説明

SQUIDセンサ用デュワおよびSQUIDセンサ

【課題】検出コイルを効率よく冷却可能なSQUIDセンサ用デュワを提供する。
【解決手段】冷媒(1)を貯留する冷媒容器(11)に環状中空部(11a)を設け、該環状中空部(11a)を例えば超伝導材料管で構成し、SQUIDセンサの検出コイルとして機能させる。
【効果】検出コイルを冷媒(1)で直接冷却することが出来るため、検出コイルの貫通孔のサイズを数m程度にすることも可能になる。、試料(S)自体を冷却する必要もなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SQUIDセンサ用デュワおよびSQUIDセンサに関し、さらに詳しくは、検出コイルを効率よく冷却可能なSQUIDセンサ用デュワおよび外部ノイズの影響を受けにくいSQUIDセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環状の検出コイルの貫通孔に試料を通して磁気を測定する方式のSQUID磁気センサが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−207511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記SQUID磁気センサでは、検出コイルを銅伝熱ロッドに貼りつけてあり、銅伝熱ロッドを介して検出コイルを冷却している。
しかし、このような間接的な冷却方式では、検出コイルの冷却効率が悪く、検出コイルの温度上昇を防ぐため、検出コイルの貫通孔のサイズが数mm以下に制限されたり、試料自体を冷却しなければならない問題点があった。
また、検出コイルに鎖交する外部ノイズの影響を受けやすい問題点があった。
そこで、本発明の目的は、検出コイルを効率よく冷却可能なSQUIDセンサ用デュワおよび外部ノイズの影響を受けにくいSQUIDセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点では、本発明は、SQUIDセンサの検出コイル(9a,9b)として機能する環状中空部(11a,11b)を有し該環状中空部(11a,11b)に冷媒(1)を貯留する冷媒容器(11)と、前記冷媒容器(11)の周りを囲繞する真空容器(2)とを具備したことを特徴とするSQUIDセンサ用デュワ(10)を提供する。
上記第1の観点によるSQUIDセンサ用デュワ(10)では、冷媒(1)を貯留する冷媒容器(11)に環状中空部(11a,11b)を設け、該環状中空部(11a,11b)を例えば超伝導材料管で構成し、SQUIDセンサの検出コイル(9a,9b)として機能させる。これにより、検出コイル(9a,9b)を冷媒(1)で直接冷却することが出来るため、検出コイル(9a,9b)の貫通孔のサイズを数m程度にすることも可能になる。また、試料(S)自体を冷却する必要もなくなる。
【0006】
第2の観点では、本発明は、SQUIDセンサの環状の検出コイル(9a,9b)を収容するための環状中空部(21a)を有し該環状中空部(21a)に冷媒(1)を貯留する冷媒容器(21)と、前記冷媒容器(21)の周りを囲繞する真空容器(2)とを具備したことを特徴とするSQUIDセンサ用デュワ(20)を提供する。
上記第2の観点によるSQUIDセンサ用デュワ(20)では、冷媒(1)を貯留する冷媒容器(11)に環状中空部(11a)を設け、該環状中空部(11a)にSQUIDセンサの検出コイル(9a,9b)を収容する。これにより、検出コイル(9a,9b)を冷媒(1)で直接冷却することが出来るため、検出コイル(9a,9b)の貫通孔(3)のサイズを数m程度にすることも可能になる。また、試料(S)自体を冷却する必要もなくなる。
【0007】
第3の観点では、本発明は、環状中空部を有し該環状中空部に冷媒を貯留する冷媒容器および前記冷媒容器の周りを囲繞する真空容器とを有するSQUIDセンサ用デュワと、前記環状中空部自体により構成されるか又は前記環状中空部に収容される環状の第1の検出コイルおよび第2の検出コイルと、前記第1の検出コイルおよび前記第2の検出コイルを逆位相で直列接続した直列回路が接続されるSQUIDとを具備したことを特徴とするSQUIDセンサを提供する。
上記第3の観点によるSQUIDセンサでは、第1の検出コイルおよび第2の検出コイルを冷媒で直接冷却することが出来るため、第1の検出コイルおよび第2の検出コイルの貫通孔のサイズを数m程度にすることも可能になる。また、試料自体を冷却する必要もなくなる。さらに、第1の検出コイルおよび第2の検出コイルを逆位相で直列接続しているため、第1の検出コイルと第2の検出コイルの間隔に比べて十分遠方から飛来する外部ノイズをキャンセルでき、外部ノイズの影響を受けにくくなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のSQUIDセンサ用デュワによれば、検出コイルを効率よく冷却できるため、検出コイル(9)の貫通孔(3)のサイズを数m程度にすることも可能になる。また、試料(S)自体を冷却する必要もなくなる。また、本発明のSQUIDセンサによれば、外部ノイズの影響を受けにくくなる。これにより、例えばボーリングした長尺の地質試料の磁気測定やプラントの配管の磁気的検査等が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図に示す実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0010】
図1および図2は、実施例1に係るSQUIDセンサ用デュワ10を備えたSQUIDセンサ100を示す断面図である。
SQUIDセンサ用デュワ10は、例えば液体ヘリウムの冷媒1を貯留する冷媒容器11と、冷媒容器11の周りを囲繞する真空容器2とを備えている。
【0011】
冷媒容器11は、冷媒1を多量に貯留しうる冷媒貯留部11cと、例えばニオブのような超伝導材料のパイプを環状(1カ所は切れている)に成形した環状中空部11a,11bとからなる。環状中空部11a,11bの内部にも冷媒1が満たされている。冷媒1は、冷媒給排管8から冷媒貯留部11cに補充される。
【0012】
図3に示すように、環状中空部11a,11bの同側の端部は互いに接続されると共に残りの端部はSQUID5に接続されている。これにより、環状中空部11aは第1の検出コイル9aとして機能し、環状中空部11bは第2の検出コイル9bとして機能する。但し、SQUID5に対して逆位相になる。
【0013】
SQUID5は、支持板6で支持されている。また、SQUID5からリード線7が外部に導出されている。
【0014】
冷媒容器11と真空容器2の間は、真空断熱されている。また、例えば銅製の熱シールド4で熱的に遮蔽されている。
環状中空部11a,11bを囲繞している熱シールド4の一部は、例えばFRPのような絶縁材料製の絶縁部4aになっている。これは、環状中空部11a、1bを囲繞している熱シールド4が電気的ループになってコイルとして機能するのを防止するためである。
【0015】
貫通孔3の実質的な内径は、冷媒容器11の環状中空部11a,11bを囲繞する真空容器2の環状中空部2aの貫通孔の内径になり、例えば20cm〜2mである。
【0016】
図3は、SQUIDセンサ100による測定例を示す側面図である。
長尺の試料Sを貫通孔3に通し、SQUIDセンサ100を移動させて試料Sの磁気を測定する。
試料Sは、例えばボーリングした長尺の地質試料や,プラントの配管である。
【0017】
実施例1のSQUIDセンサ用デュワ10によれば、冷媒1を貯留する冷媒容器11に環状中空部11a,11bを設け、該環状中空部11a,11bをSQUIDセンサの検出コイル9a,9bとして機能させるため、検出コイル9a,9bを冷媒1で直接的に効率よく冷却することが出来る。これにより、貫通孔3のサイズを数m程度にすることも可能になる。また、試料S自体を冷却する必要もなくなる(冷却してもよい)。
さらに、実施例1のSQUIDセンサ100によれば、検出コイル9a,9bが逆位相で直列接続されているため、第1の検出コイル9a(11a)と第2の検出コイル9b(11b)の間隔Lに比べて十分遠方から飛来する外部ノイズをキャンセルでき、外部ノイズの影響を受けにくくなる。
【実施例2】
【0018】
図4および図5は、実施例2に係るSQUIDセンサ用デュワ20を備えたSQUIDセンサ200を示す断面図である。
SQUIDセンサ用デュワ20は、例えば液体ヘリウムの冷媒1を貯留する冷媒容器21と、冷媒容器21の周りを囲繞する真空容器2とを備えている。
【0019】
冷媒容器21は、冷媒1を多量に貯留しうる冷媒貯留部11cと、例えばFRPのような絶縁材料製の環状中空部21aとからなる。環状中空部21aの内部にも冷媒1が満たされている。冷媒1は、冷媒給排管8から冷媒貯留部11cに補充される。
【0020】
環状中空部21aの内部には、例えばニオブ線のような超伝導材料線からなる検出コイル9a,9bが収容されている。
図6に示すように、検出コイル9a,9bの同側の端部は互いに接続されると共に残りの端部はSQUID5に接続されている。これにより、第1の検出コイル9aと第2の検出コイル9bは、SQUID5に対して逆位相になる。
【0021】
SQUID5は、支持板6で支持されている。また、SQUID5からリード線7が外部に導出されている。
【0022】
冷媒容器21と真空容器2の間は、真空断熱されている。また、例えば銅製の熱シールド4で熱的に遮蔽されている。
環状中空部21aを囲繞している熱シールド4の一部は、例えばFRPのような絶縁材料製の絶縁部4aになっている。これは、環状中空部21aを囲繞している熱シールド4が電気的ループになってコイルとして機能するのを防止するためである。
【0023】
貫通孔3の実質的な内径は、冷媒容器21の環状中空部21aを囲繞する真空容器2の環状中空部2aの貫通孔の内径になり、例えば20cm〜2mである。
【0024】
図6は、SQUIDセンサ200による測定例を示す側面図である。
試料搬送装置Vで搬送してきた試料Sを貫通孔3に通して磁気を測定する。
試料Sは、例えば密封された食品であり、異物の混入を磁気により検査する。
【0025】
実施例2のSQUIDセンサ用デュワ20によれば、冷媒1を貯留する冷媒容器21に環状中空部21aを設け、該環状中空部21aに検出コイル9a,9bを収容するため、検出コイル9a,9bを冷媒1で直接的に効率よく冷却することが出来る。これにより、貫通孔3のサイズを数m程度にすることも可能になる。また、試料S自体を冷却する必要もなくなる(冷却してもよい)。
さらに、実施例2のSQUIDセンサ200によれば、検出コイル9a,9bが逆位相で直列接続されているため、第1の検出コイル9aと第2の検出コイル9bの間隔Lに比べて十分遠方から飛来する外部ノイズをキャンセルでき、外部ノイズの影響を受けにくくなる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のSQUIDセンサ用デュワは、SQUIDセンサに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1に係るSQUIDセンサ用デュワを含むSQUIDセンサを示す断面図である。
【図2】実施例1に係るSQUIDセンサ用デュワを含むSQUIDセンサを示す断面図である(図1の断面と直交する断面)。
【図3】実施例1に係るSQUIDセンサの使用例を示す側面図である。
【図4】実施例2に係るSQUIDセンサ用デュワを含むSQUIDセンサを示す断面図である。
【図5】実施例2に係るSQUIDセンサ用デュワを含むSQUIDセンサを示す断面図である(図4の断面と直交する断面)。
【図6】実施例2に係るSQUIDセンサの使用例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 SQUID冷却用冷媒
2 真空容器
2a 環状中空部
3 貫通孔
4 熱シールド
5 SQUID
6 支持板
7 リード線
9a 第1の検出コイル
9b 第2の検出コイル
10,20 SQUIDセンサ用デュワ
11,21 冷媒容器
11a,11b,12a 環状中空部
100,200 SQUIDセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SQUIDセンサの検出コイル(9a,9b)として機能する環状中空部(11a,11b)を有し該環状中空部(11a,11b)に冷媒(1)を貯留する冷媒容器(11)と、前記冷媒容器(11)の周りを囲繞する真空容器(2)とを具備したことを特徴とするSQUIDセンサ用デュワ(10)。
【請求項2】
SQUIDセンサの環状の検出コイル(9a,9b)を収容するための環状中空部(21a)を有し該環状中空部(21a)に冷媒(1)を貯留する冷媒容器(21)と、前記冷媒容器(21)の周りを囲繞する真空容器(2)とを具備したことを特徴とするSQUIDセンサ用デュワ(20)。
【請求項3】
環状中空部を有し該環状中空部に冷媒を貯留する冷媒容器および前記冷媒容器の周りを囲繞する真空容器とを有するSQUIDセンサ用デュワと、前記環状中空部自体により構成されるか又は前記環状中空部に収容される環状の第1の検出コイルおよび第2の検出コイルと、前記第1の検出コイルおよび前記第2の検出コイルを逆位相で直列接続した直列回路が接続されるSQUIDとを具備したことを特徴とするSQUIDセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−5514(P2007−5514A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182902(P2005−182902)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【Fターム(参考)】