説明

アグリコ生成物及び利用法

【課題】糖結合体、糖結合体を含む治療組成体及び糖結合体を利用した治療法を提供する。
【解決手段】免疫系による抗原認識に関する免疫原性エピトープであるアグリコ10Bのペプチド成分。これら糖結合体はインフルエンザウイルスの細胞への結合の阻止、分裂症の治療及び癌の発生を伴う慢性ウイルス性疾患の診断に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、細胞機能不全及び細胞死に関係する生存生物体の結合(conjugated)炭水化物成分の障害の診断及び治療を補助する生成物及び方法の発見に関する。
【背景技術】
【0002】
アグリコ(aglyco)の病理の状態、及びその帰結、その産物、ならびにその検出及び治療に関する製品と工程を規定した本発明の方法及び、組成物に照らし初めて理解できる細胞機能不全、細胞死及び特異細胞状態に関連する、理解されず、また理解できない多くの無関係と思われる観察が過去なされてきた。
【発明の概要】
【0003】
発明の観点の一つでは、ペプチド、特に全身免疫系による抗原認識を担う免疫原性エピトープであるアグリコ10Bのペプチド成分が提供される。発明のこの観点の1実施態様では、配列番号1又は配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する炭水化物を少なくとも1つ含む単離された糖結合体(glycoconjugate)が提供される。これらアグリコ10Bのペプチド成分は、アグリコ10に対する特異抗体、抗アグリコB10(抗マリグニン抗体)のインビボ生成を提供する。発明の本観点の他の実施態様では、ペプチドがそれを必要とする患者での抗マリグニン抗体の濃度を高める為の治療組成物中に、個別または組合せた状態で含まれる。
【0004】
発明の別の観点では、患者に対し治療有効量の糖結合体が投与することでインフルエンザウイルス粒子を結合し、細胞受容体への該粒子の接着を予防又は阻害することを含む、インフルエンザウイルス粒子のヒト患者細胞への接着を予防し、又は阻害する方法が提供される。
発明の更に別の観点では、それが必要な患者に治療有効量のD-グルコサミン-HClを投与し、それにより該患者の脳糖結合体の濃度を高めることを含む、精神分裂症治療法が提供される。
【0005】
本発明の別の観点では、配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチドに対するモノクローナル抗体及びアグリコ蛋白質10Bに対するモノクローナル抗体が提供される。
発明の別の観点では、患者中のアグリコ蛋白質B10に対する抗体の異常に上昇したレベルを検出することで、悪性細胞への形質転換を検出することを含む、患者体内での癌の発生を伴う慢性ウイルス疾患の診断に適した方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、精神分裂病及び非精神分裂病患者に於けるノイラミン酸、ヘキソサミン及びヘキソース含有量を示す棒グラフである。
【図2】図2は、健康人の加齢に伴う抗マリグニン抗体量を表すグラフである。
【図3】図3は、健康人及び各種癌個体での抗マリグニン抗体量のプロットである。
【0007】
【図4】図4は、乳ガン、悪性化進行中及び癌治療数年後の患者に観察された抗マリグニン抗体量のプロットである。
【図5】図5は、抗マリグニン抗体で免疫染色された悪性細胞の写真の組合せである。
【図6】図6は、抗マリグニン抗体による小細胞肺癌細胞のインビトロ増殖阻害を示す棒グラフである。
【0008】
【図7】図7は、良性過形成、炎症及び癌に於ける抗マリグニン抗体濃度量の棒グラフである。
【図8A】図8Aは、12量体の合成ペプチドをウサギに注射した時、インビボ産生された抗マリグニン抗体の量の棒グラフである。
【図8B】図8Bは、12量体の合成ペプチドをウサギに注射した時、インビボ産生された抗マリグニン抗体の量の棒グラフである。
【0009】
【図9A】図9Aは、16量体の合成ペプチドをウサギに注射した時、インビボ産生された抗マリグニン抗体の量の棒グラフである。
【図9B】図9Bは、16量体の合成ペプチドをウサギに注射した時、インビボ産生された抗マリグニン抗体の量の棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の方法及び組成体は、アグリコ結合体病理の研究に由来するものである。本発明者により、脂質又は蛋白質と共有結合し糖結合体(glycoconjugate)を形成する糖結合体の炭水化物成分は細胞安定性、細胞のレセプター及び認識機能、及び自己又は外来物質の両方による損傷からの細胞成分の保護に寄与できることが発見された。
【0011】
これら正常炭水化物成分の濃度が低下し、あるいは構造に変化が生し、あわせてここでは”アグリコ状態”(aglyco state)及び”アグリコ病理”(aglyco pathology)と規定される状態になると、これら炭水化物の安定性、受容体認識及び保護作用は低下するかあるいは消失し、細胞は機能不全を起こすか、又は死亡し、その結果細胞機能不全又は死を起こした場所に依存する疾患状態になる。ここに示した証拠は、これら病的状態、例えば神経系では、細胞機能不全又は細胞(即ち細胞消失)を起こすことを示している。この様な病的状態には、精神病(精神分裂症)の様な痴呆、及び脳腫瘍、そしてパーキンソン病やアルツハイマー病が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0012】
糖蛋白質10Bはヒト脳内にある正常の250kD膜成分である。この糖結合体はハトの脳のトレーニングに関係することが示されている。細胞分裂の接触阻害を明らかに消失に伴う非抑制的な増殖が起こっている、脳内の神経膠芽細胞で10Bの構造が変化していると仮説されている。更に、脳神経膠芽腫では10Bの構造が大きく変化していることが見いだされている:炭水化物基は量的に約50%減少し、ヘテロ接合性の消失も認められる。正常な10Bには9種類の炭水化物成分が存在している;腫瘍の10B(アグリコ10B)ではこれらは5種類又は6種類に減少している。
【0013】
更に、10Bの蛋白質部分は7から10倍過剰に産生、又は発現している。アストロシチンは脳腫瘍の10Bから切断された10kDのペプチドに付けられた名称である。組織培養された神経芽腫細胞からは、アストロシチンに相当するマリグニンが分離され、アストロシスチンに極めて近い構造であることが証明されている。マリグニンは、組織培養中にこのペプチドが発現され、mg抽出可能膜蛋白質当たりの濃度が単位時間当たりの細胞分裂の速度と共に増加することからそう呼ばれている。
【0014】
リコギニンMは10kDのグルタミンとアスパラギン酸に富んだ癌ポリペプチド抗原であり、MCF7悪性乳腺細胞から分離されている。このポリペプチドは神経膠脳腫瘍より分離されたマリグニンと関係している(Glu13、Asp9、His2)。リコギニンMに対するIgM自己抗体である抗マリグニンはヒト血清から分離され、あるいはヒトリンパ細胞に抗原をインビトロ作用させてヒト型に産生されたモノクローナル抗体として産生され、及び手術時及び剖検時に得られた悪性細胞より、溶出し固相化した精製抗原に溶出及び免疫吸着させ分離されている。
【0015】
数百人の医師が参加し、3カ所の米国内の独立した研究室、英国内の3カ所の病院と1カ所の研究施設が参加した20年間の無作為化、ほぼ盲検で行われた試験からは、μg/mlで表された抗マリグニン(抗アグリコ10B)の血清濃度は(1)癌リスクの増加に伴って正常、健康な非腫瘍保持者で10年間の間に1/3から1/7の間に減少し(p<0.001;N=1.972)(図1)、(2)ハイリスク癌ファミリーのメンバーでも明らかに発症をしていない者は、早期かつ明瞭に増加を示し(p<0.001;N=1/106)(図1及び2)、そして(3)悪性の形質転換を起し乳ガンの臨床像を示してから数週間以内にはヒト血清濃度は顕著に増加するが、治療が成功した場合には3ヶ月以内に正常値まで戻り、治療成功後27年間までは正常域に維持されることから、標徴的ではなかった(変化しないという意味で)(図2及び3)(p<0.001;初回決定時の偽陽性及び偽陰性<5%、繰り返し測定時<1”;N=600)。
【0016】
生検採取された頚部は、異形成から明瞭な浸潤性癌のステージに形質転換した病理的証拠を提供した。これには抗マリグニンの濃度の顕著な上昇が伴った。手術切除後、抗マリグニンは3ヶ月以内に正常値に戻った。図2及び3は、これらがいずれの方向についても統計的に有意な変化であることを示している(p<0.001)。
【0017】
従って血清抗マリグニン抗体の定量測定を、乳癌の化学予防試験に於ける結果の可否を示す非浸潤性生体マーカーとして利用することは興味深い。
更に精製抗マリグニン抗体は、マリグニンのエピトープが露出された細胞膜の蛍光及び発色染色に於いて特異性を示したことから、マニュアル又はコンピューター操作によるサイトメトリーに於いて、単独又は異形成前又は異形成をベースとする代替エンドポイントの一部として利用することができる。
【0018】
病理プロセスとの関連性
抗マリグニン(抗グリコ10B)は阻害性(inhibitory)形質転換抗体である。
ヒトでは悪性形質転換した細胞は数年からそれ以上の年月をかけ増殖し、臨床的な癌になる。もしその増殖の阻害が理論の通りに、またAIDSの様な免疫不全疾患で癌の頻度が増加することから示唆される様に免疫のプロセスであるとすると、ヒトについてはその様な免疫プロセスを示す直接的証拠は無く、それを担うメカニズムも未知である。
【0019】
抗マリグニンは上記の特質に加え、患者の生存率に定量的に関係していることが示されている。インビトロでは、抗原精製ヒト抗マリグナミンは細胞のタイプとは関係なく癌細胞に結合し、手術又は剖検にて取り出された癌細胞上には非飽和量存在しており、悪性神経膠細胞に対し細胞障害性であり(図4、kとl)、そして細胞当たりピコグラム量の抗体により小細胞肺癌細胞の増殖を阻害する(図5)。
【0020】
脳内での糖結合体の役割の発見と各種疾患状態に於いて糖蛋白質10Bに対する特異抗体が存在することから、特異的アグリコ10Bペプチドの発見と、疾患状態に関連するこれらアグリコペプチドに対する抗体の発見がもたらされた。糖蛋白質10B、アグリコの病理及び抗原性アグリコペプチドの役割と、これらペプチドに対する抗体の発見から、特定の慢性ウイルス感染症、ウイルス安全退避、及びウイルス発癌に関する関係に関する予想外の発見と、そしてAIDSやB又はC型肝炎の様な慢性のウイルス感染症に関する初期検出とワクチン治療に関する新規方法の発見がもたらされた。本研究は、アグリコの病理により影響を受けた各種疾患を検出し、そして治療するための方法にもつながった。
【0021】
発明の観点の一つでは、神経障害は以下のアグリコ病理の産物により診断されるだろう:1)その変化が新規アグリコ産物を生ずる神経系糖共役体中の構造変化を直接決定すること;又は2)本発明の新規アグリコ産物が抗原として作用することから、新規アグリコ抗原性産物に対し体が生成した新規抗体産物を決定すること。これらアグリコ細胞抗原産物は、正常細胞成分と明らかに異なっており、体は新規アグリコ産物を異物として認識し、それに対する抗体を作製する。
【0022】
これら抗体は、細胞に対し有害又は望ましくない作用を及ぼすことができ、細胞を死に至らしめる(例えば、正常発生中の脳内では望ましくないが、脳腫瘍内では良い結果を生ずる)。直接的に決定すること、又はそれらに対し生成された抗体を決定することでこれらアグリコ産物を同定することは、疾患の診断の一助、またはその基礎になると共に、その治療の基礎になる。
【0023】
インフルエンザウイルスに関する脳内の糖結合体レセプター−“グリコデコイ”
糖結合体の機能の一つは、脳内の標的細胞に対するインフルエンザウイルス接着の為の受容体として機能することである。インフルエンザウイルスが細胞に近づくと、細胞膜内にある糖結合体受容体に特異的に結合する。脳内では、ノイラミン酸含有糖結合体が受容体として機能する。ノイラミン酸は特異的インフルエンザウイルス酵素、ノイラミニダーゼによって、この受容体から切断される。この様な受容体が脳ガングリオシドの糖結合体である場合、ノイラミン酸の切断の結果ウイルスはヘキサミンと接触する様になり、これがウイルスからのDNAの駆出を強力に誘導し、その結果脳細胞内への転移が可能になる(Bogochら、Virology, 7, 161-165(1979)。
【0024】
防御において、ウイルスの標的となる細胞はノイラミン(シアル)酸を含む低分子量物質、シアロレスポンシンを分泌する(Bogochら、Nature、195、180(1962)が、これはウイルスのデコイとして機能し、その結果細胞への接着を阻止し、細胞内への侵入を阻止すると信じられている。生じたシアロレスポンシンの濃度は、ウイルスの凝集素濃度に相関する。
【0025】
本法及び組成物はこのウイルス感染に於ける糖結合体の役割に関する治験を利用している。ノイラミン酸−ヘキソサミン結合を含む糖結合体または産物、あるいはウイルスによりその受容体として認識されるその他の糖結合体又は構造的に似た要素は、インフルエンザ及びその他ウイルス、あるいは同一物又はその類似立体構造体を受容体として利用するその他感染症の予防又は治療用デコイとして有用である。
【0026】
即ち、発明の観点の1つでは、これらアグリコデコイは経口的、経皮的、全身的(例えば静脈内又は腹腔内)又は鼻用あるいは呼吸腔用スプレー、もしくはウイルスが最初に細胞に感染する前、又は一次標的細胞が排除された後に追加細胞に乾癬する前に。ウイルスとデコイが相互に接触する様に運搬することができるその他方法によって投与される。即ち発明の本観点では、インフルエンザウイルス感染、及び結果としてのノイラミン酸の消失を予防し、又は阻害する方法が提供される。
【0027】
インフルエンザウイルス感染、脳細胞消失及び精神分裂症に於けるノイラミン酸とヘキソサミンアグリコ産物の欠乏
発生中の脳に於けるインフルエンザウイルス感染の結果として生ずる細胞障害又は細胞死は、これら神経分裂症の様な神経障害をもたらす原因となるか、あるいは原因に於いてある役割を果たしていると考えられている。
【0028】
従来の定量的神経化学研究は、ノイラミン酸及びヘキソサミンは正常な脳発生と行動の基礎となる神経ネットワークを形成する、糖結合体細胞内認識”交通標識(サイン−ポスト)”システムの一部であることを示唆している。最近の精神分裂症脳の組織学的研究は、発生傷害の結果が示唆される神経の解体を示している。現在、疫学的研究はノイラミニダーゼを含むインフルエンザウイルスの出産前感染は、精神分裂症を起こしやすくすることを示唆している。更に、脳脊髄液中の結合型ノイラミン酸とヘキソサミンの濃度は精神分裂症患者では定量的に減少していることが見いだされている。
【0029】
最近の疫学的調査からは、精神分裂症の頻度は母親が妊娠第2期の間にインフルエンザウイルスに感染した個体(Callaghanら、Lancet、337、1248-1250(1991))、及びガングリオシド及びその他糖脂質傷害を高頻度に持つ集団で増加していること(Rahavら、Am. J . Psychiatry, 143(10), 1249-1254(1966))ことを示した。組織学的研究は、精神分裂症の脳では神経細胞が消失し、神経の解体が起こっていることを示している(F.E.Bloom、Arch. Gen. Psychiaatry, 50, 224-227(1993))。インフルエンザウイルスの酵素、ノイラミニダーゼ(シアリダーゼ)による結合体からのノイラミン酸の除去が、未成熟な脳での神経細胞認識分子を傷害する可能性がある。
【0030】
上記の最近の疫学的、及び組織学的所見は、脳脊髄液(CSF)中のノイラミン酸とヘキソサミン結合体の実際の濃度が減少することを示した定量的神経化学データと直接的に関連している(S.Bogoch. Am. J. Psychiatry, 114. 172( 1957))。更に、脳内の糖結合体(糖脂質、糖蛋白質)認識物質に関する関連研究(S.Bogoch、J.Am. Chem. Soc., 79. 3285.(1957))は、神経連絡の”交通標識”と神経系変異に関する仮説を導いた(S.Bogoch. The Biochemistry of Memory; with an Inquiry into the Function of the Brain Mucoids. Oxford Univ. Press. )。
【0031】
従来神経系に存在する糖結合体は認識物質(S.Bogoch. Am. J. Chem. Soc. 79, 3286.(1957));S.Bogoch. Biochem. J.,68, 319-324( 1956))であることがしめされてきた。脳ガングリオシドの構造が最初に決定された後、ガングリオシドはインビトロではインフルエンザウイルスの受容体と同時にハマグリの心筋及び平滑筋を刺激するエフェクターとしても機能することが示されている。
【0032】
インビボでは、脳内へのガングリオシドの追加投与は”デコイ”として機能し、インフルエンザウイルスによる脳神経の感染を阻害する。ヒトの脳の糖蛋白質はバルクで単離され、炭水化物成分について分離され、その一部の特性が解析されている。糖結合体は、シナプス膜に存在すること、そして哺乳動物の神経発生やハトの訓練及び学習に関係していることが示されている。糖結合体の神経系での”交通標識”機能は、発生の成熟過程及び経験時の神経ネットワークの確立との関連性が推測されている。
【0033】
精神分裂症患者は、他の神経障害患者や正常人に比べてCSF中の結合型ノイラミン酸及びヘキソサミンが顕著に減少することが示されている(S.Bogoch. Nature, 184. 628-1629( 1959))。この減少は疾患の重症度に定量的に比例し、臨床状態の改善に伴い正常値に向かって増加する(Bogochら、 New Eng. J. Med., 264, 251-258(1961))。
本発明は、精神分裂症及びアグリコ蛋白質の濃度が増加するその他医学的状態に関する有益な治療方法を提供する。本発明の精神分裂症を治療する方法では、糖結合体の濃度は増加し、患者脳内のアグリコ蛋白質の量は減少する。
【0034】
精神分裂症を治療する本法では、精神分裂症患者の精神病状態を改善するために、これら患者に対しノイラミン酸及びヘキソサミン前駆体であるD-グルコサミン-HClが投与される。具体的には、約50ないし約500mgのD-グルコサミン-HClが、好ましくは約100ないし250mgのD-グルコサミンHCl/日が、最も好ましくは約200mgのD-グルコサミンHCl/日の投与が、脳内の糖蛋白質濃度を上昇させ、脳アグリコ濃度を低下することで精神分裂症患者の全身臨床状態を改善する。
【0035】
アルツハイマー病に於けるアグリコ生成物
アルツハイマー病は、認識傷害、主に早期の記憶消失により神経細胞の消失が顕在化する破壊的な消耗性疾患である。アミロイド前駆体蛋白質(APP)の特定の誘導体がこの病気に特徴的な異常脳内蓄積に関係している。APPは糖蛋白質であることが知られていることから、APP中の炭水化物には注意が払われなかった。本発明では、(1)脳脊髄液中の炭水化物成分が減少したAPP誘導体を分離し、特徴付けることで直接的に、そして/又は(2)患者血清中の抗アグリコAPP抗体を検出し、定量化することで間接的にアグリコ産物を検出することができる。
【0036】
脳内への初期のプレアミロイド蓄積は神経繊維のもつれ形成の前に見ることができる、神経細胞の崩壊の産物が出現し、成熟した”アルツハイマー斑”に結合する。これらプレアミロイド蓄積は、成熟斑同様に38-42アミノ酸長のAPP崩壊産物であるAbエピトープを含んでいる。ダウン症候群の患者の脳ではプレアミロイド蓄積が神経突起の変性が出現する前より存在することから、プレアミロイドから成熟アミロイド斑への移動も起こりうるだろう。
【0037】
プレアミロイドの蓄積は、神経細胞への損傷が起こる前にそれを解消し、排除する治療により敏感に反応するだろう。斑の更なる蓄積を阻止することは、本発明にて脳内の蛋白質結合ヘキソースの濃度を増加させることが示されるデフェニルヒダントイン(DPH)を投与することで実施できる。DPHは筋肉内、皮下、又は静脈内より患者に約0.5ないし約2mg/kg体重/日の量を、必要期間投与される。その結果、患者脳内の蛋白質結合ヘキソース量は増加する。
【0038】
発明の別の観点では、脳腫瘍及びその他疾患状態の存在に於いて濃度が減少する脳糖結合体の炭水化物成分は、ジフェニルヒダントイン(DPH)の様な特定薬物の投与により正常濃度に向かって増加する。約0.5ないし2mg/kg体重、好ましくは1mg/kg体重のDPH投与は、腫瘍が無い場合でも脳蛋白質結合ヘキソースの濃度を増加する。即ち、発明のこの実施態様では、患者の糖結合体のレベル増加をもたらす治療有効量のDPHが投与される脳又はその他悪性疾患の治療に関する方法が提供される。
【0039】
約1mg/kg/日の量は脳糖結合体の濃度を正常又は正常に近いレベルに増加させるのに十分な量である。治療は必要な期間、好ましくは悪性疾患の大きさが減少し、あるいは完全に消失するまで続ける。
新規アグリコ抗原が露出し、アグリコ抗体を生起するその他状態の例としては、パーキンソン病や多発性硬化症があり、本発明の方法はこれら疾患及び、脳及びその他臓器のその他疾患について、上記診断及び治療に関し応用できる。
【0040】
アグリコ抗原性ペプチド及びアグリコペプチドに対する抗体
アグリコ脳糖蛋白質10B及びその特異抗体(モノクローナル又はポリクローナル)は脳腫瘍及びその他悪性疾患に認められる2種類のアグリコ産物である。アグリコ10Bは正常糖蛋白質10Bから炭水化物を除去した結果生ずる。アグリコ10B及び複数のアグリコ10B断片のアミノ酸構造は、いくつかの独立した方法によって決定されている。アグリコ10Bペプチドは複数の方法によって、抗原性を示す有用な12mer又は16merのペプチド断片に切断される。IgM型であるアグリコ10Bに対する抗体は細胞死を誘導する。
【0041】
精製されたアグリコ10Bの3種類のペプチド成分のアミノ酸配列は、ヨード安息香酸及びトリプシン加水分解、エドマン分解、自己加水分解、及びマイクロ波加水分解、及びマススペクトロメトリーにより決定された。当初、これらペプチドは明らかにアグリコ10Bの成分ではあるが、実際に免疫学的エピトープであるか(免疫学的に活性な抗原断片)については不明であった。現在は、2種類の大きな配列が体の免疫系による認識に関与するエピトープを表し、得られた産物はインビボにて特異抗体である抗アグリコ10B(抗マリグニン抗体)を産生することが示されている。
【0042】
この事実を確立するために、アグリコ10Bの配列に関する知識を利用して、同一配列の合成ペプチドをインビトロにて合成した。これら合成ペプチドを動物に注射し、は固定された無傷のアグリコ10Bを利用した標準的な免疫吸収技術により試験したところ、これら動物は特異的抗マリグニン抗体である抗アグリコ10Bを産生した。即ち、アグリコ10Bは抗原であり、これらペプチド断片は更に抗アグリコ10B(抗マリグニン抗体)の産生と結合の両方に関するエピトープである。
【0043】
これら合成ペプチドを動物に注射すると、抗マリグニン抗体の濃度上昇をもたらすことから、無傷の生物学的アグリコ物質は実際にヒトの癌で発見された免疫反応を担っていることが確認された。更に、これら合成ペプチドは体自体の抗マリグニン抗体濃度を増加させるための合成ワクチンとしても有用である。血清中の抗マリグニン抗体濃度は定量的に癌患者の生存期間に関係していることが確立されており、合成抗癌ワクチンが開発されている。
【0044】
肺、乳腺、結腸糖の癌の様に、様々なタイプの細胞の一般的な悪性疾患の多くで、アグリコ蛋白質10B(抗アグリコ10B又は抗マリグニン)に対する抗体の絶対濃度の上昇が認められた。抗体の増加は、アグリコの病理が一般的な病理現象であり、脳に限定されるものでないことを示している。抗アグリコB10の濃度上昇の検出は悪性疾患の有用な診断法である。
【0045】
アグリコ産物及びプロセスは細胞内安全退避により保護されるウイルスが原因である疾患の早期診断及び治療に利用される。
感染により肝細胞癌を誘導するB型肝炎、C型肝炎の様な複数のウイルス、及びAIDSを発症し、複数の悪性疾患の発生頻度を増加させるHIVは、細胞内安全退避として知られる慢性潜在状態では細胞内に局在することを一部の原因として、診断や抗ウイルス剤投与による治療に対し耐性である。
【0046】
即ち、HIVに関しては細胞外液中のHIVウイルスを不活性化又は死滅することができるHIVに関する抗プロテアーゼ剤の様な有効な抗ウイルス剤が多数存在するにもかかわらず、ウイルスが例えばリンパ細胞の様な細胞の中に安全退避することから、それら薬剤は体内の全てのウイルスを根絶しない。従って、抗ウイルス剤による治療により血液が無ウイルス状態になった場合でも、治療を中止すると安全待避所にいたウイルスが細胞外及び血流内に突然放出され、新た細胞に感染することができる。即ち、これら潜伏ウイルスはいつの時点でも増殖し、細胞外液中に放出され、他の細胞に感染し、宿主を征服するだろう。
【0047】
ウイルスが安全退避を利用する別の例では、B型肝炎又はC型肝炎は長期間肝臓内、リンパ細胞内、又はその他細胞内に潜伏または慢性感染として持続し、その間にウイルス性発癌を確立し、肝細胞癌を生ずる。B型又はC型肝炎による発癌の結果としての癌は、臨床的に検出可能になるまでには通常長期間を要し、本発明までは早期に悪性細胞を検出する手段、即ち早期に癌を治療する手段は無かった。
【0048】
今回、これらウイルス安全退避場所を従来の検出法に比べより早期に検出できることが見いだされた。感染細胞が悪性(腫瘍)状態に形質転換することは多く、恐らくウイルス安全退避所を確立し、維持するプロセスを必要とすると考えられることから、アグリコ10B又はアグリコ10B合成抗原エピトープ(ワクチン)又は抗アグリコ10B産物(抗体)の投与することで、感染数年後に於いてさえこれら安全退避場所を破壊することができる。
【0049】
肝臓内の発癌は、ヒトへのB型肝炎又はC型肝炎ウイルスの感染の確立された帰結であるが(米国集団の1%以上、及びアジアの集団の2%以上がこのウイルスに感染していると推定されている)、肝細胞癌(HCC)の存在の検出は、悪性病巣が成長した後期にのみ可能である(通常初期ウイルス感染から10年から25年)。この検出は、アルファフェト蛋白質や、デス−ガンマ−プロトロンビン、及び血小板由来内皮細胞成長因子の様なマーカーの値の助けをかりて行われるか、あるいは癌がスキャニング技術により確認できるようになる(0.5-1cm、数十億個の細胞に相当)事で行われるが、いずれも悪性疾患の他の徴候が臨床的に存在する疾患後期にのみ有効である。
【0050】
悪性疾患への形質転換には、細胞が永続化し分裂しなくなる細胞の不死化が含まる。この現象はウイルスのための安定した細胞待避所を形成する。悪性化進行の第2段階である細胞分裂の増加(増殖)は、本発明以前では第一段階である形質転換が実際に起こったことを示す徴候を提供するに過ぎなかった。不幸にも、増殖により臨床的に検出可能な癌、例えば臨床的に明瞭な肝細胞癌が生じるまでには(10年から25年後)、悪性疾患を成功裏に治療することは極めて難しい状態になっている。
【0051】
本発明では、肝悪性疾患中の悪性形質転換の初期段階に存在する特異的アグリコ反応によって、早期検出が可能である。更に、検出されるアグリコの変化の性質から、本発明の方法は潜在的ウイルス感染に関する新規の特異的治療法を提供する。患者血液中の特異的アグリコ産物の増加を検出することで、従来考えられていたよりも早期−感染後数年以内に肝細胞の悪性状態への形質転換が起こっていることが見いだされた。
【0052】
ウイルス性アグリコ疾患の診断と治療
本発明は、肝細胞癌及びその他癌に関する早期検出及び治療法を提供する。 ウイルス性アグリコ疾患の診断及び治療では、以下の一般的手法が単独、又は悪性状態に形質転換しする細胞の早期治療(臨床癌が出現する前)又はウイルス感染動物に関する細胞内安全退避場所を破壊するための既知治療法又はウイルス検出法と組合せ実施されるだろう。
【0053】
a)例えばB型又はC型肝炎ウイルスあるいはHIVのウイルス性疾患、もしくは慢性ウイルス感染の診断は、公知標準的方法、現在一般的に使用されている確立された方法による例えばウイルス蛋白質に対する特異的血清抗体を測定することで行われ;
b)形質転換(悪性化、不死化)細胞の存在は、以下実施例に記載の方法による血清中の抗マリグニン抗体レベルの増加を検出することで示され;
c)患者の血中ウイルス濃度のベースライン(治療前)の決定(血清中の特異的ウイルスRNAの定量測定、例えばHIV-RNAアッセイ)が行われ;
【0054】
d)アグリコ10Bまたはアグリコ10B”ヨードペプチド”及び”トリプシンペプチド”(実施例参照)の様なその断片の血液中及びその他体液中での存在と濃度の測定が実施され;
e)本発明による合成ペプチドワクチンが1種類またはそれ以上注射され、好ましくは皮下に約50ないし200マイクログラム量、好ましくは約100マイクログラム量を繰り返し、例えばこれに限定されるわけではないが14日ごと、もしくは治療医師により決定されたその他好適な日程にて、血清中の定量測定により抗マリグニン抗体が最大増加するまで注射され;
【0055】
f)抗ウイルス化学療法剤(例えばプロテイナーゼ阻害剤、アシクロビル)が当分野既知の方法にて投与され、細胞内安全退避所から細胞外に放出されたウイルスを破壊し、あるいは中和し;
g)血液中のウイルス濃度を方法c)(治療前)に従い再度測定し(治療後);
h)アグリコ10Bまたはその断片ペプチドの存在と濃度は方法(d)に従い決定される。
【0056】
i)方法(b)により血清抗マリグニン抗体レベルが正常値(135μg/ml以下)に戻り、方法(c)によりウイルスの血液中への放出が無いことが決定され、そして方法(d)により示される形質転換悪性細胞がもはや体内に存在しないことで示され、形質転換された全ての悪性細胞の破壊が確認されるまでワクチンの最終注射後約90から120日の時点まで方法a)からh)を繰り返す。
【0057】
j)上記治療の最終時点に於いて形質転換した悪性化細胞がないことが検証でき、また悪性細胞の増殖の強さは上記治療期間中、99テクネシウムあるいはその他好適な放射性標識された抗マリグニン抗体を静脈投与し、ガンマカウンターを使い、例えばB型又はC型肝炎の場合には肝臓全体について非特異的スキャン技術により検出されるより小さい肝臓内の悪性細胞クラスターの数と大きさを、HIV感染及びAIDSの場合にはリンパ節、脾臓及び脳内について記録することで視覚化することができる。
【0058】
k)残存したウイルス安全待避所は、抗マリグニン抗体又は悪性細胞を優先して破壊するその他の癌化学療法剤により治療されるだろう。
同様に、以下は形質転換の病原がウイルス以外の場合の、臨床癌が出現する前、又は悪性化の過程、で悪性状態に形質転換している細胞を初期に治療し、破壊し、又は不活性化するための方法である。以下の工程または部分的工程は如何なる組合せでも実施できるだろう。これら工程及び方法は、癌を検出し、また治療する既知の方法と組み合わせることができるだろう。
【0059】
a)形質転換した(悪性化した、不死化した)細胞の存在は、血清中の抗マリグニン抗体レベルの増加を検出することで決定される;
b)血液中及び/又は体液中のアグリコ10Bまたはその断片ペプチドの存在と濃度が決定される;
c)本発明による合成ペプチドワクチンが1種類またはそれ以上が、好ましくは皮下に、約50ないし200マイクログラム量、好ましくは約100マイクログラム量を繰り返し、例えばこれに限定されるわけではないが14日ごとに、血清中の定量測定により抗マリグニン抗体が最大増加するまで注射される;
【0060】
d)アグリコ10Bまたはその断片ペプチドの存在と濃度は方法(b)及び/又は抗マリグニン抗体血清値の上昇があることを決定することで決定される;
e)方法(b)により血清抗マリグニン抗体レベルが正常値(135μg/ml以下)に戻り、方法(d)によりアグリコ10Bまたはその断片ペプチドが無く、形質転換悪性細胞(アグリコ抗原産物を有する)がもはや体内に存在しないことで示され、形質転換された全ての悪性細胞の破壊がしめされるまで、ワクチンの最終注射後約90から120日の時点まで方法a)からd)を繰り返す。
【0061】
f)上記治療の最終時点に於いて、形質転換した悪性化細胞がないことが検証され、また悪性細胞の増殖の強さは上記治療期間中、99テクネシウムあるいはその他好適な放射性標識された抗マリグニン抗体を静脈投与し、ガンマカメラにより記録することで視覚化される。
g)悪性細胞の存在は、抗マリグニン抗体又は悪性細胞を優先して破壊するその他の癌化学療法剤により治療される。
【実施例】
【0062】
実施例1.
我々はここでは、非精神分裂病患者に比べ精神分裂病患者のCSF内では結合型ノイラミン酸とヘキソサミンが減少していることを示す二重盲検試験を例示する。19例の患者の内2例は、臨床診断が不明であることから除外された。残り17例の患者は”臨床的には”分裂性”(N=11)及び、分裂性と診断されずに”非分裂性”のその他精神病とされた。これらの診断は、精神科勤務の訓練を3年以上おこなった研究精神科医による完全病歴や精神特性スケール(Cmpbellら、Am. J. Psychiatry, 123, 952-962, (1967))を使った精神状態の評価を含む注意深い臨床作業によって行われ、診断は上級スタッフ医師によって確認された。
【0063】
18例の患者それぞれから得た脊髄CSF検体5ないし18mlは、臨床情報無しにコード化され提供された。各検体を凍結乾燥し、蒸留水に対し、0-5℃にて十分に透析し(セロファン孔サイズ約MW.12,000ダルトン)、遊離型ノイラミン酸と遊離型ヘキソースを除去し、非透析分画について前述のBialのオルニコルとチオバルビツール酸(TBA)法(S.Bogoch、J.Biol.Chem.,25, 16-20 (1960))を用い結合型ノイラミン酸を二回定量分析した。全ての検体について神経化学試験が終了した後、患者認識コードを開けた。サンプルサイズは小さいものの、2テール型t試験によれば、分裂群では結合型ノイラミン酸(p<0.025)及び結合型ヘキソサミン(p<0.006)濃度は統計有意に低く、非結合型ヘキソサミンは有意差を示さなかった。
【0064】
分裂病の81.8%の結合型ノイラミン酸値が7.5μg/mlCSFより低く、非分裂病では83.3%の結合型ノイラミン酸値が7.5μg/mlCSFより高かった。非分裂病患者1例と分裂症患者2例の合計3例について、数週間間隔にてCSFを採取し、試験を繰り返したところ、無作為に盲検にて得た検体と同様の神経化学分析の結果を得た。しかし、TBA法による結合型ノイラミン酸の測定は信頼性が低い(Bogochら、Nature, 195, 180(1962))。本研究及びこれまでの全ての研究では、インビトロ及びインビボの両方について、分裂病では生物学的に活性であるノイラミン酸は結合型のみであり、遊離型ではないことを協調すべきである。
【0065】
即ち、従来の神経化学データから通常の”交通標識”仮説が導かれたが、糖結合体の病理学の特性は本発明までは理解されていない。糖結合体としてのノイラミン酸及びヘキソサミンの濃度の減少の意味は、従来理解されていなかった。これら糖結合体のウイルス、またはその他急性あるいは慢性的な原因による出産前、あるいは出産後の減少が分裂症の病因形成に重要であることが、今回初めて明確になった。次3ヶ月間の妊娠に於けるインフルエンザウイルス感染と分裂病頻度との関連性に関する病理的証拠、及び脳細胞の消失と組織崩壊を示す組織学的証拠と、糖結合体のノイラミン酸及びヘキソサミン濃度が定量的に減少するという直接的証拠とを合わせ考た結果、アグリコ病理学に関する本発明が導かれた。
【0066】
実施例2.
ノイラミン酸及びヘキソサミン前駆体を分裂患者に投与すると、改善がもたらせれる。
D-グルコサミンHCl、200mg/日を慢性分裂症患者に30日間経口投与した。精神特定評価スケールを全体的な臨床観察と併せ用い、改善の有無を検出した。患者の半数以上で好ましい反応が認められ、また好ましくない反応を示す例は無かった。
【0067】
実施例3.
訓練中のハトに於ける脳糖結合体ヘキソースと14Cグルコース取り込みの増加。
休息中のハトをSkinner箱の中で訓練しているハトの脳について(a)糖結合型ヘキソースの絶対量、及び(b)脳糖結合体への14Cグルコースの取り込みを比較した。
【0068】
【表1】

【0069】
(b)ハト脳糖結合体中への14C−グルコースの取り込み
90マイクロキューリーの14Cグルコースを休憩又はトレーニング期の前にハトに静脈注射し、その後一定期間毎にハトを屠殺した。続いて脳の蛋白を抽出し、各ハトの脳をクロマトグラフィーにかけ、シンチレーションカウンターで放射活性を測定した。分離した脳蛋白質群を十分に透析した後、分画の全放射活性を決定し、次に分画を透析により遊離した糖を除き、これを定量的に測定しながら段階的に酸加水分解した。次にこれら糖成分を薄層クロマトグラフィーにより分離し、染色スポットを真空吸引で除き、ブランクと併せて測定した。
【0070】
【表2】

取り込みの経時変化は、休憩中の状態に比べるとトレーニング中では大きく異なっていた。トレーニング状態では、最大取り込みは30分以内に起こり、その時点での休憩状態での取り込みは1/20に過ぎなかった。
【0071】
実施例4.
マウスを2群に分け、半数には脳上衣細胞腫を皮下に接種し、残りの半数にはこれを接種しなかった。これら2群それぞれを更に2群に分けた。半数には毎日DPH101mg/kg体重皮下投与し、半数にはDPHではなく生理食塩水のみを注射した。動物は上衣細胞腫が十分に増殖し皮膚表面を破った時点で屠殺した。SPHを投与すると腫瘍の増殖が有意に低下した。脳を各グループ毎にプールし、脳結合ヘキソースを実施例3同様に抽出し、以下の結果を得た。
【0072】
【表3】

DPHは、腫瘍が存在しない場合及び存在する場合について、脳蛋白質結合ヘキソースの濃度を増加した。
【0073】
実施例5アグリコ生成物のインビトロ合成:12量体及び16量体合成ペプチド
我々が決定したアグリコ10Bの配列の2つ(実施例8)、12量体の”トリプシンペプチド”GLSDGSNTESDI及び16量体の”ヨードペプチド”YKAGVAFLHKKNDIDEをインビトロ合成した、Genosysペプチド合成装置は、標準的なFmoc試薬を高性能カップリング型Abacusシステム上にてアミノ酸のTBTU活性化と組合せ利用するものであり、結合反応終了時の活性化アミノ酸の濃度を高く維持するために役立つ非膨張型一定量のPEGポリスチレン樹脂を利用している。
【0074】
産物の精製法では、C8カラム(100%A)から(20%A:80%B);A=0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)蒸留水溶液、B=0.1TFAアセトニトリル溶液を用いた。全てのピークを採取した。溶出液は220nmで読みとった。精製基準は次の通りである;ピークの成分はマススペクトロメトリー(パースペクティブ(Perspective)社Maldi-TOF)にて測定した。HPLC(パースペクティブバイオシステムス社(Perspective Biosystems)製バイオカード)を用い、精製度95%以上を保証した。
【0075】
各ペプチドはマススペクトロメトリーと分析HPLCにて分析し、ペプチドの構造を確認し、次に再度調製HPLCにかけて、所望ピークを分離し、最終産物を再度逆相HPLCとマススペクトロメトリーにかけ、ペプチドを最終精製した。いずれの場合、12MERペプチド及び16MERペプチドも、合成ペプチドの配列が、アグリコ10Bのマススペクトロメトリーで決定された配列、”トリプシンペプチド”及び”ヨードペプチド”にそれぞれ正確に一致していることを確認した。
【0076】
実施例6.
合成アグリコ12量体及び16量体ペプチドはインビボ及びインビトロで抗アグリコ産物を生ずるワクチンである。
アグリコ10Bについて決定されたペプチド配列が抗マリグニン抗体の産生に関する真のエピトープであることの証明
a)12量体合成ペプチド
1日目に、これまでに注射を受けたことのない2匹のニュージーランド白色ウサギ#508と#507、3から9ヶ月齢の血清中の抗マリグニン抗体のベースライン濃度を決定した後、100マイクログラムの12mer合成ペプチドGLSDGSNTESDIをインビトロ合成し、アジュバントKLH(ムラサキガイヘモシアニン)とフレンドアジュバントを結合させてから、各ウサギに皮下注射した。
【0077】
同一ペプチドを14日目と42日目にブースター注射し、耳介動脈より採血し、前述及び図8に示すような標準的な方法によって抗マリグニン抗体濃度を決定した;即ち、抗体は組織培養され増殖した悪性神経膠芽細胞から分離された無傷の固相化されたアグリコ10B(マリグニン)に対し免疫吸着される。ウサギ血清を用いた抗体測定は、21日目、26日目、55日目に実施された。両(2/2)ウサギとも、ベースラインの未注射時血清レベルを越える抗マリグニン抗体を産生した。
【0078】
図8Aは、早期結合抗体(F-TAG、中抜きカラム)と遅延結合抗体(S-TAG、塗りつぶしカラム)の両方について、ウサギ#508の各採血時の抗マリグナミン抗体濃度を示している。S-TAG濃度はベースライン時に比べ最大で約7倍増加していることが分かる。
【0079】
図8Bは早期結合抗体(F-TAG、中抜きカラム)と遅延結合抗体(S-TAG、塗りつぶしカラム)の両方について、ウサギ#507の各採血時の抗マリグニン抗体濃度を示している。S-TAG濃度はベースライン時に比べ最大で約3倍増加していること、そしてF-TAG濃度はベースラインレベルに比べおよそ5倍増加していることが分かる。図8Bは、ウサギ#507では26日目の採血により、またウサギ#508ではその程度は小さいものの21日目の採血で、F-TAGの増加がS-TAG濃度の最大増加を越えていることも示している。
【0080】
このS-TAG増加前のF-TAGの増加は、無傷のアグリコ10Bを利用し組織培養された分離リンパ細胞が抗マリグニン抗体産生する様に誘導する場合にインビトロで観察された現象と同様のものと考えられた(Cancer Detection and Prevention 12: 313−320, 1988)。ウサギに合成ペプチドエピトープを注射するとこの現象が再現したことから、合成ペプチドは正確に作られ、抗マリグニン抗体の血清中に放出されたことが確認された。
【0081】
新規合成産物の製造に加え、これら合成ペプチドを動物に注射すると、抗マリグニン抗体の濃度の上昇がもたらされたことから、無傷の生物学的アグリコ物質が実際にヒトの癌で発見された免疫反応に関わっていることが確認された(図6)。
1988年の研究にて決定された様に(Cancer Detection and Prevention 12: 313-320, 1988)、アグリコ10Bに対する抗マリグニン抗体はIgM型であり、IgG型は極僅かか、あるいは全く存在しない。
【0082】
本研究では、完全合成抗原である12MERの合成ペプチドをウサギに注射し、IgG型がより多くなるか決定するために生じた抗体を分離決定した。即ち、抗ペプチド抗体の力価についても、遊離型合成16MERペプチドを固相に結合させた(1μg/ml)酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により決定した。結果はD405が0.2になる血清希釈率の逆数として表された。検出はビオチン化抗ウサギIgG、HRP-SA標識体及びABTSを利用して得た。ウサギ#507及び#508は共に、注射後のIgGの値は注射前のレベルと異ならず−全て50以下であった。しかし、16量体合成結果については以下を見よ。
【0083】
b)16量体合成ペプチド
上記同様に、1日目にこれまでに注射を受けたことのない2匹のニュージーランド白色ウサギ#505と#506、3から9ヶ月齢の血清中の抗マリグニン抗体のベースライン濃度を決定した後、100マイクログラムの16MER合成ペプチドYKAGVAFLHKKNDIDEをインビトロ合成し、アジュバントKLH(ムラサキガイヘモシアニン)とフレンドアジュバントを結合させてから、各ウサギに皮下注射した。
【0084】
同一ペプチドを14日目と42日目にブースター注射し、耳介動脈より採血し、前述及び図8に示すような標準的な方法によって抗マリグニン抗体濃度を決定した。即ち、抗体は組織培養され増殖した悪性神経膠芽細胞から分離された無傷の固相化されたアグリコ10B(マリグニン)に対し免疫吸着された。ウサギ血清を用いた抗体測定は、21日目、26日目、55日目に実施された。両(2/2)ウサギとも、ベースラインの未注射時血清レベルを越える抗マリグニン抗体を産生した。
【0085】
16MER合成ペプチドに関しては、図8Aは早期結合抗体(F-TAG、中抜きカラム)と遅延結合抗体(S-TAG、塗りつぶしカラム)の両方について、ウサギ#505の各採血時の抗マリグニン抗体濃度を示している。S-TAG濃度は増加したが、12MER合成ペプチドに関する図7A及び7Bに見られる様な増加は示さなかった。
図8Bは早期結合抗体(F-TAG、中抜きカラム)と遅延結合抗体(S-TAG、塗りつぶしカラム)の両方について、ウサギ#505各採血時の抗マリグニン抗体濃度を示している。S-TAG濃度は約2.5倍増加していることが分かる。
【0086】
同様に、組織培養中に分離されたリンパ細胞は、12MERの合成ペプチド、又は16MERの合成ペプチド、1ml当たり1から10マイクログラム量によって、抗マリグニン抗体を産生するように誘導された。この産生では、ここでは合成12MER又は16MERペプチドの刺激性ペプチド以外、無傷アグリコ10Bを除いて使用したもの及び方法は全てCancer Detection and Prevention 12: 313−320, 1988と同一である。
【0087】
1988年の研究ですでに決定されいる様に”生物学的”に無傷なアグリコ10Bを抗原とした場合のにインビボ、及びインビトロで生成される抗マリグニン抗体はIgM型であり、IgG型は極僅かであるか、あるいは全く存在しない。本研究では、完全な合成抗原である16MERの合成ペプチドをウサギに注射し、IgG型がより多くなるか決定するために生じた抗体を分離決定した。即ち、抗ペプチド抗体の力価についても、遊離型合成16MERペプチドを固相に結合させた(1μg/ml)酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により決定した。結果はD405が0.2になる血清希釈率の逆数として表された。
【0088】
検出はビオチン化抗ウサギIgG、HRP-SA標識体及びABTSを利用して得た。12MERの合成ペプチドについて得られた結果とは異なり、16MERの合成ペプチドについては、ウサギ#507及び#508は共に注射後のIgGの値は極めて高くなった。ウサギ#507及び#508の何れについても、注射前レベルは50以下であった;26日目のレベルは#507については18,031であり、#508については71,326であった;55日目のレベルは#507及び#508何れについても204,800以上であった。従って、16MER合成ペプチドの注射では、IgM型の産生に加えIgG型の抗マリグニンも産生された。
【0089】
“生物学的”に無傷であるアグリコ10Bを動物及びリンパ細胞の組織培養体に事前に注射した場合には、常にIgM型のみの抗マリグニン抗体が産生されること、そしてヒト血清より分離されたヒト抗体もIgM型のみであることから、必ずしも全例ではないが多くの場合そうであるように、抗体はIgG型に変換しないと考えられた。
【0090】
即ち、16MER合成ペプチドの注射によって産生される抗マリグニン抗体のIgG型は新規抗体である。IgG型はIgM型に比べその大きさが小さい(150,000対900,000ダルトン)ことから、細胞外及び細胞内空間により容易に入り込むことができるため、IgM型に比べIgG型はより有利である。このことは、単独又は化学療法剤に関するキャリアーとしての抗体のスクリーニング利用及び治療応用に関係する。
【0091】
実施例7抗マリグニン抗体の正常及び上昇濃度域の確認悪性形質転換にのみ関係した抗体増加
健康コントロール、医学的疾患、乳癌及び細胞のタイプを関係ないその他の一般癌を含むを9,873名の被験者が参加した上記記載の内容を継続し、拡大した研究にて、固相化したアグリコ10B抗原(正常レベル、0ないし124マイクログラム/ml血清)に対し免疫吸着し、決定された血清中の特異抗体−抗マリグニン抗体(AMAS)の濃度の増加と悪性状態への形質転換とは関係した。この値は本研究でも確認された。図10に示すように、抗マリグニン抗体の濃度上昇は、悪性状態への形質転換の無い炎症状態では起こっておらず;また両性腫瘍の様な形質転換のない純粋な増殖状態でも起こっていない。
【0092】
図6は、濃度の正常値以上への上昇は、図6(原発性)の肝臓癌、及びその他癌の様な悪性状態への形質転換時でる場合にのみ生じ、これは進行状態または末期状態ではない初期の活動型の臨床癌である起こることを示している。免疫反応は癌細胞膜の糖蛋白質10B中の炭水化物単位が消失し、続いてその基礎となるペプチドエピトープが露出し、これらエピトープが異物として認識され、続いて抗マリグニン抗体が産生することで起こる。正常人に関する結果は、肝炎/硬変結果に関するコントロールとして図6の中に加えられている。
【0093】
図7は、米国及びアジア人について決定された抗アグリコ10B抗体(抗マリグニン抗体)濃度を示している。偽陽性率は米国では4.5%、そしてアジアでは8%であたのに対し、B型肝炎又はC型肝炎/硬変患者では35.5%、B型又はC型の慢性肝炎を経て明らかな臨床的な癌を発病した患者(一部は末期であり、従って抗体は低下している)の75%、そしてその他の癌の95%では濃度は134μg/ml以上に上昇していることが見いだされた。コントロール群の全個体は肝炎例の中に無作為に分散され、盲検的手法により決定されたことから、コントロール群と間援軍の間の差は極めて有意である(p<0.001)。
【0094】
この抗体はその他のウイルス性疾患、他の炎症、他の感染症、又は病気、または肝炎、硬変あるいは悪性疾患を持たない健康人コントロールでは濃度上昇しないことから、他の癌の場合同様に今回観察された抗マリグニン抗体の増加は悪性細胞の存在を証明するものと結論した。従って、B型肝炎又はC型肝炎陽性の個体での抗マリグニン抗体濃度を測定することは、(1)ヒトに於けるウイルス性発癌の初期段階の検出を可能にし、そして(2)従来可能であったB型又はC型肝炎感染の悪性形質転換よりも早期にこれを検出でき、従って初期の治療が可能になる。
【0095】
更に、加水分解とマススペクトロスコピーにより悪性化のエピトープの配列を決定し、合成した。これら合成ペプチドは癌細胞に特異的な免疫反応を増加させるワクチンとして有用である。これらペプチドは、皮下に投与した場合には癌細胞当たりピコグラム(フェトモル)で細胞障害を示す抗マリグニン抗体の濃度を増加させることが示されている(図5)。
【0096】
同様に、AIDS患者では、臨床上の癌が出現するかなり以前より134μg/ml以上の抗体、アグリコ10B(抗マリグニン)抗体の血清濃度が観察されたことから、悪性疾患への早期形質転換が細胞の不死化が起こり、これがHIVウイルスの安全待避所になることを示していると結論した。従って、B型又はC型肝炎の場合同様にこれら安全退避場所を処置することができる。
【0097】
実施例8多数集団の血液、及びその他体液中の12量体及び16量体ペプチドの定量測定に適した自動化法
血液中またはその他体液中の12量体及び16量体ペプチドエピトープ、もしくは全アグリコ10B抗原を日常的に定量測定するための、診断又は大規模集団での利用に適した方法については報告されていない。血液中抗原測定に適した現在利用可能な方法、例えば腫瘍マーカー、CEA、PSA及びCA125の利用は信頼性が高くなく、また多くの偽陰性及び偽陽性を生ずることから実用には限界がある。例えば、血清中に放出される前立腺特異産物であるPSAの偽陽性率は、良性の前立腺肥大または前立腺の癌よりも運動状態を反映し、15%から70%である。
【0098】
多くの研究室が殆ど検査品質コントロールを実施せずに測定を実施しており、そのため施設間の結果を比較することは不可能である。この様な理由から、大規模集団での利用に適した、より安価かつ正確な、新規の信頼性の高い方法が望まれている。更に、血清中の抗マリグニン抗体の濃度の測定を利用する場合、抗体の免疫反応が低下する進行癌又は末期癌の診断の補助としては有効ではないことから、病気のより後期にしばしば起こることが知られている血液中に放出された抗原を測定することが有益であるが、本発明まではその様な測定は皆無であった。
【0099】
以下の方法は、アグリコ10Bの12量体及び16量体ペプチド(抗原)の決定に有用であるが、血液中又はその他体液中の既知腫瘍マーカー又はその他検出可能な産物のいずれについても応用できる。本法に有用なものは、(1)例えばコーニングサムコ社(Corning Samco)製のトランスファーピペットの様な、圧縮可能なパルブ(”バルブ”)から成る拡張されたヘッドと、直径0.1mmないし0.3mm、長さ約3ないし10cmの目盛りの付いた透明な先細型のステム(”ステム”) の付いた、滅菌され、バーコードがつけられた目盛り付きプラスチック採取ピペット。
【0100】
ピペットのステムの内壁は抗マリグニン抗体、プロテアーゼ阻害剤、及び抗凝固剤でコーティングされている;(2)指を穿刺し血液滴を得るための滅菌済み穿刺針;及び(3)必要書類を含むキットである。血液の滴をピペットのチップ内に吸い取り、キットを所定の研究室に郵送する。採取及び発送キットは十分に小さく、およそ4×9−10インチのバーコード付き一般封筒に納められることが好ましい。
【0101】
抗体、プロテアーゼ阻害剤、及び抗凝固剤でコーティングされた採取ピペットの製造
ピペットは抗マリグニン抗体により、好ましくはピペットの頭端部にある圧縮バルブを使い、コーティング抗マリグニン抗体を1ml当たり約200マイクログラムとプロテアーゼ阻害剤(例えば、抗凝固剤EDTAを含む50ml当たりべーリンガーマンハイム(Boehringer Mannheim)社製”コンプリート”プロテアーゼ阻害剤1錠)を含む液のリザーバー(抗体リザーバー)からピペットステム部の全長まで吸い上げ、液を好ましくは一晩ピペット内に留め、抗体をピペットの壁部に吸着させることでコーティングされる。次に溶液を廃棄する。
【0102】
この製造方法は、各ピペットステムの頂部を垂直に保持する圧搾型クランプを利用し、一連のピペットを所定位置に固定する装置を使い自動化することができ、そしてこの装置はその間にピペットの頭部が並べられる厚さ1/4インチ、幅1インチの2本の水平に於かれた金属製のバーも含んでいる。2本の水平な金属製バーを一緒に動かすことで、ピペット頭部にある圧縮バルブが圧搾され、ピペット内部の液体は排泄される。2本の水平に置かれた金属製バーを離すと、ピペット頭部の圧縮バルブは弛緩し、リザーバーの溶液はピペットチップからピペットのステム部内に吸い上げられ、ピペットチップはリザーバー液に浸される。
【0103】
溶液をリザーバーに排出した後、リザーバーが無い状態で圧縮バルブの圧搾と弛緩を繰り返し、ピペットが乾燥するまでピペットチップから空気を吸い上げ吹き出し、ピペット内壁を風乾する。リザーバー液の濃度は、ピペットのシリーズを充填した後決定される;もしリザーバー無いの抗体濃度が100マイクログラム/ml以下の場合、約200マイクログラム/mlになるまで抗体とプロテアーゼ阻害剤をリザーバーに加え、再調整する。全てのピペットローダーディスチャージャーは、ある位置ではピペットチップが1つのリザーバー内に位置せしめ、別の位置ではピペットチップが別のリザーバー又は排液容器、あるいは空気中に位置するように、45度の角度を付けてつり下げられている。
【0104】
研究室内での測定に適した検体の獲得と送付
血液検体の場合、キットは少なくとも1本のコーティングされたピペット、切開針、及び採血と研究室への血液送付に関する指示書、ならびに研究室からの測定結果を受け取る意志の名前と住所を含む必要書類を含むことが好ましい。被験者は必要書類に記入し、封筒に入れる。手を注意深く洗浄し、指先を穿刺し、ピペットの頭端部にあるバルブを圧縮してピペットのステム部の先端から血液を吸い取る。次に、血液を研究室に郵送する。
血液以外の体液を検体とする場合には、特別な指示書がキットに入れられるだろう。
【0105】
研究室での12量体及び16量体ペプチドの定量測定
研究室がキットを受け取った場合、熟練者は必要に応じて変更をくわえることができるが、一般には次の操作が行われる:
(1)検査技師は各ピペットを他のピペットと共に自動ピペットローダー−ディスチャージャーの中に一列に取り付け;
(2)各ピペット上のバーコード番号はバーコード読みとり装置によって自動的に読みとられ、自動ピペットローダー−ディスチャージャーを操作するコンピューター内に入力される(そして測定結果はこの番号の下に掲載される);
【0106】
(3)技師により各ピペット内の血液量及び必要書類上の全てのデータがコンピューターのバーコード番号の下に記録される;
(4)血液が自動ピペットローダー−ディスチャージャーから廃棄容器(リザーバーA)に排泄される;
(5)ピペットの内壁は、自動ピペットローダー−ディスチャージャーにより自動的に別のリザーバー(リザーバーB)よりリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を吸い上げることで2回洗浄されるが、各洗浄液は45度に吊られたローダー−ディスチャージャーによって自動的に排液容器(リザバーA)に排泄されるため、排液容器はリン酸緩衝生理食塩水を含むリザーバー容器と交互にピペットチップでアクセスされることになる;
【0107】
(6)抗マリグニン抗体は別のリザーバー(リザーバーC)からピペット内に吸い上げられ、2時間ピペット壁部と接触を維持し、次に排液容器(リザーバーA)内に廃棄される;
(7)ピペットは再度上記(5)同様にPBSにて洗浄される;
(8)アクリジニウムエステルの様なルミネッセンス発光体が結合した抗ヒト抗体、例えばヤギ又はウサギの抗ヒト抗体、約100マイクログラム/mlをピペット内に吸い上げ、30分間ピペット壁部と接触させる;
【0108】
(9)ピペットを上記工程(5)同様にしてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し;
(10)放射されたルミネッセンスを、ルミネッセンスを受け取る部分がピペットチップのステムに直結するように設置されたルミノメーターを用い測定し、そして
(11)ルミネッセンス単位で表された各ピペットのルミネッセンスの結果は、同一操作によって決定された12MER及び16MERのペプチドの等モル混合液の既知量基づく標準曲線より計算され、ペプチドマイクログラムに変換され、各ピペットの元の血液量で補正され、プリントされ、そして/又は電子データ記憶ファイルに移される。
【0109】
家庭用キット
あるいは、特に血液を研究所に送る代わりに、血液中及び他の体液中(以下”血液”とする)の12MER及び16MERペプチドに対する抗体濃度を日々モニタリングするために、家庭に於いて個人または同伴者に測定のための装置及び指示書が提供され、ルミノメーターの測定値は個人により観察されるだけでなく、インターネット又はその他の電子装置を使って研究所または医師に伝えられる。
【0110】
即ち、個人が必要書類に情報を電子的に入力し、ピペット中の血液量を読みとり電子的に入力し、血液が取り込まれたピペットを冷蔵庫に約2時間入れ(0から5℃)(凍結不可)、ピペットを取り出し、血液を研究室に送付するジップロックで密封される排液用のプラスチック製容器に廃棄し、ピペットを附属のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、PBSを廃棄用容器に棄て、これに限定するものではないがアクリジニウムエステルの様なルミネッセンス放射体が結合した抗ヒト抗体、例えばヤギ又はウサギの抗ヒト抗体、約100マイクログラム/mlをピペット内に吸い上げ、30分間ピペット壁部と接触させる。
【0111】
ピペットの中身を廃棄容器に廃棄し、ピペットを2回PBSで洗浄し、これも廃棄容器内に廃棄する。ピペットをルミノメーターに挿入し、放射されるルミネッセンスを測定する。ルミネッセンス単位で表される各ピペットの結果は自動的にインターネット又はその他の電子装置を介し研究所または医師に送られ、サンプル操作によって決定された抗マリグニン抗体の既知量に基づく標準曲線から抗マリグニン抗体蛋白質を計算してマイクログラムに変換し、その結果は各ピペットの元の血液量で補正し、プリントし、そして/又は電子データ記憶ファイルに移される。
【0112】
実施例9大規模集団の血液中及びその他体液中の12量体及び16量体ペプチドに対する特異抗体を定量測定するための自動化法
これら2種類のペプチドに対する抗体(抗マリグニン抗体)の測定に利用できる方法は、定量的かつ信頼性をもって注意して作業される場合でも、採血や送付に適した特別なチューブ、研究室、静脈かたの採血を行う採血担当者又は医師、血液を凝固させる方法、冷凍遠心装置による遠心分離、ドライアイスを用い一晩で行う迅速な送付を必要とする−いずれもが時間がかかり、多くの地域では容易に利用できないことから、実用性には大きな限界がある。
【0113】
更に、試薬の製造に関する方法、悪性神経膠芽細胞の組織培養体から生物学的に産生される共有結合したマリグニン、抽出、分離、精製及びブロモアセチルセルロースへの共有結合−及び高価な要手法的な自動化されていない6時間を要する免疫吸着法を用いる迅速な測定は、より個人的な訓練と標準物質に対する性能に関する高いレベルの注意を必要とする。従って、大規模集団でのより安価な実際的利用に適した新規方法が求められている。
【0114】
上記の採血、送付、及び抗体の決定に関する注意事項の多くは、抗体吸着チューブ内に血清を保存すること、又は-70℃以下の温度での8時間以上の保存による消失又は再生を避けるために行われるものである(Cancer Detection and Prevention 11:100, 1987)。今回これら一般的ではない、高価かつ時間を要する措置は、全血を採取し抗凝固剤入とプロテアーゼ阻害剤入りの容器に入れて送付され、そしてルミネッセンス放射基質に結合したペプチドの抗体によって自動的にペプチド又は抗体を測定することで回避することができることが分かった。本発明により、大規模集団での利用に適した抗マリグニン抗体に関する利用可能な試験が実現できる。
【0115】
以下の方法は、一般には12MER及び16MERの合成ペプチド(抗原)に対する抗体の測定に適しているが、血液またはその他体液中の他の抗体の測定にも応用できる。
以下のキットは、本方法の実施に有用である。キットは(1)コーニングサムコ社(Corning Samco)製のトランスファーピペットの様な、圧縮可能なパルブ(”バルブ”)から成る拡張されたヘッドと、直径0.1mmないし0.3mm、長さ約3ないし10cmの目盛りの付いた透明な先細型のステム(”ステム”) の付いた、滅菌され、バーコードがつけられた目盛り付きプラスチック採取ピペット。
【0116】
ピペットのステムの内壁は抗マリグニン抗体、プロテアーゼ阻害剤、及び抗凝固剤でコーティングされている;(2)指を穿刺し血液滴を得るための滅菌済み穿刺針;及び(3)必要書類を含む。血液の滴をピペットのチップ内に吸い取り、キットを所定の研究室に郵送する。採取及び発送キットは十分に小さく、およそ4×9−10インチのバーコード付き一般封筒に納められることが好ましい。
【0117】
12MER及び16MERの合成ペプチド、プロテアーゼ阻害剤、及び抗凝固剤でコーティングされた採取ピペットの製造
ピペットは12MER及び16MERの合成ペプチド(”ペプチド”)によりコーティングされるが、好ましくはピペットの頭端部にある圧縮バルブを使い、12MER及び16MERの合成ペプチドの一方、又はその等モル混合液、1ml当たり約200マイクログラムとプロテアーゼ阻害剤(例えば、抗凝固剤EDTAを含む50ml当たりべーリンガーマンハイム(Boehringer Mannheim)社製”コンプリート”プロテアーゼ阻害剤を1錠)を含む液のリザーバー(”ペプチドリザーバー”)からピペットステム部の全長まで吸い上げ、液を好ましくは一晩ピペット内に留め、ペプチドをピペットの壁部に吸着させることでコーティングされる。
【0118】
次に溶液を廃棄する。この製造方法は、各ピペットステムの頂部を垂直に保持する圧搾クランプを利用し、一連のピペットを所定位置に固定する装置を使って自動化することができ、この装置はその間にピペットチップの頭部が並べられる厚さ1/4インチ、幅1インチの2本の水平に於かれた金属製のバーも含む。2本の水平な金属製のバーを一緒に動かすことで、ピペット頭部にある圧縮バルブが圧搾され、ピペット内部の液体は排泄される。2本の水平に置かれた金属製バーを離すと、ピペット頭部の圧縮バルブは弛緩し、リザーバーの溶液はピペットチップからピペットのステム部内に吸い上げられ、ピペットチップはリザーバー液に浸される。
【0119】
溶液をリザーバーに排出した後、リザーバー無しの状態で圧縮バルブの圧搾と弛緩を繰り返し、ピペットが乾燥するまでピペットチップから空気を吸い上げ、吹き出し、ピペット内壁を風乾する。リザーバー液の濃度は、一連のピペットを充填した後に決定される;もしリザーバー無い状態でペプチドの濃度が100マイクログラム/ml以下の場合、約200マイクログラム/mlになるまでペプチドとプロテアーゼ阻害剤をリザーバーに加え、再調整される。全てのピペットローダーディスチャージャーは、ある位置ではピペットチップが1つのリザーバー内に位置せしめ、別の位置ではピペットチップが別のリザーバー又は排液容器、あるいは空気中に位置するように、45度の角度を付けてつり下げられている。
【0120】
研究室内での測定に適した検体の獲得と送付
血液検体の場合、キットは少なくとも1本のコーティングされたピペット、切開針、及び採血と研究室への血液送付に関する指示書、ならびに研究室からの測定結果を受け取る意志の名前と住所を含む必要書類を含むことが好ましい。個人が必要書類を記入し、封筒に入れるだろう。手を注意深く洗浄し、指先を穿刺し、ピペットの頭端部にあるバルブを圧縮してピペットのステム部の先端から血液を吸い取る。次に、血液を研究室に郵送する。
血液以外の体液を検体とする場合には、特別な指示書がキットに入れられるだろう。
【0121】
研究室でのアグリコ10Bの12MER及び16MERペプチドに対する抗体の定量測定
研究室がキットを受け取ると、
(1)検査技師が各ピペットを他のピペットと共に自動ピペットローダー−ディスチャージャーの中に一列に取り付け;
(2)各ピペット上のバーコード番号及び必要書類のデータは全て自動的にバーコード読みとり装置によって読みとられ、自動ピペットローダー−ディスチャージャーを操作するコンピューター内に入力される(そして測定結果はこの番号の下に掲載される);
【0122】
(3)技師により各ピペット内の血液量及び必要書類上の全てのデータがコンピューターのバーコード番号の下に記録される;
(4)血液が自動ピペットローダー−ディスチャージャーから廃棄容器(リザーバーA)に排泄される;
(5)ピペットの内壁は、自動ピペットローダー−ディスチャージャーにより自動的に別のリザーバー(リザーバーB)よりリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を吸い上げることで2回洗浄されるが、各洗浄液は45度に吊られたローダー−ディスチャージャーによって自動的に排液容器(リザバーA)に排泄されるため、排液容器はリン酸緩衝生理食塩水を含むリザーバー容器と交互にピペットチップでアクセスされることになる;
【0123】
(6)抗マリグニン抗体は別のリザーバー(リザーバーC)からピペット内に吸い上げられ、2時間ピペット壁部と接触を維持し、次に排液容器(リザーバーA)内に廃棄される;
(7)ピペットは再度上記(5)同様にPBSにて洗浄される;
(8)アクリジニウムエステルの様なルミネッセンス発光体が結合した抗ヒト抗体、例えばヤギ又はウサギの抗ヒト抗体、約100マイクログラム/mlで結合したものをピペット内に吸い上げ、30分間ピペット壁部と接触させる;
【0124】
(9)ピペットを上記工程(5)同様にしてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し;
(10)放射されたルミネッセンスを、ルミネッセンスを受け取る部分がピペットチップのステムに直結するように設置されたルミノメーターを用い測定し、そして
(11)ルミネッセンス単位で表された各ピペットのルミネッセンスの結果は同一操作によって決定された抗マリグニン抗体の既知量基づく標準曲線より計算され、ペプチドマイクログラムに変換され、各ピペットの元の血液量で補正され、プリントされ、そして/又は電子データ記憶ファイルに移される。
【0125】
家庭用キット
あるいは、特に血液を研究所に送る代わりに、血液中又は他の体液中(以下“血液”とする)の12量体及び16量体ペプチドに対する抗体濃度を日々モニタリングするために、家庭に於ける個人または同伴者が測定のための装置と指示書が装備し、ルミノメーターの測定値は個人により観察されるだけでなく、インターネット又はその他の電子装置を使って研究所または医師に伝えられる。
【0126】
即ち、個人が必要書類に情報を電子的に入力し、ピペット中の血液量を読みとり電子的に入力し、血液が取り込まれたピペットを冷蔵庫に約2時間入れ(0から5℃)(凍結不可)、ピペットを取り出し、血液を研究室に送付されるジップロックで密封される排液用のプラスチック製容器に廃棄し、ピペットを附属のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、PBSを廃棄用容器に棄て、これに限定されるものではないがアクリジニウムエステルの様なルミネッセンス放射体が結合した抗ヒト抗体、例えばヤギ又はウサギの抗ヒト抗体、約100マイクログラム/mlをピペット内に吸い上げ、30分間ピペット壁部と接触させる。
【0127】
ピペットの中身を廃棄容器に廃棄し、ピペットを2回PBSで洗浄し、これも廃棄容器内に廃棄する。ピペットをルミノメーターに挿入し、放射されるルミネッセンスを測定する。ルミネッセンス単位で表される各ピペットの結果は自動的にインターネット又はその他の電子装置を介し研究所または医師に送られ、サンプル操作によって決定された抗マリグニン抗体の既知量に基づく標準曲線から抗マリグニン抗体蛋白質を計算してマイクログラムに変換し、その結果は各ピペットの元の血液量で補正し、プリントし、そして/又は電子データ記憶ファイルに移される。
【0128】
実施例10アグリコ10Bの構造
A.エドマン分解によるアグリコ10Bのヨード安息香酸加水分解により、以下の配列を持つペプチド(”ヨードペプチド”)を得た。
【化1】

B.マススペクトロメトリーをマックバイオスペック(MacBioSpec)ソフトウエアーマニュアル013048-A、PESCIEX、パーキンエルマーシエックス(Perkin Elmer Sciex Insruments)を用いた計算し、ペプチドYKAGVAFLHKKNDIDEについて以下の特性を得た:
【化2】

【0129】
C.マススペクトロメトリー:ヨード安息香酸加水分解により上記1Aにて得た”ヨードペプチド”は、以下のアグリコ10B溶液及びブロモアセチル−セルロース上に固定されたアグリコ10B(アグリコ10BC;又はA10BC)の4種類の酸加水分解より得たアグリコ10Bの断片について行われたマススペクトロメトリーにより独立に確認された。これら加水分解は、13種類の重複する加水分解断片(そのうちの2種類、下記6-10及び6-12を2種類の加水分解法より得た)を生じた。これら重複する断片をまとめた結果、独立に”ヨードペプチド”YKAGVAFLHKKDNIDEのペプチド配列を以下の如く確認した。
【0130】
【表4】

C.エドマン分解によるアグリコ10Bのトリプシン加水分解により、以下の配列を持つペプチド(”トリプシンペプチド”)を得た
【化3】

D.アグリコ10Bの加水分解断片マススペクトロメトリーは、マックバイオスペック(MacBioSpec)ソフトウエアーマニュアル013048-A、PESCIEX、パーキンエルマーシエックス(Perkin Elmer Sciex Insruments)を用いた計算より、”トリプシンペプチド”GLSDGSNTESDIについて以下の特性を得た:
【化4】

【0131】
E.マススペクトロメトリー:トリプシン加水分解により上記2Cにて得た”トリプシンペプチド”は、以下のアグリコ10B溶液及びブロモアセチル−セルロース上に固定されたアグリコ10B(アグリコ10B-セルロース、又はA10BC)の4種類の酸加水分解より得たアグリコ10Bの断片について行われたマススペクトロメトリーにより独立に確認された。これら加水分解は、7種類の重複する加水分解断片を生じ、それにより”トリプシンペプチド”(G)LSDGSNTESD(I)のペプチド配列の2-11について独立に以下を確認した:
【0132】
【表5】

【0133】
F.エドマン分解によるアグリコ10BのCNBr加水分解により、以下の配列を持つジペプチド(”CNBrペプチド”)を得た
M D
アミノ酸残基番号 1 2
G.アグリコ10B内には発色基(”クロモフォアー”)が存在しており、これにより濃縮液中(>100μg/ml)ではアグリコ10Bは若干黄色みをおび、図5に示すような吸光スペクトルを示した。クロモフォアーは高圧液体クロマトグラフィーを含む精製の全ての段階を通じ、アグリコ10Bに残存した。
【0134】
アグリコ10B液を含むガラス管を排気し、熱密封することで酸素を窒素に置換すると、アグリコ10B液は暗緑色に変化する。
ガラス間を空気中で開放すると、液はすぐに黄色に戻った。
この酸素化状態での黄色から無酸素状態での暗緑色への変化、ならびに酸素化状態での黄色への復帰は、酸素の有無にのみ関係する可逆的変化であることから、色変化はクロモフォアーの可逆的酸化;還元の特性であると結論した。
【0135】
H.アグリコ10B遺伝子のクローニング
当業者公知の方法を用い、上記の”ヨードペプチド”又は上記”トリプシンペプチド”又は、その両方を用い正常及び形質転換した神経膠細胞ライブラリーのRNA及びcDNAプローブを構築し、アグリコ10Bの遺伝子及び、即ち10Bに関する完全長アミノ酸配列を得た。アグリコ10B及び糖蛋白質10Bの遺伝子は、その全体、又は構造体の断片をワクチンとして利用できる。
【0136】
更に、全遺伝子又はその一部は各種既知発現システムに取り込ませ、無傷の10B糖結合型蛋白質、又はアグリコ10Bを産生させることができ、そしてこれら産物は患者又は動物にて、その無傷分子又はその断片に対する特異抗体を産生させるワクチンとして利用される。糖蛋白質10Bは全ての動物に於いて認識及び知識トレーニングに関係していることが知られていることから、動物及びヒトに於ける認識機能の改善のために投与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された糖結合体ペプチド。
【請求項2】
配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドに結合した炭水化物成分を少なくとも1つ含む分離された糖結合体。
【請求項3】
配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチドに結合した炭水化物成分を少なくとも1つ含む分離された糖結合体。
【請求項4】
配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチド。
【請求項5】
配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチド。
【請求項6】
患者に対し、治療的有効量の糖結合体を投与し、それによってインフルエンザウイルス粒子に結合し、そしてそれにより該粒子の細胞への接着を阻害又は防止することを含む、ヒト患者の細胞に対するインフルエンザウイルス粒子の接着を阻害し、あるいは防止する方法。
【請求項7】
結合役体がノイラミン酸(neuraminic acid)−ヘキソース結合を含む、請求項6の方法。
【請求項8】
患者が妊娠の第1又は第2三半期にある、請求項6の方法。
【請求項9】
それを必要としている患者に、治療有効量のD-ガラクトサミン-HClを投与し、それによって該患者の脳糖結合体の濃度を上昇させることを含む分裂症を治療する方法。
【請求項10】
該治療有効量が約50ないし約500mg/日の範囲にある、請求項9の方法。
【請求項11】
該治療有効量が約200mg/日である、請求項9の方法。
【請求項12】
配列番号1のアミノ酸配列を有するペプチドを特異的に認識する精製されたモノクローナル抗体。
【請求項13】
配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチドを特異的に認識する精製されたモノクローナル抗体。
【請求項14】
アグリコ(aglyco)蛋白質10Bを特異的に認識する精製されたモノクローナル抗体。
【請求項15】
配列番号1のペプチド、配列番号2のペプチド、アグリコ蛋白質10B及びその組合せより成るグループから選択されたペプチドを含む、それを必要とする患者の抗マリグニン抗体濃度を上げるのに適した治療組成物。
【請求項16】
配列番号1のペプチド、配列番号2のペプチド、アグリコ蛋白質10B及びその組合せより成るグループから選択されたペプチドの治療有効量をそれを必要とする患者に投与することを含む、慢性ウイルス感染症を治療する方法。
【請求項17】
慢性ウイルス感染症がHIVである請求項16の方法。
【請求項18】
形質転換が該患者の血液中のアグリコ蛋白質又は血液あるいは組織中のアグリコ蛋白質抗原性ペプチドのレベルの上昇を測定することで検出される、患者中の悪性細胞への形質転換を検出することを含む、患者内の慢性ウイルス性疾患に関連した癌を診断する方法。
【請求項19】
慢性ウイルス性疾患に関連した癌が肝細胞癌である、請求項18の方法。
【請求項20】
配列番号1のペプチド、配列番号2のペプチド、アグリコ蛋白質10Bより成るグループから選択されたペプチドを特異的に認識する精製された抗体を含む、治療組成物。
【請求項21】
それを必要とする患者に、治療有効量のジフェニルヒンダントインを投与し、それにより該患者の脳糖結合体のレベルを上げることを含む、脳腫瘍を治療する方法。
【請求項22】
治療有効量が約0.5ないし約2mg/kg体重の範囲にある、請求項19の方法。
【請求項23】
少なくとも1本の採取用チューブ又はピペット、及び抗マリグニン抗体を含む、患者血液中に存在するアグリコ蛋白質10B抗原性エピトープの濃度を決定するためのキット。
【請求項24】
該抗体が試験管、又はピペットの内面にコーティングされている、請求項21に記載のキット。
【請求項25】
少なくとも1本の採血管又はピペット、及び配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を有するペプチドを含む、患者血液中に存在する抗マリグニン抗体の濃度を決定するためのキット。
【請求項26】
ペプチドが試験管、又はピペットの内面にコーティングされている、請求項23によるキット。
【請求項27】
配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を含むペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項28】
患者血液中のアグリコ蛋白質10B抗原性ペプチドの存在を決定することを含む、該患者中の癌を診断する方法。
【請求項29】
患者血液又は組織中のアグリコ産物の存在を決定する方法において、
1)該患者の血液又は組織より分離された糖蛋白質の炭水化物成分量を決定し;そして
2)健康な対照個体の血液又は組織より分離された糖蛋白質に関連する炭水化物成分量と、該炭水化物成分量とを比較する;
ことを含む方法。
【請求項30】
該患者の血液中のアグリコペプチドに対する抗体の存在と濃度を決定する工程を更に含む、請求項29の方法。
【請求項31】
患者の分裂症を診断する方法において、
1)患者の脳脊髄液から分離された糖蛋白質中のノイラミン酸及びヘキソサミン量を測定し;
2)健康人の脳脊髄液より分離された糖蛋白質中のノイラミン酸及びヘキソサミンのレベルと前記の量とを比較し;そして
3)該患者の脳脊髄液より分離された糖蛋白質中のノイラミン酸及びヘキソサミンの量と分裂症の有無とを関連付ける;
ことを含んで成る方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−87589(P2011−87589A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−263994(P2010−263994)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【分割の表示】特願2000−571873(P2000−571873)の分割
【原出願日】平成11年8月30日(1999.8.30)
【出願人】(501141781)
【出願人】(501141792)
【Fターム(参考)】