説明

アクリルポリマー、その合成方法、及びこれを用いた重合性樹脂組成物、ゲル状高分子電解質

【課題】特殊な製造工程などを必要としなくても、高イオン伝導率を実現することにより、大電流での放電時にも電池性能を充分なレベルに保持し、長寿命で安定した電池性能を得ることができるアクリルポリマー、その合成方法、及びこれを用いた重合性樹脂組成物、ゲル状高分子電解質を提供する。
【解決手段】特定の化学式で示される(メタ)アクリレートに由来する構造単位1〜95モル%と、特定の化学式で示されるヒドロキシル基を有する構造単位1〜60モル%と、特定の化学式で示される重合性官能基を有する構造単位1〜60モル%を有するアクリルポリマーであって、質量平均分子量が1,000〜100,000であるアクリルポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクリルポリマー、その合成方法、及びこれを用いた重合性樹脂組成物、ゲル状高分子電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
電子技術の進歩により、電子機器の性能が向上し、小型、ポータブル化が進み、電源として高エネルギー密度の電池が望まれている。従来の二次電池として、鉛電池、ニッケル−カドミウム電池が挙げられるが、エネルギー密度を得るという点では未だ不十分である。そこで、これらの電池に替わるものとして、高エネルギー密度のリチウム二次電池が開発され、急速に普及している。
【0003】
リチウム二次電池は、一般に3V以上の高電圧が得られ、且つ、軽量・高容量であるため、様々な用途に応用されている。リチウム二次電池用の電解質としては、一般的にリチウム塩をカーボネート系の非プロトン性溶媒に溶解した非水電解液が用いられている。しかしながら、非水電解液を使用したリチウム電池は、電池温度が高くなった場合、電池内部で非プロトン性溶媒の揮発が生じるため、電池の膨れが生じたり、リーク弁からの揮発ガスの拡散や漏液が生じたりするという問題点を有している。また、非水電解液を使用したリチウム二次電池でしばしば問題となるのが、負極から正極方向に生長するリチウムのデンドライト状析出による内部ショートであり、非水電解液では特にこのデンドライト析出によるショート事故の制御が特に困難である。非水電解液自身は流動体であり、本質的にデンドライトの生長を抑制することができない。
【0004】
このような問題点を解決するため、高分子電解質を利用する電池系が考案され、現在、研究開発が盛んに行われている。この高分子電解質は、ポリマーにアルカリ金属塩を均一に固溶させたイオン伝導体であり、溶媒を使用していないので、揮発ガスの拡散や漏液の心配がなく、また電解質全面に電流が均一に流れるため、リチウムデンドライトの発生・生長を抑制することが可能であると言われている。
【0005】
近年、ポリエチレンオキシド成分を有する高分子電解質の研究が盛んに行われている。例えば、特開昭61−83249号公報(特許文献1)に記載されているようなエチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合物の両末端を架橋させる方法や、特開平2−79375号公報(特許文献2)に記載されているようなポリエチレングリコール成分を有するモノマーとウレタン基を有するモノマーを、重合して高分子量化あるいは三次元架橋化させることにより、機械強度を向上させ、反面、結晶化に伴うイオン伝導率の低下をも防止し、実用性のあるポリマーを得ようとする方法が知られている。
【0006】
しかしながら、このような高分子電解質は、イオン伝導率が室温で10-5S/cm程度であり、非水電解液と比較して2桁程度低いという問題点がある。そのため、上述したような高分子電解質電池を使用した電池は、電池の内部抵抗値が大きくなり、単位時間当たりに取り出せる電流出力が非水電解質二次電池と比べて格段に劣っている。その結果、高分子電解質電池は、使用用途が限定されてしまう等の不都合があった。このことから、産業上、実用的な値とされる10-3S/cm以上のイオン伝導率を有する高分子電解質が求められ、盛んに検討されている。
【0007】
高分子電解質のイオン伝導率を解決する方法の一つとして、ポリマー中に非水電解液を保持させたゲル状の高分子電解質がある。例えば特表平8−507407号公報(特許文献3)に記載されているようなポリフッ化ビニリデンを非水電解液で膨潤させたゲル電解質は、室温で10-3S/cm以上のイオン伝導率を示し、良好な電池性能をしめす。しかし、ポリフッ化ビニリデンは、非水電解液の保持性が低く、非水電解液で問題であった揮発性ガスの拡散や漏液を改善できない。一方、非水電解液の保持性を高めるために、非水電解液と高い親和性を有するポリエチレンオキシド系のポリマーを用いたゲル状高分子電解質が広く検討されており、現在までにこのゲル状高分子電解質を用いたリチウム電池は、ほぼ実用化レベルに至っている(非特許文献1)。しかし、ポリエチレンオキシド系ポリマーを用いたリチウム電池は、小電流での放電時には充分な電池性能を示すが、大電流での放電時には、電極/ゲル状高分子電解質間の界面抵抗が大きく、電池性能を充分なレベルに保持することが困難であるという問題点があった。
【0008】
また、米国特許第5603982号明細書及び第5609974号明細書に記載されているような三次元架橋型のアクリルポリマーを用いたゲル電解質は、数種類のアクリルモノマーと架橋剤である2官能アクリルモノマーを非水電解液に溶かし、熱あるいは光により架橋反応させて10-3S/cm以上のイオン伝導率を有するゲル状高分子電解質を調製している(例えば、特許文献4、5参照;米国特許第5603982号明細書及び米国特許第5609974号明細書)。この方法は、アクリルモノマーを非水電解液に溶解させても、溶液粘度はそれほど大きくならず、電極への濡れ性に優れているので界面抵抗を非水電解液レベルまで低減できるという利点がある。しかしこの方法は、二種類以上のアクリレートを使用するため重合が不均一に進行し、また、アクリルモノマー自身の重合性が充分ではないため残存二重結合が多く、サイクル特性が低下するという問題点があった。
【0009】
【特許文献1】特開昭61−83249号公報
【特許文献2】特開平2−79375号公報
【特許文献3】特表平8−507407号公報
【特許文献4】米国特許第5603982号明細書
【特許文献5】米国特許第5609974号明細書
【非特許文献1】Masayuki Morita et al. J.Electrochem.soc.,Vol.137,No.11, 3401-3404(1990): Polarization behavior of Lithium Electrode in solid electrolytes consisting of poly(ethylene oxide)-grafted polymer
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記高分子電解質の種々問題点を解決するために鋭意検討したものであり、本発明の目的は、特殊な製造工程などを必要としなくても、高イオン伝導率を実現することにより、大電流での放電時にも電池性能を充分なレベルに保持し、長寿命で安定した電池性能を得ることができるアクリルポリマー、その合成方法、及びこれを用いた重合性樹脂組成物、ゲル状高分子電解質を提供することにある。また本発明の他の目的は、従来の高分子電解質を用いたリチウム二次電池よりも、サイクル特性、大電流での放電特性に優れたアクリルポリマー、その合成方法、及びこれを用いた重合性樹脂組成物、ゲル状高分子電解質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者らは、上記アクリルポリマーとして、OH基を有する特定構造のアクリルポリマーを使用することにより、高イオン伝導率を実現できることを見出し、本発明に至ったものである。
具体的に、本発明は、以下に関する。
[1]一般式(1)で示される(メタ)アクリレートに由来する構造単位1を1〜95モル%と、一般式(2)で示されるヒドロキシル基を有する構造単位2を1〜60モル%と、一般式(3)で示される重合性官能基を有する構造単位3を1〜60モル%とを有するアクリルポリマーであって、前記アクリルポリマーの質量平均分子量が1,000〜100,000であることを特徴とする、アクリルポリマーに関する。



(式中、Rは水素あるいはメチル基を表し、R1は水素、C1〜C8の直鎖アルキル基あるいはC3〜C8の脂環式アルキル基を表す。)



(式中、Rは水素あるいはメチル基を表し、R2は水素、C1〜C8の直鎖アルキレン基あるいはC3〜C8の脂環式アルキレン基を表す。)



(式中、R及びR’は同一でも異なっていてもよいが独立に水素あるいはメチル基を表し、Xは、−CH2CH2−、−(CH2CH2O)nCH2CH2−{nは1〜500までの整数}、−R3−OCONH−R4−あるいは−R5−CH(OH)CH2−を表し、R3、R4及びR5はそれぞれ独立にC1〜C8の直鎖アルキレン基あるいはC3〜C8の脂環式アルキレン基を表す。)
[2][1]記載のアクリルポリマーの合成方法であって、該アクリルポリマーの合成において、溶媒として、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びメチルエチルカーボネートから成る群より選択される溶媒を用いる、アクリルポリマーの合成方法に関する。
[3][1]記載のアクリルポリマーまたは[2]記載のアクリルポリマーの合成方法により合成してなるアクリルポリマーと、(A)熱あるいは光重合開始剤と、(B)アルカリ金属塩の非水電解液とを含むことを特徴とする、重合性樹脂組成物に関する。
[4][3]記載の重合性樹脂組成物に、熱を加え、あるいは光を照射して重合反応を生じさせ、該重合性樹脂組成物をゲル化させることによって得られることを特徴とするゲル状高分子電解質に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、特殊な製造工程などを必要としなくても、高イオン伝導率を実現することにより、大電流での放電時にも電池性能を充分なレベルに保持し、長寿命で安定した電池性能を得ることができるアクリルポリマー、その合成方法、及びこれを用いた重合性樹脂組成物、ゲル状高分子電解質を提供することが可能となった。
本発明のゲル状高分子電解質は、溶媒を使用していないので、揮発ガスの拡散や漏液の心配がなく、また電解質全面に電流が均一に流れるため、リチウムデンドライトの発生・生長を抑制することが可能である。
本発明のゲル状高分子電解質は、ポリフッ化ビニリデンのようなフッ素含有ポリマーを使用しないため、環境に対する負荷が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳述する。
(1)アクリルポリマーの構成
本発明は、一般式(1)で示される(メタ)アクリレートに由来する構造単位1と、一般式(2)で示されるヒドロキシル基を有する構造単位2と、一般式(3)で示される重合性官能基を有する構造単位3とを有するアクリルポリマーに関する。特に、本発明のアクリルポリマーは、フッ素基を含まないことが好ましい。以下、本発明のアクリルポリマーについて、各構造単位ごとに説明する。
【0014】
(1-1)構造単位1
構造単位1は、以下の一般式(1)で示される(メタ)アクリレートに由来する2価の基である。



式中、Rは水素あるいはメチル基を表す。R1は水素、C1〜C8、好ましくはC1〜C4の直鎖アルキル基、あるいはC3〜C8、好ましくはC4〜C7の脂環式アルキル基を表す。
【0015】
(1-2)構造単位2
構造単位2は、以下の一般式(2)で示されるヒドロキシル基を有する2価の基である。



式中、Rは水素あるいはメチル基を表す。R2は水素、C1〜C8、好ましくはC1〜C4の直鎖アルキレン基、あるいはC3〜C8、好ましくはC4〜C7の脂環式アルキレン基を表す。
【0016】
(1-3)構造単位3
構造単位3は、以下の一般式(3)で示される重合性官能基を有する2価の基である。


式中、R及びR’は同一でも異なっていてもよいが独立に水素あるいはメチル基を表す。Xは、−CH2CH2−、−(CH2CH2O)nCH2CH2−{nは1〜500、好ましくは1〜400、より好ましくは1〜300までの整数}、−R3−OCONH−R4−あるいは−R5−CH(OH)CH2−を表す。ここで、R3、R4及びR5はそれぞれ独立にC1〜C8、好ましくはC1〜C4の直鎖アルキレン基、あるいはC3〜C8、好ましくはC4〜C7の脂環式アルキレン基を表す。
ここで、重合性官能基とは、式(3)のうち、−C(=CH2)−R’で表される炭素-炭素二重結合の部分である。
【0017】
(1-4)その他の構造単位
本発明のアクリルポリマーは、上記構造単位1〜3の他、他の構造単位を含んでもよい。
【0018】
(1-5)各構造単位の含有量
本発明における一般式(1)で示される構造単位1の含有量は、アクリルポリマーに含まれる全構造単位の合計モル数を100モル%とした場合、1〜95モル%であり、15〜90モル%とすることが好ましく、25〜80モル%とすることがより好ましい。構造単位1の含有量が1モル%以上であれば、イオン伝導率が低下することもなく、95モル%以下であれば十分な電解液保持性を発揮することができる。
本発明における一般式(2)で示される構造単位2の含有量は、アクリルポリマーに含まれる全構造単位の合計モル数を100モル%とした場合、1〜60モル%であり、2〜50モル%とすることが好ましく、3〜40モル%とすることがより好ましい。この含有量が1モル%以上であれば、十分な電解液保持性を発揮することができ、60モル%以下であれば、イオン伝導率が低下することもなく、及び電池を作製した時に電極界面抵抗を増大させる原因となる皮膜の形成を抑え、大電流での放電特性を向上できる。
本発明における一般式(3)で示される構造単位3の含有量は、アクリルポリマーに含まれる全構造単位の合計モル数を100モル%とした場合、1〜60モル%であり、2〜50モル%とすることが好ましく、3〜40モル%とすることがより好ましい。この含有量が1モル%以上であれば、ポリマーのゲル化が困難になることもなく、60モル%以下であれば、イオン伝導率が低下することもないので好ましい。
ただし、上述した各構造単位のモル%は、アクリルポリマーに含まれる全構造単位の合計モル数を100モル%とした値であり、かつ、構造単位1〜3のモル%の合計が100モル%を超えることはない。アクリルポリマーが任意に他の構造単位を含む場合、構造単位1〜3及び当該他の構造単位のモル%の合計が100モル%を超えることはない。
より具体的には、本発明のアクリルポリマーが以下の式で表される場合、



p:q:rは、(35〜95):(1〜60):(1〜60)、好ましくは、(30〜90):(2〜55):(2〜55)、より好ましくは、(25〜85):(3〜50):(3〜50)である。各構造単位のRは同一でも異なっていてもよい。また、上記各構造単位は、アクリルポリマー中に2種類以上存在していてもよい。
【0019】
(1-6)質量平均分子量
本発明のアクリルポリマーの質量平均分子量は、1,000〜100,000であり、3,000〜50,000が好ましく、5,000〜30,000がより好ましい。この質量平均分子量が1,000以上であれば、非水電解液の保持性が低下することもなく、100,000以下であれば、本発明のアクリルポリマーの非水電解液への高い溶解性が保持でき、電極への濡れ性が悪くなることもないので好ましい。質量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定される。
【0020】
(2)アクリルポリマーの合成方法
本発明に用いられるアクリルポリマーは、特に限定されるものではないが、例えば、次の(i)及び(ii)の合成方法により得られる。
(2-1)合成方法(i)
前記一般式(1)で示される構造単位1を形成するための(メタ)アクリレート(以下、モノマー(a)という)と、前記一般式(2)で示される構造単位2を形成するための水酸基を有する(メタ)アクリレート(以下モノマー(b)という)とを共重合してポリマー主骨格を構築し、その後、当該ポリマー主骨格と、ポリマー主骨格中のモノマー(b)のモル数未満、例えば、モノマー(b)のモル数に対して1〜60モル%、好ましくは、2〜25モル%、特に好ましくは3〜50モル%のモル数の下記一般式(4)で表されるイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとを反応させてモノマー(b)に由来するポリマー主骨格の水酸基残基の一部を下記一般式(4)’で表される基に置換し、前記ポリマー主骨格に更に前記一般式(3)(但し、Xは



で表される基)で示される重合性官能基を有する構造単位を形成する方法。
【0021】
【化1】

【0022】
(式中、Rは水素あるいはメチル基を表し、R5はC1〜C8、好ましくはC1〜C4の直鎖アルキレン基あるいはC3〜C8、好ましくはC4〜C7の脂環式アルキレン基を表す。)一般式(4)で表されるイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−メチルシアナトエチルメタクリレート(R=メチル、R5=エチレン)が挙げられる。
この(i)の方法では、上記モノマー(a)及び(b)を溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の方法により重合する。重合は、例えば、大気圧(約1013hPa)の下、反応温度80〜85℃で2〜5時間行われる。重合に際しては、任意に溶媒及び重合開始剤を使用することができる。溶液重合においては、例えば、有機溶媒として、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等の含窒素系極性溶媒が使用できる。また、重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等のアゾビス系化合物などが使用できる。溶媒の使用量は、用いるモノマーの全量を100質量部とした場合、例えば40〜1900質量部、好ましくは、50〜900質量部であることが適当である。重合開始剤の使用量は、アクリルポリマー総量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは、1〜6質量%である。
また、モノマー(a)と(b)から得られたポリマー主骨格と一般式(4)で表されるイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとの反応は、例えば反応温度50〜70℃、大気圧(約1013hPa)の下、任意に公知の脱水触媒の存在下で行われる付加反応である。このとき、一般式(4)で表される(メタ)アクリレートの添加量は、ポリマー主骨格中のモノマー(b)のモル数未満、例えば、モノマー(b)のモル数に対して1〜60モル%、好ましくは、2〜25モル%、特に好ましくは3〜50モル%のモル数、好ましくは、モノマー(b)のモル数の1〜99%、より好ましくは、2〜98%の量であることが適当である。
【0023】
(2-2)合成方法(ii)
)前記モノマー(a)と、前記モノマー(b)と、下記一般式(5)のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート(以下、モノマー(d)という)とを共重合してポリマー主骨格を構築し、
【0024】
【化2】


その後、当該ポリマー主骨格と、ポリマー主骨格中のモノマー(d)のモル数以上、例えば、モノマー(b)のモル数に対して1〜60モル%、好ましくは、2〜25モル%、特に好ましくは3〜50モル%のモル数の(メタ)アクリル酸(CH2=C(−R’)−COOH(式中、R’は水素又はメチル基))とを反応させてポリマー主骨格中のモノマー(d)に由来する−R7−エポキシ基を

又は

に置換し、前記ポリマー主骨格に更に前記一般式(3)(但し、Xは


又は


で表される基)で示される重合性官能基を有する構造単位を形成する方法。
【0025】
(式中、Rは水素あるいはメチル基を表し、R7はC1〜C8、好ましくはC1〜C4の直鎖アルキレン基、あるいはC3〜C8、好ましくはC4〜C7の脂環式アルキレン基を表す。)
この(ii)の方法では、上記モノマー(a)、(b)及び(d)を溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の方法により重合する。重合に際しては、任意に溶媒及び重合開始剤を使用することができる。例えば、溶液重合においては、溶媒として、上記(i)の方法と同様の溶媒を使用することができる。また、重合開始剤としては、上記(i)の方法と同様の開始剤を使用することができる。
また、モノマー(a)、(b)及び(d)から得られたポリマー主骨格と(メタ)アクリル酸(CH2=C(−R’)−COOH(式中、R’は水素又はメチル基))との反応は、例えば反応温度50〜85℃、大気圧(約1013hPa)の下、任意に公知のエステル化反応触媒(酸触媒又はアルカリ触媒)の存在下で行われる。このとき、(メタ)アクリル酸の添加量は、ポリマー主骨格中のモノマー(d)のモル数以上のモル数、好ましくは、モノマー(d)のモル数の5〜95%、より好ましくは、10〜90%の量であることが適当である。
【0026】
通常、アクリルポリマーに直接重合性官能基を有する構造単位3を導入しようとすると、構造単位3を導入するためのモノマー(モノマー(c)という)に2つの重合性官能基(炭素-炭素二重結合)が存在することとなるため、反応の制御が困難であり、ゲル化する可能性がある。そこで前記(i)又は(ii)のような方法を用いることにより、簡便に側鎖に重合性官能基(炭素-炭素二重結合)を有する本発明のアクリルポリマーを形成させることができる。より好ましくは、(i)の合成方法である。
【0027】
(2-3)各モノマー
本発明に用いるアクリルポリマーの合成に用いられるモノマー(a)は、以下の式(a)で示される、(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。



式中、Rは水素あるいはメチル基を表す。R1は水素、C1〜C8、好ましくはC1〜C4の直鎖アルキル基、あるいはC3〜C8、好ましくはC4〜C7の脂環式アルキル基を表す。
具体的なモノマー(a)としては、特に制限はないが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル又は、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、メタクリル酸、アクリル酸などが挙げられる。これらのモノマーは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
【0028】
本発明に用いるアクリルポリマーの合成に用いられるモノマー(b)は、以下の式(b)で示される、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートである。



式中、Rは水素あるいはメチル基を表す。R2は水素、C1〜C8、好ましくはC1〜C4の直鎖アルキル基、あるいはC3〜C8、好ましくはC4〜C7の脂環式アルキレン基を表す。
具体的なモノマー(b)としては、特に制限はないが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらのモノマーは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
【0029】
合成方法(i)において用いられる一般式(4)で示されるイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとしては、特に制限はないが、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0030】
合成方法(ii)において用いられるモノマー(d)としては、特に制限はないが、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0031】
上記各合成方法では、その他、連鎖移動剤や重合禁止剤等の添加剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、例えば、2-メルカプトエタノール、β-メルカプトプロピオン酸エチルエステル、β-メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシルエステル、トリス[(3-メルカプトプロピオニロキシ)−エチル]イソシアヌレート等が挙げられる。また、重合禁止剤としては、例えば、p-メトキシフェノール、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、2,5-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ハイドロキノン等が挙げられる。
【0032】
(3)重合性樹脂組成物
本発明の重合性樹脂組成物は、重合性物質である上記アクリルポリマーと、(A)熱あるいは光重合開始剤と、(B)アルカリ金属塩の非水電解液とを含む。反応の詳細は後述するが、この重合性物質は(A)の開始剤の作用により(B)の非水電解液中で架橋・重合し、ゲル状の高分子電解質となる。
【0033】
(3-1)重合性物質
重合性物質は、特定の開始剤の作用により重合(架橋)してポリマーを形成する物質を意味し、アクリルポリマー単独系であっても、アクリルポリマーと他のアクリルポリマーと重合し得る重合性モノマーとの併用系であってもよい。重合性物質としては、上記アクリルポリマーが含まれる。また、他の重合性モノマーとしては、重合性多官能モノマーが含まれる。「多官能」とは、該モノマーが炭素-炭素二重結合を2以上、好ましくは、2〜10、より好ましくは3〜6有することをいう。このような重合性多官能モノマーが存在する場合、本発明のアクリルポリマーの側鎖に存在する炭素-炭素二重結合と、重合性多官能モノマーが有する炭素-炭素二重結合とが重合(架橋)し、ゲル状の高分子を形成する。
【0034】
重合性多官能モノマーとしては、特に制限はないが、酢酸ビニル、アルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の単官能化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン等の2官能化合物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸EO変性トリ(メタ)アクリレート等の3官能化合物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能化合物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の5〜6官能化合物、1〜6官能のメラミン(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、「EO」は、エチレンオキサイドを、「PO」は、プロピレンオキサイドをそれぞれ示す。
【0035】
これらの重合性多官能モノマー成分は、単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。重合性多官能モノマーを使用する場合の配合量は、アクリルポリマー100質量部に対して1〜300質量部が好ましく、2〜200質量部がより好ましく、5〜100質量部が特に好ましい。1質量部以上であれば、良好な電解液保持性が得られ、300質量部以下であれば、高いイオン伝導率が得られる。
【0036】
(3-2)開始剤(A)
本発明における開始剤(A)としては、熱により活性化する熱重合開始剤、又は、光によって活性化する光重合開始剤を使用することができる。
熱重合開始剤としては、例えば過酸化ベンゾイル及びその誘導体、ヒドロパーオキシド及びその誘導体、クミルパーオキシド及びその誘導体等のジアルキル(アリル)パーオキシド類、ジアセチルパーオキシド及びその誘導体等のジアシルパーオキシド類、パーオキシケタール類、パーオキシエステル類、パーオキシカーボネート類等の有機過酸化物、アゾビス(イソブチロニトリル)、アゾビス(イソバレロニトリル)等の化合物が挙げられる。
【0037】
光重合開始剤としては、例えばジメチルアミノ安息香酸類、ベンゾフェノン及びその誘導体、ベンジルジメチルケタール等のベンジル及びその誘導体、2,2−ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、α−ヒドロキシイソブチルフェノン等のブチルフェノン誘導体、チオキサントン及びその誘導体、アジド基を有する化合物、クマリン誘導体、フェニルケトン誘導体等の化合物が挙げられる。これらの熱重合開始剤又は光重合開始剤は、単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
【0038】
(3-3)非水電解液(B)
本発明の非水電解液(B)は、アルカリ金属塩と、該アルカリ金属塩を溶解可能な非水溶媒とを含む。
アルカリ金属塩としては、特に制限はないが、実用的な観点から、例えばLiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiCF3SO3、LiC29SO3、LiN(CF3SO22などのリチウム化合物が好ましい。これらのリチウム化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いられ、これらの塩のうちで特に好ましい塩はLiClO4、LiBF4、LiPF6、及びLiN(CF3SO22である。本発明におけるアルカリ金属塩の配合量は、(B)成分の総量中に0.1〜5.0モルとすることが好ましく、0.2〜4.0モルとすることがより好ましく、0.5〜3.0モルとすることが特に好ましい。この配合量が0.1モル以上5.0モル以下であれば、高いイオン伝導率を得ることができる。
【0039】
上記アルカリ金属塩を溶解可能な非水溶媒としては、化学的に安定で非水系であれば特に制限はないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート化合物、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ポリエチレンオキシド等のエーテル化合物、γ−ブチロラクトン、プロピロラクトン等のラクトン化合物等が挙げられる。これらの非水溶剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0040】
当該非水溶媒の配合量は、(B)成分の総量中55〜98質量%とすることが好ましく、80〜97質量%とすることがより好ましく、90〜95質量%とすることが特に好ましい。この非水溶媒の割合が55質量%以上であれば、高いイオン伝導率を得ることができ、また、98質量%以下であれば、機械強度が低下することもない。
【0041】
(3-4)重合性樹脂組成物中の各成分の配合量
本発明における(A)成分の熱あるいは光重合開始剤の配合量は、重合性物質を100質量部とした場合、0.005〜20質量部が好ましく、0.01〜10質量部がより好ましく、0.05〜5質量部が特に好ましい。熱あるいは光重合開始剤の割合が、0.005質量部以上であれば、十分にゲル化し、10質量部以下であれば、機械強度が低下することもない。
本発明における重合性物質の配合量は、重合性物質及び(B)成分の合計量に対し、1〜30質量%とすることが好ましく、2〜20質量%とすることがより好ましく、3〜15質量%とすることが特に好ましい。重合性物質の配合量が1質量%以上であれば、十分にゲル化し、30質量%以下であれば、高いイオン伝導率を得ることができる。
【0042】
本発明における(B)アルカリ金属塩を含む非水電解液の配合量は、重合性物質及び(B)成分の合計量に対し、50〜99質量%とすることが好ましく、70〜98質量%とすることがより好ましく、80〜97質量%とすることが特に好ましい。
【0043】
(4)ゲル状高分子電解質
(4-1) ゲル状高分子電解質の構造等
本発明のゲル状高分子電解質は、上記重合性樹脂組成物に熱を加え、あるいは光を照射して重合(架橋)反応を生じさせ、該重合性樹脂組成物をゲル化させることによって得られる。例えば、アクリルポリマーとトリメチロールプロパントリアクリレートを(重合性モノマーとして)使用すると、アクリルポリマーがトリメチロールプロパントリアクリレートによって架橋している構造となる。
本発明のゲル状高分子電解質は、10〜1×106PaS、好ましくは50〜1×105PaSの粘度を有する。
【0044】
(4-2)ゲル状高分子電解質の製法
本発明のゲル状高分子電解質は、上記重合性樹脂組成物に対し、(A)成分として熱重合開始剤を使用した場合は熱を、(A)成分として光重合開始剤を使用した場合は光を照射することによって得られる。より具体的に、まず溶液状の上記重合性樹脂組成物を所望の厚さのスペーサーを設けたガラス基板上に塗布し、さらに、別のガラス基板を被せて完全に密封する。その後、この重合性樹脂組成物に、熱あるいは光をあてて反応させ、フィルム状のゲル状高分子電解質を作製する。よって、本発明のゲル状高分子電解質は、このような光照射又は加熱工程を設けることにより作製される。
【0045】
加熱温度は、20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることが特に好ましい。加熱が20℃以上であれば、熱硬化や熱による不溶化が十分に進行し、十分な膜強度が得られるので好ましい。加熱時間は、3分以上であることが好ましく、30分以上であることが特に好ましい。加熱時間が3分以上であれば、熱硬化や熱による不溶化が十分に進行し、十分にゲル化し得る。
光照射の際用いられる活性光線(光源)としては、例えばカーボンアーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。露光量は、5mJ/cm2以上であることが好ましく、15mJ/cm2以上であることがより好ましく、25mJ/cm2以上であることが特に好ましい。露光量が5mJ/cm2以上であれば、光硬化が十分に進行し、十分な膜強度が得られるので好ましい。
【0046】
(5)用途
本発明のゲル状高分子電解質は、負極に黒鉛等の層間化合物を用いたリチウム二次電池、負極にリチウム金属を用いたリチウム二次電池、リチウム一次電池、電気二重層キャパシタ、酵素センサ用電極材料等の電気化学的デバイスの電解質として用いることができる。特に電池の電解質として好ましく用いられる。また、本発明のゲル状高分子電解質を用いた電池は、携帯電話、PHS、ノート型パソコン、携帯音楽機器、ゲーム機器、携帯端末等の小型電子機器の主電源又はバックアップ用電源として用いることができ、さらに、据え置き型のロードレベリング用電源、停電時のバックアップ用電源、電気自動車用電池、ハイブリット電気自動車(HEV)用電池等に広く用いることができる。
【0047】
本発明のゲル状高分子電解質を用いた二次電池を得る方法の一つとして、正極シート、セパレータ、負極シートを1層ずつ用いてラミネートした単層ラミネート型の二次電池を例にとって説明する。まず、通常の電解液型リチウムイオン二次電池で用いる正極集電体シート上に正極材料をキャスティングした正極シート、及び負極集電体シート上に負極材料をキャスティングした負極シートを作製する。その後、作製した正極シート及び負極シートの他、電池を構成する部材であるセパレータ、ラミネート箔、端子等を所定温度(例えば、40〜100℃)で、所定時間(例えば、3分〜2時間)乾燥する。その後、正極シート、セパレータ、負極シートを2枚のラミネート箔の間に挟む。ラミネート箔の周りを、一部に熱融着しない箇所を残して熱融着し袋状とし、内部電極を作製する。この内部電極の熱融着していない箇所から、本発明のアクリルポリマー、熱あるいは光重合開始剤及びアルカリ金属塩を含む非水電解液からなる重合性樹脂成分(以下、(C)成分という)を注入し、該内部電極を(c)成分で充分含浸させる(必要に応じて減圧で含浸)。その後、内部電極に吸収されなかった余分な(C)成分を取り除くとともに、熱融着しなかった箇所をここで熱融着し、ラミネート箔の全周を熱融着して密封する。その後、所定の時間(例えば、3分〜2時間)、所定の温度で(例えば、40〜100℃)、得られた内部電極を熱処理することで、ゲル状高分子電解質を用いた電池が作製できる。こうして得られた本発明のゲル状高分子電解質を用いた電池は充電と放電を交互に行うことが可能な二次電池となる。
【0048】
本発明のゲル状高分子電解質を用いた電池及びキャパシタを得る方法の一つとして、正極シート、セパレータ、負極シートを複数用いてラミネートした多層ラミネート型の二次電池を例にとって説明する。例えば、まず、通常の電解液型リチウムイオン二次電池で用いる正極集電体シート上に正極材料をキャスティングした正極シート、及び負極集電体シート上に負極材料をキャスティングした負極シートを作製する。その後、作製した正極シート及び負極シートの他、電池を構成する部材であるセパレータ、ラミネート箔、端子などを所定温度(例えば、40〜100℃)で、所定時間(例えば、3分〜2時間)乾燥する。その後、正極シート、セパレータ、負極シートを順に何層にも重ねて積層体とする。正極シート、負極シートに端子を溶接して内部電極を作製し、この内部電極を袋状のラミネート箔に挿入する。その後、上記(C)成分を袋状のラミネート箔に注入し、内部電極を(C)成分に充分含浸させる(必要に応じて減圧下で含浸)。内部電極に吸収されなかった余分な(C)成分を取り除くとともに、袋状のラミネート箔の注入口を熱融着し、袋状のラミネート泊を密封する。その後、所定の時間(例えば、3分〜2時間)、所定の温度(例えば、40〜100℃)で、得られた内部電極を熱処理することで、ゲル状高分子電解質を用いた電池が作製できる。こうして得られた本発明のゲル状高分子電解質を用いた電池は充電と放電を交互に行うことが可能な二次電池となる。
【0049】
本発明のゲル状高分子電解質を用いた電池及びキャパシタを得る方法の一つとして、正極シート、セパレータ、負極シートをラミネートせずに積層した二次電池を例にとって説明する。例えば、まず、通常の電解液型リチウムイオン二次電池で用いる正極集電体シート上に正極材料をキャスティングした正極シート、及び負極集電体シート上に負極材料をキャスティングした負極シートを作製する。その後、作製した正極シート及び負極シートの他、電池を構成する部材であるセパレータ、缶、蓋、端子、パッキンなどを所定温度(例えば、40〜120℃)で、所定時間(例えば、3分〜5時間)乾燥後、缶内に正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層する。その後、上記(C)成分を缶に注入し、正極シート、セパレータ、負極シートに(C)成分を充分含浸させる(必要に応じて減圧下で含浸させる)。その後、この缶にパッキンを挟み、蓋をしてから、かしめて密封する。その後、所定の時間(例えば、3分〜2時間)、所定の温度(例えば、40〜100℃)で、熱処理することで、ゲル状高分子電解質を用いた電池が作製できる。こうして得られた本発明のゲル状高分子電解質を用いた電池は充電と放電を交互に行うことが可能な二次電池となる。
【0050】
本発明のゲル状高分子電解質を用いた電池及びキャパシタを得る方法の一つとして、円筒形リチウム電池を例にとって説明する。例えば、まず、通常の電解液型リチウムイオン二次電池で用いる正極集電体シート上に正極材料をキャスティングした正極シート、及び負極集電体シート上に負極材料をキャスティングした負極シートを作製する。その後、作製した正極シート及び負極シートの他、電池を構成する部材である缶、蓋、端子、パッキンなどを所定温度(例えば、40〜100℃)で、所定時間(例えば、3分〜2時間)乾燥後、正極シート、セパレータ、負極シートを巻き取り機にて巻き取り海苔巻状にする。その後、この海苔巻状の内容物を缶に挿入し、正極負極端子を溶接する。その後、(C)成分を注入し、正極シート、負極シート、セパレータに(C)成分を充分含浸透させる。その後、缶にパッキンを挿み、蓋をしてから、かしめて密封する。その後、所定の時間(例えば、3分〜2時間)、所定の温度(例えば、40〜100℃)で、熱処理することで、ゲル状高分子電解質を用いた電池が作製できる。こうして得られた本発明のゲル状高分子電解質を用いた電池は充電と放電を交互に行うことが可能な二次電池となる。電池及びキャパシタの製造法の一例を記載したが、電池及びキャパシタの製造方法として知られている方法を用い作製することが可能である。
【0051】
上記正極集電体シートとしては、例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔、金箔、銀箔、チタン箔等が挙げられるが、高電位に対する安定性の見地からはアルミニウム箔であることが好ましい。前記正極材料としては、例えば、Li1-xCoO2、Li1-xNiO2、Li1-xMn24、Li1-xMO2、(0<X<1、MはCo、Ni、Mn、Fe等の複合体)、Li2-yMn24(0<y<2)、Li1-x25(0<X<1)、Li2-y25(0<y<2)、Li1-x′Nb25(0<X′<1.2)等の酸化物、Li1-xTiS2、Li1-xMoS2、Li1-xNbSe2、Li1-ZNbSe3(0<Z<3)等の金属カルコゲナイド、ジチオール誘導体、ジスルフィド誘導体などの有機化合物などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0052】
前記負極集電体シートとしては、例えば、銅箔、ニッケル箔、金箔、銀箔等が挙げられ、良好な電子導電性、及び廉価性の見地からは銅箔であることが好ましい。前記負極材料としては、例えば、金属リチウム、アルミ・リチウム合金、マグネシウム・アルミ・リチウム合金等の金属リチウム、グラファイト、非晶質炭素、低温焼成高分子等の炭素材料、AlSb、Mg2Ge、N系材料、SnM′系酸化物(M′はSi、Ge、Pb等を示す)、Si1-yM″yZ(M″はW、Sn、Pb、B等を示す。yは0〜1の数、zは1〜2の数を示す。)等の複合酸化物、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物のリチウム固溶体、Li7MnN4、Li3FeN4、Li3-xCoxN、Li3-xNiN、Li3-xCuxN、Li3BN2、Li3AlN2、Li3SiN3等の窒化物などのセラミックスなどが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0053】
具体的に正電極は、例えば、アルミ箔上に正極材料とバインダを混練して得たペーストを塗布し、乾燥することによって得られる。
負電極は、例えば、銅箔上に負極材料とバインダを混練して得たペーストを塗布し、乾燥することによって得られる。
セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを用いた多孔質体が使用できる。(多孔体の、空隙率、孔の平均直径についても述べてください。)
ラミネート箔としては、アルミニウム箔、ニッケル箔、金箔、銀箔、銅箔、チタン箔等が挙げられる。
スペーサーとしては、シリコンラバー、ポリテトラフルオロエチレンラバー、ポリテトラフルオロエチレンシート、シリコンシート等が挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例及びその比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
<アクリルポリマーA〜Jの製造方法>
混合機及び冷却器を備えた反応器に窒素雰囲気下(又は、窒素気流下)にて、表1(配合単位は質量部)に示す配合1(溶媒)を入れ、大気圧(1013hPa)下、85℃に加熱し、さらに表1に示す配合2(モノマー(a)(b)、連鎖移動剤、重合開始剤等)を2時間で滴下し、2時間保温した。次に表1に示す配合3(重合開始剤等)を1時間で滴下し、更に3時間保温した。反応溶液の温度を70℃に下げた後、空気雰囲気下(又は空気気流下)にて、配合4(重合禁止剤等)を加えて、70℃で1時間保温した。その後、表1に示す配合5(一般式(4)で表されるイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート:2−メチルシアナトエチルメタクリレート(R=メチル、R5=エチレン))を滴下し、6時間保温した。冷却後、アクリルポリマーワニスA〜Jを得た。このアクリルポリマーワニスA〜Jの質量平均分子量は、以下に示す方法で測定した。
【0056】
<アクリルポリマーKの製造方法>
混合機及び冷却器を備えた反応器に窒素雰囲気下(又は、窒素気流下)にて、表2(配合単位は質量部)に示す配合1(溶媒)を入れ、大気圧(1013hPa)下、85℃に加熱し、さらに表2に示す配合2(モノマー(a)(b)(d)、連鎖移動剤、重合開始剤等)を2時間で滴下し、2時間保温した。次に表2に示す配合3(重合開始剤等)を1時間で滴下し、更に3時間保温した。反応溶液の温度を70℃に下げた後、空気雰囲気下(又は空気気流下)にて、配合4(重合禁止剤等)を加えて、70℃で1時間保温した。その後、表2に示す配合5(一般式(5)で表されるカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート)を滴下し、6時間保温した。冷却後、アクリルポリマーワニスKを得た。このアクリルポリマーワニスKの質量平均分子量は、以下に示す方法で測定した。
【0057】
[質量平均分子量の測定方法]
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定する。
〈GPC条件〉
使用機器:日立635型HPLC〔株式会社日立製作所〕
カラム:ゲルパックR440、R450、R400M〔日立化成工業株式会社製商品名〕
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:2.0ml/min.
検出器:示差屈折計
【0058】
【表1】

【表2】

【0059】
アクリルポリマーA〜Kの構造式を以下に示す。
アクリルポリマーA〜G;




【0060】
アクリルポリマーH;



構造単位1(p): 20(モル%)
構造単位1’(p'): 50(モル%)
構造単位2(q): 20(モル%)
構造単位3(r): 10(モル%)
質量平均分子量:11000
【0061】
アクリルポリマーI;



構造単位1(p): 20(モル%)
構造単位1’(p'): 50(モル%)
構造単位2(q): 20(モル%)
構造単位3(r): 10(モル%)
質量平均分子量:10500
【0062】
アクリルポリマーJ;



構造単位1(p): 20(モル%)
構造単位1’(p'): 50(モル%)
構造単位2(q): 20(モル%)
構造単位3(r): 10(モル%)
質量平均分子量:10300
【0063】
アクリルポリマーK;



構造単位1(p): 80(モル%)
構造単位2(q): 10(モル%)
構造単位3(r): 10(モル%)
質量平均分子量:10500
【0064】
<重合性樹脂組成物及びゲル状高分子電解質の調製>
実施例1
アクリルポリマーA10g及び開始剤(A)としてアゾビス(イソブチロニトリル)62.5mgを、1mol/l LiPF6のジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチレンカーボネート(EC)(体積比:1/1/1)を含む非水電解液(B)190gに溶解し、本発明の重合性樹脂組成物を調製した。さらに、直径2.0cm、高さ18mmの円筒形のステンレス製コイン外装容器(ステンレス厚さ250μm)の内側を当該重合性樹脂組成物で満たした。ポリプロピレン製のパッキンを介して、ステンレス製のキャップを被せ、ステンレス製コイン容器からはみ出た余分な重合性樹脂組成物を拭き取り、コイン電池作製用のかしめ器で密封して評価用セルを作製した。この評価用セルを80℃で3時間熱処理し、本発明のゲル状高分子電解質を得た。その後、当該ゲル状高分子電解質に電極端子を付けた。ゲル状高分子電解質のイオン伝導率は、25℃にて評価セルの電極間に交流を印加して抵抗成分を測定する交流インピーダンス法を用いて行い、コール・コールプロットの実数インピーダンス切片から計算した。イオン伝導率の結果を表3に示す。
【0065】
実施例2
アクリルポリマーA8.5gと重合性多官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリメタクリレート1.5g及び開始剤(A)としてアゾビス(イソブチロニトリル)62.5mgを、1mol/l LiPF6のジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチレンカーボネート(EC)(体積比:1/1/1)を含む非水電解液(B)240gに溶解し、本発明の重合性樹脂組成物を調製した。さらに、直径2.0cm、高さ18mmの円筒形のステンレス製コイン外装容器(ステンレス厚さ250μm)の内側を当該重合性樹脂組成物で満たした。ポリプロピレン製のパッキンを介して、ステンレス製のキャップを被せ、ステンレス製コイン容器からはみ出た余分な本発明の重合性樹脂組成物を拭き取り、コイン電池作製用のかしめ器で密封して評価用セルを作製した。この評価用セルを80℃で1時間熱処理し、本発明のゲル状高分子電解質を得た。その後、当該ゲル状高分子電解質に電極端子を付けた。ゲル状高分子電解質のイオン伝導率は、25℃にて評価セルの電極間に交流を印加して抵抗成分を測定する交流インピーダンス法を用いて行い、コール・コールプロットの実数インピーダンス切片から計算した。イオン伝導率の結果を表3に示す。
【0066】
実施例3〜20
アクリルポリマー、重合性多官能モノマー、開始剤(A)及び非水電解液(B)を表3及び4に示す配合で調製し、本発明の重合性樹脂組成物を作成した。実施例2と同様の方法で評価用セルを作製した後、この評価用セルを80℃で1時間熱処理し、本発明のゲル状高分子電解質を得た。さらに実施例2と同様の方法でゲル状高分子電解質のイオン伝導率を算出した。その結果を表3に示す。
【0067】
比較例1
平均分子量1136のポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製)100gと熱重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.1gを、1mol/l LiPF6のジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチレンカーボネート(EC)(体積比:1/1/1)を含む電解液900gに溶解し、重合性樹脂組成物を調製した。さらに、直径2.0cm、高さ18mmの円筒形のステンレス製コイン外装容器(ステンレス厚さ250μm)の内側を当該重合性樹脂組成物で満たした。ポリプロピレン製のパッキンを介して、ステンレス製のキャップを被せ、ステンレス製コイン容器からはみ出た余分な重合性樹脂組成物を拭き取り、コイン電池作製用のかしめ器で密封して評価用セルを作製した。この評価用セルを80℃で3時間熱処理し、ゲル状高分子電解質を得た。その後、当該ゲル状高分子電解質に電極端子を付けた。ゲル状高分子電解質のイオン伝導率は、25℃にて評価セルの電極間に交流を印加して抵抗成分を測定する交流インピーダンス法を用いて行い、コール・コールプロットの実数インピーダンス切片から計算した。イオン伝導率の結果を表3に示す。

ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製);


n≒22
【0068】
比較例2
メチルメタクリレート45g、アクリロニトリル45g、トリエチレングリコールジメタクリレート10gと過酸化ベンゾイル0.1gを、1mol/l LiPF6のジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチレンカーボネート(EC)(体積比:1/1/1)を含む電解液900gに溶解し、重合性樹脂組成物を調製した。さらに、直径2.0cm、高さ18mmの円筒形のステンレス製コイン外装容器(ステンレス厚さ250μm)の内側を当該重合性樹脂組成物で満たした。ポリプロピレン製のパッキンを介して、ステンレス製のキャップを被せ、ステンレス製コイン容器からはみ出た余分なゲル組成溶液を拭き取り、コイン電池作製用のかしめ器で密封して評価用セルを作製した。この評価用セルを80℃で3時間熱処理し、ゲル状高分子電解質を得た。その後、当該ゲル状高分子電解質に電極端子を付けた。ゲル状高分子電解質のイオン伝導率は、25℃にて評価セルの電極間に交流を印加して抵抗成分を測定する交流インピーダンス法を用いて行い、コール・コールプロットの実数インピーダンス切片から計算した。イオン伝導率の結果を表3に示す。

トリエチレングリコールジメタクリレート;


【0069】
比較例3
ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合物(エルフ・アトケム社製)1gを、アセトン5gに溶解した。この溶液を、ガラス基板上にアプリケーターで塗布し、常圧下アルゴン雰囲気中2時間放置した後、真空下60℃で12時間乾燥してアセトンを除去し、膜厚が40μmのポリマーフィルムを得た。このポリマーフィルムを1mol/l LiPF6のジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチレンカーボネート(EC)(体積比:1/1/1)の混合系電解液により膨潤させて比較例3による高分子電解質を得た。25℃において高分子電解質をステンレス鋼電極で挟み込むことで電気化学セルを構成し、電極間に交流を印加して抵抗成分を測定する交流インピーダンス法を用いて行い、コール・コールプロットの実数インピーダンス切片から高分子電解質のイオン伝導率を計算した。
ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合物(SOLVAY SOLEXIS社製 Solef(登録商標) 21216);


【0070】
【表3】

【0071】
(1)コイン電池の作製
ポリフッ化ビニリデン(呉羽化学工業社製)5.0g、活物質(日立化成工業株式会社製、商品名:MAG、塊状人造黒鉛、平均粒径20μm)95.0gを配合した後、NMPを全固形分が45質量%となるように加えて混練し、スラリーを調製した。このスラリーを合剤層の乾燥質量がそれぞれ12.5mg/cm2となるように集電体(日立電線株式会社製、圧延銅箔、厚み14μm、200×100mm)の片側表面にマイクロアプリケーターで均一に塗布した。
【0072】
次いで、塗工物を、90℃の熱風乾燥機で1時間乾燥して合剤層を形成した後、ロールプレス機で合剤層のかさ密度が1.5g/cm3となるように圧縮成形し、直径0.9cmの円形に切断し、作用極を準備した。
【0073】
これとは別に、表面を軽く磨いた厚さ1mmの金属リチウム(三井金属工業株式会社製)を直径1.5cmの円形に切断して対極として準備した。また、作用極と対極とを分離するための絶縁体として、セパレータ(東燃タピルス株式会社製、微細孔ポリオレフィン、厚み25μm、以下同様)を直径1.8cmの円形に切り出して準備した。
【0074】
アルゴンガス充填雰囲気下のグローブボックス中で、直径2.0cmのステンレス製コイン外装容器に、上記作用極と対極を、作用極−セパレータ−対極の順に積層した。このときセパレータを積層する前後で実施例2、3、8、9、11、13、14、20及び比較例1、2で調製した重合性樹脂組成物を数滴垂らした。さらに、スペーサーとして直径1.5cmの円形に切断した銅箔を用いてスペーサー部分の合計が240μmになるように重ね合わせ、ポリプロピレン製のパッキンを介して、ステンレス製のキャップを被せ、コイン電池作製用のかしめ器で密封して評価用セルを作製した。この評価用セルを80℃で1時間熱処理してゲル状高分子電解質とした後、負極評価用電池(実施例21〜28及び比較例4、5)を得た。
【0075】
(2)コイン電池のレート特性の評価
上記で作製したコイン電池について、充放電装置(東洋システム株式会社製、TOSCAT3100)を用い、25℃の恒温槽中、充電電流0.2mA(0.08C)で0Vまで定電流充電を行った。なお、この定電流充電は、対極がリチウム金属であるので、電位の関係上、作用極が正極になるため、正確には放電である。しかし、ここでは、作用極の黒鉛へのリチウムイオンの挿入反応を「充電」と定義する。
【0076】
電圧が0Vに達した時点で定電圧充電に切り替え、さらに電流値が0.02mAに減衰するまで充電を続けた後、放電電流0.2mA(0.08C)で放電終止電圧1.5Vに達するまで定電流放電を行った。その後、定電流放電時の終止電圧を1Vに変えること以外は初回充放電と同様の条件で更に3サイクル行った(放電0.08C)。
【0077】
その後、定電流放電時の放電電流を0.7mA(0.27C)に上げた以外は先の3サイクルと同様の条件で1サイクル行った。次に放電電流を1.3mA(0.5C)、2.6mA(1.0C)、3.9mA(1.5C)、5.2mA(2.0C)と上げていき、各1サイクルずつ充放電を繰り返した。4サイクル目の0.08Cでの放電容量に対する8サイクル目の2.0Cでの放電容量の割合を百分率で表し、レート特性を評価した。値が大きいほどレート特性が良いことを示す。
上記、実施例及び比較例の結果を表4に示した。
【0078】
【表4】

【0079】
表3に示すように、本発明のゲル状高分子電解質(実施例1〜20)は、比較例1〜3に比べイオン伝導率が高く優れている。表4に示すように、本発明のゲル状高分子電解質(実施例21〜28)は、比較例4〜5に比べコイン電池のレート特性が優れている。
【0080】
本発明のアクリルポリマーを用いたゲル状高分子電解質は、イオン伝導率が高く優れる。アクリルポリマーを用いたゲル状高分子電解質は、サイクル特性、大電流での放電特性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される(メタ)アクリレートに由来する構造単位1を1〜95モル%と、一般式(2)で示されるヒドロキシル基を有する構造単位2を1〜60モル%と、一般式(3)で示される重合性官能基を有する構造単位3を1〜60モル%とを有するアクリルポリマーであって、前記アクリルポリマーの質量平均分子量が1,000〜100,000であることを特徴とする、アクリルポリマー。
【化1】

(式中、Rは水素あるいはメチル基を表し、Rは水素、C1〜C8の直鎖アルキル基あるいはC3〜C8の脂環式アルキル基を表す。)
【化2】

(式中、Rは水素あるいはメチル基を表し、Rは水素、C1〜C8の直鎖アルキレン基あるいはC3〜C8の脂環式アルキレン基を表す。)
【化3】

(式中、R及びR’は同一でも異なっていてもよいが独立に水素あるいはメチル基を表し、Xは、−CHCH−、−(CHCHO)CHCH−{nは1〜500までの整数}、−R−OCONH−R−あるいは−R−CH(OH)CH−を表し、R、R及びRはそれぞれ独立にC1〜C8の直鎖アルキレン基あるいはC3〜C8の脂環式アルキレン基を表す。)
【請求項2】
請求項1記載のアクリルポリマーの合成方法であって、該アクリルポリマーの合成において、溶媒として、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びメチルエチルカーボネートから成る群より選択される溶媒を用いる、アクリルポリマーの合成方法。
【請求項3】
請求項1記載のアクリルポリマーまたは請求項2記載のアクリルポリマーの合成方法により合成してなるアクリルポリマーと、(A)熱あるいは光重合開始剤と、(B)アルカリ金属塩の非水電解液とを含むことを特徴とする、重合性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3記載の重合性樹脂組成物に、熱を加え、あるいは光を照射して重合反応を生じさせ、該重合性樹脂組成物をゲル化させることによって得られることを特徴とするゲル状高分子電解質。

【公開番号】特開2008−285666(P2008−285666A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106166(P2008−106166)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】