説明

アキュムレータおよびアキュムレータの異常検出装置

【課題】遮断弁を備えたアキュムレータにおいて、遮断弁による遮断不良等に起因するアキュムレータの異常を精度よく検出する。
【解決手段】0ダウン状態においては、ベローズ82がシール部材96がストッパ99に当接する状態まで収縮させられる。シール部100において蓄圧室84が密封されるのであり、この状態においては、蓄圧室84の圧力は本来一定に保たれるはずである。それに対して、シール不良が生じた場合には、蓄圧室84の圧力が設定圧まで低下させられる。したがって、0ダウン状態における蓄圧室84の圧力に基づけば、シール不良等に起因するアキュムレータ74の異常を精度よく検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、アキュムレータおよびそれの異常検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アキュムレータの異常を検出する異常検出装置の一例が特開平9−123893号公報に記載されている。この公報に記載の異常検出装置は、(1)高圧の流体を発生させる高圧源と、(2)流体圧により作動させられる流体圧作動装置と、(3)高圧源と流体圧作動装置との間に設けられたアキュムレータおよびアキュムレータ圧検出装置と、(6)アキュムレータ圧検出装置による検出圧力が設定値以下の状態が設定時間以上継続した場合には、アキュムレータ、高圧源および流体圧作動装置を含む液圧系が異常であるとする異常検出部とを含むものである。このように、上述の異常検出装置においては、液圧系が異常であることは検出できるが、アキュムレータが異常であることを検出することができないという問題があった。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題、課題解決手段および効果】そこで、本発明の課題は、アキュムレータの異常を検出し得る異常検出装置を得ることである。この課題は、異常検出装置を下記各態様の構成のものとすることによって解決される。各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまで、本明細書に記載の技術の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組み合わせが以下の各項に限定されると解釈されるべきではない。また、1つの項に複数の事項が記載されている場合、常に、すべての事項を一緒に採用しなければならないものではなく、一部の事項のみを取り出して採用することも可能である。
(1)高圧の流体を発生させる高圧源から供給される流体を加圧下に蓄積し、流体圧により作動させられる流体圧作動装置に供給するアキュムレータの異常を検出する異常検出装置であって、前記アキュムレータが前記高圧源および流体圧作動装置の両方から遮断された密封状態において、アキュムレータの圧力を検出可能なアキュムレータ圧検出装置と、そのアキュムレータ圧検出装置による前記密封状態における検出圧力に基づいて、アキュムレータの異常を検出する異常検出部とを含むことを特徴とするアキュムレータの異常検出装置(請求項1)。本項に記載のアキュムレータの異常検出装置においては、アキュムレータの異常が、アキュムレータが高圧源からも流体圧作動装置からも遮断された状態におけるアキュムレータ圧に基づいて検出される。アキュムレータ圧検出装置は、アキュムレータの密封状態において、アキュムレータの圧力を検出可能なものなのである。そのため、密封状態にあるアキュムレータの異常を検出することができる。例えば、密封状態におけるアキュムレータ圧検出装置による検出圧力が設定圧力以下になったことに基づいて、アキュムレータ自体や継ぎ手に漏れが発生し、あるいはアキュムレータを高圧源および流体圧作動装置から遮断する遮断装置の遮断状態が不良であることを検出することができる。
(2)前記アキュムレータが、ハウジングと、そのハウジングの内部を仕切る仕切部材と、その仕切部材の一方の側の、前記高圧源から供給された高圧の流体を加圧下に蓄える蓄圧室とを含み、前記アキュムレータ圧検出装置が、前記蓄圧室の圧力を検出する蓄圧検出部を含む(1)項に記載のアキュムレータの異常検出装置。本項に記載の異常検出装置においては、仕切部材がゴム製のブラダであるブラダ式のアキュムレータ、金属製のベローズであるベローズ式のアキュムレータ、ピストンであるピストン式のアキュムレータ等の異常が検出される。仕切部材がブラダあるいはベローズである場合には、仕切部材の蓄圧室とは反対側には高圧の気体が封入されるガス室が形成されるのが普通であり、ピストンである場合には、ピストンの他方の側にガス室が形成される場合と、スプリング等の弾性部材が配設される場合とがある。ブラダ式あるいはベローズ式のアキュムレータである場合には、本来、ガス室の圧力は蓄圧室の圧力と同じ高さであるはずであるため、蓄圧室の圧力とガス室の圧力との少なくとも一方に基づけば異常を検出することができる。それに対して、弾性部材の弾性力に依存するピストン式のアキュムレータである場合には、弾性力を検出することは面倒であるため、蓄圧室の圧力に基づいて異常が検出されるようにすることが望ましい。
(3)前記アキュムレータが、前記蓄圧室を、前記高圧源と流体圧作動装置との少なくとも一方に連通させる連通状態と前記高圧源と流体圧作動装置との両方から遮断する遮断状態とをとり得る遮断装置を含む(2)項に記載のアキュムレータ異常検出装置。本項に記載の異常検出装置においては、遮断装置を遮断状態に保つことにより、アキュムレータに高圧の流体を封じ込めることができ、その封じ込め状態におけるアキュレータの異常を検出することができる。また、遮断装置を設ければ、蓄圧室からの高圧の作動液の無駄な流出を阻止することができ、例えば、高圧源におけるエネルギ消費量を少なくすることができる。遮断装置はアキュムレータのハウジングの内部に設けられたものであっても、外部に設けられたものであってもよい。前者は、例えば、仕切部材と蓄圧室の容積の減少限度を規定するストッパとの間に設けられたシール部とすることができる。後者は、例えば、ハウジングと配管との接続部やハウジングから離れた位置に設けることができ、その一具体例は、蓄圧室に接続された液通路に設けられた電磁遮断弁装置である。
(4)前記アキュムレータが、ハウジングと、そのハウジングの内部を仕切り、容積が可変の2つの室を形成する仕切部材と、その仕切部材の一方の側の、前記高圧源から供給された高圧の流体を蓄える蓄圧室と、前記仕切部材の他方の側の、気体を密封状態で収容し、その圧力が前記蓄圧室の圧力に対応する高さとなるガス室と、前記蓄圧室の容積の減少限度を規定するストッパとを含む(1)項ないし(3)項に記載のアキュムレータの異常検出装置。
(5)前記アキュムレータ圧検出装置が、前記蓄圧室の圧力を検出する蓄圧検出部と、前記ガス室の圧力を検出するガス圧検出部とを含み、前記異常検出部が、前記蓄圧検出部による検出圧力と前記ガス圧検出部による検出圧力とに基づいて前記アキュムレータの異常を検出するものである(4) 項に記載のアキュムレータの異常検出装置(請求項2)。本項に記載の異常検出装置においては、アキュムレータにおける蓄圧室の圧力とガス室の圧力とに基づいて異常が検出される。仕切部材は、蓄圧室とガス室とを容積が補完関係になるように、すなわち、蓄圧室の容積が増加するとそれに伴ってガス室の容積が減少する状態で仕切るものである。蓄圧室に収容される流体の容積が大きくなると、ガス室の容積が減少させられて、ガス室の圧力が高くなり、それに伴って蓄圧室の圧力も高くなるのであり、蓄圧室の圧力とガス室の圧力とは同じ高さになる。それに対して、蓄圧室の密封状態が不良である場合には、蓄圧室の容積がストッパによって規定されるまで減少させられた状態において、蓄圧室の圧力がさらに減少するのに対し、ガス室の圧力は減少しないか、減少し難くなるため、蓄圧室の圧力がガス室の圧力に対して小さくなる。蓄圧室の容積がこれ以上減少しない状態、すなわち、蓄圧室とガス室との容積の変化が許容されないか、抑制された状態において、蓄圧室の圧力がガス室の圧力に対して小さくなった場合には、蓄圧室の密封状態が不良であるとすることができる。
(6)前記アキュムレータが、ハウジングと、そのハウジングの内部を仕切り、容積が可変の2つの室を形成する仕切部材と、その仕切部材の一方の側の、前記高圧源から供給された高圧の流体を蓄える蓄圧室と、前記仕切部材の他方の側の、気体を密封状態で収容し、その圧力が前記蓄圧室の圧力に対応する高さとなるガス室とを含む(1)項ないし(3)項に記載のアキュムレータの異常検出装置。
(7)前記アキュムレータ圧検出装置が、前記蓄圧室の圧力を検出する蓄圧検出部と、前記ガス室の圧力を検出するガス圧検出部とを含み、前記異常検出部が、前記蓄圧検出部による検出圧力と前記ガス圧検出部による検出圧力との少なくとも一方に基づいて前記アキュムレータの異常を検出するものである(6) 項に記載のアキュムレータの異常検出装置。アキュムレータの異常は蓄圧室の圧力に基づいて検出したり、ガス室の圧力に基づいて検出したりすることができる。蓄圧室の圧力やガス室の圧力が予め定められた設定圧力以下である場合にはアキュムレータが異常であるとすることができる。
(8)前記アキュムレータが、ハウジングと、そのハウジングの内部を仕切り、容積が可変の2つの室を形成する仕切部材と、その仕切部材の一方の側の、前記高圧源から供給された高圧の流体を蓄える蓄圧室と、その蓄圧室の容積が設定容積まで減少した場合に、蓄圧室を密封するシール部とを含む(1) 項ないし(3) 項のいずれか一つに記載のアキュムレータの異常検出装置。
(9)前記アキュムレータ圧検出装置が、前記蓄圧室の圧力を検出する蓄圧検出部を含み、前記異常検出部が、前記シール部により蓄圧室が密封された状態における前記蓄圧検出部による検出圧力に基づいて前記アキュムレータの異常を検出するものである(8) 項に記載のアキュムレータの異常検出装置(請求項3)。蓄圧室の容積が設定容積以下に減少させられると、シール部において蓄圧室が密封される。この状態においては、蓄圧室の圧力はほぼ一定に保たれるはずであるが、シール不良が生じると蓄圧室の圧力が低下する。そのため、蓄圧室がシール部によって密封された状態において蓄圧室の圧力が設定勾配以上で低下する場合や、設定圧以下に低下した場合にはシール不良であるとすることができる。設定勾配や設定圧は予め実験等に基づいて定められた値としたり、通常であればアキュムレータ圧がこれ以上低くなるはずがない値としたりすることができるが、ガス室の圧力に基づいて決まる値とすることもできる。前述のように、本来蓄圧室の圧力とガス室の圧力とは同じ高さのはずであるため、例えば、ガス室の圧力より設定値以上小さい値を異常検出のための設定圧とするのである。これは、蓄圧室の圧力とガス室の圧力との両方に基づいて異常を検出する場合の一例である。シール部を、仕切部材と蓄圧室の容積の減少限度を規定するストッパとによって構成されるものとすることができる。この場合には、仕切部材とストッパとの少なくとも一方に他方との密着性の良好なシール部材を設けることが望ましい。また、ストッパはハウジングとは別体の部材によって構成することも、ハウジングの内側面によって構成することもできる。
(10)前記アキュムレータが、前記高圧源から供給された高圧の流体を収容する蓄圧部と、その蓄圧部を、少なくとも、前記高圧源と流体圧作動装置との少なくとも一方に連通させる連通状態と、前記高圧源と流体圧作動装置との両方から遮断する遮断状態とに切り換え可能な電磁遮断弁装置とを含み、前記アキュムレータ圧検出装置が、前記蓄圧部に収容された流体の圧力を検出する蓄圧検出部を含み、前記異常検出部が、前記電磁遮断弁装置の遮断状態における前記蓄圧検出部による検出圧力に基づいて前記アキュムレータの異常を検出するものである(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載のアキュムレータの異常検出装置(請求項4)。本項に記載の異常検出装置においては、電磁遮断弁装置によって蓄圧部が高圧源と流体圧作動装置との両方から遮断された状態における蓄圧検出部による検出圧力に基づいて電磁遮断弁装置の異常が検出される。本項に記載の異常検出装置によれば、蓄圧室の容積とは関係なく、電磁遮断弁装置の制御によりアキュムレータを密封状態にすることができるという利点がある。
(11)前記異常検出部が、前記蓄圧検出部による検出圧力が予め定められた設定圧力である状態で、前記電磁遮断弁装置を連通状態から遮断状態に切り換えるアキュムレータ遮断部を含み、そのアキュムレータ遮断部により電磁遮断弁装置が連通状態から遮断状態に切り換えられた後の前記蓄圧検出部による検出圧力の変化状態に基づいて前記アキュムレータの異常を検出するものである(10)項に記載のアキュムレータの異常検出装置(請求項5)。アキュムレータが正常である場合には検出圧力はほぼ設定圧力に保たれるかわずかに変化するかのいずれかである。それに対して、電磁遮断弁装置が異常である場合には検出圧力が大きく変化する。蓄圧検出部による検出圧力の変化状態が設定状態より変化傾向が大きい状態にある場合、例えば、低下状態が設定状態より低下傾向が大きい状態であって、低下勾配が設定勾配より大きい場合や設定時間経過後の低下量が設定量より大きい場合等には異常であるとすることができる。
(12)前記異常検出部が、前記高圧源が実質的に非作動状態にある場合と、前記アキュムレータから前記流体圧作動装置への流体の供給が不要である場合との少なくとも一方の場合に前記アキュムレータの異常を検出するものである(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載のアキュムレータの異常検出装置(請求項6)。アキュムレータの異常は、アキュムレータの密封状態におけるアキュムレータ圧に基づいて検出される。アキュムレータからの流体の漏れの状態を検出する場合には、高圧源が実質的に非作動状態にあることが望ましい。高圧源が作動状態にあり、高圧の流体が出力されると、アキュムレータからの流体の漏れの状態を精度よく検出することが困難である。ここで、実質的に非作動状態にあるとは、作動状態にあっても、出力液圧がアキュムレータ圧に影響が与えない状態も含まれる。例えば、高圧源からの出力液圧がアキュムレータ圧に対して十分に低い場合が該当する。前記高圧源が非作動状態から作動状態に切り換えられた時点においては、高圧の作動液が直ちに供給されるとは限らず、実質的に非作動状態にあるとみなすことができる。アキュムレータの異常の検出は、アキュムレータが流体圧作動装置から遮断された状態で行われる。換言すれば、流体圧作動装置に高圧の流体を供給できない状態なのであり、そのため流体圧作動装置を作動させる必要がない場合に行われることが望ましい。(5)項, (9) 項に記載の異常検出装置においては、前述のように、アキュムレータの異常が蓄圧室の容積が下限値になった状態で検出される。この蓄圧室の容積が下限値にされる場合の一例として、高圧源が長時間非作動状態にされた場合が該当する。この場合には、アキュムレータにおける微量ずつの漏れに起因して蓄圧室の容積が下限値まで減少させられることがある。また、蓄圧室の流体を積極的に消費させることによっても下限値まで減少させることができる。例えば、アキュムレータを高圧源から遮断した状態で、流体圧作動装置または低圧源に流体を流出させることによって蓄圧室に収容された流体を消費させるのである。蓄圧室の流体の消費は、流体圧作動装置に高圧の流体を供給する必要がない場合に行うことが望ましい。なお、流体圧作動装置への流体の供給が不要であると予想される場合に異常が検出されるようにすることができる。
(13)前記高圧源が、(a)動力により駆動する電動モータと、(b)その電動モータの駆動により作動させられ、高圧の作動液を吐出するポンプとを含むポンプ装置を含み、車両に搭載されたブレーキ装置に含まれるものである(1)項ないし(12)項のいずれか1つに記載のアキュムレータの異常検出装置。アキュムレータの異常は電動モータへの動力が設定時間以上供給されない状態、動力が供給されない状態から供給された状態に切り換えられた場合、高圧源のメインスイッチや車両のメインスイッチ(例えば、イグニッションスイッチ)がOFF状態にある場合、OFF状態からON状態へ切り換えられた場合等に検出されるようにすることができる。
(14)前記流体圧作動装置が、車輪とともに回転する回転体に摩擦部材を押し付けることによって車輪の回転を抑制するブレーキを作動させる液圧シリンダを含む(1)項ないし(13)項のいずれか1つに記載のアキュムレータの異常検出装置。本項に記載のブレーキは、アキュムレータから供給された高圧の作動液が液圧シリンダに供給されることによりに作動させられる。ブレーキを作動させる必要性が低い場合には、アキュムレータが液圧シリンダから遮断された状態であっても差し支えない。ブレーキを作動させる必要性が低い場合としては、車両が停止状態にある場合、パーキングブレーキが作動させられる場合、シフト位置がパーキングである場合等が該当する。なお、ポンプ装置と液圧シリンダを含むブレーキとアキュムレータとによってブレーキ装置が構成されると考えることができる。
(15)前記高圧源が、前記アキュムレータ圧検出装置による検出圧力に基づいて制御されるものである(1)項ないし(14)項のいずれか1つに記載のアキュムレータの異常検出装置(請求項7)。例えば、高圧源はアキュムレータ圧が予め定められた設定範囲内にあるように制御されるようにすることができる。アキュムレータ圧検出装置は異常の検出のためだけではなく、高圧源の制御にも利用される。
(16)前記流体圧作動装置とアキュムレータとの間に設けられた流体圧制御装置が、前記アキュムレータ圧検出装置による検出圧力に基づいて制御されるものである(1)項ないし(15)項のいずれか1つに記載のアキュムレータの異常検出装置。流体圧制御装置の制御により流体圧作動装置に供給される流体の圧力が制御される。この場合においてアキュムレータ圧に基づいて流体圧制御装置が制御される。
(17)(1)項ないし(16)項のいずれか1つに記載のアキュムレータの異常検出装置を含み、その異常検出装置によってアキュムレータが異常であるとされた場合には、前記高圧源を、正常である場合とは異なる態様で制御する高圧源制御装置。異なる制御には制御自体が行われないようにすることも含まれる。例えば、高圧源に動力が供給されなくなることにより、高圧源の作動が停止させられるようにするのである。また、アキュムレータ圧が設定範囲内に保たれるように制御される場合においては、その設定範囲の上限値を小さくすることも異なる態様での制御の一例である。その結果、仕切部材に加わる負荷を小さくすることができる。なお、前項に記載の流体圧制御装置の制御も異常時には正常時とは異なる制御が行われるようにすることができる。アキュムレータが異常である場合には流体圧制御装置の制御自体が行われないようにしたり、異なる制御が行われるようにしたりすることができるのである。
(18)ハウジングと、そのハウジングの内部を仕切り、容積が可変の2つの室を形成するベローズと、そのベローズの一方の側の、高圧の流体を蓄える蓄圧室と、前記ベローズの他方の側の、高圧の気体を収容し、その圧力が、前記蓄圧室の圧力に対応する高さとなるガス室と、前記蓄圧室の圧力を検出する蓄圧検出装置と、前記蓄圧室の容積が予め定められた設定容積以下になった場合に蓄圧室を密封する遮断装置とを含むアキュムレータと、前記蓄圧室が遮断装置によって密封された状態における前記蓄圧検出装置による検出圧力に基づいて前記アキュムレータの異常を検出する異常検出部とを含むことを特徴とするアキュムレータの異常検出装置。本項に記載のアキュムレータの異常検出装置においては、遮断装置のシール不良を検出することができる。シール状態が良好である状態では蓄圧室の圧力とガス室の圧力とは同じであるため、ベローズに加わる力がそれほど大きくなることはない。それに対して、遮断不良が生じると、蓄圧室の圧力がガス室の圧力に対して大きく低下し、これらの圧力差によりベローズに大きな力が加わり、ベローズが破損するおそれがある。それに対して、遮断装置におけるシール不良を確実に検出できれば、ベローズの破損を未然に防止することも可能である。本項には、(1)項ないし(13)項のいずれかの特徴を採用することができる。例えば、遮断装置は前述のようにシール部としたり、電磁遮断弁装置としたりすることができる。
(19)ハウジングと、そのハウジングの内部を仕切り、容積が可変の2つの室を形成するベローズと、そのベローズの一方の側の、高圧の流体を蓄える蓄圧室と、前記ベローズの他方の側の、高圧の気体を収容し、その圧力が、前記蓄圧室の圧力に対応する高さとなるガス室と、前記蓄圧室の圧力を検出する蓄圧検出装置とを含むことを特徴とするアキュムレータ。本項に記載のアキュムレータにおいては蓄圧検出装置によって蓄圧室の圧力が直接検出される。そのため、例えば、蓄圧室の圧力に基づいてアキュムレータの異常を精度よく検出することができる。また、蓄圧室の圧力に基づけば、アキュムレータに蓄えられる流体の圧力を正確に検出することができる。本項に記載のアキュムレータは(1)項ないし(14)項のいずれかに記載のアキュムレータの特徴を採用することができる。例えば、シール部を含むものとしたり電磁遮断弁装置を含むものとしたりすることができる。シール部と電磁遮断弁装置との両方を含むものとすれば、蓄圧室からの高圧の流体の漏れを良好に回避することができる。また、蓄圧検出装置は、蓄圧室が遮断装置によって遮断された状態で、蓄圧室の圧力を直接検出可能なものとされる。
(20)前記蓄圧検出装置が、前記ハウジングに設けられたものである(19)項に記載のアキュムレータ(請求項8)。蓄圧検出装置がハウジングに設けられれば、アキュムレータ圧検出装置の流体圧回路への取り付けが容易になる。また、接続部なしで蓄圧検出装置を設けることができるため、蓄圧室の圧力を精度よく検出することができ、検出圧力の信頼性を向上させることができる。ハウジングに設ける場合には、例えば、ハウジングに嵌合部を形成し、その嵌合部に蓄圧検出装置を嵌め込むことができる。また、螺合によって設けることもできる。なお、ガス圧検出装置も同様にハウジングに設けることができる。
【0004】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態であるアキュムレータの異常検出装置を含む車両用の液圧ブレーキ装置について図面に基づいて詳細に説明する。この異常検出装置によって異常が検出される対象のアキュムレータは本発明の一実施形態のものである。図2に示すように、液圧ブレーキ装置は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル10と、動力式液圧源12と、ハイドロブースタ付きマスタシリンダ14と、前輪16に設けられたブレーキ18のブレーキシリンダ20と、後輪24に設けられたブレーキ26のブレーキシリンダ28と、各ブレーキシリンダ20,28に対応して設けられたリニアバルブ装置30とを含む。
【0005】ハイドロブースタ付きマスタシリンダ14は、液圧ブースタ40と、マスタシリンダ42とを含む。液圧ブースタ40には動力式液圧源12が接続されており、動力式液圧源12の液圧がブレーキペダル10に加えられた操作力に応じた大きさに制御される。マスタシリンダ42は、ブレーキペダル10に連携させられた加圧ピストンを含み、加圧ピストンの前方の加圧室には、ブレーキペダル10に加えられた操作力が液圧ブースタ40によって倍力された大きさの液圧が発生させられる。液圧ブースタ40には後輪24のブレーキシリンダ28が液通路50を介して接続され、マスタシリンダ42には前輪16のブレーキシリンダ20が液通路52を介して接続されている。
【0006】これら液通路50,52にはマスタ遮断弁54,56がそれぞれ設けられ、2つのブレーキシリンダ20を連結する連結通路、2つのブレーキシリンダ28を連結する連結通路にはそれぞれ連通弁58、60が設けられている。また、液通路52のマスタ遮断弁56より上流側の部分にはストロークシミュレータ62がシミュレータ用開閉弁64を介して接続されている。これらストロークシミュレータ62,シミュレータ用開閉弁64等によってストロークシミュレータ装置66が構成される。
【0007】動力式液圧源12は、ポンプ70およびポンプ70を駆動するポンプモータ72を含む高圧源としてのポンプ装置73、アキュムレータ74等を含む。ポンプ70はマスタリザーバ78の液圧を加圧するものであり、ポンプ70から吐出された高圧の作動液がアキュムレータ74に蓄えられる。ポンプ装置73の出力側と低圧側との間にはリリーフ弁79が設けられ、ポンプ装置73の出力液圧が過大になることが防止される。なお、ポンプ70は、本実施形態においてはプランジャポンプであるが、ギヤポンプとすることもできる。
【0008】アキュムレータ74は、図1に示すようにべローズ式のものであり、ハウジング80と、ハウジング80の内側の空間を容積可変に仕切るベローズ82とを含む。ベローズ82は、伸縮部の一端部においてハウジング80に気密に設けられたものであり、伸縮部の他端部に設けられた端板83を含む。ベローズ82は、伸縮部によって構成され、ベローズと端板とによって仕切部材が構成されると考えることもできるが、本実施形態においては、端板83と伸縮部とによって仕切部材(ベローズ82)が構成されると考える。ベローズ82によって仕切られた一方の側(本実施形態においては内側)の室はポンプ70から吐出された高圧の作動液が加圧下で蓄えられる蓄圧室84とされ、他方の側(本実施形態においては外側)の室は高圧ガスが収容されたガス室86とされる。ハウジング80の蓄圧室84に対応する部分には接続部88が形成され液通路90が接続される。液通路90は、ポンプ装置73とブレーキシリンダ20,28とを接続する液通路91に接続された通路であり、液通路90,91を介して、アキュムレータ74にはポンプ装置73とブレーキシリンダ20,28とが連通させられる。
【0009】ハウジング80には液圧センサ92が設けられている。液圧センサ92によって検出される液圧は蓄圧室84の液圧であり、蓄圧室84の液圧がアキュムレータ圧とされる。本実施形態においては液圧センサ92がアキュムレータ圧検出装置の一態様であり、蓄圧検出部の一態様である。図3に示すように、ハウジング80の突部93a に嵌合穴93bが形成され、嵌合穴93bに圧力センサ92が嵌め込まれる。符号93c,93dはシール部材であり、これらシール部材93c,93dによって、センサ嵌合部からの作動液の漏れが防止される。ポンプモータ72は、液圧センサ92によって検出されたアキュムレータ圧が予め定められた設定範囲内に保たれるように作動状態が制御されるのであり、換言すれば、蓄圧室84の液圧は予め定められた設定範囲内の大きさに保たれる。
【0010】ベローズ82は、ガス室86の圧力と蓄圧室84の液圧とが等しくなる状態で伸縮させられる。蓄圧室84の容積の増加に伴ってガス室86の容積が減少させられるのであり、それによって、ガス室86の圧力は蓄圧室84の圧力と同じ高さに保たれる。ベローズ82の端板83の外周縁にはガイド部材94が設けられている。ガイド部材94によってベローズ82がほぼ軸線に沿って伸縮可能とされている。端板83の平板面の内側にはゴム製のシール部材96が設けられるのに対してハウジング80の接続部88の近傍には開口98を備えたストッパ99が設けられている。シール部材96がストッパ99に当接することにより、蓄圧室84の容積の減少限度が規定される。蓄圧室84の容積が下限値まで減少させられた状態で、シール部材96によって開口98が塞がれる。このように、本実施形態においては、シール部材96とストッパ99の開口98の周辺部とによって遮断装置としてのシール部100が構成される。このシール部100のシール状態においては、蓄圧室84がポンプ装置12からもブレーキシリンダ20、28からも遮断され(液通路90から遮断され)、蓄圧室84が密封される。また、ベローズ82は金属製のものであり、ガスバリア性に優れたものである。そのため、ベローズ82を経てガス室86の気体が蓄圧室84側に透過することが回避される。
【0011】リニアバルブ装置30は、前記液通路91のアキュムレータ74とブレーキシリンダとの間の部分に設けられた増圧弁としての増圧用リニアバルブ102と、ブレーキシリンダ20,28とマスタリザーバ78とを接続する液通路104に設けられた減圧弁としての減圧用リニアバルブ106とを含む。
【0012】増圧用リニアバルブ102,減圧用リニアバルブ106は、図4に示すように、いずれも常閉弁であり、コイル108を含むソレノイドと、スプリング110と、弁子112および弁座114とを含むシーティング弁とを含む。コイル108に電流が供給されない場合には、スプリング110の付勢力が弁子112を弁座114に着座させる方向に作用するとともに、当該リニアバルブの前後の差圧に応じた差圧作用力が弁子112を弁座114から離間させる方向に作用する。差圧作用力がスプリング110の付勢力より大きい間は、弁子112が弁座114から離間させられる。
【0013】コイル108に電流が供給されると、弁子112を弁座114から離間させる方向の電磁駆動力が作用する。シーティング弁には、電磁駆動力と、差圧作用力と、スプリング110の付勢力とが作用し、弁子112の弁座114に対する相対位置は、これら力の大きさの関係によって決まる。電磁駆動力は、コイル108への供給電流の増加に伴って増加させられる。コイル108への供給電流の制御により、弁子112の弁座114に対する相対位置が制御され、ブレーキシリンダの液圧を制御することができる。
【0014】増圧用リニアバルブ102において作用する差圧作用力は、動力式液圧源12の出力液圧とブレーキ液圧との差に応じた力であり、減圧用リニアバルブ106において作用する差圧作用力はマスタリザーバ78の液圧とブレーキ液圧との差に応じた力である。動力式液圧源12の出力液圧は本実施形態においては、液圧センサ92によって検出されるアキュムレータ圧なのであり、液圧センサ92による検出液圧に基づいて増圧用リニアバルブ102が制御されることになる。
【0015】また、本ブレーキ装置にはブレーキペダル10のストロークを検出するストロークセンサ130、液通路50,52のマスタ遮断弁54,56の上流側の液圧を検出するマスタ圧センサ132,134、各ブレーキシリンダ20,28の液圧を検出するブレーキ液圧センサ136等が設けられ、アキュムレータ圧センサ92、イグニッションスイッチ138、車速センサ140,パーキングスイッチ142等とともにコンピュータを主体とするブレーキ液圧制御装置144に接続される。ブレーキ液圧制御装置144は、CPU145,ROM146,RAM147,入・出力部148を含むものであり、入・出力部にはリニアバルブ装置30,マスタ遮断弁54,56、連通弁58,60、シミュレータ用開閉弁64等が図示しない駆動回路を介して接続されるとともに、ポンプモータ72が駆動回路を介して接続されている。ROM146には、図5のフローチャートで表されるアキュムレータ異常検出プログラム、図6,7のフローチャートで表されるブレーキ装置制御プログラム等が格納されている。
【0016】以上のように構成されたブレーキ装置における作動について説明する。本実施形態において、アキュムレータ74が正常である場合には、前述のように、ポンプモータ72が、液圧センサ92によって検出された蓄圧室84の液圧が予め定められた設定範囲内にあるように制御される。また、マスタ遮断弁56,54が閉状態にされ、ブレーキシリンダ20,28がハイドロブースタ付きマスタシリンダ14から遮断されて動力式液圧源12に連通させられる。ブレーキ18,26は動力式液圧源12の液圧により作動させられるのであり、本実施形態においてはブレーキシリンダ20,28が流体圧作動装置の一態様である。この状態における、リニアバルブ装置30のコイル108への供給電流の制御によりブレーキシリンダの液圧(以下、ブレーキ液圧と略称する)が制御される。ブレーキ液圧に対応する制動トルクが運転者の意図する要求制動トルクと同じになるように制御されるのである。運転者の意図する要求制動トルクは、ストロークセンサ130による検出ストロークと、マスタ圧センサ132,134による検出液圧とに基づいて取得される。要求制動トルクは、操作初期においては主としてストロークに基づいて取得され、それ以外の場合には、主としてマスタ圧に基づいて取得される。操作初期においてストロークに基づいて取得されるようにすれば、ブレーキ操作に伴うマスタシリンダ42の増圧遅れに伴う影響を小さくすることができる。この場合においては、連通弁58、60が閉状態にされ、シミュレータ用開閉弁64が開状態にされる。
【0017】アキュムレータ74が異常である場合には、ポンプモータ72の作動が停止させられる。また、マスタ遮断弁56,54が開状態に、連通弁58,60が開状態にされるとともにリニアバルブ装置30への供給電流が0にされる。ブレーキシリンダ20,28が動力式液圧源12から遮断されてハイドロブースタ付きマスタシリンダ14に連通させられる。ブレーキペダル10の操作に応じてマスタシリンダ42に液圧が発生させられ、それによって、ブレーキ18,26が作動させられる。この状態においてはシミュレータ用開閉弁64が閉状態にされる。ストロークシミュレータ62がマスタシリンダ42から遮断されて作動液の無駄な消費が回避される。ハイドロブースタ付きマスタシリンダ14においては、前述のように、動力式液圧源12の作動液を利用して液圧ブースタ40が作動させられる。そのため、動力式液圧源12から高圧の作動液が供給されない場合には、液圧ブースタ40を作動させることができなくなる。この場合には、ハイドロブースタ付きマスタシリンダ14は、単なるマスタシリンダとして作動する。加圧ピストンは運転者によってブレーキペダル10に加えられたブレーキ操作力によって前進させられ、加圧室の液圧が増加させられる。前輪側のブレーキシリンダ20に高圧の作動液が供給され、ブレーキ18が作動させられる。
【0018】アキュムレータ74の異常、本実施形態においては、シール部100のシール不良やアキュムレータ自体、継ぎ手等における漏れ等が異常検出プログラムの実行に従って検出される。異常検出プログラムは予め定められた設定時間ごとに実行される。イグニッションスイッチ138がON状態にある場合には、前述のように、蓄圧室84の液圧が予め定められた設定範囲内にあるようにポンプモータ72が制御されるため、ベローズ82がシール部材96によって開口98が閉塞されるまで収縮させられることはないはずである。それに対して、イグニッションスイッチ138がOFF状態にある間は、ポンプモータ72が非作動状態に保たれるのであるが、非作動状態が長時間継続する場合には、作動液の微量ずつの漏れにより、ベローズ82がシール部材96がストッパ99に当接するまで収縮させられる(この状態を0ダウン状態と称することができる)。また、車両によっては、イグニッションスイッチ138がOFF状態に切り換えられた場合に蓄圧室84がマスタリザーバ78等の低圧源に連通させられて、0ダウン状態にされる場合もある。0ダウン状態においては、蓄圧室84がシール部100によって密封される。蓄圧室84がポンプ装置73からもブレーキシリンダ20,28からも遮断されるのであり、シール部100等が正常である場合には、蓄圧室84の液圧が設定圧より小さくなることはないはずである。それに対して、シール部材96の劣化等に起因してシール不良が生じたり、アキュムレータ自体や継ぎ手等から漏れが生じる場合には、設定圧より小さくなる。そこで、本実施形態においては、イグニッションスイッチ138がOFF状態からON状態に切り換えられた場合、すなわち、0ダウン状態にあり、さらに、蓄圧室84の液圧が設定圧より小さくなったと推定し得る場合に、液圧センサ92によって蓄圧室84の液圧を検出し、その検出された蓄圧室84の液圧が設定圧より小さい場合にアキュムレータが異常であるとするのである。
【0019】ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、イグニッションスイッチ138がOFF状態からON状態に切り換わったか否かが判定される。切り換わった場合には、S2において、液圧センサ92によって検出された蓄圧室84の液圧が設定圧より小さいか否かが判定される。設定圧以上である場合には、アキュムレータ74は正常であるとされ、設定圧より小さい場合には異常であるとされる。正常である場合にはS3において異常フラグがリセットされ、異常である場合にはS4において異常フラグがセットされる。この場合には、ポンプ装置73は作動状態にあるが、作動開始直後であるため、アキュムレータ圧に影響を及ぼすほどではなく、実質的に非作動状態にあるとみなし得る状態である。
【0020】なお、設定圧は、アキュムレータ74が異常であると見なし得る予め定められた値とすることができるが、ガス室86の圧力に基づいて決定された値とすることもできる。蓄圧室84の液圧は本来ガス室86の圧力と同じ高さになるはずである。そのため、ガス室86の圧力より設定値以上小さい値を設定圧とし、蓄圧室84の液圧が設定圧より小さい場合には異常であるとするのである。この場合には、図8に示すように、ガス室86の圧力を直接検出する圧力センサ150も設けられるが、圧力センサ150もアキュムレータ76のハウジング80に設けることが望ましい。
【0021】ポンプモータ72は図6のフローチャートで表されるポンプモータ制御プログラムの実行に従って制御される。S11において異常フラグがセット状態にあるか否かが判定される。リセット状態にある場合にはS12において通常制御が行われ、セット状態にある場合にはS13においてポンプモータ72が停止させられる。通常制御においては、前述のように、液圧センサ92による検出液圧が予め定められた設定範囲内にあるように制御されるのである。
【0022】また、リニアバルブ装置30,各マスタ遮断弁54,56等は図7のフローチャートで表されるブレーキ液圧制御プログラムの実行に従って制御される。S21においてブレーキペダル10が操作状態にあるか否かが判定され、S22において、異常フラグがセット状態にあるか否かが判定される。異常フラグがリセット状態にあり、アキュムレータ74が正常である場合には正常時制御が行われる。前述のように、ブレーキ液圧が動力式液圧源12の液圧を利用してリニアバルブ装置30の制御により制御される。S23,24において、マスタ遮断弁54,56が遮断状態にされるとともに、リニアバルブ装置30への供給電流が、実際のブレーキ液圧に対応する制動トルクが運転者の意図する要求制動トルクに対応する大きさとなるように制御される。異常である場合にはブレーキシリンダ20に、ハイドロブースタ付きマスタシリンダ14の作動液が供給される。S25,26において、マスタ遮断弁52,54が連通状態にされるとともに、リニアバルブ装置30への供給電流が0にされる。
【0023】以上のように、本実施形態においては、イグニッションスイッチ138がOFF状態からON状態に切り換えられた場合、すなわち、蓄圧室84の液圧が下がって、シール部100によって蓄圧室84が密封された状態(密封状態にあるアキュムレータ74)における蓄圧室84の液圧に基づいて、異常検出が行われるため、シール部100のシール不良やアキュムレータ自体の漏れ等を精度よく検出することができる。また、蓄圧室84の液圧を検出する液圧センサ92がハウジング80に支持された状態で設けられているため、液圧回路にアキュムレータ74とは別に液圧センサを設ける必要がなくなり、その分、組み付けが容易になる。さらに、蓄圧室84の液圧を精度よく検出することができ、検出圧の信頼性を向上させることができる。また、液圧センサ92による検出液圧に基づいて異常が検出されるとともに、ポンプモータ72の作動状態の制御や増圧用リニアバルブ102の制御が行われる。異常検出用と制御用との両方に利用されるのであり、異常検出専用、制御専用の液圧センサを設ける場合に比較してコストダウンを図ることができる。また、アキュムレータ74の異常時には、ポンプ装置73が非作動状態にされるため、ベローズ82に加わる応力を小さくすることができる。
【0024】なお、異常検出は、イグニッションスイッチ138がOFF状態からON状態に切り換わった場合に限らず、他の場合に行われるようにすることができる。例えば、イグニッションスイッチ138のOFF状態において検出することができる。イグニッションスイッチ138がON状態からOFF状態に切り換えられた後の予め定められた設定時間経過後に検出されるようにするのである。また、イグニッションスイッチ138の状態とは関係なく、ブレーキ18,26を作動させる必要がない場合に行われるようにすることができる。ブレーキ18,26を作動させる必要がない場合に、異常検出のために0ダウン状態を設定するのであり、この場合には、0ダウン状態にしても差し支えない。ブレーキ18,26を作動させる必要がない場合としては、車速が0の場合、パーキングブレーキが作動状態にある場合等が該当する。0ダウン状態は、例えば、ポンプ72を停止させた後に、アキュムレータ74をブレーキシリンダ20,28やマスタリザーバ78に連通させて蓄圧室84に蓄えられた作動液を消費させることによって設定することができる。そして、0ダウン状態設定後の予め定められた設定時間経過後の蓄圧室84の液圧が設定圧より小さい場合にはシール不良であるとしたり、液圧の低下勾配が設定勾配より大きい場合にシール不良であるとすることができる。
【0025】また、アキュムレータは上記実施形態における構造のものに限らない。例えば、図9に示す構造のものとすることができる。本実施形態におけるアキュムレータ158においては、ベローズ160の外側が蓄圧室162とされ、内側がガス室164とされる。この場合にはベローズ160の端板165の平板面の外側にシール部材166が設けられる。蓄圧室162の容積の減少に伴ってベローズ160が伸長させられ、シール部材166がハウジング168に当接させられる。この状態で、接続部169の開口が閉塞させられ、蓄圧室162が密封される。本実施形態においては、ハウジング168の内側面がストッパとされるのであり、シール部材166とハウジング168の内側面の接続部169の開口の周辺部とによってシール部170が構成される。また、蓄圧室162の液圧を検出する液圧センサ172がハウジング168に設けられる。
【0026】また、ハウジングの内部に遮断装置(シール部)を設けることは不可欠ではない。例えば、図10に示すアキュムレータ180においては、接続部169に接続された液通路90に電磁遮断弁184が設けられている。電磁遮断弁184を遮断状態にすれば、蓄圧室162をポンプ装置73とブレーキシリンダ20,28とから遮断することができる。
【0027】本実施形態においては、蓄圧室162の液圧が十分に高い状態で、アキュムレータ180の異常を検出することができる。蓄圧室162の液圧が予め定められた設定値にある状態で電磁遮断弁184を遮断状態にするとともにポンプ装置73を非作動状態にし、その後の液圧の低下状態に基づいて電磁遮断弁184における遮断状態不良等を検出する。本実施形態においても、上記実施形態における場合と同様に、異常の検出は、ブレーキ液圧を増圧させる必要がないとされる場合に行われるようにすることが望ましい。
【0028】遮断状態にされた後の蓄圧室162の液圧は、アキュムレータ180の電磁遮断弁184が正常である場合にはほぼ一定に保たれるが、遮断不良が生じた場合等には低下させられる。したがって、図11に示すように、電磁遮断弁184が遮断状態に切り換えられてから設定時間経過後の蓄圧室84の液圧が設定値以下である場合、あるいは、減少勾配が設定勾配以上である場合には異常であるとすることができる。また、図12に示すように、アキュムレータ圧が低い場合にはアキュムレータ圧を設定圧まで昇圧させた後に、電磁遮断弁184を遮断状態にすることができる。電磁遮断弁184を遮断状態に切り換える際の設定圧は、蓄圧室162の液圧の低下状態を評価し得る大きさとすることが望ましい。設定圧は予め定められた値に設定する必要は必ずしもなく、異常検出時の液圧とすることもできる。その時点の液圧からの変化状態に基づいて異常を検出するのである。なお、本実施形態においては、液圧センサを、液通路90の電磁遮断弁184より蓄圧室162側に設けてもよい。
【0029】また、アキュムレータはシール部と遮断弁との両方を含むものとすることができる。シール部と遮断弁との両方を含むものとすれば、イグニッションスイッチ138がOFF状態にある場合における作動液の漏れを抑制することができ、エネルギ効率の向上を図ることができる。
【0030】さらに、ガス室164の圧力と蓄圧室162の液圧との両方を検出する場合には、圧力センサをそれぞれに設ける必要は必ずしもない。図13に示すように、蓄圧室162とガス室164との間に切換弁190を設け、その切換弁190の状態に応じた圧力が圧力センサ192によって検出されるようにすることができる。切換弁190は、圧力センサ192をガス室164から遮断して蓄圧室162に連通させる蓄圧検出状態と、ガス室164に連通させて蓄圧室162から遮断するガス圧検出状態と、ガス室164からも蓄圧室162からも遮断する非検出状態とに切換可能なものである。蓄圧検出状態においては蓄圧室84の液圧が検出され、ガス圧検出状態においてはガス室164の圧力に対応する液圧が検出される。また、切換弁190が非検出状態に切換可能なものであるため、ガス室164の圧力と蓄圧室162の圧力とを別々に精度よく検出することができる。また、ガス室164と切換弁190との間に分離装置194を設けることが望ましい。分離装置194を設ければ、気体と液体とが混ざることが回避される。
【0031】また、上記実施形態においては、アキュムレータの異常が検出された場合にはポンプモータが停止させられるようにされていたが、アキュムレータ圧の設定範囲の上限値を低くして制御が行われるようにすることができる。ベローズの変形の程度が小さくなるため、ベローズに加わる負荷を小さくすることができる。
【0032】さらに、本異常検出装置は、ベローズ式のアキュムレータに限らず、ブラダ式、ピストン式のアキュムレータの異常も検出することができる。また、液体でなく気体を蓄えるアキュムレータの異常を検出することもできる。その他、いちいち例示することはしないが、[発明が解決しようとする課題、課題解決手段および効果]の項に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるアキュムレータ異常検出装置によって異常が検出されるアキュムレータを概念的に示す断面図である。このアキュムレータは本発明の一実施形態のものである。
【図2】上記アキュムレータ異常検出装置を含むブレーキ装置の回路図である。
【図3】上記アキュムレータのハウジングの一部を示す断面図である。
【図4】上記ブレーキ装置に含まれるリニアバルブ装置を概念的に示す断面図である。
【図5】上記アキュムレータ異常検出装置を含むブレーキ装置のブレーキ液圧制御装置のROMに格納されたアキュムレータ異常検出プログラムを表すフローチャートである。
【図6】上記ブレーキ制御装置のROMに格納されたポンプモータ制御プログラムを表すフローチャートである。
【図7】上記ブレーキ制御装置のROMに格納されたリニアバルブ装置制御プログラムを表すフローチャートである。
【図8】本発明の別の一実施形態であるアキュムレータ異常検出装置によって異常が検出されるアキュムレータを概念的に示す断面図である。このアキュムレータは本発明の一実施形態のものである。
【図9】本発明のさらに別の一実施形態であるアキュムレータ異常検出装置によって異常が検出されるアキュムレータを概念的に示す断面図である。このアキュムレータは本発明の一実施形態のものである。
【図10】本発明の別の一実施形態であるアキュムレータ異常検出装置によって異常が検出されるアキュムレータを概念的に示す断面図である。このアキュムレータは本発明の一実施形態のものである。
【図11】上記アキュムレータの蓄圧室の液圧の変化状態を示す図である。
【図12】上記アキュムレータの蓄圧室の液圧の別の変化状態を示す図である。
【図13】本発明の別の一実施形態であるアキュムレータ異常検出装置によって異常が検出されるアキュムレータの一例である。このアキュムレータは本発明の一実施形態のものである。
【符号の説明】
12 動力式液圧源 20,28 ブレーキシリンダ
73 ポンプ装置 74,158,180 アキュムレータ
80,168 ハウジング 82,160 ベローズ
84,162 蓄圧室 86,164 ガス室
92,172 液圧センサ 96,166 シール部材 99 ストッパ
100,170 シール部 138 イグニッションスイッチ
150 圧力センサ 184 電磁遮断弁 192 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】高圧の流体を発生させる高圧源から供給される流体を加圧下に蓄積し、流体圧により作動させられる流体圧作動装置に供給するアキュムレータの異常を検出する異常検出装置であって、前記アキュムレータが前記高圧源と流体圧作動装置との両方から遮断された遮断状態において、アキュムレータの圧力を検出可能なアキュムレータ圧検出装置と、そのアキュムレータ圧検出装置による前記遮断状態における検出圧力に基づいて、アキュムレータの異常を検出する異常検出部とを含むことを特徴とするアキュムレータの異常検出装置。
【請求項2】前記アキュムレータが、ハウジングと、そのハウジングの内部を仕切り、容積が可変の2つの室を形成する仕切部材と、その仕切部材の一方の側の、前記高圧源から供給された高圧の流体を蓄える蓄圧室と、前記仕切部材の他方の側の、気体を密封状態で収容し、その圧力が前記蓄圧室の圧力に対応する高さとなるガス室と、前記蓄圧室の容積の減少限度を規定するストッパとを含み、前記アキュムレータ圧検出装置が、前記蓄圧室の圧力を検出する蓄圧検出部と、前記ガス室の圧力を検出するガス圧検出部とを含み、前記異常検出部が、前記蓄圧検出部による検出圧力と前記ガス圧検出部による検出圧力とに基づいて前記アキュムレータの異常を検出するものである請求項1に記載のアキュムレータの異常検出装置。
【請求項3】前記アキュムレータが、ハウジングと、そのハウジングの内部を仕切り、容積が可変の2つの室を形成する仕切部材と、その仕切部材の一方の側の、前記高圧源から供給された高圧の流体を蓄える蓄圧室と、その蓄圧室の容積が設定容積以下になった場合に、蓄圧室を密封するシール部とを含み、前記アキュムレータ圧検出装置が、前記蓄圧室の圧力を検出する蓄圧検出部を含み、前記異常検出部が、前記シール部により蓄圧室が密封された状態における前記蓄圧検出部による検出圧力に基づいて前記アキュムレータの異常を検出するものである請求項1に記載のアキュムレータの異常検出装置。
【請求項4】前記アキュムレータが、前記高圧源から供給された高圧の流体を収容する蓄圧部と、その蓄圧部を、少なくとも、前記高圧源と流体圧作動装置との少なくとも一方に連通させる連通状態と、前記高圧源と流体圧作動装置との両方から遮断する遮断状態とに切り換え可能な電磁遮断弁装置とを含み、前記アキュムレータ圧検出装置が、前記蓄圧部に収容された流体の圧力を検出する蓄圧検出部を含み、前記異常検出部が、前記電磁遮断弁装置の遮断状態における前記蓄圧検出部による検出圧力に基づいて前記アキュムレータの異常を検出するものである請求項1に記載のアキュムレータの異常検出装置。
【請求項5】前記異常検出部が、前記蓄圧検出部による検出圧力が予め定められた設定圧力である状態で、前記電磁遮断弁装置を連通状態から遮断状態に切り換えるアキュムレータ遮断部を含み、そのアキュムレータ遮断部により電磁遮断弁装置が連通状態から遮断状態に切り換えられた後の前記蓄圧検出部による検出圧力の変化状態に基づいて前記アキュムレータの異常を検出するものである請求項4に記載のアキュムレータの異常検出装置。
【請求項6】前記異常検出部が、前記高圧源が実質的に非作動状態にある場合と、前記アキュムレータから前記流体圧作動装置への流体の供給が不要である場合との少なくとも一方の場合に前記アキュムレータの異常を検出するものである請求項1ないし4のいずれか1つに記載のアキュムレータの異常検出装置。
【請求項7】前記高圧源が、前記アキュムレータ圧検出装置による検出圧力に基づいて制御されるものである請求項1ないし6のいずれか1つに記載のアキュムレータの異常検出装置。
【請求項8】ハウジングと、そのハウジングの内部を仕切り、容積が可変の2つの室を形成するベローズと、そのベローズの一方の側の、高圧の流体を蓄える蓄圧室と、前記ベローズの他方の側の、高圧の気体を収容し、その圧力が、前記蓄圧室の圧力に対応する高さとなるガス室と、前記ハウジングに設けられ、蓄圧室の圧力を検出する蓄圧検出装置とを含むことを特徴とするアキュムレータ。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図10】
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【図13】
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【公開番号】特開2002−98101(P2002−98101A)
【公開日】平成14年4月5日(2002.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−290644(P2000−290644)
【出願日】平成12年9月25日(2000.9.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】