合物を−78℃で1時間攪拌した。−78℃でTHF(4mL)中のN−(Cbz)−O−(ベンジルエーテル)−L−トレオニン酸塩化物7を添加した。その混合物を−78℃から室温にして一晩中攪拌した。
【0111】
反応混合物を、飽和NH4Cl(10mL)で急冷し、酢酸エチル(10mL)を添加した。酢酸エチルで水層を2回抽出した。一体となった有機相を、MgSO4で乾燥させて濃縮し、0.44gの粗生成物を得た。その粗生成物を100%のCH2Cl2から2%のMeOH/CH2Cl2の勾配のシリカゲルに通して溶出し、44%から73%の純度の範囲の留出物を得た。この反応を0.28gのスピロラクタム4で繰り返し、純度50%から73%の範囲の純度で、クロマトグラフィー留出物を得た。
【0112】
実施例4−NMDA受容体結合の分析
細胞組織の調製:
Ransom及びStec(1988)に既に示されたように、ラット海馬又はラット前脳(雄のSprague-Dawleyラット)から粗シナプス膜を調製し、内因性アミノ酸を除去するために、入念に洗浄した。簡潔にいうと、5mMのtris-HCIバッファ、pH7.4([3H]TCP結合実験で用いるため)の20容量中又は5mMのtris-アセテートバッファ、pH7.4([3H]グリシン結合試験に用いるため)の20容量中で、粗シナプス膜を再懸濁し、ポリトロン(Virtis shear; Virtis, NY, U.S.A.)を用いて均一化した。次いで、48,000gで20分間遠心分離することによって膜をペレット化した。この操作を二回繰り返した後に、同じバッファ中にホモジネートを−70℃で保存した。それぞれを使用する前に、ホモジェネートを室温で解凍し、ペレット化し、追加で4回洗浄した。[3H]グリシン実験のために、まず、25℃の0.04%のトリトンX−100を含む5mMtris-アセテートバッファ中でペレットを30分間培養し、その後、均一化及び遠心分離によって4回洗浄した。最後に、洗浄した膜を、5mMtris-HCIバッファ又は5mMtris-アセテートバッファのいずれかで、2〜3mg/mlの濃度で再懸濁した。
【0113】
TCP結合分析
特定の[3H]TCP結合の測定を、既に示されたように実行した(Haring et al., 1986, 1987; Kloog et al., 1988a)。最終的な反応混合物は、5mMtris-HCIバッファ200μl中に、50〜100μgの膜タンパクからなり、[3H]TCP、又は[3H]TCPと適当な濃度のNMDA受容体配位子又はmAbのいずれかを含んでいた。その反応混合物に膜を添加することによって反応を開始した。特に明記しない限り、結合分析は25℃の非平衡状態下で1時間行なった。100μMの非標識PCPを含む、類似サンプルで非特異的結合を測定した。結合反応は、0.1%のポリエチレンイミンで1時間の前処理したワットマンGF/Bガラスフィルタ上の濾過によって測定した。
【0114】
受容体と20nMの[3H]TCPとを120分間平衡に保ち、その後、[3H]TCPの膜結合部位から[3H]TCPの解離を測定した。解離反応は、NMDA受容体配位子又はmAbの存在下又は非存在下で、100μMの非標識PCPを添加して開始させた。指示された追加時間の培養の後、反応を即座(0時間)に終了した。
【0115】
1)海馬CAI錐体神経細胞中のNMDA受容体依存型単一ニューロン伝導(INMDA)に基づいて、及び2)生体内の海馬片におけるシャッファー側枝CAlシナプスの、長期増強(LTP)及び長期抑制(LTP)の大きさに基づいて、3つの化合物の作用を調べた。GLYX−13は、突発的に活性化したINMDA及びLTPの低濃度(1〜10μM)増強を示し、同時にLTD及び単一パルス誘発INMDAの減少を示すことが報告されている。100倍高濃度の100μMのGLYX−13は、LTD及び突発的INMDAを減少させるように変性し、もはやLTDに影響しない。
【0116】
化合物Bは、GLYX−13に比して有効性の面で20倍の増強を示した。この化合物50nMは、単一刺激(IA)及び突発的誘発(IB)INMDAの双方を著しく増強し、同様にLTP(IE)の大きさを2倍にした。一方、1μMのNRX−10,050は、単一刺激(IC)及び突発的誘発(ID)INMDAの双方を著しく減少させ、100μMのGLYX−13を連想させる(図2参照)。
【0117】
AK−51は、化合物Bよりも有効性が低かったが、その刺激作用でより広い濃度範囲を示した(図3)。100nM(2A)及び1μMのNRX−10,051の双方は、単一刺激誘発INMDAを増強したが、一方、1μMのNRX−10,051は、LTP(2D)の大きさを2倍にし、LTD(2E)を変化させなかった。
【0118】
AK−52は、低濃度(100nM、3A)で、単一刺激誘発INMDAを穏やかに増強させたのみであり、それは1μMの濃度(3B)でINMDAの顕著な減少に変わった。100nMのAK−52は、化合物B及びAK−51と同様の大きさでLTPを増強したが、これは、LTDを変化させず、1μM濃度でわずかであるが有意にLTPを減少させた。
【0119】
これらの3つの化合物は、GLYX−13に比して有効性の面で約20倍の増強を示した。化合物Bは、低濃度(50nM)でのINMDAの最も強力な増強剤である。AK−51のINMDAの増強はより小さいが、AK−51が10倍(100nMから1μM)に増強されると、この作用が残存した。AK−52はINMDAの最も弱い増強剤であったが、この作用はINMDAの明らかな減少により迅速に逆転した。
【0120】
これらの化合物は、同程度、つまり、約2倍にLTPの大きさを増強した。GLYX−13は、LTPを増強すると同時に、LTDを減少させた唯一の化合物であった。AK−52は、INMDAを減少させる濃度でさえ、LTDに影響を及ぼさなかった。GLYX−13は、NR2A/Bサブユニットを含むNMDA受容体によって媒介されるINMDAを選択的に増強することができ、これらの受容体は、シナプス外に局所化しており、LTPを誘発するニューロン性バーストによってより強力に活性化する。テストした化合物の全てが、LTP及びINMDAに有効性の作用を有するが、GLYX−13よりLTDの作用が小さいほど、化合物がNMDA受容体のグリシン部を含むNR2A/Bに対する選択性が増すことを示唆する。
【0121】
実施例5:T−迷路学習モデル
この研究に、生後3ヵ月の雄のフィッシャー344Xブラウン・ノルウェーFlクロスラット(FBNFl)を使用した。T−迷路は、その迷路を包囲する黒のフレキシガラスで作られたアーム(45cm長×10cm幅×10cm高)で構築した。褒美の餌(チェリオス、100mg/ピース)を置いた各ゴールアームの終端に、金網に並べられた2つのプラスチック製のボトルキャップを固定した。実験開始前に、動物が自由に食べていた体重の約85%になるまで、動物から食物を徐々に取り上げた。実験開始前の連続3日間、迷路中に食物を点在させたT−迷路に動物を慣れさせた。実験1日目に、右アーム選択に対して動物に褒美を与え、10回中9回連続で正しい選択の基準に訓練した。実験2日目に、左アーム選択に対して動物に褒美を与え、10回中9回連続で正しい選択の基準に訓練した。次の実験日には、実験開始60分前に、胃管栄養法(4", 16-ga;Braintree Scientific, Braintree MA)によって盲検下で、AK51(0.3、1、3、10、30mg/kgp.o.)又はDMSO賦形剤(1mg/ml、Sigma, Saint Louis MO)を動物に注射した(各グループにn=8〜9)。実験の1回目では、両アームに食物を餌としてつけ、以降の20回では、別の選択(動物の先の選択の反対)にのみ褒美を与えた(試験間間隔〜30秒)。各々の動物で基準(5連続正しい選択)に対する試験の数を算出した。個々の薬の用量を賦形剤(α=.05)と対比するフィッシャーPLSD事後試験に基づいた分散分析(ANOVA)によってデータを分析した。
【0122】
図5は、絶食した生後3ヵ月のラットに、二択のT−迷路試験(20試行)で基準に対する平均(+SEM)試験を示す。試験開始の60分前に、DMSO賦形剤(1組あたりn=8〜9)中の0、0.3、1、3、10又は30mg/kgのAK051を、動物に経口注入した。***P<.001、**P<.01、フィッシャーPLSD事後対賦形剤。
【0123】
実施例6:神経性疼痛のホルマリン試験
前に記述されているように実験した(Abbott et al. Pain, 60, 91-102, 1995; Wood et al., Neuroreport, 19, 1059-1061 2008)。この研究には、生後3ヵ月の雄のフィッシャー344Xブラウン・ノルウェーFlクロスラット(FBNF1)を用いた。実験開始前に、動物を、2日間連続で各日に10分間ずつテストチャンバ(30×30×60cmの不透明なプレキシガラス)に慣れさせた。実験日には、ホルマリン注射の60分前に胃管栄養法(4", 16-ga;Braintree Scientific, Braintree MA)によって盲検下で、0、0.3、1、3、10又は30mg/kgbのAK051、又はDMSO賦形剤(1mg/ml、Sigma, Saint Louis MO)を動物に注射した(1組につきn=8〜9)。ホルマリン注射の10分前に動物をテストチャンバに入れた。ホルマリン注射のためにラットを手作業で拘束し、左の後足の足底の表面上の側部足蹠に1.5%のホルマリンを皮下注射した(26-ga針で50μL、Sigma, Saint Louis MO)。ホルマリン注射後、ラットをテストチャンバに戻した。ホルマリン注射後50分間、斜軸式鏡を用いて動物を下からビデオに録画した。後相(ホルマリン注射後30〜50分)の間、注射された足を舐めるまでに費やした総時間及び注射された足の畏縮の総数を、双方の測定のための(r>0.9)評価者内の高い信頼性及び評定者内の高い信頼性のある熟練した実験者によって、盲検下のオフラインで測定した。試験後すぐに全ての動物をCO2で安楽死させた。個々の薬の用量を賦形剤(α=.05)と対比するフィッシャーPLSD事後試験に基づいた分散分析(ANOVA)によってデータを分析した。図6は、内部足底をホルマリン注射(1.5%のホルマリン50μL)した後の晩期反応(30〜50分)における畏縮の減少%で規定した平均%(+SEM)無痛消失を示す。
【0124】
実施例7:学習及び記憶を増強する経口製剤
AK−51の経口剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)で調製した。全ての服用は、300μlの体積を投与した。そして、体重に基づいて決められた用量を動物に投与するように計算した以下のような容量で、胃管栄養法によって動物に経口投与した(給送針を挿入して口から強制的に与えた)。
0.0mg/kg DMSO(賦形剤)に300μL;
0.3mg/kg DMSOに300μL;
1.0mg/kg DMSOに300μL;
3.0mg/kg DMSOに300μL;
10.0mg/kg DMSOに300μL、
30.0 mg/kg DMSOに300μL
【0125】
試験開始60分前に上述の用量の1つで動物に注入した。次に、動物の学習反応を評価するために二択のT−迷路試験(20回)を用いた。このプロトコルは、実施例5で詳述している。簡潔に述べると、T−迷路は、選択の試験である。対照のラットを「T」の下部に置いた。少し時間がたつと、ラットは、迷路を探検し、右か左のアームに入ることを選択した。選択は、自発的二択、手がかり褒美を含む基準の多様性、又は好みを示すことに従って採点した。この研究で用いた基準に基づいて、学習及び記憶を試験するためにT−迷路を用いた。迷路の一端に置いた食物は、各動物試験のための陽性強化因子に使った。
【0126】
経口で1.0mg/kg用量のAK−51を与えた動物は、T−迷路試験での学習反応に統計的に顕著な強化が見られた(P<0.001)。経口で3.0mg/kg用量の非ペプチド類似物NRX−10,051を与えた動物も、T−迷路試験での学習反応に統計的に顕著な強化が見られた(P<0.01)。
【0127】
実施例8:異性体
実施例4のように、NDMA結合分析にAK−55の2つの異なる異性体を使用した。AK−55の1つの異性体は、NMDAを強力に増強するが、他の異性体は増強しない。図7Aは、全細胞記録(平均+SEM、n=6)下でのCAl錐体神経細胞における、規格化され、薬理的に分離したNMDA受容体依存性流れの1μMのAK55(実線)の15分の潅流液中投与法(bath application)の効果の経時変化を示す。Bは、全細胞記録(平均+SEM、n=7)下でのCAl錐体神経細胞における、規格化され、薬理的に分離したNMDA受容体依存性流れの1μMのAK55(実線)の15分の潅流液中投与法(bath application)の効果の経時変化を示す。Cは、高周波シャッファー側枝刺激(2×l00Hz/500ミリ秒)によって誘導された細胞外興奮性シナプス後電位スロープ(平均+SEM fEPSP)の長期増強(LTP)の大きさにおける、未処理の制御片(白丸、n=8)と比較した1μMのAK6(実線、黒丸)の潅流液中投与法(bath application)の効果の経時変化を示す。
【0128】
実施例9:生化学的分析
表Bは、AK51と様々のターゲットに対する結合分析の結果を示している。
【0129】
【表B】
【0130】
実施例10:スピロ化合物のβターンの同定
プロトン1−D実験1H,13C,DEPT,等核2−D実験(DQF-COSY、TOCSY、NOESY)、及びセ氏30℃でのDMSO-D6のヘテロ核実験HSQC及びHMBCを、スピロ化合物の炭素化学シフト及びプロトン化学シフトを的確に確かめるために行う。
【0131】
【0132】
化学シフトは、以下のように観察される:1H,DMSO-d6, 600MHz, δ in ppm, TMS at 0.00ppm: 8.72(bs,1H), 3.47(dd,2H), 3.37(t,2H), 2.21(m,2H), 2.02(m,lH), 1.89(m,lH) (図12参照)。
【0133】
13C,DMSO−d6,150MHz, δ in ppm, 39.5ppmでの参照DMSO: 169.6, 68.7, 45.6, 40.7, 32.9, 22.4.
【0134】
アミドプロトンの化学シフトは、8.72ppmに広範の一重項で見られたし、8.72と3.37の間に交差ピークが観測された。この発見により、3.47ppmのH-3の化学シフトが認められた。3.37ppmと2.21ppmの間の微弱なnOeは、2.21ppmでのH-5の個体群を示している。2.021と1.89ppmを通じて3.37ppmから2.21ppmまでに全相関が見られた。nOe相関は、2.21, 2.02, 1.89と3.37ppmとの間で観測された。この発見は、H-6とH-7、つまり、H-6(2.02と1.89ppm)、H-7(3.37ppm)の共鳴と理解できる。ヘテロ核2−D実験(HSQC及びHMBC)も、フォトン及び炭素の化学シフトを確認した。
【0135】
個々のフォトン及び炭素の化学シフトは、以下のように観測された:
【0136】
8.72 (bs, H-2,1H), 3.47(dd,H-3,2H), 3.37(t,H-7,2H), 2.21(m,H-5,2H), 2.02(m,H-6,1H), 1.89(m, Η-6’1Η)
【0137】
169.6(C-1), 68.7(C-4), 45.6(C-7), 40.7(C-3), 32.9(C-5), 22.4(C-6)
【0138】
H−3とH−5の間の微弱なnOeは、お互いに対して環の束縛回転を示唆している。ドナーとアクセプターの残基i(i±3)における水素結合がないこと、及び2つの環の間の長距離のnOe(Cα原子<7Å)がないことは、著しい二次的な折れ目がないことを示している。
【0139】
実施例11
フォトン1−D実験1H,13C,DEPT,等核2−D実験(DQF-COSY,TOCSY,NOESY)及びDMSO-D6におけるセ氏30℃でのヘテロ核実験HSQC及びHMBCは、スピロ化合物
の炭素の化学シフト及びフォトンの化学シフトを的確に確認するために行う。DMSOにおける1HNMRは、図13に示している。600MHzのA N15−HSQC実験は、アミド化学シフトを確認するために行う。
【0140】
均等物
当業者は、ここに記述される発明の特定の実施形態に多くの均等物を認識し、又はありふれた実験を行なうことにより確認することができる。このような均等物は、以下の請求項に包含されることを意図する。
【0141】
参照による取り込み
すべての特許の全内容、公開された特許出願、ウェブサイトとその他の引用文献は、参照によって全体としてここに明らかに取り入れられ、以下のものを参照によって取り入れるものとして含んでいる。
【0142】
Abbott FV, Franklin KB, Westbrook RF, The formalin test: scoring properties of the first and second phases of the pain response in rats. Pain, 60 (1995) 91-102; Bennett GJ, Xie YK., A peripheral mononeuropathy in rat that produces disorders of pain sensation like those seen in man. Pain, 33 (1988) 87-107;米国特許第7,273,889; 米国特許第6,821,985; 米国特許第6,667,317; 米国特許第6,635,270; 米国特許第6,521,414; 米国特許第6,197,820; 米国特許第6,147,230; 米国特許第6,007,841; 米国特許第5,952,389; 米国特許第5,902,815; 米国特許第5,741,778; 米国特許第5,605,911; 米国特許第5,523,323; 米国特許第4,959,493; Moskal, et al. (2005), Neuropharmacology, 49(7): 1077-87; Narahshi, Toshio et al. (2004) Biol. Pharm. Bull., 27(1): 1701-1706; Lynch, Gary et al. (2006), Aging Research Reviews, 5:255-280; Rajashankar et al. J. Am. Chem. Soc. (1992), 114, 9225; Rajashankar et al. J. Am. Chem. Soc. (1995), 117, 10129; A. Karle et al, Biochemistry (1990), 29, 6747; Regan et al, Science (1998), 241, 976; Kaumaya et al, Biochemistry (1990), 29, 13; Hanessian et al, Tetrahedron (1997), 53, 12789; Zhang et al, Org. Lett. (2003), 53115; Xuyuan et al, Org. Lett. (2004), 6, 3285; Halab et al, J. Med. Chem. (2002), 45, 5353
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2010年2月11日に出願された米国特許仮出願番号61/303472の優先権を享有し、そのすべての開示内容全体を参照により本明細書に取り込む。
【背景技術】
【0002】
N−メチル−D−アスパラギン酸塩(NMDA)受容体は、とりわけ興奮性アミノ酸のグルタミン酸及びグリシン、並びにそのNMDA合成化合物、に反応性を示すシナプス後イオンチャネル型受容体である。NMDA受容体は、受容体関連のチャネルを通過してシナプス後神経系細胞に2価及び1価の両イオン流を制御する(Foster et al., Nature 1987, 329:395-396; Mayer et al, Trends in Pharmacol. Sci. 1990, 11:254-260)。NMDA受容体は、ニューロンの構造及びシナプス接続を発生するときに結び付けられ、経験依存的シナプス改変に関係している可能性がある。さらに、NMDA受容体は、長期増強電位及び中枢神経系疾患に関係があるとも考えられている。
【0003】
NMDA受容体は、記憶獲得、記憶力、学習能力等のような、多くの高度な認知機能の根底にあるシナプス可塑性に重要な役割を果たすとともに、認知経路や苦痛の知覚にも重要な役割を果たす(Collingridge et al., The NMDA Receptor, Oxford University Press, 1994)。加えて、NMDA受容体の特性は、それが知覚の基礎となる、脳内の情報処理に関連している可能性があることを示唆している。
【0004】
NMDA受容体が、CNS障害の広域スペクトルに関連することが公になってからというもの、NMDA受容体に特に関心が集まっている。例えば、脳卒中又は外傷で起きた脳虚血のときに、損傷又は酸欠状態のニューロンから、過量の興奮性アミノ酸のグルタミン酸が放出される。この多量のグルタミン酸が、NMDA受容体に結合し、NMDA受容体がイオンチャネル内蔵型受容体を開放する。これを受けて、カルシウム流入が、細胞内のカルシウムの濃度を高め、生化学のカスケード反応が活性化されて、タンパク質の分解や細胞死をもたらす。この現象は、興奮毒性として知られるが、心不全やてんかんに関係があるとも考えられている。さらに、ハンチントン病、パーキンソン病、及びアルツハイマー病の慢性神経変性に、類似した関連を示すという速報がある。NMDA受容体の活性化は、脳卒中後の痙攣の原因になることを示しており、てんかんのある特定のモデルでは、NMDA受容体の活性化が、発作の発生に必要であることを示していた。動物麻酔剤PCP(フェンシクリジン)によるNMDA受容体Ca++チャネルの阻害が、統合失調症と同様の精神異常の症状をヒトに生じさせるので、NMDA受容体の神経精神病学的な関係も認められている(reviewed in Johnson, K. and Jones, S., 1990)。さらに、NMDA受容体は特定の種類の空間学習にも関係している。
【0005】
NMDA受容体は、シナプス後膜に組み込まれたいくつかのタンパク質鎖からなると考えられている。これまでに発見されたサブユニットの最初の2つのタイプは、大きな細胞外領域を形成し、その細胞外領域は、ほとんどのアロステリック結合部位をおそらく含んでおり、いくつかの膜貫通領域は、Ca++を通すことができる孔又はチャネル、及びカルボキシル末端領域を形成するように、環状に折り重ねられる。チャネルの開閉は、細胞外表面にあるタンパク質の領域(アロステリック部位)に種々のリガンドを結合させることによって調整される。リガンドの結合は、チャネルが、開いているか、部分的に開いているか、部分的に閉まっているか、閉まっているかで、最終的に反映されるタンパク質の全体構造における立体構造変化に影響を及ぼすと考えられる。
【0006】
NMDA受容体化合物は、アロステリック部位を通じて、NMDA受容体に対する二つの(作動的/拮抗的)効果を発揮する可能性がある。これらの化合物は、「部分的作動薬」と典型的に呼ばれる。主要なリガンド部位の存在下で、部分的作動薬は、リガンドの一部を置き換えて、こうして受容体を通過するCa++の流れを減少させる。主要な配位子部位がないか、又は少ないと、部分的作動薬は、受容体チャネルを通過するCa++の流れを増加させるように作用する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当該分野においては、NMDA受容体のグリシン結合部位に結合でき又は会合でき、かつ新規で、より選択的に/より効能がある化合物、特に、NMDA受容体NR1のリガンド結合コアに結合でき又は会合でき、かつ生体内で特別な選択性及び/又は優れた効能がある化合物に対するニーズが存在し続けている。さらに、医学の分野において、このような化合物を経口投与が可能な形態に対するニーズが存在し続けている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここで提示するものは、少なくとも一部で、NMDAモジュレータ、例えばNMDAの部分的作動性の化合物である。例えば、ここで提示するものは、NMDA受容体のグリシン結合部位、例えばSEQ ID NO.1と選択的に相互作用し得るベータターン構造を模倣する化合物である。例えば、開示のペプチド模倣薬は、SEQ ID NO.1に結合する場合、ベータターン構造を有する。いくつかの実施形態では、開示のペプチド模倣薬は、生体内又は水溶液中で、ベータターン構造を実質的に維持する。
【0009】
いくつかの実施形態では、SEQ ID NO.1のNMDAリガンド結合コアに結合し、又は会合することができるペプチド模倣薬を提供する。前記ペプチド模倣薬は、2つの炭素原子が少なくとも約6Åから約14Å離れており、又は約6Åから約8Å離れている。例えば、開示の模倣薬は、環状アミドコア、例えばスピロベーターラクタムを含んでいてもよい。
【0010】
別の実施形態において、開示のペプチド模倣薬は、カルボキシル基及びアミノ基を有する部分で置換した2又は3のアミノ酸を有するペプチドであってもよい。ある実施形態では、請求項1〜6のいずれかに開示されたペプチド模倣薬であって、そのペプチド模倣薬は、SEQ ID NO.1の次のアミノ酸:PRO124、THR126、GLU178、及びSER180の、少なくとも1、2、3又は4と水素結合を形成するか、又は4つの全てのアミノ酸と水素結合を形成する。
【0011】
例えば、ここで提示するものは、SEQ ID NO.1のNMDA配位子結合コアに結合できるペプチド模倣薬であって、前記ペプチド模倣薬は、少なくとも約6Åから約14Å(例えば約6Åから約10Å)離れた2つの炭素原子と、ペプチド模倣薬が前記SEQ ID NO.1に結合する場合に、実質的に立体配置を保持したままの二環式のアミドコア(例えばスピロ−ベータ−ラクタム)を含むベータターン構造とを有する。このようなペプチド模倣薬は、
で表わされるコアを含んでいてもよい。典型的なペプチド模倣薬は、生体中又は水溶液中でベータターン構造を実質的に維持し、SEQ ID NO.1の次のアミノ酸:PRO124、THR126、GLU178、及びSER180と水素結合を形成してもよい。いくつかの実施形態では、ベータターンコアは、1又は2のアミノ酸と結合することもある。
【0012】
患者のNMDA受容体の介在疾患を治療し、又は予防する方法をも提供する。その方法は、環状アミドの部位(例えばベータ−ラクタム部位)を有するベータターンペプチド模倣薬の環状化合物を模倣するグリシンの、NMDA配位結合コア受容体の作動又は拮抗の許容量を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0013】
ここで提示するものは、SEQ ID NO.1の活性を調整する方法であって、その調整は、化合物に導入された好ましい立体配座から生じており、前記調整は、化合物と、1、2、3、又は4の次のアミノ酸:PRO124、THR126、GLU178、及びSER180との間の水素結合相互作用から生じる。
【0014】
別の実施形態において、SEQ ID NO.1に結合できる化合物を特定する方法を提示しており、その方法は、a)SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.1の分子モデルによる原子座標、又は登録番号1PBQのタンパク質構造データバンクにある原子座標、のうちの少なくとも一部に由来するSEQ ID NO.1の1以上のターゲット領域を含む分子モデルを準備すること、b)その分子モデルを使用して、分子モデル内で1以上のターゲット領域に結合できる化合物を特定すること、及びc)その化合物を製造すること、を含んでいる。いくつかの実施形態では、このような方法は、その化合物がSEQ ID NO.1を変調するか否かを特定する追加工程をさらに含んでもよい。
【0015】
ここで提示するものは、開示の化合物及び薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的に許容される組成物でもある。このような組成物は、例えば、患者への経口投与に適している場合もある。
【0016】
物忘れ又は学習障害に関連する疾患のような認知障害の治療方法であって、開示の化合物の有効量を、必要とする患者に投与することを含む。ここで提供するものは、例えば、患者の記憶喪失又は学習障害を、治療又は改善する方法である。
【0017】
ある実施形態では、患者の神経障害性疼痛を治療する方法であって、開示の化合物を必要とする患者に有効量投与することを含む治療方法を提供する。
【0018】
ここで提示するものは、患者のうつ病、強迫性障害又は統合失調症を治療する方法であって、開示の化合物を、それを必要とする患者に有効量投与することを含む方法でもある。他の実施形態では、患者の心的外傷後ストレス障害、アルコール依存症又は習慣性薬物中毒を治療する方法であって、開示の化合物を必要とする患者に有効量投与することを含む治療方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1A〜1Dは、開示の化合物(AK52)が、シャッファー側枝CAlシナプスで、シナプス後NMDA受容体媒介興奮性シナプス後電流(e.p.s.c.s)を二相的に変化させ、LTP誘導を選択的に増強させることを示す。1A:CAl錐体神経細胞におけるシャッファー側枝誘導e.p.s.c.sのNMDA成分のAK52(1μM、実線)による顕著な減少の経時変化、各点は、5つの細胞のe.p.s.c.peNRXe振幅の平均+SEMである。1B:CAl錐体神経細胞におけるシャッファー側枝誘導e.p.s.c.sのNMDA成分のAK52の1/10の濃度(100nM、グレイバー)による増強の経時変化、各点は、5つの細胞のe.p.s.c.peNRXe振幅の平均+SEMである。1C:未処理片の対象(白丸、n=8)と比較した、1μM(黒丸、n=10)及び100nMのNRX−10,052(黒菱形、n=6)での前処理片におけるシャッファー側枝−CAIシナプスでの低周波刺激実施(2Hz/10分、矢印で開始)によって誘発されたLTDの経時変化、各点は、n片の規格化細胞外領域EPSP傾きの平均+SEMである。1D:未処理片の対象(白丸、n=15)と比較した、1μM(黒丸、n=10)又は100nMのNRX−10,052(黒菱形、n=8)での前処理片におけるシャッファー側枝−CAIシナプスでの高周波刺激実施(3×100Hz/500m秒、矢印)によって誘導されたLTP比較実験の経時変化、各点は、n片の規格化領域epsp傾きの平均+SEMである。
【0020】
【図2】図2A〜2Eは、開示の化合物Bが低濃度で、シャッファー側枝CAlシナプスで、薬理学的に分離したシナプス後NMDA受容体媒介興奮性シナプス後電流(e.p.s.c.s)を顕著に増強させ、LTPを増強させ、一方、20倍の高濃度がNMDAe.p.s.c.sを減少させることを示す。2A:CAl錐体神経細胞において記録された、単一刺激シャッファー側枝誘導の薬理学的に分離したNMDAe.p.s.c.sの化合物B(50nM、実線バー)による顕著な増強の経時変化。2B:記録した突発的誘発(4パルス/100Hz)NMDAe.p.s.c.s.の化合物による増強の経時変化(50nM、実線バー)。2C:CAl錐体神経細胞において記録された、単一刺激シャッファー側枝誘導のNMDAe.p.s.c.s.の化合物B(1μM、実線)による顕著な減少の経時変化。2D:CAl錐体神経細胞において記録された、突発的誘発(4パルス/100Hz)シャッファー側枝誘導NMDAe.p.s.c.s.の化合物B(1μM、実線バー)による減少の経時変化。2E:対照、未処理(白丸)と比較した、50nM化合物B(黒丸)によるCAI錐体神経細胞でのシナプスにおける高周波(100Hz/500m秒×3、実線矢印)シャッファー側枝刺激誘導LTPの増強、各点は、n細胞のe.p.s.c.s.peNRX振幅の平均+SEMである。
【0021】
【図3】図3A〜3Cは、開示の化合物(AK51)の100nM及び1μM濃度の双方が、シャッファー側枝CAlシナプスで、薬理学的に分離したシナプス後NMDA受容体媒介(e.p.s.c.s)を増強させ、LTPを増強させることを示す。3A:CAl錐体神経細胞において記録された、単一刺激シャッファー側枝誘導の薬理学的に分離したNMDAe.p.s.c.sのNRX−10,051(100nM、実線)による顕著な増強の経時変化(n=x)。3B:CAl錐体神経細胞において記録された、単一刺激シャッファー側枝誘導の薬理学的に分離したNMDAe.p.s.c.sのAK51(1μM、実線バー)による増強の経時変化(n=y)。3C:未処理片(白丸)と比較した、100nM()及び1μM(黒丸)のAK5151による錐体神経細胞でのシナプスにおける高周波(100Hz/500m秒×3、実線矢印)シャッファー側枝刺激誘導LTPの増強。3D:未処理片(白丸、n=8)と比較した、1μM(黒丸、n=10)又は100nMのNRX−10,051(黒菱形、n=6)で前処理した片におけるシャッファー側枝−CAIシナプスでの低周波刺激実施(2Hz/10分、矢印で開始)によって誘導されたLTDの経時変化、各点は、n細胞のe.p.s.c. peNRX振幅の平均+EMである。
【0022】
【図4】開示の化合物がNMDA電流及びLTPを増強させることを示す。A:全細胞記録下で記録された、CAl錐体神経細胞の正常化され、薬理学的に分離したNMDA受容体依存性流における100nMのAK51(実線)の20分間の潅流液中投与法(bath application)作用の経時変化。 B:全細胞記録下で記録された、CAl錐体神経細胞の正常化され、薬理学的に分離したNMDA受容体ゲート流における1μMのAK51(実線バー)の20分潅流液中投与法作用の経時変化。 C:高周波シャッファー側枝刺激(矢印、2×l00Hz/500ミリ秒)によって誘導された、細胞外興奮性シナプス後電位傾き(平均+SEM、fEPSP)の長期増強(LTP)の大きさにおける、未処理対照片(白丸、n=6)と比較した100nMのAK51(実線、黒丸、n=8)の潅流液中投与法作用の経時変化。 D:高周波シャッファー側枝刺激(矢印、2×l00Hz/500ミリ秒)によって誘導された、fEPSP傾き(平均+SEM)のLTPの大きさにおける、未処理対照片(白丸、n=6)と比較した1μMのAK51(実線バー、黒丸、n=8)の潅流液中投与法作用の経時変化。E:低周波シャッファー側枝刺激(矢印、2Hz/10分)によって誘導されたfEPSP傾き(平均+SEM)の長期抑制の大きさにおける、未処理対照片(白丸、n=8)と比較した1μMのAK51(実線、黒丸、n=10)の潅流液中投与法作用の経時変化。
【0023】
【図5】図5は、開示の化合物を用いたラットのT−迷路試験の結果を示す。
【0024】
【図6】図6は、ラットのホルマリン神経性疼痛の結果を示す。
【0025】
【図7】図7は、開示の化合物の1つの異性体AK−55−Aが、NMDA電流及びLTPを顕著に増強し、一方、AK−55−Bは、NMDA電流及びLTPを増強しないことを示す。
【0026】
【図8】図8は、GC/MSによる定量化を示し、AK−51及び[2H7]プロリン内部標準の曲線下面積を示し、Wood et al. Journal of Chromatography B, 831, 313-9 (2005)に出典の方法に基づいたTBDMS誘導体化にしたがって、選択イオンモニタリング(Selective Ion Monitoring)でGC/MSで分析した。この化合物の分析の定量範囲は、0.312pmolから10pmolカラムであった。SIMに利用するイオンは、241.2(この化合物)及び350.3(重水素で置換したプロリン)であった。R2=0.9998(二次の非線形回帰)。
【0027】
【図9】図9は、NMDA受容体NR1の配列と特定のアミノ酸に水素結合で結合する様々な化合物を示している。
【0028】
【図10】図10は、NMDA受容体NR1と化合物X(GLYX−13)の結晶構造を示している。
【0029】
【図11】図11は、アルファ炭素間が12.171Åの距離を有するモデルペプチド(GLYX−13)を示す。
【0030】
【図12】図12は、ここで開示する化合物の1H NMRスペクトルを示す。
【0031】
【図13】図13は、ここで開示する化合物の1H NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
本開示は、概して、NMDAを調整することができる化合物、例えばNMDA拮抗薬又はNMDA部分的作動薬、及び開示の化合物の組成物及び/又は使用方法を対象とする。
【0033】
以下の定義は、本明細書の記述を通して用いられる。
【0034】
「アルケニル」の用語は、ここでは、不飽和の直鎖又は分岐で、炭素炭素二重結合を少なくとも1つ有する炭化水素であり、例えば、直鎖又は分岐の炭素原子2〜12、2〜10、2〜6がそれぞれ、C2〜C12アルケニル、C2〜C10アルケニル、C2〜C6アルケニルとして言われる。典型的なアルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2−エチルヘキセニル、2−プロピル−2−ブテニル、4−(2−メチル−3−ブテン)−ペンテニル等を含むが、これらに限定されない。
【0035】
「アルコキシ」の用語は、ここでは、酸素に結合したアルキル基(−O−アルキル)を言うものとして使用する。典型的なアルコキシ基は、ここでは炭素原子1〜12、1〜8、1〜6のアルキル基がそれぞれC1〜C12アルコキシ、C1〜C8アルコキシ、C1〜C6アルコキシを言うものとするが、これらに限定されない。典型的なアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ等を含むが、これらに限定されない。同様に、典型的な「アルケノキシ」基は、ビニロキシ、アリルオキシ、ブテノキシ等を含むが、これらに限定されない。
【0036】
「アルキル」の用語は、ここでは、直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素を言うものとして使用する。典型的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−3−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等を含むが、これらに限定されない。
【0037】
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、他に指定がない限り、アルコキシ、アルキル、シクロアルキル、アミノ、ハロゲン、及びC(O)アルキルから選択される1以上の群に任意に置換することができる。いくつかの実施形態では、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基は置換されておらず、つまりは非置換である。
【0038】
「アルキニル」の用語は、ここでは、1以上の炭素炭素三重結合を有する、直鎖状又は分岐状の不飽和炭化水素を言うものとして使用する。典型的なアルキニル基は、エチニル、プロピニル、及びブチニルを含むが、これらに限定されない。
【0039】
「アミド」又は「アシルアミド」の用語は、ここでは、−RaC(O)N(Rb)−、RaC(O)N(Rb)Rc−、又はC(O)NRbRc−の形状のラジカルを言うものであり、ここで、Ra、Rb、及びRcは、それぞれ独立して、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アシルアミド、アリル、アリルアルキル、カーバメイト、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリル、ヘテロシクリル、水素、ヒドロキシル、ケトン、及びニトロから選択される。アミドは、炭素、窒素、Rb、Rc、又はRaを通じて別の基に結合することもある。アミドは、環状であってもよく、例えば、RbとRc、RaとRb、又はRaとRcが3から12員環、さらには3から10員環又は5員環から6員環を形成するように結合してもよい。「カルボキシアミド」の用語は、−C(O)NRbRcの構造を言うものとする。
【0040】
「アミン」又は「アミノ」の用語は、ここでは、−NRdReの形状のラジカルを言うものとし、Rd及びReは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリル、アリルアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリル、及びヘテロシクリルから選ばれる。アミノは環状であってもよく、例えば、Rd及びReが結合して3から12員環、つまり、モルホリノ又はピペリジニルを形成してもよい。アミノの用語は、いかなるアミン基の第4級アンモニウム塩、つまり、−[N(Rd)(Re)(Rf)]+に相当するものも含み、Rd、Re、又はRfの1以上は、アルキル基である。ある実施形態では、Rd及びReが水素又はアルキルである。
【0041】
「ハロ(halo)」、「ハロゲン(halogen)」、又は「ハル(Hal)」の用語は、F、Cl、Br、又はIを言うものとして使用される。「ハロアルキル」の用語は、1以上のハロゲン原子で置換したアルキル基を言うものとする。
【0042】
「ヘテロシクリル」又は「ヘテロシクリル基」の用語は、当該技術分野で認識されており、飽和又は部分的に不飽和の3から10員環構造、又は、3〜7員環構造であって、その環状構造に1から4の窒素、酸素、硫黄等のヘテロ原子を含むものである。ヘテロシクリルは、モノ−、ジ−、又はそれ以上の環状組織であってもよい。ヘテロシクリルは、1以上のアリル、部分的に不飽和の環状構造、又は飽和の環状構造に結合してもよい。ヘテロシクリル基は、例えば、ビオチニル、クロメニル、ジヒドロフリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジチアゾリル、ホモピペラジニル、イミダゾリジニル、イソキノリル、イソチアゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルフォリニル、オキソラニル、オキサゾリジニル、フェノキサチニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリジン−2−オニル、ピロリニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリル、チアゾリジニル、チオラニル、チオモルフォニリル、チオピラニル、キサンテニル、ラクトン、アゼチジノン及びピロリジノンのようなラクタム、スルタム、スルトン等のようなものを含む。ヘテロシクリルは、1以上の位置において、アルカノイル、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミジノ、アミノ、アリル、アリルアルキル、アジド、カルバマート、カーボネート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリル、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、イミノ、ケトン、ニトロ、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル、硫酸塩エステル、硫化物、スルホンアミド、スルフォニル、及びチオカルボニルのような置換基で置換されていてもよい。ある実施形態において、ヘテロシクリル基は、置換されておらず、つまり、ヘテロシクリル基は、非置換である。
【0043】
「ヘテロシクロアルキル」の用語は、当該技術分野で認識されており、上記で定義したように、飽和ヘテロシクリル基を言う。「ヘテロシクロアルコキシ」の用語は、ここでは、酸素(―O―)に結合したヘテロシクリルであって、当該酸素がアルキル基に結合したものを言う。
【0044】
「ヒドロキシ」及び「ヒドロキシル」の用語は、ここでは、-OHラジカルを言うものとして用いられる。
【0045】
「薬学的に又は薬理学的に許容される」とは、必要とする、動物又は人間に分子実体及び物質を投与したときに、拒絶反応、アレルギー反応、又はその他有害反応を起こさない分子実体及び物質を含んでいる。人間への投与及び製造は、FDA生物製剤基準局によって要求されている、無菌性、発熱性、一般的な安全及び純度基準を満たすべきである。
【0046】
本明細書で用いられる「部分的なNMDA受容体作動薬」の用語は、NMDA受容体のグリシン結合部に結合できる化合物として定義され、低濃度では、NMDA受容体作動薬が作動薬として機能し、高濃度では、NMDA受容体作動薬が拮抗薬として機能する。これらの濃度は、全ての部分的な作動薬それぞれに対して実験的に決められている。
【0047】
「薬学的に許容されるキャリア」又は「賦形剤」は、溶剤、分散系、媒体、コーティング、抗菌薬、抗真菌薬、等張剤、吸収遅延剤等のように生理学的に混合可能ないずれか及び全てを含む。1つの実施形態において、キャリアは、非経口投与に適している。また別の実施形態として、キャリアは、点滴投与、腹膣内投与、筋肉内投与、舌下投与、又は経口投与に適している。薬学的に許容されるキャリアは、無菌の注入可能な水溶液又は分散系の即時調整のための、無菌の水溶液又は分散系及び無菌粉末を含む。このような媒体及び化学物質を薬学的活物質のために使用することは、当該技術分野でよく知られている。活性化合物との相性が悪いいずれかの従来媒体及び従来薬を除いては、本発明の医薬組成物の使用を検討される。本発明の医薬組成物は、補助的な活性化合物を含んでいてもよい。
【0048】
「薬学的に許容される塩」という用語は、ここでは、本発明の組成物に用いられる化合物に存在できる酸性塩又は塩基性塩を言うものとして用いる。本発明の組成物に含まれる化合物で、その化合物が自然界で塩基性である場合、様々な有機酸及び無機酸と多様な塩を形成することができる。このような塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩を準備するために用いる酸は、毒性がない酸付加塩を形成する化合物であり、例えば、薬理学的に許容されるアニオンを含む塩として、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチアニン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、及びパモ酸塩(例えば、1−1’−メチレン-ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩)。アミノ部分を含む本発明の組成物に含まれる化合物は、様々なアミノ酸、それに加えて上述の酸と、薬学的に許容される塩を形成し得る。本発明の組成物に含まれる化合物で、その化合物が自然界で酸性である場合、薬理学的に許容される様々なカチオンと塩基性塩を形成することができる。このような塩の例としては、アルカリ金属塩、又はアルカリ土類金属塩を含み、特に、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、カリウム塩、及び鉄塩を含む。
【0049】
開示の化合物は、1以上のキラルの中心及び/又は二重結合を含むが故に、例えば幾何異性体、光学異性体、又はジアステレオマーのような立体異性体が存在する。「立体異性体」の用語は、ここでは、あらゆる幾何異性体、光学異性体、又はジアステレオマーを含むものとして使用している。これらの化合物は、不斉炭素原子を囲む置換基の配置によって、「R」又は「S」の記号で示される。本発明は、これらの化合物及びその混合物の様々な立体異性体を含んでいる。立体異性体は、エナンチオマー及びジアステレオマーを含んでいる。エナンチオマーとジアステレオマーの混合物は、命名法によると「(±)」で決められるが、当該分野の知識を有する人であれば、暗黙の了解で、構造が、キラルの中心を表示することを認識するであろう。
【0050】
本発明の化合物の個々の立体異性体は、非対称中心又は立体中心を含む商業的に利用可能な原料から合成して準備するか、又はラセミ体の混合物を製造し、続いて当該技術分野における通常の知識を有する者に広く知られた分割方法によって製造される。これらの分割方法は、(1)光学異性体の混合物をキラル助剤に接着させ、再結晶又はクロマトグラフィーによってジアステレオマーの得られた混合物を分離し、助剤から光学的な純物質を遊離させるか、(2)光学活性の分割剤を用いて塩を生成するか、又は(3)キラルのクロマトグラフィーカラムで光学異性体の混合物を直接分離するか、が挙げられる。例えば、キラル相のガスクロマトグラフィー、キラル相の高性能の液体クロマトグラフィー、キラル塩の錯体のような化合物の結晶化、又はキラル溶媒中の化合物の結晶化等の公知の方法によって、立体異性体の混合物を個々の立体異性体に分離してもよい。立体異性体は、公知の非対称の合成法によって立体的に純粋な中間体、試薬、及び触媒から得ることもできる。
【0051】
幾何異性体も、本発明の化合物に存在することがある。記号(実線と点線が相互に平行に並ぶ二重線)は、ここで記載するように、単結合、二重結合、又は三重結合の結合を示している。本発明は、様々な幾何異性体、及び、炭素炭素二重結合の周囲の置換基の配置、又は炭素環の周りの置換基の配置に起因する幾何異性体の混合物を含む。炭素炭素二重結合の周りの置換基は、「Z」又は「E」の構造で決定され、この「Z」及び「E」という用語は、IUPAC基準に従って使用される。もし特定しない限り、二重結合を描く構造は、「E」及び「Z」の両方の異性体を含む。
【0052】
炭素炭素二重結合の周りの置換基は、「シス」又は「トランス」の二択で表されていて、「シス」は、二重結合の同じ側の置換基を表し、「トランス」は、二重結合の反対側の置換基を表す。炭素環の周りの置換基の配置は、「シス」又は「トランス」で決定される。「シス」の用語は、環の面の同じ側の置換基であることを表し、「トランス」の用語は、環の面の反対の側の置換基であることを表す。置換基が環の面の同じ側及び反対側の両方に配置された化合物の混合物は、「シス/トランス」と表される。
【0053】
本明細書で開示する化合物は、薬学的に許容される溶媒、例えば水、エタノールのようなものと、溶媒和の形態でも非溶媒和の形態でも存在することができ、溶媒和の形態及び非溶媒和の形態の両方を含んでいる。一実施形態において、本発明の化合物は、アモルファスである。一実施形態において、本発明の化合物は、多形体である。また別の実施形態では、本発明の化合物は、結晶体である。
【0054】
本発明は、1以上の原子が自然界で通常見られる原子量又は質量数とは異なる原子量や質量数を有する原子に置き換わったものを除き、以下で列挙するものと全く同一の同位体標識した化合物をも包含する。本発明の化合物に含まれる同位体の例は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、及び塩素がそれぞれ、2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、及び36Clである。
【0055】
特定の同位体標識した開示の化合物(例えば、3H及び14Cで表示された化合物)は、化合物及び/又は基質組織分布分析で有用である。トリチウム化した異性体(例えば3H)及び炭素14(つまり14C)同位体は、前処理の簡便性及び検出能のために特に好ましい。さらに、重水素(例えば2H)のようなより重い同位体での置換は、より優れた代謝的安定性(例えば生体内での半減期を上昇させる、又は必要用量を減少させる)に由来した治療上の利点を得ることができ、それゆえ、状況によっては好ましい可能性がある。本発明の同位体標識した化合物は、例えば、同位体標識していない試薬を同位体標識している試薬に置換する実施例で開示する手順に類似した以下の手順で一般的に準備される。
【0056】
本明細書において用いられる「NMDA」は、N−メチル−d−アスパラギン酸塩として定義される。
【0057】
本明細書において、「治療の有効量」の用語は、研究者、獣医、医師、又はその他の臨床医が得ようとする、組織、システム、動物、又は人間の生物的又は医療的な反応を誘発し得る主要化合物の量を意味する。本発明の化合物は、病気を治療するために治療の有効量を投与される。あるいは、化合物の治療の有効量は、所望の治療効果及び/又は所望の予防効果を得るために必要な量であり、例えば、行動(例として記憶)、生理反応(例としてLTP誘導)、又は神経障害痛の抑制、を最大限に高めるために必要とされる量として定められる量である。
【0058】
ここで用いられる「ベータターン構造」又はベータターンは、Cα(アルファ炭素)原子(カルボニル炭素の隣の炭素原子)が、実質的に閉じている化学構造をいい、例えば、ドナー残基とアクセプター残基の間に水素結合を有し、そのドナー残基とアクセプター残基が、2又は3のペプチド結合の距離に一致する距離で離れている化学構造である。例えば、開示の化学構造が、束縛回転を有する二環式の環(例えば二環式のスピロラクタム)を含むとき、その化学構造は、ベータターン構造を有する。束縛回転は、例えばH3とH5の間での微弱なnOe(核オーバーハウザー効果)スペクトルで明らかになる。
【0059】
化合物
化合物、例えばここで開示するペプチド模倣薬は、いくつかの実施形態で、SEQ IDNo.1のNDMA配位子結合コアに結合することができる。例えば、開示するペプチド模倣薬は、約6Åから約14Å、約9Åから約14Å、又は約10Åから約13Å離れた、2つのアルファ炭素原子を有してもよい。いくつかの実施形態で、考慮されたペプチド模倣薬が、例えば生物学的活性のペプチド構造を模倣し得るように、内部拘束又は等角的拘束されている可能性がある。例えば、開示のペプチド模倣薬は、環状のアミドコア、例えば二環式のベータラクタムを含んでいる。例えば、開示のペプチド模倣薬は、2つのモジュラー部を有する開示の化合物であって、各モジュラー部が自然発生的なアミノ酸に置換されることもある。
【0060】
例えば、開示の化合物は、患者への投与に安定な、つまり生体中又は水溶液中で実質的に安定なベータターン構造を有していてもよい。いくつかの実施形態で、開示の化合物は、水素結合を形成することができ、つまりSEQ ID No.1の少なくとも1、2、3、又は4のアミノ酸、例えばPRO124、THR126、GLU178、及びSER180からなる群から選択されるアミノ酸に結合することができる。
【0061】
開示のペプチド模倣薬は、配座固定された合成(例えば、非ペプチジル)小分子(例えばスピロラクタム部分)を含んでいてもよく、その小分子は、例えば、その化合物の一部のグリシン部位の作動薬活性に寄与することもある。例えば、開示の化合物は、式Iによって表わされる化合物と、薬学的に許容される塩、立体異性体、及びそれらのN−オキシドとを含み;
Tは、独立して、それぞれ、CR4R4’であり、nは、0、1、2、又は3であり、
Aは、任意に存在し、フェニル又はピリジンから任意に選択され、Aは、Raから選択される1以上の置換基によって任意に置換され、
R1は、水素、ヒドロキシル、S(O)2−C1-4アルキル、−SO2、C1-4アルキル、C2−C4アルケニル、フェニル、R7、又は
からなる群から選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、又はフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
Xは、CH又はNであり、
R3及びR3’は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、フェニル、C1-4アルキル、アミド、アミン、又はC2-4アルケニルからなる群より選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R4及びR4’は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、フェニル、C1-4アルキル、アミド、アミン、C1-4アルコキシ、又はC2-4アルケニルからなる群より選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R2は、水素、R7、S(O)2、S(O)2−C1−C4アルキル、C1-4アルキル、ヒドロキシル、又はフェニルからなる群から選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R5及びR5’は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C2-4アルケニル、シアノ、アミノ、フェニル、及びヒドロキシルからなる群より選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R7は、−C(O)−R9、−C(O)−O−R9、又は−C(O)−NRd−R9からなる群より選択され、
R9は、水素、C1-4アルキル、フェニル、又はヘテロシクリルからなる群より選択され、C1-4アルキル、フェニル、又はヘテロシクリルは、Rbから選択される1、2、又は3の置換基で任意に置換され、
R8は、水素、−C(O)−、C1-4アルキル、又はC(O)−O−C1-4アルキルからなる群より選択され、C1-4アルキルは、Raから選択される1、2、又は3の置換基で任意に置換され、
Raは、それぞれ独立して、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、フェニル、C1-4アルキル、及びC1-4アルコキシから選択され、
Rbは、それぞれ独立して、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、フェニル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ及び−NH−Rcからなる群より選択され、
Rcは、C(O)−O−C1-4アルキル、C(O)−C1-4アルキルからなる群より選択され、
Rdは、それぞれ独立して、水素及びC1-4アルキルから選択され、薬学的に許容される塩、N-オキシド、又はそれらの立体異性体。
【0062】
例えば、本発明の化合物は、以下によって表される化合物を含んでいてもよい。
Ia
R1は、C(O)−C2-4−アルキルであり、C2-4−アルキルは、炭素原子1つをNH2又はN−カルボベンジロキシで置換し、別の炭素原子をヒドロキシルで置換される。例えば、R1は、C(O)−O−C1-4-アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル)であり、C1-4-アルキルは、フェニルで置換されており、R3、R3’、R5、及びR2は、上記のとおりである。
【0063】
別の実施形態において、式IaのR1及びR2は、それぞれ独立して、アミノ酸、例えばアミノ酸のL−異性体又はD−異性体から選択され、アミノ酸は、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及び/又はバリンである。例えば、R1及びR2は、それぞれ独立して、例えば以下のL-Thr又はL−Serであってもよい。
【0064】
R’は、水素又はC1-4アルキルからなる群から選択される。
【0065】
ある実施形態において、R1は、カルボベンジロキシであってもよいし、
で表されていてもよい。
Xは、Nであってもよい;R5’は、Hであってもよい;R8は、−C(O)−C2-4アルキル(例えば、エチル、プロピル、n−ブチル、又はt−ブチル)であってもよく、C2-4アルキルは、炭素原子1つをNH2又はN−カルボベンジロキシで置換し、別の炭素原子をヒドロキシルで置換される。
【0066】
ある実施形態では、R3は、フェニル(上述のように任意に置換したもの)であってもよく、水素であってもよい。いくつかの実施形態では、-C(O)C2-4アルキル(例えば、エチル、プロピル、n−ブチル、又はt−ブチル)は、F、Cl、又はBrからなる群より選択された1、2、又は3つの置換基によって任意に置換されていてもよい。
【0067】
C1-4アルキルを含む、検討してきたあらゆるRの群(例えばR1、R3、R5)に関して、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、又はt−ブチルからなる群より選択されてもよいし、前記C1-4アルキルは、F、Cl、又はBrからなる群より選択される1、2又は3の置換基によって任意に置換されていてもよい。
【0068】
このような化合物は、異なる異性化物を有してもよいし、いくつかの実施形態では、
で表されてもよい。ここで、R1、R2、R3、R3’及びR5は、上記で記載したとおりであってもよい。
【0069】
別の実施形態において、式IIで表される化合物、並びに薬学的に許容される塩、立体異性体、及びそれらのN−オキシドであり、
R1は、水素、ヒドロキシル、S(O)2−C1-4アルキル;−SO2、C1-4アルキル;R7、又は
からなる群より選択され、
Xは、CH又は水素であり、
R3及びR3’は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、フェニル、C1-4アルキル、アミド、アミン、又はC2-4アルケニルからなる群より選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル及びフェニルは、Raからなる群より選択される1以上の置換基によって任意に置換され、
R2は、水素、R7、−S(O)2、S(O)2−C14アルキル、C1-4アルキル、ヒドロキシル、又はフェニルからなる群から選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R5は、水素、ハロゲン、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C2-4アルケニル、シアノ、アミノ、フェニル、及びヒドロキシルからなる群より選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R6は、水素、ハロゲン、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C2-4アルケニル、シアノ、アミノ、フェニル、及びヒドロキシルからなる群より選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、及びフェニルは、Raから選択される1、2、又は3の置換基で任意に置換され、
R7は、−C(O)−R9、−C(O)−O−R9、又は−C(O)−NRd−R9からなる群より選択され、
R9は、水素、C1-4アルキル、フェニル、又はヘテロシクリルからなる群より選択され、C1-4アルキル、フェニル、又はヘテロシクリルは、Rbから選択される1、2、又は3の置換基で任意に置換されるか、又は、
R1及びR6が、ともに式IIの形式となる以下の形式であり、
R8は、水素、−C(O)−、C1-4アルキル、又はC(O)−O−C1-4アルキルからなる群より選択され、C1-4アルキルは、Raから選択される1、2、又は3の置換基で任意に置換され、
Raは、それぞれ独立して、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、フェニル、C1-4アルキル、及びC1-4アルコキシから選択され、
Rbは、それぞれ独立して、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、フェニル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ及び-NH-Rcからなる群より選択され、
Rcは、それぞれ独立して、C(O)-O-C1-4アルキル、C(O)-C1-4アルキルから選択され、
Rdは、水素及びC1-4アルキルである。
【0070】
典型的な実施形態では、式I、式II、式Ia、又は式IbのR1の部分は、
からなる群より選択されてもよい。
【0071】
実施形態の化合物は、
及び
を含む。
【0072】
ここでの開示は
からなる群より選択される化合物、及びこれらの薬学的に許容される塩、並びに薬学的に許容される塩、立体異性体、又はそれらのN−オキシドからなる群より選択される化合物である。
【0073】
本開示の化合物及びその製剤は、D−異性体、L−異性体、又はラセミ混合物(D−及びL−の両異性体)の1以上のあらゆる化合物の全てを含むことを意図している。さらに、本発明の化合物の製剤は、ここで開示された1以上の類似物の、L−異性体及びD−異性体のいかなる組合せ又は比率をも含むことを意図している。D−及び/又はL−異性体類似物をより多い割合で含む開示の化合物のこれらの製剤及び他の製剤は、開示の化合物又は化合物の混合物のラセミ体の製剤と比べて治療特性を高める可能性がある。例えば、開示の化合物は、エナンチオマーである可能性があり、エナンチオマーの例は、
であってもよい。
【0074】
開示の化合物は、NMDA受容体のカチオンチャネルを効率的に開くために提供される。開示の化合物は、例えば、カチオンチャネルを開くのを助けるために、NMDA受容体のグルタミン酸塩の部分に結合するか又は配位する。開示の化合物は、作動薬としての作用を通じて、NMDA受容体を制御(付いたり離れたり)することに使ってもよい。
【0075】
ここで意図する他の化合物は、環状のアミドコアを有する化合物を含む。一実施形態では、他の典型的な化合物は、ペプチドでもよいし、また別の実施形態では、ペプチド模倣薬であってもよい。意図する化合物は、以下に表わされる化合物を含む。
【0076】
R1は、水素又はベンジル基であり、
R4は、水素又はベンジル基であり、
R5は、
であり、
R6は、
のいずれかであり、
R2は、水素又はCH3であり、
R3は、水素又はCH3であり、又は立体異性体、又は薬学的に許容される塩又はそれらのN−オキシドである。
典型的な化合物は、
【0077】
を含んでいる。
【0078】
ここに記載された化合物は、グリシン部位NMDA受容体の部分的作動薬である可能性がある。本文中で用いられる部分的作動薬は、低濃度では類似体が拮抗薬として機能し、高濃度では類似物が作動薬として機能することを意味すると理解される。グリシン結合は、グルタミン酸塩によって又はグルタミン酸塩の拮抗阻害剤によって阻害されず、さらに、NMDA受容体のグルタミン酸塩と同じ部位にも結合しない。NMDA受容体には、グリシンに対する第2の別の結合部位が存在する。このようにNMDA受容体の配位子依存性イオンチャネルは、少なくともこれらの2つの異なるアロステリック部位に制御されている。開示の化合物は、NMDA受容体のグリシン結合部位に結合又は配位することができる可能性がある。いくつかの実施形態では、開示の化合物は、既存のNMDA受容体グリシン部位の部分的作動薬の活性の10倍以上の性能を有する可能性がある。例えば、開示の化合物は、GLYX−13と比較して10倍から20倍の増強性能を有する可能性がある。GLYX−13は、以下によって表される。
【0079】
ここに提示するものは、例えば50nMの濃度での海馬CAl錐体神経細胞の培養において突発的活性化NMDA受容体依存性単一ニューロン伝導(INMDA)で測定したときに、GLYX−13と比較して少なくとも約20倍を超える性能の化合物である。他の実施形態で、提示される化合物は、100nMから1μMの濃度での海馬CAl錐体神経細胞で、増強された単一刺激誘発NMDA受容体依存性単一ニューロン伝導(INMDA)を発生させることができる可能性がある。体外の海馬片でシャッファー側枝CA−1シナプスでの長期増強(LTP)の大きさに測定されるように、開示化合物は、GLYX−13と比較して増強性能を有する可能性がある。
【0080】
化合物の製造
いくつかの実施形態において、開示の化合物、例えばSEQ ID NO.1のNMDA配位子結合コアに結合できるベータターン構造を有するペプチド模倣薬は、ペプチド内の1以上のデヒドロアミノ酸に組み合わせることによって形成することができる。例えば、デヒドロフェニルアラニン、及び/又は、デヒドロロイシン、及び/又は、α‐アミノイソ酪酸を含むペプチドを組み込んで、ベータターン構造を有するペプチド模倣薬を形成してもよい。
【0081】
また別の実施形態では、開示の化合物は、拘束された二環式のベータターンジペプチド(BTD)構造を用いて形成される可能性がある。このアプローチは、ターンを誘導するペプチドカップリング(以下の図参照)のために幾何学的に適した場所に、カルボキシル基及びアミノ基を組み込むことによるジペプチド構造の変換に基づいている。
【0082】
例えば、1以上のアザビシクロノナンのようなジペプチド構造が、ベータターン構造を有する構造を形成するために組み込まれていてもよい。別の実施例では、開示のペプチド模倣薬は、以下に例示されるような、例えば、2、3又は4のアミノ酸の位置に、コア構造を含んでいてもよい。
【0083】
【0084】
いくつかの実施形態では、アザシクロアルケンが例えば以下のベータターン模倣薬を模倣する可能性がある。
【0085】
以下のスキームは、開示の化合物及びその中間体を製造するために用いてもよい代表的な合成法である。
【0086】
スキーム1:化合物の製造
スキーム2
【0087】
硝酸セリウムアンモニウム(すなわち、「CAN」)は、式(NH4)2Ce(NO3)6の化合物である。この橙赤色の水溶性塩は、有機合成の酸化剤として広く用いられる。この化合物が、定量分析の標準的な酸化剤として使用される。
【0088】
PMPは、p−メトキシベンジリデンを指し、;Cbzは、
と表されるベンジルオキシカルボニルラジカルを指す。
【0089】
組成物
他の側面において、開示の化合物及び任意に薬学的に許容される賦形剤を含む製剤並びに組成物が提供される。いくつかの実施形態で、意図した製剤は、1以上の開示の化合物のラセミ混合物を含む。
【0090】
意図した製剤は、使用するためにいかなる様々な形式で製造されてもよい。化合物は、実施例の方法に限定されず、経口投与、皮下注射、又は薬剤学の技術においてよく知られた、動物への活物質の投与方法に適した他の投与方法で製造される。
【0091】
製剤において、ここで述べたような開示の化合物の量は、各個人の、病状、年齢、性別、体重等の要因によって様々であってもよい。用法用量は、最適な治療方法が提供されるように調整する。例えば、単回ボーラスで投与するか、数回の分割投与で徐々に投与するか、又は治療状況の要求に応じて、比例的に増加又は減少して投与する。用量単位形で非経口組成物を処方することは、投与の簡便性及び用量の均一性の観点から特に有意義である。ここで用いられる用量単位形は、哺乳類の対象を治療するための単一の用量に合った物理的に別個の単一の用量を指し、各単位は、必須の薬学的なキャリアとともに、所望の医療効果を得るために算出された活性化合物を所定量含む。
【0092】
本発明の投与単位形の仕様書は、(a)選択される化合物の固有の特性、及び達成すべき特定の治療効果、並びに(b)個々の刺激感応性の治療するための、このような化合物を処方する技術分野における固有の制約、に基づいて直接的に記述される。
【0093】
ここで用いられる「薬学的に許容されるキャリア」又は「賦形剤」は、いかなるあらゆるものを含む。
【0094】
治療組成物は、典型的には、製造及び保管の状況下に、無菌であり、かつ安定でなければならない。本発明の組成物は、溶媒、マイクロエマルジョン、リポソーム又はその他の薬物高濃度に適した秩序構造として製剤される。そのキャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液化ポリエチレングリコール等)及びそれらの適した混合物を含む、溶媒又は分散媒とすることができる。例えば、レシチンのようなコーティングを用いて分散する場合には所要の粒径の管理によって、及び界面活性剤の使用によって、好適な流動性を維持する。多くの場合、例えば、砂糖、マンニトール、ソルビトールのような多価アルコール、又は塩化ナトリウムという等張剤を組成物中に含むことが好ましい。組成物中に、吸収遅延剤、例えばモノステアリン酸塩、ゼラチンを含むことによって、注入組成物を持続的に吸収させることができる。
【0095】
本発明の化合物は、持続放出型の製剤、例えば、放出遅延ポリマーを含む製剤で投与することができる。その化合物は、急速遊離に対してその化合物を保護するキャリア、例えばインプラント又はマイクロカプセル化した配送系を含む放出制御製剤で製造することができる。生分解性、生体適合性ポリマーは、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル類、ポリ乳酸、及びポリ乳酸とポリグリコールの共重合体(PLG)等が使用される。このような製剤を製造する多くの方法は、この分野における通常の技術を有する者に公知である。
【0096】
滅菌した注射剤は、上述の列挙した成分の1つ又は組合せの適した溶媒に、必要量の化合物を組み合わせることによって、また必要があれば、以下の殺菌ろ過によって、製造することができる。一般的に、分散液は、塩基性の分散媒体及び上記で列挙した必要な他の成分を含む無菌の賦形剤に活性化合物を組み込むことによって製造される。滅菌した注射剤を製造するための滅菌した粉末の場合、好ましい製造方法は、真空乾燥、及び、前述の殺菌ろ過した溶液から活物質と所望のあらゆる追加成分の粉末を作製する凍結乾燥である。
【0097】
本発明の別の側面によれば、化合物は、その溶解性を高める1以上の添加化合物とともに製剤化されていてもよい。
【0098】
方法
認知障害を治療するための方法及び学習効果を高めるための方法が提供される。この方法は、1以上の開示の化合物の薬学的に許容される製剤を、それを必要とする患者に投与することを含む。加齢による記憶障害、統合失調症、学習障害、発作、脳卒中後のけいれん、脳虚血、低血糖症、心不全、てんかん、偏頭痛の他、ハンチントン病、パーキンソン病、及びアルツハイマー病で苦しむ患者を治療する方法も記載される。
【0099】
他の意図する方法は、脳虚血、脳卒中、脳精神的外傷、脳腫瘍、重篤な神経障害性陣痛、慢性神経障害性陣痛、睡眠障害、薬物中毒、鬱病、特定の視力障害、エタノール禁断症状、記憶障害、及び学習障害の治療法を含む。一方、また別の側面では、疼痛緩和を高めるための方法、及び動物を鎮痛するための方法を提供する。
【0100】
実施例
以下の実施例は、例示目的のためだけに提供するもので、開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0101】
実施例1−ピロリジン由来のスピロ-β−ラクタム誘導体の合成
以下の反応式(スキームA)は、スピロラクタムを合成するために用いた。原料として、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、Cbz−L−プロリン酸塩化物、及びN−(Cbz)O−(ベンジルエーテル)−L−トリオニン酸塩化物を用いた。
スキームA
【表1】
【0102】
実施例2−化合物及び中間体の合成
スピロラクタム3
トリアジン2由来のメチレンイミンを、シュタウディンガー反応によってC4非置換のスピロラクタム3に合成した。(直訳:C4非置換のスピロラクタム3の合成は、トリアジン2由来のメチレンイミンのシュタウディンガー反応を通じて行われた)。Cbz−L−プロリン酸塩化物由来のケテンとメチレンイミンとの間の[2+2]環付加反応を、以下の方法で実行した:ケテンを、−40℃で45分間のトリメチルアミンとの酸塩化物の脱塩化水素によって生成した。その後、トリアジン2及び(トリアジンを解重合する)三フッ化ホウ素エーテル塩とのジクロロメタン溶液を添加した。12時間後に、対応するスピロラクタム3をエナンチオマーの混合物として30%から50%の収率で得た。CANの存在中でスピロラクタム3からPMP基の酸化除去によって、N−非置換スピロラクタム誘導体4を得た。その誘導体は、Pd(OH)2/Cと処理することによって、相当するスピロラクタム中間体5を得た。
【0103】
スピロラクタム4を、シリカゲルのクロマトグラフィーで精製した後に、93%の純度(HPLC)で得た。スピロラクタム5を、20%から70%のエチルアセテートシクロヘキサンの勾配溶離を用いたシリカゲルのクロマトグラフィーの後に、>90%の純度(NMRによる)で、50%の収率で得た。
【0104】
実施例3−中間体化合物の合成経路
トリアジン2
酢酸エチル/水(1:1)の混合物(500ml)中のp−アニシジン(24.6g、200mmol)の溶液を0℃に冷やして、(37%)ホルムアルデヒドの水溶液(17ml)を加えた。反応混合物を0℃で3時間攪拌し、さらに室温で1時間攪拌した。すると、有機相が分離したので、(50mlの)水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。真空下で溶媒を除去し、白色固体を得た。この固体をジメチルエーテルで1度洗浄し、26.3gの純粋なトリアジン2(40℃で一晩乾かした固体)を97%の収率で得た。
【0105】
スピロラクタム中間体3
−40℃に冷やした乾燥ジクロロメタン(65ml)中のN−ベンジロキシカルボニルL−プロリン酸塩化物(5g、18.7mmol)の攪拌溶液に、乾燥したトリエチルアミン(10.4ml、74.7mmol)を滴下した。溶液が黄変し、ケテンが形成されたことを確認した。
【0106】
予めCH2Cl2(35ml)中で、トリアジン2(2.52g、6.16mmol)とBF3OEt2(2.37ml、18.7mmol)を攪拌した紫色の溶液を、−40℃で45分経過した後、滴下した。混合物を室温で一晩中ゆっくり温めて、NaHCO3飽和水溶液で急冷した。水相をCH2Cl2(20ml)で2回抽出し、一体となった有機相を、塩水(20ml)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。そして、当該溶液を濃縮し、100%シクロヘキサンから20%酢酸エチル/シクロヘキサンへの勾配溶離を用いたシリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製し、37%の収率で7.01gの純物質を得た。
【0107】
スピロラクタム中間体4
−10℃のアセトニトリル(49ml)中でスピロラクタム3(2.4g、6.55mmol)を攪拌した溶液に、予め水(30ml)に溶解させたCAN(10.8g、19.6mmol)を1時間かけて滴下した。滴下完了後に、混合物を45分間攪拌した(TLCは、原料が残存していないことを示した)。その反応混合物を、酢酸エチル(100ml)及び飽和NaHCO3(50ml)で希釈した。有機相に水(100ml)及び固体の亜硫酸水素ナトリウム(20eq)を添加した。有機相を塩水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。そして、溶液を濃縮し、100%/シクロヘキサンから50%酢酸エチル/シクロヘキサンへの勾配溶離を用いたシリカゲルのカラムクロマトグラフィーで精製し、50%の収率で、0.87gの純物質を得た。
【0108】
スピロラクタム中間体5(AK−51)
0.5gの4を、20mlの酢酸エチルに溶かして、カニューレを通して、10%のPd(OH)2−C触媒50mgを含むH2(1atm)下のフラスコに移した。その混合物をH2の下、50PSiで一晩中攪拌し、その後、セライトによって触媒をろ過して除去した。有機相を濃縮し、シリカゲルのクロマトグラフィーで精製し、50%の収率で120mgの生成物を得た。
【0109】
N−(Cbz)−O−(ベンジルエーテル)−L−トレオニン酸塩化物7
乾燥エーテル(27mL)中でN−(Cbz)−O−(ベンジルエーテル)−L−トレオニン(0.95g、2.7mmol)を攪拌した溶液に、PCl5(0.61g、2.9mmol)を添加し、その混合物を室温で3時間攪拌した。そして、室温での高真空により溶媒を除去した。トルエンを添加し、上述のように除去した。なんら精製せずに、粗白色固体をカップリング反応に使用した。
【0110】
スピロラクタム中間体8及び9
乾燥THF(4mL)中でスピロラクタム4(200mg、0.76mmol)を攪拌した溶液に、−78℃でBuLi(ヘキサン中、0.32mL、0.80mmol)を滴下した。滴下完了後、その混合物を−78℃で1時間攪拌した。−78℃でTHF(4mL)中のN−(Cbz)−O−(ベンジルエーテル)−L−トレオニン酸塩化物7を添加した。その混合物を−78℃から室温にして一晩中攪拌した。
【0111】
反応混合物を、飽和NH4Cl(10mL)で急冷し、酢酸エチル(10mL)を添加した。酢酸エチルで水層を2回抽出した。一体となった有機相を、MgSO4で乾燥させて濃縮し、0.44gの粗生成物を得た。その粗生成物を100%のCH2Cl2から2%のMeOH/CH2Cl2の勾配のシリカゲルに通して溶出し、44%から73%の純度の範囲の留出物を得た。この反応を0.28gのスピロラクタム4で繰り返し、純度50%から73%の範囲の純度で、クロマトグラフィー留出物を得た。
【0112】
実施例4−NMDA受容体結合の分析
細胞組織の調製:
Ransom及びStec(1988)に既に示されたように、ラット海馬又はラット前脳(雄のSprague-Dawleyラット)から粗シナプス膜を調製し、内因性アミノ酸を除去するために、入念に洗浄した。簡潔にいうと、5mMのtris-HCIバッファ、pH7.4([3H]TCP結合実験で用いるため)の20容量中又は5mMのtris-アセテートバッファ、pH7.4([3H]グリシン結合試験に用いるため)の20容量中で、粗シナプス膜を再懸濁し、ポリトロン(Virtis shear; Virtis, NY, U.S.A.)を用いて均一化した。次いで、48,000gで20分間遠心分離することによって膜をペレット化した。この操作を二回繰り返した後に、同じバッファ中にホモジネートを−70℃で保存した。それぞれを使用する前に、ホモジェネートを室温で解凍し、ペレット化し、追加で4回洗浄した。[3H]グリシン実験のために、まず、25℃の0.04%のトリトンX−100を含む5mMtris-アセテートバッファ中でペレットを30分間培養し、その後、均一化及び遠心分離によって4回洗浄した。最後に、洗浄した膜を、5mMtris-HCIバッファ又は5mMtris-アセテートバッファのいずれかで、2〜3mg/mlの濃度で再懸濁した。
【0113】
TCP結合分析
特定の[3H]TCP結合の測定を、既に示されたように実行した(Haring et al., 1986, 1987; Kloog et al., 1988a)。最終的な反応混合物は、5mMtris-HCIバッファ200μl中に、50〜100μgの膜タンパクからなり、[3H]TCP、又は[3H]TCPと適当な濃度のNMDA受容体配位子又はmAbのいずれかを含んでいた。その反応混合物に膜を添加することによって反応を開始した。特に明記しない限り、結合分析は25℃の非平衡状態下で1時間行なった。100μMの非標識PCPを含む、類似サンプルで非特異的結合を測定した。結合反応は、0.1%のポリエチレンイミンで1時間の前処理したワットマンGF/Bガラスフィルタ上の濾過によって測定した。
【0114】
受容体と20nMの[3H]TCPとを120分間平衡に保ち、その後、[3H]TCPの膜結合部位から[3H]TCPの解離を測定した。解離反応は、NMDA受容体配位子又はmAbの存在下又は非存在下で、100μMの非標識PCPを添加して開始させた。指示された追加時間の培養の後、反応を即座(0時間)に終了した。
【0115】
1)海馬CAI錐体神経細胞中のNMDA受容体依存型単一ニューロン伝導(INMDA)に基づいて、及び2)生体内の海馬片におけるシャッファー側枝CAlシナプスの、長期増強(LTP)及び長期抑制(LTP)の大きさに基づいて、3つの化合物の作用を調べた。GLYX−13は、突発的に活性化したINMDA及びLTPの低濃度(1〜10μM)増強を示し、同時にLTD及び単一パルス誘発INMDAの減少を示すことが報告されている。100倍高濃度の100μMのGLYX−13は、LTD及び突発的INMDAを減少させるように変性し、もはやLTDに影響しない。
【0116】
化合物Bは、GLYX−13に比して有効性の面で20倍の増強を示した。この化合物50nMは、単一刺激(IA)及び突発的誘発(IB)INMDAの双方を著しく増強し、同様にLTP(IE)の大きさを2倍にした。一方、1μMのNRX−10,050は、単一刺激(IC)及び突発的誘発(ID)INMDAの双方を著しく減少させ、100μMのGLYX−13を連想させる(図2参照)。
【0117】
AK−51は、化合物Bよりも有効性が低かったが、その刺激作用でより広い濃度範囲を示した(図3)。100nM(2A)及び1μMのNRX−10,051の双方は、単一刺激誘発INMDAを増強したが、一方、1μMのNRX−10,051は、LTP(2D)の大きさを2倍にし、LTD(2E)を変化させなかった。
【0118】
AK−52は、低濃度(100nM、3A)で、単一刺激誘発INMDAを穏やかに増強させたのみであり、それは1μMの濃度(3B)でINMDAの顕著な減少に変わった。100nMのAK−52は、化合物B及びAK−51と同様の大きさでLTPを増強したが、これは、LTDを変化させず、1μM濃度でわずかであるが有意にLTPを減少させた。
【0119】
これらの3つの化合物は、GLYX−13に比して有効性の面で約20倍の増強を示した。化合物Bは、低濃度(50nM)でのINMDAの最も強力な増強剤である。AK−51のINMDAの増強はより小さいが、AK−51が10倍(100nMから1μM)に増強されると、この作用が残存した。AK−52はINMDAの最も弱い増強剤であったが、この作用はINMDAの明らかな減少により迅速に逆転した。
【0120】
これらの化合物は、同程度、つまり、約2倍にLTPの大きさを増強した。GLYX−13は、LTPを増強すると同時に、LTDを減少させた唯一の化合物であった。AK−52は、INMDAを減少させる濃度でさえ、LTDに影響を及ぼさなかった。GLYX−13は、NR2A/Bサブユニットを含むNMDA受容体によって媒介されるINMDAを選択的に増強することができ、これらの受容体は、シナプス外に局所化しており、LTPを誘発するニューロン性バーストによってより強力に活性化する。テストした化合物の全てが、LTP及びINMDAに有効性の作用を有するが、GLYX−13よりLTDの作用が小さいほど、化合物がNMDA受容体のグリシン部を含むNR2A/Bに対する選択性が増すことを示唆する。
【0121】
実施例5:T−迷路学習モデル
この研究に、生後3ヵ月の雄のフィッシャー344Xブラウン・ノルウェーFlクロスラット(FBNFl)を使用した。T−迷路は、その迷路を包囲する黒のフレキシガラスで作られたアーム(45cm長×10cm幅×10cm高)で構築した。褒美の餌(チェリオス、100mg/ピース)を置いた各ゴールアームの終端に、金網に並べられた2つのプラスチック製のボトルキャップを固定した。実験開始前に、動物が自由に食べていた体重の約85%になるまで、動物から食物を徐々に取り上げた。実験開始前の連続3日間、迷路中に食物を点在させたT−迷路に動物を慣れさせた。実験1日目に、右アーム選択に対して動物に褒美を与え、10回中9回連続で正しい選択の基準に訓練した。実験2日目に、左アーム選択に対して動物に褒美を与え、10回中9回連続で正しい選択の基準に訓練した。次の実験日には、実験開始60分前に、胃管栄養法(4", 16-ga;Braintree Scientific, Braintree MA)によって盲検下で、AK51(0.3、1、3、10、30mg/kgp.o.)又はDMSO賦形剤(1mg/ml、Sigma, Saint Louis MO)を動物に注射した(各グループにn=8〜9)。実験の1回目では、両アームに食物を餌としてつけ、以降の20回では、別の選択(動物の先の選択の反対)にのみ褒美を与えた(試験間間隔〜30秒)。各々の動物で基準(5連続正しい選択)に対する試験の数を算出した。個々の薬の用量を賦形剤(α=.05)と対比するフィッシャーPLSD事後試験に基づいた分散分析(ANOVA)によってデータを分析した。
【0122】
図5は、絶食した生後3ヵ月のラットに、二択のT−迷路試験(20試行)で基準に対する平均(+SEM)試験を示す。試験開始の60分前に、DMSO賦形剤(1組あたりn=8〜9)中の0、0.3、1、3、10又は30mg/kgのAK051を、動物に経口注入した。***P<.001、**P<.01、フィッシャーPLSD事後対賦形剤。
【0123】
実施例6:神経性疼痛のホルマリン試験
前に記述されているように実験した(Abbott et al. Pain, 60, 91-102, 1995; Wood et al., Neuroreport, 19, 1059-1061 2008)。この研究には、生後3ヵ月の雄のフィッシャー344Xブラウン・ノルウェーFlクロスラット(FBNF1)を用いた。実験開始前に、動物を、2日間連続で各日に10分間ずつテストチャンバ(30×30×60cmの不透明なプレキシガラス)に慣れさせた。実験日には、ホルマリン注射の60分前に胃管栄養法(4", 16-ga;Braintree Scientific, Braintree MA)によって盲検下で、0、0.3、1、3、10又は30mg/kgbのAK051、又はDMSO賦形剤(1mg/ml、Sigma, Saint Louis MO)を動物に注射した(1組につきn=8〜9)。ホルマリン注射の10分前に動物をテストチャンバに入れた。ホルマリン注射のためにラットを手作業で拘束し、左の後足の足底の表面上の側部足蹠に1.5%のホルマリンを皮下注射した(26-ga針で50μL、Sigma, Saint Louis MO)。ホルマリン注射後、ラットをテストチャンバに戻した。ホルマリン注射後50分間、斜軸式鏡を用いて動物を下からビデオに録画した。後相(ホルマリン注射後30〜50分)の間、注射された足を舐めるまでに費やした総時間及び注射された足の畏縮の総数を、双方の測定のための(r>0.9)評価者内の高い信頼性及び評定者内の高い信頼性のある熟練した実験者によって、盲検下のオフラインで測定した。試験後すぐに全ての動物をCO2で安楽死させた。個々の薬の用量を賦形剤(α=.05)と対比するフィッシャーPLSD事後試験に基づいた分散分析(ANOVA)によってデータを分析した。図6は、内部足底をホルマリン注射(1.5%のホルマリン50μL)した後の晩期反応(30〜50分)における畏縮の減少%で規定した平均%(+SEM)無痛消失を示す。
【0124】
実施例7:学習及び記憶を増強する経口製剤
AK−51の経口剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)で調製した。全ての服用は、300μlの体積を投与した。そして、体重に基づいて決められた用量を動物に投与するように計算した以下のような容量で、胃管栄養法によって動物に経口投与した(給送針を挿入して口から強制的に与えた)。
0.0mg/kg DMSO(賦形剤)に300μL;
0.3mg/kg DMSOに300μL;
1.0mg/kg DMSOに300μL;
3.0mg/kg DMSOに300μL;
10.0mg/kg DMSOに300μL、
30.0 mg/kg DMSOに300μL
【0125】
試験開始60分前に上述の用量の1つで動物に注入した。次に、動物の学習反応を評価するために二択のT−迷路試験(20回)を用いた。このプロトコルは、実施例5で詳述している。簡潔に述べると、T−迷路は、選択の試験である。対照のラットを「T」の下部に置いた。少し時間がたつと、ラットは、迷路を探検し、右か左のアームに入ることを選択した。選択は、自発的二択、手がかり褒美を含む基準の多様性、又は好みを示すことに従って採点した。この研究で用いた基準に基づいて、学習及び記憶を試験するためにT−迷路を用いた。迷路の一端に置いた食物は、各動物試験のための陽性強化因子に使った。
【0126】
経口で1.0mg/kg用量のAK−51を与えた動物は、T−迷路試験での学習反応に統計的に顕著な強化が見られた(P<0.001)。経口で3.0mg/kg用量の非ペプチド類似物NRX−10,051を与えた動物も、T−迷路試験での学習反応に統計的に顕著な強化が見られた(P<0.01)。
【0127】
実施例8:異性体
実施例4のように、NDMA結合分析にAK−55の2つの異なる異性体を使用した。AK−55の1つの異性体は、NMDAを強力に増強するが、他の異性体は増強しない。図7Aは、全細胞記録(平均+SEM、n=6)下でのCAl錐体神経細胞における、規格化され、薬理的に分離したNMDA受容体依存性流れの1μMのAK55(実線)の15分の潅流液中投与法(bath application)の効果の経時変化を示す。Bは、全細胞記録(平均+SEM、n=7)下でのCAl錐体神経細胞における、規格化され、薬理的に分離したNMDA受容体依存性流れの1μMのAK55(実線)の15分の潅流液中投与法(bath application)の効果の経時変化を示す。Cは、高周波シャッファー側枝刺激(2×l00Hz/500ミリ秒)によって誘導された細胞外興奮性シナプス後電位スロープ(平均+SEM fEPSP)の長期増強(LTP)の大きさにおける、未処理の制御片(白丸、n=8)と比較した1μMのAK6(実線、黒丸)の潅流液中投与法(bath application)の効果の経時変化を示す。
【0128】
実施例9:生化学的分析
表Bは、AK51と様々のターゲットに対する結合分析の結果を示している。
【0129】
【表B】
【0130】
実施例10:スピロ化合物のβターンの同定
プロトン1−D実験1H,13C,DEPT,等核2−D実験(DQF-COSY、TOCSY、NOESY)、及びセ氏30℃でのDMSO-D6のヘテロ核実験HSQC及びHMBCを、スピロ化合物の炭素化学シフト及びプロトン化学シフトを的確に確かめるために行う。
【0131】
【0132】
化学シフトは、以下のように観察される:1H,DMSO-d6, 600MHz, δ in ppm, TMS at 0.00ppm: 8.72(bs,1H), 3.47(dd,2H), 3.37(t,2H), 2.21(m,2H), 2.02(m,lH), 1.89(m,lH) (図12参照)。
【0133】
13C,DMSO−d6,150MHz, δ in ppm, 39.5ppmでの参照DMSO: 169.6, 68.7, 45.6, 40.7, 32.9, 22.4.
【0134】
アミドプロトンの化学シフトは、8.72ppmに広範の一重項で見られたし、8.72と3.37の間に交差ピークが観測された。この発見により、3.47ppmのH-3の化学シフトが認められた。3.37ppmと2.21ppmの間の微弱なnOeは、2.21ppmでのH-5の個体群を示している。2.021と1.89ppmを通じて3.37ppmから2.21ppmまでに全相関が見られた。nOe相関は、2.21, 2.02, 1.89と3.37ppmとの間で観測された。この発見は、H-6とH-7、つまり、H-6(2.02と1.89ppm)、H-7(3.37ppm)の共鳴と理解できる。ヘテロ核2−D実験(HSQC及びHMBC)も、フォトン及び炭素の化学シフトを確認した。
【0135】
個々のフォトン及び炭素の化学シフトは、以下のように観測された:
【0136】
8.72 (bs, H-2,1H), 3.47(dd,H-3,2H), 3.37(t,H-7,2H), 2.21(m,H-5,2H), 2.02(m,H-6,1H), 1.89(m, Η-6’1Η)
【0137】
169.6(C-1), 68.7(C-4), 45.6(C-7), 40.7(C-3), 32.9(C-5), 22.4(C-6)
【0138】
H−3とH−5の間の微弱なnOeは、お互いに対して環の束縛回転を示唆している。ドナーとアクセプターの残基i(i±3)における水素結合がないこと、及び2つの環の間の長距離のnOe(Cα原子<7Å)がないことは、著しい二次的な折れ目がないことを示している。
【0139】
実施例11
フォトン1−D実験1H,13C,DEPT,等核2−D実験(DQF-COSY,TOCSY,NOESY)及びDMSO-D6におけるセ氏30℃でのヘテロ核実験HSQC及びHMBCは、スピロ化合物
の炭素の化学シフト及びフォトンの化学シフトを的確に確認するために行う。DMSOにおける1HNMRは、図13に示している。600MHzのA N15−HSQC実験は、アミド化学シフトを確認するために行う。
【0140】
均等物
当業者は、ここに記述される発明の特定の実施形態に多くの均等物を認識し、又はありふれた実験を行なうことにより確認することができる。このような均等物は、以下の請求項に包含されることを意図する。
【0141】
参照による取り込み
すべての特許の全内容、公開された特許出願、ウェブサイトとその他の引用文献は、参照によって全体としてここに明らかに取り入れられ、以下のものを参照によって取り入れるものとして含んでいる。
【0142】
Abbott FV, Franklin KB, Westbrook RF, The formalin test: scoring properties of the first and second phases of the pain response in rats. Pain, 60 (1995) 91-102; Bennett GJ, Xie YK., A peripheral mononeuropathy in rat that produces disorders of pain sensation like those seen in man. Pain, 33 (1988) 87-107;米国特許第7,273,889; 米国特許第6,821,985; 米国特許第6,667,317; 米国特許第6,635,270; 米国特許第6,521,414; 米国特許第6,197,820; 米国特許第6,147,230; 米国特許第6,007,841; 米国特許第5,952,389; 米国特許第5,902,815; 米国特許第5,741,778; 米国特許第5,605,911; 米国特許第5,523,323; 米国特許第4,959,493; Moskal, et al. (2005), Neuropharmacology, 49(7): 1077-87; Narahshi, Toshio et al. (2004) Biol. Pharm. Bull., 27(1): 1701-1706; Lynch, Gary et al. (2006), Aging Research Reviews, 5:255-280; Rajashankar et al. J. Am. Chem. Soc. (1992), 114, 9225; Rajashankar et al. J. Am. Chem. Soc. (1995), 117, 10129; A. Karle et al, Biochemistry (1990), 29, 6747; Regan et al, Science (1998), 241, 976; Kaumaya et al, Biochemistry (1990), 29, 13; Hanessian et al, Tetrahedron (1997), 53, 12789; Zhang et al, Org. Lett. (2003), 53115; Xuyuan et al, Org. Lett. (2004), 6, 3285; Halab et al, J. Med. Chem. (2002), 45, 5353
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO.1のNMDAリガンド結合コアに結合できるペプチド模倣薬であって、
前記ペプチド模倣薬は、約6Åから14Å離れた2つのアルファ炭素原子と、
前記ペプチド模倣薬が前記SEQ IDNO.1に結合する場合に、二環式アミドコアが実質的に構造を維持するような二環式アミドコアを含むベータターン構造とを有するペプチド模倣薬。
【請求項2】
前記二環式のコアは、スピロ−ベータ−ラクタムである請求項2に記載のペプチド模倣薬。
【請求項3】
前記ペプチド模倣薬は、
で表されるコアを有する請求項1又は2に記載のペプチド模倣薬。
【請求項4】
前記ペプチド模倣薬は、生体内又は水溶液中でベータターン構造を実質的に保持する請求項1〜3のいずれか1項に記載のペプチド模倣薬。
【請求項5】
前記ペプチド模倣薬は、SEQ IDNO.1のアミノ酸である、PRO124、THR126、GLU178、およびSER180と水素結合を形成することができる請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチド模倣薬。
【請求項6】
前記コアは、1または2のアミノ酸と結合する請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド模倣薬。
【請求項7】
前記ペプチド模倣薬は、6Åから10Å離れた2つのアルファ炭素原子を有する二環式アミドコアを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のペプチド模倣薬。
【請求項8】
以下の式Iに示される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチド模倣薬、並びに、医薬的に受容可能な塩、立体異性体、及びそれらのN−オキシド。
Tは、互いに独立して、CR4R4’及びnは0、1、2又は3であり、
Aは、任意に存在し、フェニル又はピリジンから選択され、
Aは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R1は、水素、ヒドロキシル、S(O)2−C1-4アルキル、−SO2、C1-4アルキル、C2−C4アルケニル、フェニル、R7、又は
からなる群から選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、又はフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
Xは、CH又はNであり、
R3及びR3’は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、フェニル、C1-4アルキル、アミド、アミン、又はC2-4アルケニルからなる群より選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R4及びR4’は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、フェニル、C1-4アルキル、アミド、アミン、C1-4アルコキシ、又はC2-4アルケニルからなる群より選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R2は、水素、R7、S(O)2、S(O)2−C1−C4アルキル、C1-4アルキル、ヒドロキシル、又はフェニルからなる群から選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R5及びR5’は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C2-4アルケニル、シアノ、アミノ、フェニル、及びヒドロキシルからなる群より選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R7は、−C(O)−R9、−C(O)−O−R9、又は−C(O)−NRd−R9からなる群より選択され、
R9は、水素、C1-4アルキル、フェニル、又はヘテロシクリルからなる群より選択され、C1-4アルキル、フェニル、又はヘテロシクリルは、Rbから選択される1、2、又は3の置換基で任意に置換され、
R8は、水素、−C(O)−、C1-4アルキル、又はC(O)−O−C1-4アルキルからなる群より選択され、C1-4アルキルは、Raから選択される1、2、又は3の置換基で任意に置換され、
Raは、それぞれ独立して、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、フェニル、C1-4アルキル、及びC1-4アルコキシから選択され、
Rbは、それぞれ独立して、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、フェニル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ及び−NH−Rcからなる群より選択され、
Rcは、C(O)−O−C1-4アルキル、C(O)−C1-4アルキルからなる群より選択され、
Rdは、それぞれ独立して、水素及びC1-4アルキルから選択される。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物の有効量を、必要とする患者に投与することを含む認知障害を治療する方法。
【請求項10】
前記認知障害は、記憶障害または学習障害に関連する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的に許容される組成物。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物の有効量を、必要とする患者に投与することを含む神経障害性の痛みを治療する方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物の有効量を、必要とする患者に投与することを含む、鬱病、強迫神経症、または統合失調症を治療する方法。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物の有効量を、必要とする患者に投与することを含む、心的外傷後ストレス障害、アルコール依存症又は習慣性薬物中毒を治療する方法。
【請求項15】
環状アミド部位を有するベータターンペプチド模倣薬を模倣するグリシンの、NMDAリガンド結合コア受容体の作動又は拮抗許容量を、必要とする患者に投与することを含む、患者のNMDA受容体の介在疾患を治療又は予防する方法。
【請求項16】
前記環状アミドは、ベータラクタム部位である、請求項15の方法。
【請求項17】
SEQ ID NO.1の活性を調整する方法であって、前記調整は、化合物によって選定された好ましい構造から生じ、前記調整は、前記化合物と、1、2、3又は4のSEQID NO.1のアミノ酸:PRO124、THR126、GLU178、及びSER180との間での水素結合相互作用から生じる方法。
【請求項18】
SEQ ID NO.1に結合できる化合物を特定する方法であって、
SEQ ID NO.1の分子モデルによる原子座標、又は登録番号1PBQのタンパク質構造データバンクにある原子座標、のうちの少なくとも一部に由来するSEQ ID NO.1の1以上のターゲット領域を含む分子モデルを準備すること、
前記分子モデルを用いて、前記分子モデル内でのターゲット領域のPRO124、THR126、GLU178、及びSER180に結合できる化合物を特定すること、
前記化合物をSEQ ID NO.1のターゲット領域に接触させること、
前記接触の後に、SEQ ID NO.1のターゲット領域の活性を測定することを含む方法。
【請求項19】
SEQ ID NO.1を含む結合配列を調整する化合物を特定する方法であって、
(A)SEQ ID NO.1のPRO124、THR126、GLU178、及びSER180と結合又は配位する化合物を設計又はスクリーニングすること、
(B)(A)で設計又はスクリーニングされた化合物が、生体内又は体外でSEQ ID NO.1への結合を調整する能力があることを試験し、それによってNDMAの部分的作動薬である化合物を特定すること、を含む方法。
【請求項20】
請求項19の方法によって特定される化合物。
【請求項21】
請求項20の化合物の有効量を、必要のある患者に投与することを含む、患者のうつ病を治療する方法。
【請求項1】
SEQ ID NO.1のNMDAリガンド結合コアに結合できるペプチド模倣薬であって、
前記ペプチド模倣薬は、約6Åから14Å離れた2つのアルファ炭素原子と、
前記ペプチド模倣薬が前記SEQ IDNO.1に結合する場合に、二環式アミドコアが実質的に構造を維持するような二環式アミドコアを含むベータターン構造とを有するペプチド模倣薬。
【請求項2】
前記二環式のコアは、スピロ−ベータ−ラクタムである請求項2に記載のペプチド模倣薬。
【請求項3】
前記ペプチド模倣薬は、
で表されるコアを有する請求項1又は2に記載のペプチド模倣薬。
【請求項4】
前記ペプチド模倣薬は、生体内又は水溶液中でベータターン構造を実質的に保持する請求項1〜3のいずれか1項に記載のペプチド模倣薬。
【請求項5】
前記ペプチド模倣薬は、SEQ IDNO.1のアミノ酸である、PRO124、THR126、GLU178、およびSER180と水素結合を形成することができる請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチド模倣薬。
【請求項6】
前記コアは、1または2のアミノ酸と結合する請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド模倣薬。
【請求項7】
前記ペプチド模倣薬は、6Åから10Å離れた2つのアルファ炭素原子を有する二環式アミドコアを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のペプチド模倣薬。
【請求項8】
以下の式Iに示される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチド模倣薬、並びに、医薬的に受容可能な塩、立体異性体、及びそれらのN−オキシド。
Tは、互いに独立して、CR4R4’及びnは0、1、2又は3であり、
Aは、任意に存在し、フェニル又はピリジンから選択され、
Aは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R1は、水素、ヒドロキシル、S(O)2−C1-4アルキル、−SO2、C1-4アルキル、C2−C4アルケニル、フェニル、R7、又は
からなる群から選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、又はフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
Xは、CH又はNであり、
R3及びR3’は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、フェニル、C1-4アルキル、アミド、アミン、又はC2-4アルケニルからなる群より選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R4及びR4’は、独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、フェニル、C1-4アルキル、アミド、アミン、C1-4アルコキシ、又はC2-4アルケニルからなる群より選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R2は、水素、R7、S(O)2、S(O)2−C1−C4アルキル、C1-4アルキル、ヒドロキシル、又はフェニルからなる群から選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R5及びR5’は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C2-4アルケニル、シアノ、アミノ、フェニル、及びヒドロキシルからなる群より選択され、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、及びフェニルは、Raから選択される1以上の置換基で任意に置換され、
R7は、−C(O)−R9、−C(O)−O−R9、又は−C(O)−NRd−R9からなる群より選択され、
R9は、水素、C1-4アルキル、フェニル、又はヘテロシクリルからなる群より選択され、C1-4アルキル、フェニル、又はヘテロシクリルは、Rbから選択される1、2、又は3の置換基で任意に置換され、
R8は、水素、−C(O)−、C1-4アルキル、又はC(O)−O−C1-4アルキルからなる群より選択され、C1-4アルキルは、Raから選択される1、2、又は3の置換基で任意に置換され、
Raは、それぞれ独立して、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、フェニル、C1-4アルキル、及びC1-4アルコキシから選択され、
Rbは、それぞれ独立して、カルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、フェニル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ及び−NH−Rcからなる群より選択され、
Rcは、C(O)−O−C1-4アルキル、C(O)−C1-4アルキルからなる群より選択され、
Rdは、それぞれ独立して、水素及びC1-4アルキルから選択される。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物の有効量を、必要とする患者に投与することを含む認知障害を治療する方法。
【請求項10】
前記認知障害は、記憶障害または学習障害に関連する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的に許容される組成物。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物の有効量を、必要とする患者に投与することを含む神経障害性の痛みを治療する方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物の有効量を、必要とする患者に投与することを含む、鬱病、強迫神経症、または統合失調症を治療する方法。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物の有効量を、必要とする患者に投与することを含む、心的外傷後ストレス障害、アルコール依存症又は習慣性薬物中毒を治療する方法。
【請求項15】
環状アミド部位を有するベータターンペプチド模倣薬を模倣するグリシンの、NMDAリガンド結合コア受容体の作動又は拮抗許容量を、必要とする患者に投与することを含む、患者のNMDA受容体の介在疾患を治療又は予防する方法。
【請求項16】
前記環状アミドは、ベータラクタム部位である、請求項15の方法。
【請求項17】
SEQ ID NO.1の活性を調整する方法であって、前記調整は、化合物によって選定された好ましい構造から生じ、前記調整は、前記化合物と、1、2、3又は4のSEQID NO.1のアミノ酸:PRO124、THR126、GLU178、及びSER180との間での水素結合相互作用から生じる方法。
【請求項18】
SEQ ID NO.1に結合できる化合物を特定する方法であって、
SEQ ID NO.1の分子モデルによる原子座標、又は登録番号1PBQのタンパク質構造データバンクにある原子座標、のうちの少なくとも一部に由来するSEQ ID NO.1の1以上のターゲット領域を含む分子モデルを準備すること、
前記分子モデルを用いて、前記分子モデル内でのターゲット領域のPRO124、THR126、GLU178、及びSER180に結合できる化合物を特定すること、
前記化合物をSEQ ID NO.1のターゲット領域に接触させること、
前記接触の後に、SEQ ID NO.1のターゲット領域の活性を測定することを含む方法。
【請求項19】
SEQ ID NO.1を含む結合配列を調整する化合物を特定する方法であって、
(A)SEQ ID NO.1のPRO124、THR126、GLU178、及びSER180と結合又は配位する化合物を設計又はスクリーニングすること、
(B)(A)で設計又はスクリーニングされた化合物が、生体内又は体外でSEQ ID NO.1への結合を調整する能力があることを試験し、それによってNDMAの部分的作動薬である化合物を特定すること、を含む方法。
【請求項20】
請求項19の方法によって特定される化合物。
【請求項21】
請求項20の化合物の有効量を、必要のある患者に投与することを含む、患者のうつ病を治療する方法。
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2013−519683(P2013−519683A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553046(P2012−553046)
【出願日】平成23年2月11日(2011.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2011/024583
【国際公開番号】WO2011/100585
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(596057893)ノースウエスタン ユニバーシティ (35)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月11日(2011.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2011/024583
【国際公開番号】WO2011/100585
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(596057893)ノースウエスタン ユニバーシティ (35)
【Fターム(参考)】
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