説明

TACI−免疫グロブリン融合タンパク質のための調製物

本発明は、TACI−免疫グロブリン融合タンパク質の調製物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用タンパク質のための調製物の分野に属する。より詳細には、これは、pHが4.5〜5.5の範囲の、TACI−免疫グロブリン(Ig)融合タンパク質のための調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
BLySリガンド/受容体ファミリー
2種の増殖因子BLyS(Bリンパ球刺激因子)及びAPRIL(増殖誘発リガンド)に関する独自の結合親和性を有する、3種の受容体TACI(膜貫通アクチベーター及びCAML−インターアクター)、BCMA(B細胞成熟抗原)及びBAFF−R(B細胞活性化因子の受容体)が同定されている(Marstersら、2000;Thompsonら、2001)。
【0003】
TACI及びBCMAは、BLyS及びAPRILの両方に結合するが、BAFF−Rは、BLySのみに高親和性で結合することが可能なようである(Marstersら、2000;Thompsonら、2001)。結果として、BLySは、3種全ての受容体を通じてシグナル伝達することができるのに対し、APRILは、TACI及びBCMAのみを通じてシグナル伝達することが可能なようである。加えて、BLyS及びAPRILの循環性ヘテロ三量体型複合体(BLyS及びAPRILの各サブユニットの1個又は2個のコピーを含む、3個のタンパク質サブユニットのグループ化)が、全身性免疫−ベースのリウマチ疾患の患者から採取された血清試料中において同定され、かつインビトロにおいてB細胞増殖を誘導することが示されている(Roschkeら、2002)。
【0004】
BLyS及びAPRILは、B細胞の成熟、増殖及び生存の強力な刺激因子である(Mooreら、1999;Schneiderら、1999;Doら、2000)。BLyS及びAPRILは、自己免疫疾患、特にB細胞に関与した疾患の持続に必要であることがある。高レベルのBLySを発現するように操作されたトランスジェニックマウスは、免疫細胞障害を示し、かつ全身性紅斑性狼瘡患者において認められる症状に類似した症状を呈する(Grossら、2000;Mackayら、1999)。同様に増大したレベルのBLyS/APRILが、全身性紅斑性狼瘡患者及び関節リウマチのような他の様々な自己免疫疾患の患者から採取された血清試料中で測定され(Roschke、2002;Cheemaら、2001;Groomら、2002)、BLyS及び/又はAPRILとB細胞媒介型疾患の関係を、動物モデルからヒトまで拡大している。BLyS及びAPRILの発現は、MS患者の末梢血単球及びT細胞において上方制御される(Thangarajhら、2004;Thangarajhら、2005)。MS病巣において、BLyS発現は、BAFF−Rを発現している免疫細胞近くに局在化された星状膠細胞上で強力に上方制御されることがわかった(Krumbholzら、2005)。
【0005】
アタシセプト
アタシセプト(atacicept)(INN)は、受容体TACI(膜貫通アクチベーター及びカルシウムモジュレーター及びシクロフィリンリガンド(CAML)−インターアクター)の細胞外リガンド結合部分及びヒトIgGの修飾されたFc部分を含む、組換え融合タンパク質である。アタシセプトは、BLyS(Bリンパ球刺激因子)及びAPRIL(増殖誘発リガンド)に対するアンタゴニストとして作用し、これらは両方共腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーの一員である。BLyS及びAPRILは、B細胞成熟機能及び生存の重要な調節因子であることが示されている。
【0006】
アタシセプトは、ヒトIgG1−FcとBLyS受容体TACIの細胞外ドメインの融合から生じる、313個のアミノ酸を含む可溶性糖タンパク質であり、推定質量は35.4キロダルトン(kDa)である。この生成物の高次構造は、二量体であり、推定質量は73.4kDaである。アタシセプトは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞から、組換え技術により作製される。
【0007】
アタシセプトにおいて、ヒトIgG1−Fcは、補体C1q成分へのFc結合及び抗体受容体との相互作用を低下するように修飾された(Taoら、1993;Canfieldら、1991)。アタシセプトは、これらのFcエフェクター機能について試験されかつ確認された。
【0008】
治療用タンパク質の調製物
アタシセプト等のTACI−Ig融合タンパク質は、生物製剤、すなわち、ヒト疾患の治療のため、つまりヒトへ投与のための治療用タンパク質である。治療用タンパク質の送達の成功を補助するために、調製物が開発される。治療用タンパク質に関連して頻繁に直面する問題は、例えば、タンパク質の安定性不良(多くの場合、冷蔵庫又は冷凍庫での保存が必要)、バイオアベイラビリティの不良、及び通常は非経口経路での患者に不親切な剤型等がある。
【0009】
生物工学的生産のプロセスにおいて、治療用タンパク質は、一般的に、水溶液中で高度に精製された状態で得られる。例えば非経口送達のためにこれらのタンパク質溶液を調製する場合、当該タンパク質の安定化は重要である。したがって、タンパク質を安定化する賦形剤を選択する必要がある。溶液中で高度に精製されたタンパク質の安定性は、緩衝剤によっても影響を受ける。緩衝剤は、溶液中のタンパク質の安定性に対し、溶液のイオン強度及びpHの両方により影響を与える。この目的のために使用される緩衝剤の例として、リン酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩及びコハク酸塩の緩衝剤がある。
【0010】
治療用タンパク質は、その保存期間の開始時に溶液中にあったとしても、課題は、溶液中のタンパク質を維持すること、粒子又は沈殿の形態に導く保存中の凝集を阻止すること、及び分解(例えば、加水分解、酸化、アミド分解、開裂、又は変性による)の阻止である。
【0011】
温度も溶解性に影響する。通常は、溶解性は温度と共に向上する。しかしながら、特定の閾値超の温度で、タンパク質は部分的にアンフォールディングし、溶解性の低下又は凝集/沈殿をもたらす。
【0012】
凝集及び分解を阻止するために、及び長期間安定な薬物を得るために、治療用タンパク質を安定化する1又は複数の賦形剤を含有する調製物の開発が必要とされる。
【0013】
本発明は、安定且つ医薬的に許容され、ヒト疾患の治療のための治療用タンパク質として使用されるTACI−Ig融合タンパク質のための調製物の要請に対処する。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、TACI−Ig融合タンパク質のための安定な調製物の開発に基づく。
【0015】
第一の態様によれば、本発明の調製物は、
a.i)BLyS及び/又はAPRILに結合するTACI細胞外ドメイン又はその断片もしくは変種;及び
ii)免疫グロブリン−定常ドメイン
を含んでなる、TACI−免疫グロブリン(TACI−Ig)融合タンパク質;並びに
b.pH4.5〜5.5の範囲で調製物を緩衝する緩衝剤、
を含んでなる。
【0016】
第二の態様によれば、本発明は、前記調製物を含んでなる医薬組成物に関する。
【0017】
本発明の第三の態様は、自己免疫疾患又はリンパ増殖性障害の治療又は予防のための、本発明の調製物又は医薬組成物に関する。
【0018】
第四の態様によれば、本発明は、TACI−Ig融合タンパク質の溶液を調製するステップ、及び当該溶液のpHを4.5〜5.5の範囲に調整するステップを含んでなる、本発明の調製物の製造方法に関する。
【0019】
本発明の第五の態様は、滅菌容器に、所定量の前記調製物を充填するステップを含んでなる、本発明の調製物の製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、TACI−免疫グロブリン(TACI−Ig)融合タンパク質が長期間にわたり(例えば、3ヶ月以上、6ヶ月以上、12ヶ月以上、15ヶ月以上、又は18ヶ月以上)安定である、TACI−Ig融合タンパク質のための調製物の開発に基づく。
【0021】
本発明によれば、当該調製物は、
a.i)BLyS及び/又はAPRILに結合するTACI細胞外ドメイン又はその断片もしくは変種;及び
ii)免疫グロブリン−定常ドメイン
を含んでなる、TACI−免疫グロブリン(TACI−Ig)融合タンパク質;並びに
b.pH4.5〜5.5の範囲で調製物を緩衝する緩衝剤、
を含んでなる。
【0022】
本発明の調製物の実施態様によれば、当該調製物のpHは、4.7〜5.3、及びより好ましくは4.9〜5.1の範囲である。
【0023】
すなわち、当該調製物は、pHが、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4又は5.5である。好ましい実施態様によれば、調製物のpHは5.0である。
【0024】
本発明の調製物において使用される緩衝剤は、たとえば、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、又はヒスチジンの緩衝剤があり得る。当該緩衝剤は、1〜50 mM、好ましくは5〜25 mMの範囲の強度を有することができる。例えば、本発明の調製物に含まれる緩衝剤は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45又は50 mMの強度を有することができる。
【0025】
本発明の好ましい実施態様によれば、当該緩衝剤は酢酸塩の緩衝剤である。好ましくは、これは酢酸ナトリウム(Na−酢酸)緩衝剤である。本発明のある実施態様によれば、当該緩衝剤は、5〜25 mM、好ましくは8〜12 mM、より好ましくは10 mM付近のNa−酢酸緩衝剤である。
【0026】
ある実施態様によれば、本発明の調製物は賦形剤を含んでなる。好適な賦形剤は、例えば、マンニトール、ソルビトール、グリシン又はトレハロースである。マンニトール又はソルビトールは、例えば調製物中に、30〜80、又は40〜60、又は約50又は51 mg/mLの濃度範囲で存在させることができる。グリシンは、例えば、10〜30、又は好ましくは15〜25、又は20又は21 mg/mLの濃度範囲で存在させることができる。
【0027】
トレハロースは、2つのグルコース分子がアルファ、アルファ−1,1結合で結合する二糖類(糖)である。無水トレハロース等のトレハロースは、例えば、本発明の調製物中に、50〜120 mg/mL、又は好ましくは60〜100 mg/mLの濃度範囲で存在させることができる。例えば、当該調製物は、トレハロースを、70、75、80、85、90、95、100、105、又は110 mg/mL含むことができる。
【0028】
本発明の調製物は、賦形剤、又はNaCl、CaCl2、MgCl2等の塩を含むことができ、本発明においては、調製物は遊離塩であることが好ましい。調製物は、Tween20、又は好ましくはポロキサマー(Poloxamer)188(Lutrol(登録商標)又はPluronic(登録商標)F68)等の界面活性剤をさらに含むことができる。本発明の実施態様によれば、調製物は界面活性剤を含まない。
【0029】
ある実施態様によれば、本発明の調製物は、さらに防腐剤を含んでなる。防腐剤として、ベンジルアルコールと塩化ベンザルコニウムとを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、調製物は、ベンジルアルコールを、0.1%〜0.5%、例えば、0.2%、0.3%又は0.4%、塩化ベンザルコニウムを、0.0007%〜0.0015%、例えば、0.0008%、0.0009%、0.001%、0.0011%又は0.0012%含むことができる。非常に好ましい実施態様によれば、当該調製物は、ベンジルアルコール0.3%と塩化ベンザルコニウム0.001%とを組み合わせて含んでなる。本発明の調製物は、治療用活性化合物、すなわち、活性成分として、TACI−免疫グロブリン(TACI−Ig)融合タンパク質を含んでなる。当該TACI−Ig融合タンパク質は、(a)BLyS及び/又はAPRILに結合するTACI細胞外ドメイン又はそれらのもしくは変種;及び、(b)ヒト免疫グロブリン−定常ドメイン:を含んでなるか、又はこれらからなる。当業者は、本発明にしたがって調製されるTACI−Ig融合タンパク質は、抗−TACI抗体ではないと解する。抗−TACI抗体は、BLyS及び/又はAPRILに結合するTACI細胞外ドメイン、又はその変種もしくは断片を含まず、TACI細胞外ドメイン由来のエピトープを指向しない。
【0030】
本発明のフレーム内で、用語「TACI細胞外ドメイン」はまた、TACI細胞外ドメイン(配列番号1)と少なくとも80%又は85%、好ましくは少なくとも90%又は95%又は99%同一である、その任意の変種のことを言う。用語「TACI細胞外ドメイン」は、50個を超えない又は40個又は30個又は20個又は10個又は5個又は3個又は2個又は1個の保存的アミノ酸置換を含む変種も含む。任意のそのような変種は、BLyS及び/又はAPRIL及び/又は任意のBLyS−APRILヘテロ三量体に結合することができる。好ましくは、このような変種も、BLyS及び/又はAPRIL及び/又は任意のBLyS−APRILヘテロ三量体の生物活性を阻害する。BLyS又はAPRILの生物活性は、例えばB細胞増殖である。
【0031】
加えてTACI細胞外ドメインの断片(活性断片)及び変種は、該断片がBLyS及び/又はAPRIL及び/又はBLyS−APRILヘテロ三量体に結合することができる限りは、本発明の状況において使用することができる。好ましくはこのような断片は、BLyS及び/又はAPRIL及び/又はBLyS−APRILヘテロ三量体の生物活性も阻害もしくは低下する。
【0032】
任意のTACI細胞外ドメイン、TACI−Ig融合タンパク質、又はそれらの任意の変種もしくは断片のBLyS及び/又はAPRIL及び/又はBLyS/APRILヘテロ三量体に結合する能力は、例えば下記実施例2に従い、評価することができる。BLyS、APRIL又はBLyS/APRILヘテロ三量体の生物活性を阻害又は低下する能力は、例えば下記実施例3に従い、評価することができる。
【0033】
本発明において、TACI細胞外ドメインのそのような断片もしくは変種又はTACI−Ig融合タンパク質は、アタシセプト、すなわち配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質の活性を有意に低下する生物活性を有さないことは好ましい。
【0034】
本明細書において使用される用語「免疫グロブリン(Ig)−定常ドメイン」は、「Fcドメイン」とも称され、ヒト又は動物の免疫グロブリン(Ig)に由来し、好ましくはIgGである。このIgGは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4であってよい。このFcドメインは、好ましくはヒンジ領域と一緒に、IgG1の少なくともCH2、CH3ドメインを含むことが好ましい。
【0035】
好ましくは、Ig定常ドメインは、ヒトIgG1ドメインである。
ある実施態様によれば、ヒトIgG1定常ドメインは、補体依存性細胞傷害性(CDC)及び/又は抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を低下するように、修飾されている。
【0036】
ADCCにおいて、抗体のFcドメインは、ナチュラルキラー細胞及びマクロファージなどの、免疫エフェクター細胞の表面上のFc受容体(FcγR)に結合し、標的化された細胞のファゴサイトーシス又は溶解につながる。CDCにおいて、これらの抗体は、細胞表面で補体カスケードの引き金を引くことにより、標的化された細胞を死滅する。IgGの活性FcγR(FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa及びFcγRIIIb)並びに阻害FcγR(FcγRIIb)又は補体第一成分(C1q)への結合は、ヒンジ領域及びCH2ドメインに位置した残基によって決まる。CH2ドメインの二つの領域は、FcγR及び補体C1q結合にとって重要であり、かつIgG2及びIgG4で独自の配列を有する。例えば、IgG2残基の233−236位でのヒトIgG1への置換は、ADCC及びCDCを大きく低下する(Armourら、1999、及びShieldsら、2001)。EUインデックス位置(Kabatら、1991)に従い、下記Fc変異を、例えばIgG1由来のFcへ導入することができる:
T250Q/M428L
M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F
E233P/L234V/L235A/ΔG236+A327G/A330S/P331S
E333A;K322A。
【0037】
更にFc変異は、例えば330、331、234、又は235、又はそれらの組合せから選択されたEUインデックス位置における置換であってよい。CH2ドメイン内のEUインデックス位置297でのアミノ酸置換も、本発明の状況においてFcドメインに導入され、N−結合型糖結合の可能性のある部位を排除する。EUインデックス位置220のシステイン残基もセリン残基と置換され、通常免疫グロブリン軽鎖定常領域とジスルフィド結合を形成するシステイン残基を排除する。
【0038】
本発明に従い使用されるTACI−Ig融合タンパク質に適した特定のFcドメインは、調製されている。
具体的には、修飾されたヒトIgG1 Fcの6種の形が、Fc融合タンパク質の作出のために作製され、かつFc−488、更にはFc4、Fc5、Fc6、Fc7、及びFc8と命名されている。Fc−488(配列番号4のDNA配列及び配列番号5のアミノ酸配列を有する)は、ヒトγ1 Fc領域を含む融合タンパク質の通常のクローニングのためにデザインされ、並びにこれは鋳型として野生型ヒト免疫グロブリンγ1定常領域を用いて構築された。対合していないシステイン残基に起因した可能性のある有害作用に関する懸念により、通常免疫グロブリン軽鎖定常領域とジスルフィド結合するシステインをセリン残基と置換するという決定がなされた。追加の変化は、EUインデックス位置218をコードしているコドンへの、その後のDNA操作が容易になるようにBgIII制限酵素認識部位の導入であった。これらの変化は、PCRプライマーでコードされたPCR産物に導入された。BgIII部位の位置により、及びFcヒンジ領域を完全にするために、EUインデックス位置216及び217のコドンは、この融合タンパク質パートナー配列に取り込まれた。
【0039】
Fc4、Fc5、及びFc6は、FcγRI結合及び補体C1q結合を低下することにより、Fcにより媒介されたエフェクター機能を低下させる変異を含む。Fc4は、Fc−488に導入されたものと同じアミノ酸置換を含む。追加のアミノ酸置換は、可能性のあるFc媒介したエフェクター機能を低下するために導入された。具体的には、FcγRI結合を低下するために、3つのアミノ酸置換が導入された。これらは、EUインデックス位置234、235、及び237での置換である。これらの位置での置換は、FcγRIへの結合を低下することが示されている(Duncanら、1988)。これらのアミノ酸置換は、FcγRIIa結合に加え、FcγRIII結合も低下させることができる(Sondermannら、2000;Winesら、2000)。
【0040】
いくつかの基が、補体C1q結合及びそれに続く補体固定におけるEUインデックス位置330及び331に関して説明されている(Canfield及びMorrison、1991;Taoら、1993)。これらの位置でのアミノ酸置換は、補体固定を低下するために、Fc4において導入された。Fc4のCH3ドメインは、クローニングされたDNAが大腸菌のdamプラス株において増殖される場合に可能性のあるdamメチル化部位を排除するために、TGAからTAAへ変更された、停止コドンを除いて、対応する野生型ポリペプチドにおいて認められるものと同一である。
【0041】
Fc5において、BgIIIクローニングスキームは、この特定のFcを含む融合タンパク質において使用されないので、EUインデックス位置218のアルギニン残基は、リシンに戻し変異される。Fc5配列の残りは、Fc4に関する先の説明と一致する。
【0042】
Fc6は、そのカルボキシル末端リジンコドンが排除されること以外は、Fc5と同じである。成熟免疫グロブリンのC−末端リシンは、B細胞から分泌される前に、翻訳後に成熟免疫グロブリンから除去されるか、又は血清循環時に除去されることが多い。結果的にこのC−末端リシン残基は、典型的には、一般的な抗体中には認められない。先のFc4及びFc5のように、Fc6配列の停止コドンは、TAAに変更される。
【0043】
Fc7は、CH2ドメインに配置されたEUインデックス位置297でのアミノ酸置換以外は、野生型γ1Fcと同じである。EUインデックス位置Asn−297は、N−結合型糖結合の位置である。N−結合型糖は、その糖構造のバッチ毎の変動の可能性のために、組換えにより発現されたタンパク質に可能性のある変動性の源を導入する。この可能性のある変動性を排除する試みにおいて、Asn−297は、グルタミン残基に変異され、その残基位置でのN−結合型糖の結合を防止する。残基297の糖は、FcRIIIへのFc結合にも関与している(Sondermannら、Nature 406:267 (2000))。従ってこの糖の除去は、概して組換えFc7を含有する融合タンパク質の、FcγRへの結合を減少するはずである。前述のように、Fc7配列中の停止コドンは、TAAに変異された。
【0044】
Fc8は、EUインデックス位置220のシステイン残基が、セリン残基と交換されていること以外は、配列番号4に示された野生型免疫グロブリンγ1領域と同じである。この変異は、通常免疫グロブリン軽鎖定常領域とジスルフィド結合するシステイン残基を除去する。
TACI−Ig融合タンパク質の形成のためのこれらの特定されたFcドメインのいずれかの使用は、本発明の範囲内である。
【0045】
TACI−Igの免疫グロブリン定常ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチド、又はTACI−Ig融合タンパク質の全般的生物活性に影響がなく、及びTACI−Igタンパク質の免疫原性が、アタシセプト(配列番号3)のそれよりも有意に高くない限りは、配列番号2のIg定常ドメインと少なくとも80%もしくは85%、好ましくは少なくとも90%もしくは95%もしくは99%同一であるそれらの変種、又は50個未満、もしくは40個もしくは30個もしくは20個もしくは10個もしくは5個もしくは3個もしくは2個の保存的アミノ酸置換を含む変種を有するポリペプチドを含んでなるか、又はこれらからなることが好ましい。
【0046】
本発明の状況において、用語「同一性」は、これらの配列を比較することにより決定された、2つ以上のポリペプチド配列の間の関係を反映している。概して、同一性は、比較される配列の長さにわたり、2つのポリペプチド配列のそれぞれの正確なアミノ酸毎の対応をいう。
【0047】
正確な対応のない配列に関して、「同一性%」を決定することができる。一般に比較される2つの配列は、これらの配列間の最大相関をもたらすように、並置される。これは、いずれか一方又は両方の配列へ「ギャップ」を挿入し、並置度を増大することを含むことができる。同一性%は、同じ又は非常に似た長さの配列について特に適しているように、比較される各配列の長さ全体にわたり決定されてよいか(いわゆるグローバルアラインメント)、又は等しくない長さの配列についてより適しているように、より短い規定された長さの配列について決定されてよい(いわゆるローカルアラインメント)。
【0048】
二つ以上の配列の同一性の比較法は、当該技術分野において周知である。従って例えば、Wisconsin Sequence Analysis Package、9.1版において利用可能なプログラム(Devereux Jら、1984)、例としてプログラムBESTFIT及びGAPは、二つのポリヌクレオチド間の同一性%及び二つのポリペプチド配列間の同一性%を決定するために使用することができる。BESTFITは、Smith及びWaterman(1981)の「ローカルホモロジー」アルゴリズムを利用し、二つの配列間の類似性の最良の単独領域を発見する。配列の同一性を決定するその他のプログラムも、当該技術分野において公知であり、例えばBLASTプログラムファミリー(Altschul S Fら、1990、Altschul S Fら、1997、NCBIのホームページ(www.ncbi.nlm.nih.gov)でアクセス可能)、及びFASTA(Pearson W R、1990)などがある。
【0049】
本発明による好ましいアミノ酸置換は、「保存的」置換として公知のものである。TACIの細胞外ドメイン又はTACI−Ig融合タンパク質の免疫グロブリン定常ドメイン部分の保存的アミノ酸置換は、群内のメンバーの置換がその分子の生物学的機能を保存するような、十分に類似した物理化学特性を有するような、群内の同義アミノ酸を含む(Grantham、1974)。先に規定された配列において、特に挿入又は欠失が、数個のアミノ酸、例えば50個以下又は30個以下、20個以下、もしくは好ましくは10個以下もしくは5個以下のアミノ酸残基にのみ関与し、例えばシステイン残基などの、機能的高次構造に重要であるアミノ酸を除去もしくは移動しない場合に、それらの機能を変更することなく、アミノ酸の挿入及び欠失も行われ得ることは明らかである。そのような欠失及び/又は挿入により生成されたタンパク質及び変種は、その生物活性が、アタシセプト(配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質)の生物活性よりも有意に低くない限りは、再発性MSの治療に使用することができる。
【0050】
WO 00/40716及びWO 02/094852として公開された国際特許出願は、TACIの細胞外ドメインに加え、そのリガンドBLyS及びAPRILと相互作用するTACI細胞外ドメインの特異断片の配列を開示している。
WO 00/40716等に開示されたように、TACI細胞外ドメインは、TACI受容体が属する腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーの一員にとって特徴的である、2個のシステイン(Cys)−リッチな反復配列を含む。WO 00/40716において、2番目の保存性の低いCys−リッチ反復配列のみを含む、BR42x2と称されるTACIのスプライシング変種は、BLySに結合することができることも確立されている。従って本発明のフレームにおいて、本TACI細胞外ドメイン断片は、好ましくは、2番目のCys−リッチ反復配列に相当する配列番号1のアミノ酸残基71から104を少なくとも含んでなるか、又はこれらからなる。本TACI−Ig融合タンパク質は、1番目のCys−リッチ反復配列に相当する配列番号1のアミノ酸残基34から66を更に含んでなることは更に好ましい。
【0051】
更なる本発明の実施態様において、BLyS及び/又はAPRIL活性に結合しかつ阻害する該TACI細胞外ドメイン断片は、配列番号1のアミノ酸残基30から110を含んでなるか、又はこれらからなる。
【0052】
より更なる本発明の実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、配列番号3の配列を有するポリペプチド、又はそれらと少なくとも90%もしくは95%もしくは98%もしくは99%同一であるか、又は30個未満もしくは20個もしくは15個もしくは10個もしくは5個もしくは3個もしくは2個の保存的アミノ酸置換を有するそれらの変種であって、BLyS及び/又はAPRILに結合する変種を含んでなるか、又はこれらからなる。
【0053】
より更なる本発明の実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、配列番号8の配列を有するポリペプチド、又はそれらと少なくとも90%もしくは95%もしくは98%もしくは99%同一であるか、又は30個未満もしくは20個もしくは15個もしくは10個もしくは5個もしくは3個もしくは2個の保存的アミノ酸置換を有するそれらの変種であって、BLyS及び/又はAPRILに結合する変種を含んでなるか、又はこれらからなる。
【0054】
より更なる本発明の実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、配列番号10の配列を有するポリペプチド、又はそれらと少なくとも90%もしくは95%もしくは98%もしくは99%同一であるか、又は30個未満もしくは20個もしくは15個もしくは10個もしくは5個もしくは3個もしくは2個の保存的アミノ酸置換を有するそれらの変種であって、BLyS及び/又はAPRILに結合する変種を含んでなるか、又はこれらからなる。
【0055】
より更なる本発明の実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、配列番号12の配列を有するポリペプチド、又はそれらと少なくとも90%もしくは95%もしくは98%もしくは99%同一であるか、又は30個未満もしくは20個もしくは15個もしくは10個もしくは5個もしくは3個もしくは2個の保存的アミノ酸置換を有するそれらの変種であって、BLyS及び/又はAPRILに結合する変種を含んでなるか、又はこれらからなる。
【0056】
より更なる本発明の実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、配列番号14の配列を有するポリペプチド、又はそれらと少なくとも90%もしくは95%もしくは98%もしくは99%同一であるか、又は30個未満もしくは20個もしくは15個もしくは10個もしくは5個もしくは3個もしくは2個の保存的アミノ酸置換を有するそれらの変種であって、BLyS及び/又はAPRILに結合する変種を含んでなるか、又はこれらからなる。
【0057】
本発明の別の実施態様によれば、調製物は、TACI−Ig融合タンパク質を、20 mg/mL〜180 mg/mLの濃度範囲で、例えば、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175 mg/mLの濃度で含む。
【0058】
本発明のさらなる実施態様によれば、調製物は液状(例えば、水溶液)である。
【0059】
よりさらなる実施態様によれば、本発明の調製物は、反復投与のためのものである。反復投与においては、防腐剤を含むことが好ましい。上記の通り、好ましい実施態様によれば、調製物はベンジルアルコール(例えば0.3%で)、及び塩化ベンザルコニウム(例えば0.001%で)を含んでなる。
【0060】
TACI−Ig融合タンパク質調製物は、毎日又は1日おきに、好ましくは1週間に2回又は1回投与してもよい。好ましくは、TACI−Igの投与は、1週間に1回のボーラス投与である。あるいは、調製物は、1週間おきか、1月に1回投与することもできる。
【0061】
本発明の調製物は、静脈内、皮下、又は筋肉内等の経路のためとすることができる。本発明の実施態様によれば、調製物は皮下投与のためのものである。
【0062】
本発明の調製物は、疾患の治療、好ましくはヒト疾患の治療を意図するものである。したがって、ある実施態様によれば、本発明の調製物は、医薬組成物として提示される。TACI−Ig融合タンパク質を含んでなる調製物又は医薬組成物は、好ましくは、自己免疫疾患又はリンパ増殖性障害の治療、又は治療のための医薬の製造に適する。
【0063】
本発明において、自己免疫疾患には、限定するものではないが、例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、リウマチ性関節炎、多発性硬化症又は視神経炎がある。
【0064】
リンパ増殖性障害は、リンパ系の細胞が過剰に増殖する疾患である。B細胞悪性腫瘍は、例えば、リンパ増殖性障害である。B細胞悪性腫瘍には、限定するものではないが、白血病及びリンパ腫、例えば急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄芽球白血病、前骨隋球白血病、骨髄単核白血病、単核赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性(顆粒球)白血病、慢性リンパ性白血病、真性赤血球増加症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、及びヴァンデルストレーム・マクログロブリン血症がある。
【0065】
本発明は、好ましくは溶液(例えば水溶液)中で、(a)〜(c)の成分を調製する(例えば混合することにより)ステップを含んでなる、本発明による調製物の製造又は調製方法にも関する。
【0066】
本発明は、所定量の調製物を滅菌容器に入れるステップを含んでなる、本発明の調製物の製造又は調製方法にも関する。所定量は、0.5〜5 mL、好ましくは1〜2 mLとすることができる。
【0067】
本発明の実施態様によれば、容器は、ガラスバイアル又は予備充填型シリンジから選択される。ガラスバイアルは、例えば未被覆ストッパー又は被覆ストッパーを用いて閉鎖することができる。当該ストッパーは、例えばゴム製ストッパー、又はブロモブチル・ストッパーとすることができる。予備充填型シリンジ等のシリンジは、ゴム製プランジャー又は被覆プランジャーで栓をすることができる。当該被覆は、例えばシリコン油未含有被覆があり得る。
【0068】
予備充填型シリンジは、0.5、1、1.5又は2 mL等の異なる容量であってよい。好ましくは、1mLシリンジである。シリンジの充填容量は、好ましくは1又は1.2 mLである。予備充填型シリンジは、プラスチック製、又は好ましくはガラスシリンジとすることができる。好ましいガラスシリンジは、例えば、1mL ハイパック(Hypac)ガラスシリンジ27G1/2 RNG W 7974/50G(Becton Dickinson製)である。充填型シリンジは、好ましくは被覆ストッパー(例えばBecton Dickinson、FluroTec製)及び未被覆プランジャー(例えば、W4023/50G、West Pharmaceutical製)で栓をすることができる。本発明によれば、充填型シリンジは、好ましくはTACI−Ig融合タンパク質の量を、薬物量で20〜160 mgの範囲、例えば、20、25、50、75、100、125又は150 mgとして含む。以下の実施例4に示すように、pH5.0の、酢酸ナトリウム緩衝剤及びトレハロースを含んでなるTACI−Ig融合タンパク質の調製物は、5又は25℃を維持した場合、長期間にわたって、例えば18ヶ月まで安定であった。
【0069】
本出願において特定された様々な範囲の数値の使用は、特に明確に記さない限りは、記載された範囲内の最小値及び最大値は両方とも語句「約」に優先するように、近似値として記載される。この様式で、記載された範囲を上回る及び下回るわずかな変動を使用し、該範囲内の数値と実質的に同じ結果を実現することができる。同じく明らかにされた範囲は、言及された最小値と最大値の間の全ての値に加え、それらにより形成可能である任意の範囲を含む、連続した範囲であることが意図されている。
【0070】
本発明に関して、本発明の調製物又は医薬組成物は、TACI−Ig融合タンパク質に加え、さらなる活性成分との組み合わせを含むことができ、当該組み合わせで投与できる。例えば、コルチコステロイド、特にメチルプレドニゾロンを存在させてもよい。さらに、インターフェロン−β、クラドリビン、ミトキサントロン、酢酸グラチラマー、ナタリズマブ、リツキシマブ、テリフルノミド、フィンゴリモド、ラキニモド、又はBG−12(経口フマル酸塩)による治療などと組合せることができる。この組合せ治療は、同時、個別又は逐次であることができる。
【0071】
ここで本発明を完全に説明する上で、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、かつ過度の実験を行うことなく、広範な同等のパラメータ、濃度及び条件で、同じ事を実行することができることは、当業者には明らかであろう。
【0072】
本発明は、それらの具体的実施態様に結びつけて説明されているが、更なる修飾が可能であることは理解されるであろう。本出願は、概して本発明の原理に従い、かつ本発明が属する技術分野において公知の又は慣習的実践となるような、並びに添付された「特許請求の範囲」に従い先に示された本質的特徴に適用されるような、本発明の開示からのそのような逸脱を含む、本発明のあらゆる変化、使用又は適応を対象とすることが意図されている。
【0073】
雑誌論文又は要約、公開又は非公開の米国もしくは外国の特許出願、発行された米国もしくは外国の特許又は任意の他の参考文献を含む、本明細書に引用された参考文献は全て、引用された参考文献内に示されたデータ、表、図面及び本文を含む全体が参照により本明細書中に組み込まれている。加えて、本明細書に引用された参考文献内に引用された参考文献の全内容も、全面的に参照により組込まれている。
【0074】
公知の方法の段階、通常の方法の段階、公知の方法又は通常の方法の言及は、いかなる意味においても、本発明のいずれかの態様、説明又は実施態様が、関連技術分野において明らかにされ、教示され又は示唆されることの承認ではない。
【0075】
先の具体的実施態様の説明は、他者が、過度の実験をすることなく、本発明の全般的概念から逸脱することなく、そのような具体的実施態様の様々な適用に関して、当業者の知識(本明細書に引用された参考文献の内容を含む)の適用により、容易に修飾及び/又は適合することができる、本発明の全般的性質を完全に明らかにするであろう。従って、そのような適応及び修飾は、本明細書に示された教示及び指針を基に、明らかにされた実施態様の一連の同等物の範囲内であることが意図されている。ここでの表現及び用語は、説明を目的とし、限定を目的とせず、その結果本明細書の用語又は表現は、当業者の知識と組合せて、ここで示された教示及び指針を鑑み当業者により理解されるべきであることも理解されるべきである。
【0076】
ここで本発明を説明する上で本発明は、例証として提供され、本発明の限定を意図するものではない、以下の例証的臨床試験の概略の実施例を参照しより容易に理解されるであろう。
【0077】
実施例1:液体調製物の開発
用語集
AUC:分析超遠心
CD:円偏光二色性
DLS:動的光散乱
DSC:示差走査熱量計
IEC:イオン交換クロマトグラフィ
MALDI−ToF:マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析計
OD:光学密度
RALS:直角光散乱
RP:逆相
SEC:サイズ排除クロマトグラフィ
【0078】
原料
−pH6のリン酸緩衝液+140 mM NaCl中のTACI−Fc薬物物質
−pH5のリン酸緩衝液中のTACI−Fc薬物物質
−pHの酢酸緩衝液中のTACI−Fc薬物物質
−オルトリン酸(1.00563、Merck)
−コハク酸(1.00682、Merck)
−クエン酸(1.59134、Merck)
−ヒスチジン(1.04351 、Merck)
−氷酢酸100%(1.00063、Merck);
−D−マンニトールDAB、Ph Eur、BP、USP、FCC、E421(1.05980、Merck)
−D−ソルビトール(S-1876、Sigma)
−スクロースDAB、Ph Eur、BP、NF (1.07653、Merck)
−トレハロース(1.08216、Merck)
−D−グルコース1水和物(346971 、Carlo Erba)
−水酸化ナトリウムペレットGR(1.06498、Merck)
−合成用Tween208.22184、Merck);
−ポロキサマー188(Lutrol F 68 DAC、USP/NF、Basf)
−塩化カルシウム2水和物(1.02382、Merck)
−塩化マグネシウム(1.05833、Merck)
−塩化ナトリウム(1.06404、Merck)
−アルギニン塩酸塩(A-5131 、Sigma);
−リジン塩酸塩(1.0571 、Merck)
−グリシン(5.00190、Merck);
−アセトニトリル(00030、Merck)
−10×PBS(P/N 70013-032、Gibco)
−トリフルオロ酢酸(9470、Baker)
−硫酸アンモニウム(1.01217、Merck)
−1N 水酸化ナトリウム(1.09137、Merck)
−1N 塩酸(1.09057、Merck)
−HPLC級水(MiIIiQ)
−注射用水
−無水硫酸ナトリウム(code 6649、Merck)
−メタノール(code 06009、Merck)
−アジ化ナトリウム(code 6688、Merck)
−リン酸二水素ナトリウム1水和物(code 06346、Merck)
−リン酸水素二ナトリウム2水和物(code 06580、Merck)
【0079】
バイオアッセイ用
−Jurkat pKZ142 clone.24細胞(WCB)
−TACI-Fc5(1-8.66 mg/mL)
−zTNF4(1.44 mg/mL)
−RPMI 1640フェノールレッド含有及び未含有(Gibco)
−ウシ胎児血清(FBS)(GIBCO)
−L−グルタミン(Hyclone)
−ピルビン酸ナトリウム(Gibco)プロマイシン(Sigma)
−固定GLOルシフェラーゼアッセイ緩衝液及び基質(ProMega. E2510) White tissue culture 96 well plates with lids (Dynex)
−カバー付96ウェルプレート(Falcon)
−5 mlポリプロピレン管(Falcon)
【0080】
装置
−HPLCシステム(Waters)
−校正ピペット(Gilson)
−示差走査熱量計(mod. 2920、TA Instruments)
−マイクロ熱量計(mod. VP-DSC、MicroCal)
−pHメーター(mod. 713、Metrohm)
−浸透圧計(Osmomat 030-D、Gonotec)
−分光旋光計J−810、温度のペルチェ制御装置PTC-423S付き(Jasco)
−蛍光分光計FluoroMax3、マイクロプレートリーダーMicroMax384付き(Jobin Yvon)
−96ウェルMaxSorpプレート(Nunc)
−分光光度計lambda 354(Perkin-Elmer)
−水晶キュベット 0.1及び1 cm路程(Perkin Elmer)
−ゼータサイザー・ナノシリーズ(Zetasizer Nano Series)(Malvern)
−低量用(Reduced volume)(〜70μL)水晶キュベット
−細胞核酸システム(Stirred Cell system)(mod. 8400 or 8450、Amicon)
−10 kDa カットオフ膜(type YM10、Amicon)
ステンレス鋼ホルダー22 mL及び220 mL容量(Sartorius)
−フィルター膜 0.22 μm(Durapore type GWVP、Millipore)
−フィルター膜 0.45 μm(Durapore type HVLP、Millipore)
−蛍光/RALS分光計(Photon Technology International)
−IKA-Vibrax-VXR shaker (IKA-Works、Inc.)
−凍結乾燥機(Lyoflex 06、Lyoflex 08、Edwards)
−ボルテックス(FaIc)
−恒温キャビネット(Heraeus)
−冷凍庫(Angelantoni)
【0081】
バイオアッセイ用
−照度計プレートリーダー、Lumicount Packard
−グラフ・パッド・プリズム・ソフトウェア
−薄板フローフード(Laminar Flow Hood)(Flow Laboratories)
−37℃及びCO2インキュベーター(Heraeus)
−37℃の水浴
−細胞計数器
−顕微鏡
−振とう盤(Shaking Platform)
−卓上遠心器
−校正シングル−及びマルチ−チャネルピペット及びピペットチップ
−ピペットエイド
【0082】
−DIN2R (3 mL)ガラスバイアル(Nuova OMPI)
−Flurotec ゴム製ストッパー(S2F452、D777-1、B2-40、West Pharmaceutical)
−ゴム製ストッパー(1779 W1816 grey、Pharmagummi)
【0083】
方法
サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)
方法1
サンプルをPBS1×pH=7.2で0.5 mg/mLまで希釈し、40μL(20μg)を、TSKゲルG3000SWXL、5μm、7.8×300 mmにロードした。全てのランについて、溶離液は、0.05 Mリン酸ナトリウム、0.5 M硫酸アンモニウム、pH=6.0とした。
【0084】
方法2
サンプルを移動相で0.25 mg/mLまで希釈し、40μL(20μg)を、TSKゲルSAXLガードカラム6 mm×4 cmを連結した、TSKゲルG3000SWXL、5μm、7.8×300 mmにロードした。全てのランについて、溶離液は、0.05 Mリン酸ナトリウム、0.5 M硫酸アンモニウム、pH=6.0とした。
【0085】
逆相クロマトグラフィ(RP)
サンプルをPBS1×pH=7.2で0.5 mg/mLまで希釈し、40μL(20μg)を、71%の緩衝液A(0.1%TFA添加水)、及び29%緩衝液B(0.1%TFA添加アセトニトリル)で平衡化した、PLRP 4000 Aカラム、 8 μm, 50×4.6 mmにロードした。サンプルを、流速2 mL/分の直線グラジエントを用いて溶出した。異なる量の標準(IRS TACI-Fc5 2002/2001)を注入することにより、キャリブレーション曲線を作成した。
【0086】
C末端開裂(RP)
サンプルを、37℃2時間、酵素的分解(Lys−C)に供し、ガードカラム付のVydac C18 (4.6×50 mm)カラムで逆相クロマトグラフィを行った。
溶離液A:0.1%TFA添加水
B:0.08%TFA添加CH3CN70%
流速:1mL/分
T.:40±5℃
検出:214nm
溶出グラジエント:7分間でBが15%〜23%、全部で15分。
【0087】
短縮形態(RP)
TACI−Fc薬物製品サンプルを、タンパク質濃度が4 mg/mLとなるよう、精製水で希釈した。その後、10μLの希釈サンプルを、200μLの変性還元溶液中(グアニジン 6 M中、0.15 MDTT)で希釈し、ボルテックスし、最後に60℃±2℃で90分インキュベートする。開始条件(71%溶離液A、0.05%トリフルオロ酢酸添加水、及び29%溶離液B、0.04%トリフルオロ酢酸添加アセトニトリル)で事前に平衡化したカラム(広孔ブチル、5mm、4.6 mm i.d.×50 mm、cod. 71 16-05、J. T. Baker製)に、75〜150μL(15〜30μg)を注入する。
【0088】
遊離Fc二量体(IEC)
TACI−Fc薬物製品サンプルを、タンパク質濃度10 mg/mLとするために、10 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH4.0中の、100 mg/mLのポロキサマー188溶液中で希釈した。TACI−Fc濃度が100 mg/mLより高い場合、計量によりサンプルの希釈を行うべきである。
【0089】
開始条件(80%溶離液A、10 mMリン酸ナトリウムpH4.0、及び20%溶離液B、10 mMリン酸ナトリウムpH4.0+0.5 MKCl)で事前に平衡化したカラム(ProPac WCX-10G (ガード)、4×50 mm、cod. 054994、Dionex製)に、25μL(250μg)を注入する。
【0090】
酸化状態(MALDI−ToF)
TACI−Fc薬物サンプルのペプチドマッピングを行い、酸化状態の定量についての、MALDI−ToF検出の利用可能性を確認した。
【0091】
分析超遠心
12mmの光路長を有する2チャンネル・チャコール−エポン・センターピースを用いて、細胞にサンプルをロードした。HPLC試験の条件を模倣するように、サンプルを、希釈剤としてSE−HPLC溶離緩衝液を用いて希釈した。対応する緩衝液を、参照チャネルにロードした(当該装置は、デュアルビーム分光光度計のように機能する)。その後、ロードした細胞を、Beckman Optima XL-I分析超遠心のAN-50Ti分析用ローターに入れた。以下の試験設定に従って、この分析を行った。
ローター種類:8穴ローター
ローター速度:40K rpm
センターピース:チャコール−エポン
チャネル長:12 mm
AUCランの間の温度:20℃±0.2℃
検出波長:280 nm
サンプル濃度:0.5 mg/mL
サンプル容量:432 mL/チャネル
参照容量:442 mL/チャネル。
【0092】
データは、N.I.H.でPeter Schuckにより開発されたc(s)の方法を用いて分析され、彼の分析プログラムSEDFIT(第8.7版)で実行された。
【0093】
示差走査熱量計(DSC)
TA Instrument製のDSC 2920 CE:T範囲=25〜100℃;加熱速度=2℃/分;高容量パン(HVP)に75μLの溶液を充填した;マイクロ熱量計、MicroCal VP-DSC:T範囲=25〜100℃;加熱速度=70℃/時間;応答=15秒;データピッチ=0.2〜8℃;サンプル細胞に、約600 mLの5 mg/mLのTaci−Fc5溶液を充填した;参照溶液として水を使用した。
【0094】
光学密度(OD)
0.5 mg/mLのTACI−Fc溶液を調製し(水での希釈により)、その濃度(c)を、ランベルト・ベールの等式により得た:OD=εbc(ε=モル吸光係数;b=光学細胞厚み)、ε(280 nm)=1.56(mL/mg)。出発溶液の濃度を、希釈係数により計算されたこれらの値を乗じることにより決定した。
【0095】
円偏光二色性(CD)
コンフォメーション解析
CDは、一般的にペプチド及びタンパク質のコンフォメーションを研究するために使用される。遠紫外線(180〜250 nm)、及び近紫外線領域(250〜350 nm)の両方において、複数の因子が、CDスペクトルにおける特徴的ピークの出現に影響を及ぼす可能性があり、例えば、タンパク質濃度、温度、pH及びイオン強度がある。遠紫外線で観察される一般的なバンド位置は文献で報告されており、特定の二次構造の種類を表す(α−ヘリックス、β−シート、ランダムコイル)。近紫外線領域で観察されるCDバンドは、主に、Trp、Tyr、Phe及びジスルフィド結合によるものである。
【0096】
しかしながら、ジスルフィド結合からのシグナルは、一般的に芳香族アミノ酸のものより非常に弱いことを指摘しなければならない。これらの残基が非対称環境にある限り、CDシグナルが提供され得る。タンパク質の3次構造におけるコンフォメーション変化は、通常出発環境の変動をもたらすため、CDスペクトルを変化させる。実際、天然のタンパク質においては、個々のアミノ酸が3次元構造内で独自の位置を占める。この構造における変更は、その近接性に変化をもたらすことができるはずである。
【0097】
近紫外線CDスペクトルの設定
スキャン速度=5〜20 nm/分;範囲=250〜350 nm;応答=8秒;濃度=2 mg/mL;路程=1cm;データピッチ=0.5 nm;バンド幅=1nm;積算=2。標準的感度。スペクトルは室温で得た。
【0098】
遠紫外線CDスペクトルの設定
スキャン速度=5〜20 nm/分;範囲=200〜300 nm;応答=8秒;濃度=0.25 mg/mL;路程=0.1cm;データピッチ=0.5 nm;バンド幅=1nm;積算=2。標準的感度。スペクトルは室温で得た。
【0099】
アンフォールディング温度
固定波長でのCDにより観測される温度スキャンは、異なる温度での、タンパク質の2次及び3次構造の両方を調べる価値ある手法である。当該測定により、異なる形態における、タンパク質のアンフォールディング温度(Tunf)を評価することが可能となる。Tunfは、タンパク質のアンフォールディングの自由エネルギー(タンパク質の安定性の指標である)と直接的な関係を有するわけではないが、Tunfの任意の増加は、タンパク質安定性の増加に比例するはずであることが、広く認められている。したがって、Tmの変化は、特定の組成物が任意の安定化又は不安定化効果を有するかを示唆する。熱的変性は、温度と共にタンパク質コンフォメーション変化に関連するTrp(トリプトファン)のシグナル変動を観測することにより調べた。当該薬物物質調製物を、55〜70℃の範囲で、加熱した(1℃/分)。3次構造に対する温度の効果を、292.5 nmでの最小に対するCD楕円率の変化により検出した。遷移温度を計算するために、第四級多項式フィッティングを使用した。
【0100】
CD温度スキャン設定
T範囲=55〜70℃;加熱速度=1℃/分;λ=292.5 nm;濃度=2 mg/mL;応答=8秒;データピッチ=0.2〜8℃;バンド幅=1.5 nm。標準的感度。攪拌速度=低い。
【0101】
動的光散乱(DLS)
動的光散乱は、粒子のブラウン運動により誘導される散乱を測定し、それを粒子サイズと関連付ける。これは、粒子をレーザービームにさらし、散乱光の強度ゆらぎを解析することが必要となる。より正確には、ブラウン運動により動く粒子のスピードを、粒子の大きさと関連付ける(ストークス−アインシュタイン等式)。デジタル式相関器が、2つのシグナル(この場合、強度シグナル)間の類似度を経時で測定し、それが、粒子の直径に関連する散乱強度ゆらぎの性質及び程度に関連する情報を与える。相関関数の決定後、それをサイズ分布の計算に用いることができる。
【0102】
ゼータサイザー・ナノシリーズは、180°付近(後方散乱)の散乱強度を測定する。当該立体配置は、サンプルを通る多重散乱の影響と、大きな夾雑物の影響を低減する。ディスポーザブル・サイズ測定キュベット(内部容量〜70μL)を使用した。測定は、T=25℃で行った。平衡化時間=1分;ラン回数=11;ラン間隔=10秒;測定回数=2。分散剤:水(粘度=0.8872 cP;屈折率=1.330)。希釈は行わなかった。
【0103】
蛍光を用いる直角光散乱(RALS)
RALSは、蛍光検出器を用いて測定され、ここで励起及び発光波長は同一に設定されている。この立体配置において、当該蛍光検出器は、非常に感度の高いRALS検出器となる。RALSの増加は、サンプルにおける凝集/沈殿の指標である。
【0104】
蛍光
内在蛍光
タンパク質は、内在蛍光に寄与する可能性のある3つの芳香族アミノ酸残基(トリプトファン:Trp;チロシン:Tyr;フェニルアラニン:Phe)を含有する。フォールディングしたタンパク質の蛍光は、個々の芳香族残基由来の蛍光の組み合わせである。タンパク質蛍光は、一般的に、280 nm以上の波長、通常は295 nmで励起される。ほとんどの発光は、トリプトファン残基の励起により、チロシン及びフェニルアラニンによる発光はわずかである。トリプトファン最大蛍光発光の強度、量子収量及び波長は、非常に溶媒依存性である。トリプトファン残基を取り巻く溶媒の極性の減少により、蛍光スペクトルが低波長側へのシフトし、蛍光強度が増加する。タンパク質の疎水性中心に埋め込まれているトリプトファン残基は、タンパク質表面のトリプトファンと比較して、10〜20 nmシフトする。さらにトリプトファン蛍光を、近傍のプロトン化された、Asp又はGlu等の酸性基により消光させることができる。すなわち、蛍光は、芳香族残基が存在する微小環境における変動を反映する、強力な観測用ツールとして使用することができる。
【0105】
MicroMax 384は、最大384ウェルを有するプレートを使用できる、FluoroMax蛍光分光計と接続することができる、マイクロウェルプレートリーダーである。励起及び発光の単色光分光器からの光は、MicroMax 384と行き来する光ファイバー束を介して運搬される。すなわち、使用者は、強度測定について、主要な蛍光分光計でスキャンしても、任意の励起及び発光波長の対を選択してもよい。MicroMax 384は、DataMaxソフトウェアを通して全て自動化制御されており;プレート上のマイクロウェルのカスタム選択は、ソフトウェアを介して行うことができる。
【0106】
ハイスループット蛍光スキャンは、MicroMax 384プレートリーダーを用い、以下の設定で行った。励起及び発光スリット=5 nm;λexc=280 nm;発光範囲=300〜450 nm;積算時間=0.1秒。希釈は行わなかった。最大発光波長は、Fluromax 3ソフトウェアにより自動的に計算された。
【0107】
RALS
RALSの測定は、FluoroMax蛍光分光計で、500〜800 nmの範囲で同期スキャン(λexc=λem)することによって行われる。これらの条件下(サンプルによる吸収はなく、光源による影響もない)、暴露強度は、主に溶液中に存在する散乱現象による(入射光/タンパク質)。総散乱強度は、タンパク質容量(dimension)の増加と共に増加するため、この補法は、凝集、サブユニット解離、分解等の事象の発生を観測するのに有用である。
【0108】
散乱強度は、タンパク質濃度及び屈折率にも影響するので、同じタンパク質濃度での比較測定を行う必要がある。
【0109】
RALS測定は、以下のパラメータ設定で行った:同期スキャン;波長範囲=500〜800 nm;スリット=15 nm;積算時間=0.5秒;補正=0 nm;サンプル濃度=35 mg/mL(milliQ水を希釈剤として使用した)。
【0110】
蛍光発光の異方性
微小分子の回転は、そのサイズ、形及び局所環境(すなわち溶媒)に依存する。極性化発光測定は、分子サイズの小変化(凝集、結合、開裂)及び環境変化(局所粘度、相転移等)を検出するためによく使用される。これらの測定における第一のステップは、フルオロフォアの選択群(光選択)の励起である。垂直極性化光は、典型的には、その吸収双極子が垂直方向に向く、分子群を励起するために使用する。この相において、垂直極性化励起光は、経路上での励起の際に、偏光子を用いて作製される。励起されると、当該分子は、励起状態の寿命の間(〜10-9秒)回転する可能性がある。当該化合物移転は、蛍光発光を脱分極することになる。当該分極化発光成分の測定により、分子の回転運動の種類及び程度の計算をすることができる。蛍光発光の分極化成分は、発光経路における偏光子を用いて測定する。垂直(V)及び水平(H)の発光成分の大きさから、回転挙動の程度及び種類を計算できる。異方性(A)は、総光強度で除した、直線分極化成分の強度の間の差異として定義される比率である。
【0111】
【数1】

【0112】
式中、
Gは、補正因子、G=IHV/IHHである。
【0113】
これらの等式において、強度Iの最初の下付文字は、励起偏光子の位置(H又はV)を示し、第二は、発光偏光子のもの(H又はV)を示す。蛍光異方性は、励起波長をλ=295 nmに設定する場合、Trp残基の運動性、及びそれらが受ける局所粘度に関する情報を提供する。すなわち、蛍光異方性の増加は、タンパク質におけるこれらの残基のより厳密な環境を反映することができる。
【0114】
異方性測定は、以下のパラメータを設定することにより行った:λexc=295 nm;発光範囲=330〜350 nm;積算時間=0.5秒;スリット=15 nm;サンプル濃度=35 mg/mL(希釈剤としてmilliQ水を用いた)。
【0115】
バイオアッセイ
TACI−Fcインビトロバイオアッセイは、Jurkat(ヒト急性T細胞リンパ球)形質移入細胞(Jurkat pKZ142)に基づく。この細胞系列は、2つのプラスミドを形質移入されている。第一のプラスミドは、CMVプロモーターの制御下の全長TACI cDNA、そして第二のプラスミドは、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を駆動するNF−kB/AP−1をコードする。この方法は、zTNF4が細胞表面TACIレポーターに結合し、シグナル伝達カスケードを誘因し、形質移入したNF−kB/AP−1ルシフェラーゼレポーター遺伝子を刺激する能力に基づく。可溶性TACI−Fcの存在は、TACI受容体の結合によるxTNF4を阻害し、ルシフェラーゼ発現を低下させる。
【0116】
Jurkat pKZ142細胞を、全体の用量−応答曲線(27.86〜1.63 U/mL)を作製するためのTACI−Fc標準品、及び標準曲線の直線部分に位置する2つの濃度で試験するサンプル(すなわち、4及び6U/mL)とインキュベートした。
【0117】
その後、標準曲線及びサンプルの両方に、zTNF溶液を、ルシフェラーゼの準最大産生を誘導できる濃度比率(すなわち、150 ng/mLウェル)で添加する。最小及び最大ルシフェラーゼ産生もコントロールとして行う。
【0118】
37℃(5% CO2)で4時間インキュベーション後、細胞を、ルシフェラーゼ固定化Gloキット(luciferase Steady GIo kit)と共に添加し、ルシフェラーゼ発光を照度計により検出する。
【0119】
サンプルの有効性を、標準用量−応答曲線の直線部分上の2つの試験濃度について、Y値(RLU)を挿入することにより計算し、x軸上のTACI−Fcの濃度を求める(グラフパッドソフトウェア)。この独立したアッセイの2つの濃度の値は、平均化され、その後、TACI−Fc5生物活性を、各々の独立したアッセイから得られる有効性の算術平均を行うことにより計算する。
【0120】
予備調製プロセス
pH、緩衝剤種類、及び賦形剤のタンパク質安定性への影響を評価した。70又は100 mg/mLの濃度でTACI−Fcの溶液を調製し、以下の変数について予備的に調べた。
−pH(4、5、6、7)
−緩衝剤(酢酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン)
−糖(マンニトール、ソルビトール、グルコース、スクロース、トレハロース)
−賦形剤(塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、グリシン)
【0121】
これに加え、TACI−Fc5、70 mg/mLに対して、さらに以下の予備スクリーニング試験を行った。
−凍結−融解(F−T)サイクル(1、3、5回のF−T)、20 mM緩衝液中(ヒスチジン、リン酸塩、コハク酸、クエン酸)pH5−6−7。
−40℃でのインキュベーション(振とう及び非振とう条件)
−2〜8℃での保存、20 mM緩衝液中(酢酸塩、ヒスチジン、リン酸塩)pH5−6−7。
【0122】
これらの第一の観察から得られる結果に基づき、2つの緩衝剤(リン酸及びヒスチジン)、pH5及び6を選択し、第二セットの調製物を調製し、追加の安定化剤の含有の影響を調べた(残存オスモル濃度0.280 OSMで)。以下の安定化剤を試験した:グルコース、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、グリシン、NaCl、MgCl2、CaCl2
【0123】
溶液を、2〜8℃、25℃及び40℃に保存し、凝集(SE−HPLC)、タンパク質含量(RP−HPLC)、pH及び外観について最大14日間試験した。
【0124】
実験計画
予備的期間の間になされた選択に基づき、実験計画を設定し、タンパク質安定性に関する異なるレベルでの事前に調べられた因子の影響を評価した。酢酸塩及びヒスチジン緩衝液中の調製物を、以下の界面活性剤:ポロキサマー188(Lutrol(登録商標) F-68)及びTween20pと共に、及び以下の賦形剤:アルギニン、グリシン、リジン、マンニトール及びトレハロースと共に試験した。これらの調製物をガラスバイアル中、2〜8℃、25℃及び40℃で保存し、凝集(SE−HPLC及びAUCにより)、pH、外観及びオスモル濃度について試験した。生物物理学的解析手法(例えば、円偏光二色性、第二UV微分分光法、内因性蛍光等)も適用した。
【0125】
候補調製物
予備調製期間の終わりに、いくつかの候補調製物が確認され、それらは、70又は100 mg/mLいずれかのTACI−Fc、10 mM酢酸緩衝液、賦形剤としてマンニトール(51 mg/mL)又は無水トレハロース(80又は96 mg/mL)、ポロキサマー188(Lutrol(登録商標) F-68)(0.05 mg/mL)含有又は未含有のいずれか、を含む調製物であった。pH値は、4.8、5.0、5.2及び5.4で試験した。
【0126】
全ての溶液を、0.22μm Durapore膜を通して滅菌状態で濾過し、滅菌容器に回収した。その後、当該溶液をDIN2Rガラスバイアル(1mL充填容量)に充填した。プロセスの途中のサンプル(濾過前後)を、製造している間に採取し、タンパク質の損失又は凝集の増加を評価した。
【0127】
サンプルを、2〜8℃、25℃及び40℃で保存し、1ヶ月(40℃)及び6ヶ月(2〜8℃及び25℃)まで試験した。
【0128】
候補調製物を、凝集(SE−HPLC、AUC)、タンパク質含量(SE−HPLC)、pH、オスモル濃度及び生物活性について試験した。C末端開裂の程度及び開裂/短縮状態の割合も検出した。生物物理学的方法(内因性蛍光、動的光散乱、90°光散乱)も適用した。
【0129】
凍結−融解の影響も、2〜8℃で保存した候補調製物の液体サンプルで評価した。当該サンプルを、−80℃で凍結させ、その後、室温で融解させた。凍結−融解前後の行終了をSE−HPLCにより評価した。
【0130】
薬物製品の輸送を模擬実験するために24時間振とうの影響を、2〜8℃保存サンプルについて評価し、24時間室温で、マイクロプレート振とう機上の振とう条件に置いた。凝集レベルは、初期のレベルに対する値を、SE−HPLCで評価した。
【0131】
結果
10 mM Na−酢酸中の候補化合物
【0132】
【表1】

【0133】
詳細な結果を、以下の表A〜Tで報告する。
【0134】
【表2】

【0135】
【表3】

【0136】
【表4】

【0137】
【表5】

【0138】
【表6】

【0139】
【表7】

【0140】
【表8】

【0141】
【表9】

【0142】
【表10】

【0143】
【表11】

【0144】
【表12】

【0145】
【表13】

【0146】
【表14】

【0147】
【表15】

【0148】
【表16】

【0149】
【表17】

【0150】
【表18】

【0151】
【表19】

【0152】
【表20】

【0153】
【表21】

【0154】
主要な結果の要約
サイズ排除クロマトグラフィ
25℃では、70 mg/mLの調製物は、一般的に100 mg/mLのものよりも、凝集の比率(凝集/月(%))に関して緩やかな傾きを示した。後者の群においては、調製物21D及び21Eが、最も緩やかな傾きを示すものであった。40℃では、調製物21Eが、100 mg/mL液体調製物の群において最も緩やかな値の傾きを呈した。
【0155】
AUC
AUCプロファイルは、調製物21Eについて2〜8℃及び25℃では、変化は観察されなかった。安定時間にわたるモノマー増加傾向が、70 mg/mL調製物について検出された。
【0156】
CDで観測されたアンフォールディング
100 mg/mL調製物の群においては、21Eが、最も高いTunfを示すものであった。5.0以外のpH値は、より低いTunfをもたらした(すなわち、より高い安定性)。
【0157】
内因性蛍光
40℃では、最大発光波長における少数の変動が、70 mg/mL、及び100 mg/mL候補では21Eで検出された。
【0158】
RALS
40℃で保存後、「最適な」pH5以外のpHでは、RALSが顕著に増加する。マンニトールを含む調製物の散乱は、他のものよりもかなり高かった。調製物21A、21B、21D及び21Eは、より低い値の散乱を示した。2〜8℃で保存後、これらは全く散乱光の増加を示さなかった。
【0159】
蛍光発光の異方性
調製物21A及び21Bについて、40℃で(1ヶ月)保存後、異方性の変動は観察されなかった。調製物21F及び21Hについて、明らかな変動があった。他のものについては、中間の変動が観察された。
【0160】
動的光散乱
2〜8℃では、サイズ分布の明らかな変動は検出されなかった。25℃での保存後、より大きな種においていくらかの減少%が観察された。40℃で保存後、マンニトール含有のものと、pHが5.0以外のものの両方を除く全ての調製物について、高分子量の種は、劇的に増加しなかった。
【0161】
アンフォールディングの自由エネルギー
100 mg/mLの群において、調製物21D及び21Eについて、より高い熱力学的安定性が観察された。
【0162】
バイオアッセイ
25℃及び40℃で3ヶ月にわたって、生物活性の減少は観察されなかった。
【0163】
全体的結論
液体調製物の予備スクリーニング研究は、70 mg/mLのTACI−Fc5溶液の安定性について最適なpHがpH5付近であることが示されている。pHが高くなればなるほど、凝集現象(SE−HPLCにより評価)及び濃度低下の発生(RP−HPLC及び最適密度から推定)がより強かった。塩(NaCl、CaCl2及びMgCl2等)の存在は、同様に凝集体の増加をもたらした。pHが5未満の値も最適ではなく、異なる緩衝液において、pH=5.0と比較した4.0での、円偏光二色性でのコンフォメーション研究によっても示される通りである。予備的なDSC実験は、トレハロース及びスクロースが分子の安定性にいくらかの正の影響をもたらすことを示した(すなわち、より高いアンフォールディング温度)。
【0164】
この実験計画の段階では、Lutrol(登録商標)F-68及びTween20等の界面活性剤の存在下、pH=5.0の酢酸又はヒスチジン緩衝剤(異なる緩衝剤強度も同様に試験した)に溶解させた複数の賦形剤の効果を調べる目的であった。マンニトール又はトレハロースの存在下、低濃度の酢酸緩衝液は、サンプルに、分解に対しより高い安定性を提供する。Lutrol(登録商標)F-68は、タンパク質の安定化において、Tween20よりもより有効であるようである。
【0165】
蛍光及び動的光散乱試験は、当該結果と一致した。
【0166】
70及び100 mg/mLのTACI−Fc濃度の研究室スケールで、候補サンプルを製造した。トレハロース及びマンニトールを賦形剤として使用した(酢酸ナトリウム緩衝液の存在下、pH=4.8、5.0、5.2及び5.4)。経時での候補物の発生(evolution)を、複数の分光的手法と共に、SE−HPLC及びAUCにより観測した。
【0167】
この研究から、より低濃度のタンパク質は、より少量の凝集体をもたらすことがわかった。最適pH値は5.0であることを確認した。TACI−Fc調製物安定化は、マンニトールよりもトレハロースが成功した。100 mg/mLのTACI−Fc候補の群においては、調製物21E(10 mM酢酸ナトリウム、pH=5.0、80 mg/mLの無水トレハロース)が、40℃での凝集に対して、より強い耐性を呈した(2〜8℃では、統計的に有意な凝集体の増加は検出されなかった)。より正確には、2〜8℃で、液体候補21Eが、26週で、その純度が1.4%上昇した。25℃では、純度は、1%だけ減少した(26週)。
【0168】
候補21Eの全ての短縮形態(2〜8℃及び25℃で10ヶ月)を、RP−HPLC分析により決定した。出発バルク物質(約19%)と比較して、短縮形態の濃度の変動は発生しなかった。C末端開裂は、約95%であることがわかり、初期バルクにおけるものと同じであった。この開裂のレベルは、ヒト抗体で通常観察される。
【0169】
酸化状態のレベルも、液体候補21Eについて、RP−MALDI分析により確認された(2〜8℃及び25℃で10ヶ月保存したもの)。それの元となるバルク薬物物質と比較すると、保存で酸化の顕著な増加は観察されなかった(約2.4%)。
【0170】
実施例2:TACI−Fcの静菌剤との適合性
目的:
本研究の目的は、反復投与調製物の観点から、異なる静菌剤とTACI−Fcとの適合性を評価することであった。以下の静菌剤を試験した。ベンジルアルコール0.9%;m−クレゾール0.3%;フェノール0.5%;クロロブタノール0.5%;フェニルエタノール0.5%;ベンジルアルコール0.3%+塩化ベンザルコニウム0.001%。
【0171】
主な結果
薬物物質+静菌剤:
−40℃で2週間保存後、参照サンプル(静菌剤無添加)と比較して、防腐剤の存在下での薬物物質に対して、総凝集体の増加(15〜70%)が観察された(SECによる)。同様の分解速度が、25℃及び2〜8℃で観察された。
−(SEC及びCD分析により)負の影響が最小であることが判明した静菌剤は、ベンジルアルコール+塩化ベンザルコニウムの混合物であった。
【0172】
液体候補物+静菌剤:
−TACI−Fc液体候補物(酢酸、pH5、トレハロース)への防腐剤の添加により、薬物物質で観察されたものより、それほど顕著でない凝集体の増加がもたらされた(約10〜25%、40℃で2週間後)。これは、凝集の阻止及び負の二次構造の低減(遠紫外線CD実験により証明される)に、トレハロースが有効であることを実証する。
−ベンジルアルコール+塩化ベンザルコニウムの連携は、防腐剤の存在下の調製物群の中で、凝集体について、最良の結果を提供した。
【0173】
結論
タンパク質の完全性に与える複数の静菌剤の影響を、TACI−Fc薬物物質(未処理バルク)、及びNa−酢酸及びトレハロースpH5中、100 mg/mLで調製した調製TACI−Fcで評価した。
【0174】
いずれの静菌剤の含有も、未処理バルク薬物物質に対し、特にタンパク質完全性に負の影響を与えた。0.3%ベンジルアルコール+0.001%塩化ベンザルコニウムの連携は、タンパク質構造に対して、最も害が少ないことが判明した。
【0175】
実施例3:予備充填型シリンジにおけるTACI−Fc液体候補物の安定性
目的:
本研究の目的は、TACI−Fcの液体調製物(Na−酢酸、トレハロース、pH5)を、100 mg/mLで1mLのHypakシリンジに充填し、当該シリンジを2種類のゴム製プランジャー(W4023/50及びW4023/50G FluroTec)で栓をしたものの安定性を評価することであった。
【0176】
主な結果
−被覆(W4023/50G FluroTec)及び未被覆(W4023/50G)プランジャーで栓をした1mLのガラスシリンジに充填した、100 mg/mLのTACI−Fcについて、6ヶ月まで試験した結果は、以下の通りに要約できる。
【0177】
−二量体及びHMW:40℃(1.6%増加/週)及び25℃(0.5%増加/月)で、分解速度は同程度であった。2〜8℃ではわずかに異なる挙動が観察されたが、全体的な安定性に顕著に影響するものではなく、2つの異なる製造バッチについて、0.2%及び0.1%増加/月であった。
−タンパク質含量:保存で、タンパク質含量の減少は観察されなかった。
−短縮形態:短縮形態において、測定値対バイアル中の物質は同程度であった(約40℃及び25℃で5ヶ月後の薬物物質と比較して、2〜8℃では増加しない)。
−生物有効性:生物活性を、3ヶ月保持した(2〜8℃及び25℃)。
−pH:保存で、pH移動は観察されなかった。
【0178】
結論
1 mLのHypakシリンジに100 mg/mLで充填したTACI−Fc液体調製物(酢酸緩衝液、pH5+トレハロース)は安定であった。この試験において評価された2種類のゴム製プランジャー(W4023/50及びW4023/50G FluroTec)は、同等であり、液体調製物の安定性に影響はなかった。
【0179】
実施例4:予備充填型シリンジにおける異なる強度でのアタシセプト安定性
予備充填型シリンジにおける異なる強度でのアタシセプトの安定性を評価した。方法論は、実施例1に記載した通りに行った。
【0180】
試験化合物の組成は以下の通りである。
【0181】
【表22】

【0182】
安定性試験から得た結果を、以下の表U〜Zで報告する。
【0183】
【表23】

【0184】
【表24】

【0185】
【表25】

【0186】
【表26】

【0187】
【表27】

【0188】
【表28】

【0189】
【表29】

【0190】
【表30】

【0191】
【表31】

【0192】
【表32】

【0193】
【表33】

【0194】
【表34】

【0195】
【表35】

【0196】
実施例5:Blysアンタゴニストの作製
4種のTACI−Fcアミノ末端切断型が作製された。4種全て、配列番号6のアミノ酸残基番号30に融合された、WO 02/094852に開示されたような修飾されたヒト組織プラスミノーゲン活性化因子シグナル配列(配列番号25)を有する。しかし、これら4種のタンパク質は、「Fc5」が配列番号6のTACIアミノ酸配列に融合される点の位置が異なる。表1は、4種の融合タンパク質の構造を概説している。
【0197】
【表36】

【0198】
タンパク質をコードしている発現カセットは、標準技術を用いる、オーバーラップPCRにより作製した(例えば、Hortonら、1989参照)。TACIをコードしている核酸分子及びFc5をコードしている核酸分子を、PCR鋳型として使用する。オリゴヌクレオチドプライマーは、表2及び3で確認される。
【0199】
【表37】

【0200】
【表38】

【0201】
PCR増幅の第一ラウンドは、4種のアミノ末端切断型の各々に関する2反応からなった。これらの2反応は、各型に関して1つの反応において5’及び3’TACIオリゴヌクレオチドを用い、並びに別の反応において5’及び3’ Fc5オリゴヌクレオチドを用い、個別に行った。第一ラウンドのPCR増幅の条件は、以下であった。最終容積25μlに、鋳型DNA約200ng、10×Pfu反応緩衝液(Stratagene社)2.5μl、2.5mM dNTPを2μl、20μMの各5’オリゴヌクレオチド及び3’オリゴヌクレオチドを0.5μl、並びにPfuポリメラーゼ0.5μl(2.5単位、Stratagene社)を添加した。増幅の熱プロファイルは、94℃で3分間;94℃で15秒間、50℃で15秒間、72℃で2分間を35サイクル;その後72℃で2分間の伸長からなる。この反応生成物は、アガロースゲル電気泳動により分画し、かつ予想されるサイズに対応するバンドをゲルから切り出し、QIAGEN QIAQUICKゲル抽出キット(Qiagen社)を製造業者の指示に従い使用し、回収した。
【0202】
PCR増幅の第二ラウンド、又はオーバーラップPCR増幅反応は、DNA鋳型として、第一ラウンドPCR由来のゲルで精製された断片を用いて行った。第二ラウンドPCR増幅の条件は、以下であった。最終容積25μlに、TACI断片及びFc5断片の各々の鋳型DNA約10ng、10×Pfu反応緩衝液(Stratagene社)2.5μl、2.5mM dNTPを2μl、20μMのZC24,903(配列番号15)及びZC24,946(配列番号18)を各々0.5μl、並びにPfuポリメラーゼ0.5μl(2.5単位、Stratagene社)を添加した。増幅の熱プロファイルは、94℃で1分間;94℃で15秒間、55℃で15秒間、72℃で2分間を35サイクル;その後72℃で2分間の伸長からなる。この反応生成物は、アガロースゲル電気泳動により分画し、かつ予想されるサイズに対応するバンドをゲルから切り出し、QIAGEN QIAQUICKゲル抽出キット(Qiagen社)を製造業者の指示に従い使用し、回収した。
【0203】
4種の型のアミノ末端切断型TACI−Fc PCR産物の各々は、Invitrogen社のZEROBLUNT TOPO PCRクローニングキットを製造業者の推奨プロトコールに従い用い、個別にクローニングした。表4で、これらのTACI−Fc構築体のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を確認する。
【0204】
【表39】

【0205】
これらのヌクレオチド配列を確認した後、アミノ末端切断型TACI−Fc融合体の4つの型の各々を含むプラスミドを、FseI及びAscIで消化し、このアミノ酸コードしているセグメントを放出した。FseI−AscI断片を、CMVプロモーター及びSV40ポリAセグメントを含む、哺乳類発現ベクターにライゲーションした。発現ベクターは、以下に説明されたようにチャイニーズハムスター卵巣細胞に導入した。
【0206】
実施例6:チャイニーズハムスター卵巣細胞によるTACI−Fcタンパク質の生成
前記TACI−Fc発現構築体を使用し、電気穿孔法により、動物タンパク質−非含有培地において増殖した懸濁−適合されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)DG44細胞を、形質移入した(Urlaubら、1986)。CHO DG44細胞は、両方のジヒドロ葉酸レダクターゼ染色体座における欠失のために、機能的ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子を欠いている。漸増濃度のメトトレキサート存在下での細胞の増殖は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子の増幅を生じ、かつ本発現構築体上に連結された組換えタンパク質−コードされた遺伝子を生じた。
【0207】
CHO DG44細胞は、PFCHO培地(JRH Biosciences社, Lenexa, KS)、4mM L−グルタミン(JRH Biosciences社)、及び1×ヒポサンキシン(hypothanxine)−チミジン補充物(Life Technologies社)中で継代し、これらの細胞を、回転振盪プラットフォーム上で、120RPMで、コーニング振盪フラスコ内、37℃及び5%CO2でインキュベーションした。これらの細胞は、直線化された発現プラスミドにより個別に形質移入した。無菌性を確実にするために、1回のエタノール沈殿工程を、エッペンドルフチューブ内のプラスミドDNAの200μgを、剪断サケ精子担体DNA(5'→3' Inc. ボールダー, CO, 10mg/ml)20μl、3M NaOAc(pH5.2)の22μl、及び100%エタノール(Gold Shield Chemical社, Hayward, CA)484μlと混合することにより、氷上で25分間かけて行った。インキュベーション後、このチューブを、4℃のコールドルームに配置された微量遠心機において、14,000RPMで遠心し、上清を除去し、ペレットを70%エタノール0.5mlで2回洗浄し、風乾させた。
【0208】
このDNAペレットが乾燥する間に、25mlコニカル遠心チューブ中で106個の総細胞(16.5ml)を900RPMで5分間遠心することにより、CHO DG44細胞を調製した。CHO DG44細胞を、総容積300μlのPFCHO増殖培地に再度懸濁し、0.4cmの電極ギャップ(Bio-Rad社)を備えるGene-Pulserキュベット内に配置した。およそ50分間の乾燥時間の後、前記DNAを、PFCHO増殖培地500μlに再度懸濁し、総容積は800μlを超えないよう、キュベット中の細胞に添加し、これを室温で5分間静置し、泡の発生を鎮めた。このキュベットを、BioRad Gene Pulser IIユニットセットに0.296kV(キロボルト)及び0.950HC(高キャパシタンス)で配置し、直ちに電気穿孔した。
【0209】
これらの細胞を、室温で5分間インキュベーションし、その後CoStar T-75フラスコ中の総容積20mlのPFCHO培地中に配置した。このフラスコを、37℃及び5%CO2に48時間配置し、次にこれらの細胞は、トリパンブルー色素排除法を利用し、血球計によりカウントし、ヒポサンキシン−チミジン補充物を含まないが200mMメトトレキサートを含有するPFCHO選択培地(Cal Biochem社)に入れた。
メトトレキサート選択プロセスの回収時に、分泌されたTACI−Fcタンパク質を含有する馴化培地を、ウェスタンブロット分析により試験した。
【0210】
【表40】

【0211】
【表41】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.i)BLyS及び/又はAPRILに結合するTACI細胞外ドメイン又はその断片もしくは変種;及び
ii)免疫グロブリン−定常ドメイン
を含んでなる、TACI−免疫グロブリン(TACI−Ig)融合タンパク質;並びに
b.pH4.5〜5.5の範囲で調製物を緩衝する緩衝剤、
を含んでなる調製物。
【請求項2】
pHが4.7〜5.3、又は4.9〜5.1の範囲、又はpH5.0である、請求項1に記載の調製物。
【請求項3】
前記緩衝剤が、酢酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩及びヒスチジンの緩衝剤から選択される、請求項1又は2に記載の調製物。
【請求項4】
前記酢酸塩の緩衝剤が酢酸ナトリウムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項5】
前記酢酸ナトリウムの濃度が、5〜25 mMである、請求項4に記載の調製物。
【請求項6】
さらにトレハロースを含んでなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項7】
前記トレハロースが、濃度60〜100 mg/mLの範囲で含まれる、請求項6に記載の調製物。
【請求項8】
前記TACI−Ig融合タンパク質の濃度が70〜180 mg/mLの範囲、前記トレハロースの濃度が80〜100 mg/mLの範囲で含まれ、ここで前記緩衝剤が10 mMの酢酸ナトリウム緩衝剤である、請求項7に記載の調製物。
【請求項9】
さらに防腐剤を含んでなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項10】
前記防腐剤が、ベンジルアルコールと塩化ベンザルコニウムとの組み合わせである、請求項9に記載の調製物。
【請求項11】
前記TACI−Ig断片が、配列番号1のアミノ酸残基34〜66及び/又はアミノ酸残基71〜104を含んでなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項12】
前記断片が、配列番号1のアミノ酸残基30〜110、又はそれと少なくとも90%同一であるか、もしくは10個未満の保存的アミノ酸置換を含むその変種であって、BLyS及び/又はAPRILに結合する変種を含む、請求項11に記載の調製物。
【請求項13】
前記免疫グロブリン−定常ドメインが、ヒトIgG1定常ドメインである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項14】
前記ヒトIgG1定常ドメインが、配列番号2の配列、又は20個未満の保存アミノ酸置換を含むその変種を含んでなる、請求項13に記載の調製物。
【請求項15】
配列番号3の配列、又はそれと少なくとも90%同一であるか、もしくは30個未満の保存的アミノ酸置換を有するその変種であって、BLyS及び/又はAPRILに結合する変種を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項16】
前記TACI−Ig融合タンパク質を、20 mg/mL〜180 mg/mLの濃度範囲で含んでなる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項17】
液状である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項18】
反復投与のための、請求項1〜17のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の調製物を含んでなる、医薬組成物。
【請求項20】
自己免疫疾患又はリンパ増殖性障害の治療のための、請求項1〜18のいずれか1項に記載の調製物、又は請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
TACI−Ig融合タンパク質の溶液を調製するステップ、及び当該溶液のpHを4.5〜5.5、又は4.7〜5.3又は4.9〜5.1、もしくは〜5.0の範囲に調整するステップを含んでなる、請求項1〜18のいずれか1項に記載の調製物の製造方法。
【請求項22】
滅菌容器に、所定量の前期調製物を入れるステップを含んでなる、請求項21に記載の調製物の製造方法。
【請求項23】
前記容器が、ガラスバイアル又は予備充填型シリンジから選択される、請求項22に記載の方法。

【公表番号】特表2011−503038(P2011−503038A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532619(P2010−532619)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065395
【国際公開番号】WO2009/062960
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(504104899)アレス トレーディング ソシエテ アノニム (59)
【Fターム(参考)】