説明

アウトサイドミラー

【課題】一旦層流剥離した気流が連続的な渦を発生する際の異音を抑制し、快適性の向上を図ることが可能なアウトサイドミラーを提供する。
【解決手段】本発明にかかるアウトサイドミラー100の構成は、ミラーガラス102と、ミラーガラスを支持するミラーバイザー120と、ミラーバイザーの前側に組み付けられてアウトサイドミラーの外面を構成するミラーカバー130とを含み、車両前後方向の縦断面形状において上部から少なくとも前部まで湾曲した前方に凸の略円弧状の輪郭であって、上部と前部との間にミラーバイザーとミラーカバーとの見切り部106を有し、前部に設けられ、車両走行中に受けた空気を取り入れる空気取入口142と、空気取入口から取り入れられた空気を上方に案内する空気流路144と、空気取入口よりも後方の上部且つ見切り部の近傍に設けられ、空気流路を通過した空気を外に吹き出す空気吹出口146とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側面に設けられ、車両後方を視認するためのミラーガラスを有するアウトサイドミラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の側面には、運転者が車両後方を視認するためのアウトサイドミラーが設けられている。アウトサイドミラーは車両の側面から突出するように配置されているため走行中に空気を受けることとなり、空気の流れ(気流)に起因する風切り音(以下、異音と称する。)が発生する。この異音は、騒音の一種であるためその抑制が望まれていた。
【0003】
そこで、例えば特許文献1では、車体と対向するミラーボデーの側面部に、ミラーボデーの内部と連通し、ミラーボデー内を通る流路を形成する通風孔を設けた自動車用ドアミラー(アウトサイドミラー)が提案されている。特許文献1の構成によれば、車体とミラーボデーの間を流れる気流の一部が通風路内に流れ込んでミラーボデー内を通る流路を流れるため、かかる気流の上方への流れが抑制される。したがって、上方へ流れる気流と、フロントウィンドウからフロントピラーへと流れた気流によって作られたフロントピラーの後方の渦との干渉に起因する風切り音(異音)を低減することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−44865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アウトサイドミラー周辺において発生する異音は、特許文献1において述べられている、上方へ流れる気流とフロントピラーの後方の渦との干渉による異音だけではない。他の異音としては、走行中に前方から流れてきてアウトサイドミラーによって上下に分断された気流に起因する異音が例示される。このような異音は特に、ミラーガラスを支持するミラーバイザーと、かかるミラーバイザーの前側に配置されて外面を構成するミラーカバーとを備える構造のアウトサイドミラーにおいて生じやすい傾向があった。
【0006】
詳細には、走行中に車両に向かって流れてきた気流がアウトサイドミラーによって上下に分断されると、上方に分断された気流は、アウトサイドミラーの形状に沿ってその前部から上部に向かって流れる。このとき、上述したアウトサイドミラーのミラーバイザーとミラーカバーとの見切り部において、流れてきた気流が一旦アウトサイドミラーから層流で離れて(層流剥離して)、渦が生成される。この渦が、見切り部からミラーバイザー端部に到達して変形すると圧力波が放出され、かかる圧力波によって見切り部での更なる渦の生成が誘引される。これにより、層流剥離から渦生成までの現象が連続的に繰り返され、この連続的に渦が生成されるときに「ピー」という一定の周波数の音(異音)が発生する。このような異音は、特許文献1の技術では低減することができない。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、一旦層流剥離した気流が連続的な渦を発生する際の異音を抑制し、快適性の向上を図ることが可能なアウトサイドミラーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかるアウトサイドミラーの代表的な構成は、車両の側面に設けられ、車両後方を映すミラーガラスと、内部にミラーガラスが配置されてそれを支持するミラーバイザーと、ミラーバイザーの前側に組み付けられて当該アウトサイドミラーの外面の少なくとも一部を構成するミラーカバーとを含むアウトサイドミラーであって、当該アウトサイドミラーは、車両前後方向の縦断面形状において上部から少なくとも前部まで湾曲した前方に凸の略円弧状の輪郭であって、上部と前部との間にミラーバイザーとミラーカバーとの見切り部を有し、前部に設けられ、車両走行中に受けた空気を当該アウトサイドミラー内に取り入れる空気取入口と、空気取入口と連通していて空気取入口から当該アウトサイドミラー内に取り入れられた空気を上方に案内する空気流路と、空気取入口よりも後方の上部且つ見切り部の近傍に設けられ、空気流路と連通していて空気流路を通過した空気を当該アウトサイドミラー外に吹き出す空気吹出口と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、走行中に車両に向かって流れてきた気流、すなわち車両走行中にアウトサイドミラーが受けた空気の一部が、空気取入口から当該アウトサイドミラー内に取り入れられ、その内部の空気流路によってアウトサイドミラー内の上方まで案内される。そして、上方まで案内された空気が空気吹出口から吹き出されることにより、かかる空気吹出口近傍において乱流を発生させることができる。この乱流により、アウトサイドミラー外を上方に向かって流れた気流が、一旦層流剥離して連続的な渦を発生させることが防がれる。したがって、連続的な渦に起因する異音を抑制することができ、快適性の向上を図ることが可能となる。
【0010】
上記の空気取入口は、当該アウトサイドミラーの車両前後方向の縦断面形状において前端部近傍に設けられているとよい。これにより、車両走行中にアウトサイドミラーが受けた空気を最も効率的に取り入れることが可能となる。
【0011】
上記の空気流路は、ミラーカバーとミラーバイザーとの間に形成された隙間からなるとよい。かかる構成によれば、アウトサイドミラーの一般的な構成部品であるミラーカバーおよびミラーバイザーによって空気流路が形成されるため、新たな部品の追加が不要である。したがって、部品点数の増加、ひいてはコストや重量の増大を防ぐことが可能となる。
【0012】
上記の空気取入口および空気吹出口の少なくとも一方は、ミラーカバーの端縁に形成されているとよい。これにより、空気取入口や空気吹出口を外観上目立たなくすることができ、意匠面における美観を好適に維持することができる。また空気取入口や空気吹出口の成型が容易な形状となるため、樹脂インジェクション成形型の複雑化を招くことがない。
【0013】
上記の空気取入口および空気吹出口の少なくとも一方は、ミラーカバーに形成された孔であるとよい。これにより、ミラーカバーの端縁の形状(外周形状)によることなく空気取入口や空気吹出口の位置を設定することができる。したがって、空気取入口や空気吹出口の設定位置やミラーカバーのデザイン等、設計の自由度を高めることができ、商品性と快適性の両立を図ることが可能となる。
【0014】
上記のミラーカバーおよびミラーバイザーの少なくとも一方には、他方に向かって突出し空気取入口近傍から空気吹出口近傍に至るまで延びる空気流路壁が、空気取入口または空気吹出口と略同じ間隔を有して1対設けられているとよい。
【0015】
かかる構成により、アウトサイドミラー内に設けられた空気流路は、空気流路壁によってアウトサイドミラー内の他の空間から仕切られることとなる。これにより、空気取入口から取り入れられた空気のアウトサイドミラー内における拡散を好適に防ぐことができ、空気吹出口からの空気の吹き出しをより確実に行うことが可能となる。
【0016】
上記の空気流路壁はミラーカバーおよびミラーバイザーの両方に設けられていて、ミラーカバー側の空気流路壁とミラーバイザー側の空気流路壁とを重ねて空気流路を形成しているとよい。これにより、空気流路の密閉性の向上を図ることができ、空気の拡散の更なる防止が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、一旦層流剥離した気流が連続的な渦を発生する際の異音を抑制し、快適性の向上を図ることが可能なアウトサイドミラーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態にかかるアウトサイドミラーの組立後の状態を示す図である。
【図2】図1のアウトサイドミラーの組立前の状態を示す図である。
【図3】図1のアウトサイドミラーの空気流路壁の断面形状を示す図である。
【図4】第2実施形態にかかるアウトサイドミラーを示す図である。
【図5】第3実施形態にかかるアウトサイドミラーの組立後の状態を示す図である。
【図6】図5のアウトサイドミラーの組立前の状態を示す図である。
【図7】アウトサイドミラーの他の実施形態を示す図である。
【図8】比較例としての従来のアウトサイドミラーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかるアウトサイドミラーの組立後の状態を示す図であり、図1(a)は組立後の斜視図であり、図1(b)は図1(a)のA−A断面図である。図2は、図1のアウトサイドミラーの組立前の状態を示す図である。なお、図に示すFは車両前方側を示していて、Rは車両後方側を示している。
【0021】
図1(a)に示すように、第1実施形態のアウトサイドミラー(以下、サイドミラー100と称する。)は、車両(不図示)の側面に設けられるミラーである。サイドミラー100は、後に詳述するように前側にミラーカバー130が組み付けられたミラーバイザー120をミラーベース110が支持していて、かかるミラーベース110が車両の側面に組み付けられることによって車両に取り付けられる。
【0022】
また図1(b)に示すように、サイドミラー100は、車両前後方向の縦断面形状において前方に凸の略円弧状の輪郭を有する。なお、本実施形態では、車両前後方向の縦断面形状において二次曲線状の輪郭を有するサイドミラー100を例示しているが、これに限定するものではなく、サイドミラー100は、車両前後方向の縦断面形状において上部から少なくとも前部まで湾曲していればよい。
【0023】
ミラーバイザー120は、車両後方を映すミラーガラス102が内部に配置され、これを支持する。本実施形態では、ミラーガラス102の背面に配置された電動鏡面調整用のアクチュエータ部104の支持部104aによってミラーガラス102が支持され、かかるアクチュエータ部104を介してミラーバイザー120がミラーガラス102を支持している。ミラーカバー130は、ミラーバイザー120の前側に組み付けられ、当該サイドミラー100の外面の一部を構成する。このため、本実施形態のサイドミラー100では、上部と前部との間に、ミラーバイザー120とミラーカバー130との見切り部106を有することとなる。
【0024】
図2に示すように、ミラーカバー130の内面(ミラーバイザー120と対向する面)には、ミラーバイザー120に向かって突出する爪部132a、132b、132cおよび132dが設けられている。一方、ミラーバイザー120には、爪部132a〜132dに対応する位置にそれらが嵌められる嵌合部122a、122b、122cおよび122dが設けられている。かかる構成によれば、爪部132a〜132dと嵌合部122a〜122dとを対応させることにより位置決めを行い、それらを嵌め合わせることによりミラーカバー130をミラーバイザー120の前側に組み付けることができる。これにより、サイドミラー100は、図2に示す状態から図1に示す状態に組み立てられる。
【0025】
なお、本実施形態では、ミラーカバー130に4つの爪部132a〜132dを設け、ミラーバイザー120に4つの嵌合部嵌合部122a〜122dを設けたが、この数は例示であり、これに限定するものではない。また爪部および嵌合部に位置についても例示にすぎず、これらは任意の位置に設けることができる。ただし、後述する気流Dの通過を妨げとなるおそれがあるため、爪部および嵌合部の空気流路144内への配置は避けることが好ましい。
【0026】
本実施形態の特徴として、サイドミラー100には、空気取入口142、空気流路144、空気吹出口146が設けられている。図1(b)に矢印で示す空気の流れを参照して説明すると、走行中に車両に向かって流れてきた気流Aは、サイドミラー100によって、その上方に向かう気流Bと、その下方に向かう気流Cとに分断される。これらのうち、気流Bは、サイドミラー100(本実施形態においてはミラーカバー130)の形状に沿って上方に流れて行き、気流Cはサイドミラー100の形状に沿って下方に流れていく。
【0027】
また気流Aの一部は、サイドミラー100の前部に設けられた空気取入口142からサイドミラー100内に取り入れられる。本実施形態では、空気取入口142は、図1(b)に示すようにサイドミラー100の車両前後方向の縦断面形状において前端部近傍に設けられているとよい。これにより、車両走行中にサイドミラー100に向かって直進してきた気流A(空気)を最も効率的に取り入れることが可能となる。
【0028】
空気取入口142からサイドミラー100内に取り入れられた気流D(空気)は、サイドミラー100内に設けられ、空気取入口142と連通している空気流路144によって上方に案内される。本実施形態では、空気流路144は、ミラーカバー130とミラーバイザー120との間に形成された隙間からなる。したがって、空気流路144が形成するための新たな部品の追加が不要であり、部品点数の増加、ひいてはコストや重量の増大を抑えることができる。
【0029】
また本実施形態のサイドミラー100では、ミラーカバー130に、ミラーバイザー120に向かって突出し空気取入口142近傍から空気吹出口146近傍に至るまで延びる1対の空気流路壁134aおよび134bが、空気取入口142および空気吹出口146と略同じ間隔を有して設けられている。同様に、ミラーバイザー120には、空気流路壁134aおよび134bに対応する位置に、ミラーカバー130に向かって突出する1対の空気流路壁124aおよび124bが設けられている。このような構成により、空気流路144が、サイドミラー100内において他の空間から仕切られて独立する。したがって、空気取入口142から取り入れられた気流Dのサイドミラー100内における拡散を防ぐことができ、後述する空気吹出口146からの空気の吹き出しをより確実に行うことが可能となる。
【0030】
図3は、図1のアウトサイドミラーの空気流路壁134a、134b、124aおよび124bの断面形状を示す図であり、図3(a)は図1(a)のB−B断面図であり、図3(b)は空気流路壁の断面形状の他の例を示す図である。
【0031】
図3(a)に示すように、本実施形態では特に、空気流路壁124aおよび124bの車幅方向の断面形状をコの字状とし、その凹部分に空気流路壁134aおよび134bを嵌合する構成としている。かかる構成によれば、嵌合時の車幅方向の断面形状においてミラーカバー130側の空気流路壁134aおよび134bとミラーバイザー120側の空気流路壁124aおよび124bとが重なりあうこととなる。これにより、空気流路144の密閉性の向上を図り、空気の拡散を更に防ぐことができる。なお、空気流路壁124aおよび124bの断面形状と、空気流路壁134aおよび134bの断面形状は逆の構成としてもよい。
【0032】
また図3(b)に示すように、ミラーカバー130側の空気流路壁134aおよび134b、ならびにミラーバイザー120側の空気流路壁124aおよび124bともに、断面形状においてコの字状ではなく、それらの空気流路壁が単に重なりあう構成としてもよい。これによっても、上述した利点を得ることができる。
【0033】
空気取入口142から取り入れられ、サイドミラー100内の空気流路144を通過することにより上方に案内された気流D(空気)は、空気取入口142よりも後方の上部に設けられ、かかる空気流路144と連通している空気吹出口146に至る。図1(b)に示すように空気吹出口146は、サイドミラー100の車両前後方向の縦断面形状において、ミラーバイザー120とミラーカバー130との見切り部106の近傍に設けられている。
【0034】
後に図8を用いて説明する比較例のように、車両の走行中、ミラーバイザーとミラーカバーとの見切り部において、サイドミラーの形状に沿って上方に流れた気流Bが一旦サイドミラーから層流で剥離(図8に示す層流剥離B1)して渦(図8に示す渦B3)が発生してしまうと、かかる渦の連続的な発生に起因する異音が生じてしまう。
【0035】
そこで、本実施形態では、空気取入口142から取り入れた気流Dを気流D´としてサイドミラー100外に吹き出す。これにより、見切り部106の近傍に設けられた空気吹出口146近傍において、気流D´によって気流Bの流れが乱されて乱流B2が発生する。したがって、見切り部106における層流剥離による連続的な渦の発生が気流D´によって防がれ、気流Bは乱流B2となってサイドミラー100を離れる方向に流れる。故に、本実施形態のように層流剥離による渦が発生しやすい見切り部106近傍に空気取入口142を設けることにより、そこに気流D´を吹き出させることができ、層流剥離によって発生する連続的な渦に起因するサイドミラー100近傍での異音の抑制、ひいては快適性の向上を図ることが可能となる。
【0036】
また本実施形態においては、空気取入口142および空気吹出口146を、ミラーカバー130の端縁にそこを切り欠くようにして形成している。これにより、空気取入口142や空気吹出口146を外観上目立たなくすることができ、意匠面での美観が確保される。また空気取入口142や空気吹出口146の成型が容易であるため、樹脂インジェクション成形型の複雑化を招くことがない。
【0037】
上記説明したように、第1実施形態にかかるサイドミラー100によれば、車両走行中に受けた空気(気流A)の一部を、空気取入口142からサイドミラー100内に取り入れて空気流路144を通過させ、サイドミラー100上方において空気吹出口146から吹き出させることにより、サイドミラー100の上方に流れた気流Bの層流剥離による連続的な渦の発生を防止することができる。これにより、連続的な渦の発生に起因する異音を抑制し、快適性の向上を図ることが可能となる。またミラーカバー130の端縁を切り欠いて空気取入口142および空気吹出口146を形成したことにより、サイドミラー100の好適な美観を確保し、成形型の複雑化を回避することができる。
【0038】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態のサイドミラー100の構成要素と実質的に同一な機能や構成を有する要素については同一の符号を付すことで説明を省略する。
【0039】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態にかかるアウトサイドミラーを示す図であり、図4(a)は第2実施形態のアウトサイドミラーの斜視図であり、図4(b)は図4(a)のC−C断面図である。第1実施形態のサイドミラー100では、その車両前後方向の縦断面形状においてミラーカバー130はサイドミラー100の上方から前端部まで延び、かかる前端部近傍に空気取入口142が設けられていた。またサイドミラー100では、空気取入口142、空気吹出口146ともにミラーカバー130の端縁を切り欠くように形成されていた。
【0040】
上記に対し、図4(a)および(b)に示す第2実施形態のアウトサイドミラー(以下、サイドミラー200と称する。)では、ミラーカバー230はサイドミラー200の上方から前端部まで延び、かかる前端部から湾曲して下方まで延びている。すなわちミラーカバー230は、サイドミラー200の外面の大部分を構成している。そして、サイドミラー200に設けられた空気取入口242は、車両前後方向の縦断面形状においてミラーカバー230の前端部近傍に形成された孔である。
【0041】
上記構成によれば、ミラーカバー230の端縁の形状(外周形状)によることなく空気取入口242の位置を設定可能である。したがって、空気取入口242の設定位置やミラーカバー230のデザイン等において設計の自由度を高めることができ、商品性と快適性の両立を図ることが可能となる。具体的には、サイドミラー200の外観意匠においてミラーカバー230を車両(不図示)と同色として、ミラーバイザー120を車両やミラーカバー230と異なる色とする場合等において、空気取入口242の設定位置がミラーカバー230の大きさに影響を及ぼすことがない。
【0042】
サイドミラー200のように空気取入口242をミラーカバー230に形成した孔とした場合であっても、図4(b)に示すように、気流Aの一部は、気流Dとして空気取入口242からサイドミラー200内部に取り入れられ、空気流路144を通過した後に空気吹出口146から気流D´として吹き出される。したがって、サイドミラー200においても、上述したサイドミラー100と同様に気流Bの層流剥離による連続的な渦の発生を好適に防止することができ、その効果を得ることが可能となる。
【0043】
なお、サイドミラー200では空気取入口をミラーカバー230に設けた孔とする場合について例示したが、これに限定するものではない。空気取入口ではなく空気吹出口を孔として設けてもよいし、それらの両方ともを孔とすることも可能である。
【0044】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態にかかるアウトサイドミラーの組立後の状態を示す図であり、図5(a)は組立後の斜視図であり、図5(b)は図1(a)のD−D断面図である。図6は、図5のアウトサイドミラーの組立前の状態を示す図である。
【0045】
第1実施形態のサイドミラー100および第2実施形態のサイドミラー200では、空気取入口142はサイドミラー100の車両前後方向の縦断面形状において前端部近傍に設けられていた。これに対し、図5(a)および(b)に示す第3実施形態のアウトサイドミラー(以下、サイドミラー300と称する。)では、第2実施形態のようにサイドミラー300の上方から前端部まで延びて、そこから湾曲して更に下方まで延びたミラーカバー330において、サイドミラー300の前端部より上方に空気取入口342が設けられている。換言すれば、サイドミラー300では空気取入口342はサイドミラー300の前端部ではなく単に前部に形成されている。
【0046】
上述したように空気取入口342を前部に設けた場合、図5(b)に示すように、走行中に車両に向かって流れてきた気流Aが、サイドミラー100によって、上方に向かう気流Bと、その下方に向かう気流Cとに分断され、サイドミラー100の形状に沿って上方に流れる気流Bの一部が、気流Dとして空気取入口342からサイドミラー300内に取り入れられる。そして、取り入れられた気流Dは、空気流路144を通過した後に空気吹出口146から気流D´として吹き出される。したがって、サイドミラー300であっても気流Bの層流剥離による連続的な渦の発生を防止し、上述したサイドミラー100と同様の効果を得ることが可能となる。
【0047】
また図6に示すように、第3実施形態のサイドミラー300では、ミラーバイザー120のみに、ミラーカバー330に向かって突出する1対の空気流路壁324aおよび324bが設けられている。このような構成であっても、サイドミラー300内において空気流路144を他の空間から仕切って独立させることができ、サイドミラー300内における気流Dの拡散を防止し、第1実施形態において述べた利点を得ることができる。
【0048】
なお、本実施形態ではミラーバイザー120のみに空気流路壁324aおよび324bを設ける構成を例示したが、これとは逆に、ミラーカバー330のみに空気流路壁を設ける構成としてもよい。ただし、ミラーバイザー120またはミラーカバーのいずれか一方にのみ空気流路壁を設ける場合には、かかる空気流路壁は、それを設けられていない部材に接触する高さとすることが好ましい。これにより、空気流路144の密閉性を高めることができる。
【0049】
(他の実施形態)
図7は、アウトサイドミラーの他の実施形態を示す図である。図7(a)に示すアウトサイドミラー(サイドミラー400)では、第1実施形態のサイドミラー100に設けられていた空気取入口142および空気吹出口146に加えて、空気取入口142の両サイドに空気取入口442aおよび空気取入口442bが、空気吹出口146の両サイドに空気吹出口446aおよび空気吹出口446bが設けられている。
【0050】
また図7(b)に示すアウトサイドミラー(サイドミラー500)では、第2実施形態のサイドミラー200に設けられていた空気取入口242および空気吹出口146に加えて、空気取入口242の両サイドに空気取入口542aおよび空気取入口542bが、空気吹出口146の両サイドに空気吹出口446aおよび空気吹出口446bが設けられている。
【0051】
上記構成のように、アウトサイドミラーの車幅方向に複数の空気取入口や空気吹出口を設けることにより、気流の層流剥離による連続的な渦の発生を防止する効果をより一層高め、異音の更なる抑制を図り、快適性を更に向上させることが可能となる。
【0052】
上記説明した図7(a)および(b)では、3つの空気取入口に対し3つの空気吹出口を設けたが、この数は例示である。また空気取入口の数と空気吹出口とは必ずしも一致させる必要はなく、それらの数は異なっていてもよい。更に、複数の空気取入口および複数の空気吹出口はそれぞれ異なる空気流路と連通していてもよいし、同一の空気流路と連通していてもよい。
【0053】
なお、上述した実施形態のアウトサイドミラーのいずれにおいても、空気取入口および空気吹出口の形状はスリット状の長孔であるが、かかる形状は例示であり、空気の取り入れおよび吹き出しという目的を果たせるのであれば空気取入口および空気吹出口は如何なる形状であってもよい。例えば、空気取入口および空気吹出口は、丸穴や四角穴であってもよいし、それらを組み合わせたものでもよいし、それらを略車幅方向に連続的に配置したものであってもよい。
【0054】
(比較例)
図8は、比較例としての従来のアウトサイドミラーを示す図であり、図8(a)は従来のアウトサイドミラーの斜視図であり、図8(b)は図8(a)のE−E断面図である。図8(c)は図8(b)の一点鎖線で囲われたX円内の拡大図である。図8(a)に示すように、従来のアウトサイドミラー(以下、サイドミラー10と称する)は、前側にミラーカバー13が組み付けられたミラーバイザー12をミラーベース11が支持していて、かかるミラーベース11が車両(不図示)の側面に組み付けられることによって車両に取り付けられる。また図8(b)に示すように、ミラーバイザー12の内部には、電動鏡面調整用のアクチュエータ部14が配置され、その支持部14aによって、車両後方を映すミラーガラス15が支持されている。すなわち、ミラーバイザー12は、アクチュエータ部14を介してミラーガラス15を間接的に支持している。
【0055】
図8(b)に矢印で示す空気の流れを参照して説明すると、走行中に車両に向かって流れてきた気流Aは、サイドミラー10によって、その上方に向かう気流Bと、その下方に向かう気流Cとに分断される。気流Bは、サイドミラー10(厳密にはミラーカバー13)の形状に沿って上方に流れていく。一方、気流Cは、サイドミラー10の形状に沿って下方に流れていく。
【0056】
ここで、上述したようにサイドミラー10は、ミラーバイザー12にミラーカバー13が組み付けられた構成であるため、サイドミラー10の上部と前部との間には、ミラーバイザー12とミラーカバー13との見切り部16が存在している。図8(c)に示すように、見切り部16(ミラーカバー13の後端縁)では、ミラーバイザー12とミラーカバー13との間に段差が生じている。このため、図8(b)に示すように、サイドミラー10の形状に沿って上方に流れた気流Bは、見切り部16においてサイドミラー10から一旦層流で剥離(層流剥離B1)して渦B3を生成する。この渦B3が連続的に発生すると、「ピー」という一定の周波数の音(異音)が発生し、快適性の向上を妨げる要因となっている。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、車両の側面に設けられ、車両後方を視認するためのミラーガラスを有するアウトサイドミラーに利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10…サイドミラー、11…ミラーベース、12…ミラーバイザー、13…ミラーカバー、14…アクチュエータ部、14a…支持部、15…ミラーガラス、16…見切り部、100…サイドミラー、102…ミラーガラス、104…アクチュエータ部、104a…支持部、106…見切り部、110…ミラーベース、120…ミラーバイザー、122a・122b・122c・122d…嵌合部、124a・124b…空気流路壁、130…ミラーカバー、132a・132b・132c・132d…爪部、134a・134b…空気流路壁、142…空気取入口、144…空気流路、146…空気吹出口、200…サイドミラー、230…ミラーカバー、242…空気取入口、300…サイドミラー、324a・324b…空気流路壁、330…ミラーカバー、342…空気取入口、400…サイドミラー、442a・442b…空気取入口、446a・446b…空気吹出口、A…気流、B…気流、C…気流、D…気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側面に設けられ、該車両後方を映すミラーガラスと、内部に該ミラーガラスが配置されてそれを支持するミラーバイザーと、該ミラーバイザーの前側に組み付けられて当該アウトサイドミラーの外面の少なくとも一部を構成するミラーカバーとを含むアウトサイドミラーであって、
当該アウトサイドミラーは、車両前後方向の縦断面形状において上部から少なくとも前部まで湾曲した前方に凸の略円弧状の輪郭であって、該上部と前部との間に前記ミラーバイザーと前記ミラーカバーとの見切り部を有し、
前部に設けられ、車両走行中に受けた空気を当該アウトサイドミラー内に取り入れる空気取入口と、
前記空気取入口と連通していて該空気取入口から当該アウトサイドミラー内に取り入れられた空気を上方に案内する空気流路と、
前記空気取入口よりも後方の上部且つ前記見切り部の近傍に設けられ、前記空気流路と連通していて該空気流路を通過した空気を当該アウトサイドミラー外に吹き出す空気吹出口と、
を備えることを特徴とするアウトサイドミラー。
【請求項2】
前記空気取入口は、当該アウトサイドミラーの車両前後方向の縦断面形状において前端部近傍に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のサイドミラー。
【請求項3】
前記空気流路は、前記ミラーカバーと前記ミラーバイザーとの間に形成された隙間からなることを特徴とする請求項1または2に記載のアウトサイドミラー。
【請求項4】
前記空気取入口および前記空気吹出口の少なくとも一方は、前記ミラーカバーの端縁に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアウトサイドミラー。
【請求項5】
前記空気取入口および前記空気吹出口の少なくとも一方は、前記ミラーカバーに形成された孔であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のアウトサイドミラー。
【請求項6】
前記ミラーカバーおよび前記ミラーバイザーの少なくとも一方には、他方に向かって突出し前記空気取入口近傍から前記空気吹出口近傍に至るまで延びる空気流路壁が、該空気取入口または該空気吹出口と略同じ間隔を有して1対設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のアウトサイドミラー。
【請求項7】
前記空気流路壁は前記ミラーカバーおよび前記ミラーバイザーの両方に設けられていて、該ミラーカバー側の空気流路壁と該ミラーバイザー側の空気流路壁とを重ねて前記空気流路を形成していることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のアウトサイドミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−100037(P2013−100037A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245202(P2011−245202)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】