説明

SVO燃料車用燃料供給装置

【課題】 安定的に植物油を供給することができる燃料供給装置を提供することである。
【解決手段】 SVO燃料を貯留するためのSVO燃料貯油槽(22)と、エンジンにSVO燃料を供給するSVO燃料供給管(24)と、SVO燃料を加温するためのSVO燃料加温手段(40)とを備え、SVO燃料加温手段が、ラジエータからSVO燃料供給管まで延びてSVO燃料供給管を加温するように構成されていることを特徴とするSVO燃料車用燃料供給装置(10)が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、車両の燃料供給装置に関する。より詳細には、本発明は、SVO燃料を使用するSVO燃料車用の燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クルマ社会の拡大によりCO2 の排出量が増大し、これが地球温暖化の一因となっている。そこで、石油等の化石燃料を使用せずに植物系燃料で車両を走行させることにより地上のCO2 の総量を抑制しようという考えが注目を集めている。このような際に使用する植物系燃料として、食用油などを原料とするバイオディーゼル(BDF)燃料が知られている。BDF燃料は、排ガス中のCO2 濃度が低く、SOX も殆ど含まないという利点を有しているが、精製時に触媒が必要となるためコスト高になるとともに、精製時の副産物や汚水の処理をしなければならないという欠点を有している。
【0003】
一方、植物油(廃食油を含む)を精製せずにそのまま使用するストレート・ベジタブル・オイル(SVO)燃料が着目されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SVO燃料は、車両用燃料として種々の利点を有している。しかしながら、SVO燃料は、温度が下がると流動性が低下するため、車両に植物油タンクを搭載して走行する場合、燃料の供給が不安定になるおそれがある。また、SVO燃料自体は課税対象とならないが、鉱物油(軽油、ガソリンなど)にSVO燃料が混入すると、全ての油種が(SVO燃料も)課税対象となってしまう上、エンジンの始動が円滑に行われないケースも生ずるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みて案出されたものであって、安定的に植物油を供給することができるSVO燃料車用燃料供給装置を提供することを目的とする。また、本発明は、炭化水素燃料とSVO燃料が混合することなく起動・運転することができるSVO燃料車用燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に記載のSVO燃料車用燃料供給装置は、SVO燃料を貯留するためのSVO燃料貯油槽と、エンジンにSVO燃料を供給するSVO燃料供給管と、SVO燃料を加温するためのSVO燃料加温手段とを備え、前記SVO燃料加温手段が、前記エンジンのラジエータから前記SVO燃料供給管まで延びて前記SVO燃料供給管を加温するように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項2に記載のSVO燃料車用燃料供給装置は、前記請求項1の装置において、前記温水チューブが、前記SVO燃料貯油槽の内部まで延びていることを特徴とするものである。
【0008】
本願請求項3に記載のSVO燃料車用燃料供給装置は、前記請求項1又は2の装置において、炭化水素燃料を貯留するための炭化水素燃料貯油槽と、エンジンに炭化水素燃料を供給するための炭化水素燃料供給管と、油循環管と、前記油循環管から分岐して前記炭化水素燃料貯油槽に至る炭化水素燃料戻り管と、前記油循環管から分岐して前記SVO燃料貯油槽に至るSVO燃料戻り管と、前記炭化水素燃料供給管に配置された逆止弁とを備え、前記炭化水素燃料供給管、前記SVO燃料供給管、前記油循環管、前記炭化水素燃料戻り管、及び前記SVO燃料戻り管には、遮断弁がそれぞれ設けられており、前記各遮断弁を開閉状態にすることにより、前記SVO燃料貯油槽に前記炭化水素燃料が混入しない状態でエンジンに前記炭化水素燃料を供給し、或いは、前記炭化水素燃料貯油槽に前記SVO燃料が混入しない状態でエンジンに前記SVO燃料を供給することができるように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項4に記載のSVO燃料車用燃料供給装置は、前記請求項3の装置において、前記油循環管に配置されたエア分離用のエアチャンバを更に備え、炭化水素燃料による運転時に前記炭化水素燃料戻り管の遮断弁を閉鎖した場合において前記炭化水素燃料供給管に空気が混入したとき、或いは、SVO燃料による運転時に前記SVO燃料戻り管の遮断弁を閉鎖した場合において前記SVO燃料供給管に空気が混入したとき、前記エアチャンバに空気を一時的に貯蔵するように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本願請求項4に記載のSVO燃料車用燃料供給装置は、前記請求項1から請求項3までのいずれか1項の装置において、前記SVO燃料が植物油であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の装置によれば、温度が低下してもSVO燃料を安定的に供給することが可能である。また、本発明の装置によれば、炭化水素燃料とSVO燃料の混合を回避することができるので、課税上不利となることもなく、エンジンの始動も円滑に行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係るSVO燃料車用燃料供給装置について詳細に説明する。図1は、本発明の好ましい実施の形態に係るSVO燃料車用燃料供給装置を模式的に示した全体図である。図1において全体として参照符号10で示される本発明の好ましい実施の形態に係るSVO燃料車用燃料供給装置は、軽油を貯留するための軽油貯油槽12と、ディーゼルエンジン14に軽油を供給するため、軽油貯油槽12からディーゼルエンジン14まで延びた軽油供給管16とを備えており、軽油供給管16には、軽油の供給を遮断するための軽油供給管遮断弁16aが配置されている。
【0013】
また、軽油供給管16には、ディーゼルエンジン14の燃料噴射ノズル(図示せず)に燃料を送るための燃料噴射ポンプ18が配置されている。なお、図1では、燃料噴射ポンプ18に隣接してブースターポンプ20が配置されているが、ブースターポンプ20は必須の装置ではなく、設置されない場合もある。
【0014】
SVO燃料車用燃料供給装置10は又、植物油を貯留するための植物油貯油槽22と、ディーゼルエンジン14に植物油を供給するため、植物油貯油槽22から軽油供給管16に合流する植物油供給管24とを備えており、植物油供給管24には、植物油の供給を遮断するための植物油供給管遮断弁24aが配置されている。
【0015】
また、植物油供給管24には、植物油を加温するためのヒータ26、および植物油に含まれる不要物を濾過するためのエレメント28が配置されている。
【0016】
SVO燃料車用燃料供給装置10は又、エア分離用のエアチャンバ30と、エアチャンバ30の出口から延びて軽油供給管16に合流し、燃料噴射ポンプ18およびブースターポンプ20の吐出口から延びてエアチャンバ30の入口に至る油循環管32とを備えており、油循環管32には、油循環管遮断弁32aが配置されている。エアチャンバ30は、詳細には後述するように、一時的に空気を分離貯蔵することによって燃料ポンプへの気泡の移動を防止する役目を果たす。
【0017】
SVO燃料車用燃料供給装置10は又、油循環管32から分岐して軽油貯油槽12に至る軽油戻り管36と、油循環管32から分岐して植物油貯油槽22に至る植物油戻り管38とを備えており、軽油戻り管36には、軽油戻り管遮断弁36aが配置され、植物油戻り管38には、植物油戻り管遮断弁38aが配置されている。
【0018】
SVO燃料車用燃料供給装置10は又、ディーゼルエンジン14のラジエータ(図示せず)からの温水を利用して植物油供給管24を加温するための植物油加温手段40を備えている。植物油加温手段40は、ラジエータから植物油供給管24まで延びて植物油供給管24と一緒に結束されるとともに、植物油戻り管38と一緒に結束され、再びラジエータに戻るようになった温水チューブとして形成されている(図3参照)。
【0019】
好ましくは、植物油加温手段40の温水チューブを、植物油貯油槽22の内部まで延長させて植物油自体を加温するようにしてもよい。図2に示される例では、温水チューブが、植物油貯油槽22の内部でループ状に形作られているが、温水チューブを植物油貯油槽22の内部で任意の形状(例えばコイル状)に形作ってもよい。なお、上述の実施の形態では、植物油加温手段40が温水チューブとして形成されているが、例えば、植物油供給管24及び植物油戻り管38を二重管構造とし、外管にラジエータからの温水を供給することにより、植物油供給管24及び植物油戻り管38を加温するように構成してもよい。
【0020】
SVO燃料車用燃料供給装置10は更に、軽油供給管16に配置された逆止弁42を備えている。逆止弁42を設けたことにより、軽油貯油槽12内に植物油が混入するのを防止することができる。
【0021】
次に図4及び図5を参照して、以上のように構成されたSVO燃料車用燃料供給装置10の作動について説明する。まず、従来通り軽油のみで起動し運転しようとする場合には、軽油供給管遮断弁16a及び軽油戻り管遮断弁36aを開放し、植物油供給管遮断弁24a、油循環管遮断弁32a、及び植物油戻り管遮断弁38aを閉鎖する(図4(a)参照)。すると、図4(a)において矢印で示されるように、起動時及び運転時に軽油供給管16を介して燃料ポンプに軽油が供給され、エア抜き操作時に軽油戻り管36を介して軽油貯湯槽12に軽油が戻される。
【0022】
軽油で運転しようとする場合、上述のように、軽油供給管遮断弁16a及び軽油戻り管遮断弁36aを開放するが、軽油戻り管遮断弁36aを閉鎖し、軽油供給管遮断弁16a及び油循環管遮断弁32aを開放して軽油を循環させたときに、軽油の戻り管がなくなるため、軽油供給管16に空気が混入すると気泡が燃料ポンプに移動してエンジンに軽油が供給されなくなるおそれがある。そこで、エアチャンバ30を設けることにより、空気を一時的に分離貯蔵し、燃料ポンプへの気泡の移動を回避する。なお、軽油供給管16に空気が混入した場合には、軽油戻り管遮断弁36aが開放したときに、軽油戻り管36を介して軽油貯油槽12に排気される。
【0023】
植物油で運転しようとする場合には、植物油供給管遮断弁24a及び植物油戻り管遮断弁38aを開放し、軽油供給管遮断弁16a、油循環管遮断弁32a及び軽油戻り管遮断弁36aを閉鎖する(図4(b)参照)。すると、図4(b)において矢印で示されるように、運転時に植物油供給管24を介して燃料ポンプに植物油が供給され、エア抜き時に植物油戻り管38を介して植物油貯湯槽22に植物油が戻される。
【0024】
植物油で運転しようとする場合、上述のように、植物油供給管遮断弁24a及び植物油戻り管遮断弁38aを開放するが、植物油戻り管遮断弁38aを閉鎖し、植物油供給管遮断弁24a及び油循環管遮断弁32aを開放して植物油を循環させたときに、植物油の戻り管がなくなるため、植物油供給管24に空気が混入すると気泡が燃料ポンプに移動してエンジンに植物油が供給されなくなるおそれがある。そこで、エアチャンバ30を設けることにより、空気を一時的に分離貯蔵し、燃料ポンプへの気泡の移動を回避する。なお、植物油供給管24に空気が混入した場合には、植物油戻り管遮断弁38aが開放したときに、植物油戻り管38を介して植物油貯油槽22に排気される。
【0025】
燃料ポンプ(燃料噴射ポンプ18及びブースター燃料ポンプ20)内を植物油から軽油に置換しようとする場合には、軽油供給管遮断弁16a及び油循環管遮断弁32aを開放し、植物油供給管遮断弁24a、軽油戻り管遮断弁36a及び植物油戻り管遮断弁38aを閉鎖した状態(図5(a)参照)で運転すると、時間の経過とともに、燃料ポンプ内は軽油に置換される。
【0026】
燃料ポンプ内を軽油から植物油に切り換えようとする場合には、植物油供給管遮断弁24a及び油循環管遮断弁32aを開放し、軽油供給管遮断弁16a、軽油戻り管遮断弁36a及び植物油戻り管遮断弁38aを閉鎖した状態(図5(b)参照)で運転し、燃料ポンプ内の軽油が消費されるのを待った後、油循環管遮断弁32aを閉鎖し、植物油戻り管遮断弁38aを開放する。
【0027】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0028】
たとえば、前記実施の形態では、ディーゼルエンジンに関連して燃料供給装置が説明されているが、他の型式のエンジン(例えば、ガソリンエンジン)にも本発明の燃料供給装置を適用することができる。
【0029】
また、前記実施の形態では、軽油と植物油に関連して説明されているが、軽油以外の他の炭化水素燃料と(BDF燃料を含む)炭化水素燃料以外の燃料についても本発明の燃料供給装置を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の好ましい実施の形態に係るSVO燃料車用燃料供給装置を模式的に示した全体図である。
【図2】図1の植物油貯油槽付近を示した拡大図である。
【図3】図2の部分3の拡大図である。
【図4】図1の燃料供給装置の作動状態を説明するための図である。
【図5】図1の燃料供給装置の作動状態を説明するための別の図である。
【符号の説明】
【0031】
10 SVO燃料車用燃料供給装置
12 軽油貯油槽
14 ディーゼルエンジン
16 軽油供給管
16a 軽油供給管遮断弁
18 燃料噴射ポンプ
20 ブースターポンプ
22 植物油貯油槽
24 植物油供給管
24a 植物油供給管遮断弁
26 ヒータ
28 エレメント
30 エアチャンバ
32 油循環管
32a 油循環管遮断弁
36 軽油戻り管
36a 軽油戻り管遮断弁
38 植物油戻り管
38a 植物油戻り管遮断弁
40 植物油加温手段(温水チューブ)
42 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SVO燃料車用燃料供給装置であって、
SVO燃料を貯留するためのSVO燃料貯油槽と、
エンジンにSVO燃料を供給するSVO燃料供給管と、
SVO燃料を加温するためのSVO燃料加温手段とを備え、
前記SVO燃料加温手段が、前記エンジンのラジエータから前記SVO燃料供給管まで延びて前記SVO燃料供給管を加温するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記温水チューブが、前記SVO燃料貯油槽の内部まで延びていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
炭化水素燃料を貯留するための炭化水素燃料貯油槽と、
エンジンに炭化水素燃料を供給するための炭化水素燃料供給管と、
油循環管と、
前記油循環管から分岐して前記炭化水素燃料貯油槽に至る炭化水素燃料戻り管と、
前記油循環管から分岐して前記SVO燃料貯油槽に至るSVO燃料戻り管と、
前記炭化水素燃料供給管に配置された逆止弁とを備え、
前記炭化水素燃料供給管、前記SVO燃料供給管、前記油循環管、前記炭化水素燃料戻り管、及び前記SVO燃料戻り管には、遮断弁がそれぞれ設けられており、
前記各遮断弁を開閉状態にすることにより、前記SVO燃料貯油槽に前記炭化水素燃料が混入しない状態でエンジンに前記炭化水素燃料を供給し、或いは、前記炭化水素燃料貯油槽に前記SVO燃料が混入しない状態でエンジンに前記SVO燃料を供給することができるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記油循環管に配置されたエア分離用のエアチャンバを更に備え、
炭化水素燃料による運転時に前記炭化水素燃料戻り管の遮断弁を閉鎖した場合において前記炭化水素燃料供給管に空気が混入したとき、或いは、SVO燃料による運転時に前記SVO燃料戻り管の遮断弁を閉鎖した場合において前記SVO燃料供給管に空気が混入したとき、前記エアチャンバに空気を一時的に貯蔵するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記SVO燃料が植物油であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−2161(P2009−2161A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143087(P2007−143087)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(599047011)北海道オリンピア株式会社 (11)
【Fターム(参考)】